説明

介護用に室内に設置するユニット気化トイレ

【課題】 老人の居室内に設置する小型とし、悪臭を出すことなく、下水を要せず長期間使用可能な介護用のユニット気化トイレを提供する。
【解決手段】 便座部3を有する前部処理槽2と後部収納槽15からなり、前部処理槽2の下部中央に箱型処理槽4を設け、底部に空気の噴出孔5aを有する空気噴出環状管5と常温に加熱する環状ヒータ6を有し、前部処理槽1の壁上部に空気取入口9とファン10を箱型処理槽4に向けて設けし、便座部3に長円開口孔11を設けて長円筒体12を吊下げて下端を箱型処理槽4内の空気噴出環状管5内に位置させ、長円筒体12の内面にろ過ネット袋13を設け、仕切壁14に排気管16の接続口を設け、後部収納槽15の下部にブロワ−室17を設けて送気管6を空気噴出環状管5に接続し、上部に長円筒体12内に注水する水タンク18を設けて排気管16を水タンク18から突出させた室内用のユニット気化トイレ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、老齢者や病人あるいは身体不自由者などの人たちが居室内で用便を行うことのできるように室内の生活範囲内に後付けで設置でき、しかも用便の臭気を居室内に発散することの無い構造とした簡易に設置できる可動タイプの介護用トイレである。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレは家庭であれば居室と別の場所に設置されており、また老人の介護施設や病院でもトイレは居室や病室と離れた箇所に設置されており、老人や肢体不自由者や病人は、居室や病室から廊下等を通ってトイレへ用を足しに行く必要があった。また、歩行や車椅子で用を足しに行けない場合は、簡易便器を居室やベッドに持ち込んで用を足さねばならなかった。このように居室内やベッドで簡易便器を用いて用を足すと、排泄時の尿便からの悪臭が居室内に充満し、室内の空気を入れ換えねばならなかった。また、用便後の後片付けにも人手を要するなどの負担があった。
【0003】
高齢者や病人あるいは身体不自由者などの人たちの中でも、トイレまで行くには負担があるが、居室内での立ち居振る舞いが可能な人であれば、室内で用便を足すことができることが好ましい。一方、老人介護施設や福祉施設等では、居住室が個室化されてきている。このような施設の居住室は個室内で排泄できる独立したトイレを付設することが望まれている。そして、これらの施設において、各居室に水洗化したトイレを設けることは用便後の後片付けの労力をなくすために必須である。しかし、既設の施設や一般家庭の家屋においてを居住室にトイレを設けて水洗化することは困難である。
【0004】
出願人は、設置場所を固定しないで、自由に移動して設置できる移動式のユニットトイレを出願し特許を取得している。このものは水洗式でありながら下水を必要としない構造の気化便槽として悪臭が発生せず、気化便槽が満杯とならないものとして汲み取りを不要とするものである(例えば、特許文献1参照。)。しかし、このものは屋外の例えば工事現場などに仮設のために設置するものであり、このために居住室内に設置するには大型過ぎる問題がある。
【0005】
さらに、出願人は、戸外に設置して強風で煽られても倒れにくくし、気化便槽における水洗水を硬水として泡立ちを抑えた移動式のユニット気化トイレを出願している(例えば、特許文献2参照。)。しかし、このものも屋外の例えば工事現場などに仮設のために設置するものであり、このために居住室内に設置するには大型過ぎる問題がある。
【0006】
また、さらに、出願人は、戸外に設置する移動式トイレにおいて、この建屋の床下部材を外部に取り出し可能とし、保守管理の便を図った移動式のユニット気化トイレを出願している(例えば、特許文献3参照。)。しかし、このものも屋外の例えば工事現場などに仮設のために設置するものであり、このために居住室内に設置するには大型過ぎる問題がある。
【0007】
しかも、上記の各移動式のユニット気化トイレはいずれも、処理槽が2槽などの複数槽必要であるため大型化し戸外に設置するものであって、居室内に自由に設置できるものではなかった。
【0008】
【特許文献1】特許第3448423号公報
【特許文献2】特開2004−150086号公報
【特許文献3】特開2005−120610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、老人などの既設の居住室の室内部に容易に持ち運んで設置できる大きさの小型のものとし、しかも悪臭を室内に充満することなく、かつ、尿便の汲み取りを必要とすることなく、格別の保守管理を長期間にわたって必要をなくした介護用に室内に設置するユニット気化トイレを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための、本発明の手段では、請求項1の発明は、腰掛けタイプの便座部を有する前部処理槽と、前部処理槽と仕切壁で仕切られた後部収納槽から室内ユニット気化トイレを形成し、前部処理槽内には槽下部の中央部に箱型処理槽を有し、この箱型処理槽の底部に底面側に空気の噴出孔を全周に開口する空気噴出環状管とその周囲を常温に加熱する環状ヒータを有し、前部処理槽の正面壁の上部に空気取入口を開口し、この空気取入口の内部にはファンを箱型処理槽に向けて配設し、便座部上面には前後方向を長径とする長円開口孔を有し、この長円開口孔に内接して嵌合する長円筒体を吊り下げその下端を箱型処理槽内の上記空気噴出環状管内に位置せしめ、この長円筒体の内面に排便時の粗大物を除去するろ過ネット袋を配設し、前部処理槽の後部の仕切壁の上部に前部処理槽の臭気を排気する排気管の取付け部を設け、後部収納槽の下部にブロワーを有するブロワ−室を配設し、このブロワー室のブロワーから送気管を空気噴出環状管に接続し、後部収納槽の上部に長円筒体内に注水する水タンクを配設し、上記の取付け部に接続の排気管を水タンクに貫通して水タンク上端から突出せしめたことを特徴とする介護用に室内に設置するユニット気化トイレである。
【0011】
上記の手段において、前部処理槽の便座部は腰掛けタイプであるので、その大きさは幅380〜420mm、奥行き530〜570mm、高さ380〜420mmである。さらに後部収納槽の大きさは幅380〜420mm、奥行き230〜270mm、高さ740〜760mmである。さらに前部処理槽の中の中央部に有する箱型処理槽の大きさは幅340〜360mm、奥行き340〜360mm、高さ115〜125mmである。箱型処理槽に有する空気噴出環状管は径225〜235mmの大きさで、その周囲に有する環状ヒータは径295〜305mmの大きさである。便座部の長円開口孔は長径260mmで短径180mmの大きさの長円である。この長円開口孔に嵌合の長円筒体は深さ380mmで吊り下げられている。
【0012】
請求項2の発明は、長円筒体は長円開口孔に係止するために外側に張出した環状張出縁部を有し、この環状張出縁部に上端を外に拡げて吊り下げ介在させたろ過ネット袋の該上端を押さえリングで係止し取り替え自在としたことを特徴とする請求項1記載の介護用に室内に設置するユニット気化トイレである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、面積を要することなく要介護者の居室に後付けで、かつ、下水設備を必要とすることなく設置でき、要介護者が直接座って用便をしうる大きさの便器を有し、処理槽が単槽でありながら槽内で好気性微生物の活動を活性化しうる熱と酸素を好気性微生物に付与することができ、さらに、室内に悪臭を漏出することなく、しかも、長期間にわたって汲み取りを要せず使用できるなど、優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の最良の形態を図面を参照して説明する。図1はこの発明の介護用の気化ユニットトイレ1の側面で内部構造を模式的に示す図である。この介護用の気化ユニットトイレ1は繊維強化プラスチックス(以下、「FRP」という。)から形成され、幅400mm、奥行き550mm、高さ400mmの腰掛けタイプの便座部3を有する前部処理槽2と、前部処理槽2と内部が仕切壁14で仕切られた幅400mm、奥行き250mm、高さ750mmの後部収納槽15から形成されている。この介護用の気化ユニットトイレ1は、上記のFRPに代えて、暖か味のある木材製とすることもできる。
【0015】
図2は本発明の介護用の気化ユニットトイレ1を斜め正面から見た斜視図で、便座部3は便座蓋3aを有し、図では便座蓋3aを開けた状態を示す。前部処理槽2の側面には内部の器具を取り出したり調整するための横400mm、縦130mmの大きさの開閉蓋2aを有する。前部処理槽2の正面壁の空気取入口9は内面に格子状のネットが張られている。図3は本発明の介護用の気化ユニットトイレ1を斜め背面から見た斜視図で、後部収納槽15の背面壁の下部にはルーバー15aが設けられ、内部のブロワー室17への空気の取り入れ部とされている。後部収納槽15の側壁の上部には大小の水洗を切り替える切替水栓19を有し、大に切り替えて一回で280cc程度の水洗水を流下するものとし、小は230cc程度の水洗水を流下するものとする。
【0016】
この前部処理槽2の内部には、図4の(a)に示すように、槽下部の中央部に幅350mm、奥行き350mm、高さ120mmの箱型処理槽4を有する。下面側から示す図4の(b)に見られるように、この箱型処理槽4の底部に底面側に向けて噴出する空気噴出孔5aを全周に開口して有する径230mmの空気噴出環状管5を設ける。これらの空気噴出孔5aから被処理汚液中に空気を吹出して被処理汚液を激しく撹拌しながら汚液中の好気性バクテリアに酸素を供給するものとする。さらに周囲の被処理汚液を好気性バクテリアの活動温度である常温の25℃ないし30℃、最適には28℃に加熱するために、径300mmの環状ヒータ7を空気噴出環状管5の周囲に設けるものとする。この環状ヒータ7には、図示しないが、慣用の温度センサーおよび制御スイッチを有し、これらにより被処理汚液を適温に常時維持するものとする。
【0017】
前部処理槽2の正面壁の上部には、径100mmの空気取入口9を開口して内部にほこり除けのネットをはっている。この空気取入口9の内部には、ファン10を斜め下方の箱型処理槽4に向けて配設し、箱型処理槽4内の被処理汚液の表面に空気中の酸素を十分に付与し、好気性バクテリアの活動を活発化させて被処理汚液中の有機物を分解する。これらの好気性バクテリアの活動により被処理汚液は完全に分解され、発生した水と二酸化炭素は水蒸気と共に排気管16および排気筒22により居室外に排気される。また、被処理汚液に含まれる尿の成分であるアンモニアも空気撹拌と好気性バクテリアの分解活動により水素と窒素に分解されて無臭化されて排気される。このように箱型処理槽4内の被処理汚液は分解されて、汚泥を生ずることなく、水化および気化される。そして上記の環状ヒータ7の温度制御と合わされて、被処理汚液は箱型処理槽4の底から30〜40mmの深さとする適量に減量され保持される。この結果、下水として流す必要がなくなり、また汲み取りも不要となる。さらに30〜40mmの深さを常に維持することにより、被処理汚液中の好気性バクテリアを死滅させることなく活性に維持することができる。本発明では、被処理汚液を処理する処理槽は箱型処理槽4の1槽のみであるので、特に30〜40mmの深さの被処理液を箱型処理槽4内に維持することが、好気性バクテリアを死滅させないために重要である。
【0018】
さらに、便座部3の上面には、前後方向を長径とする長径260mmで短径180mmの長円開口孔11を開口する。この長円開口孔11に内接して深さ380mmのプラスチックス製の長円筒体12を嵌合して吊り下げる。この吊り下げた長円筒体12の内面には、排便時に使用の落とし紙などの粗大夾雑物を除去するためのろ過ネット袋13を吊り下げて配設している。長円筒体12には、開口部12aを下部周囲の4箇所に設け、ろ過ネット袋13の周囲との空気の流通を良好とし、さらにろ過ネット袋13内に保持された落とし紙などの粗大夾雑物の溜まり具合を観察可能としている。
【0019】
前部処理槽2の後部の仕切壁14の上部には、前部処理槽2の臭気を排気するための排気管16を接続する開口である取付け部21を有する。後部収納槽15の下部にブロワ−室17を有する。このブロワー室17の内部に有するブロワーから送気管6により空気噴出環状管5に接続して空気を供給する。後部収納槽15の上部には、長円筒体12の内部に注水管20により注水する水タンク18を形成して有する。上記の開口の取付け部21に接続した排気管16は水タンク18を貫通されて、水タンク18の上に排気筒22の接続口22aを設けて有する。この接続口22aに居室外に排気するための排気筒22を接続するものとする。
【0020】
上記の手段において、さらに、介護用の気化ユニットトイレ1では、便座部3の長円開口孔11に吊り下げた長円筒体12を長円開口孔11に係止するために、図5の(a)に示すように、長円開口孔11の周囲よりも外側に張出した環状張出縁部12aを長円筒体12の上端に形成している。そして、この環状張出縁部12aの上でろ過ネット袋13の上端部を外に拡げて覆う。次いで、図5の(b)に示すように、その拡げたろ過ネット袋13の上を押さえリング12bで押さえて挟持するものとしている。この押さえリング12bを環状張出縁部12aに嵌合係止することで、ろ過ネット袋13を取り替え自在に吊り下げるものとしている。ろ過ネット袋13に粗大夾雑物が溜まると、長円筒体12を押さえリング12b毎、長円開口孔11から図1の矢印方向に上方に持ち上げ、押さえリング12bを外してろ過ネット袋13を新しいものと取り代え、再び押さえリング12bをセットして新しいろ過ネット袋13を取付け、長円開口孔11に長円筒体12毎挿通して取り替えを終了する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の介護用の気化ユニットトイレの側面で内部構造を模式的に示す図である。
【図2】本発明の介護用の気化ユニットトイレを斜め正面から見た斜視図である。
【図3】本発明の介護用の気化ユニットトイレを斜め背面から見た斜視図である。
【図4】本発明の介護用の気化ユニットトイレの(a)は平面図を示し、(b)は空気噴出環状管の下面側から見た図である。
【図5】本発明における長円筒体へのろ過ネット袋の取付けを説明する側面図で(a)は押さえリングで押さえる前の図で、(b)は押さえた図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ユニット気化トイレ
2 前部処理槽
2a 開閉蓋
3 便座部
3a 便座蓋
4 箱型処理槽
5 空気噴出環状管
5a 空気噴出孔
6 送気管
7 環状ヒータ
8 正面壁
9 空気取入口
10 ファン
11 長円開口孔
12 長円筒体
12a 環状張出縁部
12b 押さえリング
13 ろ過ネット袋
14 仕切壁
15 後部収納槽
15a 蓋
15b ルーバー
16 排気管
17 ブロワー室
18 水タンク
19 水栓コック
20 注水管
21 排気管取付部
22 排気筒
22a 接続口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰掛けタイプの便座部を有する前部処理槽と、前部処理槽と仕切壁で仕切られた後部収納槽から室内ユニット気化トイレを形成し、前部処理槽内には槽下部の中央部に箱型処理槽を有し、この箱型処理槽の底部に底面側に空気の噴出孔を全周に開口する空気噴出環状管とその周囲を常温に加熱する環状ヒータを有し、前部処理槽の正面壁の上部に空気取入口を開口し、この空気取入口の内部にはファンを箱型処理槽に向けて配設し、便座部上面には前後方向を長径とする長円開口孔を有し、この長円開口孔に内接して嵌合する長円筒体を吊り下げその下端を箱型処理槽内の上記空気噴出環状管内に位置せしめ、この長円筒体の内面に排便時の粗大物を除去するろ過ネット袋を配設し、前部処理槽の後部の仕切壁の上部に前部処理槽の臭気を排気する排気管の接続口を設け、後部収納槽の下部にブロワーを有するブロワ−室を配設し、このブロワー室のブロワーから送気管を空気噴出環状管に接続し、後部収納槽の上部に長円筒体内に注水する水タンクを配設し、上記の接続口に接続の排気管を水タンクに貫通して水タンク上端から突出せしめたことを特徴とする介護用に室内に設置するユニット気化トイレ。
【請求項2】
長円筒体は長円開口孔に係止するために外側に張出した環状張出縁部を有し、この環状張出縁部に上端を外に拡げて吊り下げ介在させたろ過ネット袋の該上端を押さえリングで係止し取り替え自在としたことを特徴とする請求項1記載の介護用に室内に設置するユニット気化トイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−255086(P2007−255086A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81790(P2006−81790)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(593206230)
【Fターム(参考)】