説明

仕分け装置

【課題】シューで荷を仕分ける際に、シューのガイド用のレールを不要にする。
【解決手段】コンベヤの搬送方向と水平面内で直角な方向に移動自在な複数のシュー5を備えた仕分け装置2であって、シュー5の下部に磁性体を設けると共に、磁性体の下方に複数の電気子12,14,15を面状に配置し、シュー5を移動させる。コンベヤはスラットコンベヤ4で、シュー5はスラットコンベヤ4のスラット6に直角な方向に移動自在に取り付けられ、かつ磁性体は永久磁石で、永久磁石とシュー5とを連結する磁性でかつ着磁がない接続体を設けると共に、スラットコンベヤ4のスラット6に着磁がない面状の磁性体を、永久磁石側の接続体と間隔をおいて配置した。また、荷に接する複数個のシュー5の内で、搬送方向前方のシュー5を大きく、かつ搬送方向後方のシュー5を小さく移動させることにより、荷を回転させて仕分けるかを切り替え自在にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシューを用いた仕分け装置に関し、特にシューを非接触で駆動する仕分け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドシューを用いた仕分け装置(特許文献1:JP2004-10218A他)が知られている。この装置では、スラットコンベヤのスラットにスライド自在なシューを設けて、シューの底部をガイドレールで案内し、シューの上部をスラットから突き出させて荷の側面を押し出す。スライドシューを用いた仕分け装置をシューソータと呼び、シューソータでは、
・ 荷をシューで強制的に押し出すため、確実に仕分けることができ、
・ 荷の間隔はシュー1個分で足りるため仕分け能力が高く、特に小さな荷を効率的に仕分けることができ、
・ シューをガイドするガイドレールを両端共に左右動自在にすると、同一箇所で左右両側へ仕分けることもできる。
【0003】
しかしながらシューソータでは、
・ ガイドレールでシューを案内するため、騒音と摩耗及び発塵の問題があり、
・ ガイドレールの切り替えタイミングを誤る、あるいは異物の混入などで移動できないシューをガイドレールで移動させようとすると、装置が破損するおそれがあり、さらに
・ 分岐の位置や向きを変更するためには、ガイドレールを改造する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2004-10218A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、シューで荷を仕分ける際に、ガイドレールを不要にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、コンベヤと、該コンベヤの搬送方向と水平面内で直角な方向に移動自在な複数のシューとを備えた仕分け装置であって、
前記シューの下部に磁性体を設けると共に、
前記磁性体の下方に複数の電気子を面状に配置したことを特徴とする。
【0007】
ここに面状は、長方形状などに限らず、電気子が2つの方向、例えばコンベヤの搬送方向とこれに水平面内で直角な方向、に沿って各々複数個ずつ配置されていることを意味する。また電気子は、磁性体のコアあるいは空芯にコイルを巻き付けたもので、個別に制御可能な電磁石と同じ意味である。シューに設ける磁性体は強磁性体あるいは永久磁石などとし、永久磁石とすると、電気子から吸引と反発の2通りの力をシューに加えることができ、より効率的にシューの移動を制御できる。この発明では、電気子からの磁界でシューの磁性体を移動させるので、非接触でシューを駆動でき、ガイドレールとの接触による騒音や発塵、摩耗などがない。また電気子を配置した面の範囲内で、シューを任意のパターンで駆動できるので、制御上の自由度が高い。さらにシューに無理な力を加えることがないので、装置が破損するおそれが少ない。
【0008】
また好ましくは、取扱注意品では、シューの移動速度を他の荷に比べて低くする。このようにすると、取扱注意品の転倒や損傷などを防止できる。
【0009】
好ましくは、前記電気子を制御するコントローラを設けて、荷に接する複数個のシューを平行に移動させることにより荷を回転させずに仕分けるか、荷に接する複数個のシューの内で、搬送方向前方のシューを大きく、かつ搬送方向後方のシューを小さく移動させることにより、荷を回転させて仕分けるかを、切り替え自在にする。この発明ではシューを任意のパターンで駆動できるので、荷を回転させずに仕分けるか、回転させて仕分けるかを自由に制御できる。
【0010】
コンベヤはローラコンベヤとし、ローラとローラの隙間からシューが突き出すようにしても良いが、好ましくはスラットコンベヤとし、シューはスラットコンベヤのスラットに前記直角な方向に移動自在に取り付ける。そしてシューの下部の磁性体は永久磁石とし、永久磁石とシューとを連結する磁性でかつ着磁がない接続体を設けると共に、スラットコンベヤのスラットに着磁がない面状の着磁のない磁性体を、永久磁石側の接続体と間隔をおいて配置する。このようにすると、電気子からの磁界はスラットの磁性体によりシールドされて、外部へ漏れにくい。スラットの磁性体とシュー側の永久磁石とが向き合うと、電気子からの磁力線がシュー側の永久磁石を介してスラット側の磁性体に導かれ、シューがスラットに吸着されて移動し難くなる。しかし、スラットの磁性体とシュー側の磁性体の間に接続板を配置すると、シュー側の磁性体とスラットの磁性体を磁気的に分離でき、シュー側の磁性体がスラットに固着することがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例の仕分け装置の分解状態を示す平面図
【図2】実施例の仕分け装置の要部鉛直方向断面図
【図3】実施例での、電磁石からの磁力線を模式的に示す図
【図4】荷の姿勢を変えずにソートする際の、シューの軌跡を示す図
【図5】荷の姿勢を変えてソートする際の、シューの軌跡を示す図
【図6】倒れやすい荷と通常の荷での、仕分け装置での軌跡の相違を示す図
【図7】変形例の仕分け装置での、電気子の配置を示す平面図
【図8】第2の変形例の仕分け装置の要部平面図
【図9】第2の変形例の仕分け装置の要部鉛直方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0013】
図1〜図9に、実施例の仕分け装置2とその変形とを示す。図1〜図6の実施例において、2は仕分け装置で、4はスラットコンベヤであり、そのスラット6にはシュー5が搬送方向と水平面内で直角な方向に移動自在に取り付けてある。なおスラット6に対するシュー5のガイド機構は、図示を省略するが、例えばスラット6に設けたガイド溝でシュー5の移動をガイドすればよい。8は分岐先のコンベヤで、スラットコンベヤ4の搬送方向に対して斜めもしくは直角に設け、分岐先のコンベヤ8の種類及び個数は任意で、例えばスラットコンベヤ4の左右両側に分岐先のコンベヤ8,8を設けてもよい。
【0014】
スラットコンベヤ4の下方には電気子アレイ10を設け、例えばスラットコンベヤ4の搬送方向と水平面内でこれに直角な方向とに、電気子12を2次元に配列する。電気子12のうちで、後述の永久磁石24を吸引する向きに通電されているものを14とし、反発する向きに通電されているものを15とし、他の電気子は例えば通電されていないものとする。電気子12は電磁石であり、例えば磁性体のコアにコイルを巻き付けたものである。そしてシューの運動目標となる軌跡に従って、コンベヤ4の搬送方向に沿った1個あるいは複数個の電気子を、シューを吸着するように通電する。また搬送方向に直角な左右方向では、シューを吸着する電気子の好ましくは両側の電気子、少なくともシューの移動方向後方の電気子を、シューを反発するように通電し、シューが所定の軌跡から外れないようにする。16はケースで、電気子アレイ10の底面並びに4側面を覆い、例えば鋼板から成り、電気子アレイ10の側面及び底面方向の磁気シールドを兼ねている。20は3相交流などの電源で、個々の電気子12を駆動し、コントローラ22は、図示しない上位コントローラから仕分けの指令に応じて、電源20を制御する。
【0015】
仕分けの指令は、仕分けを実行するタイミング、即ちスラットコンベヤ4上のどの荷を仕分けるかのタイミングと、仕分けるべき荷物の搬送方向の長さ、即ち荷の大小と、仕分けの方向、及び荷が取扱注意品か否かのデータを含んでいる。取扱注意品の場合、通常の荷よりもゆっくりと仕分けを実行する。言い換えると、仕分けの開始から完了までに荷がスラットコンベヤ4により搬送される距離を、取扱中遺品では長くする。さらに仕分けの指令には、荷を回転させて仕分けるか、スラットコンベヤ4上の姿勢を維持して仕分けるかの指令が含まれている。荷の大小は荷を支持するスラット6の枚数で表わされ、コントローラ22はスラットの枚数分のシューを制御する。以下この明細書において、スラットコンベヤ4の搬送方向をx方向、水平面内でこれに直角な方向をy方向とする。
【0016】
図2,図3に、電気子アレイ10とスラットコンベヤ4との関係を示す。電気子アレイ10はスラットコンベヤ4の下方に配置され、スラット6の下方に永久磁石24が設けられ、永久磁石24は例えばC字状の接続板26によりシュー5に接続されている。スラット6はアルミニウム部27と板状の磁性体28とから成り、磁性体28はアルミニウム部27の内部に設けられて、永久磁石24及び接続板26と直接接触しないようにしてある。接続板26及び磁性体28は着磁の無い磁性体、例えば鉄板あるいはフェライト板で構成され、永久磁石24の下方に電気子12がある。
【0017】
図3に示すように、電気子12からの磁界により、永久磁石24が吸引もしくは反発されて、y方向に移動する。そして電気子12から永久磁石24に達した磁力線は、接続板26に沿って流れるので、磁性体28には達しない。このため永久磁石24が磁性体28に固着することを防止でき、さらに電気子12からの磁力線は接続板26と磁性体28とで2重にシールドされる。次に永久磁石24以外の部分で、電気子12から上方へ流れた磁力線は、磁性体28を介して他の電気子12へ流れ込む。これらのため、電気子アレイ10からスラットコンベヤ4の上側へ通過する磁界を小さくできる。なお電気子アレイ10の底面及び4側面は、ケース16により磁気シールドされている。
【0018】
図4に荷30の向きを保ったまま仕分ける例を、図5に荷32の向きを変えて仕分ける例を示す。図4の仕分けは例えばサイズの小さな荷を、小さな間隔で搬送する際に適している。この場合、荷30に接触する複数個のスラット5a〜5cは、互いに平行に動作する。この結果、仕分けの過程で荷30の姿勢が変わらず、後続の荷31との間隔は僅かでもよい。
【0019】
図5の仕分けは大きな荷を仕分ける際に適し、荷32を回転させて、荷32が、仕分け先のコンベヤで、搬送方向に直角な左右方向に占める幅を小さくする。ここで例えばスラット5d〜5gにより荷32を仕分ける場合、下流側のスラット5g,5f側で、上流側のスラット5d,5e側に比べて、スラットの移動距離を長くする。この結果、スラットの軌跡は図5のようになり、下流側のスラットほど軌跡とx方向との角度θが大きくなる。これに伴って荷32が向きが変化し、スラットコンベヤ4でも仕分け先コンベヤでも、荷の前面は同じ面となる。そして仕分けに伴い荷32が回転するので、後続の荷との間隔を図4の場合よりも大きくする。
【0020】
図1に戻り、コントローラ22は仕分け指令中で荷のサイズを指定され、これによって仕分けに用いるスラットの数が判明する。また荷を回転させて仕分けるか、姿勢を保って仕分けるかが仕分け指令で指定されると、それに応じて図4の制御と図5の制御とを切り替える。実施例では、電気子アレイ10の電気子12を任意のパターンで駆動できるので、任意のシューを任意の軌跡で駆動できる。従って、分岐の方向、分岐させる位置、分岐までにシューを移動させる距離、言い換えるとシューの左右方向速度などを、任意に決定できる。例えば分岐先のコンベヤ8を増設、もしくは移動する場合、電気子アレイ10でシューを駆動できる範囲内で有れば、スラットコンベヤ4側は変更する必要がない。なお電気子アレイ10と面していない部分では、スラットコンベヤ4ではなく、ローラコンベヤなどでも良い。
【0021】
図6は取扱注意品、即ち易損品及び倒れやすい荷50と、通常の荷51とでの仕分け時の軌跡の相違を示す。ここでは仕分け装置4に4台の仕分け先コンベヤ46〜49が接続されているものとし、これらのコンベヤはスラットコンベヤでもよいが、ローラコンベヤあるいはベルトコンベヤなどでもよい。取扱注意品の荷50を仕分ける場合、仕分けに用いる搬送方向の長さを長くして、シューを低速で左右に動かし、仕分けの過程で荷50に加わる衝撃を小さくする。これに対して通常の荷51では、短い距離でシューをより高速で動かして仕分けを行い、効率的な仕分けを実現する。なお図6で、仕分け装置4以外の部分での搬送用のコンベヤは、ローラコンベヤなどでもよい。
【0022】
図7に電気子アレイの変形例60を示す。図1のように長方形などの方形の電気子アレイ10は、シュー5をxy平面内で任意の軌跡で移動させることができる。これに対してシュー5の移動方向が固定の場合、長方形の電気子アレイ10に代えて、図7の電気子アレイ60などを用いてもよい。電気子アレイ60は電気子12を面状に配列したもので、仕分け部61では、電気子12はx方向に沿って複数個ずつ帯状に配置され、シューをy方向に移動させる。復帰部62ではy方向に移動したシューを復帰させ、x方向に沿って1個ずつ線状に電気子12を配置しても良い。
【0023】
ローラコンベヤのローラとローラの隙間にシューを配置してもよい。このような例を図8,図9に示し、70はローラコンベヤのローラで、動力ローラであるが、従動ローラでもよく、ローラ70,70の隙間にシュー74が配置され、シュー74の側面を硬質ゴムなどの弾性体76で被覆する。ローラ70は図9に示すように、外側のアルミニウム部と内側の鋼部とから成り、着磁のない鋼部72は磁気シールドとして作用する。シューの下方にはガイド80が設けられ、ガイド80に沿って永久磁石78が移動する。他の点では図1〜図6の実施例と同様である。
【0024】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) ガイドレールによりシュー5を案内するのではないので、騒音及び摩耗や発塵が生じにくい。
(2) 電気子12を長方形などの面状に配列することにより、任意の位置で、任意の方向に、かつ任意の軌跡で荷を仕分けることができる。
(3) シューの軌跡が可変なので、荷の姿勢を変えずに仕分けるか、荷を回転させて姿勢を変えるかを制御できる。また同様に取扱注意品とその他の荷とで仕分けの軌跡を変えることができる。

【符号の説明】
【0025】
2 仕分け装置
4 スラットコンベヤ
5 シュー
6 スラット
8 コンベヤ
10 電気子アレイ
12〜15 電気子
16 ケース
20 電源
22 コントローラ
24 永久磁石
26 接続板
27 アルミニウム部
28 磁性体
30〜32 荷
46〜49 分岐先コンベヤ
50,51 荷
60 電気子アレイ
61 仕分け部
62 復帰部
70 ローラ
71 アルミニウム部
72 鋼部
74 シュー
76 弾性体
78 永久磁石
80 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤと、該コンベヤの搬送方向と水平面内で直角な方向に移動自在な複数のシューとを備えた仕分け装置であって、
前記シューの下部に磁性体を設けると共に、
前記磁性体の下方に複数の電気子を面状に配置したことを特徴とする、仕分け装置。
【請求項2】
取扱注意品では、シューの移動速度を他の荷に比べて低くしたことを特徴とする、請求項1の仕分け装置。
【請求項3】
前記電気子を制御するコントローラを設けて、荷に接する複数個のシューを平行に移動させることにより荷を回転させずに仕分けるか、荷に接する複数個のシューの内で、搬送方向前方のシューを大きく、かつ搬送方向後方のシューを小さく移動させることにより、荷を回転させて仕分けるかを、切り替え自在にしたことを特徴とする、請求項1または2の仕分け装置。
【請求項4】
前記コンベヤはスラットコンベヤで、前記シューはスラットコンベヤのスラットに前記直角な方向に移動自在に取り付けられ、かつ前記磁性体は永久磁石で、該永久磁石と前記シューとを連結する磁性でかつ着磁がない接続体を設けると共に、スラットコンベヤのスラットに着磁がない面状の磁性体を、前記永久磁石側の接続体と間隔をおいて配置したことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの仕分け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−202324(P2010−202324A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48848(P2009−48848)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】