説明

人工ゼオライトの製造方法

【課題】碍子を原料として有効に用い、高価値物であるゼオライトを得る方法を提供する。
【解決手段】碍子廃材を高温で溶融した後、急冷して粉砕し、次いでアルカリ水溶液中で加熱処理する人工ゼオライトの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト、及び、固体酸触媒として用いられるゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、様々な物質の吸着や分離に用いられてきた。さらには固体酸としての触媒機能も知られている。最近ではそのうちの特定のゼオライトが窒素酸化物(NOx)を窒素と酸素とに分解する用途が挙げられる。例えば内燃機関内で形成された窒素酸化物は、このような窒素酸化物を含むガスが大気に放出される前に、触媒により分解され、処理される。
【0003】
さらに、ZSM−5として知られるゼオライトは、高機能な固体酸触媒として著名であり、炭化水素の炭化水素異性化、アルキル化および接触分解のような化学反応を有効に促進する触媒機能を有することで知られている。
【0004】
しかし、これらゼオライトは比較的高価なため、安価な入手方法が求められていた。このような課題に対して本発明者らも、特開2000−335916号公報(特許文献1)などで、スラグを原料とする人工ゼオライトの製造方法を提案している。
【0005】
ここで、現在、廃碍子の有効利用が求められている。現状はブロック、タイル、建材などの製品の原料として再利用されているが、そもそも碍子は極めて高い絶縁性が求められる製品であり、その原料も一般の陶磁器などとは異なり、精製されたものが用いられている。このため、このような廃碍子ならではの有効利用方法が求められていた。
【特許文献1】特開2000−335916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このように、碍子を原料として有効に用い、高価値物であるゼオライトを得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の人工ゼオライトの製造方法は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、碍子廃材を高温で溶融した後、急冷して粉砕し、次いでアルカリ水溶液中で加熱処理することを特徴とする人工ゼオライトの製造方法である。
【0008】
また、本発明の人工ゼオライトの製造方法は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載の人工ゼオライトの製造方法において、上記アルカリ水溶液中での加熱処理の前までに、原料中の珪素原子存在量とアルミニウム原子存在量との比を調整する工程を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の人工ゼオライトの製造方法は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の人工ゼオライトの製造方法において、前記加熱処理が、加圧下100℃超の温度で行われることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の人工ゼオライトの製造方法は、請求項4に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の人工ゼオライトの製造方法において、上記碍子廃材の溶融がプラズマ炉により行われることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の人工ゼオライトの製造方法は、請求項5に記載の通り、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の人工ゼオライトの製造方法において、上記急冷が、溶融した碍子廃材を水中に導入して行われることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の人工ゼオライトの製造方法は、請求項6に記載の通り、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の人工ゼオライトの製造方法において、上記アルカリ水溶液に、下記化学式1で示される化合物、
【化1】

式中R1〜R4はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン
下記化学式2で示される化合物、化学式R8X(式中R8はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)の組合せA、
【化2】

式中R5〜R7はアルキル基
化学式R9NHR10(式中R9およびR10はアルキル基)で示される化合物、化学式R11X(式中R11はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)との組合せB、及び、
化学式NH212で示される化合物(式中R13はアルキル基)、化学式R13X(式中R13はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)との組合せCから選ばれる1つ以上のテンプレート剤が配合されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の人工ゼオライトの製造方法は、請求項7に記載の通り、請求項6に記載の人工ゼオライトの製造方法において、上記テンプレート剤として、上記化学式1で示される化合物を用い、かつ、該化学式中のR1〜R4がすべて、炭素数2以上5以下の同じアルキル基であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の人工ゼオライトの製造方法によれば、廃碍子をその特性を充分活かして有効利用し、有用なゼオライトを効率良く得ることができる。
【0015】
請求項2に記載の人工ゼオライトの製造方法によれば、様々な種類のゼオライトを得ることができる。
【0016】
請求項3に記載の人工ゼオライトの製造方法によれば、短時間で効率よくゼオライトを得ることができる。
【0017】
請求項4に記載の人工ゼオライトの製造方法によれば、より容易にゼオライトを得ることができる。
【0018】
請求項5に記載の人工ゼオライトの製造方法によれば、簡単に、容易に、かつ、確実に急冷を行うことができてガラス質とすることができ、より収率良くゼオライトを得ることができる。
【0019】
請求項6に記載の人工ゼオライトの製造方法によれば、廃碍子からZSM−5などの高機能で高付加価値なゼオライト系固体酸触媒を得ることができる。
【0020】
請求項7に記載の人工ゼオライトの製造方法によれば、廃碍子からZSM−5などの高機能で高付加価値なゼオライト系固体酸触媒を効率的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明において、廃碍子は高圧送電用、一般送電用など、珪素を含む一般的なものを用いることができる。これらには、金属金具などがセメント等を接着剤として接着されている場合や硫黄などが塗布されていることがあるが、このような碍子以外のものは予め除去し、汚れ等は予め除去することが好ましい。ただし、有機物等は高温処理で除去されるので、付着物の種類によりこれら付着物の除去を行わないことも可能である。
【0022】
碍子廃材は、溶融時に大型の炉で溶融する場合にはそのまま用いても良いが、通常は0.01m〜5m程度に粉砕する。
【0023】
基本的には珪素源としてはこれら碍子廃材で充分であるが、廃碍子にはアルミニウムが含まれており、作製しようとするゼオライトの組成によっては、アルミニウムが少なすぎたり、多すぎたりする場合があり、このため、廃光ファイバ、あるいは、スート法などによる光ファイバ製造過程で発生する微細な二酸化ケイ素粉末廃棄物(白色スート)や、光ファイバへの延伸工程で発生する端材(石英ガラス不利用物)を珪素供給原料(含珪素無機化合物)として配合して用いたり、あるいは、石炭灰、廃陶石粉砕物、陶器粉砕物、磁器粉砕物、アルミドロス、廃金属アルミニウムなどをアルミニウム供給原料(含アルミニウム無機化合物)として配合して用いることができる。後述の含珪素無機化合物及び含アルミニウム無機化合物を溶融時に添加する場合は碍子廃材と同程度の大きさとする。
【0024】
これら碍子以外の原料の場合、結晶していないもの、あるいは、結晶の大きさが小さいものに関しては、必要に応じて微粉化して、碍子廃材を溶融・冷却した後に、添加・配合しても良い。すなわち、上記アルカリ水溶液中での加熱処理の前までに、原料中の珪素原子存在量とアルミニウム原子存在量との比を調整する工程があれば良い。
【0025】
ここで、上記のように碍子廃材に他の材料を加えて原料中の珪素原子存在量とアルミニウム原子存在量との比を調整する以外に、碍子廃材に、あるいは、碍子廃材を溶融し急冷したものに対して、例えば、塩酸などの酸を用いて珪素原子存在量とアルミニウム原子存在量との成分調整を行うことができ、また、これら両者は併用することも可能である。
【0026】
このようにして、上記碍子廃材に、あるいは、碍子廃材を溶融し急冷したものに、含珪素無機化合物、及び/または、含アルミニウム無機化合物(これらを副原料とも云う)物を添加して、原料中のアルミニウム原子の数を1としたときの、原料中の珪素の原子の数(この比をケイバン比とも云う)が1以上5以下となるように調整することが、一般的なゼオライトを効率的に得るためには望ましい。また、ZSM−5などの高機能な固体酸触媒であるゼオライトを得るためには、ケイバン比を7.5以上、好ましくは5000以上とする。
【0027】
碍子廃材の溶融は、一般的な加熱手段で行うことができるが、加熱効率や溶融するまでに必要な時間等を勘案すると、プラズマ炉によることが望ましい。プラズマ炉としては酸素プラズマ炉、空気プラズマ炉、あるいは、アルゴンプラズマ炉などが挙げられるが、運転コストが低く、原料に付着した有機物の影響を除去できる空気プラズマ炉であることが望ましい。
【0028】
溶融時の加熱温度、加熱時間としては、碍子廃材及び副原料が完全に溶融する温度であることが必要である。溶融が完全でないと、これら原料の結晶が残ってしまい、次工程(アルカリ水溶液中で加熱処理)での収率及び収量が著しく低下する。用いる碍子廃材にもよるが、通常、1300〜1500℃以上2000℃以下である。
【0029】
本発明において、溶融後に溶融物を急冷することが必要である。この急冷により、ガラス質の破砕物が得られる。急冷としては水へ溶融物を投入することが、コスト、安全性、工程や装置設計の安易さなどから好ましい。ここで、急冷が充分でない、すなわち緩冷の場合には、結晶が生成してしまい、結果として次工程(アルカリ水溶液中で加熱処理)での収率及び収量が著しく低下する。
【0030】
上記急冷により溶融物はガラス質の固体となると同時に微細化する。しかし、アルカリ水溶液中で加熱処理での反応速度を高くするために、必要に応じて、さらに微細化する。粒径が0.1μm以上0.1mm以下とすることが望ましい。
【0031】
このようにして得られた、ガラス質の原料から、次工程であるアルカリ水溶液での加熱処理で、珪素成分及びアルミニウム成分が溶液中に溶出し、これら両成分からゼオライトが形成される。
【0032】
アルカリ水溶液で用いるアルカリ金属成分、そのイオン半径(水和イオンの半径が関与する場合もある)は得られるゼオライトの孔径に影響を及ぼすので、所望のゼオライトに併せて適宜選択するが、通常は酸化ナトリウム及び/または水酸化カリウムを用いる。このとき、高い反応性、及び、低コストが達成できる。
【0033】
アルカリ水溶液中のアルカリ金属はまた、その溶液中の反応において原料から珪素成分やアルミニウム成分を取り出し、珪素・酸素四面体構造、及び、アルミニウム・酸素四面体構造からなる立体骨格を形成させる反応を可能とする。
【0034】
反応温度としては、反応速度を高めるために、60℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上250℃以下の温度で行う。100℃未満であると熱処理時間を長くなって実用的でなくなる。一方、250℃以上とすると、装置にかかるコストが大きくなりすぎる。さらに好ましい処理温度は140℃以上180℃以下である。一般的に処理温度の上昇と共に、得られるゼオライトの粒径は大きくなる。
【0035】
本発明におけるアルカリ水溶液中での加熱処理では、一般的なゼオライトを得るためにはケイバン比を制御することで、得られるゼオライトの種類を選択することができるが、ZSM−5などの高機能な固体酸触媒として用いることができるゼオライトを得るためにはテンプレート剤を併用する。ここで、このようにテンプレート剤を併用する場合には、テンプレート剤を用いない場合とは、最適なアルカリ水溶液中のアルカリ金属の存在濃度が異なる場合があるので、予め検討を行って、最適なアルカリ濃度を決定する。
【0036】
テンプレート剤は固体酸触媒の細孔の形状・大きさを決定する重要な働きをする。すなわち、固体酸触媒の、主として珪素・酸素四面体構造、及び、アルミニウム・酸素四面体構造からなる立体骨格はこのテンプレート剤を囲むようにして形成される。従ってテンプレート剤の形状・大きさの選択は重要である。
【0037】
ここで、本発明では、テンプレート剤としては、第四アンモニウム塩、ないし、第四アンモニウム塩状の立体構造を形成する化合物の組合せを用いる。このようなものとして、下記化学式1で示される化合物、
【化3】

下記化学式2で示される化合物、化学式R8X(式中R8はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)の組合せA、
【化4】

式中R5〜R7はアルキル基
化学式R9NHR10(式中R9およびR10はアルキル基)で示される化合物、化学式R11X(式中R11はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)との組合せB、あるいは、化学式NH212で示される化合物(式中R13はアルキル基)、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)、化学式R13X(式中R13はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)との組合せCなどが挙げられる。
【0038】
ここで、得られる固体酸触媒の、主として珪素・酸素四面体構造、及び、アルミニウム・酸素四面体構造からなる立体骨格に欠陥が生じないよう、第四アンモニウム塩、ないし、第四アンモニウム塩状の立体構造を形成する化合物の組合せは正四面体構造を形成するものとなることが望ましく、そのため、上記テンプレート剤として、上記組合せAを用いる場合にはR5〜R8がすべておなじアルキル基であることが望ましく、また、得られる固体酸触媒の触媒機能が高くなるために、このようなアルキル基の炭素数としては2以上5以下であることが望ましい。
【0039】
同様に、上記テンプレート剤として、上記組合せBを用いる場合には、R9〜R11が同じアルキル基であることが望ましく、またこれらアルキル基の炭素数は2以上5以下であることが望ましい。なお、化学式2で示される化合物と化学式R8Xで示される化合物との配合比は1:2ないしその近傍とすることが望ましい。
【0040】
さらに、上記テンプレート剤として、上記組合せCを用いる場合には、R12とR13とが同じアルキル基であることが望ましく、またこれらアルキル基の炭素数は2以上5以下であることが望ましい。なお、化学式NH212で示される化合物と化学式R13Xで示される化合物との配合比は1:3ないしその近傍とすることが望ましい。
【0041】
本発明の人工ゼオライトの製造方法では、組合せA〜Cでは、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)、いわゆるケトン類の配合を行う。
【0042】
ここでR14及びR15は同じものであることが好ましく、さらに、組合せA〜Cで併用するアミンのアルキル基と同じものであることがより好ましい。
【0043】
これらケトン類は配合物中原料における珪素重量を1としたときに対して、通常、0.01以上5以下となるように配合する。配合量が0.01未満であると反応が遅延して収率が低くなりやすく、5超であると有機化合物どうしの反応、つまり副反応が起こり、原料が無駄となり、あるいは、固体酸触媒生成反応を阻害する可能性もある。
【0044】
本発明においてテンプレート剤は通常、上記の内、いずれか1つ(1つの組合せ)を用いるが、これらを2つ以上組み合わせて用いても良い。
【0045】
これらテンプレート剤は配合物中原料における珪素重量を1としたときに対して、通常、0.1以上0.5以下となるように配合する。配合量が0.1未満であると反応が遅延して収率が低くなりやすく、0.5超であると有機化合物どうしの反応、つまり副反応が起こり、テンプレート剤が有効に用いられずに無駄となり、あるいは、固体酸触媒生成反応を阻害する可能性もある。好ましい範囲は0.15以上0.45以下である。
【0046】
ZSM−5などの高機能な固体酸触媒として用いることができるゼオライトを得るためには、上記テンプレート剤と共に、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)、いわゆるケトン類の配合を行っても良い。
ここでR14及びR15は同じ物であっても良く、炭素数は2以上10以下であることが好ましい。このようなケトンとしてジエチルケトンなどが挙げられる。
【0047】
これらケトン類は配合物中原料における珪素重量を1としたときに対して、通常、0.01以上5以下となるように配合する。配合量が0.01未満であると反応が遅延して収率が低くなりやすく、5超であると有機化合物どうしの反応、つまり副反応が起こり、原料が無駄となり、あるいは、固体酸触媒生成反応を阻害する可能性もある。
【0048】
本発明の人工ゼオライトの製造方法では、上記原料(溶融急冷粉砕物、必要に応じて副原料)、そして、目的のゼオライトによって、上記テンプレート及び上記ケトン類を必要に応じて添加し、アルカリ水溶液中で反応させる。
【0049】
水溶液の水は反応液が良好に撹拌できる程度で充分である。水が大きすぎれば反応速度は遅くなり、少なければ撹拌が充分できず、反応が不均一となる。
【0050】
これら原料を密閉容器(反応容器)内に入れ、加熱して反応させることにより固体酸触媒の、主として珪素・酸素四面体構造、及び、アルミニウム・酸素四面体構造からなる立体骨格を形成することができる。
【0051】
この加熱反応時間としては、予め検討して決定するが、例えば、140℃での処理では、通常30分以上数時間程度であり、一般に、温度が低いときには長くし、温度が高ければ短くする。
【0052】
熱処理終了後、通常は冷却後に、反応容器から反応物を取り出し、必要に応じて水、アルコール等などで適宜洗浄後、乾燥する。
【0053】
テンプレート剤を併用して反応を行った場合にはゼオライトの結晶格子の中にテンプレート剤が取り込まれており、用途に応じてこのテンプレート剤を除去するか炭化することができる。
【0054】
テンプレート剤の除去のためには、酸素含有雰囲気下で加熱処理を行って酸化させて除去する。
【0055】
このとき、アルカリ水溶液中での加熱処理で形成された主として珪素・酸素四面体構造、及び、アルミニウム・酸素四面体構造からなる立体骨格内のテンプレート剤を雰囲気中の酸素(例えば空気中の酸素ガス)により酸化除去される。例えば500℃以上で行う。上記骨格は耐熱性が高いが、コスト的な要因により、通常は600℃以下で行う。
【0056】
また、ケイバン比が低いときなど、耐熱性が低いゼオライトの場合には、例えば30%過酸化水素水等の酸化剤を用いて、湿式酸化によってテンプレートを除去することができる。
【0057】
また、用途によっては、非酸化性雰囲気で加熱してテンプレート剤を炭化することもできる。
【実施例】
【0058】
以下に本発明の実施例について具体的に説明する。
【0059】
<実施例1>
碍子廃材としては、高圧送電用の碍子(金属金具、セメント、汚れ等付着物を除去したもの)を用いた。粒径が2〜4mm程度となるように粉砕した。このもののケイバン比は2.9であった。
【0060】
次いで、上記粉砕した碍子廃材10kgを空気プラズマ型プラズマ炉内で1600℃に加熱して充分に溶融させた。この溶融物をプラズマ炉底部に設けた炉底口から室温の水(約1m3)中へ投下し、急冷した。
【0061】
得られた溶融急冷物は急冷により粉砕されており、その粒径は2mm〜5mmであり、これをホソカワ粉体研究所製の粉砕器で粒径が1μm100μm程度で平均粒径が40μmとなるように粉砕し、急冷粉砕物Aを得た。
【0062】
上記急冷粉砕物Aを4kgに、2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液をスラリー状となり、充分撹拌ができる程度加え、加熱処理を行った。
【0063】
具体的には圧力容器を用いて160℃に保ち、撹拌しながら2時間反応させた。
【0064】
得られた反応物αを水で充分に洗浄したのち、乾燥したところ3.8kgであった。
【0065】
さらに、得られた反応物αについて、X線回折分析をおこなった。結果を図1にしめす。図1より得られた反応物αはNa−P1型ゼオライトであることが確認された。また、反応物αの走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0066】
<実施例2>
上記急冷粉砕物Aの100gに対して、廃光ファイバ(石英ガラス)50g加えてケイバン比が5.2とした。この混合物を実施例1同様に水酸化ナトリウム水溶液中で反応させて、反応物βを140g得た。
【0067】
さらに、得られた反応物βについて、X線回折分析をおこなった。結果を図3に示す。図2より得られた反応物はフォジャサイト(faujasite)型ゼオライトであることが確認された。また、反応物βの走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0068】
<実施例3>
実施例1での急冷粉砕物A40gと、含珪素無機化合物として光ファイバ粉砕物4kgとを混合して、ケイバン比が103の混合原料を得た。
【0069】
テンプレート剤としては、テトラプロピルアンモニウムブロマイドを用いたてアルカリ水溶液での加熱処理を行った。
【0070】
上記混合原料に対してテトラプロピルアンモニウムブロマイドを3kg、及び、水酸化ナトリウム400gを75kgの水に溶かしたアルカリ溶液を加え、圧力容器内に仕込んだ後、撹拌しながら160℃で2時間保った。
【0071】
2時間後得られた試料を濾過し、乾燥させた反応物γは4kgあった。得られた反応物γのX線回折解析を行った。結果を図5に示す。図5の結果はZSM−5での解析結果と一致し、得られた反応物γはZSM−5タイプのゼオライトであることが確認された。また、反応物γの走査型電子顕微鏡写真を図6に示す。
【0072】
<実施例4>
実施例1での急冷粉砕物A200gを6mol/Lの塩酸で充分に洗浄したのち、水洗し、酸洗浄物Bを得た。この酸洗浄物Bのケイバン比は100であった。
【0073】
この酸洗浄物B50gに対して、テトラプロピルアンモニウムブロマイドを37g、及び、水酸化ナトリウム5gを1gの水に溶かしたアルカリ溶液を加え、圧力容器内に仕込んだ後、撹拌しながら160℃で2時間保った。
【0074】
2時間後得られた試料を濾過し、乾燥させた反応物δは50gあった。得られた反応物δのX線回折解析を行った。結果は図5と同一であり、得られた反応物δはZSM−5タイプのゼオライトであることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1で得られたゼオライトの回析解析結果を示す図である。
【図2】実施例1で得られたゼオライトを示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例2で得られたゼオライトの回析解析結果を示す図である。
【図4】実施例2で得られたゼオライトを示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例3で得られたゼオライトの回析解析結果を示す図である。
【図6】実施例3で得られたゼオライトを示す走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
碍子廃材を高温で溶融した後、急冷して粉砕し、次いでアルカリ水溶液中で加熱処理することを特徴とする人工ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
上記アルカリ水溶液中での加熱処理の前までに、原料中の珪素原子存在量とアルミニウム原子存在量との比を調整する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の人工ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記加熱処理が、加圧下100℃超の温度で行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の人工ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
上記碍子廃材の溶融がプラズマ炉により行われることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の人工ゼオライトの製造方法
【請求項5】
上記急冷が、溶融した碍子廃材を水中に導入して行われることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の人工ゼオライトの製造方法。
【請求項6】
上記アルカリ水溶液に、下記化学式1で示される化合物、
【化1】

式中R1〜R4はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン
下記化学式2で示される化合物、化学式R8X(式中R8はアルキル基、Xはハロゲン原子またはOH)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)の組合せA、
【化2】

式中R5〜R7はアルキル基
化学式R9NHR10(式中R9およびR10はアルキル基)で示される化合物、化学式R11X(式中R11はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)との組合せB、及び、
化学式NH212で示される化合物(式中R13はアルキル基)、化学式R13X(式中R13はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)で示される化合物との組合せCから選ばれる1つ以上のテンプレート剤が配合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の人工ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
上記テンプレート剤として、上記化学式1で示される化合物を用い、かつ、該化学式中のR1〜R4がすべて、炭素数2以上5以下の同じアルキル基であることを特徴とする請求項6に記載の人工ゼオライトの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−35475(P2009−35475A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194785(P2008−194785)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(390028244)プロメトロンテクニクス株式会社 (3)
【出願人】(000220642)東京電設サービス株式会社 (21)
【Fターム(参考)】