説明

人又は動物の体の骨構造内部に挿入可能な接続部材及びこれに関する位置決めシステム

人又は動物の体の骨構造(4)内部の骨折部に挿入して少なくとも2箇所の骨部(5)を固定する接続部材(3)であって、この接続部材(3)は所定の基準点(2)に配置された少なくとも1つの放射線源(6)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人又は動物の体の骨構造内に挿入可能な接続部材と、接続部材内の少なくとも1つの所定の基準点を特定するための位置決めシステムとに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は人又は動物の体の骨構造内に挿入された接続部材における1個以上の基準点の位置を外部から非接触で特定するシステムに関し、以下の説明は単なる例としてその応用を示す。
【背景技術】
【0003】
公知のように、大腿骨、脛骨、又は上腕骨のような特に「長い骨」の骨折に対する処置では、1本以上の接続部材(通常は金属製のピンで構成される)を骨の髄管内に挿入して骨折部を固定し、折れた骨部間の相対的な回転を防止する。
【0004】
上記の方式は、皮膚の切開部を通して骨の髄管内に金属製のピンを挿入すること、次いで近位側ねじ及び遠位側ねじと称されるねじによって金属製のピンを骨部に固定する(各々のねじは、対応する基準点つまり「ゲージポイント」で金属製のピンに接続され固定される)ことを実質的に含む。
【0005】
基準点は、通常、各ねじの軸部を受け入れてピンを骨部に固定するために金属製のピンの本体に形成された横断方向の貫通穴に設けられる。さらに具体的に述べると、近位側ねじ穴の基準点は、使用時に皮膚の切開部に位置する、金属製のピンの一方の端部に設けられる。遠位側ねじ穴の基準点は、使用時に皮膚の切開部から更に離れたところに位置する、金属製のピンの反対側の端部に設けられる。
【0006】
ピンを固定するとき、近位側ねじの基準点は外部から簡単に特定できるが、遠位側ねじ穴の基準点を特定することは非常に複雑な作業となる。
【0007】
基準点は、金属製のピンが髄管内に挿入された後、X線透視システムの助けを借りて特定されているのが現状である。このX線透視システムは、金属製のピンが挿入されている四股上にX線の発散ビームを照射する外部装置と、ビームが横断した領域のX線吸収パターンを測定し、四股とそれに対応するピンの放射線像を画面に表示するX線検出器とを有する。実際の使用にあたって、外科医はX線透視画像に基づいて基準点を特定する。このX線透視画像には外部から骨部にドリルで穴を開ける前又は開けているときのドリルの刃先の位置も刻々と表示される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のX線透視システムには、外科医が基準点を迅速かつ正確に特定できないという重大な欠点がある。つまり、X線透視画像は、二次元平面で基準点の位置を外科医に示すものであり、三次元で基準点の位置を示すものではない。したがって、外科医は非常に侵襲的な試行錯誤によって基準点を特定しなければならない。その間、外科医と患者の両者はX線を浴びるので、この方式が患者の健康、特にこのような放射線に繰り返しさらされる外科医の健康に悪影響を及ぼすことは明らかである。
【0009】
本発明の目的は、上記の欠点を取り除くように設計された、人又は動物の体の骨構造内部に挿入された接続部材内の基準点を特定するための位置決めシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、請求項1に記載されている、人又は動物の体の骨構造内部に挿入可能な接続部材が提供される。
【0011】
本発明によると、請求項13に記載されている、接続部材内の少なくとも1つの基準点を特定する位置決めシステムも提供される。
【0012】
本発明によると、請求項16に記載されているカプセルも提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の非限定的な実施形態について、添付の図面を参照しながら例を挙げて説明する。
【0014】
図1の参照番号1は、接続部材3における1以上の基準点2の位置を外部から直接接触することなく特定するためのシステムの全体を示しており、接続部材3は、人又は動物の体の骨構造4内部の骨折部に挿入されて、少なくとも2本の折れた骨部5を固定する。
【0015】
システム1は、骨構造4の外側、従って人又は動物の体外へ電離放射線を放出するために接続部材3内部の各々の基準点2に挿入可能な少なくとも1個の点放射線源6と、点放射線源6によって発生された電離放射線を測定しその結果に従って接続部材3内部の放射線源6の位置を示す電離放射線検出器7とを実質的に有する。
【0016】
つまり、実際の使用では、検出器7で電離放射線を測定して接続部材3内部の各々の放射線源6の位置を確認し、次いで接続部材3内部の対応する基準点2の位置を特定する。
【0017】
図1の例において、接続部材3は、金属又はこれに類似した硬質材料からできていることが好ましい(必ずしもそうである必要はない)ロッド又はピン3により形成され、折れた骨部5を接続又は結合するために骨構造4内部に適切に挿入することができる。
【0018】
より具体的には、ピン3は各々の基準点2の位置に、放射線源6を収容する、貫通穴8によって形成された収容部を有する。この貫通穴8は、ピン3の縦軸を実質的に横切る方向に延在し、使用時は、骨部5にピン3をしっかりと固定するための固定装置9を収容する。
【0019】
図1の例では、各々の固定装置9はピン又は好ましくは金属製のねじで形成される。この固定装置9は、骨構造4とピン3とがしっかりと接続し骨部5同士が互いに回転することがないように、各々の穴8に適切に挿入され骨構造4内に部分的に挿入される。
【0020】
放射線源6は、ピン3内部の各々の基準点2に設けられ、電離放射線のビームを外部に向けて放出する。その周波数は、ガンマ線放出周波数スペクトル内の周波数であることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。図示した例では、放射線源6はガンマ線を放出する放射線源であっても、ベータ・ガンマ線を放出する放射線源であってもよい。
【0021】
より具体的には、図1〜図4の例では、放射線源6は外側のシェル11と、シェル11内に収容されたガンマ線又はベータ・ガンマ線を放出する所定量の放射性物質と、を有するカプセル10によって形成される。
【0022】
より具体的には、シェル11は、接続部材3のいずれの穴8にも挿入できるように、また、基準点2で電離放射線を放出できるような形状とされる。これにより、外部から基準点2の位置を特定することで、それに対応する貫通穴8の位置を特定できる。
【0023】
図2の例では、各々のシェル11は実質的に円筒形をなしており、ピン3内の穴8に適切に収まるような寸法で作られる。また、放射性物質は、ガンマ線放出放射性同位元素又はベータ・ガンマ線放出放射性同位元素を含むことが好ましい。図示の例では、放射性同位元素を、例えば、テクネチウム99m(Tc99m)、ヨウ素123(I123)、インジウム111(In111)、コバルト(Co57)、又は所定の崩壊時間(半減期)を有するその他のガンマ線放出放射性同位元素若しくはベータ・ガンマ線放出放射性同位元素とすることができる。
【0024】
図2、図3、及び図4を参照すると、シェル11は生物学的適合性を有する物質、再吸収可能な物質、又はこれに類似したその他の物質からできていることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。また、シェル11は所定の容積の内部空洞11aを有し、3.7〜37MBq(0.01〜1mCi)の量のガンマ線放出物質又はベータ・ガンマ線放出物質を収容することができる。
【0025】
図4の変形例では、カプセル10のシェル11は、2つの空洞11aを内部に有し、各々の空洞11aには所定量のガンマ線放出物質又はベータ・ガンマ線放出物質が含まれる。2つの空洞11aはシェル11の軸方向の両端に配置され、これにより両端から外部に向けて電離放射線のビームが放出され、使用時には、シェル11の軸方向の両端の位置が示される。したがって、基準点2に加えて、穴8の入口及び出口も有利に特定することができるので、固定ねじ9を貫通穴8と完全に同軸となるように挿入することが可能である。
【0026】
上記と関連して、シェル11は任意の外部形状とすることができ、また、少なくとも一部がガンマ線放出物質又はベータ・ガンマ線放出物質から作られていてもよい。
【0027】
各々のカプセル10は、取外しできないように穴8内部に収容してもよく、簡単に取り外せるように収容してもよい。
【0028】
より具体的には、取り外しできないように挿入する場合は、ピン3の本体に一体化するか、接着剤を使用するか、締まりばめにするか、又は公知の機械的なクリック式の接続方式によってカプセル10を穴8に固定することができる。したがって、骨構造4にドリルで穴を開けた時にカプセル10を取り外すことができる。
【0029】
取り外しできるように挿入する場合は、骨構造4内部にピン3を挿入するときは穴からカプセル10が偶発的に外れることがなく、その後貫通穴8に固定ピン又は固定ねじ9を挿入する前又は挿入するときにはカプセルを取り外せるような方法で、穴8にカプセル10を一時的に固定する(例えば、接着物質によって)ことができる。
【0030】
図1を参照すると、検出器7は、センサに到達したガンマ線又はベータ・ガンマ線の強度を示すための測定センサ12と、ガンマ線又はベータ・ガンマ線の放射測定値をセンサ12から受信し、電離放射線の測定値が所定の閾値と一定の関係を満たした場合に聴覚/視覚信号を発生する信号ユニット13と、を実質的に有する。
【0031】
図1の例において、センサ12は外科医用の携帯型プローブであり、外科医は必要に応じてこのプローブを患者の体に沿って動かすことにより、各々の放射線源6から放出される電離放射線を測定できる。また、このプローブは信号ユニット13に接続されており、瞬時的な放射線測定信号を外科医に提供できる。
【0032】
信号ユニット13は処理デバイスによって構成されており、この処理デバイスは測定信号を受信し、それを所定の放射線閾値と比較し、電離放射線の測定値が所定の放射線閾値以上である場合に複数の聴覚/視覚デバイス14によって聴覚/視覚信号を発生する。つまり、プローブ12がピン3内の基準位置2に配置されると、信号ユニット13は聴覚的/視覚的な方法でそのことを示す。
【0033】
実際の使用では、カプセル10をピン3に形成された対応する穴8に挿入してから、ピン3を骨構造4に挿入する。ピン3を挿入したら、外科医は患者の体の上で(ピン3が挿入されている骨構造上で)プローブ12を動かす。プローブ12が基準点2に配置されると、信号ユニット13は所定の放射線閾値を上回る電離放射線を検知して聴覚/視覚信号を発生し、プローブ12の端部が基準点2に正確に位置していることを外科医に知らせる。これにより、基準点2の位置を外部から特定することができる。
【0034】
システム1には多くの利点がある。特に、システム1は基準点2の厳密な位置を3次元空間で示すことによって極めて高い精度を実現する。これにより、外科医は骨構造4のどの位置にピン3の固定ねじを挿入するための穴を開ければよいかをより正確に、またより非侵襲的に決定することができる。上述のように、内部に2つの空洞11aを有するカプセルを備えた接続部材3の場合は、穴8の入口と出口を外部から特定できるので更に精度が増し、骨部に穴を開ける際にドリルの刃先を穴8の軸に正確に位置合わせすることができる。この場合、当然ながら検出器7はプローブ12を2本備えることが可能であり、それにより各々の空洞11aから放出される電離放射線を測定し、同一の穴8の入口と出口の位置を示すことができる。
【0035】
また、システム1は、非常に安くそして簡単に製造できるという利点、基準点2の位置を迅速に特定して全体の処置時間を大幅に短縮できるという利点を有するため、患者にとって有益であり、コストを削減できるのは明らかである。
【0036】
最後に、システム1には、外科医及び患者が電離放射線に晒されるのを大幅に減少できるという利点もある。実際に、放射線源に含まれる放射性物質の量は非常に少なく、安全性の観点から見ると、患者及び外科医の電離放射線被爆量は無視できる。
【0037】
本明細書で説明及び図示したシステムに対し、本発明の範囲から逸脱することなく変更を加えることができるのは明らかである。
【0038】
より具体的には、図5の変形例の場合、放射線源6は、少なくとも一部がガンマ線放出物質又はベータ・ガンマ線放出物質からできていて貫通穴8に挿入可能な糸15で形成されている。この糸は、例えば、放射性物質が浸み込んだ再吸収可能な材料から作られた縫合糸である。
【0039】
更なる変形例では(図示せず)、放射線源6の少なくとも一部がガンマ線放出物質又はベータ・ガンマ線放出物質からできている接着材料により形成され、穴8に塗付される。
【0040】
最後に、上述と関連して、基準点2ひいては対応する放射線源6は、穴8内部に配置するのではなく、外部から位置を特定することが必要とされるその他の任意の基準点に配置してもかまわないことを指摘しておく。例えば、ピン3の一端に放射線源6を配置して、骨構造4内部にピン3を挿入するとき又は挿入した後でピン3の一端を外部から特定できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】人又は動物の体の骨構造内部に挿入可能な接続部材の所定の基準点を特定する本発明による位置決めシステムの概略を示す。
【図2】図1の位置決めシステムで採用された放射線源の実施形態の概略を示す。
【図3】図1の位置決めシステムで採用された放射線源の実施形態の概略を示す。
【図4】図1の位置決めシステムで採用された放射線源の実施形態の概略を示す。
【図5】図1の位置決めシステムで採用された放射線源の変形例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人又は動物の体の骨構造(4)内部に挿入可能な接続部材(3)であって、接続部材(3)の所定の基準点(2)に配置された少なくとも1個の放射線源(6)を有することを特徴とする接続部材(3)。
【請求項2】
前記所定の基準点(2)に収容部(8)を有し、前記収容部(8)が前記放射線源(6)を収容する、請求項1に記載の接続部材。
【請求項3】
前記収容部(8)が貫通穴(8)で形成され、前記貫通穴(8)は、使用時に、人又は動物の体の前記骨構造(4)に前記接続部材(3)を固定するための固定ねじ(9)を受け入れる、請求項2に記載の接続部材。
【請求項4】
前記放射線源(6)がガンマ又はベータ・ガンマ電離放射線を放出する、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の接続部材。
【請求項5】
前記放射線源(6)が、少なくとも一部が放射性物質からできているカプセル(10)を有する、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の接続部材。
【請求項6】
前記放射線源(6)がカプセル(10)を有し、該カプセル(10)が人又は動物の体との生物学的適合性、及び/又は、人又は動物の体による再吸収性を備えた物質からできているシェル(11)を備える、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の接続部材。
【請求項7】
前記シェル(11)が、前記放射性物質を含む少なくとも1個の空洞(11a)を内部に有する、請求項6に記載の接続部材。
【請求項8】
前記放射線源(6)が、少なくとも一部が放射性物質からできている接着物質を有し、該接着物質が前記接続部材(3)本体の前記所定の基準点(2)に適用される、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の接続部材。
【請求項9】
前記放射線源(6)が、少なくとも一部が放射性物質からできている少なくとも1本の糸(15)を有する、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の接続部材。
【請求項10】
前記放射性物質が、ガンマ線を放出する物質又はベータ・ガンマ線を放出する物質である、請求項5乃至請求項9の何れか一項に記載の接続部材。
【請求項11】
前記放射性物質が、テクネチウム99m(Tc99m)、ヨウ素123(I123)、インジウム111(In111)、又はコバルト57(Co57)である、請求項5乃至請求項10の何れか一項に記載の接続部材。
【請求項12】
金属製のピン(3)を有する、請求項1乃至請求項11の何れか一項に記載の接続部材。
【請求項13】
人又は動物の体の骨構造(4)内部に挿入可能な接続部材(3)の少なくとも1個の所定の基準点(2)を特定するための位置決めシステム(1)であって、請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載の接続部材(3)と、前記放射線源(6)によって放出された放射線を測定するために前記接続部材(3)に配置される測定手段(12)を備える検出器(7)と、前記接続部材(3)内の前記放射線源(6)の位置を、測定された前記放射線の関数として示す表示手段(13)と、を有する位置決めシステム(1)。
【請求項14】
前記測定手段(12)が、前記放射線源(6)によって放出された電離放射線を検出するために前記接続部材(3)に配置される少なくとも1個のプローブ(12)を有する、請求項13に記載の位置決めシステム。
【請求項15】
表示手段(13)は、前記プローブ(12)によって検出された前記電離放射線が所定の基準閾値と一定の関係を満たした場合に聴覚/視覚信号を発生するシグナリング手段(14)を有する、請求項14に記載の位置決めシステム。
【請求項16】
カプセル(10)であって、人又は動物の体の骨構造(4)内部に挿入可能な接続部材(3)の収容部(8)に挿入可能であり、放射線物質を有することを特徴とするカプセル(10)。
【請求項17】
少なくとも一部が放射線物質からできているシェル(11)を有する、請求項16に記載のカプセル。
【請求項18】
前記人又は動物の体との生物学的適合性、及び/又は、前記人又は動物の体による再吸収可能性を備えた物質からできているシェル(11)を有する、請求項16に記載のカプセル。
【請求項19】
前記シェル(11)が前記放射性物質を収容する少なくとも1個の内部空洞(11a)を有する請求項17又は請求項18に記載のカプセル。
【請求項20】
前記放射性物質がガンマ線を放出する物質又はベータ・ガンマ線を放出する物質である、請求項16乃至請求項19の何れか一項に記載のカプセル。
【請求項21】
前記放射性物質が、テクネチウム99m(Tc99m)、ヨウ素123(I123)、インジウム111(In111)、又はコバルト(Co57)である、請求項16乃至請求項20の何れか一項に記載のカプセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−536052(P2007−536052A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512585(P2007−512585)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001355
【国際公開番号】WO2005/107614
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(307015644)イ・エル・イ・ディエ,ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ,インテリジェント・レイディオアクティブ・アンド・インテグレイテッド・デヴァイシズ (1)
【Fターム(参考)】