説明

人造大理石浴槽及びその製造方法

【課題】浴槽の裏面側が透けて見え難くすることができ、尚且つ、浴槽裏面に塗布される白色系等の隠蔽塗料の塗布量を軽減する、もしくは隠蔽塗料の塗布作業を省略することができ、しかも浴槽裏面に別部材を強固に接着することができる人造大理石浴槽を提供する。
【解決手段】浴槽裏面5に十点平均粗さRzを20乃至60μmとする微小凹凸が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人造大理石浴槽及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人造大理石製の浴槽はその透明性によって裏面側が透けて見えることがあり、これを防止するためには浴槽裏面に隠蔽塗料を吹き付ける等の工夫を行う必要がある。しかし、この隠蔽塗料の塗布量が多くなると、作業時間の増加や製造コストの増加を招く。
【0003】
一方、アクリル系素材やポリエステル系素材からなる人造大理石浴槽は浴槽表面の平滑性に優れ、入浴時の肌触りがよく、また皮脂垢や水垢を付き難く防汚性が高いため、従来から利用されている。また、成形材料にフッ素やシリコンといった撥水性や撥油性を向上させる成分を混入し、浴槽表面の平滑性をさらに向上させる工夫もなされている。
【0004】
しかし、このように平滑性の高い人造大理石浴槽は、浴槽裏面の平滑性も高く、このため、例えば図3に示す浴槽のように浴槽裏面5にエプロンを係止するための係止部材12や補強用のリブ等13の別部材を接着剤で取り付ける場合に充分な接着強度を得難い。また、前記撥水性や撥油性は隠蔽塗料をはじきやすい。
【0005】
なお、例えば特許文献1には浴槽表面に凹凸を形成した人造大理石浴槽が開示されているが、このような人造大理石浴槽にあっては浴槽表面の凹凸によって浴槽を表面側から見たときの深みのある色調が損なわれる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−37245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、浴槽の裏面側が透けて見え難くすることができ、尚且つ、浴槽裏面に塗布される白色系等の隠蔽塗料の塗布量を軽減して製造コストを抑え、しかも浴槽裏面に別部材を強固に接着することができる人造大理石浴槽を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の人造大理石製の浴槽は、浴槽裏面5に十点平均粗さRzを20乃至60μmとする微小凹凸が形成されることを特徴とする。
【0009】
また、前記浴槽1が鏡面における水の接触角が75度以上の材料からなることが好ましい。
【0010】
また、前記浴槽1を製造するにあたって浴槽表面を成形する表面側成形型8と浴槽裏面5を成形する裏面側成形型9の間に成形材料を注入して硬化させる注入成形を採用したものにおいて、前記裏面側成形型9の成形面に形成された微小な凹凸によって浴槽裏面5に十点平均粗さRzを20乃至60μmとする微小凹凸を成形することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、浴槽裏面に十点平均粗さRzを20乃至60μmとする微小凹凸を形成することにより、浴槽表面から進入した光を浴槽裏面に形成された微小凹凸によって乱反射し、浴槽を表面側から見た場合に、浴槽の裏面側が透けて見え難くすることができる。このため、浴槽裏面に塗布される白色系等の隠蔽塗料の塗布量を軽減することができ、もしくは該隠蔽塗料の塗布作業を省略することができる。
【0012】
また、前記微小凹凸を形成することにより、浴槽裏面における接着剤のアンカー効果が高まり、また、浴槽裏面の親水性が高まって接着剤がなじみやすくなり、これにより浴槽裏面に別部材を強固に接着することができる。
【0013】
また、浴槽が鏡面における水の接触角が75度以上の材料からなるものであれば、浴槽表面の平滑性を高めて肌触りや防汚性を高めることができる。
【0014】
また、前記浴槽を注入成形により製造するものにおいて、裏面側成形型の成形面に形成された微小な凹凸によって浴槽裏面に十点平均粗さRzを20乃至60μmとする微小凹凸を成形すれば、前記微小凹凸をサンディング処理や脱脂処理等の後処理を行うことなく形成することができ、低コストで浴槽を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の一例の浴槽を示す説明図である。
【図2】同上の浴槽を成形するための成形型を示す説明図である。
【図3】従来の浴槽を示し、(a)は底面図、(b)は要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、浴槽1を浴室に設置した状態において浴槽1の上側の製品表面のことを浴槽表面と記載する。また、浴槽1を浴室に設置した状態において外部に露出せず浴槽1の下側の製品裏面のことを浴槽裏面5と記載する。
【0017】
図1に示す本実施形態の一例の浴槽1は人造大理石製の浴槽であって、一般的な人造大理石浴槽と同様に、不飽和ポリエステル樹脂や、熱硬化型アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂に、充填剤、内部離型剤、硬化剤、柄材等の添加物を配合した樹脂組成物を成形材料として注型用の成形型7に注入し、これを加熱硬化させることにより成形される。前記成形材料としては、浴槽表面の平滑性を高めるため水の接触角が75度以上の材料を用いることが好ましい。ここで、水の接触角の計測は、上方に向けた鏡面(成形品の表面)に滴下させた水滴を側方から観察してその角度を計測することで行われる。
【0018】
浴槽1は、槽部2と、該槽部2の上縁に亘って一体に形成され外方に突出するフランジ部3で構成される。浴槽1はその洗い場側がフランジ部3の下方に配設された図示しないエプロンによって覆われた状態で浴室に設置される。つまり、本例では、浴槽表面が、浴室設置状態において使用者によって視認される槽部2の内面及びフランジ部3の上面で構成され、浴槽裏面5が浴室設置状態において使用者によって視認されない槽部2の外面及びフランジ部3の下面で構成される。
【0019】
浴槽表面は従来と同様に平滑な面で構成され、これにより浴槽1を表面側から見たときの浴槽1の透明性を維持することができて浴槽1を深みのある色調とすることができる。
【0020】
他方、図1の斜線部分で示した浴槽裏面5には全体に亘って微小凹凸が形成され、これによって浴槽裏面5は十点平均粗さRzが20乃至60μmとなっている。
【0021】
このように浴槽表面及び浴槽裏面5のうち浴槽裏面5にのみ前記微小凹凸を形成することにより、平滑な浴槽表面から進入した光が前記浴槽裏面5に形成された微小凹凸によって乱反射される。このため、浴槽1を表面側から見た場合には、浴槽1の裏面側が透けて見え難くなり、浴槽裏面5に塗布される白色系等の隠蔽塗料の塗布量を軽減することができる、もしくは該隠蔽塗料の塗布作業を省略することができる。
【0022】
また、浴槽裏面5にあっては、例えば図3に示すように、フランジ部3の下面や槽部2の外面にエプロンを係止するための係止部材12や補強のためのリブ13等の別部材を接着剤で取り付けられるのだが、ここで、前記微小凹凸を形成すると、接着剤のアンカー効果が高まり、また、浴槽裏面5の親水性が高まって接着剤がなじみやすくなり、これにより、成形材料にフッ素やシリコンといった撥水性や撥油性を向上させる成分を混入する等して、浴槽表面の平滑性を高めた浴槽1においても、前記別部材を強固に接着することができる。なお、前記係止部材12やリブ13は例えば発泡ポリスチレン等からなり、これを取り付ける接着剤としては株式会社アルテコ製のアルテコEZ−300からなる瞬間接着剤等が用いられる。
【0023】
上記浴槽1は注入成形装置により成形されるものであり、図2にその成形型7を示す。
【0024】
成形型7は、浴槽表面を成形する表面側成形型8と、浴槽裏面5を成形する裏面側成形型7とで構成され、表面側成形型8が下型となり、裏面側成形型9が上型となる。
【0025】
表面側成形型8とこれに対向してセットされた裏面側成形型9の間にはキャビティが形成され、該キャビティに成形材料を注入し硬化させることで成形品としての浴槽1を得ることができる。
【0026】
表面側成形型8の成形面は平滑な面で構成されている。これに対して裏面側成形型9の浴槽裏面5を成形する成形面(図2中に斜線で示した部分)には該成形面を前記浴槽裏面5と同等の粗さとする微小な凹凸が形成されている。
【0027】
成形型7を用いて浴槽1を成形するとき、表面側成形型8の平滑な成形面によって微小凹凸のない平滑な浴槽表面が成形されると共に、裏面側成形型9の成形面に形成された微小な凹凸によって浴槽裏面5に十点平均粗さRzが20乃至60μmとなる微小凹凸が成形される。
【0028】
このように本例にあっては、浴槽裏面5の微小凹凸を浴槽成形時において簡単に形成することができる。すなわち、浴槽裏面5に凹凸を形成する方法としては、例えば成形後の浴槽裏面5にサンディング処理や脱脂処理を行うことが考えられるが、本例ではこのような後処理を行うことなく接着強度を高めることができ、低コストで浴槽1を製造することができる。
【0029】
なお、本例では、前記微小凹凸を浴槽裏面5の全体に亘って形成したが、該微小凹凸は浴槽裏面5に部分的に形成してこの部分の十点平均粗さRzを20乃至60μmとしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 浴槽
5 浴槽裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人造大理石製の浴槽において、浴槽裏面に十点平均粗さRzを20乃至60μmとする微小凹凸が形成されることを特徴とする人造大理石浴槽。
【請求項2】
前記浴槽が鏡面における水の接触角が75度以上の材料からなることを特徴とする請求項1に記載の人造大理石浴槽。
【請求項3】
浴槽表面を成形する表面側成形型と浴槽裏面を成形する裏面側成形型の間に成形材料を注入して硬化させて人造大理石浴槽を製造する人造大理石浴槽の製造方法において、前記裏面側成形型の成形面に形成された微小な凹凸によって、浴槽裏面に十点平均粗さRzを20乃至60μmとする微小凹凸を成形することを特徴とする人造大理石浴槽の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−194063(P2010−194063A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41521(P2009−41521)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】