説明

人形等の玩具が手から離れた時に床に落ちず元の位置に戻る器具

【課題】 認知症が進んだ方、身障者および乳幼児の玩具の補助具として、人形等の玩具が手から離れた時に床に落ちず、テーブル等の上に置いた元の位置に戻る器具が要望されていた。紐を用いてこの要望を実現する場合、紐に掛かる力が少ないほど利用者に都合が良い。玩具は物により重さが異なるので、紐に掛かる力を調節できるものが望まれる。
【解決手段】 紐の端に重りを付け、紐を板に開けた穴に通したものを用いる。板をテーブルの上に置いた時に、紐がテーブルに接しないようにするため、板には底上げ板および金具を付ける。また、板の縁には、人形等の玩具が引っ掛からないように、丸みを持たせる。重りの重さを利用することにより、紐の他端に付けた人形等が手から離れた時に床に落ちず、板の上に置いた元の位置に戻る。
重りの重さを人形等の重さと同程度で若干重くなるように調整すれば、無駄な力を要しないものとなる。ゼンマイ、あるいはゴム等の力を利用する場合には、過度な力を要しないものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形等の玩具が手から離れた時に床に落ちず元の位置に戻る器具に関する。
【背景技術】
【0002】
介護施設を訪れると、認知症の進んだ入居者が、ただボーっとして車椅子に座っている姿を良く目にする。テーブルの上には何も置かれていない。ひとつのテーブルを四人の入居者が囲んでいるが、認知症の進んだ入居者同士が会話できるはずもなく、お互いただボーっとして車椅子に座っているのである。
【0003】
食事の時間になると配膳されるが、介護士の助けがないと食事ができない。食事中、食器に手を伸ばす入居者もいるが、食器をひっくり返す心配があり、介護士は入居者の手が届かないところまで食器を引いてしまう。認知症の進んだ人がやっと興味を示したのだが。
【0004】
認知症の進んだ入居者に人形を与えると、暫くすると人形を床に落してしまう。介護士が拾って上げても、また暫くすると床に落してしまうため、結局、認知症の進んだ入居者に遊び道具が与えられることもなくなってしまう。リュウマチ等で手が巧く動かない場合には尚更である。よって、認知症の進んだ入居者のテーブルの上には何も置いてないのである。身障者の場合も同じである。
【0005】
乳幼児の場合も同様で、母親が世話をしている間は遊び道具で遊べるが、母親が少し離れていると、遊び道具を床に落してしまうことが多い。
【0006】
これらの事例から判断されることは、人形等の遊び道具が床に落ちなければ、認知症の進んだ人も身障者、乳幼児も、満足行くまで遊ぶことができ、また、世話をする人の労力も低減する。
【0007】
よって、人形等の玩具が手から離れた時に床に落ちず元の位置に戻る器具が切望される。人形等の楽しい玩具は世に溢れているものの、その利用が難しい人の遊びを補助する器具が無いのが現状である(たとえば、特許庁ホームページ公開公報)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
人形等の玩具が手から離れた時に床に落ちず、テーブル等の上に置いた元の位置に戻る器具が要望される。紐を用いてこの要望を実現する場合、紐に掛かる力が少ないほど利用者に都合が良い。玩具は物により重さが異なるので、紐に掛かる力を調節できるものが最良である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
紐の端に重りを付け、紐を板に開けた穴に通したものを用いる。板をテーブルの上に置いた時に、紐がテーブルに接しないようにするため、板には底上げ板および金具を付ける。また、板の縁には、人形等の玩具が引っ掛からないように、丸みを持たせる。重りの重さを利用することにより、紐の他端に付けた人形等が手から離れた時に床に落ちず、板の上に置いた元の位置に戻る。
【0010】
重りの重さを人形等の重さと同程度で若干重くなるように調整すれば、無駄な力を要しないものとなる。ゼンマイ、あるいはゴム等の力を利用する場合には、過度な力を要しないものを用いる。
【発明の効果】
【0011】
本発明具は、人形等の玩具と同程度の重さの重りを用いるので、人形等の玩具を引き寄せる時に過度な力を要しない。力の弱い人には、軽い玩具と重りを用意すれば良い。人形等の玩具が手から離れると、重りの重さにより元の位置に戻る。人形等の玩具が生憎板の縁に引っ掛かった場合でも、人形等の玩具が床に落ちたわけではないので、遊びを続けることができる。
【0012】
また、本発明具の戻す力により、人形等の玩具を手から離した時に、人形等の玩具に動きが生じるので、玩具自体の魅力が増す点も、本発明具の長所である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明具の原理を示したものである。符号1は人形等の玩具であり、利用者が適宜購入するものである。人形等の玩具には紐(符号2)が結ばれており、紐は板(符号3)に開けられた穴(符号4)を通過して、他端に重り(符号5)が付けられている。板の縁には、人形等の玩具が引っ掛からないように丸棒が付けられている。符号5の重りにより、人形等の玩具が手から離れても床に落ちることはなく、板(符号3)中央の穴(符号4)の位置に戻る。
【0015】
図2は、板(符号3)をテーブルの上に置くために、板の裏面を工夫したものである。板の裏面には、板とテーブルの間に隙間を設けるための底上げ板(符号7、符号8)が付けられている。この底上げ板は弾力性のあるスポンジでできており、テーブルを傷つけないとともに、板がテーブル上で滑らないようにしている。符号9がフックであり、紐が穴(符号4)とフック(符号9)を経由することにより、紐がテーブルに接することがない。
【0016】
図3は、図2に示したものをテーブル(符号10)の上に置き、実際の利用状況を示したものである。図2中のフックがテーブルの縁の外側に位置するように板(符号3)を置けば、紐(符号2)がテーブルに接することはない。丸棒(符号6)がテーブルからはみ出した形となっているが、テーブルの縁が滑る素材であれば、丸棒の位置がテーブル内に置かれても問題が生じない。人形等の玩具が手から離れても、重り(符号5)の重さにより、板(符号3)中央の穴(符号4)の位置に戻る。重り(符号5)に鈴(符号11)を付ければ、揺れたときに鈴が鳴り、玩具としての魅力が増す。
【0017】
人形等の玩具が板の縁に引っ掛かる場合もあるが、人形等の玩具が床に落ちたわけではないので、遊びを続けることができる。乳幼児は時に玩具を乱暴に扱うが、手から離れた玩具が穴に向う時、穴の位置を中心にして回転したりするので、乳幼児の欲求をさらに満足させる。
【0018】
利用者は一般に椅子に腰掛けて本発明具を利用すると思われるが、重りを吊るした紐が足に触れる場合には、触れない位置に本発明具を若干移動すれば良い。触れる場合でも、重り(符号5)や鈴(符号11)もひとつの玩具であり、これらも併せて遊ぶことができる。玩具であることを考えれば、重りは木製の玉が喜ばれると思われるし、同程度の重さの玩具であっても良い。
【0019】
以上のように、本発明具を用いることにより、認知症の進んだ人も身障者、乳幼児も、本人の好きな玩具を床に落とすことなく充分に楽しむことができる。また、お世話をする人にとっても苦労が減るばかりでなく、自ら遊ぶ姿を見て明るいものを感じるものと確信される。
【0020】
尚、ゼンマイやゴム等を用いても同様の器具ができるが、それらは類似のものなので割愛する。また、人形等の玩具だけでなく、日常生活用品で床に落としては困るものも多いが、本発明具を応用すれば、壁に掛けるもの等も容易に考案される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の原理を示す図。
【図2】本発明具の裏面を示す図。
【図3】本発明具をテーブルの上に置いて用いた場合を示す図。
【符号の説明】
【0022】
1 人形等の玩具
2 紐
3 板
4 穴
5 重り
6 丸棒
7 底上げ板
8 底上げ板
9 フック
10 テーブル
11 鈴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐の端に重り、あるいはゼンマイ、ゴム等を付けたものであって、重り、あるいはゼンマイ、ゴム等の力を利用して、紐の他端に付けた人形等が手から離れた時に床に落ちず、テーブル等に置いた元の位置に人形等が戻る器具
【請求項2】
紐の端に重り、あるいはゼンマイ、ゴム等を付け、紐を板等に開けた穴に通したものであって、重り、あるいはゼンマイ、ゴム等の力を利用して、紐の他端に付けた人形等が手から離れた時に床に落ちず、テーブル等に置いた元の位置に人形等が戻る器具
【請求項3】
紐の端に重りを付け、紐を板に開けた穴に通したものであって、板には、板をテーブルの上に置いた時に紐がテーブルに接しないようにするための底上げ板および金具を有し、重りの重さを利用して、紐の他端に付けた人形等が手から離れた時に床に落ちず、板の上に置いた元の位置に人形等が戻る器具

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−254757(P2009−254757A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126478(P2008−126478)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(506371763)有限会社ラボコスタ (6)
【Fターム(参考)】