説明

人間工学に基づいたワイパディスペンスシステム

本発明の人間工学に基づくワイパディスペンスシステムは、ワイパ材料のロールを収容するように構成された容器部と、前記容器部に取り付けられた、人間工学に基づいて設計されたディスペンス部とを含む。前記人間工学に基づいて設計されたディスペンス部は、ユーザの注意を引き付ける視覚的キューと、ユーザが把持及び保持するのを助けるための把持手段を含む。前記人間工学に基づいて設計されたディスペンス部は、ワイパ材料のロールから個々のワイパをディスペンスするためにユニークにデザインされたディスペンスポートをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパのディスペンスシステムに関し、より詳しくは、人間工学的に使いやすく、運搬が容易なワイパディスペンスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この分野において存在する問題の1つは、ワイパ容器がほとんど進歩していないことであり、スナップトップ式またはねじ式の蓋、取出し口及び概ね円筒形の形状を有するという初期型のワイパ容器が現在でも標準的である。一般消費者向けの市場では、全体サイズの小型化、取っ手の設置及び/または容器全体を砂時計状にすることによって保持を容易にした容器も存在する。しかし、プロ消費者向けの市場では、この程度の進歩すらしていない。これは一つには、プロ消費者に販売される製品ではより多数のワイパを収容する必要があるため、それにより容器サイズが大型化するためである。このような大きな容器は扱いにくく、ある場所から他の場所へ搬送する際及び/またワイパを取り出す際に掴みにくいかまたは持ちにくかった。
【0003】
ワイパのディスペンスに関連して存在する他の問題は、中心から引き出されるロール状ワイパに関するもので、取り出しの始めと終わりに起こる問題である。取り出しの始めと終わりの両方で、取出し口において2以上のワイパが集合するかまたはバンチングする(一団になる)。従来の容器では、下記の2つのうちのいずれかが生じる。(1)ワイパのバンチングに起因して開口が詰まってどうしようもなくなってしまい、ユーザは容器からキャップを取り外し、取出し口を通じてワイパを再フィードする必要がある。(2)取出し口が、複数のワイパのバンチングに対応することができるように十分に大きく設計されており、バンチングしたワイパの通過を可能にするために局所的に撓むことができる。前者についての問題は、容器を再び開けてワイパを再フィードするために時間を割く必要があるので、ユーザの側にフラストレーションが溜まることである。さらに悪いことには、詰まりに対してのフラストレーションが大きくなりすぎると、ユーザは容器ごと捨ててしまう可能性もある。後者についての問題は、バンチングしたワイパを通過させることができるように取出し口のサイズが大き目にされており、バンチングが生じない条件下においても複数のワイパを通過させてしまうので、単一シートのディスペンスには明らかに最適化されていないことである。これらの事情は両方とも、特に、忙しい環境においてユーザが操作する場合は、ユーザにとっては非常に望ましくない。
【0004】
この分野に特に関心を寄せているのは、病院、医療、診療または同様の非常に忙しくて時間のロスが容認されない忙しい環境で働くプロの作業者である。例えば、看護師は、ワイパを湿った状態で、すぐに使用することができるように保つ使い易い容器を必要としているが、そのようなものは現在のところ存在していない。彼らまたは同様の状況におかれている他の者は、非常に忙しいので、複雑で、大きくて扱いにくく、かつ使いにくい現行のワイパ容器を使用する時間的余裕がない。女性看護師の平均的な手のサイズは、現行の大型ワイパ容器を扱うのには容易に適合しない。大抵の場合、女性看護師または同様の状況におかれている他の者は、容器からワイパを取り出すのに両手を使用するために、作業を中断しなければならない。
【0005】
したがって、現行の容器の背景にある思想は全て基本的に同じであり、同じ性能面での短所を有している。ユーザは、ワイパの装填及びディスペンスが困難であると思っている。要するに、ユーザは、既存の大型の扱いにくい容器をもう使いたくないという不満を抱いている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態では、個々のワイパをディスペンスするための複数のミシン目線を有するワイパ材料のロールを収容するように構成された容器を含む、人間工学に基づいたワイパディスペンスシステムが提供される。本発明の容器は、ワイパ材料のロールを収容するように構成された容器部と、前記容器部に取り付けられた人間工学に基づいて設計されたディスペンス部とを含む。前記ディスペンス部は、該ディスペンス部の残りの部分の幅よりも小さい幅を有する中間部分を含む。
【0007】
添付図面と併せてなされる本発明の以下の説明を参照することによって、本発明の上述の及び他の特徴並びにこれらを達成する態様が一層明らかとなると共に、本発明そのものが一層理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態の斜視図である。
【図2】図1の実施形態における、蓋を開けた状態を示す。
【図3】図1の実施形態における、蓋を開けて、そこからワイパをディスペンスするときの様子を示す。
【図4】図1の実施形態における、ユーザの手がシリンダーグリップによって容器を把持している様子を示す。
【図5】図4と同様の図であり、ユーザの手がボールグリップによって容器を把持している様子を示す。
【図6】ディスペンス部の内部壁の上方正面図である。
【図7】図1の実施形態のディスペンス部の内部壁の上方正面図である。
【図8】図1の実施形態の断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前述した現行のワイパ容器の問題及び欠点に対応するために、本発明は、人間工学に基づいてユニークな形状に形成されたという有利な点を有するディスペンス部を含むワイパディスペンスシステムを提供する。このワイパディスペンスシステムは、容器を搬送するためにユーザがディスペンス部を一方の手だけで把持することを可能にするか、あるいは他方の手でワイパを取り出すことを可能にする。このことにより、忙しくてハードな仕事環境において仕事の流れを遅延させることとなる両手の使用の必要性が排除されることは明らかである。
【0010】
本発明の他の利点は、ワイパロールの取り出しの始めと終わりにワイパがバンチングする(一団となる)という現行のワイパ容器製品に伴う問題を改善することができる、新規なディスペンスポートを提供することである。さらに、本発明のディスペンスポートは、単一のワイパのディスペンス性の向上を提供する。
【0011】
図1ないし図3及び、図8を参照して、本発明の人間工学に基づいたワイパディスペンスシステムは、収容部12とディスペンス部14とを含む容器10を備える。ディスペンス部14は、上側部分16と、中間部分18と、蓋20とを有する。収容部12は、ロール状ワイパを個々のワイパに切り離すための複数のミシン目24(図8)を有するワイパ材料のロール22(図8)を収容する。ミシン目24は、ロール状ワイパの長手方向両端間に所定間隔で延在している。容器10は、好ましくは合成樹脂から製造され、所望の寸法にブロー成形または真空成形することができる。望ましい合成樹脂は、高密度のポリエチレンまたはポリプロピレンである。ワイパ材料22は、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはそれらの任意の所望の混合物などの不織合成材料、あるいは、不織布、紙またはガーゼなどの繊維性材料から製造され得る。所望に応じて、ワイパ材料22(個々のワイパ26)に、化粧液、洗浄液、消毒液、殺胞子溶液または特定目的に用いられる同様のものなどの液体を飽和させるかまたは含浸させることができる。
【0012】
本発明に特有なのは、ディスペンス部14が概ね砂時計状であり、ディスペンス部14の中間部分18の直径が、ディスペンス部14の残り部分の直径よりも小さいことである。なお、ディスペンス部14に関しての「直径」という用語は、環状体または円筒体の直径だけでなく、非環状体または非円筒体の最小測定寸法(すなわち、この最小測定寸法は幅であり得る)も含むことに留意されたい。このことは、2つの点においてユニークである。1つは、大抵の現行の容器は、その全体が砂時計状の形状を有するが、本発明では、ユーザが容器10を片手で把持及び保持することができるように、ディスペンス部の中間部分の直径が小さくされている。このことは、容器の把持及び使用を両手ではなく片手で行うことが好ましいまたは必須である環境においては、特に有利である。ディスペンス部14は砂時計状であるため、ディスペンス部の上側部分16には、蓋20が取り付けられるショルダー部28が形成される。ショルダー部28は、他の目的として、容器10を使用するために把持及び保持する際に、ユーザの手を支持する役割を果たす(図4及び図5)。繰り返すが、このことは、忙しくてハードな作業環境において、容器からワイパ26をディスペンスするのに非常に役立つ。
【0013】
本発明の別のユニークな点は、容器10が、ディスペンス部14の全体または一部に視覚的キュー(視覚的手がかり)30を有することである。この視覚的キューは、容器10を把持するべき位置についての情報をユーザに対して視覚的にまたは直接的に知らせ、それにより、ユーザ側の躊躇を取り除く。視覚的キュー30は、任意の視覚的に認識可能な色、デザイン、マークなどであり得る。色を用いる場合は、収容部12の色に対して視覚的にはっきりと識別できるようにするべきである。例えば、容器部12の色が白色である場合、ディスペンス部14の色は青色であり得、そのようにすることにより、より目立つ青色の方にユーザの視覚を引き付けることができる。また、視覚キュー30は、例えば、市松模様(チェッカーボードデザイン)、平行線模様(クロスハッチデザイン)、芸術的デザインなどのデザインであり得る。繰り返すが、デザインは、ユーザの注意をディスペンス部14に即座に引き付けるためのものである。また、マークも視覚キュー30として使用することができ、そのようなものとしては、例えば、企業のロゴ、作業チームの名称、またはユーザの注意をディスペンス部12に引き付けるための同様のものなどがある。
【0014】
本発明のさらに別のユニークな点は、ユーザが容器10をしっかりと把持または保持するのを維持するのを助けるためにディスペンス部14の全体または一部に設けられた把持手段32である。把持手段32は、ディスペンス部14に適用されたテクスチャ(texture)であり得、例えば、粗い面、エンボス加工された面、または粘着性のある面などであり得る。本発明は、容器10に対してのユーザの把持性または保持性を向上させることができる他の処理も想定している。
【0015】
したがって、この点について説明したように、本発明は、個々のワイパ26をディスペンスするための、容器10の容易で素早い使用を提供する。図4及び図5を参照してこの点について詳しく説明すると、ユーザの手は、ボールグリップ(図5)またはシリンダフリップ(図4)の2通りの方法で容器10を把持することができる。ボールグリップは、把持対象の大部分を手で包み込むようにして把持する方法である。ボールグリップの一例は、ドアノブを掴む場合である。シリンダグリップは、把持対象に手を沿わせて、把持対象の半分またはそれ以下の部分を把持する方法である。シリンダグリップの一例は、炭酸飲料の缶またはコーヒーカップを掴む場合である。一般的に、女性の手は、約7.62cm(約3.0インチ)ないし約9.14cm(約3.6インチ)の範囲のグリップ幅を有する。グリップ幅は、4本の指を互いにくっつけたときの幅であり、小指の付け根から人差し指の先端までを計測した値である。女性の手は、約9.65cm(約3.8インチ)ないし約12.19cm(約4.8インチ)のグリップ長さを有する。グリップ長さは、中指の先端から手首の付け根までを測定した長さである。男性の手は、一般的に、約8.64cm(約3.4インチ)ないし約10.41cm(約4.1インチ)の範囲のグリップ幅と、約9.65cm(約3.8インチ)ないし約14.22cm(約5.6インチ)の範囲のグリップ長さを有する。望ましくは、本発明の容器10の中間部分18は、約12.19cm(約4.8インチ)またはそれ以下の直径を有する。
【0016】
上述したように、本発明の人間工学に基づいたワイパディスペンスシステムは、ユーザが視覚的に区別することができる、滑らかな起伏を有するユニークで独特な形状を持つディスペンス部14を提供する。ユーザイントラクション全体を向上させるために、視覚的キュー30及び把持手段32と共に、滑らかな起伏上への手の配置に関してのディスペンス部14の革新的な形状に細心の注意が払われてきた。本発明の人間工学性、持ち運び性、実用性及び使い易さの全ては、前述したような現行のワイパ容器の問題点を改善する。
【0017】
ここで図6ないし図8を参照して、本発明のディスペンスポート34はディスペンス部14の内部壁36に設けられており、内部壁36に3つの可撓性フラップ46を形成する3つのチャンネル40(図6)を有する概ね円形の開口38を含む。本発明の別の態様では、ディスペンスポート34は、内部壁36に4つの可撓性フラップ46を形成する4つのチャンネル40(図7)を含む。説明を簡単にするために、ディスペンスポート34についての以下の説明は、4つのチャンネル40を有するものについて行うことにするが、3つのチャンネル40を有するものも同様に使用することができることを理解されたい。図7に示すように、チャンネル40は開口38と連続しており、かつ開口38から半径方向外側へ向かって延在している。ディスペンスポート34は一対のスロット42をさらに含む。スロット42は、開口38と連通しており、かつ開口38から外側へ向かってチャンネル40を越えて延在している。スロット42の幅はチャンネル40の幅よりも狭く、各スロット42は終端部にはアパーチャ44が形成されている。図7に示すように、各アパーチャ44は、概ねT字状であることが望ましい。スロット42及びアパーチャ44は互い協同して、内部壁36内に一対の可撓性パネル48を形成する。
【0018】
ディスペンスポート34の好ましい寸法は次の通りである。(1)開口38は、約9.27mm(約0.365インチ)の直径を有する。(2)各チャンネル40は、約1.78mm(約0.070インチ)の幅と、開口38の中心から測定して約7.26mm(約0.286インチ)の長さを有する。(3)各スロット42は、約0.127mm(約0.005インチ)の幅と、開口38の中心から測定して約3.43mm(約0.135インチ)の長さを有する。(4)各アパーチャ44におけるT字を形成する水平部分及び垂直部分の幅は、約1.78mm(約0.70インチ)である。(5)各アパーチャ44の水平部分(図7参照)の長さは、約8.56mm(約0.337インチ)である。(6)各アパーチャ44の垂直部分(図7参照)の長さは、約2.01cm(約0.793インチ)である。
【0019】
ここで図8を参照すると、ディスペンスされるワイパ26が開口38を通過したときに、ミシン目24の切り離しがちょうど開始された状態が図示されている。このとき、開口38のフラップ46は、弛緩時の概ね平らなまたは平面的な状態から上側に向かって撓んでいる。開口38にはカウンタボア50が形成されており、それによって、各可撓性フラップ46は、開口38の中心に向かって内向きにテーパー付けされたテーパー面52を有することとなる。ワイパ26のディスペンス時にフラップ46が上向きに撓むことができるようにすると共に、後続のワイパを挟持または保持して開口38から容器部12内へ落下して戻るのを防止するために、テーパー面52は所望の可撓性をフラップ46に提供する。フラップ46は、ミシン目24を切り離すのに十分な力を発揮するように設計される。この場合、各ミシン目24を切り離すためのピーク負荷は、約1100g重ないし約1461g重の範囲である。当然ながら、本発明は、他のタイプのワイパ材料についてのミシン目の性質に応じて、他の力の範囲も想定している。
【0020】
ワイパ26のディスペンスについては、ミシン目24を切り離すことができるように、開口38から引き出すときにワイパ26に対して均等な力が加わるようにするためには、概ね円形の開口38が最適である。しかし、開口26を概ね円形にするだけでは、ディスペンスされているワイパ26のすぐ後ろの後続ワイパ26は、開口38を通じて容器部12内に落下して戻ってしまう。本発明では、このことに対して、ディスペンス中に上側に撓むチャンネル40を設けることにより対処する。ミシン目26でワイパ26が分離した後、フラップ46は撓んで元の平らなまたは平面的な状態に戻り、後続のワイパ26を「挟む」または保持することによって、後続ワイパが容器部12内に落下することを防ぐ。
【0021】
いくつかの現行の製品に関して前述したように、ワイパ材料のロール22のディスペンスの開始時及び終了時には、2つまたはそれ以上のワイパ26が互いに集まってバンチングする(一団になる)傾向にある。本発明では、ワイパ同士がバンチングすることに対して、スロット42及びT字状のアパーチャ44を設けることによって対処している。通常のディスペンス条件下では、単一のワイパ26の最適なディスペンスは、開口38及びフラップ46によって保たれる。フラップ46の可撓性を不要に増大させることがないように、かつワイパ26がスロット42に進入するのを防ぐために、スロット42の幅は十分に細い幅にされる。ディスペンスの開始時または終了時に、バンチングしたワイパ26によって詰まり(jam)や膨らみ(bulge)が生じた場合、バンチングしたワイパを通過させるために、スロット42及びT字状アパーチャ44によって形成されたパネル48が上向きに撓む。その後、パネル48は、後続の個々のワイパ26のディスペンスの最適化を図るために、元の概ね平らなまたは平面的な状態に戻る。
【0022】
このように、ワイパ材料のロール22からの単一のワイパ26のディスペンスを最適化するためには、ディスペンスポート34のデザインが重要である。チャンネル40、スロット42及びアパーチャ44によりもたらされるこの機能は、開口38の可撓性をユニークにかつタイムリーに向上させる。これらの機能の機能性は、次の通りである。ワイパの断面流れが均一な流れからワイパがバンチングしたときの流れに変化すると、開口38にかかる力すなわち圧力が増加する。この増加した力すなわち圧力がパネル48に伝達されることによりパネルを上向きに撓ませ、このことによって、バンチングしたワイパがディスペンスポート34を通過することを可能にする。その後、力すなわち圧力が減少すると、パネル48は元の平らなまたは平面的な状態に戻り、フラップ46によって後続のワイパ26を挟持する。
【0023】
本発明により提供される可撓性の、従来のデザインに対する向上の程度を判定するために、平坦なプレートの数値解析を行った。本発明については次の通りである。
【0024】
【数1】

【0025】
ディスペンス面は平坦なプレートとして扱う;プレートの3つの辺は全て単純に支持されており(エンド条件が横方向移動を阻止するが、回転及び縦方向移動は可能である)、文字「S」で表す。開口側と平行であるプレート後側は固定されており(エンド条件が回転及び横方向移動を阻止するが、縦方向移動は可能である)、断面ハッチングで表す。プレート上に均一な圧力が分布していると仮定すれば、最大偏位は次のように定義される。
max y=−αqb/Et
ただし、α=0.030(a/b=1の場合)
q=圧力
b=1.60in(図1より)
E=弾性係数(ポリプロピレンについて50,000psi)
t=プレート厚さ(図1から0.060インチ)
上記の方程式に代入すると、固定された端部に対して平行な辺において、max y=0.0186qの最大偏位が生じる。
【0026】
従来のデザインについては、次の通りである。
【0027】
【数2】

【0028】
この場合、ディスペンス面の全ての辺がプレートの中心の開口に固定されていると見なされる。この場合も、プレート上に均一な圧力が分布していると仮定すれば、最大偏位は次の通りである。
max y=−αqb/Et
ただし、α=0.013(a/b=1の場合)
q=圧力
b=1.60in(図1より)
E=弾性係数(ポリプロピレンについて50,000psi)
t=プレート厚さ(図1から0.060インチ)
【0029】
上記の方程式に代入すると、プレートの中央において(オリフィスにおいて)、max y=0.0084qの最大偏位が生じる。
【0030】
最大yに関して、本発明のディスペンスポート34と従来のデザインとを比較すると、同じ圧力の場合、ディスペンスポート34の撓みまたは偏位は、従来のデザインよりも55%大きいことが分かる。したがって、本発明の方が可撓性が高いことが証明された。
【0031】
本発明により提供されるワイパ26のディスペンスの向上の一例を下記に示す。この例では、ミシン目24(図8)は、約1100g重ないし約1461g重の範囲の分離ピーク負荷を有する。分離ピーク力は、特定タイプのミシン目を裂くためにミシン目線に垂直に加えられた力を計算することにより求めた。このように特定のワイパの特定のミシン目についての分離ピーク力の範囲を求めることにより、ワイパの最適なディスペンスを提供するための、開口38及びチャンネル40のサイズを決定することができる。
【0032】
下記の表1では、開口は9.27mm(0.365インチ)の直径を有し、チャンネル40は1.78mm(0.070インチ)の幅と、開口の中心から測定して7.26mm(0.286インチ)の長さを有し、ワイパの分離ピーク力の範囲は、約1100g重ないし約1461g重であった。5つの試料のそれぞれについて、折り畳まれた幅とピーク負荷(ピーク力)を記録し、平均、標準偏差、最小及び最大ピーク負荷または力で表した。開口38のこの直径及びミシン目24のこのピーク力範囲によって、ワイパ26がディスペンス及び分離されると共に、チャンネル40によって後続のワイパ26を挟むことができる。
【0033】
【表1】

【0034】
下記の表2及び表3は、9.27mm(0.365インチ)の直径を有する開口からワイパをディスペンスしたときに生じる不良の種類及び数を示す。ロールの中心線に対して45度の角度で引っ張った場合を表2に示し、真っ直ぐ上に垂直に引っ張った場合、すなわち、ロールの中心線に対して平行に引っ張った場合を表3に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
不良は次のことを意味する。
(1)「バンチング(Bunching)」は、開口38を通じて2以上のワイパが引き出されることを意味する。
(2)「タブ(Tab)」は、チャド(chad)、すなわち、小さな破れた部分を意味する。
(3)「過剰テール(Excessive Tail)」は、後続のワイパにおける開口38を超えて露出する部分が大きすぎることを意味する。
(4)「ロストワイパ(Lost Wiper)」は、後続するワイパが存在しないことを意味する。
(5)「ホール(Hole)」は、ワイパに孔が存在することを意味する。
(6)「ミシン目裂け(Perf Tear)」は、ミシン目からワイパが裂けたことを意味する。
(7)「ローピング(Roping)」は、ワイパが2つ以上互いに連続していることを意味する。
(8)「ショートテール(Short Tail)」は、後続のワイパにおける開口38から引き出された部分の長さが6.35mm(4分の1インチ)未満であることを意味する。
(9)「破れ(Tear)」は、ワイパが裂けたことを意味する。
表から分かるように、ディスペンス角度が45度の場合の不良率は7.50%であり、真っ直ぐ引き出した場合の不良率は3.30%であった。
【0038】
表1と比較して、表4のデータは、表1の場合と同じ9.27mm(0.365インチ)の直径を有する開口38における分離ピーク力が3430g重ないし4015g重の範囲の場合のものである。表4、表5及び表6のデータは、開口38及びチャンネル40の設計は分離ピーク力を考慮して行う必要があることを示す。分離ピーク力を考慮して設計を行わなければ、非常に多数の不良が生じることとなる。
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
表から分かるように、ディスペンス角度が45度の場合の不良率は25.50%であり、真っ直ぐ引き出した場合の不良率は33.70%であった。
【0043】
ワイパをディスペンスするときの不良率を大幅に減少させたことは、本発明の別のユニークな点である。さらに、いくつかの現行の製品では、ワイパを製品の中心線に対して平行な方向に引き出す必要があるが、ユーザが手を伸ばしてディスペンスする通常の動作においては、いつでもそうできるとは限らない。本発明では、ディスペンスポートからワイパを、容器の中心線に対して様々な角度で引き出すことができるので、この問題を解決することができる。言い換えれば、ワイパは、容器からその中心線に対して平行にまたは或る角度で直接的に引き出すことができ、このことにより、容器の利用性を高めることができる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、様々な改変が可能であることを理解されたい。したがって、本発明の一般的な原理に従う本発明の任意の変形、均等物、使用及び改変を包含すること、及び、本発明が関係する技術分野内で公知のまたは慣行内とされる、かつ添付された特許請求の範囲の規定に含まれ得る、このような本開示からの逸脱を含むことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパ材料のロールから個々のワイパを切り離すための複数のミシン目線を有するロール状ワイパを収容するように構成した、人間工学に基づいて設計された容器であって、
容器部と、
前記容器部に取り付けられた、人間工学に基づいて設計されたディスペンス部とを含み、
前記人間工学に基づいて設計されたディスペンス部の中間部分が、前記ディスペンス部の残りの部分の直径よりも小さい直径を有することを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器であって、
前記ディスペンス部が視覚的キューをさらに含むことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項2に記載の容器であって、
前記視覚的キューが前記容器部の色とは異なる色であることを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項2に記載の容器であって、
前記視覚的キューがデザインであることを特徴とする容器。
【請求項5】
請求項1に記載の容器であって、
前記ディスペンス部の把持性を高めるために、前記ディスペンス部に把持手段を設けたことを特徴とする容器。
【請求項6】
請求項5に記載の容器であって、
前記把持手段が、テクスチャ(texture)であることを特徴とする容器。
【請求項7】
請求項5に記載の容器であって、
前記把持手段が、エンボス加工面であることを特徴とする容器。
【請求項8】
請求項5に記載の容器であって、
前記把持手段が、粘着性面であることを特徴とする容器。
【請求項9】
請求項5に記載の容器であって、
前記把持手段が、前記ディスペンス部の頂部領域に設けられ、前記ディスペンス部の残りの部分から外側に向かって延出するショルダー部を含むことを特徴とする容器。
【請求項10】
請求項1に記載の容器であって、
前記中間部分の直径が、約12.19cm(約4.8インチ)以下であることを特徴とする容器。
【請求項11】
請求項1に記載の容器であって、
前記ディスペンス部が、個々のワイパをディスペンスするように構成されたポートを有する内側壁を含み、
前記ポートが、
開口と、
前記開口に対して連通され、かつ前記開口から外側に向かって延在する複数のチャンネルと、
前記複数のチャンネルによって前記内部壁にそれぞれ形成された複数の可撓性フラップとを含むことを特徴とする容器。
【請求項12】
請求項11に記載の容器であって、
前記内部壁が、
前記開口に対して連通され、かつ前記開口から外側に向かって前記複数のチャンネルを越えて延在する、前記各チャンネルの幅よりも狭い幅を有する少なくとも2つのスロットと、
前記各スロットの終端部にそれぞれ形成されたアパーチャと、
前記少なくとも2つのスロットによって前記内部壁にそれぞれ形成された少なくとも2つの可撓性パネルとを含むことを特徴とする容器。
【請求項13】
請求項11に記載の容器であって、
前記複数のチャンネルが4つのチャンネルであることを特徴とする容器。
【請求項14】
請求項12に記載の容器であって、
前記開口が概ね円形であり、前記各アパーチャが概ねT字状であることを特徴とする容器。
【請求項15】
ワイパ材料のロールから個々のワイパをディスペンスするように構成された容器であって、
前記ワイパ材料のロールを収容するように構成された容器部と、
前記容器部に取り付けられた、かつ前記ワイパをディスペンスするように構成されたポートを有する内部壁を備えたディスペンス部と、
前記ディスペンス部に設けられた、前記ディスペンス部を把持する位置をユーザに示すように構成された視覚的キューと、
前記ディスペンス部に設けられた、把持性を高めるための把持手段とを含み、
前記内部壁が、
開口と、
前記開口に対して連通し、かつ前記開口から外側へ向かって延在する複数のチャンネルと、
前記複数のチャンネルによって前記内部壁にそれぞれ形成された複数の可撓性フラップとを含むことを特徴とする容器。
【請求項16】
請求項15に記載の容器であって、
前記内部壁が、
前記開口に対して連通され、かつ前記開口から外側に向かって前記複数のチャンネルを越えて延在する、前記各チャンネルの幅よりも狭い幅を有する少なくとも2つのスロットと、
前記各スロットの終端部にそれぞれ形成されたアパーチャと、
前記2つのスロットによって前記内部壁にそれぞれ形成された2つの可撓性パネルとを含むことを特徴とする容器。
【請求項17】
請求項15に記載の容器であって、
前記視覚的キューが、色及びデザインのうちの1つであることを特徴とする容器。
【請求項18】
請求項15に記載の容器であって、
前記把持手段が、テクスチャ(texture)、エンボス面及び粘着性面のうちの1つであることを特徴とする容器。
【請求項19】
請求項15に記載の容器であって、
前記ディスペンス部が、前記ディスペンス部の残りの部分の直径よりも小さい直径を有する中間部分を含むことを特徴とする容器。
【請求項20】
請求項19に記載の容器であって、
前記中間部分が、約12.19cm(約4.8インチ)以下の直径を有することを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−510410(P2012−510410A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538076(P2011−538076)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051558
【国際公開番号】WO2010/064151
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(309038085)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】