説明

交通信号制御システム及び故障判定方法

【課題】交通信号制御システムにおけるGG検出機構の異常を確実に検出し、安全性の向上を図ること。
【解決手段】交通信号制御システム1では、灯器駆動部20における灯色ピックアップ回路230が二重系に構成されるとともに、検出対象の青色灯が点灯時に、灯色ピックアップ回路230による灯色ピックアップ信号が交流信号となるように構成される。そして、二つの灯色ピックアップ回路230A,230Bそれぞれによる灯色ピックアップ信号A,Bが一致するか否かによって、灯色ピックアップ回路230A,230Bそれぞれの故障有無が判定される。また、灯色ピックアップ信号A,Bが交流信号であるか否かによって、青色灯の点灯状態(点灯/滅灯)が判定される。また、青色灯に対応する点灯/滅灯指令と判定された青色灯の点灯状態とから、青色灯に対応するSSR210の異常(オープン/クローズ)が判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
進行方向の異なる複数の道路が交差している交差点では、安全性とスムーズな交通の流れのため、交通信号制御機によって制御される交通信号機が設置されている。交通信号制御では、互いに交差する複数の交通が同時に青信号となったこと(いわゆる、GG異常)を検出するGG検出機能を有している。このGG検出機能は、信号灯器の各灯色(特に、青色灯)の点灯状態を検出する灯色ピックアップ回路を用いて実現される。
【0003】
一般的に、信号灯器では、SSR(半導体リレー)のオン/オフによって各灯色のLEDへの電圧(AC100V)の供給をオン/オフすることで、各灯色を点灯/滅灯させている。そして、灯色ピックアップ回路は、この各灯色のLEDへの電圧供給の有無を検出し、検出結果を灯色ピックアップ信号として出力している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−34891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、灯色ピックアップ回路が故障すると、対応する灯色の点灯状態が検出できなくなるため、GG異常が発生したのにも関わらずにGG検出がなされない事態が生じ得る。すなわち、青色灯に対応するSSRが短絡故障した場合、点灯/滅灯指令に関わらず、該青色灯は常時“点灯(異常点灯)”した状態となるが、灯色ピックアップ回路が故障していると、この青色灯の“異常点灯”が検出されない。つまり、GG異常が検出されるべき状態にも関わらずGG検出がなされず、安全な交通の確保といった面で問題となる。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、交通信号制御システムにおけるGG検出機構の異常を検出し、安全性の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の形態は、
信号灯器(例えば、図1の信号灯器10)の点灯及び滅灯を制御する交通信号制御システム(例えば、図1の交通信号制御システム1)であって、
点灯/滅灯指令に従って前記信号灯器に交流電圧を印加することで、前記信号灯器を点灯/滅灯させる灯器駆動手段(例えば、図2のSSR210)と、
前記信号灯器への印加電圧を検出する電圧検出手段(例えば、図2の灯色ピックアップ回路230)と、
前記検出された印加電圧が交流であるか否かによって、前記信号灯器の点灯状態を判定する点灯状態判定手段(例えば、図7の異常判定部312)と、
前記点灯/滅灯指令と、前記点灯状態判定手段により判定された点灯状態とから、前記灯器駆動手段の故障を判定する駆動故障判定手段(例えば、図7の異常判定部312)と、
を備える交通信号制御システムである。
【0007】
また、他の形態として、
点灯/滅灯指令に従って信号灯器に交流電圧を印加することで、前記信号灯器を点灯/滅灯させる灯器駆動手段を備えた交通信号制御システムにおける故障判定方法であって、
前記信号灯器への印加電圧が交流であるか否かによって、前記信号灯器の点灯状態を判定する点灯状態判定ステップと、
前記点灯/滅灯指令と前記判定した点灯状態とから、前記灯器駆動手段の故障を判定する駆動故障判定ステップと、
を含む故障判定方法を構成しても良い。
【0008】
この第1の形態等によれば、信号灯器への印加電圧が検出され、この検出された印加電圧が交流であるか否かによって信号灯器の点灯状態が判定されるとともに、点灯/滅灯指令と判定された信号灯器の点灯状態とから、灯器駆動手段の故障が判定される。
【0009】
信号灯器は交流電圧が印加されることで点灯するため、信号灯器が点灯しているならば、電圧検出手段によって検出された印加電圧は交流となる。このため、検出された印加電圧が交流であるか否かによって、信号灯器の点灯状態が判定できる。
【0010】
また、灯器駆動手段が故障すると、その故障状態に応じて、信号灯器は、点灯/滅灯指令に従わずに点灯/滅灯した状態となる。このため、点灯/滅灯指令と、判定した信号灯器の点灯状態とが一致しない場合、灯器駆動手段が故障と判定できる。具体的には、点灯/滅灯指令が滅灯指令のときに信号灯器が“点灯(異常点灯)”している場合や、点灯/滅灯指令が点灯指令のときに信号灯器が“滅灯(異常滅灯)”している場合である。
【0011】
第2の形態として、第1の形態の交通信号制御システムであって、
前記駆動故障判定手段により故障と判定された場合に、前記信号灯器を強制的に滅灯させる第1の強制滅灯手段(例えば、図2の青灯切り回路220)、
を備える交通信号制御システムを構成しても良い。
【0012】
この第2の形態によれば、信号灯器を点灯/滅灯させる灯器駆動手段の故障が判定された場合に、信号灯器が強制的に滅灯される。灯器駆動手段が故障すると、点灯/滅灯指令が滅灯指令であるにも関わらず信号灯器が点灯してしまう可能性があり、これはGG異常の発生につながる。このため、フェールセーフに鑑みて、灯器駆動手段の故障が判定された場合に信号灯器を強制的に滅灯させることで、GG異常の発生を防止できる。
【0013】
第3の形態として、第1又は第2の形態の交通信号制御システムであって、
同一構成の前記電圧検出手段を二つ備えるとともに、
前記二つの電圧検出手段それぞれによって検出された印加電圧の位相の一致を判定する一致判定手段(例えば、図7の異常判定部312)、
前記一致判定手段による判定結果をもとに前記二つの電圧検出手段それぞれの故障を判定する検出故障判定手段(例えば、図7の異常判定部312)、
を備える交通信号制御システムを構成しても良い。
【0014】
この第3の形態によれば、同一構成の二つの電圧検出手段それぞれによって検出された印加電圧の位相の一致が判定され、この判定結果をもとに、二つの電圧検出手段それぞれの故障が判定される。このように、同一構成の二つの電圧検出手段を備える二重系とすることで、信号灯器の点灯状態の検出の信頼性が高まる。すなわち、二つの電圧検出手段は同一構成であるので、それぞれによって検出された印加電圧の位相が一致するならば、両方とも正常であると判定できる。一方、二つの電圧検出手段それぞれによって検出された印加電圧の位相が一致しないならば、少なくとも一方が故障していると判定できる。更に、信号灯器が点灯しているならば検出される印加電圧は交流となるので、少なくとも、検出された印加電圧が交流となっている電圧検出手段は正常であると判定できる。
【0015】
第4の形態として、第3の形態の交通信号制御システムであって、
前記点灯状態判定手段は、前記二つの電圧検出手段によって検出された印加電圧のうち、少なくとも一方が交流のときに点灯と判定する、
交通信号制御システムを構成しても良い。
【0016】
この第4の形態によれば、二つの電圧検出手段によって検出された印加電圧のうち、少なくとも一方が交流のときに、信号灯器の点灯状態は点灯と判定される。
【0017】
第5の形態として、第3又は第4の形態の交通信号制御システムであって、
前記検出故障判定手段により故障と判定された場合に、前記信号灯器を強制的に滅灯させる第2の強制滅灯手段(例えば、図2の青灯切り回路220)、
を備える交通信号制御システムを構成しても良い。
【0018】
この第5の形態によれば、信号灯器への印加電圧を検出する電圧検出手段が故障と判定された場合に、信号灯器が強制的に滅灯される。電圧検出手段が故障すると、信号灯器の点灯状態が検出できない。すなわち、点灯/滅灯指令が滅灯指令であるにも関わらず信号灯器が点灯する異常点灯を検出できない可能性があり、これはGG異常の発生につながる。このため、フェールセーフに鑑みて、電圧検出手段の故障が判定された場合に信号灯器を強制的に滅灯させることで、GG異常の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】交通信号制御システムの設置例。
【図2】灯器駆動部の内部構成図。
【図3】青灯切り回路の回路構成図。
【図4】青灯切り回路における信号波形図。
【図5】灯色ピックアップ回路の回路構成図。
【図6】灯色ピックアップ回路における信号波形図。
【図7】交通信号制御機の内部構成図。
【図8】異常判定テーブルのデータ構成例。
【図9】一致判定回路の回路構成図。
【図10】一致判定回路における信号波形図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下では、本発明を適用した交通信号制御システムの一例を説明するが、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0021】
[構成]
図1は、本実施形態における交通信号制御システム1の設置例を示す図である。図1に示すように、交通信号制御システム1は、交差点毎に設置・構成され、複数(図1では、4台)の信号灯器10と、信号灯器10それぞれを駆動する灯器駆動部(SSU)20と、交通信号制御機30とを備えて構成される。灯器駆動部20それぞれと交通信号制御機30とは、例えばSS(Spread Spectrum)無線によって通信可能となっているが、ケーブル等による有線接続としても良い。
【0022】
信号灯器10は、車両用であり、交差点の所定位置に設置された柱の上方に取り付けられている。灯器駆動部20は、駆動対象となる信号灯器10の近傍に取り付けられる。例えば、信号灯器10に隣接して取り付けられたり、信号灯器10に内蔵されたり、或いは信号灯器10が取り付けられた柱の内部に取り付けられる。
【0023】
交通信号制御機30は、例えば、信号灯器10が取り付けられた何れかの柱の下方やその近傍に設置され、自交差点にかかる交通信号全体を制御する。具体的には、交通信号制御機30は、灯器駆動部20それぞれに、対応する信号灯器10の各灯色の点灯及び滅灯を指示する点灯/滅灯指令を送信する。そして、灯器駆動部20は、交通信号制御機30から受信した点灯/滅灯指令に従って、駆動対象の信号灯器10の各灯色の点灯及び滅灯を制御する。
【0024】
なお、図1では、4つの交通路で構成される十字交差点を対象とし、4つの車両用の信号灯器10が設置される場合を示しているが、交差点の形状や信号灯器10の数はこれに限らないし、更に、歩行者用の信号灯器が設置されることにしても良い。
【0025】
図2は、灯器駆動部20の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、灯器駆動部20は、SSR(Solid State Relay)210と、青灯切り回路220と、灯色ピックアップ回路230(230A,230B)とを有する。
【0026】
SSR210は、信号灯器10の灯色毎に設けられ、商用電源等による交流電圧(AC100V)の各色灯への供給を、交通信号制御機30からの点灯/滅灯指令に従ってオン/オフする半導体リレーである。
【0027】
青灯切り回路220は、交通信号制御機30からの青灯切り指令に従って、商用電源等から信号灯器10の青色灯への交流電圧(AC100V)の供給を、点灯/滅灯指令に関わらず強制的にオン/オフする。
【0028】
図3は、青灯切り回路220の回路構成例を示す図である。図3によれば、青灯切り回路220は、D−FF221と、増幅器222と、BPF・整流器223と、青灯切りリレー224とを有して構成される。
【0029】
D−FF221のデータ端子Dには所定電圧Vcが印加され、クロック端子CKには青灯切り指令が入力され、リセット端子Rにはリセット信号が入力される。増幅器222は、D−FF221の出力信号Q1を増幅する。BPF・整流器223は、増幅器222からの出力信号に対して、所定帯域の信号を通過させ、帯域外の周波数成分を遮断するとともに、通過させた信号を全波整流する。
【0030】
青灯切りリレー224は、接点構成がa接点である機械式リレーであり、その接点224aは、SSR210と青色灯12との間に設けられている。この青灯切りリレー224は、BPF・整流器223からの出力信号によって接点224aを開閉する。
【0031】
図4は、青灯切り回路220の各部における信号波形を示す図である。図4において、上から順に、D−FF221のクロック端子CKに入力される青灯切り指令、リセット端子Rに入力されるリセット信号、出力端子Q1からの出力信号、BPF・整流器223のBPFによる信号及び整流された信号、それぞれの信号波形を示している。
【0032】
先ず、信号灯器10の青色灯の点灯が許容される通常状態では、図4の左半分(前半部分)の波形で示すように、青灯切り指令は、パルス信号であるリセット信号と同一周期であって位相が略半周期ずれたパルス信号となっており、この信号がD−FF221のクロック端子CKに入力される。そして、D−FF221の出力端子Q1からは、このパルス信号に同期した交流信号(方形波)が出力される。この出力信号Q1が、BPF・整流器223を介して供給されることで青灯切りリレー224が扛上し、青色灯12には交流電圧(AC100V)が印加される。
【0033】
一方、青色灯の点灯が許容されない異常状態では、図4の右半分(後半部分)の波形で示すように、青色切り指令はLレベル一定の信号となる、このため、D−FF221の出力信号QがLレベルの信号となり、青灯切りリレー224に供給される信号がゼロレベルの信号となって青灯切りリレー224が落下し、青色灯12への交流電圧(AC100V)の印加がオフとなって青色灯12が滅灯する。
【0034】
図2に戻り、二つの灯色ピックアップ回路230A,230Bは同一構成であり、二重系の構成となっている。この灯色ピックアップ回路230A,230Bは、それぞれ、信号灯器10の青色灯の点灯状態(点灯/滅灯)を検出し、検出した点灯状態に応じたピックアップ信号A,Bを出力する。
【0035】
図5は、灯色ピックアップ回路230A,230Bの回路構成例を示す図である。図5によれば、灯色ピックアップ回路230A,230Bそれぞれは、ブリッジ回路である整流回路231と、定電圧ダイオード232と、発光素子である発光ダイオード233a及び受光素子であるフォトトランジスタ233bからなるフォトカプラ233とを有して構成される。
【0036】
灯色ピックアップ回路230では、青色灯12に印加された交流電圧が、直列接続された抵抗R1〜R3によって分圧され、更に、整流回路231によって全波整流されて発光ダイオード233aに印加される。そして、フォトトランジスタ233bのスイッチング動作によるパルス信号が、ピックアップ信号A,Bとして出力される。
【0037】
図6は、灯色ピックアップ回路230A,230Bの各部における信号波形を示す図である。図6では、上から順に、青色灯12に対応するSSR210に対する点灯/滅灯指令、青色灯12への印加電圧、整流回路231からの出力信号、フォトトランジスタ233bから出力される灯色ピックアップ信号A,Bを示している。
【0038】
図6に示すように、青色灯12への点灯/滅灯指令が「点灯」のとき、青色灯12に対応するSSR210はオン(クローズ)となり、青色灯12には交流電圧(AC100V)が印加されて点灯する。そして、青色灯12に印加された交流電圧が整流回路231によって全波整流され、更に、フォトカプラ233を介することでパルス信号に変換され、灯色ピックアップ信号A,Bとして出力される。
【0039】
また、青色灯12への点灯/滅灯指令が「滅灯」のときには、青色灯12に対応するSSR210はオフ(オープン)となり、青色灯12への印加電圧はゼロとなって滅灯する。従って、整流回路231からの出力信号はゼロレベルとなり、灯色ピックアップ信号はゼロレベル(Lレベル)一定の信号となる。
【0040】
つまり、灯色ピックアップ回路230A,230Bがともに「正常(故障していない)」のとき、灯色ピックアップ信号A,Bは同一の信号波形となる。そして、灯色ピックアップ信号A,Bは、青色灯12が“点灯”しているときには交流信号(パルス信号)となり、“滅灯”のときにはゼロレベル(Lレベル)一定の信号となる。一方、灯色ピックアップ回路230A,230Bが故障しているときには、対応するピックアップ信号A,Bは、点灯/滅灯指令に関わらず交流信号とならない。
【0041】
図7は、交通信号制御機30の機能構成を示すブロック図である。図7によれば、交通信号制御機30は、機能的には、処理部310と、記憶部320と、通信部330とを有する。
【0042】
処理部310は、例えばCPUで実現され、交通信号制御機30の全体制御を行う。また、処理部310は、点灯/滅灯指令生成部311と、異常判定部312と、GG検出部313と、青灯切り指令生成部314とを有し、交通信号制御プログラム321に従って対象交差点の交通信号を制御する。
【0043】
点灯/滅灯指令生成部311は、灯器駆動部20それぞれに対して、対応する信号灯器10の各灯色の点灯及び滅灯を指定する点灯/滅灯指令を生成する。この点灯/滅灯指令は、制御対象の交差点に予め定められた現示階梯表を実現するように生成される。
【0044】
異常判定部312は、点灯/滅灯指令生成部311によって生成された点灯/滅灯指令と、灯色ピックアップ回路230から入力された灯色ピックアップ信号A,Bとから、異常判定テーブル322を参照し、灯器駆動部20におけるSSR210及び灯色ピックアップ回路230の異常(故障)の有無を判定する。
【0045】
ここで、判定対象となる故障の種類及び判定原理について説明する。先ず、SSR210の故障については、「オン(ショート)」となる「ショート故障」と、「オフ(オープン)」となる「オープン故障」とがある。「ショート故障」では、対応する灯色が常時点灯する“異常点灯”となり、「オープン故障」では、対応する灯色が常時滅灯する“異常滅灯”となる。
【0046】
従って、青色灯への点灯/滅灯指令とその点灯状態とから、青色灯に対応するSSR210の異常を判定することができる。すなわち、青色灯に対する点灯/滅灯指令が「点灯」のときに該青色灯の点灯状態が“滅灯”ならば、青色灯に対応するSSR210は故障(オープン)と判定でき、点灯/滅灯指令が「滅灯」のときに点灯状態が“点灯”ならば、青色灯に対応するSSR210は故障(クローズ)と判定できる。なお、青色灯の点灯状態は、灯色ピックアップ信号A,Bから判定される。
【0047】
また、灯色ピックアップ回路230A,230Bについては、上述のように、ともに「正常」の場合、ビックアップ信号A,Bが一致するとともに、このピックアップ信号A,Bは、青色灯が“点灯”していると交流信号となり、“滅灯”しているとゼロレベル(Lレベル)一定の信号となる。また、灯色ピックアップ回路230A,230Bが「故障」している場合、対応するピックアップ信号A,Bが交流信号とならず、所定レベル(H又はLレベル)の信号となる。
【0048】
従って、灯色ピックアップ信号A,Bが一致するならば、灯色ピックアップ回路230A,230Bはともに「正常」と判定できる。更にこのとき、ピックアップ信号A,Bがともに交流信号ならば、青色灯の点灯状態は“点灯”と判定でき、ゼロレベル(Lレベル)の信号ならば点灯状態は“滅灯”と判定できる。
【0049】
一方、灯色ピックアップ信号A,Bが一致しないならば、灯色ピックアップ回路230A,230Bの少なくとも一方が「異常(故障が発生)」と判定できる。このとき、ピックアップ信号A,Bのうち一方が交流信号ならば、この交流信号であるピックアップ信号に対応する灯色ピックアップ回路230は「正常」であり、他方の灯色ピックアップ回路230が「異常」と判定できるとともに、青色灯の点灯状態を“点灯”と判定できる。このような判定原理に基づいて、異常判定テーブル322は定められている。
【0050】
図8は、異常判定テーブル322のデータ構成の一例を示す図である。図8によれば、異常判定テーブル322は、灯色ピックアップ信号322aと、青色灯への点灯/滅灯指令322bとの組合せ毎に、異常判定結果を対応付けて格納している。
【0051】
すなわち、青色灯への点灯/滅灯指令が「点灯」であり、且つ、灯色ピックアップ信号A,Bがともに交流ならば、青色灯は“点灯”しており、SSR210及び灯色ピックアップ回路230はともに「正常」と判定される。
【0052】
また、青色灯への点灯/滅灯指令が「点灯」であり、且つ、灯色ピックアップ信号A,Bの一方が交流信号であるならば、青色灯は“点灯”しており、灯色ピックアップ回路230A,230Bのうち、ピックアップ信号が交流信号でないほうの灯色ピックアップ回路230が「異常」と判定される。
【0053】
また、青色灯への点灯/滅灯指令が「点灯」であり、且つ、灯色ピックアップ信号A,BがともにLレベル一定の信号ならば、青色灯は“異常滅灯”しており、青色灯に対応するSSR210は「異常(オープン)」と判定されるとともに、灯色ピックアップ回路230A,230Bは「正常」と判定される。
【0054】
また、青色灯への点灯/滅灯指令が「滅灯」であり、且つ、灯色ピックアップ信号A,Bがともに交流ならば、青色灯は“異常点灯”しており、青色灯に対応するSSR210は「異常(ショート)」と判定されるとともに、灯色ピックアップ回路230A,230Bは「正常」と判定される。
【0055】
また、青色灯への点灯/滅灯指令が「滅灯」であり、且つ、灯色ピックアップ信号A,Bの一方が交流信号ならば、青色灯は“異常点灯”しており、青色灯へのSSR210は「異常(ショート)」と判定されるとともに、灯色ピックアップ信号が交流信号でないほうの灯色ピックアップ回路230が「故障」と判定される。
【0056】
また、青色灯への点灯/滅灯指令が「滅灯」であり、且つ、灯色ピックアップ信号A,BがともにLレベル(ゼロレベル)一定の信号ならば、青色灯は“滅灯”しており、青色灯に対応するSSR210及び灯色ピックアップ回路230はともに「正常」と判定される。
【0057】
なお、異常判定部312における灯色ピックアップ信号A,Bの一致は、デジタル信号処理によりソフトウェア的に判定しても良いし、例えば図9に一例を示す判定回路を用いても良い。
【0058】
図9は、灯色ピックアップ信号A,Bの一致を判定する一致判定回路340の回路構成の一例を示す図である。図9によれば、一致判定回路340は、直列接続されてシフトレジスタを構成するD−FF341a,341bと、遅延回路342a,342bと、EXORゲート343とを有して構成される。
【0059】
D−FF341aのデータ端子Dには、後段のD−FF341bの出力信号Q2が遅延回路342bを介して入力され、クロック端子CKには、灯色ピックアップ信号Aが入力される。D−FF341bのデータ端子Dには、前段のD−FF341aの出力信号Q1が遅延回路342aを介して入力され、クロック端子CK2は灯色ピックアップ信号Bが入力される。また、D−FF341aのセット端子P、及び、D−FF341bのリセット端子Rには、共通の初期化パルスが入力される。遅延回路342a,342bは、その遅延時間が、ピックアップ信号A,Bの位相が一致するとみなす時間誤差Twを保証するように構成されている。
【0060】
EXORゲート343には、D−FF341a,341bそれぞれの反転出力信号Q1,Q2が入力される。
【0061】
図10は、一致判定回路340の各部における信号波形を示す図である。図10では、上から順に、初期化パルス、灯色ピックアップ信号A,B、D−FF341a,341bの出力信号Q1,Q2、を示している。
【0062】
図10によれば、D−FF341a,341bには、初期化パルスとして、点灯/滅灯指令の変化タイミングに同期したパルス信号が入力される。この初期化パルスの入力タイミングで、D−FF341aの出力信号Q1が「1」にセットされ、D−FF341bの出力信号Q2が「0」にリセットされる。そして、D−FF341aは、灯色ピックアップ信号Aの立ち上がりタイミングで、遅延回路342bを通したD−FF341bの出力信号Q2を取り込んで出力信号Q1として出力し、D−FF341bは、灯色ピックアップ信号Bの立ち上がりタイミングで、遅延回路342aを通したD−FF341aの出力信号Q1を取り込んで出力信号Q2として出力する。
【0063】
従って、出力信号Q1,Q2は初期化パルスによって互いに一致しない値に初期化されているため、灯色ピックアップ信号A,Bの位相が略一致するならば、出力信号Q1,Q2は、灯色ピックアップ信号A,Bの立ち上がりタイミングで略同時に反転する。つまり、出力信号Q1,Q2は一致せず、EXORゲート343の出力は「1」となる。
【0064】
ところが、灯色ピックアップ信号A,Bが一致しないと、出力信号Q1,Q2が一致することになり、EXORゲート343の出力が「0」となる。例えば、図10では、タイミングt1において、灯色ピックアップ信号Bの位相が遅れ、灯色ピックアップ信号A,Bが不一致となっている。このタイミングt1において、D−FF341aの出力信号Q1は反転するが、D−FF341bでは出力信号Q1の取り込みが行われないために出力信号Q2は変化しない。このため、出力信号Q1,Q2がともに「0」となって一致し、EXORゲート343の出力が「0」に変化する。
【0065】
出力信号Q1,Q2が一旦一致すると、以降は、灯色ピックアップ信号A,Bの位相が再度一致しても、出力信号Q1,Q2は変化せずにそのままとなり、EXORゲート343の出力は「0」のままである。
【0066】
図7に戻り、GG検出部313は、各灯器駆動部20の異常判定部312によって判定される各信号灯器10の青色灯の点灯状態をもとに、互いに交差する交通路が同時に青信号となるGG異常の発生有無を検出する。
【0067】
青灯切り指令生成部314は、異常判定部312によってSSR210或いは灯色ピックアップ回路230の異常が判定された場合、或いは、GG検出部313によってGG検出がなされた場合に、青灯切り回路220に出力する青灯切り指令をゼロレベル(Lレベル)一定の信号とすることで、信号灯器10の青色灯を強制的に滅灯させる。
【0068】
記憶部320は、例えばICメモリやハードディスク等で実現され、処理部310に交通信号制御機30を統合的に制御させるためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶するとともに、処理部310の作業領域として用いられる。本実施形態では、プログラムとして交通信号制御プログラム321が記憶されるとともに、データとして、異常判定テーブル322が記憶される。
【0069】
通信部330は、例えばSS無線通信を行う無線通信装置であり、外部装置(主に、灯器駆動部20)との間の無線通信を制御する。
【0070】
[作用・効果]
このように、本実施形態の交通信号制御システム1では、灯器駆動部20における灯色ピックアップ回路230が二重系に構成されるとともに、検出対象の青色灯が点灯時に灯色ピックアップ回路230による灯色ピックアップ信号が交流信号となるように構成される。つまり、二つの灯色ピックアップ回路230A,230Bそれぞれによる灯色ピックアップ信号A,Bが一致するか否かによって、灯色ピックアップ回路230A,230Bそれぞれの故障有無を判定できる。これにより、灯色ピックアップ回路230の信頼性が向上する。また、灯色ピックアップ信号A,Bが交流信号であるか否かによって、青色灯の点灯状態(点灯/滅灯)が判定できる。
【0071】
また、なされた点灯/滅灯指令と判定された青色灯の点灯状態とから、青色灯に対応するSSR210の異常を判定することができる。すなわち、青色灯に対する点灯/滅灯指令が「点灯」のときに該青色灯の点灯状態が“滅灯”ならば、青色灯に対応するSSR210は故障(オープン)と判定でき、「滅灯」のときに点灯状態が“点灯”ならば、青色灯に対応するSSR210は故障(クローズ)と判定できる。これにより、特に、青色灯に対応するSSR210のショート故障と、灯色ピックアップ回路230の故障とが同時に発生した場合を検出することができる。つまり、GG異常の可能性を確実に検出でき、安全性の向上が図れる。
【0072】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0073】
(A)異常判定
例えば、交通信号制御機30で行っていた異常判定は、灯器駆動部20で行っても良い。すなわち、交通信号制御機30が有する異常判定部312の機能を、灯器駆動部20が有することにする。
【0074】
(B)異常判定の対象
また、上述の実施形態では、信号灯器10の青色灯を対象とし、青色灯に対応するSSR210及び青色灯の点灯状態を検出する灯色ピックアップ回路230の故障検出について説明したが、信号灯器10の他の色灯(赤色灯や黄色灯)についても同様に適用可能である。
【0075】
(C)異常判定結果を報知
また、異常判定部312による判定結果を報知することにしても良い。具体的には、異常判定部312によってSSR210や灯色ピックアップ回路230の異常が判定された場合や、GG検出部313によってGG異常が検出された場合に、発生した異常の内容を報知する。報知の方法としては、交通信号制御機30に設けられた表示装置に所定のエラーコードを表示したり、或いは、交通信号制御機30に接続された交通制御センタ等の上位システムに所定の報知信号を通知させたりする。
【符号の説明】
【0076】
1 交通信号制御システム
10 信号灯器
20 灯器駆動部
210 SSR、220 青灯切り回路
230(230A,230B) 灯色ピックアップ回路
30 交通信号制御機
310 処理部
311 点灯/滅灯指令生成部、312 異常判定部
313 GG検出部、314 青灯切り指令生成部
320 記憶部
321 交通信号制御プログラム、322 異常判定テーブル
330 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器の点灯及び滅灯を制御する交通信号制御システムであって、
点灯/滅灯指令に従って前記信号灯器に交流電圧を印加することで、前記信号灯器を点灯/滅灯させる灯器駆動手段と、
前記信号灯器への印加電圧を検出する電圧検出手段と、
前記検出された印加電圧が交流であるか否かによって、前記信号灯器の点灯状態を判定する点灯状態判定手段と、
前記点灯/滅灯指令と、前記点灯状態判定手段により判定された点灯状態とから、前記灯器駆動手段の故障を判定する駆動故障判定手段と、
を備える交通信号制御システム。
【請求項2】
前記駆動故障判定手段により故障と判定された場合に、前記信号灯器を強制的に滅灯させる第1の強制滅灯手段、
を備える請求項1に記載の交通信号制御システム。
【請求項3】
同一構成の前記電圧検出手段を二つ備えるとともに、
前記二つの電圧検出手段それぞれによって検出された印加電圧の位相の一致を判定する一致判定手段、
前記一致判定手段による判定結果をもとに前記二つの電圧検出手段それぞれの故障を判定する検出故障判定手段、
を備える請求項1又は2に記載の交通信号制御システム。
【請求項4】
前記点灯状態判定手段は、前記二つの電圧検出手段によって検出された印加電圧のうち、少なくとも一方が交流のときに点灯と判定する、
請求項3に記載の交通信号制御システム。
【請求項5】
前記検出故障判定手段により故障と判定された場合に、前記信号灯器を強制的に滅灯させる第2の強制滅灯手段、
を備える請求項3又は4に記載の交通信号制御システム。
【請求項6】
点灯/滅灯指令に従って信号灯器に交流電圧を印加することで、前記信号灯器を点灯/滅灯させる灯器駆動手段を備えた交通信号制御システムにおける故障判定方法であって、
前記信号灯器への印加電圧が交流であるか否かによって、前記信号灯器の点灯状態を判定する点灯状態判定ステップと、
前記点灯/滅灯指令と前記判定した点灯状態とから、前記灯器駆動手段の故障を判定する駆動故障判定ステップと、
を含む故障判定方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−96006(P2011−96006A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249275(P2009−249275)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】