説明

人参の新鮮度を保持する方法

本発明の人参の新鮮度を保持する方法は、環境保護を考慮し、品質変異、成分の消失、保存可能時間、環境保護、健康面での負の問題点を解消するものである。
人参の新鮮度を保持する方法は、人参を保存するための準備工程と、保存すべき人参の選別工程と、保存箱に前記選別した人参を収納する箱入れ工程と、前記保存箱を冷凍する冷凍保存工程と、冷凍した保存箱を解凍する解凍工程と、解凍した保存箱から人参を取り出し、良品の人参を選別する(分ける)工程とを含む。本発明は、新鮮度を保持する技術分野の基礎となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜の保存方法、特に、人参を冷凍及び解凍して新鮮度を保持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人参は中国の伝統的な農産物であり、従来から年に一度の収穫時期に限り、赤人参と白人参の二種類の乾燥品として販売されている。
近年では、保険衛生面等の要求に応じて科学技術が進歩し、新鮮な人参が市場に流通するようになり、消費者からも評価されるようになった。また、新鮮な人参は国内外に巨大な潜在マーケットが存在し、需要に応じて様々な生産品が作られるようになった。このように、20世紀末から人参の新鮮度を保持するという新たな技術開発が始まった。
【0003】
従来の人参の新鮮度を保持する方法として、1.酒漬け、2.燻す、3.防腐剤に漬ける、4.缶詰めにする、5.袋に入れて低温保存、6.それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0004】
1.酒漬けとは、新鮮な人参を白酒に漬けるという方法であるが、この方法は酒に溶けた有効成分のみ保存できるが、それ以外の有効成分は保存できず、繊維とともに廃棄していた。
2.燻すとは、硫黄の煙で人参を燻すという方法であるが、この方法は人参の内部の成分が化学変化を起こし、これを食べると健康を害する虞があるため、国が禁止した。
3.防腐剤に漬ける方法とは、ソルビン酸(sorbic acid)等の防腐剤溶液に漬ける方法で、防腐剤の量が少なければ人参を長時間保存することができない。一方、防腐剤の量を多くすると健康を害する虞があるため、防腐剤の量を国家が規制している。さらに先進国と地域は、防腐剤が入った人参の輸入を禁じている。
4.缶詰めにする方法は、20世紀、1980年代頃香港の市場で販売されたことがあるが、人参を高温処理する工程で人参の外観の形体及び色が変わり、また砂糖水に漬ける工程で人参の特色がなくなることから、この方法で得られた人参は消費者の満足のいくものではなかった。恐らくこの方法を用いた商品はニーズがないため、商品化されることはないであろう。
5.袋に入れて低温保存する方法では、保存期間が短いので運送の領域及び時期が限定される、即ち、収穫後運送前に長時間保存することができず、人参の鮮度が落ちて傷み、商品価値が下がり、遠隔地に運送できないばかりか、運送時期が限定される。
6.前記方法の組み合わせによるものであり、目下のところ、市場に流通した人参の多くは、この方法を利用したものである。例えば、人参を硫黄の煙で燻して、その後酒漬けし、その後高温滅菌して袋の中に入れ、一定量の防腐剤を添加するというものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の種々の問題点を解消するためになされたものであり、市場のニーズに合わないものや禁止された伝統的手法を淘汰し、現在ある科学技術、設備、運送技術を活用することにある。また、環境保護を考慮に入れ、先進的な技術を駆使して、品質変異、成分の消失、保存可能時間、環境保護、健康面等の負の問題点を解決した人参の新鮮度を保持する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の発明は、人参を冷凍及び解凍して新鮮度を保持する方法を通じて、品質変異、成分の消失、環境保護、健康面等の負の問題点を克服し、かつ長期間新鮮度を保持し、環境保護に配慮して、健康によい人参を提供するという目的を達成し、実現するに至った。
【0007】
本発明の技術的方法は以下のようにして実現できる。
本発明の人参の新鮮度を保持する方法は、人参を保存するための準備工程と、保存すべき人参の選別工程と、保存箱に前記選別された人参を収納する箱入れ工程と、前記保存箱を冷凍する冷凍保存工程と、冷凍した保存箱を解凍する解凍工程と、解凍した保存箱から取り出した人参のうち良品の人参を選別する(分ける)工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
前記保存箱に選別工程で選別された人参を収納する箱入れ工程は以下の手順を含む。
(1)紙箱または木材箱またはプラスチック箱を用いた外箱に、薄い内容器を入れて、保存箱を形成し、
(2)前記薄い内容器に、適量の水分を含む鋸屑、草木灰、土または細かい砂利の充填材料を入れて、
(3)前記薄い内容器の底部に前記充填材料を層状に敷き詰め、該充填材料層の上に収穫したばかりの人参を載せ、人参の主根と鬚根が薄い内容器と直接触れないように10〜20mmの間隔をあけ、その隙間に充填材料を装入する。次いで、前記薄い内容器の開口部を封止し、外箱の開口部を閉鎖する。
【0009】
閉鎖した人参入り保存箱を速やかに-8℃〜-10℃の恒温冷凍室または冷凍装置に入れて冷凍保存する。冷凍保存の時間は最大360日に達する。
【0010】
次に、冷凍室若しくは冷凍装置から取り出した人参入り保存箱を3℃の恒温装置の中に入れて72時間放置した後に8℃の恒温解凍室に入れて144〜150時間放置する。または、冷凍室若しくは冷凍装置から取り出した人参入り保存箱を直接8℃の恒温解凍室に入れて168時間放置して解凍する。
【0011】
次に、解凍した保存箱から取り出した人参のうち良品の人参を選別する(分ける)工程では、低温環境の下で人参入り保存箱を開封し、保存箱に収納された人参と充填材料とを分別し、人参に付着した鋸屑、土砂等の異物を取り除き、前記異物を取り除いた人参のうち良品の人参を選別する(分ける)。
【発明の効果】
【0012】
従来技術と比較した際の本発明の効果を以下に記す。
1.本発明の人参の新鮮度を保持する方法を用いることによって、収穫時の人参の品質、形体、色及び有効成分を長期間保持することができるという優れた効果を奏し得る。また、本発明の方法を用いて保存された人参は、収穫時の新鮮度が保持される、即ち、品質が保たれ、人参の含水量及び風味が保持されるという優れた効果を奏し得る。
【0013】
2.本発明の人参の新鮮度を保持する方法を用いて保存された人参は、保存過程において、何ら汚染を受けず、したがって残留物もなく、実施するに当たり、周辺の環境を汚染することもない。
【0014】
3.また、本発明の人参の新鮮度を保持する方法は、簡単な操作方法なので実施しやすく、従来の技術を活用して需要に応えることができる。また、当該技術分野の熟練者は、独立して本発明の方法を実施することができる。さらに、本発明の方法は、コストが安価である。
【0015】
4.本発明の方法に充填材料を使用すると操作性が向上し、短時間に温度を上げることができ、また搬送の際に受ける不測の衝撃に対する抵抗力を有する。
【0016】
5.本発明の方法を用いることによって、運送の問題を解決することができる。即ち、従来の保存方法では収穫後運存前に長時間保存することができなかったため、人参の鮮度が落ちて傷み、商品価値が下がり、遠隔地に運送できないばかりか、運送時期が限定されていた。これに対して、本発明の保存方法を用いれば、長時間保存しておくことができるので、収穫した良品の人参を無駄なく商品として遠隔地に運送できるとともに運送時期が制限されず、収穫時期以外の時期にも供給を保障することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の人参の新鮮度を保持する方法は、図1に示すように、例えば、準備工程、人参選別工程、箱入れ工程、冷凍保存工程、解凍工程、選別(分ける)工程、包装工程、成品(出荷)工程により構成される。
【0018】
(1)前記準備工程では、人参を収納するための保存箱を構成する外箱として、例えば、寸法66mm×33mm×24mmの紙箱、木箱またはプラスチック箱を購入する。さらに、前記外箱の大きさに見合った、空気を通さない材質を有する薄い壁厚の内容器、例えばプラスチック製の薄い内容器を準備する。
【0019】
次に、充填材料を準備する。充填材料としては、保温性、保水性、通気性を有し、隙間を充填できるものであればよく、例えば、清潔な鋸屑、草木灰、土、細かい砂利等が挙げられる。その中でも特に鋸屑は、軽量、安価であり、運送が簡単で、経済的にも実用的にも有利であり、特に、保温性に優れている。前記充填材料は涼しい場所に置いて予め準備する。
【0020】
最後に、冷凍室と解凍室の準備をする。先ず、-8℃の恒温冷凍室を準備する。次に、3℃、8℃の恒温解凍室を準備する。冷凍室と解凍室の面積は、人参の生産量に応じて決め、倉庫内に棚を作るとよい。
【0021】
(2)人参選別工程では、収穫したばかりの人参のうち、水分を多く含み、色形がよく、傷、病気、カビ又は汚染のない良質の人参を選別する。次いで、人参の大きさによって等級を付け、速やかに箱入れ工程に進む。
【0022】
(3)箱入れ工程では、外箱の中に薄い内容器を入れて、人参の保存箱を形成し、鋸屑の水分を約45%に調整(水分を含んだ鋸屑を手で一握り持ち、しっかり握った状態で指の隙間から水が漏れない程度、又は鋸屑を握った手を広げた際に、水分を含んだ鋸屑が固まって散らばらない程度、又は地面から2尺の高さから水分を含んだ鋸屑を落とした際、該鋸屑が地面に落ちて散らばる程度)する。次に、内容器の底部に前記充填材料を層状に敷き詰め、該充填材料層の上に収穫したばかりの人参を載せる。このとき、人参の主根及び鬚根が薄い内容器と直接触れないように1cm以上の間隔を開け、その隙間に鋸屑を充填する。次いで、内容器の開口部を封止し、外箱の開口部を閉鎖する。
【0023】
(4)冷凍保存工程では、前記閉鎖した人参入り保存箱を速やかに-8℃の恒温冷凍室に入れて冷凍保存する。冷凍室は一定温度に保つことが必要であり、温度が変化すれば、人参の休眠状態に影響を及ぼし、新鮮度を保つことができないので注意を要する。また、冷凍室の温度は-10℃より低くなってはいけない。冷凍室の温度が-13℃以下になると人参は凍害を受け、解凍後に収穫時の人参に復元できなくなる虞がある。低温環境はすべての新鮮な人参に対し、一定の新鮮度を保持する効果がある。冷凍保存期間中は、-5℃〜-10℃の恒温冷凍コンテナーで運送するのがよい。
【0024】
(5)解凍工程では、解凍すべき人参入り保存箱を冷凍室から取り出して、3℃の恒温解凍室に収納し72時間放置する。次いで、8℃の恒温の解凍室に移して144時間以上放置する。サイズの小さい人参は大きい人参より解凍時間が短くてよい。また内容量の小さい保存箱は大きい保存箱よりも解凍時間が短くてよい。鋸屑を用いて充填した人参入り保存箱を解凍する場合は、鋸屑は保温効果があるので段階的に温度を上げる必要はなく、解凍すべき人参入り保存箱を冷凍室から取り出し、直接8℃の恒温解凍室に搬入し、168時間以上放置する。
【0025】
保存箱に収納した新鮮な人参を-8〜-10℃の恒温環境で一年間保存し、解凍した後の人参の外観形体及び色、品質、風味、重量は基本的に収穫時の新鮮な人参の状態を保持しており、有効成分の損失はほとんどなかった。例えば、人参サポニンの総含有量変化は、冷凍保存前4.16%であったのに対し、240日間冷凍保存後に4.11%に減じ、即ち、1.2%減少し、360日間冷凍保存後に4.03%に減じ、即ち、3.1%減少した。上記のように、冷凍室に入れた人参は随時解凍することができる。
【0026】
(6)選別(分ける)工程では、低温環境の下で外箱及び薄い内容器を開封し、人参と鋸屑を分別し、人参に付着した鋸屑、土砂等の異物をすべて取り除き、良品の人参を選別する(分ける)。次いで、選別された人参を包装し、成品(出荷)工程に進む。
【0027】
本発明は、人参の新鮮度を保つための新しい技術を開拓したものである。近年、医薬、化学工業、保健等の分野において、新鮮な人参を原料として新製品の開発が行われている。さらに、新鮮な人参は、皮膚の保護、美容、髪の保護の分野の研究開発に大いに期待されている。
【0028】
本発明の人参の新鮮度を保つ方法を利用することにより、人参を水に漬けるとか、加熱する面倒な工程を省略することができる。また、本発明により得られた新鮮な人参を、従来の乾燥品に代えて、使用することができる。このようにして得られた新鮮な人参は、健康増進に役立たせることができる。
【0029】
同時に、本発明の方法を利用することによって、人参農産業の発展を促進できる、即ち、資源を有効活用することができ、人参栽培の経済的効果が増大する。一方、消費者は経済価値のある人参を入手でき、市場の安定化が図れる。また、本発明は輸出過程において、人参が受けるであろう、あらゆる問題を解決することができる。そこで、新鮮な人参の大量輸出が可能となる。本発明を利用した人参の輸出により、外貨の獲得が可能となる。本発明は、新鮮度を保持する技術分野の基礎となった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の流れ図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人参を保存するための準備工程と、保存すべき人参の選別工程と、保存箱に前記選別された人参を収納する箱入れ工程と、前記保存箱を冷凍する冷凍保存工程と、冷凍した保存箱を解凍する解凍工程と、解凍後の保存箱から取り出した人参のうち良品の人参を選別する(分ける)工程とを含めることを特徴とする人参の新鮮度を保持する方法。
【請求項2】
人参を保存箱に収納する箱入れ工程において、
(1)紙箱、木箱またはプラスチック箱を用いた外箱に、薄い内容器を入れて、保存箱を形成し、
(2)前記薄い内容器に、適量の水分を含む鋸屑、草木灰、土または細かい砂利の充填材料を入れて、
(3)前記薄い内容器の底部に前記充填材料を層状に敷き詰め、該充填材料層の上に人参を載せ、人参の主根と鬚根が薄い内容器と直接接触しないように10〜20mmの間隔をあけ、その隙間に充填材料を装入し、前記薄い内容器の開口部を封止し、外箱の開口部を閉鎖することを特徴とする請求項1に記載の人参の新鮮度を保持する方法。
【請求項3】
冷凍保存工程において、閉鎖した保存箱を速やかに-8℃〜-10℃の恒温冷凍室または冷凍装置に入れて最大360日間冷凍保存することを特徴とする請求項1に記載の人参の新鮮度を保持する方法。
【請求項4】
解凍工程において、冷凍室若しくは冷凍装置から取り出した人参入り保存箱を3℃の恒温装置の中に入れて72時間放置した後に8℃の恒温解凍室に入れて144〜150時間放置するか、または冷凍室若しくは冷凍装置から取り出した人参入り保存箱を直接8℃の恒温解凍室に入れて168時間放置して解凍することを特徴とする請求項1に記載の人参の新鮮度を保持する方法。
【請求項5】
選別する(分ける)工程において、低温環境の下で保存箱を開封し、保存箱に収納された人参と充填材料とを分別し、人参に付着した鋸屑、土砂等の異物を取り除いた人参のうち良品の人参を選別する(分ける)ことを特徴とする請求項1に記載の人参の新鮮度を保持する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−528007(P2008−528007A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552493(P2007−552493)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【国際出願番号】PCT/CN2006/000061
【国際公開番号】WO2006/081734
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507257116)
【Fターム(参考)】