説明

人間工学的グリップを有する非破壊検査装置とそれに関連する方法

【課題】ワークピースの検査を支援するための、非破壊検査装置、システム、及び関連方法が提供される。
【解決手段】この非破壊検査装置は、ワークピースと動作可能に接触するように配置される超音波センサを含む。この超音波センサは、ワークピース中へと超音波信号を発信し、ワークピースから帰還信号を受信する。非破壊検査装置は、超音波センサに動作可能に結合して超音波センサと協働可能なグリップも含む。グリップは、オペレータによって超音波検査装置に印加される力がグリップを介して超音波センサに伝わるように、オペレータの手のひら(例えば、オペレータの手のひらの大部分)を支持する。非破壊検査システムは、非破壊検査装置と通信して、超音波センサが受信した帰還信号に関する情報を受信するコンピュータも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の例示的な一実施形態は、概して非破壊検査装置とそれに関連する方法に関し、具体的には人間工学的グリップを有する非破壊検査装置とそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なワークピースに対し、その様々な特徴を決定するために非破壊検査が行われる。例えば、翼、胴体セクションなどの様々な構造用パネルは非破壊検査を受ける。非破壊検査装置は、通常、ワークビース中へと信号を発信し、発信した信号に応答する帰還信号を受信するセンサを含む。非破壊検査装置のセンサは、例えば、超音波信号の発信及び受信を行う超音波センサである。
【0003】
使用時には、センサはワークピースの上に配置される。次いで、センサが作動されると、センサはワークピース中に信号を発信し、センサが発信した信号に応答する帰還信号を受信する。帰還信号を解析することにより、例えばワークピースの厚みのようなワークピースの様々な特徴、及び/又はワークピースの調べられている部分内に存在しうる異常が決定される。ワークピース上でセンサを移動させて、ワークピースの複数の部分の各々を調べることにより、非破壊検査装置はワークピースの殆ど全域を効率的に検査することができる。
【0004】
幾つかの非破壊検査装置は、ワークピースの上に手動で配置された後、ワークピースの殆ど全域を調べるために、ワークピース上で手動により再配置されるセンサを含む。すなわち、オペレータは、通常、センサを把持し、ワークピース上の任意の数の位置にセンサを繰り返し再配置しなければならない。また、センサとワークピースとを効率的に連結させるため、具体的には、センサによって発信された信号と、ワークピースから受信される帰還信号とを効率的に連結させるために、オペレータは、ワークピースの表面に対してセンサを押し付けようとして力を入れる。その結果、センサの配置と移動は、一般に、オペレータの力を必要とする。オペレータが払うべき努力は、一般に、センサが小型である程大い。例えば、図1に示すように、超音波センサ10は、一般に非常に小さく、例えばオペレータの指より小さい。このために、オペレータは、センサの把持を多少困難に感じる場合があり、具体的には、センサを把持するだけでなく、センサをその下に位置するワークピースと接触させるために必要な力を加えることが難しいと感じる。
【0005】
センサの把持と、必要な力をワークピースに印加することとに関してオペレータが直面する困難性は、時として、オペレータがワークピース上にセンサを配置してその上で移動させるときに生じる反復運動により増大する。加えて、ワークピースが比較的大きい場合があり、オペレータはセンサを適切に配置してワークピースの少なくとも一の部分を調べるために、ワークピースの対応する部分に到達する必要があるので、検査デバイスを操作する間に、オペレータはやや不愉快な一時停止を余儀なくされる。
【発明の概要】
【0006】
ワークピースの非破壊検査を容易にするために、例示的ない一実施形態により非破壊検査装置、システム、及び関連方法が提供される。これに関して、一実施形態の非破壊検査システムとそれに関連する方法は、例えば、比較的小さいセンサを把持する必要、及びセンサとその下のワークピースとの動作可能な接触を確実にするためにセンサに力を加える必要を低減又は排除することにより、オペレータが、もっと人間工学的に非破壊検査装置と相互作用することを可能にする。このように、非破壊検査装置とそれに関連する方法は、オペレータが、ワークピースの上にセンサを繰り返し配置すること、及び以前より小さい力で、ワークピース上でセンサを移動させることを可能にする。
【0007】
本発明の一態様によれば、ワークピースと動作可能に接触するように配置される超音波センサを含む非破壊検査装置が提供される。超音波センサは、ワークピース中へと超音波信号を発信し、そのようにして発信された超音波信号に応答する帰還信号を受信する。非破壊検査装置は、超音波センサに動作可能に結合して、超音波センサと同時に移動可能なグリップも含む。グリップは、オペレータによって超音波検査装置に印加される力がグリップを介して超音波センサに伝わるように、オペレータの手のひら(例えば、オペレータの手のひらの大部分)を支持する。
【0008】
有利には、非破壊検査装置は、それぞれ異なる複数のオペレータの手のひらに適合する複数のグリップを含む。これに関して、複数のグリップは、超音波センサに交換可能に結合させることができる。有利には、グリップは、オペレータの手のひらに適合するゲルパッドを含む。有利には、非破壊検査装置は、超音波センサとワークピースとの連結を助けるばね荷重源も含む。有利には、装置のグリップは、オペレータが作動させる少なくとも一つの入力要素を含む。有利には、非破壊検査装置は、超音波センサとグリップとに動作可能に結合されて、ワークピースに対して超音波センサを一時的に取り付けるように構成された吸着デバイスも含む。
【0009】
有利には、非破壊検査装置は、検査位置を特定する位置決めシステムと通信する通信インターフェースを含む。好適には、一実施形態の通信インターフェースは、非破壊検査装置の位置を規定する位置決め信号を受信することができる。好適には、通信インターフェースは、検査位置を示すマーカを受信することができる。
【0010】
本発明の更なる態様によれば、非破壊検査装置と、非破壊検査装置と通信するコンピュータとを含む非破壊検査システムが提供される。この非破壊検査装置は、ワークピースと動作可能に接触するように配置される超音波センサを含む。超音波センサは、ワークピース中へと超音波信号を発信し、そのようにして発信された超音波信号に応答する帰還信号を受信する。非破壊検査装置は、超音波センサに動作可能に結合して超音波センサと協働するグリップも含む。グリップは、オペレータの手のひら(例えば、オペレータの手のひら)を支持するように構成される。加えて、グリップは、オペレータが作動させる少なくとも一つの入力要素を含む。コンピュータは、超音波センサによって受信された帰還信号に関する情報を受取るように構成される。
【0011】
有利には、非破壊検査装置は、オペレータが作動させる複数の入力要素を含む。有利には、非破壊検査装置は、異なる複数のオペレータそれぞれの手のひらに適合する複数のグリップをさらに含む。有利には、複数のグリップは、超音波センサに交換可能に結合される。有利には、非破壊検査装置のグリップは、オペレータの手のひらに適合するゲルパッドを含む。有利には、非破壊検査装置は、超音波センサとワークピースとの連結を助けるばね荷重源も含む。有利には、非破壊検査装置は、超音波センサとグリップとに動作可能に結合されて、ワークピースに対して超音波センサを一時的に取り付けるように構成された吸着デバイスも含む。
【0012】
有利には、非破壊検査装置は、検査位置を特定する位置決めシステムと通信する通信インターフェースを含む。好適には、通信インターフェースは、非破壊検査装置の位置を規定する位置決め信号を受信することができる。好適には、通信インターフェースは、検査位置を示すマーカーを受信することができる。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、ワークピースの非破壊検査方法が提供され、この方法は、超音波センサをワークピースに動作可能に接触させることと、超音波センサに動作可能に結合されるグリップによりオペレータの手のひらを支持することとを含む。この方法は、また、超音波センサからワークピース中へと超音波信号を発信することと、そのようにして発信された超音波信号に応答する帰還信号を受信することとを含む。この方法は、また、オペレータによってグリップに印加されて、グリップから超音波センサに伝達される力に応答して、グリップと超音波センサとを同時に移動させることを含む。一実施形態では、帰還信号に関する情報はコンピュータに提供される。
【0014】
有利には、方法は、グリップを、別のオペレータの手のひらに適合する別のグリップに交換することを含む。超音波センサをワークピースに動作可能に接触させることは、超音波センサとワークピースとの連結を助けるように超音波センサにばね荷重をかけることを含む。有利には、グリップが入力要素を含む場合、方法は、入力要素から、オペレータによる入力要素の作動に関する指示を受け取ることも含む。有利には、方法は、超音波信号を発信し、帰還信号を受信する間に、ワークピースに対して超音波センサを一時的に取り付けることも含む。
【0015】
有利には、方法は、検査位置を特定する位置決めシステムと通信することも含む。好適には、位置決めシステムと通信することは、非破壊検査装置の位置を規定する位置決め信号を受信することを含むことができる。好適には、位置決めシステムと通信することは、検査位置を示すマーカーを受信することを含むことができる。
【0016】
上述のフィーチャ、機能および利点は、本発明の様々な実施形態において独立して達成可能であるか、又は他の実施形態において組み合わせることができる。これらの実施形態について、後述の説明及び添付図面を参照してさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
上述では本発明の例示的実施形態を一般的な用語で説明したが、後述では添付図面を参照する。これらの図面は、必ずしも正確な縮尺で描かれていない。
【0018】
【図1】従来の非破壊検査センサの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による非破壊検査システムの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による非破壊検査装置の斜視図である。
【図4】図3の非破壊検査装置の断面図である。
【図5】本発明の別の実施形態による非破壊検査装置の側面図である。
【図6】本発明の別の一実施形態による非破壊検査装置のブロック図である。
【図7】本発明の例示的な一実施形態による、ワークピースの非破壊検査方法により実行される工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
後述では、添付図面を参照して本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。添付図面にはすべての実施形態が示されているわけではない。実際、本開示内容は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に示された実施形態に限定されるものではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示内容が、適用される法的要件を満足させるように提供されている。全体を通して、同様の要素は同様の番号で参照される。
【0020】
ここで図2を参照する。図2は、一実施形態による非破壊検査システム20を示している。図示のように、非破壊検査システム20は非破壊検査装置22を含み、非破壊検査装置22は、ワークピースを調べて、ワークピースの一又は複数の特徴を決定することを化膿にする情報を供給するために、ワークピース24に動作可能に接触するように配置されるセンサを含んでいる。非破壊検査装置22は、ワークピース24の上に手動で配置され、次いで、ワークピースの複数の異なる位置の各々を調べるために、ワークピース上で手動で動かされる。例えば、非破壊検査装置22は、まず、ワークピース24上の所定の位置に手動で配置され、その後、ワークピースの複数の所定の位置の各々を調べるために、ワークピース上を所定のパターンで動かされる。
【0021】
様々な種類のワークピース24に対して非破壊検査が行われる。図2の例示的実施形態については、翼の少なくとも一部が非破壊検査を受ける。しかしながら、任意の数の他の種類のワークピース24が非破壊検査を受けてもよく、それには、航空機又は他のビークルの他のコンポーネント、建造物又は他の構造体の構造用コンポーネントなどが含まれる。加えて、検査されるワークピース24は複合構造でもよい。しかしながら、検査されるワークピース24は、別の構成では他の形状に構成されてもよい。
【0022】
図の非破壊検査装置22はワークピース24と直接接触するように配置されるが、非破壊検査システムは、非破壊検査装置と非破壊検査装置の少なくともセンサとをワークピースの表面から間隔を開けて配置するための、検査対象であるワーク-ピースの少なくとも一部に適用される接触媒体を含むことができる。この接触媒体は、センサとワークピース24との連結を助けるように構成されているので、センサが発信した信号がワークピース24中に伝播し、ワークピースからの帰還信号がセンサに伝播する際の効率が上昇する。様々な種類の接触媒体を利用することができるが、適切な接触媒体の例として、超音波ゲル及び水が挙げられる。
【0023】
非破壊検査装置22に加えて、非破壊検査システム20は、図2に示すようなコンピュータ26を含むことができる。非破壊検査システム20は様々な種類のコンピュータ26を含むことができ、それには、限定されないが、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ及び携帯電話を含む移動式デバイス、パーソナル携帯情報機器(PDA)などが含まれる。コンピュータ26は、非破壊検査装置22と通信している。図の非破壊検査装置22とコンピュータ26とは互いに無線通信しているが、他の実施形態では、非破壊検査装置とコンピュータとは通信回線により通信してもよい。後述するように、コンピュータ26は、非破壊検査装置22から情報を受け取り、その情報を処理、表示、及び/又は格納することによりワークピース24の検査を補助する。
【0024】
ワークピース24を検査することにより、ワークピースの種々の異なる特徴が特定される。これに関して、非破壊検査装置22は、ワークピース24を検査して、ワークピースの厚みを決定することができる。これに関して、非破壊検査装置22が、ワークピース24中に信号を発信し、ワークピースの対向する表面から反射された帰還信号を検出することにより、ワークピース中への信号の発信と帰還信号の受信との間の経過時間に基づいて、ワークピースの厚みが決定される。これに加えて、又は代えて、非破壊検査装置22は、ワークピース中に信号を発信し、ワークピースの調べられている部分内の異常の有無を示す帰還信号を受信することにより、ワークピース24内部の異常を検出することができる。
【0025】
本発明の一実施形態による非破壊検査装置22を、図3の斜視図および図4の断面図に示す。これに関して、非破壊検査装置22は、ワークピース24と動作可能に接触するように配置される、超音波トランスデューサのような超音波センサ28を含むことができる。上述のように、超音波センサ28は、ワークピース24と直接接触するように、又は接触媒体によりワークピースから間隔を空けて配置することができる。本実施形態の超音波センサ28は、ワークピース24中へと超音波信号を発信し、そのようにして発信された超音波信号に応答する帰還信号を受信する。図示の実施形態の超音波センサ28は、超音波信号の発信及び帰還信号の受信の両方を行うトランスデューサとして具現化されているが、他の実施形態では、超音波センサは、ワークピース24中に超音波信号を発信する超音波発信器と、超音波発信器が発信した信号に応答するワークピースからの帰還信号を受信する、別個の又は分離された超音波受信機とによって具現化されてもよい。
【0026】
オペレータが超音波センサ10を直接把持しなければならない図1の非破壊検査装置とは異なり、図示の実施形態の非破壊検査装置22は、超音波センサ28に動作可能に結合されるグリップ30も含む。これに関して、グリップ30は、超音波センサに直接結合させることができる。例えば、図3及び4に示す一実施形態では、超音波センサ28は、ワークピース24と動作可能に接触するグリップの表面32から露出して同表面近傍に位置するように、グリップ30内部に埋め込まれる。例えば、後述するように、この実施形態のグリップ30には空洞が画定されて、この空洞内に検査センサ28が配置されて摩擦により係合する。しかしながら、他の実施形態では、グリップ30は、他の方法で超音波センサ28に結合されてもよく、例えば超音波センサはグリップの外部に位置してもよい。いずれの場合も、グリップ30と超音波センサ28とは、動作可能に結合し、それらは同時に移動可能である。したがって、ワークピース24に対してグリップ30を移動させると、超音波センサ28はそれに対応して移動する。
【0027】
非破壊検査装置22のグリップ30は、オペレータの手のひらを支持し、一実施形態では、オペレータの手のひらの大部分を支持する。したがって、オペレータは、オペレータによって印加された力がグリップを介して超音波センサ28に伝達されるように、オペレータの手とグリップ30とが相互作用することにより、非破壊検査装置22に力を加えることができる。これに関して、オペレータは、非破壊検査装置22を最初に位置決めする間、及びその後ワークピース24に対して非破壊検査装置を移動させる間に、力を印加することができる。加えて、オペレータは、超音波センサを作動させる間、すなわち、超音波信号をワークピース24中に発信し、ワークピースから帰還信号を受信する間に、グリップ30を介して超音波センサ28に力を印加することができる。この場合、オペレータは、ワークピース24に対して力を印加することにより、非破壊検査装置22がワークピースに有効に連結される可能性を増大させることができる。オペレータの手のひらを支持することにより、非破壊検査装置22のグリップは、オペレータが超音波センサ自体を把持しなければならない図1に示す従来の超音波センサ10と比較して、非破壊検査装置と相互作用する際の労力が小さく、それに掛ける負荷が小さくてすむという意味で、さらに人間工学的なものになる。したがって、オペレータは、望ましくないレベルの努力又は疲労をすることなく、繰り返し、及びさらに長時間にわたって、非破壊検査装置22を利用することができる。
【0028】
一実施形態のグリップ30は、オペレータの手のひらに適合する軟かい材料から形成することができる。これに関して、非破壊検査装置22は、各々が対応するオペレータの手のひらに適合するように形成された複数の異なるグリップを含むことができる。この実施形態では、非破壊検査装置22は、複数のグリップ30が交換可能であるように構成される。したがって、使用前に、オペレータは他のオペレータの手のひらに適合するように構成されたグリップ30を選択することができ、且つ超音波センサ28に以前に動作可能に結合されていた別のグリップを、対応するオペレータの手のひらに適合するグリップと交換することができる。この実施形態のグリップ30は、様々な方法で超音波センサ28に取り外し可能に取り付けられる。
【0029】
しかしながら、一実施形態では、グリップ30には、超音波センサ28を摩擦により受けるような大きさの空洞が画定される。この空洞は、グリップ30の、ワークピース24に面することを意図する表面上に開いている。グリップ30を交換するには、超音波センサ28を前のグリップの空洞内から取り外し、対応するオペレータの手のひらに適合する別のグリップの空洞内部に摩擦により係合させる。図示の超音波センサ28は摩擦力によりグリップ30内部に保持されるが、他の実施形態では、超音波センサは他の機構によりグリップに動作可能に結合させてもよい。
【0030】
各々が対応するオペレータの手のひらに適合するように構成された複数のグリップ30を有することに加えて、又は代えて、グリップは、各オペレータの手のひらに適合するゲルパッドを含むことができる。この実施形態では、ゲルパッドは、ゲルパッドがない場合に使用中に生じうる振動及び衝撃からオペレータを少なくとも部分的に保護することができる。加えて、ゲルパッドは、グリップ30だけでなく、オペレータの手のひら全体に力を均一に分配することができるので、オペレータにかかる負荷をさらに減らし、ワークピース24上の非破壊検査装置22が配置される部分にさらに均一に力を分配することができる。
【0031】
非破壊検査装置22が常にワークピース24と接触することをさらに保証するために、直接的に、又はワークピースを覆う接触媒体を介して、非破壊検査装置22、さらに具体的には超音波センサ28にばね荷重をかけることもできる。例えば、図4の断面図に示すように、ばね荷重源はコイルばねのようなばね34とすることができる。別の構成では、非破壊検査装置22は、ワークピース24との正常な接触を維持し、超音波センサ28とワークピースとの連結を助けるばね荷重を提供する発泡材を含むことができる。
【0032】
超音波センサ28とワークピース24との連結をさらに助けるために、一実施形態の非破壊検査装置22は、図5に示す吸着カップのような一又は複数の吸着デバイス36を含んでもよい。これに関して、吸着デバイス36は、非破壊検査装置22をワークピース24に一時的に取り付けることができる。一実施形態では、吸着デバイス36は吸着カップを含み、非破壊検査システム20は、さらに、吸着カップとワークピース24との間を真空引きするか又は少なくとも部分的に真空引きすることにより、非破壊検査装置22をワークピースに一時的に取り付け、両者によって検査センサ28の位置を維持し、且つ検査センサ全体に一定の圧力を印加するために、一方向弁を介して吸着カップに連結された真空源を含むことができる。非破壊検査装置22が現在の位置においてワークピース24の調査を完了し、移動の準備ができていると決定されたら、圧力解放弁を作動させるなどすることにより真空状態を解除し、非破壊検査装置をワークピースに対して動かすことができる。
【0033】
図3および5に示すように、グリップ30は、オペレータが作動させるように構成された一又は複数の入力要素38を含むことができる。図示のように、入力要素38は、作動のためのユーザ入力に応答する複数のボタンを含む。しかしながら、入力要素38は、オペレターによる作動に応答するものである限り、任意の数の他の方式で構成することができる。入力要素38は、非破壊検査装置22の構成方式に応じて、様々な方式で作動を解釈することができる。例えば、入力要素38の作動により、続いて超音波センサ28が作動する。これに関して、オペレータがワークピース24上に非破壊検査装置22を適切に配置した後は、オペレータは、入力要素38の一つを作動させることにより、超音波センサ28に、ワークピース中へと超音波信号を発信させ、ワークピースからの帰還信号を受信させることができる。これに加えて、又は代えて入力装置38の作動により、処理、表示、及び/又は格納などのために、非破壊検査装置22は、帰還信号に関連する方法をコンピュータ26に伝送することができる。
【0034】
さらなる説明として、図6は、非破壊検査装置22の一実施形態のブロック図を示す。この実施形態において、非破壊検査装置22は、入力要素38を介してオペレータから入力を受け取るように構成されたコントローラ40を含む。加えて、コントローラ40は、超音波センサ28と通信するように更新されており、例えば、対応する入力要素38の作動に応答して超音波センサを作動させたり、及び超音波センサからの帰還信号の表示を受け取ったりする。この実施形態の非破壊検査装置22は、例えば、無線又は有線接続を介して、帰還信号に関連する情報をコンピュータ26に伝送する送信機を含む通信インターフェース42も含みうる。
【0035】
図7に示すように、ワークピース24の非破壊検査方法は、超音波センサ28をワークピースと動作可能に接触するように配置することを含むことができる。工程50を参照。一実施形態では、まず、超音波センサ28を、ワークピース24上の所定の位置、例えば開始位置に配置する。ワークピース24上に非破壊検査装置22を配置する間、オペレータが非破壊検査装置をこれまでより人間工学的に操作できるように、オペレータの手のひらはグリップ30によって支持される。また、この実施形態の方法では、超音波センサがそれに対応する位置、例えば開始位置に配置される間、超音波センサ28からワークピース24中に超音波信号が発信される。工程54を参照。一実施形態では、オペレータはグリップ30の入力要素38を作動させることにより、超音波センサ28からワークピース24中への超音波信号の発信を開始する。工程52を参照。超音波センサ28による超音波信号の発信に応答して、超音波センサは帰還信号を受信する。工程56を参照。非破壊検査装置22上で帰還信号が格納、及び処理などされる間に、一実施形態の非破壊検査装置は、無線通信などを介してコンピュータ26に帰還信号に関する情報を供給することにより、コンピュータによる帰還信号の装置外処理、格納、及び/又は表示を支援する。工程58を参照。これに関して、オペレータがグリップ30の入力要素38を作動させると、コントローラ40は、通信インターフェース42を始動させて、コンピュータ26への帰還信号に関する情報の伝送を開始させることができる。帰還信号に関する情報は、ワークピースの厚み、ワークピースの検査対象部分内の異常などを含む、ワークピース24の様々な特徴に関連している。
【0036】
ワークピース24の第1の所定位置(例えば、開始位置)の検査終了後、ワークピースに他の検査対象部分が残っているかどうかが決定される。工程60を参照。ワークピース24に他の検査対象部分が残っている場合、オペレータは、グリップ30に力を加えることにより、同じワークピース又は異なるワークピース上の第2の位置に、グリップと超音波センサ28とを同時に移動させることができる。図7の工程62を参照。次いで、ワークピース24上の複数の異なる位置の各々についてこのプロセスを繰り返し、所定の経路に沿って超音波センサを移動させ、例えば所定の検査経路に沿った複数の位置の各々においてワークピースを調べることにより、ワークピースをくまなく検査することができる。各位置における帰還信号の受信後、或いはワークピース上のすべての位置又は少なくとも複数の位置における帰還信号受信後にバッチ形式で、各位置において、超音波センサ28は帰還信号を受信することができ、非破壊検査装置22は帰還信号に関する情報をコンピュータ26に供給することができる。オペレータの手のひら(例えば手のひらの大部分)を支持するグリップ30を用いてオペレータが非破壊検査装置22と相互作用可能であることにより、例示的な一実施形態の非破壊検査装置は、オペレータの労力及び消耗を低減する人間工学的デバイスを提供し、それによりオペレータは、図1に示す小型の超音波センサ10を把持しなければならない場合と比較して、非破壊検査装置を長時間に亘って繰り返し使用することができる。
【0037】
上述のように、ワークピース24上で非破壊検査装置22を手動で移動させることにより、ワークピースの複数の位置を検査することができる。オペレータは、検査する位置を特定することができる。別の構成では、非破壊検査装置22は、図6に示すような位置決めシステム44と通信することにより、検査位置を特定することができる。位置決めシステム44は様々に具現化することができる。しかしながら、一実施形態では、位置決めシステム44は、複数の全地球測位システム(GPS)の衛星、又は複数の擬似衛星、例えば検査が実行されている施設周辺に位置する複数の送受信機などである。この実施形態の位置決めシステム44は、非破壊検査装置22の通信インターフェース42と通信することにより位置決め信号を供給することができ、この信号は、コントローラ40又はコントローラと通信する位置決めモジュール(例えばGPSモジュール)によって処理される。位置決め信号に基づいて、コントローラ40又は関連の位置決めモジュールは、非破壊検査装置22の位置を決定することができる。したがって、この実施形態の通信インターフェース42は、コンピュータ26に帰還信号に関する情報を供給するだけでなく、位置決めシステム44によって供給された位置決め信号に基づいて帰還信号が捕獲された位置を特定することもできる。
【0038】
別の実施形態では、位置決めシステム44には、一又は複数のマーカ(例えば、照射点)をワークピース24に照射するプロジェク(例えば、レーザプロジェクタ)が含まれる。これに関して、まず、ワークピースに照射されるマーカが検査位置を示すように、プロジェクタのような位置決めシステム44をワークピース24と整列させて、較正する。マーカによって示された位置の一つにおいてワークピース24を検査するために、非破壊検査装置22をマーカと整列する位置まで移動させる。整列していることを確認するために、通信インターフェース42は受信機を含み、このような受信機は、例えばフォトダイオードであり、一実施形態では、位置決めシステム44によって供給されるレーザ信号のようなマーカを受信するためのレンズである。受信機がマーカを受信したら、コントローラ40は、受信機によって受信されたレーザ信号などの信号が所定の閾値を上回っていることを決定するのと同様に、非破壊検査装置22がワークピース24に対して適切に位置しており、そのときその下に位置するワークピースの部分を調べることができることを決定する。プロジェクタを含むこの実施形態の位置決めシステム44は様々に構成することができ、一実施形態では、複数の検査位置を規定するパターンにワークピース24を照射するように構成され、別の実施形態では、調査対象である第1の位置を規定する一つの第1マーカを、次いで第1の位置の検査に続いて別のマーカを、連続してワークピースに照射することにより、一つのマーカから次のマーカへとワークピースの検査を進行させるように構成される。
【0039】
一実施形態の位置決めシステム44には、複数のGPS衛星又は擬似衛星からの位置決め信号の供給と、プロジェクタによるクワークピース24の照射とを含む、上述の実施形態の組み合わせが含まれる。この実施形態では、複数のGPS衛星又は擬似衛星からの位置決め信号により、非破壊検査装置22の大凡の位置決めが行われ、プロジェクタによるワークピース24の照射により、位置決めの精度又は粒度が向上する。位置決めシステム44の複数の実施例が提供されたが、非破壊検査装置22は、ワークピース24上の検査位置を特定する様々に異なる種類の位置決めシステムと相互作用することができる。
【0040】
これらの実施形態に関連して、上述の説明及び添付図面に提示された教示の恩恵を有する本発明の多数の修正例及び他の実施形態が、当業者には想起されるであろう。したがって、本発明は開示した特定の実施形態に限定されるものでなく、修正例及び他の実施形態は、特許請求の範囲に含まれる。本明細書では特定の用語を使用しているが、それらは、一般的及び説明的な意味でのみ使用されているのであって、限定を目的として使用されているのではない。
【符号の説明】
【0041】
10 超音波センサ
20 非破壊検査システム
22 非破壊検査装置
24 ワークピース
26 コンピュータ
28 超音波センサ
30 グリップ
32 グリップ表面
34 ばね
36 吸着デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非破壊検査装置(22)であって、
ワークピース(24)と動作可能に接触するように配置されて、ワークピース(24)中に超音波信号を発信し、このようにして発信された超音波信号に応答する帰還信号を受信する超音波センサ(28)、及び
超音波センサ(28)に対し、超音波センサ(28)と同時に動くように結合されたグリップ(30)であって、オペレータが非破壊検査装置(22)に加えた力がグリップ(30)を介して超音波センサ(28)に伝達されるようにオペレータの手のひらに適合してオペレータの手のひらを支持するグリップ(30)
を備えた非破壊検査装置(22)。
【請求項2】
異なるオペレータそれぞれの手のひらに適合するように構成された複数のグリップ(30)をさらに備えており、これら複数のグリップ(30)は超音波センサ(28)に交換可能に結合される、請求項1に記載の非破壊検査装置(22)。
【請求項3】
グリップ(30)が、オペレータによって作動される少なくとも一つの入力要素(38)を備えている、請求項1又は2に記載の非破壊検査装置(22)。
【請求項4】
位置決めシステム(44)と通信して検査位置を特定するように構成された通信インターフェース(42)をさらに備えている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の非破壊検査装置(22)。
【請求項5】
通信インターフェース(42)が、非破壊検査装置(22)の位置を規定する位置決め信号、及び検査位置を示すマーカのうちの少なくとも一つを受信するように構成されている、請求項4に記載の非破壊検査装置(22)。
【請求項6】
ワークピース(24)の非破壊検査方法であって、
ワークピース(24)と動作可能に接触するように超音波センサ(28)を配置すること、
超音波センサ(28)と動作可能に結合しているグリップ(30)によりオペレータの手のひらを支持すること、
超音波センサ(28)からワークピース(24)中へと超音波信号を発信すること、
上記のようにして発信された超音波信号に応答する帰還信号を受信すること、並びに
オペレータによってグリップ(30)に印加され、グリップ(30)を介して超音波センサ(28)に伝達される力に応答して、グリップ(30)と超音波センサ(28)とを同時に移動させること
を含む方法。
【請求項7】
グリップ(30)を、別のオペレータの手のひらに適合する別のグリップ(30)と交換することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
グリップ(30)が入力要素(38)を含み、本方法が、オペレータによる入力要素(38)の作動に関する指示を入力要素(38)から受け取ることをさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
位置決めシステム(44)と通信して検査位置を特定することをさらに含む、請求項6ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
位置決めシステム(44)と通信することが、非破壊検査装置(22)の位置を規定する位置決め信号を受信すること、及び検査位置を示すマーカを受信することのうちの少なくとも一つを含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108982(P2013−108982A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−252496(P2012−252496)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】