説明

人の損傷毛用又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤及びウェーブ形成方法

【課題】毛髪への損傷を与えずに、損傷毛にウェーブを形成し、或いは合成タンパク質繊維にウェーブを形成し、形成したウェーブを長期に亘って固定すること、即ちパーマネントウェーブをかけることを目的とする。
【解決手段】α‐アミノ酸からなるタンパク質、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物等の分子内にα‐アミノ酸を有する化合物と水からなる、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物の水溶液で構成されるウェーブ形成剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の頭髪の損傷毛又は合成タンパク質繊維にパーマネントウェーブをかける、人の損傷毛用又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤及びウェーブ形成方法に関する。
【0002】
詳しくは、本発明は、従来の還元・酸化という化学反応では、頭髪のダメージが深刻になってしま頭髪や、パーマネントウェーブがかかり難い程、或いはかからない程、極端に損傷した人の頭髪、即ち損傷毛と、還元・酸化の化学反応ではパーマネントウェーブがかかりにくい合成タンパク質繊維へ、パーマネントウェーブをかけるウェーブ剤及びウェーブ形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
パーマネントウェーブとは、人の頭髪や羊毛に所望の形状の永久的なウェーブ、カールを与える処置である。人の頭髪及び羊毛はシスチンを15%前後含有するケラチンタンパク質という特殊な繊維を備えて構成されている為に、ジスルフィド結合、塩結合、水素結合という側鎖結合が存在し、側鎖結合によって強靱なα‐ヘリックス構造を取っている。
【0004】
そして、還元・酸化反応を利用した従来のパーマネント方法では、還元・酸化反応のウェーブ剤の成分中の還元剤が側鎖結合のジスルフィド結合に作用して、ジスルフィド結合を切断し、ウェーブ剤の成分中のアルカリ剤が側鎖結合の塩結合に作用して、塩結合を切断し、ウェーブ剤の成分中の水が側鎖結合の水素結合に作用して、水素結合を切断して、人の頭髪及び羊毛を膨潤軟化する。しかし、現実的には、ジスルフィド結合、塩結合、水素結合を切断するといっても、それぞれの結合の一部を切断するに過ぎないのだが、頭髪のダメージの程度によっては、全ての側鎖結合が切断される(毛髪が溶ける)ケースも有る。
【0005】
詳しくは、人の頭髪及び羊毛にパーマネントウェーブをかけるウェーブ形成は、頭髪及び羊毛のケラチンタンパク質繊維の側鎖結合のジスルフィド結合(RS−SR)を、チオグリコール酸塩、システイン、亜硫酸塩、システアミン塩酸塩、2−メルカプト−4−ブタノリド等の還元剤で(RSH HSR)というように切断して、頭髪及び羊毛にウェーブを形成させる器具(ロッド)を巻き付け、頭髪及び羊毛にロッドの形状を与えて、臭素酸塩、過酸化水素等の酸化剤によって、(RS−SR)というようにジスルフィド結合を再結合させてウェーブ形状を固定し、パーマネントウェーブをかけている。
【0006】
しかし、この従来の技法は頭髪のタンパク質を軟化させ、側鎖結合のシスチン結合を切断させるための還元剤、アルカリ剤を用いるため頭髪を傷めてしまうという欠点が問題になっている。又、近年の白髪染め、おしゃれ染めのブームによる、ヘアダイ・ブリーチの施術や縮毛矯正の施術に伴い、人の頭髪は、損傷の程度が極度に著しくなり、髪の表面を覆っている毛小皮(キューティクル)が極度に欠損すると共に、頭髪を形成するケラチンタンパク質繊維の側鎖結合の切断、喪失が著しく、特にジスルフィド結合の切断、喪失が際立ち、還元・酸化の化学反応ではパーマネントウェーブのかからない頭髪、或いはかかり難い頭髪が増加していると共に、従来のパーマネント剤では更に極度に傷んでしまう頭髪が増加している。
【0007】
又、従来のパーマネントウェーブ施術方法は施術に時間がかかり、被施術者の身体的、精神的負担が大きいという欠点があった。
【0008】
そこで、シリコンと非イオン界面活性剤と平均分子量20,000以下のケラチンを含有する二浴式形状記憶ウェーブ形成用1剤が提案されている(特許文献1参照。)。
【0009】
又、近年、合成タンパク質繊維を、人毛の代用品として、かつら、ヘアピース或いはドールヘア等に用いることが行なわれている。そして、これら合成タンパク質繊維を用いたかつら、ヘアピース或いはドールヘア等にもパーマネントウェーブをかけることが要求されている。
【0010】
しかし、合成タンパク質繊維は、繊維を構成しているタンパク質が、ケラチン、コラーゲン、シルク等にかかわらず、又、シスチンの有無に係わらず、人の頭髪や羊毛の繊維構造とは異なる構造の為に、人の頭髪や羊毛と同じ上記の還元・酸化の化学反応ではカールの形成力、保持力が充分なパーマネントウェーブをかけることは困難であった。
【0011】
そこで、このような合成タンパク質繊維をセットする(パーマネントウェーブをかける)方法として、再生コラーゲン繊維を50℃〜160℃の湿熱処理および20℃〜220℃の乾燥処理にて熱セットするセット方法が提案されている(特許文献2参照。)。
【0012】
【特許文献1】特開2005−179271号公報
【特許文献2】国際公開第2002/052099号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1に記載の従来技術は、二浴式用のウェーブ形成用1剤及びウェーブ形成方法であり、この施術方法は施術に時間がかかり、被施術者の身体的、精神的負担が大きいという欠点は充分には解消されなかった。又、ケラチンの他にシリコン等複数の化合物を含有することが必須であり、その組成、調製が複雑であった。
【0014】
又、特許文献2に記載の従来技術では、一旦は所望のウェーブを形成することが出来るが、形成されたウェーブはシャンプー等により容易に取れてしまい、長期に亘ってウェーブを固定することは出来なかった。、即ちパーマネントウェーブをかけることが出来なかった。
【0015】
そこで、本発明は、ジスルフィド結合を切断することなく、毛髪への損傷を与えずに、損傷毛にウェーブを形成し、或いは合成タンパク質繊維にウェーブを形成し、形成したウェーブを長期に亘って固定すること、即ちパーマネントウェーブをかけることを目的とする。又、このようなウェーブを形成するために用いる剤を、単純な組成で、調製を容易とすることを目的とする。更には、短時間で毛髪へのウェーブ形成施術を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来技術の課題を解決するための本発明は、ジスルフィド結合の喪失した損傷毛、人の頭髪や羊毛とは構造の異なる合成タンパク質繊維に、還元・酸化という化学反応には頼らない、パーマネントウェーブ用剤であり、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物を含有する人の損傷毛用ウェーブ形成剤又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤であり、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物と水からなる、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物の水溶液で構成されることを特徴とする人の損傷毛用ウェーブ形成剤又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤である。
【0017】
上記人の損傷毛用ウェーブ形成剤又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤において、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸からなるタンパク質を用いることができ、このタンパク質として、加水分解ケラチン、加水分解卵白、加水分解アーモンドタンパク、加水分解アクチン、加水分解エラスチン、加水分解カゼイン、加水分解カラスムギタンパク、加水分解コムギタンパク、加水分解コメタンパク、加水分解エンドウタンパク、加水分解コメヌカタンパク、加水分解コラーゲン、加水分解コンキオリン、加水分解シルク、加水分解シロバナルーピンタンパク、加水分解ダイズタンパク、加水分解トウモロコシタンパク、加水分解乳タンパク、加水分解ハチミツタンパク、加水分解ヘーゼルナッツタンパク、加水分解ホホバタンパク、加水分解野菜タンパク、加水分解ローヤルゼリータンパク、カラスムギ穀粒タンパク、牛乳糖タンパク、ケラチン、コムギグルテン、コムギタンパク、コラーゲン、シルク、水溶性エラスチン、水溶性コラーゲン、水溶性プロテオグリカン、セリシン、ダイズタンパク、糖タンパク、トリペプチド、乳タンパク、フィブロイン、ヘキサペプチド、ペンタペプチド、ホエイタンパク、加水分解ブラジルナッツタンパクから選択される1種以上のタンパク質を用いることが出来る。
【0018】
そして、人の損傷毛用ウェーブ形成剤の場合、前記タンパク質の数平均分子量が400〜1,000であることが好ましく、合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤の場合、前記タンパク質の数平均分子量が400〜30,000であることが好ましい。
【0019】
又、上記人の損傷毛用ウェーブ形成剤又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤において、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物を用いることがでる。
【0020】
又、上記人の損傷毛用ウェーブ形成剤又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤において、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物を用いることがでる。
【0021】
更に、上記人の損傷毛用ウェーブ形成剤又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤には、基材、賦形剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、溶剤、アルカリ剤、pH調整剤、粘度調整剤、消泡剤、着香剤、殺菌剤、着色剤、酸化防止剤、安定剤、金属封鎖剤、防腐剤、湿潤剤、毛髪保護剤、帯電防止剤、香料、防黴剤、懸濁剤、増粘剤のうちの少なくとも一種を含むこととしてもよい。
【0022】
又、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物を含有する人の損傷毛用又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤を、人の損傷毛又は合成タンパク質繊維に塗布する工程を備えることを特徴とする人の損傷毛用又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法であり、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物と水で調製した水溶液を人の損傷毛又は合成タンパク質繊維に塗布する工程を備えることを特徴とする人の損傷毛用又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法である。
【0023】
上記人の損傷毛用ウェーブ形成方法又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法において、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸からなるタンパク質を用いることができ、このタンパク質として、加水分解ケラチン、加水分解卵白、加水分解アーモンドタンパク、加水分解アクチン、加水分解エラスチン、加水分解カゼイン、加水分解カラスムギタンパク、加水分解コムギタンパク、加水分解コメタンパク、加水分解エンドウタンパク、加水分解コメヌカタンパク、加水分解コラーゲン、加水分解コンキオリン、加水分解シルク、加水分解シロバナルーピンタンパク、加水分解ダイズタンパク、加水分解トウモロコシタンパク、加水分解乳タンパク、加水分解ハチミツタンパク、加水分解ヘーゼルナッツタンパク、加水分解ホホバタンパク、加水分解野菜タンパク、加水分解ローヤルゼリータンパク、カラスムギ穀粒タンパク、牛乳糖タンパク、ケラチン、コムギグルテン、コムギタンパク、コラーゲン、シルク、水溶性エラスチン、水溶性コラーゲン、水溶性プロテオグリカン、セリシン、ダイズタンパク、糖タンパク、トリペプチド、乳タンパク、フィブロイン、ヘキサペプチド、ペンタペプチド、ホエイタンパク、加水分解ブラジルナッツタンパクから選択される1種以上のタンパク質を用いることが出来る。
【0024】
そして、人の損傷毛用ウェーブ形成方法の場合、前記タンパク質の数平均分子量が400〜1,000であることが好ましく、合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法の場合、前記タンパク質の数平均分子量が400〜30,000であることが好ましい。
【0025】
又、上記人の損傷毛用ウェーブ形成方法又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法において、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物を用いることがでる。
【0026】
又、上記人の損傷毛用ウェーブ形成方法又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法において、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物を用いることがでる。
【0027】
更に、上記人の損傷毛用ウェーブ形成方法又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法において用いる水溶液には、基材、賦形剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、溶剤、アルカリ剤、pH調整剤、粘度調整剤、消泡剤、着香剤、殺菌剤、着色剤、酸化防止剤、安定剤、金属封鎖剤、防腐剤、湿潤剤、毛髪保護剤、帯電防止剤、香料、防黴剤、懸濁剤、増粘剤のうちの少なくとも一種を含むこととしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
以上のような本発明によれば、ジスルフィド結合を切断することなく、毛髪への損傷を与えずに、損傷毛にウェーブを形成し、或いは合成タンパク質繊維にウェーブを形成し、形成したウェーブを長期に亘って固定することが可能となった。又、このようなウェーブを形成するために用いる剤を、単純な組成で、調製を容易とすることが可能となった。更には、短時間で毛髪へのウェーブ形成施術を行うことが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の人の損傷毛用ウェーブ形成剤及び合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤は、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物を含有し、その一実施形態として、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物と水からなり、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物の水溶液で構成されている。尚、本発明の人の損傷毛用ウェーブ形成剤及び合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤は、人の頭髪の健康毛は対象としていない。後述のように、健康毛に対しては、効果が認められないからである。
【0030】
尚、損傷毛には、通常の損傷毛及び超損傷毛を含むものである。人の頭髪、頭髪のケラチンタンパク質繊維(毛皮質繊維)はパラコルテックス、オルトコルテックスを埋めているマトリックスによって強度が保たれている。このマトリックスは、ブリーチ、ヘアダイ、洗浄力の強いシャンプー剤によって、毛小皮間の細胞膜複合体が減少することによって、容易にパラコルテックス、オルトコルテックス間から溶出され、毛皮質繊維がスカスカでやせた状態になる。
【0031】
人の頭髪の健康毛とは、毛小皮が密着し、毛小皮間に細胞膜複合体が存在し、毛皮質の繊維も正常である頭髪を意味する。このような健康毛はジスルフィド結合が正常であるので、還元剤・酸化剤を用いる従来の方法でパーマネントウェーブがかけることが出来る。そして、直毛の健康毛を10本程度を束にして、人力で強く二つ折りにした後に手を離すと、元の直毛に戻る。
【0032】
一方、通常の損傷毛とは、毛小皮の一部が剥離して、毛小皮を接着している細胞膜複合体が喪失し、毛皮質繊維もスカスカでやせた状態になっている頭髪を意味する。このような通常の損傷毛は、マトリックスやジスルフィド結合が減少しているために、還元剤とアルカリによって、頭髪は膨潤し易く、還元剤の浸透が早い為、パーマの反応が早いと共に、強くかかりすぎる傾向にある。この損傷毛は、従来の還元剤及び酸化剤を用いたパーマ剤でパーマをかけると、パーマをかける前より頭髪のダメージが深刻になる。そして、直毛の通常の損傷毛を10本程度を束にして、人力で強く二つ折りにした後に手を離すと、毛小皮が欠損し、毛皮質も若干粗雑になっているので、完全には直毛に戻らず、若干折れたままになる。
【0033】
又、超損傷毛とは、毛小皮の殆んどが剥離して、毛皮質が露出し、毛皮質の繊維も極めてスカスカでやせた状態になっている頭髪を意味する。このような超損傷毛は、乾燥しているときには20g程度の引っ張り力であれば切断されることはないが、水分を含んだ時には極僅かな力で切断されてしまう。そして、還元・酸化の化学反応を用いてパーマネントウェーブをかけた場合、シスチンが殆んど喪失している為、頭髪にパーマが全くかかららなかったり、シャンプーを施すことにより頭髪は容易に切断され、或いは溶けてしまう。そして、直毛の超損傷毛を10本程度を束にして、人力で強く二つ折りにした後に手を離すと、殆んど戻らず、折れたままになっている。
【0034】
以上のことからも、健康毛ではパーマが弱く、軽度の損傷毛からある程度の損傷毛までは、パーマのかかり具合が次第に強くなり、例えば、10mmのロッドで巻いて健康毛では25mm程度、軽度の損傷毛では20mm程度、通常の損傷毛では15mm程度というようにダメージの程度によってパーマが強くかかるようになるが、ケラチンタンパク質内のジスルフィド結合が減少した時、パーマがかかり難くなり、シスチンが殆んど喪失した時、即ち、超損傷毛の場合には、毛髪が溶解してしまう。
【0035】
本発明に用いられる、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物としては、特に限定はないが、例えばα‐アミノ酸からなるタンパク質、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物等が挙げられる。
【0036】
そして、本発明の損傷毛用ウェーブ形成剤及び合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤の一実施形態は、α‐アミノ酸からなるタンパク質を含有したものであり、例えばα‐アミノ酸からなるタンパク質と水からなり、α‐アミノ酸からなるタンパク質の水溶液で構成されている。
【0037】
本発明に用いられる分子内にアミノ基とカルボキシル基を持つα‐アミノ酸からなるタンパク質としては、加水分解ケラチン、加水分解卵白、加水分解アーモンドタンパク、加水分解アクチン、加水分解エラスチン、加水分解カゼイン、加水分解カラスムギタンパク、加水分解コムギタンパク、加水分解コメタンパク、加水分解エンドウタンパク、加水分解コメヌカタンパク、加水分解コラーゲン、加水分解コンキオリン、加水分解シルク、加水分解シロバナルーピンタンパク、加水分解ダイズタンパク、加水分解トウモロコシタンパク、加水分解乳タンパク、加水分解ハチミツタンパク、加水分解ヘーゼルナッツタンパク、加水分解ホホバタンパク、加水分解野菜タンパク、加水分解ローヤルゼリータンパク、カラスムギ穀粒タンパク、牛乳糖タンパク、ケラチン、コムギグルテン、コムギタンパク、コラーゲン、シルク、水溶性エラスチン、水溶性コラーゲン、水溶性プロテオグリカン、セリシン、ダイズタンパク、糖タンパク、トリペプチド、乳タンパク、フィブロイン、ヘキサペプチド、ペンタペプチド、ホエイタンパク、加水分解ブラジルナッツタンパク等が挙げら、これらから選択される1種、或いは1種以上を混合して含有させることが出来る。
【0038】
本発明に用いるα‐アミノ酸からなるタンパク質は、数平均分子量400〜40,000までの範囲内なら特に限定されないが、人の頭髪の損傷毛用ウェーブ形成剤の場合、数平均分子量400〜1,000が望ましい。分子量1,000以上ではパーマネントウェーブはかかるものの、パーマネントウェーブを望む対象者からは、望ましく思われるウェーブ形成力、保持力には劣るためである。又、合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤の場合、数平均分子量400〜30,000が好ましい。この範囲であれば、所望のパーマネントウェーブがかかると共に、ウェーブ保持力の差が僅差である。
【0039】
又、α‐アミノ酸からなるタンパク質が水に完全に溶解したものが好ましく、α‐アミノ酸からなるタンパク質が20重量%より多いと完全には溶解しないので、又、1重量%未満であると、殆んど効果が認められないので、α‐アミノ酸からなるタンパク質は1〜20重量%の範囲が好ましい。より好ましくは6〜20重量%の範囲である。
【0040】
又、本発明の他の人の損傷毛用ウェーブ形成剤及び合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤は、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物を含有したものであり、例えばα‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物と水からなり、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物の水溶液で構成されている。
【0041】
本発明に用いられるα‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物としては、ウンデシレノイルグリシン、カプリロイルグリシン、ココイルアミノ酸Na、ココイルアラニンTEA、ココイルグリシンK、ココイルグリシンNa、ココイルグルタミンTEA、ココイルグルタミン酸、ココイルグルタミン酸2Na、ココイルグルタミン酸K、ココイルグルタミン酸Na、ココイルグルタミン酸TEA、ステアロイルグルタミン酸Na、ミリストイルグルタミン酸K、ミリストイルグルタミン酸Na、ヤシ脂肪酸アルギニン、ラウロイルアスパラギン酸Na、ラウロイルカラスムギアミノ酸Na、ラウロイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸Na、ラウロイルグルタミン酸TEA、ラウロイルシルクアミノ酸K、ラウロイルシルクアミノ酸Na、ココイルアルギニンエチルPCA、ラウロイルリシンサーファクチンNa、イソステアロイル加水分解コラーゲン、イソステアロイル加水分解シルク、ココイル加水分解コムギタンパクNa、ラウロイル加水分解シルクNa、カチオン化加水分解ダイズタンパク、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、ヒドロキシプロピルトリモ二ウム加水分解ケラチン、ヒドロキシプロピルトリモ二ウム加水分解コラーゲン、ヒドロキシプロピルトリモ二ウム加水分解シルク、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク、ラウロイルリシン、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレルテリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、イソステアロイル加水分解コムギタンパク、イソステアロイル加水分解コムギタンパクAMP、イソステアロイル加水分解コラーゲンAMP、イソステアロイル加水分解コラーゲンAMPD、イソステアロイル加水分解シルクAMP、ウンデシレノイル加水分解コラーゲンK、オレイルサルコシン、ココイルグリシンTEA、ココイル加水分解コラーゲンK、ココイル加水分解コラーゲンNa、ココイル加水分解コラーゲンTEA、ココイル加水分解ダイズタンパクK、ココイルサルコシン、ココイルサルコシンNa、ココイルサルコシンTEA、パーム脂肪酸グルタミン酸Na、パルミトイルグルタミン酸Na、パルミトイルサルコシンNa、パルミトイルプロリン、パルミトイルプロリンNa、ミリストイルサルコシンNa、ミリストイルメチルアラニン、ミリストイルメチルアラニンNa、ロジン加水分解コラーゲン、ロジン加水分解コラーゲンAMPD、カチオン化加水分解コムギタンパク、カチオン化加水分解コンキオリン、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解シルク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解カゼイン、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コムギタンパク等が挙げら、これらから選択される1種、或いは1種以上を混合して含有させることが出来る。
【0042】
又、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物が水に完全に溶解したものが好ましく、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物が20重量%より多いと完全には溶解しないので、又、1重量%未満であると、殆んど効果が認められないので、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物は1〜20重量%の範囲が好ましい。より好ましくは7〜20重量%の範囲である。
【0043】
又、本発明の他の人の損傷毛用ウェーブ形成剤及び合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤は、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物を含有したものであり、例えば分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物と水からなり、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物の水溶液で構成されている。
【0044】
本発明に用いられる分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物としては、加水分解ゴマタンパクPGプロピルメチルシランジオール、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解シルク、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク、シラントリオールアルギニン、(加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー、加水分解野菜タンパクPGプロピルメチルシランジオール、グルタミン酸シラントリオール、PCA−Naメチルシラノール、アスパラギン酸メチルシラノールヒドロキシプロリン、リシンシラントリオール等が挙げら、これらから選択される1種、或いは1種以上を混合して含有させることが出来る。
【0045】
又、α‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物が水に完全に溶解したものが好ましく、α‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物が20重量%より多いと完全には溶解しないので、又、1重量%未満であると、殆んど効果が認められないので、α‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物は1〜20重量%の範囲が好ましい。より好ましくは7〜20重量%の範囲である。
【0046】
上記の本発明の人の損傷毛用ウェーブ形成剤及び合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤には、上記以外の成分として通常添加物として用いられる成分を本発明の目的、作用、効果を損なわない範囲で適宜選択して添加して使用することが出来る。これらの添加物としては、例えば基材、賦形剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、溶剤、アルカリ剤、pH調整剤、粘度調整剤、消泡剤、着香剤、殺菌剤、着色剤、酸化防止剤、安定剤、金属封鎖剤、防腐剤、湿潤剤、毛髪保護剤、帯電防止剤、香料、防黴剤、懸濁剤、増粘剤を用いることができる。
【0047】
次に、本発明の人の損傷毛用又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法について説明する。これらのウェーブ形成方法は、上述の分子内にα‐アミノ酸を有する化合物を含有する人の損傷毛用ウェーブ形成剤、その一実施形態として、上述の分子内にα‐アミノ酸を有する化合物と水で調製した水溶液を人の損傷毛又は合成タンパク質繊維に塗布する工程を備える方法である。尚、「塗布」とは、刷毛等で塗るという意味に限定されず、広く人の損傷毛又は合成タンパク質繊維に上記水溶液を付着させる行為を含み、本発明の水溶液中に損傷毛又は合成タンパク質繊維を浸したり、スプレー等で損傷毛又は合成タンパク質繊維にかけたりする行為も含む意である。
【0048】
具体的には、一浴式としては、損傷毛又は合成タンパク質繊維を水で湿らせ、上記何れかのウェーブ形成剤を塗布し、望ましくは櫛で丁寧にとかして、本発明のウェーブ形成剤を浸透させ、所望径のロッドに巻き付け、自然放置し、30分後にロッドを外してプレーンリンスをする。プレーンリンス後にドライヤー等で乾燥させて行なう。
【0049】
又、別法として、頭髪には、二浴式を採用してもよい。この場合、損傷毛を水で湿らせ、上記何れかのウェーブ形成剤を塗布し、望ましくは櫛で丁寧にとかして、本発明のウェーブ形成剤を浸透させ、所望径のロッドに巻き付け、10分程度自然放置し、好みにより中間水洗を行い、過酸化水素水、過ホウ酸ナトリウム、臭素酸カリウム又は臭素酸ナトリウム等の酸化剤を損傷毛に塗布し、10分程度自然放置し、ロッドを外してプレーンリンスをする。プレーンリンス後にドライヤー等で乾燥させて行なう。
【0050】
尚、上述の方法において、ロッドに巻き付ける前にウェーブ形成剤を塗布するのではなく、損傷毛又は合成タンパク質繊維をロッドに巻き付けた後にウェーブ形成剤を塗布してもよく、又、予め損傷毛又は合成タンパク質繊維を水で湿らせる工程を省いてもよい。又、ロッドに巻きつけておく時間は、損傷毛の損傷程度や毛質、合成タンパク質繊維の種類等により、適宜適切な時間に設定可能である。
【実施例】
【0051】
人の頭髪の通常の損傷毛、超損傷毛及び合成タンパク質繊維の夫々にα‐アミノ酸からなるタンパク質と水からなるウェーブ形成剤、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物と水からなるウェーブ形成剤、又は分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物と水からなるウェーブ形成剤を用いテストに供した。夫々の水溶液は、α‐アミノ酸からなるタンパク質、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物を夫々20重量%、残部を精製水で調整した水溶液(純度20%水溶液)を用いた。
【0052】
又、比較例として、人の頭髪の健康毛にα‐アミノ酸からなるタンパク質と水からなるウェーブ形成剤、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物と水からなるウェーブ形成剤、又は分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物と水からなるウェーブ形成剤を用いテストに供した。
【0053】
更に、比較例として上記ウェーブ形成剤に替えて水を用いてテストを行ない、又、一般のパーマネントウェーブ剤との比較する為、チオグリコール酸系のパーマ剤(ライブネスDX 株式会社ソワン)、システイン系のパーマ剤(ライブネスSDX 株式会社ソワン)を用いてテストを行なった。
【0054】
テストは、人の頭髪に関しては、人の健康毛で長さ20cmの未処理の毛束を用い、通常の損傷毛として、該未処理の毛束に対してブリーチ処理を2回行い、健康毛を人工的に損傷させた毛束を通常の損傷毛として用い、超損傷毛として、該未処理の毛束に対してブリーチ処理を6回行い、健康毛を人工的に損傷させた毛束を超損傷毛として用いた。合成タンパク質繊維としては、再生コラーゲン繊維(株式会社カネカ製「ULTIMA(アルティマ)」)を用いて長さ20cmの束にしたものを用いた。
【0055】
テストの方法として、人の頭髪の通常の損傷毛、超損傷毛、合成タンパク質繊維及び人の頭髪の健康毛の毛束を水で湿らせ、それぞれのウェーブ形成剤を塗布し、櫛で丁寧にとかして、ウェーブ形成剤を浸透させ、直径10mmのロッドに巻き付け、30分後にロッドを外してプレーンリンスをした。プレーンリンス後24時間自然乾燥した後、カールの直径を計測した。この直径を、冷水処理後直径という。その後、乾燥した毛束をシャンプー処理を10回行ない、24時間自然乾燥した後、再度カールの直径を計測した。この直径を洗浄処理後直径という。尚、計測結果の単位はcmである。そして、冷水処理後直径と洗浄処理後直径のカールの直径を比較して、パーマがかかるか、一過性のセットかを判定した。冷水処理後直径が小さくても、洗浄処理後直径が大きいものは、一過性のセット、ウェーブの形成力はあるが、保持力はないと判断される。即ち、洗浄処理後直径のカールの直径が小さいほどセット、ウェーブの形成力及び保持力を有している、即ち、パーマネントウェーブがかかっているといえる。
【0056】
尚、美容界ではパーマネントウェーブのかかり具合を定める判定基準は、特に定められていない。そこで、洗浄処理後直径がロッドの直径の1倍から2倍のカールとなったときに、強いパーマがかかっていると判断し、ロッドの直径の2.1倍から3倍の場合に、普通にパーマがかかっていると判断し、ロッドの直径の3.1倍から4倍の場合に、弱いパーマがかかっていると判断し、ロッドの直径の4.1倍以上のかかり具合は、極めて弱いパーマがかかっていると判断し、ロッドの直径の5倍以上の場合に、殆んどかかっていないと判断した。
【0057】
尚、チオグリコール酸系のパーマ剤及びシステイン系のパーマ剤を用いた比較例では、毛束を水で湿らし、直径10mmのロッドに巻き付け、パーマネントウェーブ剤の1剤を塗布して5分間加温機にて約45度で加温した後、10分間室温にて自然放置した。その後、パーマネントウェーブ剤の2剤を塗布して10分間放置後、ロッドを外してプレーンリンスをした。プレーンリンス後24時間自然放置した後、カールの直径を計測した(冷水処理後直径)。その後、乾燥させた毛束にシャンプー処理を10回行ない、24時間自然乾燥した後、再度カールの直径を計測した(洗浄処理後直径)。
【0058】
尚、以上の表又は以下の表に示す結果からは明らかではないが、ジスルフィド結合、塩結合、水素結合のうち、水素結合は水で濡れる(水分を吸収する)ことによって切断され、乾燥させることによって再結合される。還元・酸化という化学反応で人の頭髪及び羊毛にパーマネントウェーブをかかける反応は、側鎖結合のジスルフィド結合に作用し、水素結合には作用せず、塩結合にも作用しない。
【0059】
従って、パーマネントウェーブをかけた人の頭髪の水で濡れている時のウェーブの径と、乾燥後のウェーブの径、そして、健康毛、損傷毛へのかかり具合に違いが生じる。
【0060】
即ち、パーマネントウェーブのかかった人の頭髪は、水に濡れている時には水素結合が切れているので、パーマが強くかかって見える。しかし、乾くに従ってカールは次第に大きくなり、完全に乾いた時には何割か大きなカールになる。その理由は、パーマネントウェーブをかけた時、パーマネントウェーブ剤中の水分によって水素結合は切断されるが、その時に切断された水素結合は一過性の切断でしかなく、その後の乾燥によって元の直毛に戻るからである。
【0061】
施術条件等によっても異なるが、例えば、直径10mmのロッドを用いてパーマをかけた時に健康毛で25mm程度であれば、軽度の損傷毛では20mm程度、通常の損傷毛では15mm程度という具合に、同じウェーブ剤、同じロッドを使っても、かかり具合は様々である。又、水に濡れている時の直径に比べ、一般的にはどの毛質でも、乾いた時には約30%程度カールが大きくなる。
【0062】
しかし、合成タンパク質繊維は、あくまでもアミノ酸の重合物であって側鎖結合は存在していないので、水に濡れている時、乾いている時のカールの直径の差は無い。
【0063】
通常の損傷毛のテスト結果を表1に、超損傷毛のテスト結果を表2に、合成タンパク質繊維のテスト結果を表3に、比較例としての健康毛のテスト結果を表4に示す。尚、表1から4に示す実施例1〜14、32〜45及び63〜76並びに比較例10〜23はα‐アミノ酸からなるタンパク質と水のみからなるウェーブ形成剤、実施例15〜28、46〜59、77〜90並びに比較例24〜37はα‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物と水のみからなるウェーブ形成剤、実施例29〜31、60〜62、91〜93並びに比較例38〜40はαは分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物と水のみからなるウェーブ形成剤を用いたものである。尚、以下の表1〜表15中、損傷毛とあるのは、通常の損傷毛を意味する。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
以上の結果により、表4から明らかなように、比較例の健康毛に対しては、分子内にアミノ基とカルボキシル基を持つα-アミノ酸からなるタンパク質、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物において、冷水処理後直径及び洗浄処理後直径とも全て前述の判定基準でのロッドの直径の5倍以上の直径である為、極めてウェーブ形成力、保持力が弱いことがわかる。また、比較例41の水では、洗浄処理後には直毛に戻っていて、ウェーブ形成が見られなかった為に測定不可とした。
【0069】
比較例42、43のチオグリコール酸のパーマ剤、システイン系のパーマ剤は還元・酸化反応でかけるパーマ剤であるので、健康毛に普通にパーマがかかっているか或いは弱いパーマがかかっていた。
【0070】
又、表1から明らかなように、通常の損傷毛に対しては、ロッド径の2.32倍から4.18倍の結果で、パーマがかかっていることがわかる。比較例1の水では、ウェーブ形成力が弱く、極めて保持力が弱いことがわかる。比較例2、3のチオグリコール酸のパーマ剤、システイン系のパーマ剤では、上述のように、健康毛ではパーマが弱く、軽度の損傷毛からある程度の損傷毛までは、パーマのかかり具合が次第に強くなるので、強いパーマがかかっている。しかし、還元剤及び酸化剤の使用により、頭髪にダメージを与え、より損傷の程度がひどくなっていた。
【0071】
又、表2から明らかなように、超損傷毛に対しては、ロッド径の2.02倍から2.96倍の結果で、パーマがかかっていることがわかる。比較例4の水では、ウェーブ形成力が弱く、極めて保持力が弱いことがわかる。比較例2、3のチオグリコール酸のパーマ剤、システイン系のパーマ剤では、上述のように、超損傷毛の場合には、パーマが全くかからず、還元剤及び酸化剤の使用により、頭髪にダメージを与え、毛髪がとけてしまい測定が不能であった。
【0072】
又、表3から明らかなように、合成タンパク質繊維に対しては、ロッド径の2.3倍から3.56倍の結果で、パーマがかかっていることがわかる。比較例7の水では、ウェーブ形成力が弱く、保持力が極めて弱いことがわかる。比較例8、9のチオグリコール酸のパーマ剤、システイン系のパーマ剤では、ロッド径の3.63倍、3.69倍の結果で、緩いパーマがかかったが、本発明の実施例のほうがパーマのかかり、保持力が高いことがわかる。
【0073】
上記結果から、通常の損傷毛、超損傷毛、合成タンパク質繊維のいずれに対しても、加水分解ケラチン水溶液でのカールの直径は著しく小さい結果になり、よりウェーブ形成力、保持力に優れることがわかった。
【0074】
表1から4でのテストでは、数平均分子量400の加水分解ケラチンの水溶液を使用したが、化粧品原料として市販されている加水分解ケラチンには、数平均分子量400、1,000、4,000、10,000、30,000等様々な分子量があり、また粉末の加水分解ケラチン末というものも存在する。そこで、ウェーブ形成力に優れた数平均分子量を調べる為、数平均分子量400、1,000、4,000、10,000、30,000加水分解ケラチンに対して数平均分子量の違いによるテストを実施した。その結果を表5から7に示す。
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
【表7】

【0078】
以上の結果により、通常の損傷毛及び超損傷毛に対しては、剥離しているとはいえ毛小皮が存在する為と思われるが、数平均分子量400の加水分解ケラチン水溶液にて極めて小さいカールの直径が得られ、数平均分子量が低い程、よりウェーブ形成力、保持力に優れることがわかった。また、合成タンパク質繊維では、人毛の損傷毛と異なり、人毛及び羊毛に存在する毛小皮(キューティクル)が構造上存在しない為と思われるが、分子量に係わらず浸透しやすい。全ての数平均分子量において略均一に形成力、保持力に優れることがわかった。
【0079】
また、上記実施例においては、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物が20重量%、残部を精製水で調製した純度20%水溶液でテストを行なったが、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物の好ましい配合量を確認するため、配合量の違いによるウェーブ形成力の違いを調べた。尚、比較例として、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物を含有しない精製水のみの純度0%水溶液でもテストした。
【0080】
先ず、数平均分子量400の加水分解ケラチンの配合量を変化させ、残分は精製水で調製したそれぞれのウェーブ形成剤を用い、上述テストと同一の方法、条件で、通常の損傷毛、超損傷毛、合成タンパク質繊維の夫々にテストをした。結果を表8に示す。
【0081】
同様のテストを数平均分子量4,000の加水分解コラーゲンで行なった結果を表9に、加水分解コメタンパクで行なった結果を表10に、イソステアロイル加水分解シルクで行なった結果を表11に、ココイルグルタミン酸TEAで行なった結果を表12に、カチオン化加水分解ダイズタンパクで行なった結果を表13に、ヒドロキシプロピルトリモ二ウム加水分解ケラチンで行なった結果を表14に、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ケラチンで行なった結果を表15に示す。
【0082】
【表8】

【0083】
【表9】

【0084】
【表10】

【0085】
【表11】

【0086】
【表12】

【0087】
【表13】

【0088】
【表14】

【0089】
【表15】

【0090】
以上の結果から、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物、具体的には、α‐アミノ酸からなるタンパク質、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物又は分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物を含有量に限定されることなく、1重量%以上含有することにより、パーマネントウェーブがかかることがわかる。
【0091】
表8に示す加水分解ケラチンの場合、損傷毛では、特に6重量%(純度6%水溶液)以上の配合で、超損傷毛では、特に2重量%以上の配合で、合成タンパク質繊維では、特に6重量%以上の配合で、洗浄処理後直径が4倍以内と、カール形成、保持力に優れていることがわかる。
【0092】
表9に示す加水分解コラーゲンの場合、損傷毛では、特に7重量%以上の配合で、超損傷毛では、特に2重量%以上の配合で、合成タンパク質繊維では、特に4重量%以上の配合で、洗浄処理後直径が4倍以内と、カール形成、保持力に優れていることがわかる。
【0093】
表10に示す加水分解コメタンパクの場合、損傷毛では、特に7重量%以上の配合で、超損傷毛では、特に2重量%以上の配合で、合成タンパク質繊維では、特に6重量%以上の配合で、洗浄処理後直径が4倍以内と、カール形成、保持力に優れていることがわかる。
【0094】
表11に示すイソステアロイル加水分解シルクの場合、損傷毛では、特に8重量%以上の配合で、超損傷毛では、特に3重量%以上の配合で、合成タンパク質繊維では、特に7重量%以上の配合で、洗浄処理後直径が4倍以内と、カール形成、保持力に優れていることがわかる。
【0095】
表12に示すココイルグルタミン酸TEAの場合、損傷毛では、特に8重量%以上の配合で、超損傷毛では、特に3重量%以上の配合で、合成タンパク質繊維では、特に7重量%以上の配合で、洗浄処理後直径が4倍以内と、カール形成、保持力に優れていることがわかる。
【0096】
表13に示すカチオン化加水分解ダイズタンパクの場合、損傷毛では、特に7重量%以上の配合で、超損傷毛では、特に4重量%以上の配合で、合成タンパク質繊維では、特に5重量%以上の配合で、洗浄処理後直径が4倍以内と、カール形成、保持力に優れていることがわかる。
【0097】
表14に示すヒドロキシプロピルトリモ二ウム加水分解ケラチンの場合、損傷毛では、特に7重量%以上の配合で、超損傷毛では、特に3重量%以上の配合で、合成タンパク質繊維では、特に4重量%以上の配合で、洗浄処理後直径が4倍以内と、カール形成、保持力に優れていることがわかる。
【0098】
表15に示す(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ケラチンの場合、損傷毛では、特に7重量%以上の配合で、超損傷毛では、特に2重量%以上の配合で、合成タンパク質繊維では、特に7重量%以上の配合で、洗浄処理後直径が4倍以内と、カール形成、保持力に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にα‐アミノ酸を有する化合物を含有することを特徴とする人の損傷毛用ウェーブ形成剤。
【請求項2】
分子内にα‐アミノ酸を有する化合物と水からなる、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物の水溶液で構成されることを特徴とする請求項1に記載の人の損傷毛用ウェーブ形成剤。
【請求項3】
分子内にα‐アミノ酸を有する化合物を含有することを特徴とする合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤。
【請求項4】
分子内にα‐アミノ酸を有する化合物と水からなる、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物の水溶液で構成されることを特徴とする請求項3に記載の合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤。
【請求項5】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸からなるタンパク質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の人の損傷毛用ウェーブ形成剤。
【請求項6】
前記α‐アミノ酸からなるタンパク質は、加水分解ケラチン、加水分解卵白、加水分解アーモンドタンパク、加水分解アクチン、加水分解エラスチン、加水分解カゼイン、加水分解カラスムギタンパク、加水分解コムギタンパク、加水分解コメタンパク、加水分解エンドウタンパク、加水分解コメヌカタンパク、加水分解コラーゲン、加水分解コンキオリン、加水分解シルク、加水分解シロバナルーピンタンパク、加水分解ダイズタンパク、加水分解トウモロコシタンパク、加水分解乳タンパク、加水分解ハチミツタンパク、加水分解ヘーゼルナッツタンパク、加水分解ホホバタンパク、加水分解野菜タンパク、加水分解ローヤルゼリータンパク、カラスムギ穀粒タンパク、牛乳糖タンパク、ケラチン、コムギグルテン、コムギタンパク、コラーゲン、シルク、水溶性エラスチン、水溶性コラーゲン、水溶性プロテオグリカン、セリシン、ダイズタンパク、糖タンパク、トリペプチド、乳タンパク、フィブロイン、ヘキサペプチド、ペンタペプチド、ホエイタンパク、加水分解ブラジルナッツタンパクから選択される1種以上のタンパク質であることを特徴とする請求項5記載の人の損傷毛用ウェーブ形成剤。
【請求項7】
前記α‐アミノ酸からなるタンパク質の数平均分子量が400〜1,000であることを特徴とする請求項5又は6に記載の人の損傷毛用ウェーブ形成剤。
【請求項8】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸からなるタンパク質であることを特徴とする請求項3又は4に記載の合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤。
【請求項9】
前記α‐アミノ酸からなるタンパク質の数平均分子量が400〜30,000であることを特徴とする請求項8に記載の合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤。
【請求項10】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の人の損傷毛用ウェーブ形成剤。
【請求項11】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物であることを特徴とする請求項3又は4に記載の合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤。
【請求項12】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の人の損傷毛用ウェーブ形成剤。
【請求項13】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物であることを特徴とする請求項3又は4に記載の合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤。
【請求項14】
前記人の損傷毛用又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤には、基材、賦形剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、溶剤、アルカリ剤、pH調整剤、粘度調整剤、消泡剤、着香剤、殺菌剤、着色剤、酸化防止剤、安定剤、金属封鎖剤、防腐剤、湿潤剤、毛髪保護剤、帯電防止剤、香料、防黴剤、懸濁剤、増粘剤のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1から13のうちいずれか1項に記載の人の損傷毛用又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤。
【請求項15】
分子内にα‐アミノ酸を有する化合物を含有する人の損傷毛用ウェーブ形成剤を、人の損傷毛に塗布する工程を備えることを特徴とする人の損傷毛用ウェーブ形成方法。
【請求項16】
前記人の損傷毛用ウェーブ形成剤は、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物と水で調製した水溶液であることを特徴とする請求項15に記載の人の損傷毛用ウェーブ形成方法。
【請求項17】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸からなるタンパク質であることを特徴とする請求項15又は16に記載の人の損傷毛用ウェーブ形成方法。
【請求項18】
前記α‐アミノ酸からなるタンパク質は、加水分解ケラチン、加水分解卵白、加水分解アーモンドタンパク、加水分解アクチン、加水分解エラスチン、加水分解カゼイン、加水分解カラスムギタンパク、加水分解コムギタンパク、加水分解コメタンパク、加水分解エンドウタンパク、加水分解コメヌカタンパク、加水分解コラーゲン、加水分解コンキオリン、加水分解シルク、加水分解シロバナルーピンタンパク、加水分解ダイズタンパク、加水分解トウモロコシタンパク、加水分解乳タンパク、加水分解ハチミツタンパク、加水分解ヘーゼルナッツタンパク、加水分解ホホバタンパク、加水分解野菜タンパク、加水分解ローヤルゼリータンパク、カラスムギ穀粒タンパク、牛乳糖タンパク、ケラチン、コムギグルテン、コムギタンパク、コラーゲン、シルク、水溶性エラスチン、水溶性コラーゲン、水溶性プロテオグリカン、セリシン、ダイズタンパク、糖タンパク、トリペプチド、乳タンパク、フィブロイン、ヘキサペプチド、ペンタペプチド、ホエイタンパク、加水分解ブラジルナッツタンパクから選択される1種以上のタンパク質であることを特徴とする請求項17記載の人の損傷毛用ウェーブ形成方法。
【請求項19】
前記タンパク質の数平均分子量が400〜1,000であることを特徴とする請求項17又は18に記載の人の損傷毛用ウェーブ形成方法。
【請求項20】
分子内にα‐アミノ酸を有する化合物を含有する合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤を、合成タンパク質繊維に塗布する工程を備えることを特徴とする合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法。
【請求項21】
前記合成タンパク質繊維用ウェーブ形成剤は、分子内にα‐アミノ酸を有する化合物と水で調製した水溶液であることを特徴とする請求項20に記載の合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法。
【請求項22】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸からなるタンパク質であることを特徴とする請求項20又は21に記載の合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法。
【請求項23】
前記タンパク質は数平均分子量が400〜30,000であることを特徴とする請求項22に記載の合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法。
【請求項24】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物であることを特徴とする請求項15又は16に記載の人の損傷毛用ウェーブ形成方法。
【請求項25】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、α‐アミノ酸と炭化水素が結合した化合物であることを特徴とする請求項20又は21に記載の合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法。
【請求項26】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物であることを特徴とする請求項15又は16に記載の人の損傷毛用ウェーブ形成方法。
【請求項27】
前記分子内にα‐アミノ酸を有する化合物は、分子内にα‐アミノ酸同士のぺプチド結合とケイ素原子を有する半合成高分子化合物であることを特徴とする請求項20又は21に記載の合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法。
【請求項28】
前記水溶液には、基材、賦形剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、溶剤、アルカリ剤、pH調整剤、粘度調整剤、消泡剤、着香剤、殺菌剤、着色剤、酸化防止剤、安定剤、金属封鎖剤、防腐剤、湿潤剤、毛髪保護剤、帯電防止剤、香料、防黴剤、懸濁剤、増粘剤のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項15から27のうちいずれか1項に記載の人の損傷毛用又は合成タンパク質繊維用ウェーブ形成方法。

【公開番号】特開2009−190985(P2009−190985A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30880(P2008−30880)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(502083185)株式会社 ソワン (1)
【Fターム(参考)】