人孔蓋枠への固定装置を有する人孔用安全作業柵体及びその固定装置
【課題】人孔の開口に装着される安全作業柵体につき、その設置作業が迅速かつ容易になされるとともに当該人孔蓋枠へ確実な係合がなされ、かつ容易には外れず、更には撤去作業においても迅速かつ容易になされること。
【解決手段】 人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置に、
人孔蓋枠の受棚と係合する鍔状部材を有するラッチ部材を弾性復帰可能にフレーム体に配し、
人孔蓋枠への挿入において該受棚からの押圧を受けて引込み動作をなし、
設置位置に至ると該受棚の下面に張出し動作をなすこと。
【解決手段】 人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置に、
人孔蓋枠の受棚と係合する鍔状部材を有するラッチ部材を弾性復帰可能にフレーム体に配し、
人孔蓋枠への挿入において該受棚からの押圧を受けて引込み動作をなし、
設置位置に至ると該受棚の下面に張出し動作をなすこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人孔すなわちマンホール内への作業に際し開蓋された人孔蓋枠に安全を期して設置される人孔用安全作業柵体に関し、特には、人孔用安全作業柵体に装着され、人孔蓋枠への係合をなす固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人孔内への作業に際し、作業者の出入の安全を図る装置は、実開平7−23085号公報(以下、先行技術という。)により公知である。
当該先行技術(符号は当該公報中のものを示す。)のマンホールの作業安全装置は、マンホールの蓋の外径と同じ外径の下リング1と、この下リング1に対し中心に向って傾斜する複数個の斜棒2で連結したそれより小径の切欠上リング3と、この上リング3の切欠部4において下リング1に設けた握り棒5とよりなり、更には、その下リング1に外れ止め用の爪7を垂設してなる。
当該先行技術の作業安全装置は、その使用において、マンホールの蓋を外し、本装置の下リング1をマンホール枠に嵌め込み、作業者はその上リング3の切欠部4より上リング3及び握り棒5を握ってその中に入り、マンホール内の足掛け(ステップ)に足を掛けてマンホール内に降りるものである。
しかしながら、該先行技術にあっては、外れ止め用の爪7は単に下リング1に取り付けられたものであって、外れ止め作用が不確実なものであって、格別の作用をなすものではない。すなわち、該外れ止め用の爪7は図示されているように浅いものであって、マンホール枠への係合作用も弱く、外れ易いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−23085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、人孔における作業に際し、当該人孔蓋枠へ設置される人孔用安全作業柵体において、その設置が迅速かつ容易になされるとともに当該人孔蓋枠へ確実な係合がなされ、かつ容易には外れないこと、更にはその撤去においても迅速かつ容易になされる人孔用安全作業柵体を得ることを目的とする。
本発明はこのため、人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置に当該人孔蓋枠の棚部への施錠をなすラッチ機構を付加することによりこの目的を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は具体的に以下の構成を採る。
(第1発明)
本第1発明は固定装置を有する人孔用安全作業柵体に係り、請求項1に記載のとおり、
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に1又は複数箇所に固定装置が装着され、
前記固定装置は、
剛性を保持し、前記設置される人孔蓋枠の受棚の内径よりも小径をなすフレーム体が前記人孔用安全作業柵体の下端に固定され、
前記フレーム体を介して取り付けられ、弾性作用を受けて、定常状態でその鍔状部材が設置される前記人孔蓋枠の受棚の内径よりも大径をなし、該受棚と係合可能状態を採るラッチ部材を有し、
前記ラッチ部材は、設置される前記人孔蓋枠への挿入において、該人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、所定の設置位置に至ると前記受棚の内周面から外れて前記の鍔状部材が該受棚の下面に張出し動作をなす、
ことを特徴とする。
上記構成において、「フレーム体」すなわち機枠は、本固定装置の他の機能部材を取り付けるための剛性の基材であって、本実施形態では四角箱のケーシングを採るが、この態様に限定されるものではない。
「定常状態」は当該ラッチ部材が該ラッチ部材に係る付勢手段以外には他に何らの付勢力を受けないときに採る状態をいう。
「所定の設置位置」は、人孔蓋枠の本体の上面、受棚の上面(受面)、その他適宜の位置を採る。
本発明において、
1.本固定装置は通常には人孔用安全作業柵体の下端に2か所に、かつ対称的に配されること、
2.鍔状部材の下面に傾斜面が形成されること、
3.鍔状部材の下面にローラが配されること、
は適宜採択される技術的事項である。
【0006】
(作用)
本人孔用安全作業柵体の設置において、当該安全作業柵体の下端面を開蓋された人孔蓋枠の上面もしくは受棚の上面に載置するように、同時にその固定装置を人孔蓋枠の内周面に挿入してゆく。
このとき、当該固定装置のラッチ部材は、定常状態から人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、受棚の内周を容易に通過する。この引き込み動作は鍔状部材の下面の傾斜面あるいは該ローラとともに配されるローラによってなされるが、他の手段を採ることを妨げない。当該安全作業柵体の下端面が所定の設置位置に至ると該受棚の内周面から外れて該鍔状部材が該受棚の下面に張出し動作をなす。すなわち、該ラッチ部材は定常状態に復し、人孔蓋枠の受棚と係合状態すなわちロック状態となる。
これにより、本人孔用安全作業柵体は上方への抜け出しもなく、安定的に設置される。
本人孔用安全作業柵体の撤去は、当該固定装置のラッチ部材を定常状態からその弾性作用に抗して引込み状態とし、当該人孔用安全作業柵体を上方へ引き上げる。このとき、当該固定装置のラッチ部材は、人孔蓋枠の受棚との係合が外れ、本人孔用安全作業柵体は人孔蓋枠から容易に撤去される。
【0007】
(第2発明)
上記第1発明において、各ラッチ部材は互いに高さが異なる1つの鍔状部材を有し、低い高さの鍔状部材を有するラッチ部材(ラッチA)が高い鍔状部材を有するラッチ部材(ラッチB)を後退移動のみ拘束する構成を採ることは第2発明を構成する。
上記構成において、ラッチAがラッチBに対する拘束は以下の実施形態では押し棒によりなされるが、これに限定されない。
(作用)
本第2発明によれば、人孔蓋枠の受棚の厚さに応じてラッチ部材の動作が異なる。
すなわち、人孔蓋枠の受棚の厚さが薄い場合は、複数個のラッチ部材は全て人孔蓋枠の受棚の内周面を通過し、高い鍔状部材を有するラッチ部材をもって該受棚に係合する。人孔蓋枠の受棚の厚さが厚い場合は、低い高さの鍔状部材を有するラッチ部材が人孔蓋枠の受棚の内周面を通過し、高い鍔状部材を有するラッチ部材は該受棚の内周面により押し込まれた状態を持続する。この結果、低い鍔状部材を有するラッチ部材をもって該受棚に係合する。
【0008】
(第3発明)
また、上記第1又は第2のいずれかの発明において、定常状態での弾性作用に抗してラッチ部材の鍔状部材(の先端)を該人孔蓋枠の受棚の内周面よりも後退させる係合可能状態を持続的に解除するロック解除機構を有してなる構成を採ることは第3発明を構成する。
本ロック解除機構は、係合可能状態を持続的に解除する機能を有するものであれば、以下の実施形態で示される構造に限定されない。
(作用)
本第3発明によれば、本人孔用安全作業柵体の撤去作用が容易に行われる。
すなわち、本人孔用安全作業柵体の撤去において、当該ロック解除機構を作動すると、ラッチ部材の鍔状部材は人孔蓋枠の受棚の内周面よりも持続的に後退する状態を採り、該ラッチ部材は人孔蓋枠の受棚との係合が外れる。そして、本当該人孔用安全作業柵体を上方へ引き上げると、本人孔用安全作業柵体は人孔蓋枠から容易に撤去される。
【0009】
(第4発明)
本第4発明は人孔用安全作業柵体の固定装置に係り、請求項4に記載のとおり、
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置であって、
剛性を保持し、前記設置される人孔蓋枠の受棚の内径よりも小径をなすフレーム体が前記人孔用安全作業柵体の下端に固定され、
前記フレーム体を介して取り付けられ、弾性作用を受けて、定常状態でその鍔状部材が設置される前記人孔蓋枠の受棚の内径よりも大径をなし、該受棚と係合可能状態を採るラッチ部材を有し、
前記ラッチ部材は、設置される前記人孔蓋枠への挿入において、該人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、所定の設置位置に至ると前記受棚の内周面から外れて前記の鍔状部材が該受棚の下面に張出し動作をなす、
ことを特徴とする。
(作用)
本固定装置を装着した人孔用安全作業柵体の作用は、第1発明に準じる。
【0010】
(第5発明)
本第5発明は同じく人孔用安全作業柵体の固定装置に係り、請求項5に記載のとおり、
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置であって、
1)その上部が人孔用安全作業柵体に固定され、少なくとも平板状の前面板を有し、該前面板に四角形状の窓部が開設されるフレーム体を備え、
2)前記フレーム体の窓部に嵌まり込む板体が、該窓部の下縁に固設された弾性蝶番を介して後方への倒れに対して弾性復帰可能に配され、かつ該板体の前面に前方に突出する鍔体が固設されてなる1又は複数のラッチ部を備え、
3)前記端部のラッチ部において、その上面にロック解除レバーが立設され、かつその側端面にロックピン係合孔が開設され、
4)前記ラッチ部に相並んで配され、
a)軸方向の移動のみが許容され、該ラッチ部の後方への所定の倒れ移動に対応して前記ロックピン係合孔に付勢力をもって嵌まり込むロックピン、
b)前記フレーム体に取り付けられ、前記ロックピンを保持する保持枠、
c)前記ロックピンに連動し、該ロックピンを引き戻すロックピンの引戻し機構、
を有してなるロック解除機構を備える、
ことを特徴とする。
本第5発明は以下の第1、第2、第3実施形態で具体的に示される。
上記において、「後方」はラッチ部の倒れ方向、「前方」はその逆方向を表し、固定装置部分での動きに則しての表記用法であり、以下の実施形態での用法とは異なる。
更に上記において、「フレーム体」すなわち機枠は、本固定装置の他の機能部材を取り付けるための機材であって、本実施形態では四角箱のケーシングを採るが、この態様に限定されるものではない。
また、当該ラッチ部が該ラッチ部に係る付勢手段以外には他に何らの付勢力を受けないときに採る状態を「定常状態」とする。
更に、本人孔用安全作業柵体の底面は予め設置位置が決められたものであり、人孔蓋枠の本体の上面、受棚の上面(受面)、その他適宜の位置を採り得るものであり、それらに対応して「所定の設置位置」となる。
本発明において、
1.鍔体の下面に傾斜面が形成されること、
2.鍔体の下面にローラが配されること、
は適宜採択される技術的事項である。
【0011】
(作用)
本人孔用安全作業柵体の人孔蓋枠への設置並びに撤去に当り、本固定装置は次のように作用する。
本人孔用安全作業柵体の設置において、当該安全作業柵体の下端面を開蓋された人孔蓋枠の上面もしくは受棚の上面に載置するように、同時にその固定装置を人孔蓋枠の内周面に挿入してゆく。
このとき、当該固定装置のラッチ部は、定常状態から人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、受棚の内周を容易に通過する。この引き込み動作は鍔体の下面の傾斜面あるいは該ローラとともに配されるローラによってなされるが、他の手段を採ることを妨げない。当該安全作業柵体の下端面が所定の設置位置に至ると該受棚の内周面から外れて該鍔体が該受棚の下面に張出し動作をなす。すなわち、該ラッチ部は定常状態に復し、人孔蓋枠の受棚と係合状態すなわちロック状態となる。
これにより、本人孔用安全作業柵体は上方への抜け出しもなく、安定的に設置される。
本人孔用安全作業柵体の撤去は、当該固定装置のロック解除機構を作動させ、ロック解除レバーを後方へ倒すとロックピンが付勢力をもってロックピン係合孔に嵌挿し、ラッチ部を倒れ状態に保持する。これにより、ラッチ部は定常状態からその弾性作用に抗して持続的に引込み状態となり、該ラッチ部の鍔体は人孔蓋枠の受棚との係合が外れる。そして、当該人孔用安全作業柵体を上方へ引き上げると、本人孔用安全作業柵体は人孔蓋枠から容易に撤去される。
【0012】
(第6発明)
上記第5発明において、ロックピンの引戻し機構は、
1)保持枠に保持され、ロックピンの軸方向移動と直交移動する摺動子、
2)フレーム体に固設される中心ピンを回転中心にして揺動し、前記摺動子を進退動する揺動腕、
3)前記揺動腕の下端に回転自在に軸支され、その前端がラッチ部の鍔体よりも前方へ突出する押込みホイール、
4)前記揺動腕を元位置に復帰させる戻しばね部、
を備えてなる構成を採ることは第6発明を構成する。
上記において、「前方」は第5発明に準じる。
上記構成において、押込みホイールにつき、人孔蓋枠の曲率が考慮される場合には、該押込みホイールの前端とラッチ部の鍔体の前端とが面一となっていても該押込みホイールの動作に変わりがなく、従って実質的に突出するものである。
【0013】
(作用)
本ロックピンの引戻し機構は、人孔用安全作業柵体の人孔蓋枠への設置並びに撤去に当り次のように作用する。
本人孔用安全作業柵体の設置において、本ロックピンの引戻し機構が作動状態にあるとき、先ず押込みホイールが、人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けて揺動腕を後方に押し込み、揺動腕、摺動子、ロックピンを各移動させ、該ロックピンをロックピン係合孔から外す。これにより、ラッチ部は定常状態に復帰し、その後ラッチ部は上述した人孔蓋枠の受棚との当接作用を受けることになる。本ロックピンの引戻し機構が作動状態にないときには、ラッチ部は定常状態にあるので、ロックを解除する必要はない。
本人孔用安全作業柵体の撤去は、当該固定装置のロック解除機構を作動させ、ロック解除レバーを後方へ倒すとロックピンが付勢力をもってロックピン係合孔に嵌挿し、ラッチ部を倒れ状態に保持する。これにより、ラッチ部は定常状態からその弾性作用に抗して持続的に引込み状態となり、該ラッチ部は人孔蓋枠の受棚との係合が外れる。そして、当該人孔用安全作業柵体を上方へ引き上げると、本人孔用安全作業柵体は人孔蓋枠から容易に撤去される。この過程で、押込みホイールが、人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けて揺動腕を後方に押し込み、揺動腕、摺動子、ロックピンを各移動させ、該ロックピンをロックピン係合孔から外す。これにより、ラッチ部は定常状態に復帰する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の人孔用安全作業柵体によれば、当該人孔用安全作業柵体の設置は人孔蓋枠に簡単な操作で迅速に、強固かつ確実に設置され、設置後の該人孔用安全作業柵体を介してなされる作業者の入出の安全性が確保できる。
また、当該人孔用安全作業柵体の撤去においても、簡単な操作で迅速に撤去され、作業効率が向上する。
特に、本人孔用安全作業柵体の固定装置が押込みホイール、揺動腕からなる解除機構を有することにより、当該固定装置がロック解除状態のままであっても、本人孔用安全作業柵体の挿入に際し、自動的にラッチ部は定常状態となり、ラッチ部を定常状態にする必要はなく、その手間が省け、使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の人孔用安全作業柵体の装着される人孔蓋枠の全体を示す平面構成図。
【図2】本発明の人孔蓋枠に設置された人孔用安全作業柵体の一実施形態の全体を示す一部断面一部正面構成図(図3、図4の2方向矢視図)。
【図3】本安全作業柵体の平面図(図2、図4の3方向矢視図)。
【図4】本安全作業柵体の側面図(図2、図3の4方向矢視図)。
【図5】本発明の人孔用安全作業柵体に装着される固定装置の一実施形態の全体を示す正面図(図6の5方向矢視図)。
【図6】固定装置の平面図(図5の6方向矢視図)。
【図7】図5の部分拡大図。
【図8】図7の8−8線断面図。
【図9】ロック解除機構の全体構成図。
【図10】図9の10−10線断面図。
【図11】図10の11−11線拡大断面図。
【図12】図11の12−12線断面図。
【図13】本発明の人孔用安全作業柵体に装着される固定装置の他の実施形態を示す部分部。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の蓋枠への固定装置を有する人孔用安全作業柵体の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図12に基づいてその一実施形態(第1実施形態)の蓋枠への固定装置を有する人孔用安全作業柵体Sを説明する。
すなわち、図1は本蓋枠への固定装置を有する人孔用安全作業柵体Sの設置される人孔蓋枠Mを示し、図2〜図4は本人孔用安全作業柵体Sの全体の構成を示し、図5〜図12はその部分並びに詳細構成を示す。
本蓋枠への固定装置を有する人孔用安全作業柵体(以下単に「安全作業柵体」という。)Sは、開蓋された人孔蓋枠Mに装着して使用されるものであり、本安全作業柵体Sの説明において、作業者の出入りする側を前部とする。
【0017】
先ず、本人孔用安全作業柵体Sの設置される人孔蓋枠Mについて説明する。本人孔蓋枠Mには常時は所定の鉄蓋F(図示せず、符合のみ)が嵌合装着され蓋状態となっているが、該鉄蓋Fは本発明の本旨から外れるので、その説明は省略する。
人孔蓋枠M(図1、図2参照)
本人孔蓋枠Mは、円環状をなす本体100と該本体100の下端の外周に水平状に張設される底板部102とが鉄製をもって一体的に成形されてなる基本的構成を採る。本体100の外側面には底板部102と一体(鉄製)のリブ104が間隔を保って突設される。そして、該本体100の上面106は平滑面をなし、本体100の内周面は上部において下方に至るにつれ縮径するテーパ面108が形成され、該テーパ面108に続いて水平状の受面110を上面に有する棚部112が突設され、該棚部112より下方は鉛直状の下壁面114が形成される。
図示されるように本人孔蓋枠Mの棚部112の厚さは薄い(小さい)ものとなっている。
120は該人孔蓋枠Mの一内周部の1箇所(当該箇所を本人孔蓋枠Mの後部とする。)に一体に突設された鉄蓋用棚部である。該鉄蓋用棚部120には挿通孔122が開設される。
【0018】
本人孔用安全作業柵体Sは、上記した人孔蓋枠Mに対応して設置される。
人孔用安全作業柵体S(図2〜図4参照)
本人孔用安全作業柵体Sは、上部の柵本体Saと該柵本体Saの下方に固設される固定装置Sbとの主要部からなる。
【0019】
柵本体Sa(図2〜図4参照)
柵本体Saは、一部に切欠きをもつ環状の底板体1と、該底板体1と同位相をなすとともに該底板体1の上面に固設される円環状の下枠杆2と、該下枠杆2より立設される柱杆3と上枠杆4と中間枠杆5とからなり前部に作業者の出入空間を形成する上枠部6とから骨格体が構成され、更には、下枠杆2の前部に取り付けられる前部把手部7、を含む。また、上枠部6の上枠杆4の後端部に立設されるパイロット灯用取付け杆8が付加される。
【0020】
以下、柵本体Saの各部の細部構造について説明する。
底板体1・下枠杆2
底板体1は、金属平板をもって一定厚及び一定幅の環状体に形成され、人孔蓋枠Mの棚部112の受面110に載置される。本実施形態では底板体1の後端には切欠き10が入れられるが、該切欠き10は適宜省略可能である。
底板体1の内径部の両側に、固定装置Sbとの連結を図る取付け部12が設けられる。該取付け部12は内径方向へ張り出す棚状をなし、ビス孔13、レバー挿通凹部14が開設されてなる。
下枠杆2は、軽量金属(例えばアルミニウム)の中空円管よりなり、底板体1と同位相をなすとともに該底板体1の上面に溶接等をもって固設される。
【0021】
上枠部6
上枠部6は、下枠杆2より斜めに立設される柱杆3と、該柱杆3の上端に固設される上枠杆4と、該柱杆3間に配される中間枠杆5とからなる。柱杆3、上枠杆4及び中間枠杆5は下枠杆2と同様に軽量金属の中空円管よりなり、全体として柵構造を作り、前部は作業者の出入空間を形成する。
(柱杆3)
柱杆3は、複数本よりなり、上方に至るにつれ内径方向に傾斜して下枠杆2に一定間隔を保って立設される。前端部の2つの柱杆3aは平行状を保つ。該前端部の斜め柱杆3aは作業者の把手の機能も担う。
(上枠杆4)
上枠杆4は、前部を作業者の出入のために大きく開放して、柱杆3の上端に水平を保って固設される。すなわち、該上枠杆4は半周を若干超える半円状を採り、該上枠杆4の両端部は前端部の柱杆3aの上端に連なる。
該上枠杆4は本実施形態では半円を超えるが、場合によっては半円以下の態様を採ることを妨げない。
(中間枠杆5)
中間枠杆5は、柱杆3間に水平状に配される。該中間枠杆5は上枠杆4とともに作業者の把手の機能を担う。
(上枠部6)
下枠杆2、柱杆3、上枠杆4及び中間枠杆5は上述した中空円管に限らず、中実の部材また多角部材であってもよく、更には素材もアルミ製に限らず、他の金属素材(例えばステンレス鋼)が適宜に選ばれる。要は、下枠杆2及び柱杆3と上枠杆4と中間枠杆5との一体構造が強固な構造体を構成することを満足するものであればよい。
なお、本実施形態では、柱杆3は内径方向に上方に至るにつれ傾斜し、縮径する態様を採るものであるが、垂直に立設されることを妨げるものではない。
【0022】
(骨格体)
上記の底板体1、下枠杆2及び柱杆3と上枠杆4と中間枠杆5とからなる上枠部6により本人孔用安全作業柵体Sの骨格体が構成される。該骨格体は一体的構造体をなし、剛性をもって大きな強度を発揮する。
【0023】
前部把手部7
前部把手部6は、逆U字状をなし、下枠杆2の前部上面の内縁部に沿って低い位置に取り付けられる。その水平部は下枠杆2の内周縁に沿う曲率を持ち、作業者の出入の障害にならない高さを採る。
パイロット灯用取付け杆8
パイロット灯用取付け杆8は、上枠部6の上枠杆4の後端部に立設され、
この取付け杆8にパイロット灯(回転灯)が装着される。なお、該パイロット灯用取付け杆8はこの態様に限らず、上枠部6の他の側面に取り付けられることを妨げない。
【0024】
固定装置Sb(図5〜図12参照)
固定装置Sbは、ケーシングにラッチ機構を配した構成を採り、該ケーシングを介して柵本体Saの底板体1の取付け部12に固設される。
以下の本固定装置Sbの説明において、「前部」は柵本体Saの外側から中心に向けての視点から決められ、また「左右」は柵本体Saの内側上方の視点から、あるいは作業者がロック解除レバーを押し倒す視点から決められる。
該固定装置Sbは、本実施形態では、
1)四角箱状のケーシング20(前面板20a、上面板20b、下面板20c,両側面板20d、背面板20e)、
2)該ケーシング20の前面に配されるラッチ部A21、ラッチ部B22、ラッチ部C23の複数のラッチ部、
3)該ラッチ部に連動するとともに、その主要部が該ケーシング20の内部に組み込まれ、かつ手動をもって操作されるロック解除機構24、
を主要構成とする。
【0025】
以下、該固定装置Sbの各部の構成について詳細に説明する。
ケーシング20(図5〜図8参照)
ケーシング20は、内部が中空状の四角箱体をなし、前面板20a、上面板20b、下面板20c,左右の両側面板20d及び背面板20eからなる。前面板20a、上面板20b、下面板20c及び左右の両側面板20dは一体開放箱状に構成されて背面に向けて開放され、背面板20eはこの開放箱状体を背面から嵌め外し可能に閉塞する。なお、この組立関係は、背面板20e、上面板20b、下面板20c及び左右の両側面板20dが一体となり、前面板20aが嵌め外し可能とされてもよい。また、該ケーシング20は密閉性よりも剛性をもって該ケーシング20に装着される各機構を保持する機枠(フレーム)機能が重視されるものであり、したがって、機枠機能を満たすものであれば各板材は適宜に省略ないしはその一部分の削除が可能である。
前面板20aには、ラッチ部A、ラッチ部B、ラッチ部Cの配される四角枠状の窓部26が開設される。更に、該前面板20aには窓部27,28が設けられる。
上面板20bには、後記するロック解除部24のロック解除レバーの前後動を案内する細長状の案内孔30が設けられ、またその両側方に延設され、該延設部に前記した柵本体Saの底板体1に形成された取付け部12のビス孔13に対応する複数のビス挿通孔31が開設される。
したがって、本固定装置Sbの柵本体Saへの取付けは、該案内孔30を取付け部12のレバー挿通凹部14に対応させ、該ビス挿通孔31を取付け部12のビス孔13に一致させて両孔31,12に装着される締結具(ビス)をもって固定する。
【0026】
ラッチ部A〜C21,22,23(図5〜図8参照)
ラッチ部A21、ラッチ部B22、ラッチ部C23の各ラッチ部は、ケーシング20の前面板20aの窓部26に各独立して装着され、一部共通する構成を採るとともに、各機能に応じた特有の構成を採る。
したがって、ラッチ部A21、ラッチ部B22、ラッチ部C23は、各独立して作動するとともに、相互に連動して作動するものでもある。
なお、ラッチ部A21は「中央ラッチ(あるいはセンターラッチ)」、ラッチ部B22は「左ラッチ(あるいはレフトラッチ)」、ラッチ部C23「右ラッチ(あるいはライトラッチ)」、と称される。
【0027】
(ラッチ部A21)(図7、図8参照)
ラッチ部A(すなわち中央ラッチ)21は、
1)縦に長い長方形の剛性を有する板体35A、
2)該板体35Aの上端より一定距離を存して前方に突設された鍔体36A、
3)該鍔体36Aの下部に配されるローラ37aを主体とするローラ部37A、4)該板体35Aの下端とケーシング20の前面板20aの窓部26の下縁部とを弾性(ばね付勢)作用をもって繋ぐ弾性蝶番38A、
5)右に隣接するラッチ部に対して設けられる凹部39A、
6)左に隣接する他のラッチ部に対して突設する押し棒40A、
7)板体35Aの背面の上端部に固設される庇体41A、
の各部材からなる。
もっと詳しくは、板体35Aは、一定厚を有し、剛性を保持し、縦に長い長方形の平板体をなす。該板体35Aの上端縁は窓部26の上縁より若干の隙間を存して配される。剛性を増すために適宜に補強用のリブ(図示せず。)が該板体35Aの裏面(または表面)に形成されることは設計上の配慮である。
鍔体(あるいは鍔状部材ともいう。)36Aは、剛性を有し、板体35Aの上端より一定距離を存して前方に突設される。該鍔体36Aは上面36aが水平面をなし、前端面36bを介して下面36cが斜め下方に厚さを減ずる塊体となっているが、剛性を有するものであれば、この形状に限定されない。前端面36bは適宜に丸みをもって形成されることは自由である。該鍔体36Aには、後記するローラ部37Aを配する凹部、軸孔が形成される。
該鍔体36Aは、その上面36aが人孔蓋枠Mの棚部112の下面に当接することになる。
ローラ部37Aは、ローラ37aと該ローラ37aの中心を貫通する軸37bとからなり、鍔体36Aの下面に、前記した鍔体36Aの凹部及び軸孔内に一体に組み込まれてなる。すなわち、軸37bは鍔体36Aの軸孔内に回転不能に強嵌合されて該軸孔に軸支され、ローラ37aは該軸37bに対して回転自在となっている。
しかして、ローラ37aはその円周側面を鍔体36Aの傾斜下面36cより突出し、鍔体36Aの前端面36bよりわずかに突出するか、ほぼ面一に配される。
【0028】
弾性蝶番38Aは、ピン軸38a、該ピン軸38a回りに回動する2つの翼板38b、該2つの翼板38bに跨がって配されるばね体38cよりなり、該板体35Aの下端とケーシング20の前面板20aの窓部26の縁部とを弾性(ばね付勢)作用をもって接続する。すなわち、該弾性蝶番38Aは板体35Aの前面とケーシング20の前面板20aの前面とにその翼板38bを当接し、ビス43をもって固定される。該弾性蝶番38Aはそのピン軸38a回りに回動するが、上下の翼板38b間に介装されるばね体38cの作用により回動後は直ちに元状態に復帰する。該弾性蝶番38Aは直線状(180°)で停止状態となり、後方への倒れは許容するが、前方への倒れは阻止される。これにより、板体35Aが後方に倒す力を受けたとき、該板体35Aは弾性蝶番38Aのピン軸38a回りに回動し、その力が取り除かれると直ちに元位置に復帰するものである。なお、本弾性蝶番38Aは公知のものである。
凹部39Aは、隣接するラッチ部に対応して当該板体35Aの側面に凹設され、該隣接するラッチ部の側面から突設される押し棒40(この場合40C)に当接する。
押し棒40Aは、隣接する他のラッチ部に対応して当該板体A35の側面に固定され、該隣接する他のラッチ部の側面に跨がって突設される。本実施形態における押し棒40Aは、鍔体36Aの下面36c部分の厚み内に穿設された固定孔に強嵌挿された態様を採るが、これに限定されず、例えば鍔体36Aの側面に溶接固定されてもよい。
庇体41Aは、直方体状の剛性をなし、板体35Aの背面の上端部に固設される。該庇体41Aの背面とケーシング20の背面板20eとの距離は該板体35Aの後方への倒れに対し、その倒れ角度を規制する。該庇体41Aは適宜省略されうるものであり、また、その軽量化のため空洞、凹部が適宜に形成される。更に該庇体41Aは、ラッチ部Cを除いて、省略されてもよく、また軟質のものであってもよい。
【0029】
(ラッチ部B22)
ラッチ部B(すなわち左ラッチ)22は、ラッチ部Aとほぼ同一の部材構成を採り、板体35B、鍔体36B、ローラ部37B、弾性蝶番38B、凹部39B及び庇体41Bの各部材を有し、押し棒はない。しかして、これらの部材のうち、鍔体36B、ローラ部37B、凹部39Bの配設位置がラッチ部Aと異なる。
すなわち、鍔体36Bは鍔36Aよりも上方位置にあり、それらの上面36aの高さの違いが後述するように人孔蓋枠Mの棚部112の厚さの差に対応する。したがってローラ部37Bもローラ部37Aよりも上方に位置する。凹部39Bの位置はラッチ部Aの押し棒40Aの位置に対応し、同一水平位置を採る。
該ラッチ部B22はラッチ部A21とほぼ同一の作用・動作をなす。
【0030】
(ラッチ部C23)
ラッチ部C(すなわち右ラッチ)23は、板体35C、弾性蝶番38C、押し棒40C、庇体41Cの各部材を有し、ローラ部、鍔体、凹部を有しない。すなわち、該ラッチ部C23はその表面が押し棒40C以外の突起物はなく、実質的に平面状をなす。
更に述べれば、本ラッチ部C23において、押し棒40Cは隣接するラッチ部の凹部39Aに対応する位置に配されるが、その取付けは板体35Cの表面に直接的に固定される。また、庇体41Cは剛性を保ち、その右側面は平滑面を保持し、更にその右側面の前部に円形の凹部または凹孔が開設される。
しかして、該ラッチ部Cは他のラッチ部に連動するとともに、ラッチ解除機構とも連動するものである。このため、該ラッチ部Cにおいて、上記した庇体41Cの側面部及び凹部の外、その上面にラッチ解除レバーが固設される。
【0031】
(ラッチ部A,B,Cの動作)
ラッチ部A,B,Cは、動作に応じて各独立であるとともに各連動する。
すなわち、ラッチ部の定常位置より、ラッチ部Cが後方へ傾倒することにより、該ラッチ部Cの押し棒40Cはラッチ部Aの凹部39Aを介してラッチ部Aを後方へ傾倒させ、更にラッチ部Aはその押し棒40Aを介してラッチ部Bを後方へ傾倒させる。
また、ラッチ部A,B,Cは、各独立であるので、ラッチ部Cの前方への復帰はラッチ部A(したがってラッチ部Bも)を残置して元位置に戻る。同じく、ラッチ部Aの前方への復帰はラッチ部Bを残置して元位置に戻る。
【0032】
ロック解除機構24(図9〜図7、図9〜図12参照)
ロック解除機構24は、ラッチ部に連動し、その機構の大部分がケーシング20の内部に組み込まれ、ケーシング20の外の手動レバー及び押込みホイールをもって操作される。
該ロック解除機構24は、本実施形態では、
1)ラッチ部C23に配されるロック解除レバー50とロックピン係合孔51、
2)ロックピン52及び摺動子53を保持する保持枠54、
3)中心ピン55を回転中心にして揺動し、前記摺動子52を進退動する揺動腕56、
4)該揺動腕56の下端に回転自在に軸支される押込みホイール57、
5)該揺動腕56を元位置に復帰させる戻しばね部58、
を含む。
【0033】
(ロック解除レバー50・ロックピン係合孔51)
ラッチ部C23の上面にはレバー棒50aと握り部50bとからなるロック解除レバー50が固設される。ロック解除レバー棒50aの移動はケーシング20の上面板20bの案内溝30に案内される。
ラッチ部C23の上部は前記したとおり一定厚さを保持する庇部41Cを有し、その右側面は平滑面をなし、またその前面寄りにロックピン係合孔51が凹設される。
ロック解除レバー50の押込みによりラッチ部C23は弾性蝶番38Cを中心に後方に倒れ込む。
【0034】
(ロックピン52・摺動子53・保持枠54)
保持枠54は実質的に四角箱状をなし、ロックピン52、摺動子53及びその他の機能部材を保持する機能を有し、ケーシング20の上部(すなわちラッチ部C23上部位置に対応)に固定される。
保持枠54は前後の長さがケーシング20の内部幅と等しく、その天井板54aと底板54bとは後壁板54c、側壁板54d及び隔壁板54eによって一定高さを保持し、かつは該保持枠54は全体的に剛性を保持する。該保持枠54には後述するように、側壁板54d及び隔壁板54eとにロックピン52の挿通孔54f, 54gが開設され、天井板54aにはロックピン52の案内用の長孔54hが開設され、更に底板54bには摺動子53の案内用の長孔54iが開設される。
ロックピン52は、丸棒状のピン本体52aと、該ピン本体52aの端部(後端)の同じく丸棒状の鉛直棒52bと、該ピン本体52aの前方寄りに固定される鍔状の反力受け52cとからなる。また、コイルばね52cも含む。
丸棒状のピン本体52aは、保持枠54の側壁板54d及び隔壁板54eに開設されたピン保持孔54f, 54gに挿通され、また反力受け52cと隔壁板54eとの間にコイルばね52cが装着される。これにより、ロックピン52はピン本体52aの軸方向に移動自在とされ、かつピン本体52aの軸方向の前方に向けて付勢力を受ける。その前端面はラッチ部C23の壁面に当接する。
ピン本体52aの後端の鉛直棒52bは以下の摺動子53と所定の関係をもって、52に所定の動作を与える。
摺動子53は、1つの直方体をなし、上下面を保持枠54の天井板54aと底板54bとの間に摺動自在に挟着され、内部にロックピン52のピン本体52aを受け入れる摺動孔53aが開設される。
直方体はその一側(右側面)が切り欠かれて傾斜面53bが形成される。
ロックピン52の鉛直棒52bは摺動子53の高さよりも長くされ、その上部は保持枠54の天井板54aに形成された案内長孔54iに嵌合する。
これらのロックピン52・摺動子53・保持枠54相互の関係性については、ロックピン52は定常状態でコイルばね52cの付勢力を受けてラッチ部Cに向けて押圧されているが、ラッチ部Cの側壁面に当接して移動は阻止される。ラッチ部Cが移動してそのロックピン係合孔51がロックピン52の位置に来ると、ロックピン52は変位を起し、ロックピン係合孔51に入り込む。これにより、ロック状態となる。このとき、ロックピン52の鉛直棒52bは当初の位置から摺動子53の側面に当接する位置に前進変位する。なお、摺動子53の移動はない。
摺動子53を強制力をもって引き込むと、ロックピン52の鉛直棒52bは摺動子53の傾斜面53bとの当接により該傾斜面53bからの分力を受けて右方向へ後退移動し、従ってロックピン52はコイルばね52cの付勢力に抗して後退移動する。これにより、ロックピン52はロックピン係合孔51から外れ、定常状態に復する。
【0035】
(揺動腕56)(図9、図10参照)
揺動腕56は中心ピン55を回転支点にして揺動し、摺動子52を進退動する機能をなす。
揺動腕56は長尺の平板体をなし、保持枠54の下方のケーシング20の内部空間の大宗を占める。その上端にピン体56aが突設され、下部寄り及び下端部にそれぞれピン体の挿通孔が開設され、また、中間部に突起体56bが固定されてなる。
中心ピン55はケーシング20の右の側面板20dに固定される柱材60を介して取り付けられる。中心ピン55は揺動腕56の下方寄りに取り付けられているので、該揺動腕56の下端の移動よりも該揺動腕56の上端は大きな変位となる。
揺動腕56の上部において、ピン体56aは、前記した摺動子53の下面に固定された直方体状のスラスト体61の下面に形成された凹部61a内に嵌合する。
スラスト体61は保持枠54の底板54bに開設された案内用の長孔54iに嵌ま込み、該長孔54iに前後動を案内される。また、ピン体56aはスラスト体61の凹部61aに揺動腕56の揺動に伴う高さ方向の変動分(隙間)を存して嵌合する。
【0036】
(押込みホイール57・戻しばね部58)
押込みホイール57は、揺動腕56の下端に回転自在に軸支され、その一部はケーシング20の窓部27を介して該ケーシング20の外側に突出する。すなわち、押込みホイール57の中心軸体は揺動腕56の回転軸孔を介して回転自在に軸支され、押込みホイール57の本体の回転をなす。該押込みホイール57は外部からの押込み力を受け、かつその力を揺動腕56に伝達する。
戻しばね部58は、保持枠54の底板54bの下面に固定され、下方へ垂設れる剛性を保つ反力棒58aと、該反力棒58と前記した揺動腕56の突起体56bとの間に介装される引張りばね58bとを主体とする。該戻しばね部58は定常位置では実質的に力を作用させず、揺動腕56が離れると引張り作用を発揮し、揺動腕56を元位置に復帰させる。
押込みホイール57に押込み力が押込み方向に作用すると、揺動腕56は中心ピン55を回転中心にして上部(ピン体56a)が前記押込み方向の逆方向(引込み方向)へ移動し、スラスト体61(摺動子53)を引込み方向に引き寄せる。揺動腕56の上方部の引込み方向への変位に伴い戻しばね部58の引張りばね58bは引張り付勢作用を発揮し、その引戻し力により揺動腕56を元位置に復帰させる。
【0037】
(本実施形態の作用)
叙上の構成よりなる人孔用安全作業柵体Sは、開蓋された人孔の開口に臨んで設置され、当該当該設置された安全作業柵体Sを介して作業者が人孔に入出する。
そして、この設置作業において、本人孔用安全作業柵体Sはその固定装置Sbをもって設置の迅速化、確実化が図られ、かつは撤去の安全化、迅速化が図られる。
【0038】
A.本人孔用安全作業柵体Sの設置
以下、本人孔用安全作業柵体Sの設置作業を行程順に説明する。
本態様では、人孔蓋枠Mの棚部112の厚さが薄い場合について述べる。
(1)
本人孔用安全作業柵体Sを設置する当り、人孔の鉄蓋F(図示せず)が開放される。該鉄蓋Fの揺動腕は人孔蓋枠Mの鉄蓋用棚部120の挿通孔122に遊嵌挿されており、該鉄蓋Fを持ち上げた後、該鉄蓋Fの揺動腕を回動中心にして180°水平回転して開放される。
なお、本人孔用安全作業柵体Sの固定装置Sbについては、そのロック解除レバー50は作動状態、すなわちすべてのラッチ部A,B,Cが後退した状態(非定常状態)を維持するロックされた状態にある。
【0039】
(2)
作業者は本人孔用安全作業柵体Sの柵本体Saの適宜位置(通常は上枠杆4)を把持し、本安全作業柵体Sの底板体1を開蓋された人孔蓋枠Mの棚部112の受面110に載置するように本人孔用安全作業柵体Sを人孔蓋枠M内に装入してゆく。本安全作業柵体Sの後部、すなわち底板体1・下枠杆2の後部は切欠き10を有しており、該切欠き10を鉄蓋Fの揺動腕を跨いで設置される。
本人孔用安全作業柵体Sにつき、当該固定装置Sbの初期状態はロック解除レバー50の作動・非作動状態を問わず、両状態での使用が可能であるが、上記したとおり、ここでは作動状態にある(すなわち、ロック解除レバー50が倒れた状態にある。)とする。
そして、2つの相対する当該固定装置Sbは、人孔蓋枠Mの棚部112の内径内に挿入されてゆく。
【0040】
(3)
本固定装置Sbの押込みホイール57が人孔蓋枠Mの棚部112の内周面に当接し、該押込みホイール57が押込み力を受けると、ロック解除機構24が作動し、ロックピン52がラッチ部C23のロックピン係合孔51から外れ、全てのラッチ部A,B,Cは定常状態を採る。
(3-1)
上記の押込みホイール57によるロック解除機構24の作動について述べる。
押込みホイール57が押込み力を受けると、揺動腕56の下部は前方(人孔の中心方向)へ移動するとともに、該揺動腕56は中心ピン55を回転中心にして上部(ピン体56a)が後方へ移動し、スラスト体61及び摺動子53を後方に引き寄せる。
摺動子53が後方に引き寄せられると、ロックピン52の鉛直棒52bは摺動子53の傾斜面53bとの当接により該傾斜面53bからの分力を受けて右方向へ移動し、ロックピン52はコイルばね52cの付勢力に抗して後退移動する。これにより、ロックピン52はロックピン係合孔51から外れ、該ロックピン52は定常状態(開放状態)に復する。
ロックピン52がラッチ部Cのロックピン係合孔51から外れることにより、ロックピン52により拘束されていたラッチ部Cはその弾性蝶番38Cの復帰力により元位置に戻り、また、各ラッチ部A,ラッチ部Bも各独立してそれらの弾性蝶番38A,Bの復帰力により元位置に戻る。これにより、ラッチ部は定常状態を採る。
(3-2)
この状態で押込みホイール57が下降すると、人孔蓋枠Mの棚部112の内周面から外れ、人孔蓋枠Mの下壁面114に至ると押込み力から開放され、揺動腕56は戻しばね部58の引張りばね58bの引戻し力により元位置に復帰する。これにより、揺動腕56・押込みホイール57、更にはスラスト体61、摺動子53は定常状態に復する。
【0041】
(4)
更に本固定装置Sbが下降し、ラッチ部が人孔蓋枠Mの棚部112に至ると、先ず、ラッチ部C23には格別の突起物はなく該棚部112の内周面を抵抗なく通過し、次いで、ラッチ部A21がそのローラ部37A及び鍔体36Aの順に人孔蓋枠Mの棚部112の内縁に当接した後、人孔蓋枠Mの棚部112の内周面に当接押圧され、当該内周面から押込み力を受ける。このとき、ローラ部37Aのローラ37aはラッチ部A21の挿入動作を円滑にする。
これにより、ラッチ部A21は前方(背部)へ倒れ込み、その押し棒40Aにより隣接するラッチ部B22も連動して前方へ倒す。
【0042】
(5)
この状態で、本固定装置Sbが下降を続け、ラッチ部Aが下降すると、該ラッチ部Aは人孔蓋枠Mの棚部112の内周面から外れ、定常状態に復するが、ラッチ部Bは引き続き人孔蓋枠Mの棚部112に至り、該棚部112の内周面から押圧作用を受け、倒れ込み状態となる。
【0043】
(6)
本固定装置Sbが更に降下し、所定の設置位置すなわち本人孔用安全作業柵体Sの柵本体Saの底面が人孔蓋枠Mの棚部112の受面110に接近すると、その直前でラッチ部Bは人孔蓋枠Mの棚部112の内周面から外れ、当該鍔体36Bは該棚部112の下面部位に入り込む。
これにより、本固定装置Sbはラッチ部Bの鍔体36Bをもって人孔蓋枠Mの棚部112と係合状態となり、本人孔用安全作業柵体Sの抜出し力に対抗し、安定的な設置状態を採る。
【0044】
(7)
以上をもって本人孔用安全作業柵体Sの設置作業は終了する。
なお、上記の工程中、工程(1) においてロック解除レバー50が作動状態になく、ラッチ部が定常状態となっているとき、工程(3) において押込みホイール57が押込み力を受け、ロック解除機構24が作動したとしてもラッチ部Cへの作用はなく、ラッチ部は定常状態を保持する。しかる後、工程(4) 以降の工程を採る。
そして、この間の設置過程はすべて迅速になされ、かつ本人孔用安全作業柵体Sの自重も相まって格別の押込み力を要せず設置される。
【0045】
作業者の人孔との入出
その後、作業者は本人孔用安全作業柵体Sの前部から人孔との入出をなす。
入孔においては、作業者は本安全作業柵体Sの前部から入り込み、適宜に本安全作業柵体Sの上枠杆4、中間枠杆5、前部把手部7を把持しながら、人孔内の足掛けを介して人孔内を下降する。
出孔においては、作業者は人孔内の足掛けを介して人孔内を上昇し、人孔の開口部に至ると、適宜に本安全作業柵体Sの前部把手部7、中間枠杆5、上枠杆4を把持しながら、本安全作業柵体Sの前部から出孔する。このとき、本安全作業柵体Sの前部把手部7は低くなっており、出孔の障害とはならない。
【0046】
B.本人孔用安全作業柵体Sの撤去
(1)
本人孔用安全作業柵体Sに取り付けられた固定装置Sbのロック解除レバー50を前方(人孔中心方向)に倒し、全てのラッチ部A,B,Cを倒れ状態に保持し、これによりラッチ部Bの鍔体36Bを人孔蓋枠Mの棚部112から引き込み、引抜き可能状態にする。
すなわち、ロック解除レバー50を前方に倒し、ラッチ部Cを前方に倒すと、ラッチ部A,B,Cは押し棒40C,40Aを介して連動しており、結果的にラッチ部Bは上記の状態となる。
一方、ロック解除レバー50の前方への倒れに応じて、ロックピン52の先端はラッチ部Cの側壁面を滑り、そのロックピン係合孔51に至ると該ロックピン52は軸方向への付勢力をもって該ロックピン係合孔51内に入り込む。このとき、ロックピン52は左方へ移動するが、該ロックピン52の鉛直棒52bは摺動子53の側面に当接状態となって停止する。あるいはまた、ロックピン52の反力受け52cが側壁板54dに当接することによって停止する。
これにより、以後ラッチ部Cは倒れ状態を維持する。
【0047】
(2)
作業者は本人孔用安全作業柵体Sの柵本体Saの適宜位置(通常は上枠杆4)を把持し、人孔蓋枠Mの棚部112より本固定装置Sbを引き抜くように本人孔用安全作業柵体Sを上方へ引き上げる。
このとき、本固定装置Sbのラッチ部A,B,Cの全ては引込み状態となっており、人孔蓋枠Mの棚部112の内周面を容易に通過する。そして、少なくとも最下方のラッチ部Bの鍔体36Aは棚部112から抜け出る。
【0048】
(3)
この状態で、押込みホイール57が人孔蓋枠Mの棚部112に至ると、該押込みホイール57は人孔蓋枠Mの棚部112の内周面に当接し、該押込みホイール57は押込み力を受ける。これにより、ロック解除機構24が作動し、ロックピン52がラッチ部Cのロックピン係合孔51から外れ、ラッチ部の全てのラッチ部A,B,Cは定常状態を採る。
(3-1)
なお、押込みホイール57が人孔蓋枠Mの棚部112の内周面から格別の押圧力を受けることなく通過する場合、ロック解除機構24は作動しないが、本人孔用安全作業柵体Sを上方へ引き上げに支障はない。
【0049】
(4)
押込みホイール57は人孔蓋枠Mの棚部112の内周面を転動し、該棚部112の上方に抜け出る。
以上をもって本人孔用安全作業柵体Sの撤去作業は終了する。
なお、この間の撤去過程はすべて迅速になされ、かつ本人孔用安全作業柵体Sの重量は軽量であり、格別の引上げ力を要せず容易に撤去される。
【0050】
(本実施形態の効果)
本実施形態の人孔用安全作業柵体Sによれば、固定装置Sbを介することにより、当該人孔用安全作業柵体Sの人孔蓋枠Mへの設置は簡単な操作で、迅速かつ確実に設置される。
すなわち、その固定装置Sbの作動により、そのラッチ部の鍔体が人孔蓋枠Mの棚部112へ係合し、引抜き力に対抗し、確実な固定がなされる。
そして、設置後の該人孔用安全作業柵体Sを介してなされる作業者の入出の迅速性及び安全性が確保できるとともに、この人孔用安全作業柵体Sの設置により工事中における通行人の安全が図られ、パイロット灯用取付け杆10へのパイロット灯の装着により通行人の注意が図られ、安全性が一層増大する。
また、当該人孔用安全作業柵体Sの撤去においても、簡単な操作で迅速に撤去され、作業効率が向上する。
特に、本実施形態の人孔用安全作業柵体Sの固定装置Sbが押込みホイール57、揺動腕56を有する解除機構24を有することにより、当該固定装置Sbがロック解除状態のままであっても、本人孔用安全作業柵体Sの挿入に際し、自動的にラッチ部は定常状態となり、ラッチ部を予め定常状態にする必要はなく、手間が省け、使い勝手がよい。
【0051】
(別な態様)
C.本人孔用安全作業柵体Sの設置
叙上の形態では、人孔蓋枠Mの棚部112が薄い場合の設置・撤去作業について述べたが、該棚部112が厚い場合の設置・撤去作業については以下のとおりである。
Aの(1) 〜(4) の行程は本態様Cにおいても同様である。
【0052】
(5)
この状態で、本固定装置Sbが降下し、ラッチ部Aが降下すると、ラッチ部Aは人孔蓋枠Mの棚部112の内周面との押圧状態を続け、引き続きラッチ部Bが人孔蓋枠Mの棚部112に至るが、ラッチ部Bはラッチ部Aの押し棒40Aの作用により倒れ込み状態を続ける。
【0053】
(6)
本固定装置Sbが更に降下し、所定の設置位置すなわち本人孔用安全作業柵体Sの柵本体Saの底面が人孔蓋枠Mの棚部112の受面110に接近すると、その直前でラッチ部Aは人孔蓋枠Mの棚部112の内周面から外れ、当該鍔36Aは該棚部112の下面部位に入り込む。
これにより、本固定装置Sbはラッチ部Aの鍔36Aをもって人孔蓋枠Mの棚部112と係合状態となり、本人孔用安全作業柵体Sの抜出し力に対抗し、安定的な設置状態を採る。
【0054】
(7)
以上をもってAの(7) と同様にして、本人孔用安全作業柵体Sの設置作業は終了する。
このように、本実施形態によれば、人孔蓋枠Mの棚部112が厚い場合についても対応でき、人孔蓋枠Mの規格の違いについて多様に対応することができる。
【0055】
(第2実施形態)(図13参照)
叙上の第1実施形態ではその人孔用安全作業柵体Sが人孔枠体Mの棚部112の上面に設置されるものであるが、本実施形態(第2実施形態)では、その人孔用安全作業柵体Sが人孔枠体Mの上面106に設置される態様を示す。
本第2実施形態では、図13に示すように、人孔用安全作業柵体Sの柵本体Saの底面の底板体1の外径は少なくとも人孔枠体Mの上面106の内径よりも大きくされ、その内径はほぼ人孔枠体Mの棚部112の内径に一致する寸法を採る。該底板体1の内径部の両側に、固定装置Sbとの連結を図る内径方向へ張り出す棚状をなす取付け部12が設けられ、該取付け部12にビス孔13、レバー挿通凹部14が開設されてなること、は先の実施形態と同様である。
固定装置Sbにつき、ラッチ部B22の鍔体36Aの位置は、先の実施形態では棚部112の上面と棚部112の下面との距離Hで決められるが、本実施形態においては、人孔枠体Mの上面106より棚部112の下面までの鉛直距離を保持して決められる。
ケーシング20の前面は人孔枠体Mの棚部112の内径よりも一定間隙を存すること、その他の構成、例えば、3つのラッチ部A,B,Cを有すること、ロック解除機構24を有すること、等は先の実施形態と実質的に変わりはない。
本第2実施形態の人孔用安全作業柵体Sでは、第1実施形態と同様に、人孔枠体Mの棚部112の厚さに対応する。
【0056】
(第3実施形態)
先の第1・第2実施形態ではラッチ部は3つのラッチ部A,B,Cを有するものであるが、本実施形態(第3実施形態)では、当該ラッチ部の構成が異なる。ここでは、第1実施形態の固定装置Sbの変更を基本とする。
すなわち、本実施形態では、ラッチ部Bが省略され、ラッチ部Cの幅を狭くされる。
これに対応して、ラッチ部Aの鍔体36Aの取付け高さは、特定の人孔枠体Mの棚部112の厚さに対し、適宜に変更される。
また、ラッチ部Cは必要限度の幅を確保して可及的に狭くされる。
これにより、本人孔用安全作業柵体Sの固定装置Sbの幅は小さいものとなり、本人孔用安全作業柵体Sの人孔枠体Mへの挿入作業が容易となり、本人孔用安全作業柵体Sの使い勝手が向上する。
【0057】
本発明は叙上の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想の範囲内で種々設計変更が可能である。すなわち、以下の技術的事項は本発明の技術的範囲に包含される。
1.本実施形態のロック解除機構24は、押込みホイール57・揺動腕56・摺動子53を含むものであるが、このような機構を持たず、少なくともロックピン52の前進付勢及び該ロックピン52の前進した後の引戻し(後退)をなす機構を備えればよい。
このため、ロックピン52は保持枠54に保持され、かつ進退動可能に付勢手段52dを備えることは先の実施形態と同様であるが、これに加え、ロックピン52にケーシング20の背面板20eに貫通する剛性の操作杆(図示せず)を固定し、該操作杆をケーシング20の背面板20eに開設された水平方向の案内長孔(図示せず)に案内させて保持し、該操作杆のケーシング20の外部への突出端を把持して前進したロックピン52を引き戻す構造を採ることができる。操作杆のケーシング20の外部への突出端は更に上方へ延設されてもよい。あるいは、ロックピン52の後端にワイヤー(図示せず)を繋ぎ、該ワイヤーをケーシング20内に配した滑車(図示せず)を介してケーシング20の上部の外部に導き、このワイヤーの先端を把持して前進したロックピン52を引き戻す構造を採ることも他の一手段である。
【符号の説明】
【0058】
S…人孔用安全作業柵体、Sa…柵本体、Sb…固定装置、M…人孔蓋枠、
106…上面、110…受面、112…棚部、
1…底板体、2…下枠杆、3…柱杆、4…上枠杆、5…上枠部、
20…ケーシング、20a…前面板、
21…ラッチ部A、22…ラッチ部B、23…ラッチ部C、
24…ロック解除装置、26…窓部、
35A,B,C…板体、36A,B…鍔状部材、38A,B,C…弾性蝶番、
50…ロック解除レバー、51…ロックピン係合孔、52…ロックピン、53…摺動子、54…保持枠、55…中心ピン、56…揺動腕、57…押込みホイール、58…戻しばね部
【技術分野】
【0001】
この発明は、人孔すなわちマンホール内への作業に際し開蓋された人孔蓋枠に安全を期して設置される人孔用安全作業柵体に関し、特には、人孔用安全作業柵体に装着され、人孔蓋枠への係合をなす固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人孔内への作業に際し、作業者の出入の安全を図る装置は、実開平7−23085号公報(以下、先行技術という。)により公知である。
当該先行技術(符号は当該公報中のものを示す。)のマンホールの作業安全装置は、マンホールの蓋の外径と同じ外径の下リング1と、この下リング1に対し中心に向って傾斜する複数個の斜棒2で連結したそれより小径の切欠上リング3と、この上リング3の切欠部4において下リング1に設けた握り棒5とよりなり、更には、その下リング1に外れ止め用の爪7を垂設してなる。
当該先行技術の作業安全装置は、その使用において、マンホールの蓋を外し、本装置の下リング1をマンホール枠に嵌め込み、作業者はその上リング3の切欠部4より上リング3及び握り棒5を握ってその中に入り、マンホール内の足掛け(ステップ)に足を掛けてマンホール内に降りるものである。
しかしながら、該先行技術にあっては、外れ止め用の爪7は単に下リング1に取り付けられたものであって、外れ止め作用が不確実なものであって、格別の作用をなすものではない。すなわち、該外れ止め用の爪7は図示されているように浅いものであって、マンホール枠への係合作用も弱く、外れ易いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−23085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、人孔における作業に際し、当該人孔蓋枠へ設置される人孔用安全作業柵体において、その設置が迅速かつ容易になされるとともに当該人孔蓋枠へ確実な係合がなされ、かつ容易には外れないこと、更にはその撤去においても迅速かつ容易になされる人孔用安全作業柵体を得ることを目的とする。
本発明はこのため、人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置に当該人孔蓋枠の棚部への施錠をなすラッチ機構を付加することによりこの目的を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は具体的に以下の構成を採る。
(第1発明)
本第1発明は固定装置を有する人孔用安全作業柵体に係り、請求項1に記載のとおり、
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に1又は複数箇所に固定装置が装着され、
前記固定装置は、
剛性を保持し、前記設置される人孔蓋枠の受棚の内径よりも小径をなすフレーム体が前記人孔用安全作業柵体の下端に固定され、
前記フレーム体を介して取り付けられ、弾性作用を受けて、定常状態でその鍔状部材が設置される前記人孔蓋枠の受棚の内径よりも大径をなし、該受棚と係合可能状態を採るラッチ部材を有し、
前記ラッチ部材は、設置される前記人孔蓋枠への挿入において、該人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、所定の設置位置に至ると前記受棚の内周面から外れて前記の鍔状部材が該受棚の下面に張出し動作をなす、
ことを特徴とする。
上記構成において、「フレーム体」すなわち機枠は、本固定装置の他の機能部材を取り付けるための剛性の基材であって、本実施形態では四角箱のケーシングを採るが、この態様に限定されるものではない。
「定常状態」は当該ラッチ部材が該ラッチ部材に係る付勢手段以外には他に何らの付勢力を受けないときに採る状態をいう。
「所定の設置位置」は、人孔蓋枠の本体の上面、受棚の上面(受面)、その他適宜の位置を採る。
本発明において、
1.本固定装置は通常には人孔用安全作業柵体の下端に2か所に、かつ対称的に配されること、
2.鍔状部材の下面に傾斜面が形成されること、
3.鍔状部材の下面にローラが配されること、
は適宜採択される技術的事項である。
【0006】
(作用)
本人孔用安全作業柵体の設置において、当該安全作業柵体の下端面を開蓋された人孔蓋枠の上面もしくは受棚の上面に載置するように、同時にその固定装置を人孔蓋枠の内周面に挿入してゆく。
このとき、当該固定装置のラッチ部材は、定常状態から人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、受棚の内周を容易に通過する。この引き込み動作は鍔状部材の下面の傾斜面あるいは該ローラとともに配されるローラによってなされるが、他の手段を採ることを妨げない。当該安全作業柵体の下端面が所定の設置位置に至ると該受棚の内周面から外れて該鍔状部材が該受棚の下面に張出し動作をなす。すなわち、該ラッチ部材は定常状態に復し、人孔蓋枠の受棚と係合状態すなわちロック状態となる。
これにより、本人孔用安全作業柵体は上方への抜け出しもなく、安定的に設置される。
本人孔用安全作業柵体の撤去は、当該固定装置のラッチ部材を定常状態からその弾性作用に抗して引込み状態とし、当該人孔用安全作業柵体を上方へ引き上げる。このとき、当該固定装置のラッチ部材は、人孔蓋枠の受棚との係合が外れ、本人孔用安全作業柵体は人孔蓋枠から容易に撤去される。
【0007】
(第2発明)
上記第1発明において、各ラッチ部材は互いに高さが異なる1つの鍔状部材を有し、低い高さの鍔状部材を有するラッチ部材(ラッチA)が高い鍔状部材を有するラッチ部材(ラッチB)を後退移動のみ拘束する構成を採ることは第2発明を構成する。
上記構成において、ラッチAがラッチBに対する拘束は以下の実施形態では押し棒によりなされるが、これに限定されない。
(作用)
本第2発明によれば、人孔蓋枠の受棚の厚さに応じてラッチ部材の動作が異なる。
すなわち、人孔蓋枠の受棚の厚さが薄い場合は、複数個のラッチ部材は全て人孔蓋枠の受棚の内周面を通過し、高い鍔状部材を有するラッチ部材をもって該受棚に係合する。人孔蓋枠の受棚の厚さが厚い場合は、低い高さの鍔状部材を有するラッチ部材が人孔蓋枠の受棚の内周面を通過し、高い鍔状部材を有するラッチ部材は該受棚の内周面により押し込まれた状態を持続する。この結果、低い鍔状部材を有するラッチ部材をもって該受棚に係合する。
【0008】
(第3発明)
また、上記第1又は第2のいずれかの発明において、定常状態での弾性作用に抗してラッチ部材の鍔状部材(の先端)を該人孔蓋枠の受棚の内周面よりも後退させる係合可能状態を持続的に解除するロック解除機構を有してなる構成を採ることは第3発明を構成する。
本ロック解除機構は、係合可能状態を持続的に解除する機能を有するものであれば、以下の実施形態で示される構造に限定されない。
(作用)
本第3発明によれば、本人孔用安全作業柵体の撤去作用が容易に行われる。
すなわち、本人孔用安全作業柵体の撤去において、当該ロック解除機構を作動すると、ラッチ部材の鍔状部材は人孔蓋枠の受棚の内周面よりも持続的に後退する状態を採り、該ラッチ部材は人孔蓋枠の受棚との係合が外れる。そして、本当該人孔用安全作業柵体を上方へ引き上げると、本人孔用安全作業柵体は人孔蓋枠から容易に撤去される。
【0009】
(第4発明)
本第4発明は人孔用安全作業柵体の固定装置に係り、請求項4に記載のとおり、
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置であって、
剛性を保持し、前記設置される人孔蓋枠の受棚の内径よりも小径をなすフレーム体が前記人孔用安全作業柵体の下端に固定され、
前記フレーム体を介して取り付けられ、弾性作用を受けて、定常状態でその鍔状部材が設置される前記人孔蓋枠の受棚の内径よりも大径をなし、該受棚と係合可能状態を採るラッチ部材を有し、
前記ラッチ部材は、設置される前記人孔蓋枠への挿入において、該人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、所定の設置位置に至ると前記受棚の内周面から外れて前記の鍔状部材が該受棚の下面に張出し動作をなす、
ことを特徴とする。
(作用)
本固定装置を装着した人孔用安全作業柵体の作用は、第1発明に準じる。
【0010】
(第5発明)
本第5発明は同じく人孔用安全作業柵体の固定装置に係り、請求項5に記載のとおり、
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置であって、
1)その上部が人孔用安全作業柵体に固定され、少なくとも平板状の前面板を有し、該前面板に四角形状の窓部が開設されるフレーム体を備え、
2)前記フレーム体の窓部に嵌まり込む板体が、該窓部の下縁に固設された弾性蝶番を介して後方への倒れに対して弾性復帰可能に配され、かつ該板体の前面に前方に突出する鍔体が固設されてなる1又は複数のラッチ部を備え、
3)前記端部のラッチ部において、その上面にロック解除レバーが立設され、かつその側端面にロックピン係合孔が開設され、
4)前記ラッチ部に相並んで配され、
a)軸方向の移動のみが許容され、該ラッチ部の後方への所定の倒れ移動に対応して前記ロックピン係合孔に付勢力をもって嵌まり込むロックピン、
b)前記フレーム体に取り付けられ、前記ロックピンを保持する保持枠、
c)前記ロックピンに連動し、該ロックピンを引き戻すロックピンの引戻し機構、
を有してなるロック解除機構を備える、
ことを特徴とする。
本第5発明は以下の第1、第2、第3実施形態で具体的に示される。
上記において、「後方」はラッチ部の倒れ方向、「前方」はその逆方向を表し、固定装置部分での動きに則しての表記用法であり、以下の実施形態での用法とは異なる。
更に上記において、「フレーム体」すなわち機枠は、本固定装置の他の機能部材を取り付けるための機材であって、本実施形態では四角箱のケーシングを採るが、この態様に限定されるものではない。
また、当該ラッチ部が該ラッチ部に係る付勢手段以外には他に何らの付勢力を受けないときに採る状態を「定常状態」とする。
更に、本人孔用安全作業柵体の底面は予め設置位置が決められたものであり、人孔蓋枠の本体の上面、受棚の上面(受面)、その他適宜の位置を採り得るものであり、それらに対応して「所定の設置位置」となる。
本発明において、
1.鍔体の下面に傾斜面が形成されること、
2.鍔体の下面にローラが配されること、
は適宜採択される技術的事項である。
【0011】
(作用)
本人孔用安全作業柵体の人孔蓋枠への設置並びに撤去に当り、本固定装置は次のように作用する。
本人孔用安全作業柵体の設置において、当該安全作業柵体の下端面を開蓋された人孔蓋枠の上面もしくは受棚の上面に載置するように、同時にその固定装置を人孔蓋枠の内周面に挿入してゆく。
このとき、当該固定装置のラッチ部は、定常状態から人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、受棚の内周を容易に通過する。この引き込み動作は鍔体の下面の傾斜面あるいは該ローラとともに配されるローラによってなされるが、他の手段を採ることを妨げない。当該安全作業柵体の下端面が所定の設置位置に至ると該受棚の内周面から外れて該鍔体が該受棚の下面に張出し動作をなす。すなわち、該ラッチ部は定常状態に復し、人孔蓋枠の受棚と係合状態すなわちロック状態となる。
これにより、本人孔用安全作業柵体は上方への抜け出しもなく、安定的に設置される。
本人孔用安全作業柵体の撤去は、当該固定装置のロック解除機構を作動させ、ロック解除レバーを後方へ倒すとロックピンが付勢力をもってロックピン係合孔に嵌挿し、ラッチ部を倒れ状態に保持する。これにより、ラッチ部は定常状態からその弾性作用に抗して持続的に引込み状態となり、該ラッチ部の鍔体は人孔蓋枠の受棚との係合が外れる。そして、当該人孔用安全作業柵体を上方へ引き上げると、本人孔用安全作業柵体は人孔蓋枠から容易に撤去される。
【0012】
(第6発明)
上記第5発明において、ロックピンの引戻し機構は、
1)保持枠に保持され、ロックピンの軸方向移動と直交移動する摺動子、
2)フレーム体に固設される中心ピンを回転中心にして揺動し、前記摺動子を進退動する揺動腕、
3)前記揺動腕の下端に回転自在に軸支され、その前端がラッチ部の鍔体よりも前方へ突出する押込みホイール、
4)前記揺動腕を元位置に復帰させる戻しばね部、
を備えてなる構成を採ることは第6発明を構成する。
上記において、「前方」は第5発明に準じる。
上記構成において、押込みホイールにつき、人孔蓋枠の曲率が考慮される場合には、該押込みホイールの前端とラッチ部の鍔体の前端とが面一となっていても該押込みホイールの動作に変わりがなく、従って実質的に突出するものである。
【0013】
(作用)
本ロックピンの引戻し機構は、人孔用安全作業柵体の人孔蓋枠への設置並びに撤去に当り次のように作用する。
本人孔用安全作業柵体の設置において、本ロックピンの引戻し機構が作動状態にあるとき、先ず押込みホイールが、人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けて揺動腕を後方に押し込み、揺動腕、摺動子、ロックピンを各移動させ、該ロックピンをロックピン係合孔から外す。これにより、ラッチ部は定常状態に復帰し、その後ラッチ部は上述した人孔蓋枠の受棚との当接作用を受けることになる。本ロックピンの引戻し機構が作動状態にないときには、ラッチ部は定常状態にあるので、ロックを解除する必要はない。
本人孔用安全作業柵体の撤去は、当該固定装置のロック解除機構を作動させ、ロック解除レバーを後方へ倒すとロックピンが付勢力をもってロックピン係合孔に嵌挿し、ラッチ部を倒れ状態に保持する。これにより、ラッチ部は定常状態からその弾性作用に抗して持続的に引込み状態となり、該ラッチ部は人孔蓋枠の受棚との係合が外れる。そして、当該人孔用安全作業柵体を上方へ引き上げると、本人孔用安全作業柵体は人孔蓋枠から容易に撤去される。この過程で、押込みホイールが、人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けて揺動腕を後方に押し込み、揺動腕、摺動子、ロックピンを各移動させ、該ロックピンをロックピン係合孔から外す。これにより、ラッチ部は定常状態に復帰する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の人孔用安全作業柵体によれば、当該人孔用安全作業柵体の設置は人孔蓋枠に簡単な操作で迅速に、強固かつ確実に設置され、設置後の該人孔用安全作業柵体を介してなされる作業者の入出の安全性が確保できる。
また、当該人孔用安全作業柵体の撤去においても、簡単な操作で迅速に撤去され、作業効率が向上する。
特に、本人孔用安全作業柵体の固定装置が押込みホイール、揺動腕からなる解除機構を有することにより、当該固定装置がロック解除状態のままであっても、本人孔用安全作業柵体の挿入に際し、自動的にラッチ部は定常状態となり、ラッチ部を定常状態にする必要はなく、その手間が省け、使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の人孔用安全作業柵体の装着される人孔蓋枠の全体を示す平面構成図。
【図2】本発明の人孔蓋枠に設置された人孔用安全作業柵体の一実施形態の全体を示す一部断面一部正面構成図(図3、図4の2方向矢視図)。
【図3】本安全作業柵体の平面図(図2、図4の3方向矢視図)。
【図4】本安全作業柵体の側面図(図2、図3の4方向矢視図)。
【図5】本発明の人孔用安全作業柵体に装着される固定装置の一実施形態の全体を示す正面図(図6の5方向矢視図)。
【図6】固定装置の平面図(図5の6方向矢視図)。
【図7】図5の部分拡大図。
【図8】図7の8−8線断面図。
【図9】ロック解除機構の全体構成図。
【図10】図9の10−10線断面図。
【図11】図10の11−11線拡大断面図。
【図12】図11の12−12線断面図。
【図13】本発明の人孔用安全作業柵体に装着される固定装置の他の実施形態を示す部分部。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の蓋枠への固定装置を有する人孔用安全作業柵体の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図12に基づいてその一実施形態(第1実施形態)の蓋枠への固定装置を有する人孔用安全作業柵体Sを説明する。
すなわち、図1は本蓋枠への固定装置を有する人孔用安全作業柵体Sの設置される人孔蓋枠Mを示し、図2〜図4は本人孔用安全作業柵体Sの全体の構成を示し、図5〜図12はその部分並びに詳細構成を示す。
本蓋枠への固定装置を有する人孔用安全作業柵体(以下単に「安全作業柵体」という。)Sは、開蓋された人孔蓋枠Mに装着して使用されるものであり、本安全作業柵体Sの説明において、作業者の出入りする側を前部とする。
【0017】
先ず、本人孔用安全作業柵体Sの設置される人孔蓋枠Mについて説明する。本人孔蓋枠Mには常時は所定の鉄蓋F(図示せず、符合のみ)が嵌合装着され蓋状態となっているが、該鉄蓋Fは本発明の本旨から外れるので、その説明は省略する。
人孔蓋枠M(図1、図2参照)
本人孔蓋枠Mは、円環状をなす本体100と該本体100の下端の外周に水平状に張設される底板部102とが鉄製をもって一体的に成形されてなる基本的構成を採る。本体100の外側面には底板部102と一体(鉄製)のリブ104が間隔を保って突設される。そして、該本体100の上面106は平滑面をなし、本体100の内周面は上部において下方に至るにつれ縮径するテーパ面108が形成され、該テーパ面108に続いて水平状の受面110を上面に有する棚部112が突設され、該棚部112より下方は鉛直状の下壁面114が形成される。
図示されるように本人孔蓋枠Mの棚部112の厚さは薄い(小さい)ものとなっている。
120は該人孔蓋枠Mの一内周部の1箇所(当該箇所を本人孔蓋枠Mの後部とする。)に一体に突設された鉄蓋用棚部である。該鉄蓋用棚部120には挿通孔122が開設される。
【0018】
本人孔用安全作業柵体Sは、上記した人孔蓋枠Mに対応して設置される。
人孔用安全作業柵体S(図2〜図4参照)
本人孔用安全作業柵体Sは、上部の柵本体Saと該柵本体Saの下方に固設される固定装置Sbとの主要部からなる。
【0019】
柵本体Sa(図2〜図4参照)
柵本体Saは、一部に切欠きをもつ環状の底板体1と、該底板体1と同位相をなすとともに該底板体1の上面に固設される円環状の下枠杆2と、該下枠杆2より立設される柱杆3と上枠杆4と中間枠杆5とからなり前部に作業者の出入空間を形成する上枠部6とから骨格体が構成され、更には、下枠杆2の前部に取り付けられる前部把手部7、を含む。また、上枠部6の上枠杆4の後端部に立設されるパイロット灯用取付け杆8が付加される。
【0020】
以下、柵本体Saの各部の細部構造について説明する。
底板体1・下枠杆2
底板体1は、金属平板をもって一定厚及び一定幅の環状体に形成され、人孔蓋枠Mの棚部112の受面110に載置される。本実施形態では底板体1の後端には切欠き10が入れられるが、該切欠き10は適宜省略可能である。
底板体1の内径部の両側に、固定装置Sbとの連結を図る取付け部12が設けられる。該取付け部12は内径方向へ張り出す棚状をなし、ビス孔13、レバー挿通凹部14が開設されてなる。
下枠杆2は、軽量金属(例えばアルミニウム)の中空円管よりなり、底板体1と同位相をなすとともに該底板体1の上面に溶接等をもって固設される。
【0021】
上枠部6
上枠部6は、下枠杆2より斜めに立設される柱杆3と、該柱杆3の上端に固設される上枠杆4と、該柱杆3間に配される中間枠杆5とからなる。柱杆3、上枠杆4及び中間枠杆5は下枠杆2と同様に軽量金属の中空円管よりなり、全体として柵構造を作り、前部は作業者の出入空間を形成する。
(柱杆3)
柱杆3は、複数本よりなり、上方に至るにつれ内径方向に傾斜して下枠杆2に一定間隔を保って立設される。前端部の2つの柱杆3aは平行状を保つ。該前端部の斜め柱杆3aは作業者の把手の機能も担う。
(上枠杆4)
上枠杆4は、前部を作業者の出入のために大きく開放して、柱杆3の上端に水平を保って固設される。すなわち、該上枠杆4は半周を若干超える半円状を採り、該上枠杆4の両端部は前端部の柱杆3aの上端に連なる。
該上枠杆4は本実施形態では半円を超えるが、場合によっては半円以下の態様を採ることを妨げない。
(中間枠杆5)
中間枠杆5は、柱杆3間に水平状に配される。該中間枠杆5は上枠杆4とともに作業者の把手の機能を担う。
(上枠部6)
下枠杆2、柱杆3、上枠杆4及び中間枠杆5は上述した中空円管に限らず、中実の部材また多角部材であってもよく、更には素材もアルミ製に限らず、他の金属素材(例えばステンレス鋼)が適宜に選ばれる。要は、下枠杆2及び柱杆3と上枠杆4と中間枠杆5との一体構造が強固な構造体を構成することを満足するものであればよい。
なお、本実施形態では、柱杆3は内径方向に上方に至るにつれ傾斜し、縮径する態様を採るものであるが、垂直に立設されることを妨げるものではない。
【0022】
(骨格体)
上記の底板体1、下枠杆2及び柱杆3と上枠杆4と中間枠杆5とからなる上枠部6により本人孔用安全作業柵体Sの骨格体が構成される。該骨格体は一体的構造体をなし、剛性をもって大きな強度を発揮する。
【0023】
前部把手部7
前部把手部6は、逆U字状をなし、下枠杆2の前部上面の内縁部に沿って低い位置に取り付けられる。その水平部は下枠杆2の内周縁に沿う曲率を持ち、作業者の出入の障害にならない高さを採る。
パイロット灯用取付け杆8
パイロット灯用取付け杆8は、上枠部6の上枠杆4の後端部に立設され、
この取付け杆8にパイロット灯(回転灯)が装着される。なお、該パイロット灯用取付け杆8はこの態様に限らず、上枠部6の他の側面に取り付けられることを妨げない。
【0024】
固定装置Sb(図5〜図12参照)
固定装置Sbは、ケーシングにラッチ機構を配した構成を採り、該ケーシングを介して柵本体Saの底板体1の取付け部12に固設される。
以下の本固定装置Sbの説明において、「前部」は柵本体Saの外側から中心に向けての視点から決められ、また「左右」は柵本体Saの内側上方の視点から、あるいは作業者がロック解除レバーを押し倒す視点から決められる。
該固定装置Sbは、本実施形態では、
1)四角箱状のケーシング20(前面板20a、上面板20b、下面板20c,両側面板20d、背面板20e)、
2)該ケーシング20の前面に配されるラッチ部A21、ラッチ部B22、ラッチ部C23の複数のラッチ部、
3)該ラッチ部に連動するとともに、その主要部が該ケーシング20の内部に組み込まれ、かつ手動をもって操作されるロック解除機構24、
を主要構成とする。
【0025】
以下、該固定装置Sbの各部の構成について詳細に説明する。
ケーシング20(図5〜図8参照)
ケーシング20は、内部が中空状の四角箱体をなし、前面板20a、上面板20b、下面板20c,左右の両側面板20d及び背面板20eからなる。前面板20a、上面板20b、下面板20c及び左右の両側面板20dは一体開放箱状に構成されて背面に向けて開放され、背面板20eはこの開放箱状体を背面から嵌め外し可能に閉塞する。なお、この組立関係は、背面板20e、上面板20b、下面板20c及び左右の両側面板20dが一体となり、前面板20aが嵌め外し可能とされてもよい。また、該ケーシング20は密閉性よりも剛性をもって該ケーシング20に装着される各機構を保持する機枠(フレーム)機能が重視されるものであり、したがって、機枠機能を満たすものであれば各板材は適宜に省略ないしはその一部分の削除が可能である。
前面板20aには、ラッチ部A、ラッチ部B、ラッチ部Cの配される四角枠状の窓部26が開設される。更に、該前面板20aには窓部27,28が設けられる。
上面板20bには、後記するロック解除部24のロック解除レバーの前後動を案内する細長状の案内孔30が設けられ、またその両側方に延設され、該延設部に前記した柵本体Saの底板体1に形成された取付け部12のビス孔13に対応する複数のビス挿通孔31が開設される。
したがって、本固定装置Sbの柵本体Saへの取付けは、該案内孔30を取付け部12のレバー挿通凹部14に対応させ、該ビス挿通孔31を取付け部12のビス孔13に一致させて両孔31,12に装着される締結具(ビス)をもって固定する。
【0026】
ラッチ部A〜C21,22,23(図5〜図8参照)
ラッチ部A21、ラッチ部B22、ラッチ部C23の各ラッチ部は、ケーシング20の前面板20aの窓部26に各独立して装着され、一部共通する構成を採るとともに、各機能に応じた特有の構成を採る。
したがって、ラッチ部A21、ラッチ部B22、ラッチ部C23は、各独立して作動するとともに、相互に連動して作動するものでもある。
なお、ラッチ部A21は「中央ラッチ(あるいはセンターラッチ)」、ラッチ部B22は「左ラッチ(あるいはレフトラッチ)」、ラッチ部C23「右ラッチ(あるいはライトラッチ)」、と称される。
【0027】
(ラッチ部A21)(図7、図8参照)
ラッチ部A(すなわち中央ラッチ)21は、
1)縦に長い長方形の剛性を有する板体35A、
2)該板体35Aの上端より一定距離を存して前方に突設された鍔体36A、
3)該鍔体36Aの下部に配されるローラ37aを主体とするローラ部37A、4)該板体35Aの下端とケーシング20の前面板20aの窓部26の下縁部とを弾性(ばね付勢)作用をもって繋ぐ弾性蝶番38A、
5)右に隣接するラッチ部に対して設けられる凹部39A、
6)左に隣接する他のラッチ部に対して突設する押し棒40A、
7)板体35Aの背面の上端部に固設される庇体41A、
の各部材からなる。
もっと詳しくは、板体35Aは、一定厚を有し、剛性を保持し、縦に長い長方形の平板体をなす。該板体35Aの上端縁は窓部26の上縁より若干の隙間を存して配される。剛性を増すために適宜に補強用のリブ(図示せず。)が該板体35Aの裏面(または表面)に形成されることは設計上の配慮である。
鍔体(あるいは鍔状部材ともいう。)36Aは、剛性を有し、板体35Aの上端より一定距離を存して前方に突設される。該鍔体36Aは上面36aが水平面をなし、前端面36bを介して下面36cが斜め下方に厚さを減ずる塊体となっているが、剛性を有するものであれば、この形状に限定されない。前端面36bは適宜に丸みをもって形成されることは自由である。該鍔体36Aには、後記するローラ部37Aを配する凹部、軸孔が形成される。
該鍔体36Aは、その上面36aが人孔蓋枠Mの棚部112の下面に当接することになる。
ローラ部37Aは、ローラ37aと該ローラ37aの中心を貫通する軸37bとからなり、鍔体36Aの下面に、前記した鍔体36Aの凹部及び軸孔内に一体に組み込まれてなる。すなわち、軸37bは鍔体36Aの軸孔内に回転不能に強嵌合されて該軸孔に軸支され、ローラ37aは該軸37bに対して回転自在となっている。
しかして、ローラ37aはその円周側面を鍔体36Aの傾斜下面36cより突出し、鍔体36Aの前端面36bよりわずかに突出するか、ほぼ面一に配される。
【0028】
弾性蝶番38Aは、ピン軸38a、該ピン軸38a回りに回動する2つの翼板38b、該2つの翼板38bに跨がって配されるばね体38cよりなり、該板体35Aの下端とケーシング20の前面板20aの窓部26の縁部とを弾性(ばね付勢)作用をもって接続する。すなわち、該弾性蝶番38Aは板体35Aの前面とケーシング20の前面板20aの前面とにその翼板38bを当接し、ビス43をもって固定される。該弾性蝶番38Aはそのピン軸38a回りに回動するが、上下の翼板38b間に介装されるばね体38cの作用により回動後は直ちに元状態に復帰する。該弾性蝶番38Aは直線状(180°)で停止状態となり、後方への倒れは許容するが、前方への倒れは阻止される。これにより、板体35Aが後方に倒す力を受けたとき、該板体35Aは弾性蝶番38Aのピン軸38a回りに回動し、その力が取り除かれると直ちに元位置に復帰するものである。なお、本弾性蝶番38Aは公知のものである。
凹部39Aは、隣接するラッチ部に対応して当該板体35Aの側面に凹設され、該隣接するラッチ部の側面から突設される押し棒40(この場合40C)に当接する。
押し棒40Aは、隣接する他のラッチ部に対応して当該板体A35の側面に固定され、該隣接する他のラッチ部の側面に跨がって突設される。本実施形態における押し棒40Aは、鍔体36Aの下面36c部分の厚み内に穿設された固定孔に強嵌挿された態様を採るが、これに限定されず、例えば鍔体36Aの側面に溶接固定されてもよい。
庇体41Aは、直方体状の剛性をなし、板体35Aの背面の上端部に固設される。該庇体41Aの背面とケーシング20の背面板20eとの距離は該板体35Aの後方への倒れに対し、その倒れ角度を規制する。該庇体41Aは適宜省略されうるものであり、また、その軽量化のため空洞、凹部が適宜に形成される。更に該庇体41Aは、ラッチ部Cを除いて、省略されてもよく、また軟質のものであってもよい。
【0029】
(ラッチ部B22)
ラッチ部B(すなわち左ラッチ)22は、ラッチ部Aとほぼ同一の部材構成を採り、板体35B、鍔体36B、ローラ部37B、弾性蝶番38B、凹部39B及び庇体41Bの各部材を有し、押し棒はない。しかして、これらの部材のうち、鍔体36B、ローラ部37B、凹部39Bの配設位置がラッチ部Aと異なる。
すなわち、鍔体36Bは鍔36Aよりも上方位置にあり、それらの上面36aの高さの違いが後述するように人孔蓋枠Mの棚部112の厚さの差に対応する。したがってローラ部37Bもローラ部37Aよりも上方に位置する。凹部39Bの位置はラッチ部Aの押し棒40Aの位置に対応し、同一水平位置を採る。
該ラッチ部B22はラッチ部A21とほぼ同一の作用・動作をなす。
【0030】
(ラッチ部C23)
ラッチ部C(すなわち右ラッチ)23は、板体35C、弾性蝶番38C、押し棒40C、庇体41Cの各部材を有し、ローラ部、鍔体、凹部を有しない。すなわち、該ラッチ部C23はその表面が押し棒40C以外の突起物はなく、実質的に平面状をなす。
更に述べれば、本ラッチ部C23において、押し棒40Cは隣接するラッチ部の凹部39Aに対応する位置に配されるが、その取付けは板体35Cの表面に直接的に固定される。また、庇体41Cは剛性を保ち、その右側面は平滑面を保持し、更にその右側面の前部に円形の凹部または凹孔が開設される。
しかして、該ラッチ部Cは他のラッチ部に連動するとともに、ラッチ解除機構とも連動するものである。このため、該ラッチ部Cにおいて、上記した庇体41Cの側面部及び凹部の外、その上面にラッチ解除レバーが固設される。
【0031】
(ラッチ部A,B,Cの動作)
ラッチ部A,B,Cは、動作に応じて各独立であるとともに各連動する。
すなわち、ラッチ部の定常位置より、ラッチ部Cが後方へ傾倒することにより、該ラッチ部Cの押し棒40Cはラッチ部Aの凹部39Aを介してラッチ部Aを後方へ傾倒させ、更にラッチ部Aはその押し棒40Aを介してラッチ部Bを後方へ傾倒させる。
また、ラッチ部A,B,Cは、各独立であるので、ラッチ部Cの前方への復帰はラッチ部A(したがってラッチ部Bも)を残置して元位置に戻る。同じく、ラッチ部Aの前方への復帰はラッチ部Bを残置して元位置に戻る。
【0032】
ロック解除機構24(図9〜図7、図9〜図12参照)
ロック解除機構24は、ラッチ部に連動し、その機構の大部分がケーシング20の内部に組み込まれ、ケーシング20の外の手動レバー及び押込みホイールをもって操作される。
該ロック解除機構24は、本実施形態では、
1)ラッチ部C23に配されるロック解除レバー50とロックピン係合孔51、
2)ロックピン52及び摺動子53を保持する保持枠54、
3)中心ピン55を回転中心にして揺動し、前記摺動子52を進退動する揺動腕56、
4)該揺動腕56の下端に回転自在に軸支される押込みホイール57、
5)該揺動腕56を元位置に復帰させる戻しばね部58、
を含む。
【0033】
(ロック解除レバー50・ロックピン係合孔51)
ラッチ部C23の上面にはレバー棒50aと握り部50bとからなるロック解除レバー50が固設される。ロック解除レバー棒50aの移動はケーシング20の上面板20bの案内溝30に案内される。
ラッチ部C23の上部は前記したとおり一定厚さを保持する庇部41Cを有し、その右側面は平滑面をなし、またその前面寄りにロックピン係合孔51が凹設される。
ロック解除レバー50の押込みによりラッチ部C23は弾性蝶番38Cを中心に後方に倒れ込む。
【0034】
(ロックピン52・摺動子53・保持枠54)
保持枠54は実質的に四角箱状をなし、ロックピン52、摺動子53及びその他の機能部材を保持する機能を有し、ケーシング20の上部(すなわちラッチ部C23上部位置に対応)に固定される。
保持枠54は前後の長さがケーシング20の内部幅と等しく、その天井板54aと底板54bとは後壁板54c、側壁板54d及び隔壁板54eによって一定高さを保持し、かつは該保持枠54は全体的に剛性を保持する。該保持枠54には後述するように、側壁板54d及び隔壁板54eとにロックピン52の挿通孔54f, 54gが開設され、天井板54aにはロックピン52の案内用の長孔54hが開設され、更に底板54bには摺動子53の案内用の長孔54iが開設される。
ロックピン52は、丸棒状のピン本体52aと、該ピン本体52aの端部(後端)の同じく丸棒状の鉛直棒52bと、該ピン本体52aの前方寄りに固定される鍔状の反力受け52cとからなる。また、コイルばね52cも含む。
丸棒状のピン本体52aは、保持枠54の側壁板54d及び隔壁板54eに開設されたピン保持孔54f, 54gに挿通され、また反力受け52cと隔壁板54eとの間にコイルばね52cが装着される。これにより、ロックピン52はピン本体52aの軸方向に移動自在とされ、かつピン本体52aの軸方向の前方に向けて付勢力を受ける。その前端面はラッチ部C23の壁面に当接する。
ピン本体52aの後端の鉛直棒52bは以下の摺動子53と所定の関係をもって、52に所定の動作を与える。
摺動子53は、1つの直方体をなし、上下面を保持枠54の天井板54aと底板54bとの間に摺動自在に挟着され、内部にロックピン52のピン本体52aを受け入れる摺動孔53aが開設される。
直方体はその一側(右側面)が切り欠かれて傾斜面53bが形成される。
ロックピン52の鉛直棒52bは摺動子53の高さよりも長くされ、その上部は保持枠54の天井板54aに形成された案内長孔54iに嵌合する。
これらのロックピン52・摺動子53・保持枠54相互の関係性については、ロックピン52は定常状態でコイルばね52cの付勢力を受けてラッチ部Cに向けて押圧されているが、ラッチ部Cの側壁面に当接して移動は阻止される。ラッチ部Cが移動してそのロックピン係合孔51がロックピン52の位置に来ると、ロックピン52は変位を起し、ロックピン係合孔51に入り込む。これにより、ロック状態となる。このとき、ロックピン52の鉛直棒52bは当初の位置から摺動子53の側面に当接する位置に前進変位する。なお、摺動子53の移動はない。
摺動子53を強制力をもって引き込むと、ロックピン52の鉛直棒52bは摺動子53の傾斜面53bとの当接により該傾斜面53bからの分力を受けて右方向へ後退移動し、従ってロックピン52はコイルばね52cの付勢力に抗して後退移動する。これにより、ロックピン52はロックピン係合孔51から外れ、定常状態に復する。
【0035】
(揺動腕56)(図9、図10参照)
揺動腕56は中心ピン55を回転支点にして揺動し、摺動子52を進退動する機能をなす。
揺動腕56は長尺の平板体をなし、保持枠54の下方のケーシング20の内部空間の大宗を占める。その上端にピン体56aが突設され、下部寄り及び下端部にそれぞれピン体の挿通孔が開設され、また、中間部に突起体56bが固定されてなる。
中心ピン55はケーシング20の右の側面板20dに固定される柱材60を介して取り付けられる。中心ピン55は揺動腕56の下方寄りに取り付けられているので、該揺動腕56の下端の移動よりも該揺動腕56の上端は大きな変位となる。
揺動腕56の上部において、ピン体56aは、前記した摺動子53の下面に固定された直方体状のスラスト体61の下面に形成された凹部61a内に嵌合する。
スラスト体61は保持枠54の底板54bに開設された案内用の長孔54iに嵌ま込み、該長孔54iに前後動を案内される。また、ピン体56aはスラスト体61の凹部61aに揺動腕56の揺動に伴う高さ方向の変動分(隙間)を存して嵌合する。
【0036】
(押込みホイール57・戻しばね部58)
押込みホイール57は、揺動腕56の下端に回転自在に軸支され、その一部はケーシング20の窓部27を介して該ケーシング20の外側に突出する。すなわち、押込みホイール57の中心軸体は揺動腕56の回転軸孔を介して回転自在に軸支され、押込みホイール57の本体の回転をなす。該押込みホイール57は外部からの押込み力を受け、かつその力を揺動腕56に伝達する。
戻しばね部58は、保持枠54の底板54bの下面に固定され、下方へ垂設れる剛性を保つ反力棒58aと、該反力棒58と前記した揺動腕56の突起体56bとの間に介装される引張りばね58bとを主体とする。該戻しばね部58は定常位置では実質的に力を作用させず、揺動腕56が離れると引張り作用を発揮し、揺動腕56を元位置に復帰させる。
押込みホイール57に押込み力が押込み方向に作用すると、揺動腕56は中心ピン55を回転中心にして上部(ピン体56a)が前記押込み方向の逆方向(引込み方向)へ移動し、スラスト体61(摺動子53)を引込み方向に引き寄せる。揺動腕56の上方部の引込み方向への変位に伴い戻しばね部58の引張りばね58bは引張り付勢作用を発揮し、その引戻し力により揺動腕56を元位置に復帰させる。
【0037】
(本実施形態の作用)
叙上の構成よりなる人孔用安全作業柵体Sは、開蓋された人孔の開口に臨んで設置され、当該当該設置された安全作業柵体Sを介して作業者が人孔に入出する。
そして、この設置作業において、本人孔用安全作業柵体Sはその固定装置Sbをもって設置の迅速化、確実化が図られ、かつは撤去の安全化、迅速化が図られる。
【0038】
A.本人孔用安全作業柵体Sの設置
以下、本人孔用安全作業柵体Sの設置作業を行程順に説明する。
本態様では、人孔蓋枠Mの棚部112の厚さが薄い場合について述べる。
(1)
本人孔用安全作業柵体Sを設置する当り、人孔の鉄蓋F(図示せず)が開放される。該鉄蓋Fの揺動腕は人孔蓋枠Mの鉄蓋用棚部120の挿通孔122に遊嵌挿されており、該鉄蓋Fを持ち上げた後、該鉄蓋Fの揺動腕を回動中心にして180°水平回転して開放される。
なお、本人孔用安全作業柵体Sの固定装置Sbについては、そのロック解除レバー50は作動状態、すなわちすべてのラッチ部A,B,Cが後退した状態(非定常状態)を維持するロックされた状態にある。
【0039】
(2)
作業者は本人孔用安全作業柵体Sの柵本体Saの適宜位置(通常は上枠杆4)を把持し、本安全作業柵体Sの底板体1を開蓋された人孔蓋枠Mの棚部112の受面110に載置するように本人孔用安全作業柵体Sを人孔蓋枠M内に装入してゆく。本安全作業柵体Sの後部、すなわち底板体1・下枠杆2の後部は切欠き10を有しており、該切欠き10を鉄蓋Fの揺動腕を跨いで設置される。
本人孔用安全作業柵体Sにつき、当該固定装置Sbの初期状態はロック解除レバー50の作動・非作動状態を問わず、両状態での使用が可能であるが、上記したとおり、ここでは作動状態にある(すなわち、ロック解除レバー50が倒れた状態にある。)とする。
そして、2つの相対する当該固定装置Sbは、人孔蓋枠Mの棚部112の内径内に挿入されてゆく。
【0040】
(3)
本固定装置Sbの押込みホイール57が人孔蓋枠Mの棚部112の内周面に当接し、該押込みホイール57が押込み力を受けると、ロック解除機構24が作動し、ロックピン52がラッチ部C23のロックピン係合孔51から外れ、全てのラッチ部A,B,Cは定常状態を採る。
(3-1)
上記の押込みホイール57によるロック解除機構24の作動について述べる。
押込みホイール57が押込み力を受けると、揺動腕56の下部は前方(人孔の中心方向)へ移動するとともに、該揺動腕56は中心ピン55を回転中心にして上部(ピン体56a)が後方へ移動し、スラスト体61及び摺動子53を後方に引き寄せる。
摺動子53が後方に引き寄せられると、ロックピン52の鉛直棒52bは摺動子53の傾斜面53bとの当接により該傾斜面53bからの分力を受けて右方向へ移動し、ロックピン52はコイルばね52cの付勢力に抗して後退移動する。これにより、ロックピン52はロックピン係合孔51から外れ、該ロックピン52は定常状態(開放状態)に復する。
ロックピン52がラッチ部Cのロックピン係合孔51から外れることにより、ロックピン52により拘束されていたラッチ部Cはその弾性蝶番38Cの復帰力により元位置に戻り、また、各ラッチ部A,ラッチ部Bも各独立してそれらの弾性蝶番38A,Bの復帰力により元位置に戻る。これにより、ラッチ部は定常状態を採る。
(3-2)
この状態で押込みホイール57が下降すると、人孔蓋枠Mの棚部112の内周面から外れ、人孔蓋枠Mの下壁面114に至ると押込み力から開放され、揺動腕56は戻しばね部58の引張りばね58bの引戻し力により元位置に復帰する。これにより、揺動腕56・押込みホイール57、更にはスラスト体61、摺動子53は定常状態に復する。
【0041】
(4)
更に本固定装置Sbが下降し、ラッチ部が人孔蓋枠Mの棚部112に至ると、先ず、ラッチ部C23には格別の突起物はなく該棚部112の内周面を抵抗なく通過し、次いで、ラッチ部A21がそのローラ部37A及び鍔体36Aの順に人孔蓋枠Mの棚部112の内縁に当接した後、人孔蓋枠Mの棚部112の内周面に当接押圧され、当該内周面から押込み力を受ける。このとき、ローラ部37Aのローラ37aはラッチ部A21の挿入動作を円滑にする。
これにより、ラッチ部A21は前方(背部)へ倒れ込み、その押し棒40Aにより隣接するラッチ部B22も連動して前方へ倒す。
【0042】
(5)
この状態で、本固定装置Sbが下降を続け、ラッチ部Aが下降すると、該ラッチ部Aは人孔蓋枠Mの棚部112の内周面から外れ、定常状態に復するが、ラッチ部Bは引き続き人孔蓋枠Mの棚部112に至り、該棚部112の内周面から押圧作用を受け、倒れ込み状態となる。
【0043】
(6)
本固定装置Sbが更に降下し、所定の設置位置すなわち本人孔用安全作業柵体Sの柵本体Saの底面が人孔蓋枠Mの棚部112の受面110に接近すると、その直前でラッチ部Bは人孔蓋枠Mの棚部112の内周面から外れ、当該鍔体36Bは該棚部112の下面部位に入り込む。
これにより、本固定装置Sbはラッチ部Bの鍔体36Bをもって人孔蓋枠Mの棚部112と係合状態となり、本人孔用安全作業柵体Sの抜出し力に対抗し、安定的な設置状態を採る。
【0044】
(7)
以上をもって本人孔用安全作業柵体Sの設置作業は終了する。
なお、上記の工程中、工程(1) においてロック解除レバー50が作動状態になく、ラッチ部が定常状態となっているとき、工程(3) において押込みホイール57が押込み力を受け、ロック解除機構24が作動したとしてもラッチ部Cへの作用はなく、ラッチ部は定常状態を保持する。しかる後、工程(4) 以降の工程を採る。
そして、この間の設置過程はすべて迅速になされ、かつ本人孔用安全作業柵体Sの自重も相まって格別の押込み力を要せず設置される。
【0045】
作業者の人孔との入出
その後、作業者は本人孔用安全作業柵体Sの前部から人孔との入出をなす。
入孔においては、作業者は本安全作業柵体Sの前部から入り込み、適宜に本安全作業柵体Sの上枠杆4、中間枠杆5、前部把手部7を把持しながら、人孔内の足掛けを介して人孔内を下降する。
出孔においては、作業者は人孔内の足掛けを介して人孔内を上昇し、人孔の開口部に至ると、適宜に本安全作業柵体Sの前部把手部7、中間枠杆5、上枠杆4を把持しながら、本安全作業柵体Sの前部から出孔する。このとき、本安全作業柵体Sの前部把手部7は低くなっており、出孔の障害とはならない。
【0046】
B.本人孔用安全作業柵体Sの撤去
(1)
本人孔用安全作業柵体Sに取り付けられた固定装置Sbのロック解除レバー50を前方(人孔中心方向)に倒し、全てのラッチ部A,B,Cを倒れ状態に保持し、これによりラッチ部Bの鍔体36Bを人孔蓋枠Mの棚部112から引き込み、引抜き可能状態にする。
すなわち、ロック解除レバー50を前方に倒し、ラッチ部Cを前方に倒すと、ラッチ部A,B,Cは押し棒40C,40Aを介して連動しており、結果的にラッチ部Bは上記の状態となる。
一方、ロック解除レバー50の前方への倒れに応じて、ロックピン52の先端はラッチ部Cの側壁面を滑り、そのロックピン係合孔51に至ると該ロックピン52は軸方向への付勢力をもって該ロックピン係合孔51内に入り込む。このとき、ロックピン52は左方へ移動するが、該ロックピン52の鉛直棒52bは摺動子53の側面に当接状態となって停止する。あるいはまた、ロックピン52の反力受け52cが側壁板54dに当接することによって停止する。
これにより、以後ラッチ部Cは倒れ状態を維持する。
【0047】
(2)
作業者は本人孔用安全作業柵体Sの柵本体Saの適宜位置(通常は上枠杆4)を把持し、人孔蓋枠Mの棚部112より本固定装置Sbを引き抜くように本人孔用安全作業柵体Sを上方へ引き上げる。
このとき、本固定装置Sbのラッチ部A,B,Cの全ては引込み状態となっており、人孔蓋枠Mの棚部112の内周面を容易に通過する。そして、少なくとも最下方のラッチ部Bの鍔体36Aは棚部112から抜け出る。
【0048】
(3)
この状態で、押込みホイール57が人孔蓋枠Mの棚部112に至ると、該押込みホイール57は人孔蓋枠Mの棚部112の内周面に当接し、該押込みホイール57は押込み力を受ける。これにより、ロック解除機構24が作動し、ロックピン52がラッチ部Cのロックピン係合孔51から外れ、ラッチ部の全てのラッチ部A,B,Cは定常状態を採る。
(3-1)
なお、押込みホイール57が人孔蓋枠Mの棚部112の内周面から格別の押圧力を受けることなく通過する場合、ロック解除機構24は作動しないが、本人孔用安全作業柵体Sを上方へ引き上げに支障はない。
【0049】
(4)
押込みホイール57は人孔蓋枠Mの棚部112の内周面を転動し、該棚部112の上方に抜け出る。
以上をもって本人孔用安全作業柵体Sの撤去作業は終了する。
なお、この間の撤去過程はすべて迅速になされ、かつ本人孔用安全作業柵体Sの重量は軽量であり、格別の引上げ力を要せず容易に撤去される。
【0050】
(本実施形態の効果)
本実施形態の人孔用安全作業柵体Sによれば、固定装置Sbを介することにより、当該人孔用安全作業柵体Sの人孔蓋枠Mへの設置は簡単な操作で、迅速かつ確実に設置される。
すなわち、その固定装置Sbの作動により、そのラッチ部の鍔体が人孔蓋枠Mの棚部112へ係合し、引抜き力に対抗し、確実な固定がなされる。
そして、設置後の該人孔用安全作業柵体Sを介してなされる作業者の入出の迅速性及び安全性が確保できるとともに、この人孔用安全作業柵体Sの設置により工事中における通行人の安全が図られ、パイロット灯用取付け杆10へのパイロット灯の装着により通行人の注意が図られ、安全性が一層増大する。
また、当該人孔用安全作業柵体Sの撤去においても、簡単な操作で迅速に撤去され、作業効率が向上する。
特に、本実施形態の人孔用安全作業柵体Sの固定装置Sbが押込みホイール57、揺動腕56を有する解除機構24を有することにより、当該固定装置Sbがロック解除状態のままであっても、本人孔用安全作業柵体Sの挿入に際し、自動的にラッチ部は定常状態となり、ラッチ部を予め定常状態にする必要はなく、手間が省け、使い勝手がよい。
【0051】
(別な態様)
C.本人孔用安全作業柵体Sの設置
叙上の形態では、人孔蓋枠Mの棚部112が薄い場合の設置・撤去作業について述べたが、該棚部112が厚い場合の設置・撤去作業については以下のとおりである。
Aの(1) 〜(4) の行程は本態様Cにおいても同様である。
【0052】
(5)
この状態で、本固定装置Sbが降下し、ラッチ部Aが降下すると、ラッチ部Aは人孔蓋枠Mの棚部112の内周面との押圧状態を続け、引き続きラッチ部Bが人孔蓋枠Mの棚部112に至るが、ラッチ部Bはラッチ部Aの押し棒40Aの作用により倒れ込み状態を続ける。
【0053】
(6)
本固定装置Sbが更に降下し、所定の設置位置すなわち本人孔用安全作業柵体Sの柵本体Saの底面が人孔蓋枠Mの棚部112の受面110に接近すると、その直前でラッチ部Aは人孔蓋枠Mの棚部112の内周面から外れ、当該鍔36Aは該棚部112の下面部位に入り込む。
これにより、本固定装置Sbはラッチ部Aの鍔36Aをもって人孔蓋枠Mの棚部112と係合状態となり、本人孔用安全作業柵体Sの抜出し力に対抗し、安定的な設置状態を採る。
【0054】
(7)
以上をもってAの(7) と同様にして、本人孔用安全作業柵体Sの設置作業は終了する。
このように、本実施形態によれば、人孔蓋枠Mの棚部112が厚い場合についても対応でき、人孔蓋枠Mの規格の違いについて多様に対応することができる。
【0055】
(第2実施形態)(図13参照)
叙上の第1実施形態ではその人孔用安全作業柵体Sが人孔枠体Mの棚部112の上面に設置されるものであるが、本実施形態(第2実施形態)では、その人孔用安全作業柵体Sが人孔枠体Mの上面106に設置される態様を示す。
本第2実施形態では、図13に示すように、人孔用安全作業柵体Sの柵本体Saの底面の底板体1の外径は少なくとも人孔枠体Mの上面106の内径よりも大きくされ、その内径はほぼ人孔枠体Mの棚部112の内径に一致する寸法を採る。該底板体1の内径部の両側に、固定装置Sbとの連結を図る内径方向へ張り出す棚状をなす取付け部12が設けられ、該取付け部12にビス孔13、レバー挿通凹部14が開設されてなること、は先の実施形態と同様である。
固定装置Sbにつき、ラッチ部B22の鍔体36Aの位置は、先の実施形態では棚部112の上面と棚部112の下面との距離Hで決められるが、本実施形態においては、人孔枠体Mの上面106より棚部112の下面までの鉛直距離を保持して決められる。
ケーシング20の前面は人孔枠体Mの棚部112の内径よりも一定間隙を存すること、その他の構成、例えば、3つのラッチ部A,B,Cを有すること、ロック解除機構24を有すること、等は先の実施形態と実質的に変わりはない。
本第2実施形態の人孔用安全作業柵体Sでは、第1実施形態と同様に、人孔枠体Mの棚部112の厚さに対応する。
【0056】
(第3実施形態)
先の第1・第2実施形態ではラッチ部は3つのラッチ部A,B,Cを有するものであるが、本実施形態(第3実施形態)では、当該ラッチ部の構成が異なる。ここでは、第1実施形態の固定装置Sbの変更を基本とする。
すなわち、本実施形態では、ラッチ部Bが省略され、ラッチ部Cの幅を狭くされる。
これに対応して、ラッチ部Aの鍔体36Aの取付け高さは、特定の人孔枠体Mの棚部112の厚さに対し、適宜に変更される。
また、ラッチ部Cは必要限度の幅を確保して可及的に狭くされる。
これにより、本人孔用安全作業柵体Sの固定装置Sbの幅は小さいものとなり、本人孔用安全作業柵体Sの人孔枠体Mへの挿入作業が容易となり、本人孔用安全作業柵体Sの使い勝手が向上する。
【0057】
本発明は叙上の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想の範囲内で種々設計変更が可能である。すなわち、以下の技術的事項は本発明の技術的範囲に包含される。
1.本実施形態のロック解除機構24は、押込みホイール57・揺動腕56・摺動子53を含むものであるが、このような機構を持たず、少なくともロックピン52の前進付勢及び該ロックピン52の前進した後の引戻し(後退)をなす機構を備えればよい。
このため、ロックピン52は保持枠54に保持され、かつ進退動可能に付勢手段52dを備えることは先の実施形態と同様であるが、これに加え、ロックピン52にケーシング20の背面板20eに貫通する剛性の操作杆(図示せず)を固定し、該操作杆をケーシング20の背面板20eに開設された水平方向の案内長孔(図示せず)に案内させて保持し、該操作杆のケーシング20の外部への突出端を把持して前進したロックピン52を引き戻す構造を採ることができる。操作杆のケーシング20の外部への突出端は更に上方へ延設されてもよい。あるいは、ロックピン52の後端にワイヤー(図示せず)を繋ぎ、該ワイヤーをケーシング20内に配した滑車(図示せず)を介してケーシング20の上部の外部に導き、このワイヤーの先端を把持して前進したロックピン52を引き戻す構造を採ることも他の一手段である。
【符号の説明】
【0058】
S…人孔用安全作業柵体、Sa…柵本体、Sb…固定装置、M…人孔蓋枠、
106…上面、110…受面、112…棚部、
1…底板体、2…下枠杆、3…柱杆、4…上枠杆、5…上枠部、
20…ケーシング、20a…前面板、
21…ラッチ部A、22…ラッチ部B、23…ラッチ部C、
24…ロック解除装置、26…窓部、
35A,B,C…板体、36A,B…鍔状部材、38A,B,C…弾性蝶番、
50…ロック解除レバー、51…ロックピン係合孔、52…ロックピン、53…摺動子、54…保持枠、55…中心ピン、56…揺動腕、57…押込みホイール、58…戻しばね部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に固定装置が1又は複数箇所に装着され、
前記固定装置は、
剛性を保持し、前記設置される人孔蓋枠の受棚の内径よりも小径をなすフレーム体が前記人孔用安全作業柵体の下端に固定され、
前記フレーム体を介して取り付けられ、弾性作用を受けて、定常状態でその鍔状部材が設置される前記人孔蓋枠の受棚の内径よりも大径をなし、該受棚と係合可能状態を採るラッチ部材を有し、
前記ラッチ部材は、設置される前記人孔蓋枠への挿入において、該人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、所定の設置位置に至ると前記受棚の内周面から外れて前記の鍔状部材が該受棚の下面に張出し動作をなす、
ことを特徴とする固定装置を有する人孔用安全作業柵体。
【請求項2】
複数個のラッチ部材が相並べて配され、各ラッチ部材は互いに高さが異なる1つの鍔状部材を有し、低い高さの鍔状部材を有するラッチ部材が高い鍔状部材を有するラッチ部材を後退移動のみ拘束する請求項1に記載の固定装置を有する人孔用安全作業柵体。
【請求項3】
定常状態での弾性作用に抗してラッチ部材の鍔状部材を該人孔蓋枠の受棚の内周面よりも後退させる係合可能状態を持続的に解除するロック解除機構を有してなる請求項1又は2のいずれかに記載の固定装置を有する人孔用安全作業柵体。
【請求項4】
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置であって、
剛性を保持し、前記設置される人孔蓋枠の受棚の内径よりも小径をなすフレーム体が前記人孔用安全作業柵体の下端に固定され、
前記フレーム体を介して取り付けられ、弾性作用を受けて、定常状態でその鍔状部材が設置される前記人孔蓋枠の受棚の内径よりも大径をなし、該受棚と係合可能状態を採るラッチ部材を有し、
前記ラッチ部材は、設置される前記人孔蓋枠への挿入において、該人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、所定の設置位置に至ると前記受棚の内周面から外れて前記の鍔状部材が該受棚の下面に張出し動作をなす、
ことを特徴とする人孔用安全作業柵体の固定装置。
【請求項5】
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置であって、
1)その上部が人孔用安全作業柵体に固定され、少なくとも平板状の前面板を有し、該前面板に四角形状の窓部が開設されるフレーム体を備え、
2)前記フレーム体の窓部に嵌まり込む板体が、該窓部の下縁に固設された弾性蝶番を介して後方への倒れに対して弾性復帰可能に配され、かつ該板体の前面に前方に突出する鍔体が固設されてなる1又は複数のラッチ部を備え、
3)前記端部のラッチ部において、その上面にロック解除レバーが立設され、かつその側端面にロックピン係合孔が開設され、
4)前記ラッチ部に相並んで配され、
a)軸方向の移動のみが許容され、該ラッチ部の後方への所定の倒れ移動に対応して前記ロックピン係合孔に付勢力をもって嵌まり込むロックピン、
b)前記フレーム体に取り付けられ、前記ロックピンを保持する保持枠、
c)前記ロックピンに連動し、該ロックピンを引き戻すロックピンの引戻し機構、
を有してなるロック解除機構を備える、
ことを特徴とする人孔用安全作業柵体の固定装置。
【請求項6】
2以上のラッチ部の相互には隣接する他のラッチ部に対して後退移動のみ拘束する押し棒が配されてなる請求項5に記載の人孔用安全作業柵体の固定装置。
【請求項7】
ロックピンの引戻し機構は、
1)保持枠に保持され、ロックピンの軸方向移動と直交移動する摺動子、
2)フレーム体に固設される中心ピンを回転中心にして揺動し、前記摺動子を進退動する揺動腕、
3)前記揺動腕の下端に回転自在に軸支され、その前端がラッチ部の鍔体よりも前方へ突出する押込みホイール、
4)前記揺動腕を元位置に復帰させる戻しばね部、
を備えてなる請求項5に記載の人孔用安全作業柵体の固定装置。
【請求項1】
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に固定装置が1又は複数箇所に装着され、
前記固定装置は、
剛性を保持し、前記設置される人孔蓋枠の受棚の内径よりも小径をなすフレーム体が前記人孔用安全作業柵体の下端に固定され、
前記フレーム体を介して取り付けられ、弾性作用を受けて、定常状態でその鍔状部材が設置される前記人孔蓋枠の受棚の内径よりも大径をなし、該受棚と係合可能状態を採るラッチ部材を有し、
前記ラッチ部材は、設置される前記人孔蓋枠への挿入において、該人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、所定の設置位置に至ると前記受棚の内周面から外れて前記の鍔状部材が該受棚の下面に張出し動作をなす、
ことを特徴とする固定装置を有する人孔用安全作業柵体。
【請求項2】
複数個のラッチ部材が相並べて配され、各ラッチ部材は互いに高さが異なる1つの鍔状部材を有し、低い高さの鍔状部材を有するラッチ部材が高い鍔状部材を有するラッチ部材を後退移動のみ拘束する請求項1に記載の固定装置を有する人孔用安全作業柵体。
【請求項3】
定常状態での弾性作用に抗してラッチ部材の鍔状部材を該人孔蓋枠の受棚の内周面よりも後退させる係合可能状態を持続的に解除するロック解除機構を有してなる請求項1又は2のいずれかに記載の固定装置を有する人孔用安全作業柵体。
【請求項4】
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置であって、
剛性を保持し、前記設置される人孔蓋枠の受棚の内径よりも小径をなすフレーム体が前記人孔用安全作業柵体の下端に固定され、
前記フレーム体を介して取り付けられ、弾性作用を受けて、定常状態でその鍔状部材が設置される前記人孔蓋枠の受棚の内径よりも大径をなし、該受棚と係合可能状態を採るラッチ部材を有し、
前記ラッチ部材は、設置される前記人孔蓋枠への挿入において、該人孔蓋枠の受棚の内周面からの押圧を受けてその弾性作用に抗して引込み動作を受け、所定の設置位置に至ると前記受棚の内周面から外れて前記の鍔状部材が該受棚の下面に張出し動作をなす、
ことを特徴とする人孔用安全作業柵体の固定装置。
【請求項5】
開蓋された人孔蓋枠に設置される人孔用安全作業柵体の下端に装着される固定装置であって、
1)その上部が人孔用安全作業柵体に固定され、少なくとも平板状の前面板を有し、該前面板に四角形状の窓部が開設されるフレーム体を備え、
2)前記フレーム体の窓部に嵌まり込む板体が、該窓部の下縁に固設された弾性蝶番を介して後方への倒れに対して弾性復帰可能に配され、かつ該板体の前面に前方に突出する鍔体が固設されてなる1又は複数のラッチ部を備え、
3)前記端部のラッチ部において、その上面にロック解除レバーが立設され、かつその側端面にロックピン係合孔が開設され、
4)前記ラッチ部に相並んで配され、
a)軸方向の移動のみが許容され、該ラッチ部の後方への所定の倒れ移動に対応して前記ロックピン係合孔に付勢力をもって嵌まり込むロックピン、
b)前記フレーム体に取り付けられ、前記ロックピンを保持する保持枠、
c)前記ロックピンに連動し、該ロックピンを引き戻すロックピンの引戻し機構、
を有してなるロック解除機構を備える、
ことを特徴とする人孔用安全作業柵体の固定装置。
【請求項6】
2以上のラッチ部の相互には隣接する他のラッチ部に対して後退移動のみ拘束する押し棒が配されてなる請求項5に記載の人孔用安全作業柵体の固定装置。
【請求項7】
ロックピンの引戻し機構は、
1)保持枠に保持され、ロックピンの軸方向移動と直交移動する摺動子、
2)フレーム体に固設される中心ピンを回転中心にして揺動し、前記摺動子を進退動する揺動腕、
3)前記揺動腕の下端に回転自在に軸支され、その前端がラッチ部の鍔体よりも前方へ突出する押込みホイール、
4)前記揺動腕を元位置に復帰させる戻しばね部、
を備えてなる請求項5に記載の人孔用安全作業柵体の固定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−261189(P2010−261189A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111908(P2009−111908)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(308034327)株式会社中央興産 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(308034327)株式会社中央興産 (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]