説明

人工ゼオライトおよびその前駆体の製造方法

【課題】廃アスベスト材を無害化処理すると共に、これを有用な物質たる人工ゼオライトおよびその前駆体に転換する処理方法を提供する。
【解決手段】1500〜1600℃で溶融するアスベストを含有する廃アスベスト材を原料として、溶融炉を用いて、1600〜2000℃の温度に加熱して還元することにより、人工ゼオライト前駆体を製造し;更に、かかる方法で得られる人工ゼオライト前駆体を湿式アルカリ処理して人工ゼオライト化することによって、陽イオン交換容量の高い人工ゼオライトを製造することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工ゼオライトおよびその前駆体の製造方法に関する、更に詳しくは廃アスベスト材を無害化処理してなる還元ゼオライトおよびその前駆体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アスベストは、石綿肺、肺癌、悪性中皮腫などの重大な疾病を引き起し、WHOで発癌物質とされ、各国で使用禁止されており、その無害化処理技術が種々提案されている。その代表的なものとしては、密閉型電気炉溶解法とスラグ浴融解法とが挙げられる(例えば、特許文献1,特許文献2および特許文献3参照)。
【0003】
ここで、特許文献1には、密閉型電気炉によりシュートを介して袋中に収容されたアスベストを高温(1500℃)で溶解する無害化処理方法が開示されている。また、特許文献2には、CaOの含有量が多い水処理汚泥を塩基度調整剤兼バインダーとしてアスベストに混合して成形した混合物を、炭素系可燃物質を燃料とする高温炉床に供給して高温加熱溶融する無害化処理方法が開示されており、アスベストを1080〜1140℃で溶融してスラグを生成することが記載されている。更に、特許文献3には、スラグ化リサイクル溶融炉を利用して、アスベストをスラグ浴に投入してスラグ浴中に溶解する、アスベストの無害化処理方法が提案されており、アスベストを溶解したスラグはセメントの原料として有効利用できるとされている。
【特許文献1】特許第3085959号公報
【特許文献2】特開平7−171536号公報
【特許文献3】特開2003−181412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アスベストを無害化処理すると共に、これを有用な物質たる人工ゼオライトおよびその前駆体に転換する処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題を解決するために種々の検討を行った結果、有害なアスベストを無害化して、有用な人工ゼオライトおよびその前駆体を製造する方法を提供するに至った。
【0006】
すなわち、本発明に従って提供される方法は、1500〜1600℃で溶融するアスベストを含有する廃アスベスト材を原料として、溶融炉を用いて、1600〜2000℃の温度に加熱して還元することを特徴とする、人工ゼオライト前駆体の製造方法;並びに、かかる方法で得られる人工ゼオライト前駆体を湿式アルカリ処理して人工ゼオライト化することを特徴とする、人工ゼオライトの製造方法である。
【0007】
本発明において、原料として用いられるアスベストは、1500〜1600℃で溶融するものである。
【0008】
このようなアスベストとしては、建築材・構築材など(以下、建材類という)として使用されたアスベスト含有物質の廃材(廃アスベスト材)を用いることができる。廃材がアスベストを含有することの確認は、その排出者から、或いは分散染料法による定性分析もしくはX線回折法による定量分析によって、行うことができる。アスベストの溶融温度(融点)は、建材類に用いた吹付け材、補助材〔保温材(フェルトなど)、結露防止剤、バインダなど〕、ボード類を除去した、廃アスベスト材について、超高温熱分析〔示差熱分析(DTA)/示差走査熱分析(DSC)など〕によって、測定することができる。
【0009】
アスベスト廃材に含有される、原料アスベストには、上記範囲内の溶融温度を有するアスベスト、及びこれと上記範囲外の溶融温度を有するものとの共生鉱物が含まれる。このようなアスベスト、その共生鉱物には、クリソタイル〔白石綿Mg6Si4O10(OH)8;融点1521℃〕、クロシドライト〔青石綿Na2Fe5Si8O22(OH)4又はNa2(Fe2+,Mg)(Fe3+Si8O22(OH,F);融点1193℃〕、およびアモサイト〔茶石綿、(Fe,Mg)SiO22(OH)2〕からなる群から選ばれる1種または2種以上から構成され、上記範囲内の溶融温度(融点)を有するものが含まれる。
【0010】
このようなアスベストの具体例としては、(1)クリソタイル、クロシドライトおよびアモサイトからなる群から選ばれる1種または2種以上から構成され;(2)質量に基づいて、30〜45%(好ましくは35〜40%)のSiO、5〜25%(好ましくは15〜20%)のAl、2〜6%のMgO、2〜6%(好ましくは3〜5%)のCaOの組成を有し;(3)1500〜1600℃の融点を有するものが挙げられる。好ましいのは、クリソタイルを90%以上含有するものである。(上記および以下において、%は、とくに規定しない限り、質量%を表す。)
【0011】
本発明に従って、1500〜1600℃で溶融するアスベストを含有する廃アスベスト材からなる原料は、溶融炉を用いて、1600〜2000℃の温度に加熱して還元処理(一次処理)されて、人工ゼオライト前駆体が製造される。
還元処理の際の溶融加熱は、1600〜2000℃の温度で行なわれる。溶融加熱の温度が1600℃より低い場合には、未溶融物混入となる。より高温で加熱溶融する場合には完全溶融物となるが、2000℃より高温で加熱溶融する場合には装置の耐久性の低下およびコストアップをもたらすので、2000℃以下、とくに1600〜1800℃の範囲内の温度で加熱溶融するのが好ましい。
溶融加熱の温度は、建材に用いた吹付け材、ボード類を除去した建材類(廃アスベスト材)を、溶融炉で溶融して測定されるが、炉外殻温度(溶融炉の外壁温度)を光高温計、放射温度計等で測定することにより、また溶融炉の出口から排出されるガスの温度もしくは出湯温度を光高温計で測定することにより、推定することができる。
【0012】
本発明において、廃アスベスト材からなる原料の還元処理に用いられる溶融炉としては、該原料を1600〜2000℃の温度に加熱して還元処理することができる、還元溶融炉であればとくに限定されず、例えば電気還元溶融炉、溶鉱炉型溶融炉が挙げられる。還元溶融炉を使用することにより、燃料空気比を低くし、超高温を得るのが容易となる。
【0013】
本発明に従って、1500〜1600℃で溶融するアスベストを含有する廃アスベスト材からなる原料を、溶融炉で1600〜2000℃の温度に加熱して還元処理(一次処理)するに当って、原料中には、廃アスベスト材に加えて、補助燃料、補助剤および水(工業用水、水蒸気)などの補助成分を含有させることができる。
【0014】
補助燃料としてはコークスを使用することができる。コークスとしては、水分1〜3%、灰分5〜15%、揮発分1.0〜1.5%、炭素70〜90%、比重0.6〜1.0、気孔率45〜50%のものが挙げられる。
【0015】
補助剤(混和剤)としては、塩基度調整剤、たとえば石灰石、アルカリもしくはアルカリ土類金属の酸化物(MgOなど);アルミナ成分、たとえばアルミナ、アルミニウム残滓(処分に困っているアルミドロス等);及び、シリカ成分、たとえばシリカ、粘土、メタカオリン、パーライト、珪藻土、溶融スラグ、ガラス、セメント、焼却灰、飛灰など;並びに、これらの2種以上の併用が挙げられる。
焼却灰は、珪酸およびアルミナを非結晶性の珪酸アルミニウム塩として含む焼却灰であって、石炭灰、製紙スラッジ焼却灰、活性汚泥焼却灰、可燃性廃棄物の焼却灰、などを例示することができる。また、飛灰(フライアッシュ)とよばれる石炭灰は、石炭を微粉にして微粉炭燃焼ボイラーにより燃焼した際、集塵機により採取されるような微小な灰の粒子をいい、シリカ45%以上、湿分1%以下、強熱減量5%以下、比重1.95以上、比面積2700cm2/g以上、44μm標準篩を75%以上通過するものである。ここで、可燃性廃棄物とは、人間の各種活動によって生じた廃棄物のうち、可燃性のものをいい、一般廃棄物および産業廃棄物とを問わない。産業廃棄物としては、土木・建築工事などにともなって生ずる木材、紙などの可燃性の廃棄物、などを例示することができる。また、都市ゴミとは、可燃性廃棄物のうち、一般廃棄物として家庭よりでる生ゴミその他の可燃性のゴミのことをいう。
【0016】
原料中のこれらの補助成分の使用割合は最終的に本発明の目的物たる人工ゼオライトを形成する限りとくに限定されず目的に応じて種々変えることができるが、一般に、天然ゼオライトと同じ組成を与えるような組成で用いられ、好ましくは次のような原料組成で用いられる。
廃アスベスト材100部当り、補助燃料を20〜40部とくに30部、アルミナ/シリカ成分を10〜20部とくに15部、塩基度調整剤を原料の塩基度が通常0.2〜1.5(とくに0.8〜1.1)となるような割合(たとえば石灰石を5〜10部とくに7部)の割合で使用するのが好ましい。
【0017】
これら全体の原料組成としては、以下のような含有量が好ましい。
原料の全質量に基づいて、
1)SiO: 30〜45%(とくに35〜40%)
2)Al: 5〜25%(とくに15〜20%)
3)MgO: 5〜10%
4)CaO: 2〜6% (とくに3〜5%)
5)NaO: 2〜5% (とくに3〜4%)
塩基度は、流動性の向上、排出の容易さの点から、CaO/SiO比が0.5〜2.5(とくに1〜2)となるものが好ましい。
【0018】
このような原料としては、SiO・Alを主成分とする組成を有するものが好ましく、原料組成が0.5〜2.5(とくに1〜2)の範囲内のケイバン比SiO/Alを有するもの(とくにSiO・Alを35〜60%含有するもの)が更に好ましい。
【0019】
本発明に従って、廃アスベスト材からなる原料を溶融炉で還元処理(一次処理)するに際しての、反応条件は、例えば、次の通りである。〔( )内は好ましい範囲を示す。〕
(1)温度
(1)乾燥、予熱帯:約300℃
(2)熱分解帯:300〜1000℃
(3)溶融帯:1600〜2000℃(1700〜1800℃)
(4)出湯温度:1400〜1600℃(1450〜1550℃)
(2)運転条件
(1)滞留時間:1.5〜2.5時間
(2)送風量:1.5〜3.0Nm/kg(約2.0Nm/kg)
(3)排ガス量:4.0〜6.5Nm/kg(約5.8Nm/kg)
(3)補助材
コークス:0.05〜0.3kg/kg(0.1〜0.2kg/kg)
石灰石:0.04〜0.3kg/kg(0.15〜0.25kg/kg)
炉内圧:10〜20mmHg
送風機圧力:18〜21kPa
(4)ユーティリティ
電力:0.16KWH/kg以下
工業用水:2.5kg/kg以下
酸素:45〜60Nm/t
【0020】
還元処理(一次処理)の反応の終点の確認(目的とする人工ゼオライト前駆体の形成の確認)は、位相顕微鏡によるX線回折分析によって行なうことができる。
【0021】
本発明に従って、廃アスベスト材からなる原料を溶融炉で1600〜2000℃の温度に加熱して還元処理することによって製造される、人工ゼオライト前駆体(溶融炉からの溶融スラグ)は、2〜3のケイバン比SiO/Alを有する。
【0022】
本発明に従って、還元処理(一次処理)で得られた人工ゼオライト前駆体(溶融炉からの溶融スラグ)は、次いで、これを湿式アルカリ処理(二次処理)することによって、人工ゼオライト化される。
湿式アルカリ処理は、水砕工程(溶融炉からの溶融スラグを水砕して、粒径を例えば0.1〜2.0mmとする)、選別工程(磁気選別して鉄分を回収し、比重選別してMgOおよび非鉄金属分を回収する)、微粉砕工程、及びアルカリ処理工程により、行なわれる。
【0023】
アルカリ処理に用いるアルカリとは、水酸化物であって水に溶解する物質をいい、アルカリもしくはアルカリ土類金属の酸化物もしくは水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなど)を例示することができる。本発明を実施するためには、上記の物質を水溶液として用いてもよいし、水の存在下に固形の状態で直接添加してもよい。好ましいのは水酸化ナトリウム(とくに2〜4N水酸化ナトリウム水溶液)である。
アルカリに加えて、金属塩化物(CaCl、FeCl等)を添加することもできる。
【0024】
アルカリ処理に際しての、反応条件は、例えば、次の通りである。
温度:常温〜340℃の温度
(好ましくは加熱下、とくに100〜340℃)
圧力:常圧もしくは加圧下(とくに5〜30気圧kg/cmG)
PH:8〜13(とくに10〜13)
時間:3〜15時間(とくに3〜5時間)
電力:0.08〜0.15kw/kg(とくに0.1kw/kg)
水蒸気:1.0〜2.0kg/kg(とくに1.1kg/kg)
工業用水:2.0〜5.5l/kg(とくに4.5l/kg)
NaOH(48%):0.15〜0.3kg/kg(とくに0.25kg/kg)
CaCl:0.04〜0.08kg/kg(とくに0.05kg/kg)
FeCl:0.08〜0.15kg/kg(とくに0.1kg/kg)
【0025】
アルカリ処理の反応の終点の確認(本発明の目的とする人工ゼオライトの形成の確認)は、X線回折法、顕微鏡によって行なうことができる。機能分析は、原子吸光分析装置による吸着能の測定により行うことができ、また陽イオン交換量測定法によって行なうことができる。生成物の構造は、X線回折法によって、確認することができる。
【0026】
本発明の方法で製造される人工ゼオライトは、次のような元素組成および性状を有する:
元素組成:質量に基づいて、30〜45%のSiO、5〜25%のAl、2〜5%のCaO
水分:7〜8%
比重:0.6〜0.7
粒径(粒度範囲):5〜20μm
本発明に係る人工ゼオライトの主成分はフィリップサイト、ホージャサイト、ゼオライトA、ヒドロキシソーダライトなどであり、他の成分を少量含むこともある。
また、ゼオライト以外の部分、すなわち非ゼオライト成分として、有機物、鉄分、その他の不純物およびゼオライトに至るまでの中間生成物などが共存することもできる。
【0027】
本発明では、廃アスベスト材を人工ゼオライトの原料とした場合、原料粒子内の非結晶性の珪酸アルミニウムが原料粒子内からアルカリ溶液に拡散する速度が律速となること、アルミナ分子と可溶性珪酸塩の反応は粒子の表面で行われ、アルカリ溶液中の可溶性珪酸塩濃度に依存すること、などがわかった。その結果、珪酸アルミニウム塩からの可溶性珪酸塩の粒子内拡散と、粒子表面でのアルミナと可溶性珪酸塩との固相反応を、同一反応槽で連続的に行い、一定の品質の人工ゼオライトを確保するためには、反応温度を高くすることが有利である。まず第一段として珪酸アルミニウム塩のゼオライト化を目的に原料とアルカリとの混合により、すなわち原料表面から、生成した可溶性珪酸塩を速やかに取り除き、新しいアルカリの拡散を促すことにより、ゼオライト化を短時間で行い、第二段として、水蒸気を放出し、可溶性珪酸塩濃度の高くなった状態で、アルミナとの反応を行わせるものである。
【0028】
原料のゼオライト化反応の進行によりアルカリ溶液に溶解してくる可溶性珪酸塩の濃度の調整は、原料と混合するアルカリの供給量で調整する。また、反応槽内のアルカリ濃度の調整を行うため、該反応槽より水蒸気として水分を放出することにより調整することができる。原料がフライアッシュの場合には、2〜4Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いるのが、好ましい。また、100℃以上に加熱するためには、飽和蒸気を使用する場合、耐圧反応容器内で合成を行うのが、一般的である。このとき、反応容器内の圧力を2〜30kg/cm2、すなわち120〜230℃、に保つのが反応を円滑に行ううえで好ましい。
【0029】
本発明を実施するための加熱処理は、上述のように飽和蒸気を使用する場合には、耐圧反応容器内で反応を行うことができる。また、大気圧下では反応容器を所定温度まで加熱し、そこへ過熱蒸気を供給することにより、反応条件を満たすことができる。従って、上記のゼオライト化反応を行うための装置は、特に限定されるものではなく、飽和蒸気を使用する場合には、攪拌機付耐圧反応容器(オートクレーブ)または製紙工場で使用しているダイジェスターといわれる機械を利用することができる。また、外部から加熱する場合には、加熱装置を外部に備えたスクリューコンベアーまたはニーダー(捏和機)など、さらには熱風を利用して加熱する回転乾燥装置などを利用することができる。図1には、攪拌機付耐圧反応容器の1例を示す。図2および図3には、本発明に用いる人工ゼオライト製造設備のフローシートの1例を示す。
【発明の効果】
【0030】
本発明に従って、1500〜1600℃で溶融するアスベストを含有する廃アスベスト材を溶融炉で1600〜2000℃の温度に加熱して還元することによって、有害なアスベストを無害化すると共に、処分に困っているアルミドロスを有効利用して、有用な物質たる人工ゼオライトを製造することができ、環境汚染防止に著しい有用性を発揮する。
本発明は、人工ゼオライトを工業的に製造するに当り、コスト面からも非常に有利な製造方法を提供する。本発明では、アスベスト廃材を上記温度で加熱還元処理することにより、ゼオライト化反応の反応時間を大幅に短縮することができる。すなわち、本発明では3〜10時間で目的とするレベルの陽イオン容量を達成することができる。
【0031】
本発明により得られる人工ゼオライトは、天然ゼオライトと同様の用途に用いることができ、イオン交換体、脱臭・吸着剤、土壌改良剤などの用途に有用性を発揮する。
本発明に係る人工ゼオライトは、一般に、50cmol(+)・kg-1以上〔とくに150〜200cmol(+)・kg-1〕の陽イオン交換容量を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0033】
廃アスベスト材(融点1500〜1600℃)100部、補助燃料(コークス)30部、塩基度調整剤(石灰石)7部、アルミナ成分(アルミドロス)15部およびシリカ成分(20部)SiO/Al(ケイバン比)2.6からなる原料を、溶融炉(還元溶融炉)に仕込み、実証炉を用いて、次の反応条件下で、加熱して還元処理を行い、人工ゼオライト前駆体を製造した。
温度:1600〜2000℃
圧力:10.4〜12.6
時間:0.8〜1時間
電力:10ジュール
水蒸気:1.695Nm/h
工業用水:68m/h
【0034】
かくして得られた人工ゼオライト前駆体(溶融炉からの溶融スラグ)は、次のような次のような元素組成および性状を有する:
元素組成:質量に基づいて、30〜45%のSiO、5〜25%のAl、2〜5%のCaO
水分:7〜8%
比重:0.6〜0.7
粒径(粒度範囲):5〜20μm
【実施例2】
【0035】
実施例1で得られた人工ゼオライト前駆体(溶融炉からの溶融スラグ)を水砕して、粒径を0.1〜2.0mmとした後、磁気選別して鉄分を回収し、次いで比重選別してMgOと非鉄金属分を回収し;更に微粉砕して粒径を50〜100μmとした。
【0036】
反応装置(スラリー反応型オートクレーブ)に、図1に示すように、スクリューコンベアー2により予め原料(微粉砕物)100部、水(水蒸気)1.1部、アルカリ(48%NaOH)2.5部を混合し、原料供給口6を経て攪拌機付耐圧反応容器1に原料、アルカリなどを供給し、次いで反応容器内に蒸気入口8より飽和蒸気を吹き込むことにより圧力と共に、温度を上昇させ、次の反応条件下で、アルカリ処理を行い、人工ゼオライトを製造した。
温度:〜187℃
圧力:〜12
PH:〜12
時間:3時間
【0037】
かくして得られた人工ゼオライトは、次のような元素組成および性状を有するものであった:
元素組成:質量に基づいて、4.5%のNaO、41.3%のSiO
23.6%のAl、1.0%のKO、2.8%のCaO、4.0%のFe
水分:7.1%
カサ比重:0.7
平均粒径:10μm
また、X線回折法により構造を確認した結果、ゼオライト(X型)が生成していることが認められた。このゼオライトの陽イオン交換容量は155cmol(+)・kg-1であった。
【比較例1】
【0038】
廃アスベスト材(融点1500℃未満)を用い、加熱還元の温度を1600〜2000℃とした以外は、実施例1および2と同様にして、加熱還元処理および湿式アルカリ処理を行なった。
得られた生成物は、次のような元素組成および性状を有するが、X線回折法によるゼオライトの生成は確認できなかった。
元素組成:質量に基づいて、30〜45%のSiO、5〜25%のAl、2〜5%のCaO
水分:7〜8%
比重:0.6〜0.7
粒径(粒度範囲):5〜20μm
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】攪拌機付耐圧反応容器による人工ゼオライト製造装置の1例を示す概念図
【図2】人工ゼオライト製造設備の1例を示すフローシート
【図3】人工ゼオライト製造設備の1例を示すフローシート
【符号の説明】
【0040】
1.攪拌機付耐圧反応容器
2.スクリューコンベアー
3.リボン型スクリュー
4.標準型スクリュー
5.原料投入口
6.原料供給口
7.反応生成物排出口
8.蒸気入口
9.蒸気出口
10. 11. バルブ
12. 13. 蒸気用バルブ
14. 減圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1500〜1600℃で溶融するアスベストを含有する廃アスベスト材を原料として、溶融炉を用いて、1600〜2000℃の温度に加熱して還元することを特徴とする、人工ゼオライト前駆体の製造方法。
【請求項2】
請求項1の方法で得られる人工ゼオライト前駆体を湿式アルカリ処理して人工ゼオライト化することを特徴とする、人工ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
1500〜1600℃で溶融するアスベストを含有する廃アスベスト材を原料として、溶融炉を用いて、1600〜2000℃の温度に加熱して還元処理(一次処理)して人工ゼオライト前駆体を製造する工程、及び得られる人工ゼオライト前駆体を湿式アルカリ処理(二次処理)して人工ゼオライト化する工程からなることを特徴とする、人工ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
廃アスベスト材に含まれる原料アスベストが、(1)クリソタイル、クロシドライトおよびアモサイトからなる群から選ばれる1種または2種以上から構成され;(2)質量に基づいて30〜40%のSiO、0.4〜2.0%のAlHO、40〜50%のMgO、10〜20%のOの組成を有し;(3)1.8〜2.2の比重および(4)1600℃の融点を有する、請求項1または3記載の方法。
【請求項5】
原料組成中に、コークスを補助燃料として、石灰石を塩基度調整剤として含有する、請求項1、3または4記載の方法。
【請求項6】
原料組成中に、アルミニウム残滓を補助剤として含有する、請求項1、3、4または5記載の方法。
【請求項7】
原料がSiO・Alを主成分とする組成を有する、請求項1、3、4、5または6記載の方法。
【請求項8】
原料組成が0.5〜2.5の範囲内のケイバン比SiO/Alを有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
溶融炉からの溶融スラグを、水砕、磁気選別、比重選別、微粉砕して、湿式アルカリ処理して人工ゼオライト化する、請求項2〜8の何れか記載の方法。
【請求項10】
湿式アルカリ処理を、アルカリもしくはアルカリ土類金属の酸化物もしくは水酸化物および水の存在下、常圧もしくは加圧下、加熱下に行う、請求項2〜9の何れか記載の方法。
【請求項11】
湿式アルカリ処理を、8〜10のpH、常温〜340℃の温度で行う、請求項2〜10の何れか記載の方法。
【請求項12】
2〜4N水酸化ナトリウム水溶液で湿式アルカリ処理を行う、請求項2〜11の何れか記載の方法。
【請求項13】
請求項2〜12の何れか記載の方法で製造された、人工ゼオライト。
【請求項14】
(1)質量に基づいて30〜45%のSiO、5〜25%のAl、2〜6%のCaOの組成、および(2)7〜8%の水分を有し;(3)0.7前後の比重および(4)5〜100μmの粒径を有する、請求項14記載の人工ゼオライト。
【請求項15】
請求項13または14記載の人工ゼオライトからなる、イオン交換材料、分子篩、脱臭剤、吸着剤または土壌改良剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−273803(P2008−273803A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122428(P2007−122428)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(507148032)
【出願人】(507148043)
【Fターム(参考)】