説明

付加物、または付加物とオリゴマー、または付加物とオリゴマーと低分子量ポリマー、ならびにそれらの調製

本発明は、付加物、付加物とオリゴマーの混合物、ならびに/または付加物とオリゴマーとモノビニル芳香族炭化水素から形成される低分子量ポリマーの混合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、新規かつ有用な、(i)ビニル芳香族付加物、(ii)ビニル芳香族付加物およびビニル芳香族オリゴマーの混合物、および(iii)ビニル芳香族付加物、ビニル芳香族オリゴマー、および低分子量ビニル芳香族ポリマーの混合物、ならびに、そのような物質を産生するための新規なプロセス技術に関する。これらの付加物および混合物は、臭素化難燃剤を調製するための望ましい原材料である。

用語解説
【0002】
本発明の生成物、および請求項を含む本文書内のどこでも使用される専門用語に関して、
1) 「付加物」という用語は、単数であっても複数であっても、1〜約7個のビニル芳
香族単位をモノメチル芳香族化合物に添加することによって形成される離散的な分
子を意味する。
2) 「オリゴマー」という用語は、単数であっても複数であっても、約8〜約25の範
囲の重合度を有するビニル芳香族付加生成物を意味する。
3) 「低分子量ビニル芳香族ポリマー」という用語は、単数であっても複数であっても
、約26〜約80の範囲の重合度を有するビニル芳香族付加生成物を意味する。
4) 「擬定常状態濃度」という用語は、反応物または成分が継続的に消費および補充さ
れているが、濃度は、反応の経過中(開始および終了時を除く)において一定、ま
たは実質的に一定のままである、動力学的に活性な反応物または成分の濃度を意味
する。例えば、反応物が、消費されるのと同じ速度で反応混合物中に送給または導
入されている時に、その反応物の擬定常状態濃度が達成される。該擬定常状態濃度
がゼロまたは実質的にゼロである特別な場合では、これは、さもなければ消費され
得る速度よりも遅い、またはほぼ等しいが、それ未満である速度で、成分を送給す
ることによって達成され、送給法は、「供給不足」と称される場合もある。
【背景技術】
【0003】
以下の文献は、最先端の技術を記載しているものと思われる。
米国特許第6,008,283号、
米国特許第6,657,028号、
米国特許第6,759,478号、
Pines and Wunderlich、J.Am.Chem.Soc.、(1958)80、6001、
Eberhardt and Butte, J. Org. Chem. 29
2928, (1964)、およびPolymer Preprints, 13, 667, (1972)、Eberhardt and Butte、J.Org.Chem.29 2928、(1964)、およびPolymer Preprints、13、667、(1972)、
A.L.Gatzke、J.Polymer Science、Part A−1、volume 7、pages 2281〜2292、(1969)、
Y.Tsukahara et al.,Polymer Journal、Vol.26、No.9、pages 1013〜1018(1994)、および
T.Mizuno et al.、Macromolecules、2005、38、4432〜4437。
【0004】
スチレンのアニオン重合では、概して、1モルのポリスチレンを作製するのに、1モルの開始剤が必要である。同様に、低分子量ポリマーおよびスチレンオリゴマーを作製するために、通常、1モルのオリゴマーまたはポリマーあたり1モルの開始剤が必要である。したがって、消費される1モルの開始剤のそれぞれに対して、多くのモルのポリマーまたはオリゴマー(例えば、約2から約50)を産生することが、かなりの経済的利点となる。したがって、商業的に可能な条件下で、効果的なオリゴマーまたは低分子量ポリマー難燃剤の調製での使用に好適な、オリゴマーまたは低分子量ポリマーを産生することができる、経済的なオリゴマー化プロセス、同様に、低分子量重合プロセスの必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たすことを可能にし、また、それら自体が、有効な難燃剤の臭素化によって調製するための原材料として非常に有用である、相異なる種の付加物の生成および単離を可能にするものと考えられる。

【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、芳香族炭化水素は、高選択性、高変換、および非常に高い触媒の活用を伴う、種々の付加物、および/またはオリゴマー、または低分子量ポリマーを独立して作製するように、モノビニル芳香族炭化水素によってアラルキル化することができる。さらに、本発明によれば、高級オリゴマーを除いて、1つもしくは複数の離散的な付加物を産生する反応条件を利用することができる。今までに知られている限りでは、TMEDA等のポリ(第3級アミン)と錯体化された触媒量のリチウム試薬を使用した、スチレンによるトルエンのアラルキル化は、従来技術では未知である。
【0006】
本発明の対象とする最終用途における性能の増強について、分散、歪度、および非対称性が限られる単峰性の均一な分子量分布を有する生成物を産生することが重要であり、したがって望ましいものであると考えられる。分散、歪度、および非対称性は、ポリマーまたはオリゴマー混合物の分子量分布曲線の幅(標準偏差)および形状(ガウスまたは非ガウス)を説明するのに使用されるパラメータである(A.Rudin、The Elements of Polymer Science and Engineering、Academic Press、Orlando、1982、pp.54〜58)。このような曲線は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による、ポリマーまたはオリゴマー混合物の分析によって、最も好都合に発生する。
分散=(M−M
標準偏差(S)=(M−M1/2
歪度=M−3M+2M
非対称性またはα=(M−3M+2M)/(M
−M3/2
【0007】
本発明は、スチレン等のビニル芳香族化合物から誘導されるポリマー、オリゴマー、および付加物の混合物、および連鎖移動剤(CTA)が、単峰性の分子量分布、低多分散性(PD)、小分散(標準偏差)、および低非対称性(α)を伴って産生されるように、連鎖移動反応を最大化するためのプロセスを提供する。
【0008】
スチレンのアニオン重合について、重合は、特定のプロセス条件下で非常に制御された均一な速度で生じ、それによって、ほぼ単分散のポリマーを産生し、分布または多分散性(PD=M/M)の代表値が1に近づくと広く理解されている。一般的に、1.04〜1.1の範囲のPDを有するポリマー生成物は、日常的に調製することができる。重合度(DP)は、所与の重合プロセスについて容易に予測され、下記の式によって説明することができる。
DP=molestyrene/moleinitiator
DPは、次いで、以下のように、予想される分子量Mcalcを計算するのに
使用される。
calc=DP(MWstyrene)+MWend group
式中、MWstyreneは、スチレンモノマーの分子量であり、MWen
d groupは、アルキルリチウム開始剤から誘導されるアルキル画分の
分子量である。
高ポリマーについて、この項(MWend group)は、概して無視され、よ
って、Mcalc=DP(MWstyrene)となる。
【0009】
本発明より前には、Mcalc/Mが約2〜約50の範囲である低分子量ポリマーおよびオリゴマーを産生するために、開始剤の消費の有意な減少を伴う正規分布またはガウス分子量分布を有するポリスチレンを産生するように、連鎖移動の程度をバッチおよび連続プロセスで均一に制御することはできなかった。
【0010】
比率について、Mcalc/Mは、約2〜約50の範囲であることが好ましい。したがって、新しい、非常に効率の高い臭素化難燃剤の産生に使用するための、オリゴマーの経済的な生成について、比率Mcalc/M(連鎖移動および重量平均分子量の非存在下で、予想または算出される分子量の商)は、約2〜約50の範囲にあることが好ましい。これは、開始剤の活用を約100%〜5000%改善することを示し、また、約4000ダルトン、すなわち原子質量単位以下で、ポリマーおよびオリゴマーの混合物を作成する時に特に重要である。
【0011】
本発明の特徴の1つは、種々の種類の関連するモノ付加物、または付加物の混合物、または付加物とオリゴマーの混合物、または付加物とオリゴマーと低分子量ポリマーの混合物を、本質的に同じプロセス装置で、同じ原材料から直接的に合成することを初めて可能にすることである。したがって、本発明は、多くの場合、それら自体が新規であり、少なくともほとんどの場合、臭素化難燃剤を産生するための原材料としての使用に非常に好適である、新しいタイプの組成物を利用できるようにする。本発明によって産生できる最小分子量の付加物、より具体的には、モノ付加物(1,3−ジアリルプロパン)は、種々の商業的に重要な用途のための多くの生成物を合成するための出発点として非常に適している。例えば、本発明は、概して市場では入手できない生成物である、1,3−ジフェニルプロパンの直接的な経済的合成を可能にする。他のモノ付加物は、潜在的な商業的有用性の無数の新しい最終生成物を合成するための構成単位として機能することができる。加えて、1.25を超える多分散性を有する、1,3−ジフェニルプロパンと、1,3,5−トリフェニルペンタンと、1,3,5,7−テトラフェニルヘプタンと、1,3,5,7,9−ペンタフェニルノナンと、を含む混合物は、経済的ベースで好都合に調製することができ、また、ポリウレタン泡沫用途のための難燃剤として臭素化するのに非常に適している。
【0012】
本発明によって産生できる付加物およびオリゴマーの別々の臭素化は、有効な難燃剤添加物の形成をもたらした。低脂溶性は、臭素化オリゴマーの利点のうちの1つである。このタイプの臭素化添加物、特に、分子1個あたり、芳香族環1個につき平均して2個の臭素原子を有する臭素化付加物は、種々の溶媒、特に、イソプロピル化リン酸トリフェニル中に溶解し、それによって、柔軟な可撓性ポリウレタン泡沫に使用するための、非常に効率の高い、低スコーチの混合臭素含有およびリン含有難燃剤を生じることが分かった。このような混合臭素含有およびリン含有添加物は、硬質泡沫等の他のポリウレタン用途のための難燃剤としても有用であると考えられる。特に、本発明によって産生できる、1,3,5−トリフェニルペンタンで富化される臭素化付加物のうちの1つは、本質的に、健康に悪影響を及ぼし得るという認識のために市場から撤退したが、商業的に成功した難燃剤としての可撓性ポリウレタン泡沫のための低スコーチ難燃剤と同じくらい有効であることが分かった。
【0013】
本発明の相互依存的変数は、本発明を、産業用途に非常に適したものとする。本発明は、異なるプロセス条件下で同じ生成物分布を得るように、またはプロセス条件のわずかな修正によって大幅に異なる生成物分布を得るように、プロセスを行うための多数の選択肢をもたらす。理論に束縛されるものではないが、本発明のプロセス内で生じると考えられているものは、連鎖移動のための速度と伝搬のための速度との間のバランスであり、条件および試薬の比率の好適な選択によって、モノ付加物、付加物の混合物、付加物とオリゴマーの混合物、または付加物とオリゴマーと低分子量ポリマーの混合物が得られるように、バランスが設定される。
【0014】
したがって、本発明に従って、(i)モノ付加物、(ii)付加物の混合物、(iii)付加物および1つもしくは複数のオリゴマーの混合物、または(iv)付加物とオリゴマーと低分子量ポリマーの混合物で富化される反応生成物を調製するプロセスが提供される。該プロセスは、
1) 少なくとも成分B)を、少なくとも成分A)、C)、およびD)から形成される混
合物に、または少なくとも成分A)、C)、およびD)を送給することによって形
成されている混合物に送給することによって、以下に記載される成分A)、B)、
C)、およびD)を1つにするステップであって、いずれの場合においても、成分
C)およびD)は、互いに別々に送給され、および/または互いから形成された、
または形成されている錯体として送給される、ステップと、
2) 送給するステップ中に反応混合物中の成分B)の擬定常状態濃度と、成分A):成
分B)のモル比と、を相関させるステップと、前記反応生成物を産生するように、
反応混合物の1つまたは複数の温度を、約80℃〜約130℃の範囲の1つもしく
は複数の温度に維持するステップと、
3) 成分B)の送給を終了し、よって反応を終了させるステップと、を含み、
− 成分A)は、分子中にメチル基が1個のみ存在し、メチル基は、芳香環に結合され、メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換である、少なくとも1個の芳香族炭化水素であり、好ましくは、成分A)は、1〜4個の範囲の芳香環を含み、1〜6個の範囲のアルキル環置換基を有する芳香族炭化水素部分であり、そのような置換基の1つ以下は、メチル基であり、メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換であり、より好ましくは、成分A)は、1個または2個の芳香環を有し、さらに好ましくは、成分は、1個の芳香環を有し、
− 成分B)は、少なくとも1個のモノビニル芳香族炭化水素であり、
− 成分C)は、少なくとも1つの有機リチウム試薬であり、
− 成分D)は、前記有機リチウム試薬と錯体化される、少なくとも1つの脂肪族ポリ(第3級アミン)リガンドである。
【0015】
本発明は、付加物または付加物の混合物、2つ以上の付加物と1つもしくは複数のオリゴマーを含む混合物、および付加物とオリゴマーと低分子量ポリマーを含む混合物である組成物も提供する。該付加物または付加物の混合物は、下記の式によって表され、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Arは、メチル基を1つだけ有する芳香族炭化水素部分であり、メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換であり、Ar′は、独立して芳香族炭化水素部分であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、nは、0〜6の範囲の整数である。2つ以上の付加物および1つもしくは複数のオリゴマーを含み、これらの混合物の個々の付加物およびオリゴマーは、下記の式によって表すことができ、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Ar、独立して各Ar′、および独立して各Rは、上記に定義した通りであり、nは、0〜24の範囲の整数である。付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーを含み、これらの混合物の個々の付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーは、下記の式に
よって表すことができ、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Ar、独立して各Ar′、および独立して各Rは、上記に定義した通りであり、nは、0〜79の範囲の整数である。該組成物において、Arは、好ましくは、1〜4個の範囲の芳香環を含み、1〜6個の範囲のアルキル環置換基を有し、Ar′は、好ましくは、1〜4個の範囲の芳香族環を含む。
【0016】
本発明の上述の、および他の実施形態は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からさらに明らかになるであろう。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン等の脂肪族第3級ジアミンリガンドと錯体化したn−ブチルリチウム等のアルキルリチウム化合物の存在下で、トルエンとスチレンとの反応時に生じる、錯体化したリチウムアニオンの側鎖成長および連鎖移動反応の、提案される反応機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本文書の全体を通して使用される場合、「産生できる」という用語は、同時に、または同じ反応で、本願明細書に記載の反応プロセスによって産生される生成物を意味する。換言すれば、本発明の混合生成物は、好ましくは、互いに単一のプロセスで生成されるが、そのような生成物は、別々に形成された物質を混合する等の他の方法で得ることができる。
【0019】
本文書内の種々の式中のnおよびmの値に関して、式が個々の分子を表している場合、nおよびmは、整数である。式が複数の分子を表している時、nおよびmは、平均値であり、したがって、分数となる可能性がある。
【0020】
成分A)は、分子中にメチル基が1個のみ存在し、メチル基は、芳香環に結合され、メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換である、芳香族炭化水素である。一般に、本発明のプロセスについて、メチル基の水素原子は、最も酸性のプロトンでなければならない(すなわち、それらは、最も低いpK値を持たなければならない)。好ましくは、成分A)は、分子中にメチル基が1個のみ存在し、メチル基は、芳香環に結合され、メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換である、芳香族炭化水素であり、分子は、1〜4個の範囲の芳香環を含み、1〜6個の範囲のアルキル環置換基を有する。成分A)として利用することができるいくつかの限定的でない例には、トルエン、p−ブチルトルエン、m−イソプロピルトルエン、o−エチルトルエン、3,5−ジエチルトルエン、p−tert−アミルトルエン、3,4,5−トリエチルトルエン、1−メチル−2−(3−フェニルプロピル)ベンゼン、1−メチル−3−(3−フェニルプロピル)ベンゼン、および1−メチル−4−(3−フェニルプロピル)ベンゼンが挙げられる。成分A)のための好適な化合物は、トルエン、1−メチル−2−(3−フェニルプロピル)ベンゼン、1−メチル−3−(3−フェニルプロピル)ベンゼン、および1−メチル−4−(3−フェニルプロピル)ベンゼンである。
【0021】
成分B)は、モノビニル芳香族炭化水素、好ましくは、分子中に1〜4個の芳香族環を有するモノビニル芳香族炭化水素である。アルキル置換基は、成分B)の芳香環上に存在させることができる。成分B)として利用することができるいくつかの限定的でない例には、p−イソプロピルスチレン、2,4−ジエチルスチレン、o−エチルスチレン、3,5−ジ−イソブチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2−エチル−4−メチルスチ
レン、1−ビニルナフタレン、および2−ビニルナフタレンが挙げられる。
【0022】
種々の有機リチウム試薬は、単独で、または2つ以上のアルキルリチウムまたはシクロアルキルリチウム種の混合物中で、成分C)として使用することができる。好ましくは、アルキルリチウム試薬は、分子中に1〜約5個の範囲の炭素原子を含み、シクロアルキルリチウム試薬は、分子中に約5〜約7個の炭素原子を含む。商品として入手できる有機リチウム化合物が、より好ましい。特に、組み合わせず、個々に使用される時には、n−ブチルリチウムおよびsec−ブチルリチウムが特に好ましい。加えて、アルキルリチウム化合物以外の有機リチウム化合物を使用することができる。このような他の有機リチウム化合物の限定的でない例には、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、1−ヘキシル−1−フェニルリチウム、および原位置で予備成形または生成することができる、ポリスチリルリチウム化合物が挙げられる。
【0023】
成分D)は、前記有機リチウム試薬と錯体化され、開始、モノ付加(伝搬)、および連鎖移動を活性化する、少なくとも1つの脂肪族ポリ(第3級アミン)リガンドである。このようなポリ(第3級アミン)リガンドの限定的でない例には、プロピレンジアミンから誘導されるジ(第3級アミン)リガンド、より好ましくは、エチレンジアミンまたはポリエチレンイミンから誘導されるジ(第3級アミン)リガンドが挙げられる。N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミンは、本発明の実行時に特に好適な脂肪族ポリ(第3級アミン)リガンドである。
【0024】
したがって、本発明の第1のプロセス実施形態によれば、下記の式で表されるモノ付加物で富化され、
Ar−CHCHCHR−Ar′
式中、Arは、1〜4個の範囲の芳香環を含み、1〜6個の範囲のアルキル環置換基を有する芳香族炭化水素部分であり、そのような置換基のうちの1個、およびそのような置換基の1個以下は、メチル基であり、メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換であり、Ar′は、独立して1〜4個の範囲の芳香環を含む芳香族炭化水素部分であり、Rは、水素原子またはメチル基である、生成物を調製するためのプロセスであって、
I) 以下に記載される少なくとも成分B)を、(1)以下に記載される成分A)、C)
、およびD)から形成され、随意に、成分C)の量にほぼ等しいか、またはそれ未
満の量で成分B)を含む混合物、または、(2)成分A)、B)、C)、およびD
)と、さらなる量の成分A)、C)、およびD)、ならびに随意に反応器に導入さ
れるさらなる量の成分C)未満の量の成分B)と、から前もって形成した混合物(
すなわち、ヒール)のいずれかを含む、機械的撹拌反応器内に送給するステップと

II) 成分B)の送給速度を、成分B)の擬定常状態濃度がゼロに、またはほぼゼロに
維持される程度の、十分に遅い速度に維持するステップと、反応器の内容物を、約
90℃〜約130℃の範囲の1つもしくは複数の温度(成分A)がトルエンである
時には、好ましくは、約105℃〜約115℃、より好ましくは、還流温度)に維
持するステップと、
III) 好ましくはプロトン性溶媒によって、成分B)の送給を終了し、よって反応を
終了させるステップと、を含み、
(i) 反応器内に導入される成分A)の量に対する、反応器内に導入される成分
B)の総量は、成分A)の約5〜約70モルパーセントの範囲、好ましくは
、成分A)の約5〜約50モルパーセントの範囲、より好ましくは、成分A
)の約10〜約30モルパーセントの範囲であり、
(ii) 反応器内に導入される成分C)の量は、成分B)の約10〜約0.2モ
ルパーセントの範囲、好ましくは、成分B)の約1.25〜約0.5モルパ
ーセントの範囲、より好ましくは、成分B)の約1〜約0.67モルパーセ
ントの範囲であり、
(iii) 反応器内に導入される成分D)の量は、成分B)の約10〜約0.1
モルパーセントの範囲、好ましくは、成分B)の約1.25〜約0.5モル
パーセントの範囲、より好ましくは、成分B)の約1〜約0.67モルパー
セントの範囲であり、
(iv) 成分C)に対する成分D)のモル比は、約0.8:1〜約8:1の範囲
、好ましくは、特に成分D)がTMEDAである時に、約0.95:1〜約
1.05:1であり、
成分A)は、分子中にメチル基が1個のみ存在し、メチル基は、芳香環に結合され、メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換である、少なくとも1個の芳香族炭化水素であり、
成分B)は、少なくとも1個のモノビニル芳香族炭化水素であり、
成分C)は、少なくとも1つの有機リチウム試薬であり、
成分D)は、前記有機リチウム試薬と錯体化される、少なくとも1つの脂肪族ポリ(第3級アミン)リガンドである、プロセスが提供される。
【0025】
好適な実施形態において、
I) 成分A)は、1〜4個の範囲の芳香環を有し、1〜6個の範囲のアルキル環置換基
を有し、
II) 成分B)は、分子中に1〜4個の範囲の芳香環を有し、
III) 成分C)は、1〜約5個の範囲の炭素原子を有するアルキルリチウム化合物、
約5〜約7個の範囲の炭素原子を有するシクロアルキルリチウム化合物、フェニル
リチウム、ベンジルリチウム、および1−ヘキシル−1−フェニルリチウムであり

IV) 成分D)は、プロピレンジアミン、またはエチレンジアミン、またはポリエチレ
ンイミンから誘導される、ジ(第3級アミン)リガンドである。
【0026】
より好適な実施形態において、
1) 成分A)は、トルエン、1または2個のアルキル基によって置換され、それぞれが
少なくとも2個の炭素原子を含むトルエン、1または2個のフェネチル基によって
置換されるトルエン、1または2個の1−フェニルプロピル(C−CH
CH)基、または1−メチルナフタレン、または2−メチルナフタレンによ
って置換されるトルエンであり、
2) 成分B)は、スチレン、環アルキル化スチレン、α−メチルスチレン、環アルキル
化α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、または2−ビニルナフタレンであ
り、
3) 成分C)は、好ましくは最高で約5個の炭素原子を含むアルキルリチウム化合物、
フェニルリチウム、ベンジルリチウム、またはアルキル基が1〜5個の炭素原子を
含む1−フェニルアルキルリチウムであり、
4) 成分D)は、TMEDAである。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、本発明のプロセス技術によって産生できる、新規かつ有用な付加物が提供される。そのような付加物には、1−フェニル−3−(o−トリル)プロパン、1−フェニル−3−(m−トリル)プロパン、1−フェニル−3−(m−トリル)プロパン、1−フェニル−3−(p−tert−ブチルフェニル)プロパン、1−フェニル−3−(p−エチルフェニル)プロパン、1−(o−イソプロピルフェニル)−3−(p−トリル)プロパン、1−フェニル−3−(2,4,6−トリメチルフェニル)プロパン、1−フェニル−3−(1−ナフチル)プロパン、1−フェニル−3−(2−ナフ
チル)プロパン、および1,3,5,7,9−ペンタフェニルノナンが挙げられる。
【0028】
本発明に従って形成することができる付加物は、以下の限定的でない実施例によって示される。
1. トルエンとスチレンとの反応は、初期付加物として、1,3−ジフェニルプロパン
を形成する。
2. トルエンとo−メチルスチレンとの反応は、初期付加物として、1−フェニル−3
−(o−トリル)プロパンを形成する。
3. トルエンとm−メチルスチレンとの反応は、初期付加物として、1−フェニル−3
−(m−トリル)プロパンを形成する。
4. トルエンとp−メチルスチレンとの反応は、初期付加物として、1−フェニル−3
−(p−トリル)プロパンを形成する。
5. トルエンとp−tert−ブチルスチレンとの反応は、初期付加物として、1−フ
ェニル−3−(p−tert−ブチルフェニル)プロパンを形成する。
6. p−エチルトルエンとスチレンとの反応は、初期付加物として、1−フェニル−3
−(p−エチルフェニル)プロパンを形成する。
7. o−イソプロピルトルエンとp−メチルスチレンとの反応は、初期付加物として、
1−(o−イソプロピルフェニル)−3−(p−トリル)プロパンを形成する。
8. トルエンと2,4,6−トリメチルスチレンとの反応は、初期付加物として、1−
フェニル−3−(2,4,6−トリメチルフェニル)プロパンを形成する。
9. トルエンと1−ビニルナフタレンとの反応、および1−メチルナフタレンとスチレ
ンとの反応は、1−フェニル−3−(1−ナフチル)プロパンを形成する。
10.トルエンと2−ビニルナフタレンとの反応、および2−メチルナフタレンとスチレ
ンとの反応は、1−フェニル−3−(2−ナフチル)プロパンを形成する。
【0029】
上述の1〜10のように例証されるもの以外に、より高い分子量の付加物を形成して単離することもできる。したがって、一般に、付加物は、以下の式によって表すことができ、

Ar−CH[−CHCR(Ar)]−CHCHR−Ar

式中、各Arは、独立して、各アルキル基が、独立して少なくとも2個の炭素原子を含む、アルキル置換を随意に含む、芳香族部分であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、nは、約1〜約20の範囲の平均の整数または分数である。1,3,5,7−テトラフェニルヘプタン、1,3,5,7,9−ペンタフェニルノナン、およびそれらの混合物は、本発明の好適な特定の付加物のうちの1つである。
【0030】
本発明の第2のプロセス実施形態は、2つ以上の付加物の混合物を産生するためのプロセス技術であり、混合物には、実質的にオリゴマーが無い。これらの混合物の個々の付加物は、下記の式によって表すことができ、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Ar、独立して各Ar′、および独立して各Rは、上記に定義されているものであり、nは、0〜6の範囲の整数であり、該プロセスは、2つ以上の混合物が形成され、オリゴマー形成が最小化され、成分B)の擬定常状態濃度がゼロを超えることを除いて、上述したように、第1のプロセス実施形態のためのものである。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、本発明のプロセス技術によって産生できる付加物の、新規かつ有用な混合物が提供される。これらの混合物のこのような個々の付加物は、以下の式によって表すことができ、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Ar、独立して各Ar′、および独立して各Rは、上記に定義されたようなものであり、nは、0〜6の範囲の整数である。これらの混合物のうちの少なくともいくつかから、単離される部分が、個々の付加物の式中のnの値が連続番号である付加物の混合物を含むように、特定の部分を(例えば、蒸留によって)単離することができる。そのような付加物の混合物の例には、例えばn=0および1、n=1および2、n=2および3、n=3および4である2元混合物、例えばn=0、1、および2、n=1、2、および3である3元混合物、例えばn=0,1、2、3および4等である4元混合物、が挙げられる。
【0032】
他の好適な付加物の混合物には、特定の付加物およびその付加物の1つもしくは複数の構造異性体を含む、混合物が挙げられる。構造異性体(structural isomer)は、構造異性体(constitutional isomer)とも呼ばれる。そのような混合物の例には、1,3−ジフェニルプロパン、および少なくとも約0.005重量%〜約5重量%の2−(2−フェニルエチル)トルエン、3−(2−フェニルエチル)トルエン、および4−(2−フェニルエチル)トルエンを含む混合物、1,3,5−トリフェニルペンタン、およびその構造異性体を含む少なくとも約0.005重量%〜約5重量%の前記混合物を含み、式CHCHCH(Ph)CHCHPh(1−トリル−2,4−ジフェニルブタン)によって表される化合物が挙げられる、混合物、1,3,5,7−テトラフェニルヘプタン、および少なくとも約0.005重量%〜約5重量%のその構造異性体を含み、式CHCHCH(Ph)CHCH(Ph)CHCHPh(1−トリル−2,4,6−トリフェニルヘキサン)によって表される化合物が挙げられる、混合物、1,3,5,7,9−ペンタフェニルノナン、および少なくとも約0.005重量%〜約5重量%のその構造異性体を含み、式CHCHCH(Ph)CHCH(Ph)CHCH(Ph)CHCHPh(1−トリル−2,4,6,8−テトラフェニルオクタン)によって表される化合物が挙げられる、混合物、が挙げられるが、これに限定されない。
【0033】
特定の付加物およびその付加物の1つもしくは複数の構造異性体を含む、さらに他の好適な付加物の混合物には、1−フェニル−3−(o−トリル)プロパン、および少なくとも約0.005重量%のその構造異性体を含む混合物、1−フェニル−3−(m−トリル)プロパン、および少なくとも約0.005重量%のその構造異性体を含む混合物、1−フェニル−3−(p−トリル)プロパン、および少なくとも約0.005重量%のその構造異性体を含む混合物、1−フェニル−3−(p−tert−ブチルフェニル)プロパン、および少なくとも約0.005重量%のその構造異性体を含む混合物、1−フェニル−3−(p−エチルフェニル)プロパン、および少なくとも約0.005重量%のその構造異性体を含む混合物、1−(o−イソプロピルフェニル)−3−(p−トリル)プロパン、および少なくとも約0.005重量%のその構造異性体を含む混合物、1−フェニル−3−(2,4,6−トリメチルフェニル)プロパン、および少なくとも約0.005重量%のその構造異性体を含む混合物、1−フェニル−3−(1−ナフチル)プロパン、および少なくとも約0.005重量%のその構造異性体を含む混合物、1−フェニル−3−(2−ナフチル)プロパン、および少なくとも約0.005重量%のその構造異性体を含む混合物、が挙げられるが、これに限定されない。より好ましくは、少なくとも約0.005重量%〜約5重量%の前記混合物は、前記化合物の少なくとも1つの構造異性体を含む。
【0034】
第3のプロセス実施形態は、2つ以上の付加物と、1つもしくは複数のオリゴマーと、を含む、生成物混合物を調製するプロセスであり、混合物には、実質的にポリマーが無い。これらの混合物の個々の付加物およびオリゴマーは、下記の式によって表すことができ、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Ar、独立して各Ar′、および独立して各Rは、上記に定義されているものであり、nは、0〜24の範囲の整数であり、該プロセスは、
1)
a) 反応器内に導入される成分B)の総量が、反応器内に導入される成分A)の
量に対して約5〜約100モルパーセントの範囲、好ましくは約5〜約70
モルパーセントの範囲であり、成分B)の擬定常状態濃度が、成分B)の全
て、または実質的に全ての送給中にゼロを超え、成分B)の擬定常状態濃度
が、ポリマー形成の最小化の有無に関わらず、オリゴマーを形成するように
維持され、反応器の内容物を、約85℃〜約130℃の範囲、好ましくは約
85℃〜約120℃の範囲の1つもしくは複数の温度に維持するような速度
、または
b) 反応器内に導入される成分B)の量に対する、反応器内に導入される成分A
)の総量が、成分B)の約5〜約100モルパーセントの範囲、好ましくは
約5〜約50モルパーセントの範囲であり、成分B)の擬定常状態濃度が、
ポリマー形成の最小化の有無に関わらず、オリゴマーを形成するように維持
され、反応器の内容物を、約80℃〜約130℃の範囲、好ましくは約85
℃〜約130℃の範囲の1つもしくは複数の温度に維持するような速度に、
成分B)の送給速度が維持されること、
2) 成分B)の擬定常状態濃度が、成分B)の全て、または実質的に全ての送給中にゼ
ロを超え、成分B)の擬定常状態濃度は、オリゴマーを形成し、一方で、ポリマー
形成を最小化するように維持されること、および
3) 反応器の内容物が、約90℃〜約130℃の範囲の1つもしくは複数の温度で維持
されること、を除いて、上述したように、第1のプロセス実施形態にある。
ポリマー形成は、反応生成物の粘度の差速を増加させることによって、および熱伝達の差速によって検出することができる。経時的な粘度の変化、および経時的な熱伝達の変化に対する送給速度を調整することで、ポリマー形成を減少させる、または最小化することができる。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、本発明のプロセス技術によって産生できる、2つ以上の付加物および1つもしくは複数のオリゴマーを含む、新規かつ有用な混合物が提供される。これらの混合物のこのような個々の付加物およびオリゴマーは、以下の式によって表すことができ、

Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′

式中、Ar、独立して各Ar′、および独立して各Rは、上記に定義されたようなものであり、nは、0〜24の範囲の整数である。nの好適な値は、約1〜約20の範囲であり、より好ましくは、nは、約1〜約9の範囲である。これらの混合物のうちの少なくともいくつかから、単離される部分が、nの値が連続番号、例えば1〜3、1〜4、1〜5、1〜6等、である成分を含むように、特定の部分を(例えば、蒸留によって)単離することができる。好適な混合物は、混合物の少なくとも35重量パーセント、より好ましくは少なくとも約50重量パーセントが、nが1〜約5の範囲である成分で構成されるものである。他の好適な混合物は、混合物の少なくとも20重量パーセント、より好ましくは少なくとも約35重量パーセントが、nが1〜約3の範囲である成分で構成されるものである。
【0036】
本発明の第4のプロセス実施形態は、付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーを含む、生成物混合物を調製するプロセスである。これらの混合物の個々の付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーは、以下の式によって表すことができ、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′

式中、Ar、独立して各Ar′、および独立して各Rは、第1のプロセス実施形態で上記に定義されているものであり、nは、0〜79の範囲の整数であり、該プロセスは、
1) 反応器内に導入される成分B)の総量が、反応器内に導入される成分A)の量に対
して約5〜約100モルパーセントの範囲、好ましくは約5〜約70モルパーセン
トの範囲であり、成分B)の擬定常状態濃度が、成分B)の全て、または実質的に
全ての送給中にゼロを超え、成分B)の擬定常状態濃度が、ポリマー形成の最小化
の有無に関わらず、オリゴマーを形成するように維持され、反応器の内容物が、約
85℃〜約130℃の範囲、好ましくは約85℃〜約120℃の範囲の1つもしく
は複数の温度に維持するような速度、または
2) 反応器内に導入される成分B)の量に対する、反応器内に導入される成分A)の総
量が、成分B)の約5〜約100モルパーセントの範囲、好ましくは約5〜約50
モルパーセントの範囲であり、成分B)の擬定常状態濃度が、ポリマー形成の最小
化の有無に関わらず、オリゴマーを形成するように維持され、反応器の内容物を、
約80℃〜約130℃の範囲、好ましくは約85℃〜約130℃の範囲の1つもし
くは複数の温度に維持するような速度に、成分B)の送給速度が維持されること、
を除いて、上述したように、第1のプロセス実施形態にある。
ポリマー形成が生じ、反応器の内容物は、約80℃〜約130℃の範囲、好ましくは約85℃〜約105℃の範囲の1つもしくは複数の温度である。このプロセスにおいて、成分B)の擬定常状態濃度は、少なくとも一部のオリゴマー形成を犠牲にして、ポリマーを形成するように維持され、ポリマー形成は、反応生成物の粘度の差速を増加させることによって、および熱伝達の差速によって検出することができる。ポリマー形成は、経時的な粘度の変化、および経時的な熱伝達の変化に対する送給速度を調整することによって、増加(最大化)または減少(最小化)させることができる。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーを含む、新規かつ有用な混合物が提供される。これらの混合物の個々の付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーは、以下の式によって表することができ、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′

式中、Ar、独立して各Ar′、および独立して各Rは、上述で定義されるように第1のプロセス実施形態にあり、nは、0〜79の範囲の整数である。
【0038】
本発明の反応混合物は、液相が必要である。成分A)、B)、C)、およびD)の選択時に、所望するよりも高い粘度、または所望するよりも高い固形分を有する混合物が形成される場合は、より多くの流体反応混合物を提供するように、適切に少量の好適な溶媒を使用することができる。
【0039】
好ましくは、第1および第2のプロセス実施形態は、あらゆる添加溶媒の非存在下で、または反応混合物の総重量に基づいて、最高で約10重量パーセントの飽和脂肪族炭化水素溶媒の存在下で行われる。このような量の飽和脂肪族炭化水素溶媒は、(a)有機リチウム試薬を可溶化するために従来使用される溶媒、および/または(b)成分B)の反応器内への送給時に使用される、さらなる量の飽和脂肪族炭化水素溶媒を含む。本発明の第3および第4のプロセス実施形態の実行では、粘度低下溶媒、好ましくは、芳香族環1個あたり1単位のベンジルメチレンを有する溶媒、特に、エチルベンゼンおよび/または1,3−ジフェニルプロパンを利用することが好ましい。プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、およびイソブチルベンゼンも、反応混合物の粘度を低減するのに有用であり、これらは、適度なコストの商品である。したがって、粘度の低減での使用に好適な溶媒は、エチルベンゼン、1,3−ジフェニルプロパン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、またはイソブチルベンゼン、あるいは、これらのうちのいずれか2つ以上の混合物である。エチ
ルベンゼンまたは1,3−ジフェニルプロパン、あるいはそれらの混合物は、本発明の実行で使用するためのより好適な溶媒を構成する。ベンジルメチレン単位は、溶媒が、成分A)に類似する連鎖移動剤として化学反応に関与できるようにするが、推定されるように、そのような炭化水素のベンジルメチレンプロトンのpKが増加するため、推定されるように、その程度は、より小さいことに留意されたい(ベンジルプロトンのpKが41であるのと比較して、エチルベンゼンのベンジルプロトンの場合、pKは43であることを想起されたく、それぞれ、Hsieh and Quirk、p.100およびp.40を参照されたい)
【0040】
したがって、例えば、エチルベンゼンは、溶媒として添加した時に、本発明のプロセスに関与する程度が小さく、少ない割合の付加物、付加物とオリゴマー、および付加物とオリゴマーとエチルベンゼン由来の末端基(−CHMePh)を有する低分子量ポリマーを、生成物混合物またはその臭素化誘導体の性能に対して悪影響を及ぼさずに作製することができる。プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、および/またはイソブチルベンゼンを該溶媒として使用した時には、同様の挙動および類似した微量の共生成物が予想される。1,3−ジフェニルプロパンの場合、成分A)がトルエンで、成分B)がスチレンである場合、付加物、付加物とオリゴマー、および付加物とオリゴマーと1,3−ジフェニルプロパンおよびスチレンから形成される低分子量ポリマーは、トルエンおよびスチレンから形成される生成物と化学的に同一であり、したがって、添加溶媒としての1,3−ジフェニルプロパンの使用は、いかなる異なる最終生成物の生成ももたらさない。芳香環1個あたり1個のベンジルメチレン単位を有する溶媒の量は、総反応混合物の約5〜約50重量パーセントの範囲とすることができ、総反応混合物の約10〜約35重量パーセントの範囲の量が好適である。これらの範囲外の溶媒の充填は、本発明の範囲内であるが、そのような充填は、効果的ではなく、および/または経済的でないことが予想される。溶媒の添加方法は、概して、選択および利便性の問題であり、どのような状況においても、最適化のための変数として機能することができる。
【0041】
反応混合物の粘度を低減するために使用することができる他の溶媒は、メチルシクロヘキサン、クメン、およびtert−ブチルベンゼン等の溶媒であり、これらの溶媒は、分子中にベンジルメチレン単位を含まない。しかしながら、これらのような溶媒の使用において、その量は、連鎖移動プロセスが物質的に阻害されず、結果として、高い非対称性の分子量分布を持つ、より高い分子量のポリマーの形成をもたらすように制限されるべきである。テトラヒドロナフタレンおよびジエチルベンゼンは、反応混合物の粘度を低減するために使用することができる、例示的な別のタイプの溶媒である。この場合、そのような溶媒の分子構造は、芳香環1個あたり2個以上のベンジルメチレン単位を含む。このような特徴は、生成物中の分岐をもたらし、また、分岐または非線形構造、およびより幅の広い分子量分布の形成をもたらす。この段落で論じた、上述の溶媒の分子構造特性に照らして、そのような溶媒を反応混合物の粘度の低減に利用する時には、そのような溶媒の量を制限することが望ましい。反応混合物の粘度の制御には、総反応混合物の最高で約10重量パーセントの範囲の量を使用することが推奨される。
【0042】
反応混合物の粘度を低減するために使用することができる、芳香環1個あたり1個のベンジルメチレン単位しか含まない、さらに別の溶媒は、1,2−ジフェニルエタンである。この溶媒は、構造が1,3−ジフェニルプロパンと類似しているが、本発明のプロセスで産生される生成物の分子構築を変化させることができ、したがって、本発明のオリゴマーまたは低分子量ポリマーの生成に使用する時には、総反応混合物の最高で約10重量パーセントの範囲の量で使用されるべきである。1,2−ジフェニルエタンが本発明の実行に使用される場合、例えば以下の式の構造を有する、オリゴマー混合物および/または低分子量ポリマー混合物が産生される可能性があることに留意されたい。
Ar′−CHR[−CHCR(Ar′)]−CHPh−CHPh−[−CHCR(
Ar′)]−CHCHRAr′
PhCH−CHPh−[−CHCR(Ar′)]−CHCHRAr′
式中、Ar′、R、n、およびmは、本願明細書に記載されているものであり、Phは、フェニル基である。
【0043】
本願明細書のいずれかの場所に表される式のそれぞれにおいて、nが1もしくはそれ以上である時、Rは、好ましくは、メチル基ではなく水素原子である。Rが水素原子である時、いかなる第4級炭素原子も分子の主鎖内に無く、Rがメチル基である時、第4級炭素原子は、分子の主鎖内に存在する。したがって、分子の主鎖は、第4級炭素原子を含まないことが好ましい。分子の主鎖が第4級炭素原子を含まない化合物は、特定の状況下での、特にルイス酸触媒による臭素化中の脱アルキルに関して、より安定している。このような臭素化中の脱アルキル反応は、望ましくない臭素化芳香族炭化水素の形成をもたらす。
【0044】
本発明の1つの特徴は、本発明のプロセス技術が、付加物で、または付加物とオリゴマーの混合物で、あるいは付加物とオリゴマーと低分子量ポリマーの混合物で富化され、それらの全てが、液相臭素化のための原材料としての使用に非常に適している反応生成物の生成を可能にし、それによって、種々の基質のための効果的な添加物難燃剤を提供する。さらに、付加物およびオリゴマーは、蒸留または他の方法(例えば、分別沈殿)によって、それほど多くの問題を伴わずに、互いに分離させ、次いで、液相臭素化に供することができ、それによって、異なる難燃剤を異なる最終用途に提供する機会を提供する。(i)付加物、(ii)オリゴマー、(iii)低分子量ポリマー、または(iv)(i)および(ii)の混合物、または(i)、(ii)、および(iii)の混合物の臭素化は、好ましくは、鉄に基づく臭素化触媒またはアルミニウムに基づく臭素化触媒を使用して行われるが、1つもしくは複数の他の既知のルイス酸臭素化触媒(例えば、ハロゲン化アンチモン等)を使用することができる。付加物およびより低分子量臭素化オリゴマーは、それぞれ、イソプロピル化フェニルリン酸等の、液体アルキルリン酸エステル中に容易に溶解し、それによって、臭素およびリンを含む液体難燃剤添加生成物を提供する。このような混合生成物は、難燃剤として、特にポリウレタンおよびポリウレタン泡沫での使用に好適である。
【0045】
上述のように、特定のタイプの生成物で富化される反応生成物を産生するために制御される、主要な反応条件は、モノメチル芳香族化合物、ビニル芳香族反応物、有機リチウム開始剤、および錯体化リガンド間の、およびそれらのうちの割合、反応の温度、および反応物が1つに統合される速度、である。
【0046】
本発明に従って産生できるオリゴマーおよびポリマー混合物に関しては、上述の構造を有し、約1.1〜約4.0の範囲の、好ましくは約1.1〜約3.0の範囲の、より好ましくは約1.1〜約2.5の範囲の多分散性を有し、いずれの場合も、約60〜約2100ダルトンの標準偏差、および約−4.5〜約4.5の範囲のαを有するものである。より具体的には、本発明に従って産生できる好適なオリゴマー混合物は、約1.1〜3.0の範囲の多分散性を有し、好ましくは約60〜約1600ダルトンの範囲の標準偏差、および約−4.5〜約4.5の範囲の非対称性を有する。本発明に従って産生できる好適なポリマー混合物は、約1.2〜約3.0の範囲の多分散性を有し、好ましくは約160〜約2100のダルトンの標準偏差、および約−4.5〜約4.5の非対称性を有する。このような混合物は、それらが混合される、または物理的に組み込まれる種々のポリマー中で、このようなオリゴマーおよびポリマー混合物から調製される臭素化難燃剤の互換性の理由から好適である。現在知られている限りでは、このようなオリゴマーおよびポリマー混合物は、これまで産生されておらず、また触媒量の有機リチウム開始剤を使用して、1段反応で上述の分子量分布特性を有する、このようなオリゴマーまたはポリマー混合物を直接的に合成することができる技術は、これまで知られていなかった。
【0047】
本発明のプロセス技術を使用した、付加物、付加物とオリゴマーの混合物、または付加物とオリゴマーと低分子量ポリマーの混合物の形成では、一般的に、少量の環アラルキル化生成物が形成されることに留意されたい。そのような環アラルキル化生成物の量は、一般的に、モノメチル芳香族炭化水素から産生される側鎖アラルキル化生成物、すなわち、本プロセスで使用される成分A)の総量の5モルパーセント未満、より通常的には2モルパーセント未満である。このような環アルキル化生成物の特徴は、このような材料の最も単純な部分によって例証される。このような環アルキル化生成物は、以下の式によって表される1つもしくは複数の生成物を含むことができ、
CHCHCHAr′
CH(CHCHAr′−)CHCHAr′
Ar′CHCH(Ar′CHCHCH(CHCHAr′−)
CHCHAr′
式中、各Ar′は、上述したように、独立的なものであり、nは、整数であり、mは、整数または分数であり、mとnとの合計は、78以下である。混合物が、2つ以上の付加物および1つもしくは複数のオリゴマーを含む時、少なくとも約0.005重量%〜約5重量%未満の混合物は、以下の式によって表される部分から成り、
CHCHCHAr′
CH(CHCHAr′−)CHCHAr′
Ar′CHCH(Ar′CHCHCH(CHCHAr′−)
CHCHAr′
式中、Ar′は、独立して芳香族炭化水素部分であり、nは、整数であり、mは、整数または分数であり、mとnとの合計は、約24以下である。
【0048】
商品として、スチレン等のビニル芳香族化合物は、ジ−tert−ブチルカテコール等の阻害剤を含む。このような阻害剤は、有機リチウム触媒と反応し、触媒の利用を低減する。これらの阻害剤は、水酸化リチウム洗浄がプロセスの生成物に行われる時に、エマルジョンの形成も生じさせる。したがって、このような阻害剤は、本発明の実行に使用する前に、成分B)から除去されることが推奨される。ジ−tert−ブチルカテコールによって阻害されるビニル芳香族化合物の場合、ビニル芳香族化合物を反応器内に送給する前に、ビニル芳香族化合物を酸化アルミニウムに通すことで、このような精製をもたらす。代替として、シリカゲル、および種々のイオン交換樹脂等の他の好適な吸着剤を、ジ−tert−ブチルカテコールの除去に使用することができる。かかる化合物は、貯蔵容器内で重合を行なうことができるので、阻害されていないビニル芳香族化合物を貯蔵しようとしないことが望ましい。
【0049】
当業者は、該反応が、有機リチウム成分が本発明の実行時に伴うのと同じ量で、貴ガス、窒素、および軽質炭化水素、またはこれらの材料のうちのいずれか2つ以上のあらゆる混合物を含む、不活性雰囲気中で行われるべきであると、認識することができるであろう。少量のリチウム試薬が使用されることを考慮すると、乾燥試薬、乾燥ガス、および酸素および二酸化炭素を含まない、または実質的に含まないガスおよび試薬を有することが重要である。
【0050】
本発明のプロセスの実行において、成分を所望の割合で反応器内に充填することができる、多数の方法が存在する。本発明の実行で使用することができる、このような添加方法の限定的でない実施例には、以下のものが挙げられる。
1) 成分B)は、反応温度またはそれに近い温度で、A)、C)、およびD)から形成
される混合物を含む反応器に送給されるが、該混合物は、好ましくは、A)、C)
、次いでD)の順番で、約80℃を下回る温度で、反応器に充填することによって
形成される。
2) 成分B)は、反応温度またはそれに近い温度で、最初にA)を充填し、次いでC)
のモル量の5倍を超えない量のB)の一部、次いでC)を充填し、次いでD)を充
填することによって形成される混合物を含む反応器に送給されるが、該混合物は、
好ましくは、80℃を下回る温度で形成される。
3) 成分A)、B)、C)、およびD)は、反応温度またはそれに近い温度で、好まし
くは約80℃を下回る温度で、A)の一部、C)の一部、およびD)の一部から形
成される混合物を含む反応器に送給される。セミバッチ反応器の場合、最初に、A
)の所望の総量のうちの少量を充填することが望ましく、該少量は、少なくとも、
機械的に撹拌される反応器内の撹拌羽根に到達するのに必要な量、またはポンプア
ラウンドループを備える反応器内の撹拌を達成するのに必要な量である。次いでC
)、その後にD)が充填され、そのように充填されるC)およびD)の総量は、充
填されるC)およびD)の総量の約10〜約50パーセントの範囲、好ましくは、
充填されるC)およびD)の総量の約20〜約40パーセントの範囲である。連続
逆混合反応器の場合、開始時に、A)、C)、およびD)の所望の相対的割合が達
成されるように、最初に、約25〜約100パーセントの成分A)を充填し、C)
およびD)を総量充填することが望ましい。次に、A)、B)、C)、およびD)
は、それらの所望の相対的割合で、定常速度で連続的に反応器に送給され、平均滞
留時間は、約5分〜約60分の範囲である。この段落3)に記載した送給方法のそ
れぞれにおいて、成分A)、B)、C)、およびD)は、C)を含む送給の形成時
にC)と組み合わせられるB)の量が、C)のモルの約5倍を超えてはならないこ
とを除いて、個々に、またはあらゆるサブ・コンビネーションで、反応器に連続的
に送給される。
4) 成分B)、C)、およびD)は、反応温度またはそれに近い温度で、A)、C)、
およびD)から形成される反応混合物に送給されるが、該混合物は、好ましくは、
約80℃を下回る温度である。このような混合物は、成分A)の全て、成分C)の
一部、および成分D)の一部から形成される。このような混合物の形成では、最初
にA)、次いでC)、その後にD)を充填し、そのように充填されるC)およびD
)の総量は、充填されるC)およびD)の総量の約10〜約50パーセントの範囲
、好ましくは、充填されるC)およびD)の総量の約20〜約40パーセントの範
囲であることが望ましい。成分B)、C)、およびD)は、オリゴマーおよび/ま
たはポリマーで富化される生成物を産生する時に、C)を含む送給の形成時にC)
と組み合わせられるB)の量が、C)のモルの約5倍を超えては成らないことを除
いて、個々に、またはあらゆるサブ・コンビネーションで、反応器に連続的に、ま
たは徐々に送給される。付加物を産生する時、C)を含む送給の形成時にC)と組
み合わせられるB)の量は、C)モルの約2倍を超えてはならず、好ましくは、C
)に対するB)のモル比は、1:1またはそれ以下である。
5) 成分A)およびB)は、反応温度またはそれに近い温度、好ましくは80℃を下回る温度で、A)の一部、C)の全て、およびD)の全てから形成される混合物を含む反応器に送給される。最初に、A)の所望の総量のうちの少なくとも一部を充填することが望ましく、該一部は、少なくとも、機械的に撹拌される反応器内の撹拌羽根に到達するのに必要な量、またはポンプアラウンドループを備える反応器内の撹拌を達成するのに必要な量である。また、A)の量が、A)のその一部、C)の全て、およびD)の全てから形成される、均一な、または少なくとも実質的に均一な反応混合物を有するのに十分であることも望ましい。成分A)およびB)は、個々に、またはあらゆるサブ・コンビネーションで、連続的に、または徐々に反応器に送給される。
上述の添加方法は、独立した操作で、または連続して行われる操作で利用することができる。例えば、連続逆混合反応器は、バッチ反応器またはセミバッチ反応器内にオーバーフローさせることができる。また、連続逆混合反応器は、一連の連続逆混合反応器を伴うことができる。例えば連続栓流反応スキームといった、他の添加方法の変形例は、本開示によって、当業者には容易に明らかになり、主張される本発明の範囲内にある。
【0051】
反応器内の成分C)およびD)の総量の平均寿命が低減されるので、上述の添加方法のうち、成分C)およびD)が少なくとも成分B)とともに送給される、3)および4)の添加方法が好ましい。これらの添加方法は、より多くの定常状態触媒活性をもたらす。
【0052】
少量の成分B)が、成分C)または成分C)およびD)から形成される錯体の導入前に、反応器内に存在し得る場合があることを理解および認識されるであろう。例えば、再利用によって行われるプロセス操作での反応が不完全である場合、ある量のB)が、再利用した成分A)中に含まれ得る。別の実施例では、A)の水分が排除される時点を特定するように、少量のB)が、手順の一部として、成分C)の導入前に、少なくともA)を含む反応器内に意図的に導入される。このような手順では、成分C)をわずかに増加させて添加することによって水が消費された後に、ポリスチリルリチウムの特性である赤色が現れ、無水状態が達成されたことを示すエンドポイントとしての役割を果たす。これらの実施例の一方または両方では、付加物を作製する時に、最初に充填されるC)のその一部に対するB)のモル比は、1:1またはそれ以下にしなければならない。また、オリゴマーおよび/またはポリマーで富化される混合物を作製する時、B)の量は、最初に充填されるC)のその一部の量の5倍未満でなければならない。この段落で説明される状況は、工業規模で行われる工場操業において現実的に好都合な状況であり、したがって、本願明細書に主張される本発明の精神と範囲内にある。
【0053】
上述の1)〜5)に記載されたもの以外の送給手法を伴う操作方法を利用することが可能であるが、これらは、例示のために示されたものであり、限定するものではない。このような他の操作方法は、本開示を読み取ることで、当業者に明らかになるであろう。
【0054】
特定の状況では、オリゴマーおよび/または低分子量ポリマーで富化される材料が、成分B)に対して使用される成分A)の量を制限することによって産生され、C)およびD)の混合物が成分B)と同時に送給され、C)およびD)の混合物が1つになって不溶性の錯体を形成するが、これは、溶媒中でC)およびD)を組み合わせるのに望ましい。この目的のために、分子中で芳香環1個あたり1個のベンジルメチレン単位を有し、メチル基が無い、芳香族炭化水素溶媒を利用することが望ましい。この特定の状況での使用に好適であるこのタイプの溶媒には、約80℃を下回る温度で液体状態にあるもの、より好ましくは、約30℃を下回る温度で液体状態にあるものが挙げられる。いくつかのこのような溶媒の限定的でない例には、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、1,3−ジフェニルプロパン、およびこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物が挙げられる。
【0055】
C)およびD)は、独立して、または混合して導入するどの時点においても、それらを液面下に送給することが好ましい。これとは逆に、成分B)は、微粉化したミスト、スプレーとして、またはイソペンタン、シクロペンタン、ペンタン、ノルマルペンタン、低沸点石油エーテル等の軽質炭化水素中の溶液として、液体反応混合物の液面上に送給することが好ましい。このような軽質炭化水素の使用によるさらなる利益は、それらが、反応過程でリガンドの分解によって産生され得る揮発性アミンの除去を容易にすることである。例えば、このような軽質炭化水素が反応器から除去される時、それらが分留または単純な蒸留(フラッシング)を経て充填されるにつれて、揮発性アミンも除去される。代替として、添加されるA)またはより揮発性の高い溶媒が還流される場合、B)をA)の還流に添加することができる。
【0056】
本発明のプロセスの実行において、成分A)、B)、C)、およびD)の相対的割合は、所望の生成物を産生するように制御される。したがって、
− 概して、1つもしくは複数の付加物、または付加物とオリゴマーの混合物、あるい
は付加物とオリゴマーと低分子量ポリマーの混合物が形成されるプロセスにおいて、成分A):成分B)のモル比は、一般的に、約20:1〜約3:1の範囲、好ましくは、約10:1〜約4:1の範囲である。成分A):成分B)が一定のモル比である場合、比率が1:1に近くなるにつれて、より速い送給速度でのより高い分子量の材料の形成が有利である。これとは逆に、モノ付加物の形成は、最も遅い送給速度で形成される。
− 概して、生成物が、オリゴマーで富化される、またはオリゴマーおよびポリマーで富化される、あるいはポリマーで富化されるプロセスにおいて、成分A):成分B)のモル比は、一般的に、約1:1〜約1:20の範囲、好ましくは、約1:1〜約1:7の範囲である。一定の送給速度および一定の温度を使用すると、成分A):成分B)の比率が1:1に近くなるにつれて、より低い分子量の材料の形成が有利である。
− 概して、1つもしくは複数の付加物が産生される、または付加物とオリゴマーの混合物、あるいは付加物とオリゴマーと低分子量ポリマーの混合物が形成されるプロセスにおいて、成分B):成分C)のモル比は、一般的に、約10:1〜約500:1の範囲、好ましくは、約80:1〜約180:1の範囲、より好ましくは、約100:1〜約150:1である。(i)成分B):成分A)の一定のモル比、(ii)成分B)の一定の送給速度、および(iii)一定の温度を使用すると、成分B):成分C)の比率が10:1に近くなるにつれて、より低い分子量の材料の形成が有利である。これとは逆に、同じパラメータ(i)、(ii)、(iii)を一定に保持した時には、成分B):成分C)の比率が500:1に近くなるにつれて、より高い分子量の材料の形成が有利である。
− −概して、1つもしくは複数の付加物が産生される、または付加物とオリゴマーの混合物、あるいは付加物とオリゴマーと低分子量ポリマーの混合物が形成されるプロセスにおいて、成分B):成分D)のモル比は、一般的に、約10:1〜約500:1の範囲、好ましくは、約80:1〜約180:1の範囲、より好ましくは、約100:1〜約150:1の範囲であり、成分C):成分D)のモル比は、一般的に、約1:8〜約1:0.90の範囲、好ましくは、約1:1.1〜約1:0.9の範囲、より好ましくは、約1:1.05〜約1:0.95の範囲である。
【0057】
上述の成分から形成される反応混合物の温度は、50℃を上回る温度に、より望ましくは、約60℃〜約135℃の範囲とすべきであり、所望の生成物分布を産生するように、高い連鎖移動率が必要である時には、好ましくは、約105℃〜約115℃とすべきであり、これとは逆に、所望の生成物分布を産生するように、低減した連鎖移動率が必要である時には、温度は、好ましくは、約80℃〜約105℃の範囲である。このような温度の範囲外への短時間のエクスカーションは許容され、本発明の範囲内であり、このようなエクスカーションは、生じている所望の反応に物質的に干渉しない。
【0058】
以下に提示される実施例に示されるように、送給速度、相対的な成分のモル比、および反応温度は、全て相互依存変数であり、よって、それらのうちの1つを変化させ、一方で、他を一定に保持することで、本発明の範囲内の異なる生成物分布を産生する。これとは逆に、これらの変数のうちのいずれか2つ以上を変化させ、一方で、他を一定保持することで、ほぼ同一の生成物分布を産生することができる。したがって、以下に提示される実施例は、産業上実際的である範囲内で、あらゆる所与の生成物または生成物分布を産生するように、反応条件およびプロセスパラメータを確立するための優れたテンプレートを構成する。しかしながら、特定の生成物または生成物分布を産生するために必要なパラメータが完全に確立されていないどんな場合においても、このようなパラメータを開発するためには、実施例で与えられる情報に基づいて、いくつかの最適化実験を行えば十分である。
【0059】
ここでも理論に束縛されるものではないが、(少なくとも、以下の実施例において)競合反応速度に関して観察される結果を説明することができる。本発明の最も単純な実施形態において、最も単純な生成物は、以下の式によって表され、
ArCHCHCHAr′
その形成を最大化するために、連鎖移動剤の濃度に対するモノマー濃度を非常に低く保つことが重要である。これは、モノビニル芳香族炭化水素(例えば、スチレン)を、比較的に低い速度で、大過剰の連鎖移動剤(モノメチル芳香族化合物)に送給することによって達成される。生成物の形成速度、したがって、モノビニル芳香族炭化水素の消費速度は、開始剤濃度に対する関数依存性を示す。結果的に、第3級ポリアミンを錯体化した有機リチウム試薬の濃度が高くなるにつれて、モノビニル炭化水素の消費が早くなる。これは、実質的に、モノビニル芳香族炭化水素の濃度を低く保ち、したがって、付加物の形成と競合するように、連鎖移動反応を補助する。連鎖移動の速度は、温度の増加とともに増加する。連鎖移動の速度を最大化するために、プロセスは、実行可能な最高温度で実行される。温度の上限は、通常、第3級ポリアミンを錯体化した有機リチウム試薬の安定性に左右される。約115℃をはるかに超える温度において有機リチウム錯体の分解が生じ、連鎖停止プロセスに至る。
【0060】
経済的理由から、送給速度(プロセスを実行する時間)と,開始剤濃度(原材料のコスト)を伴うモノマー(例えば、モノビニル芳香剤炭化水素)および消費される連鎖移動剤(モノメチル芳香族化合物)の量(回収して再利用する取り組み)との、バランスをとるように選択することになる。
【0061】
本発明の反応は、全ての成分B)が消費された時に完了したものとみなされる。これは、プロトンNMRによって最も好都合に判断されるか、またはあまり好都合ではないが、ガスクロマトグラフィーを使用し、次いで、オリゴマーの無い1つもしくは複数の付加物の混合物が産生された時にだけ判断される。少量のスチレン(総反応混合物の最高で2重量%)が存在する場合―上述の番号1)および2)が付された追加方法で生じる場合もあり得る―、送給終了時に、成分C)の総量のうちの少量(1%〜5%の範囲で)、または成分C)および成分D)の混合物を充填して、反応を完了させることができる。一般的に、反応混合物と、例えば水および/またはアルコール等のプロトン性溶媒といった急冷剤とを接触させて、反応を終了させる。これは、急冷剤を、反応混合物を含む反応器にゆっくりと導入することによって行うことができる。代替として、反応混合物を、急冷剤および随意に溶媒を含む別の撹拌反応容器に移すことができる。鉱酸および有機酸の溶液も使用することができるが、エマルジョンを回避するために、酸の水相のpHが約5またはそれ以上であることを推奨する。
【0062】
概して、幾分異なる取り扱い手順が推奨される2つの状況が存在する。
1) 成分B)に対して大きなモル量の成分A)を使用して反応混合物が形成される場合、または大量の(総質量の約25重量%を超える)添加溶媒(例えば、エチルベンゼンまたは1,3−ジフェニルプロパン)が採用された場合は、概して、反応混合物を、窒素雰囲気および水を含む機械的に撹拌される反応容器に移すことが好都合である。最初の水の充填は、成分A)、成分B)、およびあらゆる添加溶媒の組み合わせ質量の約5%〜約50%、好ましくは、約15%〜約25%とすべきである。結果として生じた2相反応混合物は、概して約0.25時間〜約1.0時間、約70℃〜約90℃で撹拌される。撹拌は中断され、水相が除去される。この洗浄手順は、一般的に、有機相中の水酸化リチウムの濃度が50ppm未満に低減されるまで、1回もしくは複数回繰り返される。本質的に透明な有機相の形成、およびpH10未満の水性洗浄は、有機溶液がリチウムを含まないことを示す。次いで、成分A)および/または添加溶媒を回収するように、反応塊が減圧下で取り除かれる。
2) オリゴマーで富化される、または低分子量ポリマーで富化される混合物が、成分A)の限られた分量(一般的に、成分B)に対する成分A)のモル比が、約1:1を超える)を使用して産生され、総反応質量の約25重量%未満の分量で添加溶媒を伴う本発明の場合では、反応混合物を、溶媒中の産生物の約50重量%〜約25重量%の溶液を作製す
るのに十分な炭化水素溶媒を含む、機械的に撹拌される反応器へ移すことが好都合である。いかなる添加溶媒も使用されず、成分A)がトルエンである場合は、トルエンが最適な溶媒である。エチルベンゼンが添加溶媒であった場合には、エチルベンゼンが好適な溶媒となる。他の好適な炭化水素溶媒には、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンが挙げられる。反応混合物を移す前に、溶媒のほかに、撹拌される容器に水を充填する場合に好都合である。最初の水の充填は、成分A)、成分B)、およびあらゆる添加溶媒の組み合わせ質量の約5%〜約50%、好ましくは、約15%〜約25%とすべきである。結果として生じた2相反応混合物は、概して約0.25時間〜約1.0時間、約70℃〜約90℃で撹拌される。撹拌は中断され、水相は除去される。この洗浄手順は、有機相中の水酸化リチウムの濃度が50ppm未満に低減されるまで、1回もしくは複数回繰り返される。本質的に透明な有機相の形成、およびpH10未満の水性洗浄は、有機溶液がリチウムを含まないことを示す。次いで、成分A)の大部分、全ての添加溶媒を回収するように、反応塊が減圧下で取り除かれる(終了条件は、概して、230℃、および5mmHg未満である)。
【0063】
付加物で富化される材料を取り扱うのに、バッチまたは連続操作のいずれかで、真空蒸留によって低沸点の付加物を単離させることが好都合である。好適な方法は、ワイプド薄膜蒸発器(wiped film evaporator:WFE)または一連のワイプド薄膜蒸発器を採用する。付加物で富化した材料を0.5mmHg未満、および約280℃〜約300℃で動作するWFEに通すことによって、1つの蒸留画分として、付加物で富化した材料から、nが0〜3に等しい付加物を塔頂で除去することができる。より軽い付加物の富化された分級物(cut)の単離は、蒸留画分を、室温で、WFEに通す(または、WFEが連続している時は、さらなるWFEに通す)ことによって達成することができる。いずれか1つの付加物で大幅に富化された分級物を提供する、送給速度、装置の表面積、真空、および温度を含む条件は、容易に特定することができる。重端(heavy end)、すなわち未蒸留の材料は、主に、nが4〜7である付加物、またはnが4〜12である付加物およびオリゴマーから成る。WFEから得られる、nが0〜3である付加物のさらなる精製は、減圧下での分別蒸留によって達成することができる。
【0064】
オリゴマーおよび/または低分子量ポリマー(すなわち、付加物とオリゴマーの混合物、または付加物とオリゴマーと低分子量ビニル芳香族ポリマーの混合物)で富化される材料の取り扱いについて、混合物からの溶媒のさらなる除去は、1)材料を、高温(約220℃〜約260℃、好ましくは約220℃)の窒素、または他の不活性ガスの対向流とともに、高温で、流下薄膜としてカラムを通すステップ、2)材料を、高温および減圧下で、ワイプド薄膜蒸発器に通すステップ、3)材料を脱蔵押出機に通すステップ、または4)低分子量分子から巨大分子(オリゴマーおよびポリマー)を分離するのに好適な膜を使用して、限外濾過するステップ、あるいは5)材料を融解物として、十分に撹拌した(高せん断)有機抗溶剤(例えば、メタノール)中に導入することを通じてオリゴマーおよびポリマーを沈殿させ、次いで、沈殿したポリマーを濾過またはデカンテーションによって収集するステップ、を含む。オプション5)は、オリゴマーおよび/または低分子量ポリマーで富化される材料のさらなる取り扱いにはあまり好適ではない手法である。
【0065】
オリゴマーおよび付加物の互いからの分離は、好ましくは、蒸留によって達成される。該蒸留の実行において、あらゆる低沸点の成分、例えば未反応のトルエンまたは他の比較的に低沸点のモノメチル芳香族の炭化水素反応物は、最初に、混合物から除去される。次の高位の画分は、一般的に、より低い分子量の付加物、例えば、1,3−ジフェニルプロパン、1,3,5−トリフェニルペンタン、および芳香環のうちの1個もしくは複数個に少なくとも2個の炭素原子を含む1もしくは複数個の低アルキル置換基(例えば、エチル、プロピル、または類似の低級アルキル)を含む、これらの類似体を伴う。蒸留ポットの残留物は、本発明のオリゴマーのうちの少なくとも1つ、および一般的に、その混合物で
ある。蒸留は、分離を生じさせる好適な方法であるが、そのような分離が所望される時に、クロマトグラフィーまたは溶媒抽出法等の他の手順を、分離を行うために使用することができる。臭素化前に、付加物とオリゴマーとの分離を行う代わりに、軽蒸留を使用して、未反応のトルエン、または比較的に低沸点のモノメチル置換芳香族炭化水素反応物等の、あらゆる軽留分(light end)を除去することができる。本発明の付加物およびオリゴマーの残りの混合物は、次いで臭素化に供することができる。ここでも、結果として生じた臭素化混合物は、ポリマー、樹脂、および被覆に使用するための、臭素化難燃剤添加物として使用することができる。
【0066】
蒸留を伴わずに材料が産生および単離される全ての場合において、臭素化の前に、溶液を、酸性形態の強酸性カチオン交換樹脂に通すことによって、材料を溶媒中に溶解した後に、微量アミン不純物を除去することが好都合である。酸性アルミナまたはシリカゲル等の、アミンのための他の吸着剤を採用することができる。材料を臭素化する時には、材料を、臭素化に使用される溶媒中に溶解させ、次いで、カチオン交換樹脂または他の吸着剤に通すことができる。
【0067】
本発明のモノ付加物の限定的でない実施例を表1に示す。表1に示されているモノ付加物は、表中の、左側縦列の特定の成分A)と、最上列の特定の成分B)の特定の成分との反応時に形成され、これらのモノ付加物は、単離することができる。例えば、スチレンとトルエンとの反応時に、反応の初期に分離可能な生成物は、1,3−ジフェニルプロパン(すなわち、表1中でトルエンとスチレンとが交差する、表1のセクションに示されている化合物)である。置換メチルベンゼンおよび/または置換スチレンが採用される(すなわち、下記表1中のメチルベンゼンおよびモノビニル芳香族炭化水素において、各Rが、独立して、少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル基である)時に、より複雑な1,3−ジアリルプロパンが、本発明によって形成される。表1は、単に、本発明の実行によって産生できるモノ付加物のうちのいくつかを示しているものと理解されるであろう。さらに、臭素化難燃剤を作製するために、反応の初期生成物のフェニル基の一方または両方の最高で合計4つの位置を、立体障害がこのような置換を可能にする限り、1〜4個の範囲の炭素原子を有するアルキル基で占めることができる。臭素化難燃剤がこれらの生成物に対する使用に所望されない場合、立体障害がこのような置換を可能にする限り、反応の初期生成物のフェニル基の一方または両方の5つ全ての位置を、1〜4個の範囲の炭素原子を有するアルキル基で占めることができる。
【表1】

【0068】
オリゴマーおよび付加物は、蒸留等によって互いに分離されるか、または混合物のままであるかに関わらず、臭素化、およびその結果として生じた難燃剤添加物および難燃性ポリマーおよび樹脂組成物、のための原材料として特に有用である。付加物およびオリゴマーが互いに分離された時、付加物およびオリゴマーを、次いで、ポリマー、樹脂、および被覆で使用するために有効な難燃剤化合物を調製するように、臭素化に供することができる。
【0069】
次いで、芳香族環に対して臭素化を生じさせるための臭素化条件を使用して、このよう
な有用な臭素化難燃剤生成物を形成することができる。したがって、反応は、一般的に、芳香族の臭素化に好都合であるように、暗所(すなわち、光が全く無い状態で)で行われる。加えて、臭素化反応は、しばしば、液体ハロゲン化溶媒の存在下で行われ、その限定的でない例には、ブロモクロロメタン、ジブロモメタン、1,2−ジブロモエタン、1,1−ジブロモエタン、および1,2−ジクロロエタンが挙げられる。
【0070】
臭素化剤は、通常、臭素(Br)または塩化臭素(BrCl)である。好ましくは、臭素化は、液体状態の臭素を使用して行われる。使用される臭素化剤の量は、約45重量パーセント以上の臭素含量を有する臭素化オリゴマー生成物を産生するのに十分な量とするべきであり、すなわち、臭素化オリゴマー生成物は、少なくとも約45重量%の臭素を含むべきである。好適な難燃剤オリゴマーは、一般的に、約45〜約65重量%の範囲の臭素、より好ましくは、約55〜約60重量%の範囲の臭素を含む。臭素化付加物の臭素含量は、一般的に、約35重量%〜約72重量%の範囲、好ましくは、約45重量%〜約68重量%の範囲である。
【0071】
臭素化は、一般的に、ルイス酸臭素化触媒の存在下で行われる。有効なルイス酸臭素化触媒の限定的でない例には、例えばAlCl、AlBr、AlBrClまたはAlClBr等のハロゲン化アルミニウム、またはFeClまたはFeBr等のハロゲン化第2鉄が挙げられる。代替として、臭素化反応器には、箔、粉末、削り屑、剥片、やすり屑等の形態のアルミニウム金属を充填することができる。同様に、鉄由来の触媒が使用される時、該反応器には、鉄屑、鉄の削り屑等を充填することができる。アルミニウム金属または鉄金属は、臭素の存在下で、臭化アルミニウム種または第2鉄臭化物種に変換される。
【0072】
臭素化は、一般的に、約20℃〜約70℃の範囲の1つもしくは複数の温度で行われる。ハロゲン化アルミニウム触媒反応を使用した連続または半連続臭素化の場合、約−10℃〜約20℃の範囲の1つもしくは複数の温度が好ましい。一般に「臭素の海(sea−of−bromine)」と称される臭素化手法を伴う臭素化が所望されるプロセスの場合、好適な温度は、約55℃〜約65℃の範囲であり、約1気圧で約60℃の還流温度がより好都合である。
【0073】
臭素化の実行において、臭素化剤、好ましくは臭素は、オリゴマーおよび/または付加物、臭素化触媒、および好適な不活性溶媒の混合物中に少量ずつ導入することができる。臭素化剤およびオリゴマーを1つに統合する他の方法は、好適な溶媒または希釈剤の有無に関わらず、オリゴマーおよび/または付加物を、過剰な液体臭素および臭素化触媒を含む反応ゾーン内に少量ずつ送給するステップを含む。オリゴマーの脂肪族炭素原子に対する臭素化を最小化するために、短時間で臭素化を行うことが望ましい。臭素化剤とオリゴマーとがより長く接触するにつれて、脂肪族の臭素化が生じる可能性が大きくなる。したがって、臭素化反応期間は、一般的に、約80分より短く、好ましくは約2〜約20分の範囲内に保たれる。
【0074】
臭素化の完了時に、粗製オリゴマーおよび/または付加物は、水または塩基性の水溶液(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等)で処理され、塩基が使用される時には、その後に水洗処理が行われる。次いで、溶媒を除去するために、生成物が蒸留される。粗製臭素化オリゴマーを高温水に導入し、よって溶媒を留去することによって粗製オリゴマーを処理することが可能となるので、低沸点溶媒を使用することが望ましい。その後、相分離は所望の生成物を生じ、必要に応じて乾燥することができる。この段落において説明したような取り扱い手順は、臭素化オリゴマー中に存在し得る低沸点の臭素化不純物を含む不純物を除去するという、さらなる利点を有する。
【0075】
臭素化に関する詳細は、臭素化が連続的に行われる実施例BR−1〜BR−4において後述する。
【0076】
加えて、本発明によって産生できる付加物、オリゴマー、および/または低分子量ポリマーから作製される、臭素化付加物、臭素化オリゴマー、および/または臭素化低分子量ポリマーは、末端二重結合を有するモノマーの重合または共重合によって形成されるポリマー等の、他のポリマーでの難燃剤として有用であると考えられる。このようなポリマーには3つの群、すなわち、(i)ポリスチレン、およびHIPS等の耐衝撃性改良ポリスチレン、好ましくは耐衝撃性ポリスチレン等の、1つもしくは複数のビニル芳香族ホモポリマーまたはコポリマー、(ii)ポリエチレン、ポリプロピレン、および少なくとも1つの高級オレフィンを有し、ジエンモノマーの有無に関わらないエチレンまたはプロピレンのコポリマー等の、1つもしくは複数の非環式オレフィン炭化水素ホモポリマーまたはコポリマー、および(iii)ジエンモノマーの有無に関わらず、アクリロニトリル、アクリレートモノマ、またはメタクリレートモノマーを含む、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1つの非ビニル芳香族モノマーの1つもしくは複数のコポリマー、が存在する。群(iii)の例には、ABS、MBS、SAN、およびASAが挙げられる。1,3−ジフェニルプロパンを臭素化することによって形成されるデカブロモ−1,3−ジフェニルプロパンは、末端二重結合を有するモノマーの重合または共重合によって形成されるポリマーで使用するための、有効な難燃剤であると考えられる。
【0077】
上述の臭素化難燃剤を使用して産生される難燃性ポリマーは、三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、またはホウ酸ナトリウム等の、しばしば「共力剤」と称される難燃助剤等、他の難燃剤、特に、イソプロピル化リン酸トリフェニル等の液体アルキル化リン酸トリフェニル、および酸化防止剤、金属不活性化剤、UV安定剤、顔料および染料、加工助剤、充填剤、酸補足剤、熱安定剤、発泡剤、潤滑剤、成核剤、帯電防止剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、および他のそのような材料等の、ポリマーの他の特性を改善するために使用される成分、を含むことができる。
【0078】
下記の実施例は、例示のために提示されたものであり、本発明をその中に開示されている内容のみに限定することを意図したものではない。
【0079】
付加物形成は、約90℃以上でオリゴマー化および重合と競合し始めるが、付加物形成は、スチレンが非常に速い速度で送給されている時を除き、反応温度が約100℃よりも高い時のオリゴマー化および重合に有利である。付加物の混合物、および付加物とオリゴマーの混合物の形成をもたらす、本発明のいくつかの実施形態を、下記の表2に示す。全ての実施例は、1.0気圧、および連鎖移動剤トルエンの還流温度の直下である110℃で行った。3つの反応パラメータを変化させた。(1)充填される(スチレン/トルエン)総連鎖移動剤(CTA、トルエン)に対する、送給される総モノマー(例えば、スチレン)、(2)充填される(スチレン/トルエン)総開始剤(ブチルリチウムTMEDA錯体)に対する、送給される総スチレン、および(3)モノマーが送給された速度。
【0080】
実施例1は、実施例1〜11のそれぞれに使用した全般的な手順を示している。

実施例1
【0081】
乾式、500mL、4ネックの油ジャケット付きガラスフラスコには、熱電対と、ガラスパドルを伴うガラス塔頂撹拌器と、凝縮器と、N流入口と、を備えた。該反応器に、室温で、150mL(130.5g、1.55モル)の無水トルエンを充填し、続いて、2.7mL(0.0054モル)のn−ブチルリチウム(シクロヘキサン中2M)、および0.72mL(0.56g、0.0048モル)テトラメチルエチレンジアミン(TM
EDA)を充填した。反応混合物の温度を110℃に上昇させた。スチレン(50mL、45g、0.43モル)を、一定かつ有意な混合物の撹拌を保ちながら、一定の速度で、137分にわたって、反応器内に給送した。スチレンの送給完了時に、スチレンの送給管路を清浄にするように、20mLの無水トルエンを反応混合物中に給送した。次いで、該反応混合物を80℃まで冷却し、その後、0.5mLのイソプロピルアルコールで急冷した。室温まで冷却し、リチウムイソプロポキシド塩が沈殿した後、GPC分析のために、反応器から試料を採取した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1216 64.3%、C2324 23.4%、C3132 8.2%、C3940 2.9%、C4748 0.9%、C5556 0.3%、C6364 0%、C7172 0%、C7980 0%、C8788および高級オリゴマー 0%。

実施例2
【0082】
45g(0.43モル)のスチレンを、56分にわたって、130.5g(1.55モル)の無水トルエン、2.7mL(0.0054モル)の2Mのn−ブチルリチウム、および0.56g(0.0048モル)のTMEDAから形成される反応塊に送給したことを除いて、実施例1にある手順を使用した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1516 32.9%、C2324 22.5%、C3132 14.7%、C3940 9.9%、C4748 6.5%、C5556 4.3%、C6364 3.0%、C7172 6.2%、C7980 0%、C8788および高級オリゴマー 0%。

実施例3
【0083】
45g(0.43モル)のスチレンを、46分にわたって、130.5g(1.55モル)の無水トルエン、2.7mL(0.0054モル)の2Mのn−ブチルリチウム、および0.56g(0.0048モル)のTMEDAから形成される反応塊に送給したことを除いて、実施例1にあるような手順を使用した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1516 15.23%、C2324 14.6%、C3132 12.18%、C3940 10.87%、C4748 8.83%、C5556 7.63%、C6364 5.93%、C7172 4.85%、C7980 4.26%、C8788および高級オリゴマー 15.62%。

実施例4
【0084】
45g(0.43モル)のスチレンを、25分にわたって、130.5g(1.55モル)の無水トルエン、2.7mL(0.0054モル)の2Mのn−ブチルリチウム、および0.56g(0.0048モル)のTMEDAから形成される反応塊に送給したことを除いて、実施例1にある手順を使用した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1516 8.8%、C2324 8.4%、C3132 8.3%、C3940 7.8%、C4748 6.8%、C5556 6.1%、C6364 6.3%、C7172 5.1%、C7980 5%、C8788および高級オリゴマー 37.5%。

実施例5
【0085】
45g(0.43モル)のスチレンを、127分にわたって、130.5g(1.55モル)の無水トルエン、1.8mL(0.0036モル)の2Mのn−ブチルリチウム、および0.42g(0.0036モル)のTMEDAから形成される反応塊に送給したこ
とを除いて、実施例1にある手順を使用した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1516 46.1%、C2324 25.5%、C3132 13.6%、C3940 7.2%、C4748 3.8%、C5556 1.7%、C6364および高級オリゴマー 2%。

実施例6
【0086】
45g(0.43モル)のスチレンを、79分にわたって、130.5g(1.55モル)の無水トルエン、1.8mL(0.0036モル)の2Mのn−ブチルリチウム、および0.42g(0.0036モル)のTMEDAから形成される反応塊に送給したことを除いて、実施例1にある手順を使用した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1516 25.1%、C2324 20.4%、C3132 15.5%、C3940 11.5%、C4748 8.4%、C5556 5.8%、C6364 4.4%、C7172 2.8%、C7980および高級オリゴマー 6.1%。

実施例7
【0087】
45g(0.43モル)のスチレンを、64分にわたって、130.5g(1.55モル)の無水トルエン、1.8mL(0.0036モル)の2Mのn−ブチルリチウム、および0.42g(0.0036モル)のTMEDAから形成される反応塊に送給したことを除いて、実施例1にある手順を使用した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1516 15.5%、C2324 14.2%、C3132 12.6%、C3940 11.1%、C4748 9.5%、C5556 7.7%、C6364 6.5%、C7172 5.3%、C7980 4.1%、C8788および高級オリゴマー 13.5%。

実施例8
【0088】
45g(0.43モル)のスチレンを、134分にわたって、130.5g(1.55モル)の無水トルエン、1.35mL(0.0027モル)の2Mのn−ブチルリチウム、および0.31g(0.0027モル)のTMEDAから形成される反応塊に送給したことを除いて、実施例1にある手順を使用した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1516 23.5%、C2324 20.0%、C3132 15.4%、C3940 12.1%、C4748 8.8%、C5556 6.1%、C6364 4.6%、C7172 2.8%、C7980および高級オリゴマー 6.7%。

実施例9
【0089】
45g(0.43モル)のスチレンを、97分にわたって、130.5g(1.55モル)の無水トルエン、1.35mL(0.0027モル)の2Mのn−ブチルリチウム、および0.31g(0.0027モル)のTMEDAから形成される反応塊に送給したことを除いて、実施例1にある手順を使用した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1516 16.3%、C2324 16.2%、C3132 13.8%、C3940 11.7%、C4748 9.4%、C5556 7.4%、C6364 6.0%、C7172 5.10%、C7980 3.6%、C8788および高級オリゴマー 10.5%。

実施例10
【0090】
60.9g(0.58モル)のスチレンを、173分にわたって、115.0g(1.25モル)の無水トルエン、2.4mL(0.00487モル)の2Mのn−ブチルリチウム、および0.57g(0.00487モル)のTMEDAから形成される反応塊に送給したことを除いて、実施例1にある手順を使用した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1516 64.8%、C2324 22.3%、C3132 7.6%、C3940 3.0%、C4748 1.9%。

実施例11
【0091】
60.9g(0.58モル)のスチレンを、120分にわたって、115.0g(1.25モル)の無水トルエン、2.4mL(0.00487モル)の2Mのn−ブチルリチウム、および0.57g(0.00487モル)のTMEDAから形成される反応塊に送給したことを除いて、実施例1にある手順を使用した。未反応のトルエンを除く、GPC面積%の分析は、下記の通りであった。C1516 37.7%、C2324 18.2%、C3132 13.8%、C3940 9.6%、C4748 6.5%、C5556 4.4%、C6364 2.9%、C7172 2.1%、C7980 1.5%、C8788および高級オリゴマー 3.3%。
【0092】
生成物混合物は、付加物の基線対基線分解能を提供する、および最短鎖オリゴマーを部分的に分解する、オリゴポアカラムを使用したGPCによって分析した。したがって、離散的な分子の相対的な形成に関して、これらの生成物混合物について論ずることが可能である。しかし、発明者らは、比較のために、GPC曲線の同じ統計的処理を下記の表に適用した。実施例1および3の比較(下記表2を参照されたい)は、上述の3つの変数を独立して修正し、一方で、温度を一定に保つことによって、比較的に同様の生成物分布を得ることができることを示している。結果データは、種々の付加物の混合物、および付加物とオリゴマーの混合物を、異なるプロセス条件下で調製できることを実証している。生成物分布は、連鎖移動剤に対するモノマーの比率、第3級ポリアミン錯体有機リチウム開始剤に対するモノマーの比率、およびモノマーの送給速度への依存度を実証している。
【0093】
表2は、実施例1〜11の条件および結果を要約したものである。
【表2】

【0094】
実施例12〜20は、大規模に行われる本発明のプロセスを示すものである。

実施例12
【0095】
ステンレス製内部冷却コイル(冷水)と、ガラス塔頂撹拌機構(PTFE接液部品無し)と、を備える、乾式油ジャケット付き反応器に、3.46kg(41.11モル)の無水トルエンを充填し、80℃まで加熱した。混合物に、シクロヘキサン中ブチルリチウム
(0.36モル)を充填し、続いて、64.13g(0.55モル)の乾燥TMEDAを充填した。スチレン(3000g、28.8モル)を、72分、90〜95℃で、(無水塩基性アルミナのプラグを通じて)反応器に送給した。反応混合物を、100mLの水で急冷し、その後、1.0kgの水道水で3回洗浄した。トルエンを、粗製付加物から蒸留した。次いで、粗製材料を、完全真空で蒸留して、2.0kgの1,3−ジフェニルプロパン、900gの1,3,5−トリフェニルペンタン、550gの1,3,5,7−テトラフェニルヘプタン、および150gの1,3,5,7,9−ペンタフェニルノナンを得た。

実施例13
【0096】
ステンレス製内部冷却コイル(冷水)と、ガラス塔頂撹拌機構(PTFE接液部品無し)と、を備える、乾式油ジャケット付き反応器に、4.325kg(51.39モル)の無水トルエンを充填し、80℃まで加熱した。混合物に、シクロヘキサン中ブチルリチウム(0.18モル)を充填し、続いて、33.47g(0.29モル)の乾燥TMEDAを充填した。スチレン(1.5g、14.4モル)を、150分、90〜95℃で、(無水塩基性アルミナのプラグを通じて)反応器に送給した。反応混合物を、100mLの水で急冷し、その後、0.5kgの水道水で3回洗浄した。トルエンを、粗製オリゴマーから蒸留した。次いで、粗製材料を、完全真空で蒸留して、2.0kgの1,3−ジフェニルプロパン、300gの1,3,5−トリフェニルペンタン、120gの1,3,5,7−テトラフェニルヘプタン、および8gの蒸留できない塔底オリゴマーを得た。

実施例14
【0097】
ステンレス製内部冷却コイル(冷水)と、ガラス塔頂撹拌機構(PTFE接液部品無し)と、を備える、乾式油ジャケット付き反応器に、1.73kg(20.56モル)の無水トルエンを充填し、80℃まで加熱した。混合物に、シクロヘキサン中ブチルリチウム(0.1モル)を充填し、続いて、16.74g(0.14モル)の乾燥TMEDAを充填した。スチレン(1500g、14.4モル)を、15分、95〜115℃で、(無水塩基性アルミナのプラグを通じて)反応器に送給した。反応混合物のうちの500gを除く全てを、100mLの水で急冷し、その後、1.0kgの水道水で3回洗浄した。トルエンを、粗製オリゴマーから蒸留した。該粗製材料を、GPCによって分析し、十分に特徴付けられたアニオンポリスチレン標準と比較して、該粗製材料が、M=1184、M=1137、M=729ダルトンを有することが分かった。多分散性=1.75。

実施例15
【0098】
ステンレス製内部冷却コイル(冷水)と、ガラス塔頂撹拌機構(PTFE接液部品無し)と、を備える、乾式油ジャケット付き反応器に、実施例14からのヒール500gを充填した。ヒールには、80℃に加熱する前に、0.229kg(2.72モル)無水トルエンを添加した。混合物に、シクロヘキサン中n−ブチルリチウム(0.045モル)を充填し、続いて、10.46g(0.09モル)の乾燥TMEDAを充填した。スチレン(1500g、14.4モル)を、150分、110〜125℃で、(無水塩基性アルミナのプラグを通じて)反応器に送給した。反応混合物を、100mLの水で急冷し、その後、1.0kgの水道水で3回洗浄した。急冷した混合物のNMR分析は、比較的に小量(約2重量%未満)の未反応のスチレンが存在することを示した。未反応のスチレンおよびトルエンを粗製オリゴマーから蒸留し、結果として生じた材料をGPCによって分析し、十分に特徴付けられたアニオンポリスチレン標準と比較して、該材料が、M=2512、M=2321、M=9.62ダルトンを有することが分かった。多分散性=2.61。

実施例16
【0099】
ステンレス製内部冷却コイル(冷水)と、ガラス塔頂撹拌機構(PTFE接液部品無し)と、を備える、乾式油ジャケット付き反応器に、0.4kg(4.76モル)の無水トルエンを充填し、85℃まで加熱した。混合物に、シクロヘキサン中ブチルリチウム(0.12モル)を充填し、続いて、18.55g(0.16モル)の乾燥TMEDAを充填した。スチレン(1000g、9.6モル)を、16分、85〜90℃で、(無水塩基性アルミナのプラグを通じて)反応器に送給した。反応混合物を、100mLの水で急冷し、その後、0.5kgの水道水で3回洗浄した。トルエンを、オリゴマーおよび低分子量ポリマーの粗混合物から蒸留した。該粗製材料を、GPCによって分析し、十分に特徴付けられたアニオンポリスチレン標準と比較して、該粗製材料が、M=3211、M=4279、M=1369ダルトンを有することが分かった。多分散性=2.34。


実施例17
【0100】
ステンレス製内部冷却コイル(冷水)と、ガラス塔頂撹拌機構(PTFE接液部品無し)と、を備える、乾式油ジャケット付き反応器に、0.4kg(4.76モル)の無水トルエンを充填し、80℃まで加熱した。混合物に、シクロヘキサン中ブチルリチウム(0.1モル)を充填し、続いて、15.39g(0.13モル)の乾燥TMEDAを充填した。スチレン(2000g、19.2モル)を、0.3kgのトルエンと組み合わせ、次いで、82分、85〜105℃で、(無水塩基性アルミナのプラグを通じて)反応器に送給した。反応混合物を、100mLの水で急冷し、その後、1.0kgの水道水で3回洗浄した。トルエンを、粗製オリゴマーから蒸留した。該粗製材料を、GPCによって分析し、十分に特徴付けられたアニオンポリスチレン標準と比較して、該粗製材料が、M=1513、M=1454、M=732ダルトンを有することが分かった。多分散性=2.07。

実施例18
【0101】
ステンレス製内部冷却コイル(冷水)と、ガラス塔頂撹拌機構(PTFE接液部品無し)と、を備える、乾式油ジャケット付き反応器に、0.128リットルのメチルシクロヘキサンとともに、0.364kg(0.43モル)の無水トルエンを充填し、次いで、80℃まで加熱した。反応混合物に、シクロヘキサン中ブチルリチウム(0.144モル)を充填し、続いて、17.15g(0.15モル)の乾燥TMEDAを充填した。次いで、混合物を、穏やかに還流するまで加熱した。スチレン(1913g、18.37モル)を、0.427kg(5.08モル)の無水トルエンと組み合わせ、次いで、120分、116℃〜125℃で、(無水塩基性アルミナのプラグを通じて)反応器に送給した。反応混合物を、100mLの水で急冷し、その後、1.0kgの水道水で3回洗浄した。未反応のトルエンおよびメチルシクロヘキサンを、粗製オリゴマーから蒸留した。該粗製材料を、GPCによって分析し、十分に特徴付けられたアニオンポリスチレン標準と比較して、該粗製材料が、M=1545、M=1243、M=616ダルトンを有することが分かった。多分散性=2.51。

実施例19
【0102】
ステンレス製内部冷却コイル(冷水)と、単純な蒸留装置と、ガラス塔頂撹拌機構(PTFE接液部品無し)と、を備える、乾式油ジャケット付き反応器に、0.128リットルのメチルシクロヘキサンとともに、0.182kg(2.16モル)の無水トルエンを
充填し、90℃まで加熱した。反応混合物に、シクロヘキサン中ブチルリチウム(0.058モル)を充填し、続いて、6.86g(0.06モル)の乾燥TMEDAを充填した。スチレン(1500g、14.4モル)を、1.0Lのn−ペンタンと組み合わせ、次いで、120分、90〜117℃で、(無水塩基性アルミナのプラグを通じて)反応器に送給した。スチレンの送給中、反応混合物の粘度を制御するように、0.216kg(2.56モル)のトルエンを5つの0.050Lの分割量で添加した。反応混合物を、100mLの水で急冷し、その後、1.0kgの水道水で3回洗浄した。未反応のトルエンおよびメチルシクロヘキサンを、粗製オリゴマーおよび低分子量ポリマーから蒸留した。該粗製材料を、GPCによって分析し、十分に特徴付けられたアニオンポリスチレン標準と比較して、該粗製材料が、M=2114、M=1570、M=753ダルトンを有することが分かった。多分散性=2.81。

実施例20
【0103】
ステンレス製内部冷却コイル(冷水)と、ガラス塔頂撹拌機構(PTFE接液部品無し)と、を備える、乾式油ジャケット付き反応器に、0.242kg(2.88モル)の無水トルエン、および1000mLの無水エチルベンゼンを充填し、80℃まで加熱した。混合物に、シクロヘキサン中ブチルリチウム(0.08モル)を充填し、続いて、7.88g(0.07モル)の乾燥TMEDAを充填した。次いで、混合物を114℃まで加熱した。スチレン(1500g、14.4モル)を、150分、114〜121℃で、(無水塩基性アルミナのプラグを通じて)反応器に送給した。反応混合物を、100mLの水で急冷し、その後、1.0kgの水道水で3回洗浄した。未反応のトルエンおよびエチルベンゼンを、粗製オリゴマーから蒸留した。該粗製材料を、GPCによって分析し、十分に特徴付けられたアニオンポリスチレン標準と比較して、該粗製材料が、M=2127、M=2101、M=933ダルトンを有することが分かった。多分散性=2.28。
【0104】
表3では、高温(80℃超)で、TMEDAと錯体化した有機リチウムを採用した連鎖移動を経た、トルエンおよびスチレンからの、付加物およびビニル芳香族オリゴマーの混合物、および付加物、ビニル芳香族オリゴマー、および低分子量ビニル芳香族ポリマーの混合物の調製について得られた実験的な結果を要約している。経済的な有意性は、ブチルリチウムの利用(Mcalc/Mの商から推定される)を、約160%(実施例16)〜1200%(実施例14、15、および17)改善することであり、本発明のプロセスが、高効率であることを示している。このような改善されたリチウムの利用は、最低限の化学量論的量な量のリチウムが使用される標準的なアニオンリチウムと比較して、本発明の触媒特性の結果である。全ての実施例のPDおよびSnは、最大PDが2.81と小さいが、より一般的には2であり、約600〜約1600ダルトンの範囲の標準偏差を伴う。加えて、該データは、非対称性程度が低く、非対称性値が約2.35〜約4.13の範囲であることを実証している。
【表3】

【表4】

【0105】
実施例21〜23は、逆混合による連続実行である。

実施例21
【0106】
装置は、窒素流入口と、傾斜した羽根タービンインペラを伴う塔頂ステンレス製回転軸と、熱電対と、を備えるオーバーフローポートを伴う、ガラス製で200mLの、油ジャケット、バッフル付き円筒反応器とした。該反応器には、下記の2つの液面下の送給管路も取り付けた。(1)スチレンおよびトルエンの混合物を導入するための、ステンレス製1/8インチ(約3.17mm)OD管路、および(2)ブチルリチウムTMEDAおよびトルエンから形成される混合物を送給するための、ステンレス製1/16インチ(約1.59mm)OD管路。該1/16インチ管路は、運転の経過中に機械的撹拌装置に絡むのを防止するように、1/4インチ(約6.35mm)管路を通じて螺入した。1/16インチ送給管路の先端部は、インペラの真下に方向付けた。オーバーフローポートは、22.5°の角度で下方に方向付けて、13mmのAce Thread(登録商標)Teflon(登録商標)接続によって、長さ24インチ(約609.6mm)のグリコールジャケット付き、15mmODガラス管に取り付けた。該15mmガラス管の他端部は、第2の13mmのAce Thread(登録商標)Teflon(登録商標)接続によって、2リットルのグリコールジャケット付き撹拌反応器に接続した(いずれのTeflon(登録商標)接続も接液部品ではない)。該オーバーフロー反応器には、全ガラス塔頂撹拌装置と、底部ドレイン弁と、冷水凝縮器と、窒素油バブラー流出口と、を備えた。該オーバーフロー管路および該反応器は、グリコールで100℃まで加熱した。
【0107】
室温、不活性N雰囲気下で撹拌、オーブン乾燥した梨状500mLフラスコ中で、有機リチウム混合物を、91.75g(106mL、1.09モル)の無水トルエン、シクロヘキサン中42.98mL、16.5重量%(5.28g、0.0824モルのアルキルリチウム含有)のn−ブチルリチウム、および8.62g(11.19mL、0.0742モル)のTMEDAから形成し、この混合物を、ガラス被覆した(PTFE無し)磁気撹拌子で撹拌した。溶液の第1の約半分を、1/16インチのステンレス製3方向ボール弁を通じて、注射器ポンプ上に載置したオーブン乾燥した100mLのガラス注射器内へ吸引した。注射器の注入後、注射器から反応器内の16インチ液面下送給管路までの経路が開かれ、機械的に撹拌されるフラスコが閉じられるように、ボール弁を整列させた。反応の経過中に、フラスコへの経路が開かれ、反応器への経路が閉じられるように、3方向ボール弁を整列させることによって、混合物の第2の半分の注入を達成した。
【0108】
運転の開始時、反応器に100mLの無水トルエンを充填し、110℃に加熱した。一方で、547g(602mL、5.25モル)のスチレン、および1734g(2000mL、20.6モル)の無水トルエンを組み合わせて混合し、次いで、Nで覆った3000mLの目盛り付き円筒貯蔵容器に充填した。トルエン−スチレン混合物を、最初の1つまたは2つの滴が反応器に入るのが見られるまで、無水塩基性アルミナのカラムを通じて、研究室用定量ポンプによって、該反応器に給送し、送給を停止して、該反応器内の撹拌を開始した(400rpm以下)。シクロヘキサン中ブチルリチウムを、1.0mLの注射器によって、滴下状に該反応器内に充填した。ポリスチリルリチウムアニオンの特性である赤色が現れた(無視条件を示した)時に、添加を停止した。次に、約4.8g(0.012モル)の16.5重量%n−ブチルリチウム、および1.3g(0.011モル)のTMEDAを、該反応器に充填した。両送給物(トルエン−スチレン混合物、および有機リチウム混合物)の送給速度(トルエン−スチレン混合物:6.28mL/分、有機リチウム混合物:0.386mL/分)を予め設定し、30分の滞留時間に対して、1時間あたり200mLの組み合わせ送給物(1時間あたり2つの反応器容積)が該反応器を通過するように、該ポンプを較正した。該プロセスは、約195分、110℃で実行した

【0109】
サンプルは、最初の45分の後、ほぼ30分毎に収集した。2つの反応器容積内で、該システムが定常状態条件に到達したことが分かった。収集した最初の画分のGPC分子量分布は、M=1992、M=2209、M=716ダルトン、M=3512、および多分散性=2.78であった。代表的な定常状態画分は、M=4146、M=4507、M=1656、M=7134ダルトン、および多分散性=2.50と分析された。トルエンおよび1−3−ジフェニルプロパンの除去後の、定常状態画分の複合材のGPC分析結果は、M=4051、M=3822、M=1879、M=6897ダルトン、および多分散性=2.15であった。

実施例22
【0110】
本実施例の実行は、下記に記載したものを除いて、実施例21のものを繰り返している。トルエン−スチレン混合物を、547g(602mL、5.25モル)のスチレン、および1730g(2000mL、20.56モル)の無水トルエンから作製した。有機リチウム混合物を、111.44g(1.32モル、129mL)の無水トルエン、シクロヘキサン中42.98mL、16.5重量%(5.28g、0.0824モルのアルキルリチウム含有)のn−ブチルリチウム、および9.1g(11.81mL、0.0783モル)のTMEDAから形成した。ポリスチリルリチウムアニオンの赤色が現れた後、約6mLの有機リチウム混合物を反応器に充填した。両送給物の送給速度(トルエン−スチレン混合物:6.08mL/分、有機リチウム混合物:0.579mL/分)を予め設定し、1時間あたり400mLの組み合わせ送給物(1時間あたり2つの反応器容積)が反応器を通過し、したがって30分の滞留時間を提供するように、ポンプを較正した。該プロセスは、約200分、110℃〜113℃で行った。第2の200分間、トルエン−スチレン混合物の送給速度を、6.31mL/分に設定し、有機リチウム混合物の送給速度を0.35mL/分に設定した。
【0111】
第1の組の送給速度の間の、代表的な定常状態画分のGPC分子量分布は、M=1151、M=1123、M=592、M=1861ダルトン、および多分散性=2.50と分析された。最後の画分のGPC分析は、M=1984、M=2025、M=907、M=3293ダルトン、および多分散性=2.19と分析したが、定常状態は、予備成形した試薬を使い果たす前に達成されなかった。該分子量分布は、より高い分子量へ推移し続けた。低多分散性、適度の幅、および低非対称性は維持されたが、該分子量分布は、より高い値へ推移した。

実施例23
【0112】
本実施例の実行は、下記に記載したものを除いて、実施例21のものを繰り返している。トルエン−スチレン混合物を、547g(602mL、5.25モル)のスチレン、および1816g(2100mL、21.58モル)の無水トルエンから作製した。有機リチウム混合物を、177.27g(2.11モル、205mL)の無水トルエン、シクロヘキサン中90.26mL、16.5重量%(11.08g、0.173モルのアルキルリチウム含有)のn−ブチルリチウム、および24.81g(19.10mL、0.1644モル)のTMEDAから形成した。ポリスチリルリチウムアニオンの赤色が現れた後、約10g(0.024モル)、16.5重量%のn−ブチルリチウム、および2.6g(0.022モル)のTMEDAを反応器に充填した。両送給物の送給速度を、予め設定した(トルエン−スチレン混合物:6.28mL/分、有機リチウム混合物:0.764mL/分)。組み合わせ送給速度は、28.4分あたり1つの反応器容積(200mL)とした。該プロセスは、約419分、110℃〜113℃で行った。
【0113】
サンプルは、最初の45分の後、ほぼ30分毎に収集した。2つの反応器容積内で、該システムが定常状態条件に到達したことが分かった。収集した最初の画分のGPC分子量分布は、M=2154、M=2293、M=953、M=3510ダルトン、および多分散性=1.65であった。代表的な定常状態画分は、M=2395、M=2410、M=1026、M=4246ダルトン、および多分散性=2.34と分析された。トルエンおよび1−3−ジフェニルプロパンの除去後の、定常状態画分の複合材のGPC分析結果は、M=2288、M=2094、M=1200、M=3767ダルトン、および多分散性=1.91であった。
【表5】

【0114】
実施例BR−1〜BR−4は、本発明の臭素化付加物および/臭素化オリゴマーを調製するための好適な手順を連続的に示している。

実施例BR−1
4環トルエン/スチレン付加物の連続臭素化―1,3,5,7−テトラフェニルヘプタン(TPH)、実施例12からの蒸留画分
【0115】
臭素化には、容量80mLの円筒ガラス反応容器を使用した。該反応器は、外側断熱絶縁真空ジャケットと、グリコール冷却剤を循環させるための内側ジャケットと、を有した。該容器は、試薬溶液をテフロンポリマー製の二重タービン撹拌器(350rpmで動作)の底部羽根の下に直接的に送達するために、2つの流入ポートを底部に有した。該反応器は、底部タービン羽根の隣に位置付けられるサーモウェルを有した。上部タービン羽根の真上に位置付けられるオーバーフローポートは、反応混合物を、主生成物急冷ポット(5Lの、パドル撹拌器を伴う、完全ジャケット付き丸底フラスコ)、または第2の廃棄物急冷ポット(2Lの三角フラスコ)に方向付けることができる分流器へ、重力によって流れることができるようにした。反応器からの流出ガスは、フリードリヒ凝縮器の塔頂を通過して、凝縮器の最上部において一定の窒素パージからの支援によって、苛性水スクラバー(aqueous caustic scrubber)内へ入った。臭素化中は、光臭素化を最小化するように、フード光をオフにし、反応容器をアルミホイルで包んだ。2つの蠕動ポンプを使用して、臭素中AlBrおよびブロモクロロメタン(BCM)中1,3,5,7−テトラフェニルヘプタン(実施例12からの蒸留画分)を、Teflonポリマー(1/8インチ)およびVitonポリマー(0.10インチ(約2.54mm))の送給管路を使用して、底部流入ポートを通じて反応器へ送達した。操作は、172.8gの乾燥BCM(10ppm未満の水)を反応容器に充填することから始め、次いで、液体を−6℃に冷却した(−10℃で槽を循環させる)。AlBr/臭素送給溶液は、3.60gのAlBrを856.7gの臭素中に溶解することによって調製した。TPHの30.0重量%溶液は、311.8gのTPHを727.7gの乾燥ブロモクロロメタン(BCM)中に溶解することによって調製した。反応物を、AlBr/臭素溶液については1.45mL/分(4.44g/分)、およびTPH/BCM溶液については3.63mL/分(5.56g/分)の平均送給速度で、反応容器に送達した。反応温度を、+2℃まで急速に上昇させ、次いで、送給期間中は0℃で安定させた。最初の50分間は、反応器からのオーバーフロー流を、廃棄物急冷ポット(768g、5重量%のNaSO水溶液を含む)に方向付けた。この時点で、定常状態条件(3回以上の滞留時間)に到達したものとみなし、よって、オーバーフロー流の方向を、主急冷ポット(784g、5重量%のNaSO水溶液を含む)へ変えて、15.7分の反応器内の平均滞留時間、5〜10℃で、136分にわたって、生成物混合物を収集した。主急冷ポット内下部の濁った有機相(1013.2g)を、水相から分離し、2Lの分液漏斗内で、急冷容器のBCMリンス剤(183.0g)と組み合わせた。有機相を、水で洗浄し、NaOH水溶液、および最後に水で希釈して、残留酸および塩を除去した。溶媒を、回転蒸発器(96℃/10トール)を使用して、濁った溶液から除去し、517.2gの透明で粘性のある薄い琥珀色の液体が得られ、該液体は、室温に冷却した時にガラスに固体化した。生成物の分析結果を表5に要約する。

実施例BR−2
実施例14のオリゴマーの連続臭素化
【0116】
実施例14で作製したオリゴマーを使用して実施例BR−1を繰り返した。該操作は、157.5gの乾燥BCM(10ppm未満の水)を反応容器に充填することから始め、次いで、液体を−7℃に冷却した(−10℃で槽を循環させる)。AlBr/臭素送給
溶液は、3208.0gの臭素中に15.20gのAlBrを溶解することによって調製した。実施例14のオリゴマーの30重量%溶液は、999.6gのオリゴマーを2332.6gの乾燥BCM中に溶解することによって調製した。反応物を、AlBr/臭素溶液については3.75mL/分(11.6g/分)、およびポリマー/BCM溶液については7.18mL/分(11.1g/分)の平均送給速度で、反応容器に送達した。最初の115分間は、反応器からのオーバーフロー流を、廃棄物急冷ポット(800g、5重量%のNaSO水溶液を含む)に方向付けた。その時点で、オーバーフロー流の方向を、主急冷ポット(774g、5重量%のNaSO水溶液を含む)へ変えて、+8℃の反応温度で、74分にわたって、定常状態生成物を収集した。生成物画分を、7.3分の反応器内の平均滞留時間、5〜10℃の急冷ポット内で収集した。該オーバーフローの方向を反応器から廃棄物急冷ポットへ変えた後、主急冷ポット内の下部白色有機相(985.4g)を、水相から分離し、2Lの分液漏斗内で、急冷容器内に残っている水相のBCMリンス剤(413.2g)と組み合わせた。有機相の3つの水性洗浄液(それぞれ700〜800g)を使用して、残留酸および塩を除去した。洗浄した白色有機相(1346.7g)を、3.5Lの激しく撹拌されている温水に給送し、水中に白色固体のスラリを得た。スラリを吸引濾過し、固体をフィルタ上で水ですすいだ(3回×1L)。ウェットケーキ(800.5g)を、100℃の窒素パージしたオーブン内で、462.0gの一定重量まで乾燥した。白色生成物の分析結果を表5に要約する。

実施例BR−3
実施例14のオリゴマーの連続臭素化
【0117】
実施例BR−2に記載されているように、主急冷ポットから下部の有機相を除去し、急冷ポット内の水相を、BCMですすいだ後、実施例BR−2の臭素化を継続した。臭素の送給速度を、4.43mL/分(13.7g/分)まで上昇させ、一方で、オリゴマーの送給速度を、7.18mL/分(11.1g/分)に一定に保った。20分で定常状態条件に到達させた後、反応器からのオーバーフローの方向を、主急冷ポット(希釈NaSO水溶液を含む)へ変えて、粗製生成物溶液を、9℃の反応温度、および6.9分の平均滞留時間で、68分にわたって収集した。該オーバーフローの方向を反応器から廃棄物急冷ポットへ変えた後、主急冷ポット内の白色有機相(1233.0g)を、水相から分離し、2Lの分液漏斗内で、急冷容器のBCMリンス剤(485.9g)と組み合わせた。3つの水性洗浄液(それぞれ700〜800g)を使用して、残留酸および塩を除去した。洗浄した有機相(1629.1g)を、3.5Lの激しく撹拌されている温水に給送し、水中に固体のスラリを得た。スラリを吸引濾過し、白色固体をフィルタ上で水ですすいだ(3回×1L)。ウェットケーキ(1330.1g)を、100℃の窒素パージしたオーブン内で、648.0gの一定重量まで乾燥した。白色生成物の分析結果を表5に要約する。

実施例BR−4
実施例20のオリゴマーの連続臭素化
【0118】
実施例20で作製したオリゴマーを使用して、実施例BR−1を繰り返した。162.3gの乾燥BCM(10ppm未満の水)を80mLの反応容器に充填し、次いで、0℃に冷却した(−4℃で槽を循環させる)。AlBr/臭素送給溶液は、6.74gのAlBrを1669.9gの臭素中に溶解することによって調製した。実施例20の30.0重量%溶液は、650.9gのオリゴマーを1518.6gの乾燥BCM中に溶解することによって調製した。反応物を、AlBr/臭素溶液については2.77mL/分(8.60g/分)、およびポリマー/BCM溶液については6.78mL/分(10.5g/分)の平均送給速度で、反応容器に送達した。最初の35分間は、反応器からのオーバーフロー流を、廃棄物急冷ポット(755g、5重量%のNaSO水溶液を含む
)に方向付けた。この時点で、オーバーフロー流の方向を、主急冷ポット(587g、5重量%のNaSO水溶液を含む)へ変えて、9〜11℃の反応温度で、159分にわたって、定常状態生成物を収集した。定常状態生成物画分を、8.5分の反応器内の平均滞留時間、5〜10℃の急冷ポット内で収集した。主急冷ポット内の下部有機相(3451.4g)を水相から分離し、急冷容器のBCMリンス剤(434.3g)と組み合わせた。3つの水性洗浄液(水、希釈NaOH水溶液、および水)を使用して、残留酸および塩を除去した。洗浄した有機相(3923.8g)を、激しく撹拌されている温水(94〜97℃)に給送し、水中に凝集塊および微粉化した白色固体の混合物を得た。混合物を吸引濾過し、固体をフィルタ上で水ですすいだ。塊の多いウェットケーキ(2661g)を、粉末にして、100℃の窒素パージしたオーブン内で、1158.8gの一定重量に到達するまで乾燥した。生成物の分析結果を表5に要約する。
【表6】

【0119】
実施例BR−5は、バッチプロセスで過臭素化した付加物を調製するための好適な手順を示す。

実施例BR−5
バッチ臭素化によるデカブロモ−1,3−ジフェニルプロパンの調製
【0120】
還流凝縮器と、温度制御器を有する温度計と、機械的撹拌器と、滴下漏斗と、低温苛性スクラバー(cold caustic scurbber)と、を備える、1Lの丸底フラスコに、2355g(約700mL)の臭素、および12.5gの無水AlClを触媒として添加した。スラリを撹拌して60℃に加熱した。次いで、実施例22で蒸留して回収した1,3−ジフェニルプロパンを、3時間にわたって、60℃で、撹拌したBr/AlClスラリの液面下に添加した。反応混合物を、さらに1時間、50℃で撹拌し、わずかに冷却し、次いで、100mLの水をゆっくりと添加して、触媒を分解した。バレットトラップを反応容器に備え、98℃の蒸気温度に到達するまで、再び加熱して、過剰な臭素を蒸留した。蒸留中に、撹拌できる反応塊を有するために、反応混合物にさら
に水を添加して、除去された臭素容積を置き換えた。反応スラリを冷却し、次いで、水酸化ナトリウムを、大部分の微量臭素色が消えるまで添加した。固体を、濾過によって単離し、次いで、1時間、200℃のオーブン内で乾燥した。該固体を、冷却し、次いで、トルエンで洗浄して有色の不純物を除去し、室温の空気で乾燥させ、最後に、3時間、120℃のオーブン内で乾燥した。このようにして形成した白色の生成物(476.65g)を分析した結果、窒素含量が、89.79重量%(理論上は81%)であることが分かった。TGAは、317.9℃では1%の損失、348.5℃では5%の損失、および363.2℃では10%の損失を示した。この材料については、309〜310.6℃のDSCの融点を記録した。イオンクロマトグラフィーによる分析から分かるように、この材料は、わずか12ppmの遊離臭素、および104ppmのイオン臭化物を含んでいた。
【0121】
本文書内のいずれかの化学名または式によって言及される反応物および成分は、単数であっても複数であっても、それらが、化学名または化学的タイプによって表される別の物質(例えば、別の反応物、溶媒等)と接触する前に存在するものと同定されることを理解されたい。もしあれば、どのような事前の化学変化、変換、および/または反応が、結果として生じた混合物、溶液、または媒体中で生じるのかは問題ではない。というのは、そのような変化、変換、および/または反応は、本開示に従って要求される条件下で、特定の反応物および/または成分を1つにすることによる当然の結果であるからである。したがって、反応物および成分は、所望の化学操作または反応を行うことに関連して、または所望の操作または反応を行う際に使用される混合物の形成において、1つにされる要素として同定される。また、ある実施形態は、現在時制で物質、成分、および/または要素に言及する場合(「〜で構成される」、「〜を含む」、「〜である」等)があるが、その言及は、本開示に従って、1つもしくは複数の他の物質、成分、および/または要素と最初に接触、調合、または混合される直前に、同時に存在する物質、成分、および/または要素に対するものである。
【0122】
また、請求項は、現在時制で物質に言及する場合(「〜を含む」、「〜である」等)があるが、その言及は、本開示に従って、1つもしくは複数の他の物質と最初に接触、調合、または混合される直前に、同時に存在する物質に対するものである。
【0123】
特に明示されている場合を除いて、冠詞「a」または「an」は、本願明細書で使用する場合、説明または請求項を、その冠詞が指す単一の要素に限定することを意図するものではなく、また、限定するものとして解釈すべきではない。むしろ、冠詞「a」または「an」は、本願明細書で使用する場合、本文が明示していない限り、1つもしくは複数のそのような要素を包含することを意図する。
【0124】
また、「実質的な」および「実質的に」という用語は、化学プロセスが、通常は、絶対的なものを伴わないことを意味する。したがって、絶対的なものとして変数を述べる代わりに、表される変数にかなり近い変数を述べることの方が、はるかに現実的である。例えば、化学量論的な量を表す時には、当業者は、絶対的な化学量論からのわずかな逸脱が、その結果にいかなる相当な差異も生じないことを十分に認識しているので、その量を、実質的に化学量論的な量であるものとして言及した方がはるかに現実的である。したがって、あらゆる点において、本文書は、常識を用いて読み取るべきである。
【0125】
上述したいずれの特許、特許出願、および刊行物も、法律的に最大限に許される範囲で、全体として、参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【0126】
本発明は、その実施においてかなり変化することがある。したがって、上述の説明は、限定することを意図したものではなく、本発明を、上述した特定の実施例に限定するものとして解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)モノ付加物、(ii)付加物の混合物、(iii)付加物および1つもしくは複数のオリゴマーの混合物、または(iv)付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーの混合物で富化される反応生成物を調製するプロセスであって、
1) 少なくとも成分B)を、少なくとも成分A)、C)、およびD)から形成される混
合物に、または少なくとも成分A)、C)、およびD)を送給することによって形
成されている混合物に送給することによって、以下に記載される成分A)、B)、
C)、およびD)を1つにするステップであって、いずれの場合においても、成分
C)およびD)は、互いに別々に送給され、および/または互いから形成された、
または形成されている錯体として送給される、ステップと、
2) 前記送給するステップ中に反応混合物中の成分B)の擬定常状態濃度と、成分A)
:成分B)のモル比と、を相関させるステップと、前記反応生成物を産生するよう
に、前記反応混合物の1つまたは複数の温度を、約80℃〜約130℃の範囲の1
つもしくは複数の温度に維持するステップと、
3) 成分B)の送給を終了し、よって反応を終了させるステップと、
を含み、
− 成分A)は、分子中にメチル基が1個のみ存在し、該メチル基は、芳香環に結合され、前記メチル基を担持する前記芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換である、少なくとも1個の芳香族炭化水素であり、
− 成分B)は、少なくとも1個のモノビニル芳香族炭化水素であり、
− 成分C)は、少なくとも1つの有機リチウム試薬であり、
− 成分D)は、前記有機リチウム試薬と錯体化する、少なくとも1つの脂肪族ポリ(第3級アミン)リガンドである、
プロセス。
【請求項2】
下記の式で表されるモノ付加物で富化される生成物を調製するためのプロセスであって、
Ar−CHCHCHR−Ar′
式中、Arは、1〜4個の範囲の芳香環を含み、1〜6個の範囲のアルキル環置換基を有する芳香族炭化水素部分であり、そのような置換基のうちの1個、およびそのような置換基の1個以下は、メチル基であり、前記メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換であり、Ar′は、独立して1〜4個の範囲の芳香環を含む芳香族炭化水素部分であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、
I) 以下に記載される少なくとも成分B)を、(1)以下に記載される成分A)、C)
、およびD)から形成され、随意に、成分C)の量にほぼ等しいか、またはそれ未
満の量で成分B)を含む混合物、または、(2)成分A)、B)、C)、およびD
)と、さらなる量の成分A)、C)、およびD)、ならびに随意に反応器に導入さ
れる前記さらなる量の成分C)未満の量の成分B)と、から前もって形成した混合
物のいずれかを含む、機械的に撹拌される前記反応器内に送給するステップと、
II) 成分B)の送給速度を、前記成分B)の擬定常状態濃度がゼロに、またはほぼゼ
ロに維持される程度の、十分に遅い速度に維持するステップと、前記反応器の内容
物を、約90℃〜約130℃の範囲の1つもしくは複数の温度に維持するステップ
と、
III) 成分B)の送給を終了し、よって反応を終了させるステップと、
を含み、
(i) 前記反応器内に導入される成分A)の量に対する、前記反応器内に導入さ
れる成分B)の総量が、成分A)の約5〜約70モルパーセントの範囲であ
り、
(ii) 前記反応器内に導入される成分C)の量が、成分B)の約10〜約0.
1モルパーセントの範囲であり、
(iii) 前記反応器内に導入される成分D)の量が、成分B)の約10〜約0
.1モルパーセントの範囲であり、
(iv) 成分C)に対する成分D)のモル比が、約0.8:1〜約8:1の範囲
である、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
オリゴマー形成が最小化される2つ以上の付加物の混合物で富化される生成物を調製するためのプロセスであって、そのような混合物の個々の付加物は、下記の式で表され、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Arは、1〜4個の範囲の芳香環を含み、1〜6個の範囲のアルキル環置換基を有する芳香族炭化水素部分であり、そのような置換基のうちの1個、およびそのような置換基の1個以下は、メチル基であり、前記メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換であり、Ar′は、独立して1〜4個の範囲の芳香環を含む芳香族炭化水素部分であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、nは、0〜6の範囲の整数であり、
I) 以下に記載される少なくとも成分B)を、(1)以下に記載される成分A)、C)
、およびD)から形成され、随意に、成分C)の量にほぼ等しいか、またはそれ未
満の量で成分B)を含む混合物、または、(2)成分A)、B)、C)、およびD
)と、さらなる量の成分A)、C)、およびD)、ならびに随意に反応器に導入さ
れる前記さらなる量の成分C)未満の量の成分B)と、から前もって形成した混合
物のいずれかを含む、機械的に撹拌される前記反応器内に送給するステップと、
II) 成分B)の送給速度を、前記成分B)の擬定常状態濃度がゼロを超える程度の速
度に維持するステップと、前記反応器の内容物を、約90℃〜約130℃の範囲の
1つもしくは複数の温度に維持するステップと、
III) 成分B)の送給を終了し、よって反応を終了させるステップと、
を含み、
(i) 前記反応器内に導入される成分A)の量に対する、前記反応器内に導入さ
れる成分B)の総量が、成分A)の約5〜約70モルパーセントの範囲であ
り、
(ii) 前記反応器内に導入される成分C)の量が、成分B)の約10〜約0.
1モルパーセントの範囲であり、
(iii) 前記反応器内に導入される成分D)の量が、成分B)の約10〜約0
.1モルパーセントの範囲であり、
(iv) 成分C)に対する成分D)のモル比が、約0.8:1〜約8:1の範囲
である、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
ポリマー形成が最小化される、2つ以上の付加物および1つもしくは複数のオリゴマーで富化される生成物を調製するためのプロセスであって、そのような混合物の個々の付加物およびオリゴマーは、下記の式で表され、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Arは、1〜4個の範囲の芳香環を含み、1〜6個の範囲のアルキル環置換基を有する芳香族炭化水素部分であり、そのような置換基のうちの1個、およびそのような置換基の1個以下は、メチル基であり、前記メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換であり、Ar′は、独立して1〜4個の範囲の芳香環を含む芳香族炭化水素部分であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、nは、0〜24の範囲の整数であり、
I) 以下に記載される少なくとも成分B)を、(1)以下に記載される成分A)、C)
、およびD)から形成され、随意に、成分C)の量にほぼ等しいか、またはそれ未
満の量で成分B)を含む混合物、または、(2)成分A)、B)、C)、およびD
)と、さらなる量の成分A)、C)、およびD)、ならびに随意に反応器に導入さ
れる前記さらなる量の成分C)未満の量の成分B)と、から前もって形成した混合
物のいずれかを含む、機械的に撹拌される前記反応器内に送給するステップと、
II) (1) 前記反応器内に導入される成分B)の総量が、前記反応器内に導入され
る成分A)の量に対して約5〜約100モルパーセントの範囲であり、前記
成分B)の擬定常状態濃度が、成分B)の全て、または実質的に全ての送給
中にゼロを超え、前記成分B)の擬定常状態濃度が、ポリマー形成の最小化
の有無に関わらず、オリゴマーを形成するように維持され、前記反応器の内
容物を、約85℃〜約130℃の範囲の1つもしくは複数の温度に維持する
ような速度、または、
(2) 前記反応器内に導入される成分B)の量に対する、前記反応器内に導入
される成分A)の総量が、成分B)の約5〜約100モルパーセントの範囲
であり、前記成分B)の擬定常状態濃度が、ポリマー形成の最小化の有無に
関わらず、オリゴマーを形成するように維持され、前記反応器の内容物を、
約85℃〜約130℃の範囲の1つもしくは複数の温度に維持するような速
度のいずれかに、成分B)の送給速度を維持するステップと、
III) 成分B)の送給を終了し、よって反応を終了させるステップと、
を含み、
(ii) 前記反応器内に導入される成分C)の量が、成分B)の約10〜約0.
1モルパーセントの範囲であり、
(iii) 前記反応器内に導入される成分D)の量が、成分B)の約10〜約0
.1モルパーセントの範囲であり、
(iv) 成分C)に対する成分D)のモル比が、約0.8:1〜約8:1の範囲
である、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーを含み、そのような混合物の個々の付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーは次式で表され、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Arは、1〜4個の範囲の芳香環を含み、1〜6個の範囲のアルキル環置換基を有する芳香族炭化水素部分であり、そのような置換基のうちの1個、およびそのような置換基の1個以下は、メチル基であり、前記メチル基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換であり、Ar′は、独立して1〜4個の範囲の芳香環を含む芳香族炭化水素部分であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、nは、0〜79の範囲の整数である、生成物混合物を調製するためのプロセスであって、
I) 以下に記載される少なくとも成分B)を、(1)以下に記載される成分A)、C)
、およびD)から形成され、随意に、成分C)の量にほぼ等しいか、またはそれ未
満の量で成分B)を含む混合物、または、(2)成分A)、B)、C)、およびD
)と、さらなる量の成分A)、C)、およびD)、ならびに随意に反応器に導入さ
れる前記さらなる量の成分C)未満の量の成分B)と、から前もって形成した混合
物のいずれかを含む、機械的に撹拌される前記反応器内に送給するステップと、
II) (1) 前記反応器内に導入される成分B)の総量が、前記反応器内に導入され
る成分A)の量に対して約5〜約100モルパーセントの範囲であり、前記
成分B)の擬定常状態濃度が、成分B)の全て、または実質的に全ての送給
中にゼロを超え、前記成分B)の擬定常状態濃度が、ポリマー形成の最小化
の有無に関わらず、オリゴマーを形成するように維持され、前記反応器の内
容物を、約85℃〜約130℃の範囲の1つもしくは複数の温度に維持する
ような速度、または、
(2)前記反応器内に導入される成分B)の量に対する、前記反応器内に導入さ
れる成分A)の総量が、成分B)の約5〜約100モルパーセントの範囲で
あり、前記成分B)の擬定常状態濃度が、ポリマー形成の最小化の有無に関
わらず、オリゴマーを形成するように維持され、前記反応器の内容物を、約
85℃〜約130℃の範囲の1つもしくは複数の温度に維持するような速度
のいずれかに、成分B)の送給速度を維持するステップと、
III) 成分B)の送給を終了し、よって反応を終了させるステップと、
を含み、
(ii) 前記反応器内に導入される成分C)の量が、成分B)の約10〜約0.
1モルパーセントの範囲であり、
(iii) 前記反応器内に導入される成分D)の量が、成分B)の約10〜約0
.1モルパーセントの範囲であり、
(iv) 成分C)に対する成分D)のモル比が、約0.8:1〜約8:1の範囲
である、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
成分A)が、(i)トルエン、または(ii)1または2個のアルキル基によって置換され、それぞれが少なくとも2個の炭素原子を含むトルエン、または(iii)1または2個のフェネチル基によって置換されるトルエン、または(iv)1または2個の1−フェニルプロピル(C−CHCHCH−)基によって置換されるトルエン、または(v)1−メチルナフタレン、または(vi)2−メチルナフタレンである、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
成分B)が、(a)スチレン、または(b)環アルキル化スチレン、または(c)α−メチルスチレン、または(d)環アルキル化α−メチルスチレン、または(e)1−ビニルナフタレン、または(f)2−ビニルナフタレンである、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
成分C)が、アルキルリチウム化合物、またはフェニルリチウム、またはベンジルリチウム、またはアルキル部分が1〜5個の炭素原子を含む1−フェニルアルキルリチウムである、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
成分D)が、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミンである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
− 成分A)が、(i)トルエン、または(ii)1または2個のアルキル基によって置換され、それぞれが少なくとも2個の炭素原子を含むトルエン、または(iii)1または2個のフェネチル基によって置換されるトルエン、または(iv)1または2個の1−フェニルプロピル(C−CHCHCH−)基によって置換されるトルエン、または(v)1−メチルナフタレン、または(vi)2−メチルナフタレンであり、
− 成分B)が、(a)スチレン、または(b)環アルキル化スチレン、または(c)α−メチルスチレン、または(d)環アルキル化α−メチルスチレン、または(e)1−ビニルナフタレン、または(f)2−ビニルナフタレンであり、
− 成分C)が、アルキルリチウム化合物、またはフェニルリチウム、またはベンジルリチウム、またはアルキル部分が1〜5個の炭素原子を含む1−フェニルアルキルリチウムである、
請求項1〜5のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
I) 成分A)が、1〜4個の範囲の芳香環を含み、1〜6個の範囲のアルキル環置換基
を有し、
II) 成分B)が、分子中に1〜4個の範囲の芳香環を有し、
III) 成分C)が、1〜約5個の範囲の炭素原子を有するアルキルリチウム化合物、
約5〜約7個の範囲の炭素原子を有するシクロアルキルリチウム化合物、フェニル
リチウム、ベンジルリチウム、および1−ヘキシル−1−フェニルリチウムであり、
IV) 成分D)が、プロピレンジアミン、またはエチレンジアミン、またはポリエチレ
ンイミンから誘導される、ジ(第3級アミン)リガンドである、
請求項1〜5のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
成分D)が、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミンである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項13】
前記温度が、約105℃〜約115℃の範囲である、請求項1〜4のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
前記温度が、還流温度であり、成分A)が、トルエンである、請求項1〜4のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
成分B)が、成分A)の約15〜約100モルパーセントの範囲である、請求項1〜4のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
(2)において、前記温度が、約85℃〜約90℃の範囲である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項17】
成分B)が、成分A)の約5〜約70モルパーセントの範囲である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項18】
前記反応器内に導入される成分A)の量に対する、前記反応器内に導入される成分B)の総量は、成分A)の約10〜約30モルパーセントの範囲であり、
前記反応器内に導入される成分C)の量が、成分B)の約1〜約0.5モルパーセ
ントの範囲であり、
前記反応器内に導入される成分D)の量が、成分B)の約1〜約0.5モルパーセ
ントの範囲であり、
成分C)に対する成分D)のモル比が、約0.95:1〜約1.05:1の範囲で
ある、
これらの特徴の少なくとも1つを有する、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
前記反応器内に導入される成分C)の量が、成分B)の約1〜約0.75モルパーセントの範囲である、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
前記反応器内に導入される成分D)の量が、成分B)の約1〜約0.75モルパーセントの範囲である、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項21】
成分D)が、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミンである、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項22】
各Rが、水素原子である、請求項2〜5のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項23】
成分A)が、トルエンであり、成分B)が、スチレンであり、前記生成物が、少なくと
も1,3−ジフェニルプロパンをさらに含み、1,3−ジフェニルプロパンが、前記反応生成物から回収される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項24】
前記反応生成物が、少なくとも1,3,5−トリフェニルペンタンをさらに含み、少な
くとも1,3,5−トリフェニルペンタンが、前記反応生成物から回収される、
前記反応生成物が、少なくとも1,3,5,7−テトラフェニルヘプタンをさらに含み
、少なくとも1,3,5,7−テトラフェニルヘプタンは、前記反応生成物から回収さ
れる、
前記反応生成物は、少なくとも1,3,5,7,9−ペンタフェニルノナンをさらに含
み、少なくとも1,3,5,7,9−ペンタフェニルノナンは、前記反応生成物から回
収される、
これらの特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
成分C)が、アルキルリチウム化合物であり、成分D)が、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミンである、請求項1〜8、10〜11、13〜20、または22〜24のうちのいずれかに記載のプロセス。
【請求項26】
組成物であって、
a) 以下の式によって表される付加物または付加物の混合物であって、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Arは、メチル基を1つだけ有する芳香族炭化水素部分であり、前記メチル
基を担持する芳香環上の少なくとも1つの位置は、非置換であり、Ar′は、独立
して芳香族炭化水素部分であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、nは、0
〜6の範囲の整数である、付加物または付加物の混合物、
b) 2つ以上の付加物および1つもしくは複数のオリゴマーを含む混合物であって、こ
れらの混合物の個々の付加物およびオリゴマーは、以下の式によって表すことがで
き、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Ar、独立して各Ar′、および独立して各Rは、a)で定義されているも
のであり、nは、0〜24の範囲の整数である、混合物、または、
c) 付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーを含む混合物であって、これらの混
合物の個々の付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーは、以下の式によって
表すことができ、
Ar−CH[−CHCR(Ar′)]−CHCHR−Ar′
式中、Ar、独立して各Ar′、および独立して各Rは、a)で定義されているも
のであり、nは、0〜79の範囲の整数である、混合物、
を含む、組成物。
【請求項27】
Arが、1〜4個の範囲の芳香環を含み、1〜6個の範囲のアルキル環置換基を有する、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
Ar′が、1〜4個の範囲の芳香環を含む、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、付加物または付加物の混合物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が、付加物であり、該付加物は、1−フェニル−3−(o−トリル)プロパン、または1−フェニル−3−(m−トリル)プロパン、または1−フェニル−3−(m−トリル)プロパン、または1−フェニル−3−(p−tert−ブチルフェニル)プロパン、または1−フェニル−3−(p−エチルフェニル)プロパン、または1−(o−イソプロピルフェニル)−3−(p−トリル)プロパン、または1−フェニル−3−(2,
4,6−トリメチルフェニル)プロパン、または1−フェニル−3−(1−ナフチル)プロパン、または1−フェニル−3−(2−ナフチル)プロパン、または1,3,5,7,9−ペンタフェニルノナンである、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が、個々の付加物の式中のnの値が連続番号である、付加物の混合物である請求項26に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物は、2つ以上の付加物および1つもしくは複数のオリゴマーを含む混合物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項33】
nが、約1〜約20の範囲である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
nが、約1〜約9の範囲である、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物が、付加物、オリゴマー、および低分子量ポリマーを含む混合物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項36】
前記芳香族部分が、1〜4個の範囲の芳香環を含む、請求項26〜35のうちのいずれかに記載の組成物。
【請求項37】
前記芳香族部分が、芳香環を1つだけ含む、請求項26〜35のうちのいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
Rが、メチル基である、請求項26〜35のうちのいずれかに記載の組成物。
【請求項39】
Rが、水素原子である、請求項26〜35のうちのいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物が、約1.1〜約3.0の範囲の多分散性と、約60〜約1600ダルトンの範囲の標準偏差と、約−4.5〜約4.5の範囲の非対称性と、を有する、請求項32〜34のうちのいずれかに記載の組成物。
【請求項41】
前記組成物が、約1.2〜約3.0の範囲の多分散性と、約160〜約2100のダルトンの標準偏差と、約−4.5〜約4.5の範囲の非対称性と、を有する、請求項35に記載の組成物。
【請求項42】
前記混合物の少なくとも35重量パーセントは、nが1〜約5の範囲である成分で構成される、請求項32に記載の組成物。
【請求項43】
前記混合物の少なくとも20重量パーセントは、nが1〜約3の範囲である成分で構成される、請求項32に記載の組成物。
【請求項44】
前記組成物の少なくとも約0.005重量%〜約5重量%未満が、以下の式で表される部分を含み、
CHCHCHAr′
CH(CHCHAr′−)CHCHAr′
Ar′CHCH(Ar′CHCHCH(CHCHAr′−)
CHCHAr′
式中、Ar′は、独立して芳香族炭化水素部分であり、nは、整数であり、mは、整数または分数であり、mとnとの合計は、約24以下である、請求項32に記載の組成物。
【請求項45】
前記混合物が、
1,3−ジフェニルプロパンを含み、前記混合物の少なくとも約0.005重量%
〜約5重量%が、2−(2−フェニルエチル)トルエン、3−(2−フェニルエチ
ル)トルエン、および4−(2−フェニルエチル)トルエンを含むか、
1,3,5−トリフェニルペンタンを含み、前記混合物の少なくとも約0.005
重量%〜約5重量%が、1−トリル−2,4−ジフェニルブタンを含むか、
1,3,5,7−テトラフェニルヘプタンを含み、前記混合物の少なくとも約0.
005重量%〜約5重量%が、1−トリル−2,4,6−トリフェニルヘキサンを
含むか、または
1,3,5,7,9−ペンタフェニルノナンを含み、前記混合物の少なくとも約0
.005重量%〜約5重量%が、1−トリル−2,4,6,8−テトラフェニルオ
クタンを含む、
請求項29に記載の組成物。
【請求項46】
前記混合物が、
1−フェニル−3−(o−トリル)プロパン、
1−フェニル−3−(m−トリル)プロパン、
1−フェニル−3−(p−トリル)プロパン、
1−フェニル−3−(p−tert−ブチルフェニル)プロパン、
1−フェニル−3−(p−エチルフェニル)プロパン、
1−(o−イソプロピルフェニル)−3−(p−トリル)プロパン、
1−フェニル−3−(2,4,6−トリメチルフェニル)プロパン、
1−フェニル−3−(1−ナフチル)プロパン、または
1−フェニル−3−(2−ナフチル)プロパン、のうちの少なくとも1つを含み、
前記混合物の少なくとも約0.005重量%が、前記化合物の少なくとも1つの構
造異性体を含む、
請求項29に記載の組成物。
【請求項47】
前記混合物の少なくとも約0.005重量%〜約5重量%が、前記化合物の少なくとも1つの構造異性体を含む、請求項46に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2010−529265(P2010−529265A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511396(P2010−511396)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/066219
【国際公開番号】WO2008/154454
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】