説明

人工風発生装置により発生した人工風からエネルギーを回収する方法及び装置

【課題】人工風発生装置の駆動源が限定されることなく、人工風発生装置の成績係数を低下させることなく、人工風発生装置より排出される排気から高効率でエネルギーを回収する方法、及び装置を提供する。
【解決手段】気流を発生させる人工風発生装置と、回転軸に回転翼が取り付けられ前記気流によって回転力を得る風車と、前記回転軸の回転によるエネルギーを回収する回収手段とを備えた人工風発生装置により発生した人工風からエネルギーを回収する装置において、前記風車は揚力で回転力を得る揚力型風車であり、前記人工風発生装置からの気流の送風側を開放した開放部を設け、前記揚力型風車を前記開放部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工風発生装置の排気からエネルギーを回収する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒートポンプに使用される空気熱交換器、食品用冷蔵庫などで使用されるエバコン、冷却塔など、人工風を発生する人工風発生装置が多く用いられている。
【0003】
人工風発生装置の1つであるヒートポンプに使用される空気熱交換器について説明する。
ビルなどの熱源装置の1つとして、ヒートポンプが用いられている。
図6は従来のヒートポンプの一形態を示す概略図であり、暖房時の運転形態を示している。
ヒートポンプ30は、冷媒を圧縮する圧縮機32、冷房サイクルと暖房サイクルを切り換える四方弁34、冷媒と水を熱交換して水を加温又は冷却する水熱交換器36、膨張弁38、及び外気から熱を奪う又は外気に放熱する空気熱交換器40を備え、これらが配管42に接続されて構成されている。
水熱交換器36には、水の導入管44が設けられており、該導入管44を通じて水熱交換器36に水を導入可能としている。
【0004】
このような構成のヒートポンプ30の暖房時の運転について説明する。圧縮機32によって圧縮されて高温高圧の気体となったフロン、アンモニアなどの冷媒は、四方弁34を通って水熱交換器36に導かれる。水熱交換器36に導かれた前記冷媒は、導入管44を通じて水熱交換器36に導入された水と熱交換することにより熱を失って高圧の液体に変化する。
このとき、導入管44を通じて水熱交換器36に導入された水は、水熱交換器36で前記高温高圧の気体となった冷媒と熱交換することで温水となって、暖房に利用される。
【0005】
水熱交換器36で熱を失って高圧の液体に変化した冷媒は、膨張弁38に導かれ、膨張弁38で減圧されて低圧の液体に変化する。
【0006】
膨張弁38で低圧の液体に変化した冷媒は、空気熱交換器40に導かれる。空気熱交換器40に導かれた低圧の液体の冷媒は、外気から熱を奪って蒸発し、気体に変化する。このとき、熱を奪われた前記外気は送風機41により大気に排気として排出される。
【0007】
空気熱交換器40で気体に変化した冷媒は、四方弁34を通って圧縮機32に戻されて、圧縮機32で再び圧縮される。
【0008】
次に図6に示したヒートポンプ30の冷房時の運転について説明する。冷房時には、四方弁34が切り替わり、圧縮機32により圧縮された冷媒が、四方弁34を通って空気熱交換器40に導かれ、外気に放熱し、高圧の液体に変化する。このとき、放熱された前記外気は送風機41により大気に排気として排出される。
【0009】
空気熱交換器40で外気に放熱して高圧の液体に変化した冷媒は、膨張弁38に導かれ、膨張弁38で減圧されて低圧の液体に変化する。
【0010】
膨張弁38で低圧の液体に変化した冷媒は、水熱交換器36に導かれる。水熱交換器36に導かれた低圧の液体の冷媒は、導入管44を通じて水熱交換器36に導入された水と熱交換して該水を冷却して低圧の気体となり、四方弁34を通って圧縮機32に戻されて再び圧縮される。
このとき、導入管44を通じて水熱交換器36に導入された水は、水熱交換器36で前記低圧の液体となった冷媒と熱交換することで冷水となって、冷房に利用される。
【0011】
図6に示したようなヒートポンプにおいては、空気熱交換器40からは、暖房時には冷媒に熱を奪われた外気が、冷房時には冷媒に放熱された外気が排気として排出されている。特に、大容量のヒートポンプ装置においては空気熱交換器の小型化・効率向上をはかるために大風量を空気熱交換器を通過させている。送風機の形式によって異なるが、例えば送風機41が1000φ〜2000φの軸流送風機の場合には、送風機出口部の排気筒よりの平均風速は8m/sec〜15m/secに達する。この風速は、人工的に作られた風を使って風車発電をするために適当な風速である。またこの空気熱交換器の送風機を駆動するために投入される電力は、ヒートポンプ装置の総入力の8〜15%程度にもなるものであり、この排気空気から送風機の性能・効率を落とすことなく電力の回収ができれば、総合的にヒートポンプの効率(成績係数)を向上させることが可能であると考えられる。
【0012】
しかし、従来までヒートポンプを構成する空気熱交換器から排出される排気の有効活用はなされておらず、排気の持つエネルギーの有効活用が十分にできているとはいえなかった。
【0013】
また、ヒートポンプを構成する空気熱交換器から排出される排気と同様に、エバコン、冷却塔等、その他の人工風を発生しうる人工風発生装置についても、排気の持つエネルギーの有効活用が十分にできているとはいえない状況である。
【0014】
人工風発生装置の一つである空気熱交換器から排出される排気の持つエネルギーを活用している例としては、例えば特許文献1の段落〔0010〕に、風力発電ユニットを備え、この風力発電ユニットの出力を圧縮機駆動用または室外ファン駆動用のインバータに供給する構成とした空気調和機に関するものであり、室外ファンの運転により熱交換器を通して送風口より上方に吹き出された空気を前記風力発電ユニットを駆動するための風力として活用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−214496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、風力発電ユニットを備え、風力発電ユニットの出力を圧縮機駆動用または室外ファン駆動用のインバータに供給する構成である。そのため、風力発電ユニットの出力を圧縮機駆動用または室外ファン駆動用のインバータに供給しない構成のヒートポンプの空気熱交換器から排出される空気を有効活用するためには適用できない。つまり、ヒートポンプの駆動源が限定されるため適用範囲が狭いという課題がある。
【0017】
さらに、特許文献1に開示された技術においては、風力発電ユニットを構成する風車がナセル型であって受風方向が水平であるのに対し、前記熱交換器を通して送風口より上方に吹き出された空気はナセル型の風車に斜め下方より送風されている。つまり、風力発電ユニットを構成する風車の受風方向と、前記熱交換器を通して送風口より送風された空気の送風方向とが異なるため、熱交換器を通して送風口より送風された空気の風車の駆動に寄与する効果が非常に小さいという課題がある。
【0018】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、人工風発生装置の駆動源が限定されることなく、人工風発生装置の性能・効率を低下させることなく、人工風発生装置より排出される排気から高効率でエネルギーを回収する方法、及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため本発明においては、気流を発生させる人工風発生装置と、回転軸に回転翼が取り付けられ前記気流によって回転力を得る風車と、前記回転軸の回転によるエネルギーを回収する回収手段とを備えた人工風発生装置により発生した人工風からエネルギーを回収する装置において、前記風車は揚力で回転力を得る揚力型風車であり、前記人工風発生装置からの気流の送風側を開放した開放部を設け、前記揚力型風車を前記開放部に配置したことを特徴とする。
ここで、前記人工風発生装置とは、人工的に気流を発生する装置のことをいい、例えばヒートポンプに使用される空気熱交換器、食品用冷蔵庫などで使用されるエバコン、冷却塔、車両用トンネルの排気口などを挙げることができる。
また、前記揚力型風車としては、ダリウス型風車、直線ダリウス型風車、ジャイロミル型風車、クロスフロー型風車、プロペラ型風車などを挙げることができる。
【0020】
これにより、人工風発生装置より発生する気流によって前記風車を駆動させ、該風車の駆動によるエネルギーを前記回収手段によって回収することで、前記人工風発生装置から排出する気流の持つエネルギーを回収することができる。
なお、前記回収手段としては風車の回転軸の回転によって駆動する発電機を挙げることができ、回収手段が発電機である場合には人工風発生装置から排出する気流の持つエネルギーを電力として回収する。
【0021】
また、前記風車は揚力で回転力を得る揚力型風車とし、前記人工風発生装置の気流の送風側に設けた開放部に前記揚力型風車を前記開放部に配置したので、人工風発生装置の送風方向と風車の受風方向が完全に一致し、このため送風機で発生される気流の風車の回転への寄与が極めて大きい。さらに、前記風車を揚力型風車として前記開放部に配置することで、気流の抵抗となる要素が大きい抗力型風車と異なり、風車が人工風発生装置からの気流を阻止する抵抗(静圧損失)となる要素が極めて小さい。
従って、人工風発生装置より排出される空気から高効率でエネルギーを回収して発電などに利用することができ、人工風発生装置の性能・効率を低下させることもない。また、人工風発生装置の駆動源が限定されることもない。
【0022】
さらに、人工風発生装置を駆動している間は、人工風発生装置からは安定して気流が発生する。従って、人工風発生装置による気流を受風して回転する風車を安定して駆動させることができ、そのため発電機などのエネルギーの回収手段を安定して駆動してエネルギーを回収することができる。
さらに、既設の人工風発生装置がある場合、人工風発生装置による気流の風向方向に前記風車を設けることで、本発明を実施することができる。つまり、既設の人工風発生装置がある場合には、既設の人工風発生装置の改造無しで本発明を実施することが可能であるという利点を有する。
【0023】
また、前記回転軸を含む前記人工風発生装置の気流の送風方向と垂直な面で前記回転翼が描く回転軌跡の面積が、前記人工風発生装置の気流の送風口断面積よりも広くするとよい。
さらにまた、前記送風口最外端と前記回転軌跡の最外端とを結んだ傾斜線と、前記送風口外端から気流の送風方向に延長した延長線とがなす角度が10°以内の投影範囲内に前記回転翼が収まるようにするとよい。
ここで、前述の人工風発生装置の気流の送風方向と垂直な面で前記回転翼が描く回転軌跡の面積とは、回転翼が気流の送風方向と垂直な面で描く回転軌跡の面積のうち最も広いものとなる。
これにより、人工風発生装置による気流が、前記回転翼の回転軌跡外に流れることなく確実に回転翼に到達する。従って人工風発生装置による気流の全てを風車の駆動に使用することができるため、より効率的に人工風発生装置による気流のエネルギーを回収することができる。
【0024】
また、前記回転翼の中心部が、前記送風口の投影面積内に入るように設定されているとよい。そして、前記人工風発生装置に軸流式送風機を用いる場合は、送風口周辺部と送風機の軸中心部では風速の分布が異なり、前記投影面積内でかつ風速が最も早く、分布が略均一になる位置に風車の中心をおく。一般に送風口の中心部より遠く離れるほど、送風口からの気流は10°程度の角度で拡散しながら広がり、かつ風速は遅くなるので、風車の中心をできる限り送風口の中心部近傍に配置する必要がある。
【0025】
なお、人工風発生装置の1つである空気熱交換器においては、空気熱交換器の送風機は一般にヒートポンプ熱出力の小さいものは一台であるが、大容量になると複数台設置されている。送風機一台毎に風車一台という設置方法はもちろん、大容量化に対しては風車の回転軸を自在軸継ぎ手等を用いてつなぎ、複数台の風車を連結して効率よく大容量化することも可能である。また送風機の風量に合わせて風車を都度あわせて製作する必要をなくすため、標準化された風車を組み合わせて設置することも可能である。
逆に、小型送風機を多数並べた仕様の空気熱交換器に対しては、風車の大きさにあわせたホッパー(囲い)で風速が分散しないように囲いを設けて、風車の回転翼にかかるようにすることも可能である。
また、このような構成は、人工風発生装置が空気熱交換器の場合に限られず、他の人工風発生装置においても適用できる。
【0026】
また、人工風発生装置の排気からエネルギーを回収する方法の発明として、人工風発生装置により発生した人工風のエネルギーを回収する方法であって、前記人工風発生装置より排出される気流によって、該気流の送風方向と垂直もしくは平行に配置した回転軸と該回転軸に取り付けられた回転翼とによって構成される揚力型風車を駆動し、前記回転軸の駆動によって前記人工風発生装置より排出される排気のエネルギーを回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
以上記載のごとく本発明によれば、人工風発生装置の駆動源が限定されることなく、人工風発生装置の性能・効率を低下させることなく、人工風発生装置より排出される排気から高効率でエネルギーを回収する方法、及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1に係るヒートポンプの斜視図である。
【図2】実施例1に係る風車と軸流送風機の側面図である。
【図3】実施例1に係る軸流送風機の概略平面図である。
【図4】実施例2に係るヒートポンプの概略配置図である。
【図5】実施例2に係る風車とヒートポンプの配置図である。
【図6】従来のヒートポンプの一形態を示す概略図であり、実施例1、実施例2にも共通するものである。
【図7】実施例3に係るエバコンの斜視図である。
【図8】図7におけるA方向矢視図である。
【図9】図7におけるB方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0030】
図1は実施例1に係るヒートポンプの斜視図である。ヒートポンプの構成要素及び動作については図6を用いて説明した従来のヒートポンプと同様であるので説明を省略し、図6と同一物については同一符号を付すこととする。
【0031】
図1において、ヒートポンプ30は、マシンケーシング20と空気熱交換器ケーシング22から形成される。マシンケーシング20には、ヒートポンプ30を構成する圧縮機32、四方弁34、水熱交換器36、膨張弁38及びモータ、配管等の付属機器が収納されている。空気熱交換器ケーシング22には、ヒートポンプ30を構成する空気熱交換器40が収納されており、その上部には空気熱交換器40から排出される空気を上方へ送風することができる軸流送風機2が設けられている。さらに、図1には図示していないが、空気熱交換器ケーシング22に設けられた軸流送風機2の上部には、軸流送風機2からの送風により駆動するダリウス型風車が設置される。
【0032】
空気熱交換器ケーシング22の上部に設置される前記風車の構成について図2を用いて説明する。
図2は実施例1に係る風車と軸流送風機の側面図である。
実施例1に係る風車4は、回転軸6と、回転軸6に取り付けられた複数のダリウス翼8から構成されている。回転軸6は、2箇所以上(図2においては2箇所)で支持部材10に回転可能に支持されている。支持部材10は、支柱12を介して空気熱交換器ケーシング22に固定されている。また、発電機14が設けられており、風車4が回転すると、その回転軸6の回転力が発電機14に伝達されて電力が発生する。
【0033】
次に風車4の配置について図2及び図3を用いて説明する。
図3は実施例1に係る軸流送風機2の概略平面図である。
図3において、2は軸流送風機、2aは軸流送風機2の(ファンスリーブ)送風口、8aは回転軸6を含む水平面におけるダリウス翼8の場合の回転軌跡の最外部の概形である。図3に示したように、風車4は、上方から見るとダリウス翼8の回転軌跡の最外部8aが軸流送風機2の送風口2aの上部全体を覆うように配置される。
【0034】
また、図2に示したように、軸流送風機2の送風口の延長線lから、α=10°外側に傾いた傾斜線l上でダリウス翼8を回転軸6に取り付ける。これにより、空気熱交換器40から排出され、軸流送風機2から上方に送風された空気の流れfの全てが風車4を回転させるために使用される。前記αは、10°に限定されるものではないが、αが小さすぎると軸流送風機2から送風された空気の流れfの一部がダリウス翼8に到達する前に傾斜線l外に出てしまい、送風機2から送風された空気の全てを風車4を回転させるために使用させることができなくなる。また、前記αが大きすぎるとダリウス翼8を大型化する必要があり、設備の大型化につながる。従ってαの角度は10°以内の範囲とすることが好ましい。
【0035】
次に、図1〜図3及び図6を用いて、実施例1におけるヒートポンプ及び風車の動作について説明する。
図6に構成したヒートポンプを四方弁34を切り替えて暖房又は冷房運転を行うと、暖房時には水熱交換器36で温水が発生し、冷房時には水熱交換器36で冷水が発生する。
【0036】
また、空気熱交換器40では、暖房時には外気が冷媒に熱を奪われて冷風となり、冷房時には外気が冷媒から放熱されて温風となる。
空気熱交換器40で発生する前記温風又は冷風は、空気熱交換器40を収納している空気熱交換器ケーシング22に設けられた軸流送風機2によって上方に送風される。
【0037】
軸流送風機2によって上方に送風された前記温風又は冷風は、前記傾斜線lの内側、つまり軸流送風機側を上方に流れ、風車4を構成するダリウス翼8に到達する。前記温風又は冷風を受風し、ダリウス翼8は回転軸6を中心に回転する。前記受風による回転軸6の回転によって発電機14が駆動して発電を行う。
発電機14によって得られる電力は、例えば以下のように使用される。
発電機14によって得られる交流の電力は、交流の電力を直流の電力に変換する整流器(不図示)によって直流の電力に変換され、該直流の電力を蓄電する蓄電器(不図示)に蓄電される。該蓄電器に蓄電された電力は、電力を必要とする他の機器に供給されたり、圧縮機32を駆動するモータの電力の一部として使用することができる。
【0038】
以上のような揚力で回転力を得る揚力型風車の1つであるダリウス型風車4を軸流送風機2の送風側の開放部に配置する構造及び動作により、従来排気として排出していた空気熱交換器40で発生する温風又は冷風が持つエネルギーをダリウス型風車4によって電力として回収することができ、エネルギーの有効利用が可能となる。また、軸流送風機2の成績係数を低下させることもない。
また、ヒートポンプ30を駆動している間は、空気熱交換器40では安定して温風又は冷風が発生する。従って、軸流送風機2によって送風される前記温風又は冷風を受風して回転する風車4を安定して駆動させることができ、従って安定して電力を得ることができる。
さらに、既設のヒートポンプがある場合、空気熱交換器40で発生する温風又は熱風を送風する軸流送風機の送風方向に風車4を設けることで、本発明を実施することができ、既設のヒートポンプ部分の改造無しで本発明を実施することが可能である。特に図1に示したような空気熱交換器、ヒートポンプ30が、ビルの屋上などの屋外にある場合にはその設置は容易である。
【0039】
なお、ダリウス型風車4が屋外に設置されている場合には、ヒートポンプの非駆動時にはダリウス型風車4は自然風を受風して回転し、発電機14を駆動させることも可能である。
【実施例2】
【0040】
図4は実施例2に係るヒートポンプの概略配置図である。
なお、実施例2においては実施例1と同一物については同一符号を付し、その説明を省略する。
図4に示したように、マシンケーシング20と空気熱交換器ケーシング22を一体化せず、別個に配置することもできる。図4においては、マシンケーシング20をビル50の下層階部に配置し、空気熱交換ケーシング22をビル50の屋上に配置している。
【0041】
この場合、空気熱交換器ケーシング22内に収納される空気熱交換器40と、マシンケーシング20内に収納される四方弁34及び膨張弁38との間は、ビル50の外部又は内部を通して冷媒が流通する配管42で接続する。マシンケーシング20外に位置する配管42は必要に応じて断熱を行う。さらに、図4には図示していないが、空気熱交換器ケーシング22に設けられた軸流送風機2の上部には、風車が配置される。
【0042】
図5は、実施例2に係る風車とヒートポンプの配置図である。なお、図5においてはマシンケーシング20及び配管42の記載を省略している。
実施例2に係る風車は、図2で示した実施例1に係る風車と同様にして、軸流送風機2の上方に配置される。なお、図5においては、図2と異なり支柱12を空気熱交換器ケーシング22ではなくビル50の屋上に固定しているが、図2と同様に空気熱交換器ケーシング22に固定しても特に問題はない。
また、ダリウス翼8と、軸流送風機2の位置関係は、実施例1において図2を用いて説明した位置関係と同様である。
【0043】
以上のような構成のヒートポンプ及び風車の動作については、図1〜図3及び図6を用いて説明した実施例1のヒートポンプ及び風車と同様であり、空気熱交換器40で発生する温風又は冷風を軸流送風機2で上方に送風し、該送風によって風車4を駆動し、風車4の回転軸6の回転によって発電機14を駆動して発電を行うことができる。
【0044】
このようにして、マシンケーシング20と空気熱交換器ケーシング22が離れた位置にある場合においても、空気熱交換器40で発生する温風又は冷風が持つエネルギーを電力として回収することができ、エネルギーの有効利用が可能である。
従って、マシンケーシング20と空気熱交換器ケーシング22が離れた位置に配置されている既設のヒートポンプにおいても、風車を設けることで、本発明を実施することができるため、発明の適用範囲が広いといえる。
【実施例3】
【0045】
図7は実施例3に係るエバコンの斜視図であり、図8は図7におけるA方向矢視図、図9は図7におけるB方向矢視図である。
エバコン62は、アンモニア、フロンガスなどの冷媒や、その他各種プロセスガスを凝縮するために使用される装置であり、産業用プロセス冷却、食品用冷蔵設備などで使用される。
【0046】
エバコン62においては、凝縮させるガスを、冷媒ガス入口接続管66aより、ケーシング64内部上方に位置するコイルゾーン66を構成するコンデンサコイルのチューブ内に通す。そして、コイルゾーン66の上方に設けた散水ノズル68からコンデンサコイルの前記チューブ外面に散水し、散水された水(以下散布水と称する)にコンデンサコイルの前記チューブ内のガスの熱を伝える。前記散布水に熱を伝えることでチューブ内のガスは凝縮されて冷媒液出口接続管66bより排出される。
そして、コイルゾーン66の下方に設けたファン72より上方即ちコイルゾーン66側に空気を送ることにより、前記散布水の一部を蒸発させ、蒸発潜熱を利用して前記散布水に伝えられた熱を大気中に吐出空気として放出する。
なお、前記散布水は、水槽74に回収されて散水循環ポンプ84により再度散水ノズルに送られ、循環使用される。
また、前記吐出空気に含まれる水滴は、前記吐出空気の吐出口に設けたエリミネータ76により空気から分離されて水槽74に回収される。
【0047】
さらに、本発明に特徴的な構成として、エリミネータ76の上方であり、吐出空気の送風方向の開放部には、前記吐出空気により駆動するクロスフロー型風車78が設置されている。送風案内板79はクロスフロー型風車78に効率よく排気空気を導くために設けるものである。
【0048】
クロスフロー型風車78は、回転軸78aと、回転軸78aに取り付けられた複数の曲面板翼78bから構成されている。回転軸78aは、2箇所以上(図7においては2箇所)で支持部材80に回転可能に支持されている。支持部材80は、エバコンのケーシング64に固定されている。また、発電機82が設けられており、風車78が回転すると、その回転軸78aの回転力が発電機82に伝達されて電力が発生する。発電機82により発生した電力は電線及び発電機盤84を介してファン72の駆動用電力として使用される。
なお、発電機82で発生した電力はファン72の駆動用電力として使用されることに限定されるものではなく、他の用途に使用してもよい。また、例えば図8に示したようにファン72が3台(72a、72b、72c)など複数台ある場合には、そのうち1台(例えば72c)の駆動用電力として発電機82で発生した電力を使用する構成とすることもできる。この場合、ファン72a、72bは商用電力など外部からの電力で駆動させる。
【0049】
なお、本実施例においては、クロスフロー型風車78を設けたが、揚力で回転力を得る揚力型風車であればクロスフロー型風車78に変えて直線ダリウス型風車、ジャイロミル型風車など他の型の風車を設けることも可能である。
【0050】
さらに、吐出空気の吐出口と風車との位置関係は実施例1において図2及び図3を用いて説明した関係と同様とすることで、より効率的にエネルギーの回収が可能となる。
【0051】
以上のような構成により、従来排気として排出していたエバコン62からの吐出空気が持つエネルギーをクロスフロー型風車78によって電力として回収することができ、エネルギーの有効利用が可能となる。また、ファン72を含めたエバコン62の成績係数を低下させることもない。
また、エバコン62を駆動している間は、エバコン62では安定して吐出空気が発生する。従って、エバコン62からの吐出空気を受風して回転する風車78を安定して駆動させることができ、従って安定して電力を得ることができる。
さらに、既設のエバコンがある場合、エバコンからの吐出空気の送風方向の開放部に揚力型風車を設けることで、本発明を実施することができ、既設のエバコンの改造無しで本発明を実施することが可能である。
【0052】
なお、クロスフロー型風車78が屋外に設置されている場合には、エバコンの非駆動時にはクロスフロー型風車78は自然風を受風して回転し、発電機82を駆動させることも可能である。
【0053】
以上の実施例1、2、3において、ヒートポンプの空気熱交換器及びエバコンからの排風のエネルギーを、その排風の送風方向の開放部に配置した揚力型風車で回収することについて説明した。
本発明は、ヒートポンプの空気熱交換器及びエバコンからの排風のエネルギーの回収に限られるものではなく、例えば冷却塔、車両用トンネルの排気口など人工的に気流が生成される装置にも適用することができる。その場合、実施例1、2、3と同様に人工的に生成される気流の送風方向の開放部に、揚力型風車を配置することで前記人工的に生成される気流のエネルギーの回収が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
人工風発生装置の駆動源が限定されることなく、人工風発生装置の成績係数を低下させることなく、人工風発生装置より排出される排気から高効率でエネルギーを回収する方法、及び装置置として利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
2 軸流送風機
4 ダリウス型風車
6 回転軸
8 ダリウス翼
14 発電機
20 マシンケーシング
22 空気熱交換器ケーシング
30 ヒートポンプ
32 圧縮機
34 四方弁
36 水熱交換器
38 膨張弁
40 空気熱交換器
62 エバコン
66 コイルゾーン
66a 冷媒ガス入口
66b 冷媒液出口
68 散水ノズル
72 ファン
72a、72b、72c ファンモータ
76 エリミネータ
78 クロスフロー型風車
78a 回転軸
78b 曲面板翼
79 送風案内板
軸流送風機の送風口の延長線
傾斜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流を発生させる人工風発生装置と、回転軸に回転翼が取り付けられ前記気流によって回転力を得る風車と、前記回転軸の回転によるエネルギーを回収する回収手段とを備えた人工風発生装置により発生した人工風からエネルギーを回収する装置において、
前記風車は揚力で回転力を得る揚力型風車であり、
前記人工風発生装置からの気流の送風側を開放した開放部を設け、前記揚力型風車を前記開放部に配置したことを特徴とする人工風発生装置により発生した人工風からエネルギーを回収する装置。
【請求項2】
前記回転軸を含む前記人工風発生装置の気流の送風方向と垂直な面で前記回転翼が描く回転軌跡の面積が、前記人工風発生装置の気流の送風口断面積よりも広いことを特徴とする請求項1記載の人工風発生装置により発生した人工風からエネルギーを回収する装置。
【請求項3】
前記送風口最外端と前記回転軌跡の最外端とを結んだ傾斜線と、前記送風口外端から気流の送風方向に延長した延長線とがなす角度が10°以内の投影範囲内に前記回転翼が収まることを特徴とする請求項2記載の人工風発生装置により発生した人工風からエネルギーを回収する装置。
【請求項4】
人工風発生装置により発生した人工風排気のエネルギーを回収する方法であって、前記人工風発生装置より排出される気流によって、該気流の送風方向と垂直もしくは平行に配置した回転軸と該回転軸に取り付けられた回転翼とによって構成される揚力型風車を駆動し、前記回転軸の駆動によって前記人工風発生装置より排出される排気のエネルギーを回収することを特徴とする人工風発生装置により発生した人工風のエネルギーを回収する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−38489(P2011−38489A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188668(P2009−188668)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】