説明

人体検知センサー付き小型空気清浄機

【課題】トイレ等の小部屋に電源コードを延設する必要がなく、また電源コンセントがないトイレ等の小部屋でも、安全かつ便利に使用できる人体検知センサー付き小型空気清浄機を提供する。
【解決手段】3大臭気をワンパス(一回通し)で効率よく吸着分解し、消臭効果の持続する空気清浄ユニットを有し、人体検知センサーからの信号によって、内蔵した乾電池で断続的に駆動する送風装置により、電源コンセントがないトイレ等の小部屋でも使用でき、安全かつ便利に使用でき、電源寿命をより長くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源コンセントのないトイレ等の小部屋に付設されても長期に亘って使用可能な小型空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、トイレ等の小部屋の悪臭を素早く除去できる空気清浄機が開発されている。
【0003】
従来この種の空気清浄機は、特許文献1においては、光センサーが光を感知することにより、電動ファン装置に通電がなされて駆動され、エアがエア流路部に吸い込まれる。このエアは液状芳香剤容器の吸水材に吸われている液状芳香剤から芳香を強制的に蒸発させて発散させ外部に吹き出して、トイレなどの室内を芳香で満たす。これにより、トイレなどの空間のエアを効果的にリフレッシングでき、その環境を整えることができる。芳香剤に代えて脱臭剤を設ければ、トイレなどの室内の脱臭が可能とする技術が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献2においては、トイレ室に消臭装置本体を設置する。この消臭装置本体は、制御装置と、人体が存在しているか否かを検出する第一センサーとを備えている。この第一センサーの出力に基づいて、香り発生装置と、ファンと、ヒーターと、風向制御装置とを制御装置で制御する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、トイレ内に電源コードがあるために、足を引っかけたり、本体ケースに水がかかると漏電の危険があるという課題があった。また、トイレ室内に電源コンセントがない場合には室外から配線を引かないと使用できず、室外から配線した場合は、配線を引き回すため、外観を損なうとともに使い勝手が悪いという課題があった。
【0006】
また、各種センサーに連続通電して人体検知をしているが、トイレを使用していない状態であっても、連続通電しているため、電源容量の小さな機器では電源寿命が短くなるという課題があった。さらに、芳香、香り発生だけの機能で空気清浄機能は不十分であった。
【0007】
一方、空気清浄機能を向上させる技術として、特許文献3では、トイレ洗浄装置において、脱臭剤としてMn/Co/Cu及び疎水性ゼオライトの混合物を作成し、硫化水素系の臭気をMn/Co/Cu複合酸化物に吸着させ、アンモニア系の臭気を疎水性ゼオライトに吸着させ、メルカプタン系の臭気をMn/Co/Cu複合酸化物により二硫化ジメチルに転化させた後に疎水性ゼオライトに吸着させることにより、排便時の3大臭気を2種類の吸着剤によって脱臭する技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記従来技術は、トイレの悪臭に特化した消臭剤としては有用な方法ではあるが、例えば、トイレの空気清浄機に使用したときの消臭能力としては未だ満足できるものではなかった。即ちトイレの3大臭気(硫化水素の臭気、アミン系の臭気、メルカプタン系の臭気)すべてに、即効的消臭に効果はなかった。
【特許文献1】特開平5−329199号公報
【特許文献2】特開平6−254142号公報
【特許文献3】特開2002−213000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決しようとするもので、トイレ等の小部屋に電源コードを延設する必要がなく、また電源コンセントがないトイレ等の小部屋でも、安全かつ便利に使用できる人体検知センサー付き小型空気清浄機を提供することを第1の目的とする。
【0010】
第2の目的は、電源寿命をより長くした人体検知センサー付き小型空気清浄機を提供することを課題としている。
【0011】
第3の目的は、多くの悪臭ガスのうち特にトイレの3大臭気(硫化水素の臭気、アミン系の臭気、メルカプタン系の臭気)の即効的消臭に極めて有効で、かつ消臭効果の持続する人体検知センサー付き小型空気清浄機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、硫化水素、アミン系、メルカプタン系の臭気に対して即効的消臭能力を有し、消臭効果の持続する消臭フィルターを提供すべく検討を行なった結果、金属フタロシアニン錯体を、カチオン化処理をした活性炭混抄紙で構成したフィルター基材に担持させ、さらに弱アルカリ性の金属塩と、水溶性の銅化合物とを担持させることによって、3大臭気をワンパス(一回通し)で効率よく吸着分解し、消臭効果の持続する空気清浄ユニットを有し、人体検知センサーからの信号によって、内蔵した乾電池で断続的に駆動する送風装置により、電源コンセントがないトイレ等の小部屋でも使用でき、安全かつ便利に使用でき、電源寿命をより長くした人体検知センサー付き小型空気清浄機を提供できることを見出し、本発明に至ったものである。前記課題を解決するために本発明は以下の手段を提供する。
【0013】
[1]トイレ等の小部屋に付設される、吸込口と排出口を有する本体ケースと、前記本体ケース内に設けられ、前記本体ケースの吸込口及び排出口と連通した通風路と、該通風路内に設けられた空気清浄ユニットと、送風装置と、この送風装置を運転制御する制御部と、人体検知センサーを有し、さらに、前記送風装置と前記制御部に電力を供給する乾電池が前記本体ケースに内蔵され、また、前記空気清浄ユニットが活性炭混抄紙に金属フタロシアニン錯体と、弱アルカリ性の金属塩と、水溶性の銅化合物とを担持させたフィルターからなることを特徴とする人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【0014】
[2]人の存在を検出する人体検知センサーと、この人体検知センサーからの信号を受けて送風装置を運転制御する制御部を有し、この制御部は前記送風装置を断続的に駆動させることを特徴とする請求項1記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【0015】
[3]前記空気清浄ユニットにおいて、金属フタロシアニン錯体を200〜20000μg/g活性炭混抄紙に担持させたフィルターからなることを特徴とする前項1または2に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【0016】
[4]前記活性炭混抄紙は、活性炭を40〜80重量%担持させてなる活性炭混抄紙である前項1ないし3に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【0017】
[5]前記金属フタロシアニン錯体は、コバルトフタロシアニン錯体、鉄フタロシアニン錯体、マンガンフタロシアニン錯体から選ばれる1種または複数の金属フタロシアニン錯体であることに特徴のある前項1ないし4に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【0018】
[6]前記弱アルカリ性の金属塩は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれる1種または複数のPH8.0〜12.0の弱アルカリ性の金属塩であることに特徴のある前項1ないし5に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【0019】
[7]前記弱アルカリ性の金属塩を20〜500mg/g活性炭混抄紙に担持させたことに特徴のある前項1ないし6記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【0020】
[8]前記水溶性の銅化合物は、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、ポリアクリル酸銅から選ばれる1種または複数の水溶性の銅化合物であることに特徴のある前項1ないし7に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【0021】
[9]前記水溶性の銅化合物を10〜100mg/g活性炭混抄紙に担持させたことに特徴のある前項1ないし8に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【発明の効果】
【0022】
[1]の発明では、前記構成により本体ケース内の乾電池による直流電源のみの省電力で運転することができるため、トイレ等の小部屋内に交流電源のない場合にも使用可能となり、また電源コードを引き回すことがないので、安全で便利に使用できる人体検知センサー付き小型空気清浄機を提供することができる。また、常時の大きな電力消費の必要の無い、人の存在を検知する人体検知センサーにより送風装置を断続駆動することにより、送風装置の使用電力を少なくして乾電池の長寿命化を図ることができる効果のある人体検知センサー付き小型空気清浄機を提供することができる。
【0023】
さらに、金属フタロシアニン錯体と、弱アルカリ性の金属塩と、水溶性の銅化合物とを活性炭混抄紙に担持させるので、PHが7.5〜12.0の高いPH環境に保たれ、硫化水素ガスのような酸性ガスは、金属フタロシアニン錯体によって分解される。この時硫化水素ガスと金属フタロシアニン錯体が反応して生じる副生成物が、前記空気清浄ユニットの周囲のPHを下げ触媒反応を遅らせてしまうのであるが、弱アルカリ性の金属塩を担持させているので、前記副生成物を前記弱アルカリ性の金属塩が捕捉し、PHの低下を防止することから、消臭効果を持続することができる。また、水溶性の銅化合物を担持しているので、金属フタロシアニン錯体によって分解しきれなかった悪臭を化
学吸着することができ、一度前記空気清浄ユニットを通過するだけで、大部分の悪臭を除去することができ、消臭効果の持続した人体検知センサー付き小型空気清浄機とすることができる。また、アミン系の臭気は活性炭や水溶性の銅化合物に吸着させ、メルカプタン系の臭気は金属フタロシアニン錯体によって副生成物に転化させた後に活性炭に吸着させ、さらに金属フタロシアニン錯体によって分解される。
【0024】
[2]の発明では、人の存在を検出する人体検知センサーにより、人が入室した時だけ、送風装置を断続的に駆動させることにより、電源寿命をより長くし、電池交換無しに長期に渡り使用できる人体検知センサー付き小型空気清浄機とすることができる。
【0025】
[3]の発明では、金属フタロシアニン錯体を200〜20000μg/g活性炭混抄紙に担持させているので、活性炭の強力な吸着力によって吸着した臭気を、金属フタロシアニン錯体の酸化力によって消臭することができる。金属フタロシアニン錯体は、光触媒のように担持体を侵すことがなく、バインダー樹脂を介さなくても活性炭混抄紙に直接担持され、消臭剤として非常に有効である。
【0026】
[4]の発明では、前記活性炭混抄紙は活性炭を40〜80重量%担持させてあるので十分な吸着効果が得られる。
【0027】
[5]の発明では、前記金属フタロシアニン錯体が、コバルトフタロシアニン錯体、鉄フタロシアニン錯体、マンガンフタロシアニン錯体から選ばれる1種または複数の金属フタロシアニン錯体であるので、十分な消臭効果が得られる。
【0028】
[6]の発明では、前記弱アルカリ性の金属塩は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれる1種または複数のPH8.0〜12.0の弱アルカリ性金属塩であるので、硫化水素ガスと金属フタロシアニン錯体が反応した時に生じる副生成物を前記弱アルカリ性の金属塩が捕捉し、前記空気清浄ユニット周囲のPH値が下がるのを防ぐことができる。
【0029】
[7]の発明では、前記弱アルカリ性の金属塩を20〜500mg/g活性炭混抄紙に担持させているので、前記空気清浄ユニット周囲のPH値が下がるのを防ぐことができ、十分な消臭効果を持続することができる。
【0030】
[8]の発明では、前記水溶性の銅化合物は、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、ポリアクリル酸銅から選ばれる1種または複数の水溶性の銅化合物であるので、金属フタロシアニン錯体によって分解しきれなかった硫化水素やメルカプタン系の悪臭を化学吸着することができ、悪臭を一度前記空気清浄ユニットに通過させるだけで、大部分の悪臭を除去することができ、消臭効果の持続した人体検知センサー付き小型空気清浄機とすることができる。
【0031】
[9]の発明では、前記水溶性の銅化合物を10〜100mg/g活性炭混抄紙に担持させているので、フィルター基材に対して大きな空間速度(SV値)で、硫化水素やメルカプタン系の悪臭をワンパス条件で作用させた場合でも、効率よく消臭ことができる。(SV値は、単位時間当たりにフィルター材体積の何倍相当分の悪臭に作用処理しているかを示す値で、SV値が大きい程、処理量すなわち送風装置で送られてくる悪臭を含んだ空気の量が多いことになる。)
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の人体検知センサー付き小型空気清浄機(1)は、図1に示すように、本体ケース(2)上部に吸込口(3)、下部に排出口(4)を設け、吸込口(3)と排出口(4)を連通する通風路(5)が本体ケース(2)と略平行に備えられている。また、前記通風路(5)内の排出口(4)手前に空気清浄ユニット(6)と、送風装置(7)と、該送風装置を運転制御する制御部(8)が配置され、さらに本体ケース(2)には電装装置として、単数または複数の乾電池よりなる直流電源(9)が内蔵されている。また前記本体ケース(2)表面には人体を検知するための人体検知センサー(10)が表面に付設している。
【0033】
上記構成により、人体検知センサー(9)が人体を検知したときは制御部(7)が働いて、送風装置(6)が駆動し、通風路(5)および吸込口(3)を通じて便器内の悪臭を本体ケース(2)内に吸引し、空気清浄ユニット(6)により悪臭を浄化し、排出口(4)より浄化された空気を吐出する。
【0034】
また、上記構成により本体ケース(2)内の乾電池による直流電源のみの省電力で運転することができるため、トイレ等の小部屋内に交流電源のない場合にも使用可能となり、また電源コードを引き回すことがないので、安全で便利に使用できる人体検知センサー付き小型空気清浄機(1)を提供することができる。また、人の存在を検出する人体検知センサーにより、人が入室した時だけ、送風装置を断続的に駆動させることにより、電源寿命をより長くし、電池交換無しに長期に渡り使用できる人体検知センサー付き小型空気清浄機(1)とすることができる。
【0035】
また、交流電源が供給可能な場所では、制御部(7)を交流電源に対応可能な物に交換し、交流電源で稼動させることも可能である。交流電源であれば、電池の交換が不要で、さらに長期に渡り使用できる人体検知センサー付き小型空気清浄機(1)とすることができる。
【0036】
本発明における空気清浄ユニット(6)は活性炭混抄紙に金属フタロシアニン錯体と、弱アルカリ性の金属塩と、水溶性の銅化合物とを担持させたフィルターからなり、前記活性炭混抄紙は通常の湿式抄紙法により製造できる。例えば活性炭と天然パルプを水に添加し、水スラリーを作成する。そのスラリーを攪拌しながら所定の固形分濃度に調整し、その後カチオン系ポリマー又はアニオン系ポリマーを添加し、得られた凝集体水分散液を抄紙機を使い湿式抄紙法によりシート化し、乾燥処理を行ない活性炭混抄紙を得る。この活性炭混抄紙をコルゲート加工機を用いハニカム形状に加工しフィルターの形状にする。ハニカム形状にすることにより、空気の圧力損失も小さく、省電力で運転することができる。例えば、脱臭運転時、従来の100V交流電源を使用するものでは約8VAの電力に対して、本実施例では1VA以下と大幅に低減している。
【0037】
この活性炭混抄紙によるハニカムフィルターは活性炭の強い吸着力によって悪臭ガスの吸着体の役割をなすものである。本発明に使用する活性炭としては、椰子殻活性炭、石油ピッチ系球状活性炭、活性炭素繊維、木質系活性炭等の活性炭系炭素多孔質体が、吸着比表面積が非常に高いことから好ましく用いられる。中でも、椰子殻活性炭が好ましい。また、この活性炭混抄紙に使用する繊維は天然パルプ、ポリオレフィン及びアクリル繊維などのフィブリル化繊維を用いればよいが、金属フタロシアニン錯体の担持のし易さからも天然パルプが好ましい。
【0038】
活性炭混抄紙における活性炭の担持量は、40〜80重量%担持させるのが好ましい。40重量%を下回る活性炭の担持量では、硫化水素ガスの十分な吸着量とならない。また、80重量%を上回って活性炭を担持させても、十分に大きな吸着量とはならず、活性炭混抄紙の強度も得られず好ましくない。
【0039】
本発明の空気清浄ユニット(6)に使われる金属フタロシアニン錯体は、特に限定されるものではないが、例えば鉄フタロシアニン錯体、コバルトフタロシアニン錯体、マンガンフタロシアニン錯体が挙げられる。これらの中でもコバルトフタロシアニン錯体、または鉄フタロシアニン錯体を用いるのが好ましい。前記コバルトフタロシアニン錯体としては、特に限定されるものではないが、例えばコバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウム、コバルトフタロシアニンオクタカルボン酸、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸等が挙げられる。前記鉄フタロシアニン錯体としては、鉄フタロシアニンテトラカルボン酸、鉄フタロシアニンオクタカルボン酸等が挙げられる。
【0040】
金属フタロシアニン錯体を活性炭混抄紙に担持する前に、活性炭混抄紙をカチオン化処理することが望ましい。これは、金属フタロシアニン錯体の担持量を増大するための処理で、カチオン化処理は活性炭混抄紙の化学構造中にカチオン基を導入付与し得るものであればどのような処理であっても良いが、中でも4級アンモニウム塩によりカチオン化処理が行われるのが好ましい。この場合には、金属フタロシアニン錯体の担持量をより増大させることができる利点がある。前記4級アンモニウム塩としては、例えば3―クロロ―2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、3―クロロ―2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの縮合ポリマー等が挙げられる。
【0041】
金属フタロシアニン錯体を活性炭混抄紙に担持する量としては、200〜20000μg/g活性炭混抄紙に担持させることが好ましい。200μg/gを下回ると、悪臭ガスの分解能力が劣るものとなり、20000μg/gを上回るものとしても、それ以上の悪臭ガスの分解能力の向上は得られない。より好ましくは、400〜2000μg/gである。
【0042】
前記カチオン化処理された活性炭混抄紙によるハニカムフィルターを水洗し乾燥したあと、金属フタロシアニン錯体と水酸化ナトリウムとを含んだアルカリ水溶液に含浸させ、水洗し乾燥して高いPH環境のフィルターを得る。この時のPH値は7.5〜12.0が好ましく、PH値が7.5を下回ると硫化水素やメルカプタン等の酸性ガスのプロトン解離が起こりにくくなり(下記可逆反応が左に傾き)、金属フタロシアニン錯体と触媒反応をする化学種の生成速度が著しく低下することになる。また、PH値が12.0を上回ると金属フタロシアニン錯体が分解して触媒としての作用が失われる。より好ましいPH値は8.0〜11.5である。
【化1】

【0043】
次に前記の高いPH環境のフィルターを弱アルカリ性の金属塩水溶液と水溶性の銅化合物の水溶液に含浸させ、乾燥して本発明の空気清浄ユニット(6)を得る。該弱アルカリ性の金属塩は特に限定されるものではないが、水に対する溶解度が高いものが望ましい。水酸化カルシウムや炭酸マグネシウムなどは水に対する溶解度が非常に小さいことから、活性炭混抄紙への担持量も必然的に少なくなり好ましくない。また、弱アルカリ性の金属塩は不揮発性の弱酸とアルカリ金属の化合物であることが望ましい。このことは、硫化水素と金属フタロシアニン錯体が触媒反応をする際に発生する副生成物は酸性の化学種であることから、該副生成物と前記弱アルカリ性金属塩が吸着反応をしたときに弱酸が遊離し、該弱酸が悪臭となるような揮発性の金属塩、例えば酢酸ナトリウムなどは好ましくない。一方炭酸のアルカリ金属塩は、遊離した炭酸が速やかに水とニ酸化炭素に分解されるので好ましい。また、不揮発性であるが価数の高い弱酸のアルカリ金属塩、例えばクエン酸三ナトリウムは、1分子あたりに副生成物を吸着できる量が多いので好ましい。弱アルカリ性の金属塩水溶液は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれる1種または複数の弱アルカリ性の金属塩を水に溶解させたものが好ましい。
【0044】
弱アルカリ性の金属塩の担持量は20〜500mg/g活性炭混抄紙とするのがよい。20mg/gを下回ると硫化水素ガスを消臭する繰返し耐久性が低下するので好ましくない。500mg/gを上回って担持すると、活性炭の細孔が塞がれてしまい吸着性能が低下したり、金属フタロシアニン錯体の周囲を弱アルカリ性の金属塩が覆ってしまい触媒作用が低下することになり好ましくない。より好ましくは50〜200mg/gとするのがよい。弱アルカリ性の金属塩のPH値は8.0〜12.0が好ましい。PH値が8.0より低いと副生成物との反応性が低下するので好ましくない。また、PH値が12
.0より高いと金属フタロシアニン錯体を分解するので好ましくない。
【0045】
また、水溶性の銅化合物としては、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、ポリアクリル酸銅から選ばれる1種または複数の水溶性の銅化合物が好ましい。水溶性の銅化合物は、硫化水素やメルカプタン系の悪臭を強力に化学吸着することができ、悪臭を一度該フィルターに通過させるだけで、大部分の悪臭を除去することができる。水溶性の銅化合物の担持量は、10〜100mg/g活性炭混抄紙が好適である。水溶性の銅化合物は、フィルター基材に対して大きな空間速度(SV値)を形成し、硫化水素やメルカプタン系の悪臭をワンパス条件で作用させた場合でも、効率よく消臭ことができる。本発明では、SV値は100,000〜250,000[H−1]が好適である。
【0046】
また、本発明の空気清浄ユニット(6)において、本発明の効果を損なわない範囲で、前記活性炭混抄紙にさらに他の消臭剤や臭気吸着剤や添加剤等を担持せしめた構成を採用しても良い。他の消臭剤としては例えばヒドラジン誘導体やポリビニルアミン化合物を例示できる。また、臭気吸着剤としては、活性炭の他に、ゼオライト等の多孔質無機物質を例示できる。
【0047】
次ぎに実施例により、本発明を具体的に説明する。なお実施例における硫化水素ガス、アミン系、メルカプタン系のガスの消臭性能の測定は次のように行った。
【0048】
《硫化水素ガス消臭性能》空気清浄ユニットを、本体ケースに固定し、毎分135リットル(SV値=180,000H−1)の通気を行なう送風装置を有する本体ケースの吸込口から、濃度が5ppmの硫化水素ガスを断続的にワンパス条件で注入し、一分後の排出口から流出する硫化水素ガスの濃度を測定し、この測定値を比較して硫化水素ガスの除去率(%)を算出した。この試験を4時間連続して性能維持試験とした。
【0049】
《アミン系(アンモニア)ガス消臭性能》アンモニアガスの濃度を5ppmとした以外は、硫化水素ガス消臭性能と同様にして、消臭性能と性能維持試験とした。
【0050】
《メルカプタン系(メチルメルカプタン)ガス消臭性能》メチルメルカプタンガスの濃度を5ppmとした以外は、硫化水素ガス消臭性能と同様にして、消臭性能と性能維持試験とした。
【実施例】
【0051】
<実施例1>本体ケースとして、上部に吸込口、下部に排出口を設け、吸込口と排出口を連通する通風路が本体ケースと略平行に備えられ、また、前記通風路内の排出口手前に送風装置と、該送風装置を運転制御する制御部が配置され、複数の乾電池よりなる直流電源が内蔵され、また本体ケース表面には人体を検知するための人体検知センサーが表面に付設しているケースを用意した。次に、椰子殻活性炭70重量部と天然パルプ30重量部を水200重量部に添加し、水スラリーを作成する。得られた凝集体水分散液を抄紙機を使い湿式抄紙法によりシート化し、乾燥処理を行ない活性炭混抄紙を得る。その後得られた活性炭混抄紙を3―クロロ―2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液にてカチオン化処理をし乾燥した。次に、この活性炭混抄紙をコルゲート加工機を用いハニカム形状に加工しフィルターの形状にした。次に0.5重量%のコバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムと、10g/lの炭酸カリウムと、2.5g/lの硫酸銅水溶液に含浸させ、水洗し乾燥してPH10.0の空気清浄ユニットを得た。この時コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムの活性炭混抄紙への担持量は400μg/gで、炭酸カリウムの活性炭混抄紙への担持量は200mg/g、硫酸銅の活性炭混抄紙への担持量は50mg/gであった。この空気清浄ユニットを前記本体ケースの通風路内の送風装置手前に設置し、人体検知センサー付き小型空気清浄機を得た。上記の硫化水素、アミン系、メルカプタン系のガスの消臭性能の測定をおこない、試験開始直後、2時間後、4時間後のガス除去率を表に記載した。
【0052】
<実施例2>次に、実施例1において、0.5重量%コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムと20g/lの炭酸ナトリウムと5g/lのポリアクリル酸銅水溶液に含浸させてPH12.0のフィルターを得た以外は実施例1と同様にして、人体検知センサー付き小型空気清浄機を得た。コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムの活性炭混抄紙への担持量は400μg/gで、炭酸ナトリウムの活性炭混抄紙への担持量は400mg/g、ポリアクリル酸銅の活性炭混抄紙への担持量は100mg/gであった。
【0053】
<実施例3>次に、実施例1において、1.5重量%鉄フタロシアニンテトラカルボン酸と、5g/lの炭酸水素ナトリウムと、5g/lの硫酸銅水溶液に含浸させてPH10.0のフィルターを得た以外は実施例1と同様にして、人体検知センサー付き小型空気清浄機を得た。鉄フタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムの活性炭混抄紙への担持量は1200μg/gで、炭酸水素ナトリウムと硫酸銅の活性炭混抄紙への担持量は100mg/gあった。
【0054】
<実施例4>次に、実施例1において、椰子殻活性炭30重量部とした以外は実施例1と同様にして、人体検知センサー付き小型空気清浄機を得た。椰子殻活性炭の担持量は50重量%であった。炭酸水素ナトリウムの活性炭混抄紙への担持量は200mg/g、硫酸銅の活性炭混抄紙への担持量は50mg/gであった。
【0055】
<実施例5> 次に、実施例1において、20g/lの炭酸カリウム水溶液に含浸させ、乾燥して空気清浄ユニットを作成した以外は実施例1と同様にして、人体検知センサー付き小型空気清浄機を得た。この時炭酸カリウムの活性炭混抄紙への担持量は400mg/gであった。
【0056】
<比較例1>実施例1において、50g/lの炭酸カリウム水溶液に含浸させずに空気清浄ユニットを得た以外は実施例1と同様にして、人体検知センサー付き小型空気清浄機を得た。
【0057】
<比較例2>実施例1において、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムを担持させないで空気清浄ユニットとした以外は実施例1と同様にして、人体検知センサー付き小型空気清浄機を得た。
【0058】
<比較例3>実施例1において、硫酸銅を担持させないで空気清浄ユニットとした以外は実施例1と同様にして、人体検知センサー付き小型空気清浄機を得た。
【0059】
実施例1において、活性炭混抄紙へ活性炭を担持しなかった以外は実施例1と同様にして、人体検知センサー付き小型空気清浄機を得た。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から解るように、活性炭、金属フタロシアニン錯体、弱アルカリ性の金属塩、水溶性の銅化合物を担持させたフィルターは、3大臭気をワンパス(一回通し)で効率よく吸着分解し、消臭効果の持続するトイレ用消臭フィルターとして有効なものであるが、比較例1〜4のように活性炭、金属フタロシアニン錯体、弱アルカリ性の金属塩、水溶性の銅化合物のうち一つでも欠くと、トイレ用消臭フィルターとして満足のいくものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明に係る、人体検知センサー付き小型空気清浄機の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・人体検知センサー付き小型空気清浄機 2・・・本体ケース 3・・・吸込口 4・・・排出口 5・・・通風路6・・・空気清浄ユニット7・・・送風装置8・・・制御部9・・・直流電源10・・・人体検知センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ等の小部屋に付設される、吸込口と排出口を有する本体ケースと、前記本体ケース内に設けられ、前記本体ケースの吸込口及び排出口と連通した通風路と、該通風路内に設けられた空気清浄ユニットと、送風装置と、この送風装置を運転制御する制御部と、人体検知センサーを有し、さらに、前記送風装置と前記制御部に電力を供給する乾電池が前記本体ケースに内蔵され、また、前記空気清浄ユニットが活性炭混抄紙に金属フタロシアニン錯体と、弱アルカリ性の金属塩と、水溶性の銅化合物とを担持させたフィルターからなることを特徴とする人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【請求項2】
人の存在を検出する人体検知センサーと、この人体検知センサーからの信号を受けて送風装置を運転制御する制御部を有し、この制御部は前記送風装置を断続的に駆動させることを特徴とする請求項1記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【請求項3】
前記空気清浄ユニットにおいて、金属フタロシアニン錯体を200〜20000μg/g活性炭混抄紙に担持させたフィルターからなることを特徴とする請求項1または2に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【請求項4】
前記活性炭混抄紙は、活性炭を40〜80重量%担持させてなる活性炭混抄紙である請求項1ないし3に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【請求項5】
前記金属フタロシアニン錯体は、コバルトフタロシアニン錯体、鉄フタロシアニン錯体、マンガンフタロシアニン錯体から選ばれる1種または複数の金属フタロシアニン錯体であることに特徴のある請求項1ないし4に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【請求項6】
前記弱アルカリ性の金属塩は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれる1種または複数のPH8.0〜12.0の弱アルカリ性の金属塩であることに特徴のある請求項1ないし5に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【請求項7】
前記弱アルカリ性の金属塩を20〜500mg/g活性炭混抄紙に担持させたことに特徴のある請求項1ないし6記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【請求項8】
前記水溶性の銅化合物は、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、ポリアクリル酸銅から選ばれる1種または複数の水溶性の銅化合物であることに特徴のある請求項1ないし7に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。
【請求項9】
前記水溶性の銅化合物を10〜100mg/g活性炭混抄紙に担持させたことに特徴のある請求項1ないし8に記載の人体検知センサー付き小型空気清浄機。

【図1】
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【公開番号】特開2012−63046(P2012−63046A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205461(P2010−205461)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】