説明

人形の関節部材、該関節部材を備えた人形及び人形の関節部材の連結方法

【課題】 両関節体の連結力が強く、また、見栄えの良い外観形状を有する人形の関節部材を提供する。
【解決手段】 人形の関節を挟んで一方側に位置する一方側外装部材に連結される一方側関節体と他方側に位置する他方側外装部材に連結される他方側関節体とを連結してなる人形の関節部材において、一方側関節体の他方側関節体と向かい合う対向面に突出軸を形成し、他方側関節体の一方側関節体と向かい合う対向面に該対向面の反対面へ貫通する突出軸受け孔を突出軸に嵌るように形成し、突出軸受け孔の両開口間の一部に突出軸の軸径よりも狭い内径の軸締め部を形成し、両関節体を互いに回転可能に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形の関節部材、該関節部材を備えた人形及び人形の関節部材の連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、人形の関節部材は、ポーズの自由度に大きく影響を及ぼすため、従来から多種多様なものが開発されている。
【0003】
例えば、図7に示すように、人体の関節を挟んで一方側に位置する一方側外装部材に連結される一方側関節体100と人形の関節を挟んで他方側に位置する他方側外装部材に連結される他方側関節体101とを連結してなる人形の関節部材102であって、一方側関節体100の他方側関節体101と向かい合う対向面103に突出軸104が形成されており、他方側関節体101の一方側関節体100と向かい合う対向面105に突出軸受け部106が突出軸104に嵌るように形成されており、一方側関節体100の突出軸104を他方側関節体101の突出軸受け部106に嵌め込むことによって該両関節体100,101が互いに回転可能に連結される人形の関節部材がある。
【0004】
また、後出特許文献1には、腰骨部材の大臀筋相当部に形成された凹係号部に嵌入する凸係合部を有する第1関節片と、脚の上端部に形成された嵌合孔に嵌入される垂直軸を有する第2関節片とからなり、第1関節片の突起軸が第2関節片の係合孔に嵌入して面接触状態で一体的に結合される脚付け根部材が開示されている。
【0005】
さらに、図8に示すように、人体の関節を挟んで一方側に位置する一方側外装部材に連結される一方側関節体100と人形の関節を挟んで他方側に位置する他方側外装部材に連結される他方側関節体101とを連結してなる人形の関節部材102であって、一方側関節体100の他方側関節体101と向かい合う対向面103に形成された突出軸104にネジ孔107が設けられており、他方側関節体101の一方側関節体100と向かい合う対向面105に突出軸104が嵌る突出軸受け部106が形成されていると共に該突出軸受け部106から貫通孔108が伸びており、一方側関節体100の突出軸104を他方側関節体101の突出軸受け部106に嵌め込んだ状態で貫通孔108にネジ109を通してネジ孔107に該ネジ109を締め込むことによって両関節体100,101が互いに回転可能に連結される人形の関節部材がある。
【0006】
しかし、図7に示す人形の関節部材や前記特許文献1記載の脚付け根部材においては、突出軸(突起軸)と突出軸受け部(係合孔)との連結力が弱いため、両関節体を引き離す方向に外力が加わると簡単に外れてしまい、また、連結力を向上させるために、突出軸の軸径を突出軸受け部の内径に近づけると、連結作業時に突出軸が突出軸受け部に嵌り難く、突出軸を突出軸受け部に差し込んだ際に、突出軸受け部内に空気が閉じ込められて該空気によって突出軸が押し戻されて完全に嵌り合わないという問題点があった。
【0007】
また、図8に示す人形の関節部材においては、ネジの締め込みによって両関節体を連結しているため、両関節体を引き離す方向に外力が加わったとしても両関節体が外れることはないが、ネジが露出して見栄えが非常に悪くなり、また、ネジを締め込むための作業工程が増えるため、製造効率が低下するという問題点があった。
【特許文献1】特開2000−93662号公報 第2,4頁 第4図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、両関節体の連結力が強く、また、見栄えの良い外観形状を有する人形の関節部材を得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試作・実験を繰り返した結果、人形の関節を挟んで一方側に位置する一方側外装部材に連結される一方側関節体と他方側に位置する他方側外装部材に連結される他方側関節体とを連結してなる人形の関節部材において、一方側関節体の他方側関節体と向かい合う対向面に突出軸を形成し、他方側関節体の一方側関節体と向かい合う対向面に該対向面の反対面へ貫通する突出軸受け孔を突出軸に嵌るように形成し、突出軸受け孔の両開口間の一部に突出軸の軸径よりも狭い内径の軸締め部を形成し、両関節体を互いに回転可能に連結すれば、両関節体の連結力が大幅に向上するという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0010】
即ち、本発明に係る人形の関節部材は、人形の関節を挟んで一方側に位置する一方側外装部材に連結される一方側関節体と他方側に位置する他方側外装部材に連結される他方側関節体とを連結してなる人形の関節部材であって、一方側関節体の他方側関節体と向かい合う対向面に突出軸が形成されており、他方側関節体の一方側関節体と向かい合う対向面に該対向面の反対面へ貫通する突出軸受け孔が一方側関節体の突出軸が嵌るように形成されており、突出軸受け孔の両開口間の一部に突出軸の軸径よりも狭い内径の軸締め部が形成されており、両関節体が互いに回転可能に連結されるものである。
【0011】
また、本発明は、前記人形の関節部材において、突出軸受け孔の軸締め部が反対面側に位置する開口近傍に形成されているものである。
【0012】
また、本発明は、前記いずれかの人形の関節部材において、突出軸受け孔の内径が軸締め部から対向面側に向かって広がっているものである。
【0013】
また、本発明は、前記いずれかの人形の関節部材において、突出軸受け孔の内径が軸締め部から反対面側に向かって広がっているものである。
【0014】
また、本発明は、前記いずれかの人形の関節部材において、一方側関節体の突出軸が他方側関節体の突出軸受け孔に差し込まれた状態で突出軸受け孔の軸締め部から反対面側へ突出した突出軸の先端部分が潰れてその軸径が軸締め部の内径よりも広がっているものである。
【0015】
また、本発明に係る人形の関節部材セットは、前記いずれかの人形の関節部材を構成する一方側関節体と他方側関節体とからなるものである。
【0016】
また、本発明に係る人形は、前記いずれかの人形の関節部材を備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る人形の関節部材の連結方法は、人形の関節を挟んで一方側に位置する一方側外装部材に連結される一方側関節体と他方側に位置する他方側外装部材に連結される他方側関節体とからなる人形の関節部材の連結方法であって、一方側関節体の他方側関節体と向かい合う対向面から突出させた突出軸を他方側関節体の一方側関節体と向かい合う対向面から該対向面の反対面へ貫通させた突出軸受け孔に差し込んで両関節体を連結した後、突出軸受け孔の両開口間の一部に形成された突出軸の軸径よりも狭い内径の軸締め部を通過して反対面側へ突出した突出軸の先端部分を軸径が広がるように潰すものである。
【0018】
さらに、本発明に係る他の実施の形態としては、前記人形の関節部材において、突出軸受け孔の内径が軸締め部近傍のみ突出軸の軸径よりも狭いものとしてもよい。
【0019】
また、本発明に係る他の実施の形態としては、前記人形の関節部材において、突出軸受け孔の軸締め部及び/又は突出軸の先端部分が外的圧力によって変形可能な材料によって形成してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、突出軸受け孔の両開口間の一部に突出軸の軸径よりも狭い内径の軸締め部を形成したので、突出軸受け孔に差し込まれた突出軸が軸締め部によって線接触状態で締め付けられ、両関節体が強固に連結され、両関節体を引き剥がす外力が加わっても容易に外れなくなる。また、突出軸受け孔の内径を軸締め部近傍のみ突出軸の軸径よりも狭くすることにより、突出軸受け孔の開口に対して突出軸の先端を容易に差し込むことができる。
【0021】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0023】
実施の形態1.
【0024】
図1は本実施の形態に係る人形の手関節を示した説明図である。図2は図1に示す関節部材の一方側関節体を示した斜視図である。図3は図1に示す関節部材の他方側関節体を示した斜視図である。図4は図1に示す関節部材の動作状態を示した斜視図である。これらの図において、1は、人形の手関節を挟んで一方側に位置する手部材(一方側外装部材)であり、2は、人形の手関節を挟んで他方側に位置する前腕部材(他方側外装部材)であり、3は、手部材1に連結される一方側関節体4と前腕部材2に連結される他方側関節体5とを連結してなる関節部材である。なお、本発明における「人形」には、人体を模したものに限らず、ロボットや動物などを模したものも含まれる。
【0025】
手部材1は、手関節側へ貫通する中空部6を有しており、手関節側先端には下向きに開口した球面凹部7が形成されている。
【0026】
前腕部材2は、手関節側へ貫通する中空部8を有しており、手関節側先端には上向きに開口した球面凹部9が形成されている。
【0027】
一方側関節体4は、図2に示すように、手部材1の中空部6に対して摺動状態で回転可能に差し込まれる軸部10と、軸部10の一方端に固定される半球状の関節部11とから構成されており、関節部11は、軸部10に対して他方側関節体5と向かい合う対向面12が垂直になるように位置付けられている。そして、関節部11には、対向面12の中央から突出軸13が突出している。
【0028】
他方側関節体5は、図3に示すように、前腕部材2の中空部8に対して摺動状態で回転可能に差し込まれる軸部14と、軸部14の一方端に固定される半球状の関節部15とから構成されており、関節部11は、軸部14に対して一方側関節体4と向かい合う対向面16が垂直になるように位置付けられている。そして、関節部15には、対向面16から該対向面16の反対面17へ貫通する突出軸受け孔18が形成されている。そして、突出軸受け孔18の両開口19,20間であって反対面17側の開口20近傍には、突出軸13の軸径よりも狭い内径の軸締め部21が形成されており、突出軸受け孔18の内径は、軸締め部21から両開口19,20へ向かってテーパー状が広がっている。従って、他方側関節体5の反対面17には、カルデラ状の開口部22が形成される(図1参照)。
【0029】
なお、本発明に係る両関節体は、外的要因(例えば、圧力)によって変形可能な材料によって形成されており、例えば、ウレタン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニール樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂及びスチロール樹脂などの合成樹脂材料やアルミニウム、ステンレス、ダイキャスト合金、亜鉛合金、真鍮、銅、ジュラルミン、ベリリューム合金、チタン合金及び鉄などの金属材料によって形成されている。
【0030】
次に、組立手順を説明する。
【0031】
先ず、一方側関節体4の突出軸13を他方側関節体5の突出軸受け孔18に差し込んで両関節体4,5を連結させて関節部材3を形成する。この時、突出軸13が突出軸受け孔18の軸締め部21を圧迫状態で通過して軸締め部21に線接触状態で締め付けられて保持される。なお、両関節体4,5は外的圧力によって変形可能な材料によって形成されているため、突出軸13が突出軸受け孔18の軸締め部21を通過する際に、突出軸13と突出軸受け孔18の軸締め部21とが僅かに変形して嵌り合う。これにより、図4に示すよう、両関節体4,5は突出軸13を回転軸として互いに回転可能に連結される。
【0032】
次に、関節部材3における一方側関節体4の軸部10を手部材1の中空部6に差し込み、球体状の関節部11,15の一部を手部材1の球面凹部7に嵌め込む。また、関節部材3における他方側関節体5の軸部14を前腕部材2の中空部8に差し込み、球体状の関節部11,15の一部を前腕部材2の球面凹部9に嵌め込む。これにより、手部材1は、一方側関節体4の軸部10を回転軸として関節部材3に対して回転可能に連結され、また、前腕部材2は、他方側関節体5の軸部14を回転軸として関節部材3に対して回転可能に連結される。
【0033】
実施の形態2.
【0034】
本実施の形態は前記実施の形態1に係る関節部材の変形例である。図5及び図6は本実施の形態に係る関節部材を示した説明図であり、図5は一方側関節体における突出軸の先端部分を潰す前の状態を示しおり、図6は一方側関節体における突出軸の先端部分を潰した後の状態を示している。これらの図において、図1〜図4と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0035】
本実施の形態に係る関節部材3は、図5に示すように、一方側関節体4の突出軸13が他方側関節体5の突出軸受け孔18よりも長く形成されている。このため、突出軸13を突出軸受け孔18に差し込んだ状態において突出軸受け孔18の反対面17側の開口20から突出軸13の先端部分23が飛び出す。そして、図6に示すように、突出軸13の先端部分23を潰して該先端部分23の軸径を軸締め部21の内径よりも広がるように変形させ、他方側関節体5の反対面17側に形成されたカルデラ状の開口部22を突出軸13の潰れた先端部分23によって埋める。
【0036】
本実施の形態によれば、突出軸の変形した先端部分が突出軸受け孔の開口部(軸締め部)に引っ掛かった状態となるため、両関節体を引き剥がす方向に外力が加わったとしても、両関節体が外れない。
【0037】
なお、突出軸の先端部を潰す方法としては、突出軸の先端部分を形成する材料によっても異なるが、例えば、叩き潰す方法や溶融して潰す方法などがある。
【0038】
本発明に係る人形の関節部材は、手関節や膝関節に限定されることなく、首関節、肩関節、肘関節、腰関節、股関節、膝関節、足関節などの他の関節においても採用することができる。
【0039】
また、本発明に係る人形の関節部材を、外装部材に連結する場合には、前記各実施の形態のように軸によって連結してもよく、また、一体的に連結してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態1に係る人形の手関節を示した説明図である。
【図2】図1に示す関節部材の一方側関節体を示した斜視図である。
【図3】図1に示す関節部材の他方側関節体を示した斜視図である。
【図4】図1に示す関節部材の動作状態を示した斜視図である。
【図5】実施の形態2に係る関節部材を示した説明図である。
【図6】実施の形態2に係る関節部材を示した説明図である。
【図7】従来の人形の関節部材を示した分解斜視図である。
【図8】従来の人形の関節部材を示した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 手部材
2 前腕部材
3 関節部材
4 一方側関節体
5 他方側関節体
6,8 中空部
7,9 球面凹部
10,14 軸部
11,15 関節部
12,16 対向面
13 突出軸
17 反対面
18 突出軸受け孔
19,20 開口
21 軸締め部
22 開口部
23 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形の関節を挟んで一方側に位置する一方側外装部材に連結される一方側関節体と他方側に位置する他方側外装部材に連結される他方側関節体とを連結してなる人形の関節部材であって、一方側関節体の他方側関節体と向かい合う対向面に突出軸が形成されており、他方側関節体の一方側関節体と向かい合う対向面に該対向面の反対面へ貫通する突出軸受け孔が一方側関節体の突出軸が嵌るように形成されており、突出軸受け孔の両開口間の一部に突出軸の軸径よりも狭い内径の軸締め部が形成されており、両関節体が互いに回転可能に連結されることを特徴とする人形の関節部材。
【請求項2】
突出軸受け孔の軸締め部が反対面側に位置する開口近傍に形成されている請求項1記載の人形の関節部材。
【請求項3】
突出軸受け孔の内径が軸締め部から対向面側に向かって広がっていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の人形の関節部材。
【請求項4】
突出軸受け孔の内径が軸締め部から反対面側に向かって広がっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の人形の関節部材。
【請求項5】
一方側関節体の突出軸が他方側関節体の突出軸受け孔に差し込まれた状態で突出軸受け孔の軸締め部から反対面側へ突出した突出軸の先端部が潰れて軸径が軸締め部の内径よりも広がっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の人形の関節部材。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の人形の関節部材を構成する一方側関節体と他方側関節体とからなる人形の関節部材セット。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の関節部材を備えた人形。
【請求項8】
人形の関節を挟んで一方側に位置する一方側外装部材に連結される一方側関節体と他方側に位置する他方側外装部材に連結される他方側関節体とからなる人形の関節部材の連結方法であって、一方側関節体の他方側関節体と向かい合う対向面から突出させた突出軸を他方側関節体の一方側関節体と向かい合う対向面から該対向面の反対面へ貫通させた突出軸受け孔に差し込んで両関節体を連結した後、突出軸受け孔の両開口間の一部に形成された突出軸の軸径よりも狭い内径の軸締め部を通過して反対面側へ突出した突出軸の先端部分をその軸径が軸締め部の内径よりも広がるように潰すことを特徴とする人形の関節部材の連結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−7175(P2007−7175A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192500(P2005−192500)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(399110362)株式会社ボークス (14)
【Fターム(参考)】