説明

人工括約筋

【課題】尿道を過度に圧迫することなく尿道括約筋の機能を代行することのできる人工括約筋を提供する。
【解決手段】尿道括約筋の機能を代行する人工括約筋であって、尿道1を圧迫する尿道圧迫部11と、尿道圧迫部11を介して尿道1に圧迫力を加える圧迫力付与部12とを備えて構成されている。尿道圧迫部11は尿道1の周囲に装着可能な長さを有してシート状に形成され、圧迫力付与部12は尿道近傍の体内に埋め込まれるマグネットケース13と、マグネットケース13に移動可能に収容された体内側永久磁石14と、体内側永久磁石14と尿道圧迫部11とを連結する連結部材15と、体内側永久磁石14をマグネットケース13の一端側に引き寄せて連結部材15に張力を付与する軟磁性体16とを有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿道括約筋の機能不全による尿失禁を防止する手段として用いられる人工括約筋に関する。
【背景技術】
【0002】
尿道括約筋の機能不全による尿失禁を防止する治療法の一つとして、人工括約筋を体内に埋め込んで尿失禁を防止する治療法がある。この治療法に用いられる人工括約筋としては、尿道の周囲に配置されたカフに液体を供給したり、あるいはカフから液体を排出したりすることによって尿道括約筋の機能を代行するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上述した人工括約筋は、カフに液体を供給するポンプやカフから排出された液体を貯溜しておくリザーバリングなどを必要とする。このため、構成が大型化してしまい、体の小さな患者には適していないという難点がある。また、ポンプやリザーバリングを体内に埋め込む必要があることから、手術が大掛かりになってしまうという難点もある。さらに、ポンプを作動させるための電池を体内に埋め込む必要があることから、電池交換のための手術を年に1回程度実施しなければならないという難点もある。
【0004】
そこで、このような問題を解決するため、本願発明者らは、図12に示すような人工括約筋を考案した(特許文献2参照)。この人工括約筋は、尿道1を取り囲む枠体2の内側に対向して配置された鉄板3と内部磁石4とにより、尿道1を圧迫する方式のものであり、連桔ロッド5により内部磁石4と連結された移動補助磁石6に、体外の外部磁石7を近づけることによって、尿道1に対する圧迫力が解除される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−38808号公報
【特許文献2】特開2007−282923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12に示した人工括約筋では、特許文献1に開示されたもののように、ポンプやリザーバリング、電池などを体内に埋め込む必要がないため、体の小さな患者にも適用できるなどの利点を有している。しかしながら、尿道を鉄板と永久磁石とで挟圧して圧迫する方式であるため、尿道に過度の圧迫力が加わる可能性があった。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、尿道を過度に圧迫することなく尿道括約筋の機能を代行することのできる人工括約筋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明の人工括約筋は、尿道を圧迫する尿道圧迫部と、該尿道圧迫部を介して尿道に圧迫力を加える圧迫力付与部と、を備える人工括約筋であって、前記尿道圧迫部が前記尿道の周囲に装着可能な長さを有してシート状に形成されていることを特徴とするものである。
請求項2に係る発明の人工括約筋は、請求項1記載の人工括約筋において、前記圧迫力付与部は、前記尿道の近傍の体内に埋め込まれるマグネットケースと、該マグネットケースに移動可能に収容された体内側永久磁石と、該体内側永久磁石と前記尿道圧迫部とを連結する紐状または帯状の連結部材と、前記体内側永久磁石を前記マグネットケースの一端側に引き寄せて前記連結部材に張力を付与する軟磁性体と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に係る発明の人工括約筋は、請求項2記載の人工括約筋において、前記尿道圧迫部は、前記尿道の周囲を包む尿道包みフィルムと、該尿道包みフィルムの裏面を覆うシート状カバーと、前記尿道の周方向に延在し、且つ前記尿道包みフィルムと前記シート状カバーとの間に配置される網状圧迫部材と、を有し、
前記網状圧迫部材の一端部は、前記連結部材を介して前記体内側永久磁石に連結されることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に係る発明の人工括約筋は、請求項2記載の人工括約筋において、前記尿道圧迫部は、前記尿道の周囲を包む尿道包みフィルムと、該尿道包みフィルムの裏面を覆うシート状カバーと、前記尿道包みフィルムと前記シート状カバーとの間に介装し、且つ前記尿道の周方向に連続する圧迫部材配置空間を形成する介装シートと、前記尿道の周方向に延在し、且つ前記圧迫部材配置空間の内部に配置される線状圧迫部材と、を有し、
【0010】
前記線状圧迫部材の一端部は、前記連結部材を介して前記体内側永久磁石に連結されることを特徴とするものである。
請求項5に係る発明の人工括約筋は、請求項2から4のうちいずれか1項に記載の人工括約筋において、前記圧迫力付与部は、前記連結部材を覆うチューブ状カバー部材を前記尿道圧迫部と前記マグネットケースとの間に有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の人工括約筋によれば、尿道を鉄板と永久磁石とで挟圧する方式のもののように、尿道に過度の圧迫力を与えるおそれがないので、尿道を過度に圧迫することなく尿道括約筋の機能を代行することができる。
請求項2に係る発明の人工括約筋によれば、ポンプやリザーバリング、電池などを体内に埋め込む必要がないので、体の小さな患者にも適用することができると共に電池交換などのメンテナンスを要することなく尿道括約筋の機能を代行することができる。
【0012】
請求項3に係る発明の人工括約筋によれば、連結部材に付与された張力が尿道圧迫力として網状圧迫部材に伝わるので、尿道を確実に圧迫することができる。
請求項4に係る発明の人工括約筋によれば、連結部材に付与された張力が尿道圧迫力として線状圧迫部材に伝わるので、尿道を確実に圧迫することができる。
請求項5に係る発明の人工括約筋によれば、連結部材が体内組織と接触することがないので、連結部材が体内組織に癒着することによって尿道を圧迫したり尿道に加えられた圧迫力を解除できなくなったりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態に係る人工括約筋の概略構成を示す図である。
【図2】第一実施形態に係る人工括約筋の尿道圧迫部の平面図である。
【図3】図2のA−A断面を示す図である。
【図4】第一実施形態に係る人工括約筋により尿道を圧迫した状態を示す図である。
【図5】尿道に加えられた圧迫力を解除した状態を示す図である。
【図6】第二実施形態に係る人工括約筋の尿道圧迫部の平面図である。
【図7】図6のA−A断面を示す図である。
【図8】第二実施形態に係る人工括約筋の通常時における動作原理を示す図である。
【図9】第二実施形態に係る人工括約筋により尿道を圧迫した状態を示す図である。
【図10】第二実施形態に係る人工括約筋の排尿時における動作原理を示す図である。
【図11】尿道に加えられた圧迫力を解除した状態を示す図である。
【図12】従来の人工括約筋の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第一実施形態)
以下、図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態(以下、「第一実施形態」と記載する)について説明する。
第一実施形態に係る人工括約筋は、図1に示されるように、尿道1を圧迫する尿道圧迫部11と、この尿道圧迫部11を介して尿道1に圧迫力を加える圧迫力付与部12とを備えて構成されている。
【0015】
ここで、圧迫力付与部12は、尿道1の近傍の体内に埋め込まれるプラスチック製のマグネットケース13を有しており、このマグネットケース13の内部には、円柱状の体内側永久磁石14が移動可能に収容されている。また、圧迫力付与部12は、体内側永久磁石14と尿道圧迫部11とを連結する連結部材15を有しており、この連結部材15は、ナイロン等を材料として、紐状に形成されている。なお、第一実施形態では、連結部材15を紐状に形成した場合を説明するが、連結部材15の構成は、これに限定するものではなく、帯状に形成してもよい。
【0016】
また、圧迫力付与部12は、体内側永久磁石14をマグネットケース13の一端側(尿道圧迫部11と反対側の一端側)に引き寄せて連結部材15に張力を付与する軟磁性体16を有している。この軟磁性体16は、鉄板等で形成されている。
また、圧迫力付与部12は、連結部材15を覆うチューブ状カバー部材17を、尿道圧迫部11とマグネットケース13との間に有しており、このチューブ状カバー部材17は、メディカルグレードシリコーンゴム等の弾性材で形成されている。
【0017】
尿道圧迫部11は、図2に示すように、尿道1の周囲に装着可能な長さを有してシート状に形成されており、その前端部には、尿道圧迫部11を尿道1の周囲に巻き付けるために、尿道圧迫部11の後端部に縫着等の止着方法によって止着される左右一対の突出片18a,18bが形成されている。
また、図2及び図3に示すように、尿道圧迫部11は、尿道1の周囲を包む尿道包みフィルム19と、この尿道包みフィルム19の裏面を覆うシート状カバー20とを有しており、これらの尿道包みフィルム19およびシート状カバー20は、体内組織に癒着しにくい材料(例えば、ポリエステル等)で形成されている。
【0018】
また、尿道圧迫部11は、尿道1の周方向に延在し、且つ尿道包みフィルム19とシート状カバー20との間に配置される網状圧迫部材21を有している。この網状圧迫部材21は、ナイロン等で形成され、可撓性を有している。
また、網状圧迫部材21の一端部は、連結部材15を介して体内側永久磁石14に連結されている。
【0019】
一方、網状圧迫部材21の他端部は、尿道包みフィルム19とシート状カバー20との間に介装されるとともに、接着等により、尿道包みフィルム19及びシート状カバー20に固定されている。
したがって、通常時には、図4に示すように、体内側永久磁石14が軟磁性体16に引き寄せられることによって連結部材15に張力が付与されると、連結部材15に付与された張力は、尿道圧迫力として尿道圧迫部11の網状圧迫部材21に伝わる。これにより、尿道包みフィルム19及びシート状カバー20に対して、網状圧迫部材21が摺動し、尿道1の周囲に巻き付けた尿道圧迫部11の内径が減少して、尿道1が周囲から圧迫されるようになっている。
【0020】
一方、排尿時には、図5に示すように、軟磁性体16に体外側永久磁石22を近づけ、体内側永久磁石14と体外側永久磁石22との間に生じた反発力によって、体内側永久磁石14が、軟磁性体16から遠ざかる方向に移動すると、尿道1の周囲に巻き付けた尿道圧迫部11の内径が増加して、尿道圧迫部11により尿道1に加えられた圧迫力が解除されるようになっている。
上述した第一実施形態に係る人工括約筋は、尿道圧迫部11が尿道1の周囲に装着可能な長さを有してシート状に形成されているため、永久磁石と鉄板とで尿道を挟圧する方式の人工括約筋のように、尿道1に過度の圧迫力を与えるおそれがない。したがって、尿道1を過度に圧迫することなく尿道括約筋の機能を代行することができる。
【0021】
また、紐状の部材により、尿道1を周囲から圧迫する構成と比較して、尿道1に生じる損傷を低減させることが可能となる。
また、尿道1の周囲に巻き付けた尿道圧迫部11により、尿道1を周囲から圧迫することが可能であるため、例えば、骨等の体内組織に、尿道1を周囲から圧迫する部材を固定する必要がない。このため、体内に人工括約筋を埋め込む際の手間や危険性を低減させることが可能となる。
【0022】
また、尿道圧迫部11を介して尿道1に圧迫力を加える圧迫力付与部12を、尿道近傍の体内に埋め込まれるマグネットケース13と、このマグネットケース13に移動可能に収容された体内側永久磁石14と、この体内側永久磁石14と尿道圧迫部11とを連結する連結部材15と、体内側永久磁石14をマグネットケース13の一端側に引き寄せて連結部材15に張力を付与する軟磁性体16とを有した構成としたことにより、特許文献1に開示されたもののように、ポンプやリザーバリング、電池などを体内に埋め込む必要がない。したがって、体の小さな患者にも適用することができると共に、電池交換などのメンテナンスを要することなく、尿道括約筋の機能を代行することができる。
【0023】
また、一端部が連結部材15を介して体内側永久磁石14に連結された網状圧迫部材21を、尿道圧迫部11の尿道包みフィルム19とシート状カバー20との間に配置したことにより、連結部材15に付与された張力が尿道圧迫力として網状圧迫部材21に伝わるので、尿道1を確実に圧迫することができる。
また、連結部材15を覆うチューブ状カバー部材17を尿道圧迫部11とマグネットケース13との間に設けたことにより、連結部材15が体内組織と接触することがないので、連結部材15が体内組織に癒着することによって尿道1を圧迫したり尿道1に加えられた圧迫力を解除できなくなったりすることを、防止することができる。
また、尿道圧迫部11の尿道包みフィルム19を、体内組織に癒着しにくい材料で形成したことにより、尿道圧迫部11が尿道1に癒着することを防止することができる。
【0024】
(第二実施形態)
次に、図6から図11を参照して、本発明の他の実施形態(以下、「第二実施形態」と記載する)について説明する。
第二実施形態の人工括約筋の構成は、尿道圧迫部11の構成を除き、上述した第一実施形態と同様(図1参照)であるため、以下の説明は、尿道圧迫部11に関する部分を中心に記載する。
すなわち、第二実施形態の人工括約筋が備える尿道圧迫部11は、図6に示すように、尿道1の周囲に装着可能な長さを有してシート状に形成されており、その前端部には、尿道圧迫部11を尿道1の周囲に巻き付けるために、尿道圧迫部11の後端部に縫着等の止着方法によって止着される左右一対の突出片18a,18bが形成されている。
【0025】
また、図6及び図7に示すように、尿道圧迫部11は、尿道1の周囲を包む尿道包みフィルム19と、この尿道包みフィルム19の裏面を覆うシート状カバー20と、介装シート23と、線状圧迫部材24を有している。
尿道包みフィルム19の厚さは、シート状カバー20の厚さよりも薄く形成されている。これにより、尿道包みフィルム19は、シート状カバー20よりも容易に湾曲する構成となっている。なお、例えば、尿道包みフィルム19の厚さと、シート状カバー20の厚さを同じ厚さとし、尿道包みフィルム19の材料を、シート状カバー20の材料よりも強度の低い材料として、尿道包みフィルム19が、シート状カバー20よりも容易に湾曲する構成としてもよい。
【0026】
介装シート23は、尿道包みフィルム19およびシート状カバー20と同様、体内組織に癒着しにくい材料(例えば、ポリエステル等)で形成されている。なお、第二実施形態では、介装シート23を、尿道1の周方向に連続する四本の帯状部材から形成した場合について説明する。しかしながら、介装シート23の構成は、これに限定するものではなく、一枚の帯状部材から形成してもよい。
また、介装シート23は、尿道包みフィルム19とシート状カバー20との間に介装して、尿道包みフィルム19及びシート状カバー20に取り付けられている。
【0027】
また、介装シート23には、尿道1の周方向に連続する圧迫部材配置空間25が形成されている。なお、第二実施形態では、一例として、介装シート23に、互いに平行な三列の圧迫部材配置空間25が形成されている場合について説明するが、介装シート23の構成は、これに限定するものではない。すなわち、例えば、介装シート23に、互いに平行な二列、または、四列以上の圧迫部材配置空間25が形成されていてもよく、一列のみの圧迫部材配置空間25が形成されていてもよい。
【0028】
具体的には、三列の圧迫部材配置空間25は、介装シート23を形成する四本の帯状部材を、互いに間隔を開けた状態で、尿道包みフィルム19とシート状カバー20との間に介装して、尿道包みフィルム19及びシート状カバー20に取り付けることにより形成する。なお、介装シート23を一枚の帯状部材から形成した場合は、介装シート23を加工して、尿道1の周方向に連続する圧迫部材配置空間25を形成してもよい。
線状圧迫部材24は、尿道の周方向に延在する線状部材であり、ナイロン等で形成されて、可撓性を有している。
また、線状圧迫部材24は、圧迫部材配置空間25の内部に配置されている。なお、第二実施形態では、一例として、三列の圧迫部材配置空間25の内部に、それぞれ、線状圧迫部材24が形成されている場合、すなわち、尿道圧迫部11が、三本の線状圧迫部材24を有している場合について説明する。
【0029】
また、第二実施形態では、一例として、尿道包みフィルム19のうち、圧迫部材配置空間25と対向する部分に、線状圧迫部材24の一部を配置可能な尿道包みフィルム側凹部19aを形成した場合について説明する。しかしながら、尿道包みフィルム19の構成は、これに限定するものではなく、尿道包みフィルム19に、尿道包みフィルム側凹部19aを形成していない構成としてもよい。
線状圧迫部材24の一端部は、連結部材15を介して体内側永久磁石14に連結されている。
【0030】
一方、線状圧迫部材24の他端部は、接着等により、尿道包みフィルム19、シート状カバー20及び介装シート23に固定されている。
したがって、通常時には、図8に示すように、体内側永久磁石14が軟磁性体16に引き寄せられることによって連結部材15に張力が付与されると、連結部材15に付与された張力は、尿道圧迫力として尿道圧迫部11の線状圧迫部材24に伝わる。なお、図8中では、線状圧迫部材24の他端部が、尿道包みフィルム19、シート状カバー20及び介装シート23に固定されている固定端を、符号26を付して示している。
【0031】
連結部材15に付与された張力が線状圧迫部材24に伝わると、圧迫部材配置空間25の内部における線状圧迫部材24の長さが短くなり、尿道包みフィルム19に対して、線状圧迫部材24が摺動し、シート状カバー20側よりも尿道包みフィルム19側が大きく湾曲して、尿道圧迫部11が湾曲することとなる。
シート状カバー20側よりも尿道包みフィルム19側が大きく湾曲すると、図9に示すように、尿道1の周囲に巻き付けた尿道圧迫部11の内径が減少して、尿道1が周囲から圧迫されるようになっている。
【0032】
一方、排尿時には、図10に示すように、軟磁性体16に体外側永久磁石22を近づけ、体内側永久磁石14と体外側永久磁石22との間に生じた反発力によって、体内側永久磁石14が、軟磁性体16から遠ざかる方向に移動する。なお、図9中では、図8と同様、線状圧迫部材24の他端部が、尿道包みフィルム19、シート状カバー20及び介装シート23に固定されている固定端を、符号26を付して示している。
体内側永久磁石14が軟磁性体16から遠ざかる方向に移動すると、圧迫部材配置空間25の内部における線状圧迫部材24の長さが長くなり、尿道包みフィルム19の湾曲度合いは、シート状カバー20の湾曲度合いとほぼ同じとなる。
【0033】
尿道包みフィルム19の湾曲度合いが、シート状カバー20の湾曲度合いとほぼ同じとなると、図11に示すように、尿道1の周囲に巻き付けた尿道圧迫部11の内径が増加して、尿道圧迫部11により尿道1に加えられた圧迫力が解除されるようになっている。
上述した第二実施形態に係る人工括約筋は、一端部が連結部材15を介して体内側永久磁石14に連結された線状圧迫部材24を、介装シート23に形成した圧迫部材配置空間25の内部に配置したことにより、連結部材15に付与された張力が、尿道圧迫力として線状圧迫部材24に伝わるので、尿道1を確実に圧迫することができる。
【0034】
また、線状圧迫部材24、すなわち、尿道の周方向に延在する線状の部材により、尿道1を圧迫する部材を構成することが可能となるため、上述した第一実施形態のように、縦紐と横紐とを編み合わせて形成した網状の部材で尿道1を圧迫する部材を構成する場合と比較して、尿道1を圧迫する部材を容易に作成することが可能となる。
また、互いに平行な複数列の圧迫部材配置空間25の内部に、複数本の線状圧迫部材24を配置しているため、各線状圧迫部材24が互いに絡まることを防止可能となり、動作の安定性を向上させることが可能となるとともに、耐久性を向上させることが可能となる。
【0035】
また、介装シート23を、尿道包みフィルム19とシート状カバー20との間に介装して、尿道包みフィルム19及びシート状カバー20に取り付けているため、尿道圧迫部11の耐久性及び信頼性を向上させることが可能となる。これにより、上述した第一実施形態と比較して、尿道圧迫部11内への液体の侵入を抑制することが可能となるとともに、尿道圧迫部11内へ液体が侵入した際の尿道圧迫部11の損傷を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 尿道
2 枠体
3 鉄板
4 内部磁石
5 連桔ロッド
6 移動補助磁石
7 外部磁石
11 尿道圧迫部
12 圧迫力付与部
13 マグネットケース
14 体内側永久磁石
15 連結部材
16 軟磁性体
17 チューブ状カバー部材
18a,18b 突出片
19 尿道包みフィルム
20 シート状カバー
21 網状圧迫部材
22 体外側永久磁石
23 介装シート
24 線状圧迫部材
25 圧迫部材配置空間
26 固定端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道を圧迫する尿道圧迫部と、該尿道圧迫部を介して尿道に圧迫力を加える圧迫力付与部と、を備える人工括約筋であって、前記尿道圧迫部が前記尿道の周囲に装着可能な長さを有してシート状に形成されていることを特徴とする人工括約筋。
【請求項2】
前記圧迫力付与部は、前記尿道の近傍の体内に埋め込まれるマグネットケースと、該マグネットケースに移動可能に収容された体内側永久磁石と、該体内側永久磁石と前記尿道圧迫部とを連結する紐状または帯状の連結部材と、前記体内側永久磁石を前記マグネットケースの一端側に引き寄せて前記連結部材に張力を付与する軟磁性体と、を有することを特徴とする請求項1記載の人工括約筋。
【請求項3】
前記尿道圧迫部は、前記尿道の周囲を包む尿道包みフィルムと、該尿道包みフィルムの裏面を覆うシート状カバーと、前記尿道の周方向に延在し、且つ前記尿道包みフィルムと前記シート状カバーとの間に配置される網状圧迫部材と、を有し、
前記網状圧迫部材の一端部は、前記連結部材を介して前記体内側永久磁石に連結されることを特徴とする請求項2記載の人工括約筋。
【請求項4】
前記尿道圧迫部は、前記尿道の周囲を包む尿道包みフィルムと、該尿道包みフィルムの裏面を覆うシート状カバーと、前記尿道包みフィルムと前記シート状カバーとの間に介装し、且つ前記尿道の周方向に連続する圧迫部材配置空間を形成する介装シートと、前記尿道の周方向に延在し、且つ前記圧迫部材配置空間の内部に配置される線状圧迫部材と、を有し、
前記線状圧迫部材の一端部は、前記連結部材を介して前記体内側永久磁石に連結されることを特徴とする請求項2記載の人工括約筋。
【請求項5】
前記圧迫力付与部は、前記連結部材を覆うチューブ状カバー部材を前記尿道圧迫部と前記マグネットケースとの間に有することを特徴とする請求項2から4のうちいずれか1項に記載の人工括約筋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−17540(P2010−17540A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141135(P2009−141135)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】