説明

人工ラッテクスの調製方法

(a)ゴムを適切な炭化水素溶媒中に溶解させるセメント形成工程;(b)工程(a)で形成されたセメントを、セッケン水溶液と一緒に乳化させて、水中油型乳化物を形成する工程;(c)炭化水素溶媒を除去し、約0.5から2.0μmの範囲内に中央値の粒子サイズを有するゴムのラテックスを生成する工程を含み、工程(b)においては、最初にプレミックスが形成され、次いでこれが水中油型乳化物に均質化され、ここにおいて、前記プレミックスは、8から16m/sの範囲内の回転子の外周リングの先端速度で作動されている、固定子および回転子を含む少なくとも1つの均質化装置を使用して、セッケン水溶液とセメントとを、1.5から3までのセメント/セッケン水溶液の容積比率で混合することによって形成され、前記プレミックスは、次いで16から35m/sの範囲内の回転子の外周リングの先端速度で作動されている回転子/固定子均質化装置で均質化されることを特徴とし、前記方法は、場合により、(d)さらに高い固形分含量を有する人工ラテックスを形成するラテックス濃縮工程を含む人工ラテックスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中ゴム型の人工乳化物を含む人工ラテックスの製造方法に関する。さらに具体的には、本発明は、共役ジエンポリマーラテックス、具体的には、イソプレンゴムラテックスの調製に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムラテックスも合成ゴムラテックスも水中ゴム型乳化物である。この乳化物は、蛋白質または界面活性剤で安定化されている。ゴム粒子の中央値直径は、平均して0.5から2.0ミクロンまで変化する。これは、いくつかの合成ラテックスについては、0.1ミクロン程度まで低いこともあり、天然ラテックスについては、殆ど1ミクロン近辺である傾向がある。「ラテックス」という用語は、天然ゴムと同様に合成ゴムにも適用され、ゴムの木から得られるミルク状の液体(これは、天然ゴムの供給源である。)の植物学上の名前に由来している。「漿液」という用語は、水性媒体に使用される。
【0003】
人工ラテックスの製造方法は、長年の間知られている。例えば、US2595797における方法は、
1.乳化のために十分な濃度において水不溶性の揮発性有機溶媒中のゴム溶液を調製する工程;
2.この溶液を、界面活性剤を含む水中に圧力下で導入する工程;
3.消泡剤(例えばポリシリコーン油など)を加え、乳化物を得られるまでこの混合物を撹拌する工程;
4.フラッシングによって溶媒を除去する(過度の泡立ちを避けながら)工程;および
5.これを24時間放置して、漿液のいくらかを除去することにより、ラテックスの固形分含有量を濃縮する工程
を提供している。
【0004】
US2799662においても、同様の方法が記載されている。この方法は、乾燥したポリマー材料を、適切な選択溶媒中に溶解させる工程、このように調製されたポリマー溶液を注意深く選択され、調整された水−乳化剤系中に分散させる工程、および最後に溶媒を留去して、人工ラテックスとしてポリマー分散物を残留させる工程を含む多数の統合された工程からなる。この参考文献によれば、二種の乳化剤、すなわち炭化水素に可溶性である1つのタイプ(例えばアルキル−アリール構造中に配列された20から21個の炭素原子を有するアルカリ金属石油スルホネートなど)および水溶性タイプの1つ(例えば高級アルコールのアルカリ金属スルフェート誘導体など)を存在させることが非常に望ましい。ポリマー溶媒混合物の乳化は、溶媒の蒸発を防止する条件下で行われる。
【0005】
溶媒留去のときの乳化安定性の問題は、US2871137において取り組まれており、この特許は、乳化される炭化水素ポリマーに基づいた乳化剤の製造方法を提供している。
【0006】
ポリマーまたは樹脂系材料の安定な乳化物の製造方法は、さらにUS2947715に記載されている。この方法は、ゴムまたは樹脂を適切な溶媒中に溶解させ、乳化中にポリマー溶液にクリーム化剤を加え、溶媒を除去する前に、生成したラテックスをクリーム化させ、溶媒を除去し、次いで溶媒を含まないラテックスを再びクリーム化させることによって達成される。
【0007】
US2955094においては、乳化剤としてオルソ−リン酸および有機サルフェート塩が使用されている。この参考文献において示されるように、機械的な応力をかけた場合にラテックスは不安定となり、凝集する傾向があるという経験が示されている。機械的な不安定性は、コロイドを撹拌する撹拌機の簡単な動きによってもたらされることがある。装置が、凝集したゴムで被覆されることになり、ゴムのかなりの量が失われるので、維持費用は増大する。ポリマーラテックスで遭遇する不安定性の他のタイプは、これらのラテックスが油分を分離させ、溶媒留去工程中に凝固物を発現させることである。
【0008】
US3250737は、迅速で、効率的で、しかも経済的な方法で、合成エラストマーの有機溶液から、合成エラストマーの濃縮ラテックスを製造することを手がけている。これは、有機溶媒中の合成エラストマー溶液、水および乳化剤を混合し、少なくとも生成した乳化物が安定になるまで、この混合物を均質化し、水が沸騰する条件より低い上昇温度および圧力で有機溶媒を留去させ、生成した薄い水性ラテックスを遠心分離にかけ、前記遠心分離工程からの水性漿液を回収し、循環させ、濃縮されたラテックスを回収することによって達成される。この参考文献は、留去および遠心分離の工程に専念しており、どのようにして炭化水素溶液が作られるかは重要ではない。
【0009】
特に興味があるのは、連続乳化工程を含む人工ラテックスの連続製造方法である。連続乳化工程を記載する特許参考文献は、多種多様であり、これらの例は、米国特許第3622127号;同第4344859号;同第4243566号;同第3879327号;同第3862078号;同第3892698号;同第3879326号;同第3839258号;同第3815655号;同第3719572号;同第3652482号;同第3644263号;同第3294719号;同第3310515号;同第3277037号;同第3261792号;同第3249566号;同第3250737号;および同第2955094号;ならびにGB1384591;FR2172455;およびNL7212608を含む。これらの参考文献は、様々な種類の超分散装置または均質化装置の必要性を記載している。
【0010】
このプロセス工程に関して興味のある参考文献は、EP0863173(この(クレーム1)に関係する。)である。
【0011】
0.1から10μmのポリマー粒子サイズ(超遠心分離において定量してd50)を有する安定なポリマー分散物の製造方法は、水と非混和性である有機溶媒(有機相)中に溶解されたポリマーおよび水相を含む油中水型乳化物(ここで、有機相の粘度は、1.0から20,000mPa・s(25℃で測定して)であり;有機相と水相との間の界面張力は、0.01から30mN/mであり;有機相中に乳化している水の粒子サイズは、0.2から50μmであり;有機相:水相の容積比率は、80:20から20:80の範囲内である。)を、1×10から1×10Watts/cmの剪断力で、剪断プロセスにかけて、油中水型乳化物を水中油型乳化物へ変換させることで特徴付けられる。この方法は、具体的には、非常に小さい粒子サイズを有する分散物を専ら目的とする。さらにこの方法において使用される装置は、商業的規模にスケールアップするのが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
乳化工程で作られる水中油型乳化物の粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、ラテックス安定性のためにより重要であるが、手袋、コンドームおよび同様のものを製造する会社によるラテックスのその後の使用にとっても重要である。さらに、最終の水性乳化物の粒子サイズおよび粒子サイズ分布が決定されるのは、この段階である。他方、イソプレンゴムの分子量は、機械的な劣化によってこの段階において減少し、このことが、これらから製造される物品の性質に不利に影響していることが見出された。このように、分子量に殆ど影響を与えないか、または不利な影響を与えず、安定であり、正しいサイズの粒子および粒子分布からなる水中油型乳化物を製造する改良された(連続的な)乳化工程に興味が存在する。
【0013】
IRラテックスについて、人工ラテックス中の適切な粒子サイズは、約0.5から約2μmであるが、乳化されているゴム/溶媒の粒子内には溶媒が存在するために、先行する水中油型乳化物においては、これらの粒子はより大きいはずである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の目的は、人工ラテックスの調製において使用される水中油型乳化物の改良された調製方法を提供することである。
【0015】
(a)ゴムを適切な炭化水素溶媒中に溶解させるセメント形成工程;
(b)工程(a)で形成されたセメントを、セッケン水溶液と一緒に乳化させて、水中油型乳化物を形成する工程;
(c)炭化水素溶媒を除去し、約0.5から2.0μmの範囲内に中央値の粒子サイズを有するゴムのラテックスを生成する工程;および、場合により、
(d)さらに高い固形分含量を有する人工ラテックスを形成するラテックス濃縮工程を含み、工程(b)において、最初にプレミックスが形成され、次いでこれが水中油型乳化物に均質化され、ここにおいて、前記プレミックスは、8から16m/sの範囲内の回転子の外周リングの先端速度で作動されている、固定子および回転子を含む少なくとも1つの均質化装置を使用して、セッケン水溶液とセメントとを、1.5から3までのセメント/セッケン水溶液の容積比率で混合することによって形成され、前記プレミックスは、次いで16から35m/sの範囲内の回転子の外周リングの先端速度で作動されている回転子/固定子均質化装置で均質化されることを特徴とする人工ラテックスの製造方法。
【0016】
好ましい実施形態において、2つの別個の回転子/固定子均質化装置の組み合わせが使用される。さらに好ましい実施形態において、回転子/固定子均質化装置は、循環ポンプおよび保持容器と一緒に循環ループの中でスタティックミキサーとの組み合わせで使用される。
【0017】
(図面における図の簡単な説明)
図は、セッケン(1)およびセメント(2)の導入〔すると、ポンプ(3)、スタティックミキサー(4)および第一均質化装置(5)および保持容器(8)を使用してプレミックスが製造される。〕を示しており、スタティックミキサー、第一の均質化装置、バルブ(7)および保持容器(8)は循環ループの中に配置される。好ましくは、連続的な方法で、プレミックスが製造された後、これは、第二均質化装置(6)の中で均質化される。この図面において示されるように、保持容器は、撹拌容器である場合もある。しかし、これは、必須の特徴ではない。示されていないが、それでもなお、変化し得る選択肢は、単一の均質化装置を使用する方法を含み、この装置は、プレミックスを作るために(セミ)バッチプロセスにおいて最初、低い先端速度で使用され、次いで、水中油型乳化物を生成するためにより高い先端速度で使用される。この記載は、本発明の範囲を限定することを意味するものではない。
【0018】
(発明を実施するための形態)
人工ラテックスを形成するために使用されるゴムは、当該技術分野において知られている、いかなるエラストマーまたはゴム様ポリマーであってもよい。これは、例えばポリイソブチレンおよびこれらのコポリマー、ポリビニル化合物、例えばアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルおよびポリビニルエーテルおよびまたセルロース誘導体、スチレンと共役ジエンおよび/またはアクリロニトリルのコポリマーおよびジオレフィンの(コ)ポリマーを含む。ポリマーのさらなる群は、エチレンと8個までの炭素原子を有する他の1つのモノオレフィンから製造されるコポリマー、例えばエチレンとプロピレンのエラストマー性コポリマー、エチレンとブタン−1とのコポリマーなどである。ゴム様ポリマーのさらに別の群は、エチレン、プロピレンおよびジエン、例えば1,5−ヘキサジエンおよび同様のものなどから得られるターポリマーである。本発明の方法は、乳化重合によって作られたポリマーにもより少ない利益はあるけれども、炭化水素溶媒中での重合によって作られたポリマーに特に利益がある。
【0019】
特に有益なものは、ジオレフィン、好ましくは共役ジオレフィンと、ジオレフィンのさらに好ましい代表的なものとしてのブタジエンおよびイソプレンとのコポリマーである。好ましくは、これらの(コ)ポリマーは、溶液重合によって高いシス−1,4−含有量(少なくとも約90%のオーダーで)へ重合される。これらの(コ)ポリマーは、(非常に)高い分子量、典型的には少なくとも1,000,000g/モルの範囲内でさらに特徴付けられる。最も好ましくは、これらは、リチウム触媒の存在下でのアニオン重合によって製造され、このようにして非常に低い灰分含有量を確実にする。しかしながら、チーグラー型触媒でこれらを製造することもできる。最も好ましくは、ゴム様ポリマーは、イソプレンゴム、例えばKraton Polymerから商業的に入手し得るグレードのいずれかなどである。
【0020】
人工ラテックスが天然ゴムの梱を使用して作られる場合も本発明の方法を利用できることを注目されたい。
【0021】
ゴム、好ましくはイソプレンゴムについては、いずれかの適切な炭化水素溶媒中に溶解することができる。選択される溶媒に関する限りでは、この選択は、ゴムの抽出特性および溶媒自体の沸点にいくらか左右される。ゴムを(迅速におよび容易に)溶解する溶媒が使用されることが必要である。ゴムとして使用されるより低い極性のポリマーについては、4から約10個までの炭素原子を有する脂肪族炭化水素溶媒が有用である。これらは、イソペンタン、シクロペンタン、n−ペンタン、ヘキサン類、ヘプタン類、オクタンおよび同様のものを含む。イソプレンゴムについては、好ましい溶媒は、n−ペンタンである。
【0022】
溶媒中に溶解されるゴムの量は、この溶媒におけるポリマーの溶解性に左右され、制限される。イソプレンゴムの場合において、好ましい量(固形分として表して)は、約20重量%未満、好ましくは約8から約17重量%、さらに好ましくは約10から約15重量%である。ゴムの最大量を決める別のやり方は、セメントの粘度によるものであり、この粘度は、好ましくは20,000センチポイズ(室温)未満でなければならない。
【0023】
ゴム様ポリマーについては、あらゆる普通の方法によって炭化水素溶媒に溶解することができる。例えば、撹拌タンク中で溶媒(その沸点未満)中にそれを溶解することができる。この準備段階に関して特別な条件は全く無い。明らかに、装置メーカーによって設定された安全条件には従わなければならないし、ゴムの劣化は避けなければならない。
【0024】
セメントが形成された後に、水中油型乳化物を形成するためにそれをセッケン水溶液と共に乳化する。使用されるセッケン水溶液については、原則的に、どのようなセッケンをも使用することができる。しかし、発明の根底にある問題の1つが、このように製造されたラテックスの使用を限定する異物を避けることなので、セッケンは、好ましくは食品および皮膚用に認可されたものである。IRラテックスの調製については、好ましくはロジンタイプセッケンを使用する。
【0025】
セッケンについては、水中において0.5と5.0重量%との間の濃度で使用する。さらに好ましくは、水中において0.75と3.0重量%との間、さらにもっと好ましくは、水中において1.0と2.0重量%との間の濃度でそれを使用する。さらに濃度の高い溶液も使用することができるが、これらは何ら利益を与えない。この点において、セッケン溶液の調製に使用される水の硬度が重要である場合があることに注意されたい。好ましくは、非常に軟水(0−4DH)または軟水(4−8DH)を使用すべきである。セッケン溶液の調製については、セッケン水溶液を作るための普通の手段が使用される。
【0026】
セッケン水溶液:セメントの容積比率もまた、むしろ前もって決められる。あまりにも少ないセッケンを使用すると相反転を招き、かなり過剰の使用は、炭化水素溶媒を除去する次の段階および水性乳化物を濃縮するその後の段階において面倒となるはずである。典型的には、セメント/セッケンの比率は、容積によって約1:1.5から1:3.0、好ましくは1:2.0から1.2.5の範囲(セメントが水相を超えて過剰に存在することを意味する。)である。
【0027】
前に述べたように、粒子サイズ分布の変動性を少なくするために、およびゴム様ポリマーの(極端に高い)分子量を保持するために、および粒子サイズを好ましい範囲(約0.5から2.0μm)内に維持しながら、乳化安定性を保持するために広範な乳化研究がなされてきた。これらの矛盾した要件は、回転子/固定子均質化装置を2つの異なる先端速度で使用する二段階アプローチを使用して満たされることが見出された。
【0028】
本方法に使用され得る回転子/固定子システムは、例えばJanke & Kunkel GmbH & Co.(Ultra−Turrax)、Silverson、Fryma(toothed colloid mill)、Cavitron(Cavitron)またはKrupp(Supraton)により製造されたタイプの商業的に製造されたものである。回転子/固定子システムについては、室、空洞または円錐ツールとして両方とも構成することができる。本操作において非常に効果的であることが見出された回転子/固定子均質化装置は、Cavitron Verfahrenstechnickによって製造販売されているもの、特に紙パルプの処理のために販売されているタイプ(Type CD シリーズ)である。Cavitron均質化装置の詳細な説明については、DE10024813に見出すことができる。
【0029】
スケーリング目的のためには、最大直径を有する回転子の先端速度が、決定的なパラメータであり、これが特許請求の範囲において特定された要件を満たす必要があることが見出された。8から36m/sの範囲内の先端速度は、CD1000均質化装置(58mmの直径を有する回転子を持つ)において、3,000から12,000rpmの回転速度と一致し、さらに大きい回転子/固定子(136mmの直径を有する回転子を持つ)においては、1,200から5,000rpmと一致する。均質化装置(すなわち以下に記載される好ましい実施形態における第一均質化装置)については、8から16m/s、好ましくは9から15m/sの範囲内の速度で好ましくは作動させる。
【0030】
本発明の方法において、次の工程は、プレミックスの水中油型乳化物への変換を含む。この工程においては、プレミックスを16から35m/sの範囲内の上昇させた先端速度で均質化する。同じ均質化装置を使用することができる。他方では、これに代わる好ましい実施形態においては、例えば第一回転子/固定子均質化装置を含む循環ループの後、および溶媒除去工程の前に第二均質化装置を使用することが有利であることが見出された。これは、再び、Cavitron(登録商標)CDタイプの回転子/固定子均質化装置であり得る。好ましくは、プレミックスについては、約18から30m/sの範囲内の先端速度で均質化する。
【0031】
必須ではないが、プレミックスの調製においてスタティックミキサーを使用することが非常に好ましい。使用されるスタティックミキサーの特定のタイプは必須ではない。利用できる様々のミキサーがあり、パイロットプラントスケール試験においては、商標Primixの下で販売されているスタティックミキサーがよく機能した。
【0032】
好ましくは、スタティックミキサーおよび回転子/固定子均質化装置(#1)は、保持容器および循環ポンプをさらに含む循環ループの一部である。セメントおよびセッケン水溶液がスタティックミキサーおよび均質化装置の上流で導入され、生成物出口および保持容器は、均質化装置の下流にある。この輪もまた図1に示される。
【0033】
乳化工程の温度の影響は、むしろ小さい。このプロセス工程は、典型的には周囲温度から炭化水素溶媒の沸点未満までにおいて実行される。他方において、平均の滞留時間およびサイクル数は、前記の要求に合致するために重要なパラメータであることが見出された。5から20分、例えば5分から15分の平均滞留時間で作動させると、全ての場合において安定な乳化物が得られる。このようにして、良く密閉された容器の中に室温で数日間放置後も不混和は全く観察されなかった。また、(有機溶媒の除去による)ラテックスの製造のためにこれらの水中油型乳化物を使用した場合、粒子サイズにおける変化は殆ど観察されず;一般的に目標とする1.2−1.3μm近辺の値が見出された。一方では、分子量保持の驚くべき効果が、循環の回数の作用として見出された。これらは、水中油型乳化物においてすでに観察することができた。最適の均質性については、5、好ましくは約8を超える循環回数を使用して得ることができる。他方では、本方法の経済的な理由のために、循環回数の数は、25、好ましくは約15以下であるべきである。これは、循環ループの滞留時間および容量ならびに添加速度に基づいて変わるけれども、分子量を維持するためには、平均で約10の循環回数が好ましい。
【0034】
この後の溶媒除去およびラテックス濃縮の工程については、当該技術分野においてすでに知られている方法のいずれかと同様に実施することができる。これらは、先行パラグラフにおいて言及された先行技術文献(参照によって本明細書中に含まれる。)ならびにNL287078;GB1004441;US3249566;US3261792;US3268501;US3277037;US3281386;US3287301;US3285869;US3305508;US3310151;US3310516;US3313759;US3320220;US3294719;GB1162569;GB1199325;US3424705;US3445414;SU265434;US3503917;US3583967;GB1327127;US3644263;US3652482;US3808166;US3719572;DE2245370;JP48038337;FR2153913;GB1296107;FR2172455;US3815655;US3839258;US3842052;GB1384591;US3879326;US3892698;US3862078;US3879327;US3886109;US3920601;JP51080344;JP50127950;JP54124042;JP54124040;US4243566;JP56161424;US4344859;SU1014834;JP58091702;SU1375629;JP1123834;SU520769およびRO102665;ならびにUS3007852;US3622127;US4160726;GB2051086;JP58147406;SU1058974;EP512736;JP8120124;およびUS6075073号(参照によって本明細書中に含まれる。)を含む。
【0035】
溶媒除去およびラテックス濃縮の工程は、例えば1972年12月のスタンフォード研究所のPEPレポートNo.82の第9章に記載されている。このようにして、ポリイソプレン/イソペンタンおよびセッケン水溶液の乳化物を保持タンクへ送り込み、ここで乳化物を3時間保持して、いかなる「クリーム」(大きすぎる粒子を有する乳化物)をも上部に上昇させ、循環させる。保持タンクから、乳化物は、加熱器に送られ、ここで溶媒のかなりの部分が蒸発してガス状の泡になり、ホイップクリームに類似する発泡物の形成を引き起こす。次いでこの発泡物を冷却し、溶媒を凝縮させ、発泡物を崩壊させる。凝縮された溶媒は、水性乳化相から分離した液体層を形成する。この混合物は、スチールウールを詰め込んだコアレッサーを通過し、分離器の中に入る。分離した溶媒は、溶媒の変動調整タンクへ送られる。乳化物は、遠心分離され、遠心分離器中で濃縮される。濃縮された乳化物の中のポリマー粒子がまだ溶媒を含んでいるので、これを繰り返す。この参考文献におけるラテックスは、遠心分離器中で最終的に64%まで濃縮され、次いでラテックス製品保管容器中に集められて、保管される。この参考文献に記載された、この方法またはいかなる類似の方法も使用することができる。
【0036】
次の実施例は、本発明がどのように実施され得るかをより詳しくさらに説明するが、本発明がどのような点においてもこれに限定されることを意図するものではない。
【実施例1】
【0037】
揮発性炭化水素溶媒中に高シス−ポリイソプレン(MW約3百万、アニオン重合によって製造)を溶解させることによってポリマーセメントを製造した。これは約10重量%の固形分含量で製造された。約1−2重量%の濃度でロジンタイプセッケンを使用してセッケン水溶液を調製した。
【0038】
回転子/固定子均質化装置(円錐状の回転子/固定子システムを有するCavitron CD1000);保持容器(撹拌機および不活性ガスシステムを装備した30Lのガラス製二重壁保持容器、最大圧力1バールg);スタティックミキサー(長さ120cm/直径2.54cm、24個の混合要素を有する。)および異なる流量を量るための秤量システムと一緒にセメント、セッケンおよび乳化物をポンプ輸送するためのギアポンプからなるIR−ラテックス乳化ユニットにおいて15−25℃で実験を行った。
【0039】
9−14/sで変化する先端速度において、回転子/固定子均質化装置(#1)を使用した。さらに、セメント/セッケンの容積比が1.5から2.5まで変化し、セッケン溶液濃度が1から2重量%まで変化し、セメント固形分含有量が約11重量%に維持された実験ウインドーの範囲内で実験を実施した。
【0040】
生成物を数回循環させ、次いで第二回転子/固定子均質化装置へ送り、18m/sの速度で作動させた。第一工程は、プレミックス工程、第二工程は、乳化工程と称される。表2に乳化の結果を提示する。乳化は、溶媒除去によって人工ラテックスの調製に使用され、0.5から2.0μmの要求される範囲内の粒子サイズを有する安定なラテックス生成したことに注目されたい。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
比較例2
実施例1に記載されたようにポリマーセメントを製造した。この場合において、セッケン水溶液のある量を保持容器の中に移し入れた。要求されるセッケン/セメント容積比率に到達するまで、ポリマーセメントを連続的に循環の中に投入した。次の実験については、リサイクルにおいてスタティックミキサーのみを使用して実施した。乳化物のひどい詰まりおよび不安定性のために、この実験を中止しなければならなかった。ラテックスは全く生成されなかった。
【0044】
比較例3
実施例1に記載されたようにポリマーセメントを製造した。この場合において、セッケン水溶液のある量を保持容器の中に移し入れた。要求されるセッケン/セメント容積比率に到達するまで、ポリマーセメントを連続的に循環の中に投入した。次の実験については、スタティックミキサーなしで、9m/sと18m/sとの間で作動させた均質化装置#1のみを用いて実施した。この方法は、乳化物を、本発明によって要求されるような、低い先端速度および高い先端速度の均質化工程にかけないので、本発明の方法と相違する。結果は、表3のとおりである。
【0045】
比較例4
実施例1に記載されたようにポリマーセメントを製造した。この場合において、セッケン水溶液のある量を保持容器の中に移し入れた。要求されるセッケン/セメント容積比率に到達するまで、ポリマーセメントを連続的に循環の中に投入した。次の実験については、スタティックミキサーおよび9m/sと18m/sとの間で作動する均質化装置#1のみを用いて実施した。結果は、表3のとおりである。
【0046】
【表3】

【0047】
結論:
実施例1において、安定な乳化物が、ゴムの分子量の点からは殆ど損失無しに作られた。
一方では、比較例2においては、均質化装置を使用しなかった。スタティックミキサーのみの使用は、明らかに不十分である。比較例3においては、プレミックスの製造のために均質化装置のみを使用し、スタティックミキサーを使用しなかった。比較例4は、スタティックミキサーを使用して、これを変更したものである。いくつかの場合においては、より速い先端速度#1を使用することによって安定な乳化物を製造することは可能であった。一方、より遅い先端速度を使用せずより速い先端速度を使用することにより、分子量への影響は、不利であり、激しい。安定な水中油型乳化物については、次の工程のために使用することができ、ここで、人工ラテックスが作られるが、分子量における減少は、このような第二工程において逆の結果になり得なかったことに注目されたい。したがって、明白に、実施例1の結果は、比較例3−4の最良より優れている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の方法の好ましい実施形態の概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ゴムを適切な炭化水素溶媒中に溶解させるセメント形成工程;
(b)工程(a)で形成されたセメントを、セッケン水溶液と一緒に乳化させて、水中油型乳化物を形成する工程;
(c)炭化水素溶媒を除去し、約0.5から2.0μmの範囲内に中央値の粒子サイズを有するゴムのラテックスを生成する工程
を含む人工ラテックスの製造方法であり、
工程(b)においては、最初にプレミックスが形成され、次いでこれが水中油型乳化物に均質化され、ここにおいて、前記プレミックスは、8から16m/sの範囲内の回転子の外周リングの先端速度で作動されている、固定子および回転子を含む少なくとも1つの均質化装置を使用して、セッケン水溶液とセメントとを、1.5から3までのセメント/セッケン水溶液の容積比率で混合することによって形成され、ならびに前記プレミックスは、次いで16から35m/sの範囲内の回転子の外周リングの先端速度で作動されている回転子/固定子均質化装置で均質化されることを特徴とし、場合により、
(d)さらに高い固形分含量を有する人工ラテックスを形成するラテックス濃縮工程
を含む方法。
【請求項2】
プレミックスの調製において、さらにスタティックミキサーが使用される、請求項1の方法。
【請求項3】
スタティックミキサーおよび回転子/固定子均質化装置(#1)が、保持容器および循環ポンプをさらに含む循環処理の輪の一部であり、ならびにセメントおよびセッケン水溶液がスタティックミキサーおよび均質化装置の上流で導入され、一方生成物出口および保持容器が、均質化装置の下流にある、請求項2の方法。
【請求項4】
回転子/固定子均質化装置(#1)が、プレミックスの調製に使用され、ならびに別個の回転子/固定子均質化装置(#2)が、この後の水中油型乳化物の調製に使用される、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
プレミックスが、連続法で製造され、ならびにプレミックスが5回を超えて、好ましくは約8回を超えて、ただし25回未満、好ましくは15回未満循環される、請求項1から4のいずれか一項の方法。
【請求項6】
ゴムが、ポリイソプレンゴムである、請求項1から5のいずれか一項の方法。
【請求項7】
溶媒中に溶解されるゴムの量が、約20重量%未満、好ましくは約8から約17重量%である、請求項6の方法。
【請求項8】
セッケンが、ロジンタイプセッケンである、請求項1から7のいずれか一項の方法。
【請求項9】
セッケン濃度が、水中において0.5から5.0重量%である、請求項1から8のいずれか一項の方法。
【請求項10】
セッケン溶液対セメントの容積比率が、1:2.0から1:2.5である、請求項1から9のいずれか一項の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−533501(P2009−533501A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504656(P2009−504656)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/011482
【国際公開番号】WO2008/074513
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(501140348)クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・ベー (44)
【Fターム(参考)】