説明

付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物

【課題】種々の金属又はプラスチック基材に対して良好な接着性を有する硬化物を与える付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有し、且つアルコキシ基及びエポキシ基を有さない含フッ素オルガノ水素シロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してSiH基として0.5〜3.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:白金族金属原子換算で0.1〜500ppm、
(D)1分子中にケイ素原子に結合したアルコキシ基を1個以上有する有機ケイ素化合物:0.01〜10質量部、
(E)加水分解触媒:0.001〜5質量部
を含有してなることを特徴とする付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の金属又はプラスチック基材に対して良好な接着性を有する硬化物を与える付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第2990646号公報(特許文献1)には、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有する含フッ素オルガノ水素シロキサン、及び白金族化合物からなる組成物が、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、離型性、撥水性、撥油性、及び低温特性等の性質のバランスよく優れた硬化物を与えることが開示されている。
【0003】
また、上記組成物に、更に第3成分として、ヒドロシリル基とエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基とを有するオルガノポリシロキサンを添加することにより、金属又はプラスチック基材に対する自己接着性が付与されることも開示されている。
そして、特許第3239717号公報(特許文献2)には、上記組成物を加熱硬化して得られる硬化物は、上記各種性質に優れているため、これらの特性が要求される各種工業分野、例えば電気電子部品周辺や車載用部品周辺などの接着用途に有用に使用されることが開示されている。
【0004】
しかし、該接着剤組成物は、特に150℃以下の温度で硬化させた場合、一部の基材に対して自己接着性を発現させることが難しく、プライマーを使用しないと接着性を発現しない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2990646号公報
【特許文献2】特許第3239717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、種々の金属又はプラスチック基材に対して良好な接着性を有する硬化物を与える付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有し、且つアルコキシ基及びエポキシ基を有さない含フッ素オルガノ水素シロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してSiH基として0.5〜3.0モルとなる量、(C)白金族金属系触媒:白金族金属原子換算で0.1〜500ppm、(D)1分子中にケイ素原子に結合したアルコキシ基を1個以上有する有機ケイ素化合物:0.01〜10質量部、(E)加水分解触媒:0.001〜5質量部を含有してなることを特徴とする付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物が、種々の金属又はプラスチック基材に対して良好な接着性を有する硬化物を与えることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物を提供する。
請求項1:
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有し、且つアルコキシ基及びエポキシ基を有さない含フッ素オルガノ水素シロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してSiH基として0.5〜3.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:白金族金属原子換算で0.1〜500ppm、
(D)1分子中にケイ素原子に結合したアルコキシ基を1個以上有する有機ケイ素化合物:0.01〜10質量部、
(E)加水分解触媒:0.001〜5質量部
を含有してなることを特徴とする付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
請求項2:
更に、
(F)1分子中に炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基を1個以上有し、且つアルコキシ基を有さないオルガノシロキサン:0.01〜10質量部
を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
請求項3:
(A)成分が、下記一般式(1)
CH2=CH−(X)a−Rf2−(X’)a−CH=CH2 (1)
[式中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(2)
【化1】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は水素原子又は置換もしくは非置換の1価炭化水素基である。)で表される基、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(3)
【化2】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は上記と同じ基である。)で表される基であり、aは独立に0又は1である。
Rf2は下記一般式(4)又は(5)で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。
【化3】


(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数であって、且つpとqの和は2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化4】


(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記と同じである。)]
で表される直鎖状ポリフルオロ化合物である請求項1又は2に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
請求項4:
(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物のアルケニル基含有量が、0.002〜0.3mol/100gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
請求項5:
(B)成分の含フッ素オルガノ水素シロキサンが、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基、又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基を有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
請求項6:
(D)成分の有機ケイ素化合物が、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したアルコキシシリル基を1個以上有するオルガノシロキサン又はトリアルコキシシランであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
請求項7:
(E)成分の加水分解触媒が、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機錫化合物、又は有機アルミニウム化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
請求項8:
(F)成分のオルガノシロキサンが、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は1価のパーフルオロオキシアルキル基を1個以上有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、種々の金属又はプラスチック基材に対して良好な接着性を有する硬化物を与える付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物は、(A)直鎖状ポリフルオロ化合物、(B)含フッ素オルガノ水素シロキサン、(C)白金族金属系触媒、(D)有機ケイ素化合物、及び(E)加水分解触媒を必須成分として含有するものである。
【0011】
[(A)成分]
(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物であり、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
CH2=CH−(X)a−Rf2−(X’)a−CH=CH2 (1)
[式中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(2)
【化5】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は水素原子又は置換もしくは非置換の1価炭化水素基である。)で表される基、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(3)
【化6】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は上記と同じ基である。)で表される基であり、Rf2は2価のパーフルオロポリエーテル基であり、aは独立に0又は1である。]
【0012】
ここで、R1としては、水素原子以外の場合、炭素数1〜12、特に1〜10の1価炭化水素基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、又はこれらの基の水素原子の一部もしくは全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した置換1価炭化水素基などが挙げられる。
【0013】
上記一般式(1)のRf2は2価のパーフルオロポリエーテル構造であり、下記一般式(4)又は(5)で表される基が好ましい。
【化7】


(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数であって、且つpとqの和は2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化8】


(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【0014】
Rf2基の好ましい例としては、例えば、下記式(i)〜(iii)で示されるものが挙げられる。中でも下記式(i)で示されるものが好ましい。
【化9】


(式中、m及びnは1以上の整数、m+n=2〜200である。)
【化10】


(式中、m及びnは1以上の整数、m+n=2〜200である。)
【化11】


(式中、m’は1〜200の整数、n’は1〜50の整数である。)
【0015】
(A)成分の好ましい例として、下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
【化12】


[式中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(2)
【化13】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基)で表される基、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(3)
【化14】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は上記と同じである)で表される基であり、aは独立に0又は1、Lは2〜6の整数、b及びcはそれぞれ0〜200の整数である。]
【0016】
上記一般式(7)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0017】
【化15】

【0018】
【化16】


(式中、m1及びn1はそれぞれ0〜200、m1+n1=6〜200を満足する整数を示す。)
【0019】
このような直鎖状ポリフルオロ化合物のアルケニル基含有量は、0.002〜0.3mol/100gであることが好ましい。アルケニル基含有量が0.002mol/100g未満の場合、架橋度合いが不十分になって硬化不具合が生じる可能性があり、0.3mol/100g超過の場合、本発明の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物から得られる硬化物の、ゴム弾性体としての機械的特性が損なわれる可能性があるため好ましくない。
また、直鎖状ポリフルオロ化合物の粘度(23℃)は、JIS K6249に準拠した粘度測定で、5〜100,000mPa・s、より好ましくは500〜50,000mPa・s、更に好ましくは1,000〜20,000mPa・sの範囲内にあることが、組成物をシール、ポッティング、コーティング、含浸等に使用する際に、硬化物においても適当な物理的特性を有しているので望ましい。当該粘度範囲内で、用途に応じて最も適切な粘度を選択することができる。
なお、直鎖状ポリフルオロ化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
[(B)成分]
(B)成分は、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有し、且つアルコキシ基及びエポキシ基を有さない含フッ素オルガノ水素シロキサンである。
このような(B)成分は、上記(A)成分の架橋剤ないし鎖長延長剤として機能するものであり、また、(A)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性等の観点から、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基等のフッ素含有基を有するものが好ましい。
【0021】
このフッ素含有基としては、例えば下記一般式で表されるもの等を挙げることができる。
g2g+1
−Cg2g
(式中、gは1〜20、好ましくは2〜10の整数である。)
【化17】


(式中、fは2〜200、好ましくは2〜100、hは1〜3の整数である。)
【化18】


(式中、i及びjは1以上の整数、i+jは2〜200、好ましくは2〜100である。)
−(CF2O)r−(CF2CF2O)s−CF2
(式中、r及びsはそれぞれ1〜50の整数である。)
【0022】
また、これらパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基又はパーフルオロオキシアルキレン基とケイ素原子とをつなぐ2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基及びそれらの組み合わせ、あるいはこれらの基にエーテル結合酸素原子、アミド結合、カルボニル結合等を介在させたものであってもよく、例えば、
−CH2CH2−、
−CH2CH2CH2−、
−CH2CH2CH2OCH2−、
−CH2CH2CH2−NH−CO−、
−CH2CH2CH2−N(Ph)−CO−(但し、Phはフェニル基である。)、
−CH2CH2CH2−N(CH3)−CO−、
−CH2CH2CH2−O−CO−
等の炭素数2〜12のものが挙げられる。
【0023】
また、この(B)成分の含フッ素オルガノ水素シロキサンにおける1価又は2価の含フッ素置換基、即ちパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基、又はパーフルオロオキシアルキレン基を含有する有機基以外のケイ素原子に結合した1価の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基及びこれらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子、シアノ基等で置換された、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1〜20の置換又は非置換の炭化水素基が挙げられる。
【0024】
(B)成分の含フッ素オルガノ水素シロキサンとしては、環状、鎖状、三次元網状及びそれらの組み合わせのいずれでもよい。この含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子数は、特に制限されるものではないが、通常2〜60、好ましくは3〜30程度である。
【0025】
このようなフッ素含有基を有する(B)成分としては、例えば下記の化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。下記式において、Meはメチル基を示す。
【0026】
【化19】

【0027】
【化20】

【0028】
【化21】

【0029】
上記(B)成分の配合量は、(A)成分を硬化する有効量であり、通常(A)成分中に含まれるビニル基、アリル基、シクロアルケニル基等のアルケニル基1モルに対して(B)成分のヒドロシリル基、即ちSiH基が0.5〜3.0モル、より好ましくは0.8〜2.0モルとなる量である。ヒドロシリル基(≡SiH)が少なすぎると、架橋度合いが不十分となる結果、硬化物が得られない場合があり、また、多すぎると硬化時に発泡してしまう場合がある。
【0030】
[(C)成分]
(C)成分である白金族金属系触媒は、ヒドロシリル化反応触媒である。ヒドロシリル化反応触媒は、(A)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のヒドロシリル基との付加反応を促進する触媒である。このヒドロシリル化反応触媒は、一般に貴金属又はその化合物であり、高価格であることから、比較的入手し易い白金又は白金化合物がよく用いられる。
【0031】
白金化合物としては、例えば塩化白金酸又は塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体、アルコールやビニルシロキサンとの錯体、シリカ、アルミナ、カーボン等に担持した金属白金等を挙げることができる。白金又はその化合物以外の白金族金属系触媒として、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム系化合物も知られており、例えばRhCl(PPh33、RhCl(CO)(PPh32、Ru3(CO)12、IrCl(CO)(PPh32、Pd(PPh34等を例示することができる。なお、前記式中、Phはフェニル基である。
【0032】
これらの触媒の使用にあたっては、それが固体触媒であるときには固体状で使用することも可能であるが、より均一な硬化物を得るためには塩化白金酸や錯体を適切な溶剤に溶解したものを(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物に相溶させて使用することが好ましい。
【0033】
(C)成分の配合量は、ヒドロシリル化反応触媒として有効量でよいが、所望の硬化速度に応じて適宜増減することができる。通常、(A)成分100質量部に対して0.1〜500ppm(白金族金属原子換算)の配合が好ましい。
【0034】
[(D)成分]
(D)成分は、1分子中にケイ素原子に結合したアルコキシ基を1個以上有する有機ケイ素化合物であり、組成物に自己接着性を与える接着付与剤である。
(D)成分としては、特に、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したアルコキシシリル基を1個以上有するオルガノシロキサンやトリアルコキシシランが好ましい。
これら(D)成分は単独で用いても良いし、2種類以上を併用してもよい。
上記(D)成分は、(A)成分との相溶性、分散性及び硬化後の均一性等の観点から1価のパーフルオロアルキル基又は1価のパーフルオロオキシアルキル基を1個以上有してもよい。
また、上記(D)成分は、(A)成分との付加反応性の観点から、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を1個以上有してもよい。
上記(D)成分として用いられるオルガノシロキサンのシロキサン骨格は、環状、鎖状、分岐状及びそれらの組み合わせのいずれでもよい。
【0035】
上記(D)成分のオルガノシロキサンとしては、下記一般式で表されるものを用いることができる。
【化22】


(上記一般式中、R2はハロゲン置換又は非置換の1価炭化水素基であり、L、M、Qは下記に示す。vは0≦v≦50、より好ましくは0≦v≦20の整数であり、wは0≦w≦50、より好ましくは0≦w≦20の整数であり、xは1≦x≦50、より好ましくは1≦x≦20の整数であり、yは0≦y≦50、より好ましくは0≦y≦20の整数であり、zは0≦z≦50、より好ましくは0≦z≦20の整数である。またv+w+x+y+zはGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量500〜20,000を満たすような整数である。)
【0036】
2のハロゲン置換又は非置換の1価炭化水素基としては、炭素数1〜10、特に1〜8のものが好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した置換1価炭化水素基などが挙げられ、この中で特にメチル基が好ましい。
【0037】
Lは炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したアルコキシシリル基であり、具体的には下記の基を挙げることができる。
−R3−Si(OR43
(式中、R3は炭素数1〜10、特に1〜4の2価炭化水素基、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、オクチレン基等のアルキレン基であり、R4は炭素数1〜8、特に1〜4の1価炭化水素基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基である。)
【化23】


(式中、R5は炭素数1〜8、特に1〜4の1価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基であり、R6は水素原子又はメチル基であり、kは2〜10の整数である。)
【0038】
Mは下記一般式(8)で表される基である。
−Z−Rf (8)
[式(8)中、Zは−(CH2h−、又は−(CH2i−X”−(X”は−OCH2−、又は−Y”−NR’−CO−(Y”は−CH2−又は下記構造式(9)
【化24】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基であり、R’は水素原子、置換もしくは非置換の好ましくは炭素数1〜12、特に1〜10の1価炭化水素基である。))で表される基であり、h及びiは1〜10、好ましくは1〜5の整数である。]
【0039】
また、上記一般式(8)中のRfは1価のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロオキシアルキル基を示す。1価のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロオキシアルキル基の例としては、(B)成分の1価のフッ素含有基として挙げたものと同様の基が例示され、具体的には下記一般式で表されるもの等を挙げることができる。
【化25】


(式中、gは1〜20、好ましくは2〜10の整数である。またfは2〜200、好ましくは2〜100の整数であり、hは1〜3の整数である。)
【0040】
Qは炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基であり、具体的には下記の基を挙げることができる。
【化26】


(式中、R7は酸素原子が介在してもよい炭素数1〜10、特に1〜5の2価炭化水素基で、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、オクチレン基等のアルキレン基である。)
【0041】
(D)成分のオルガノシロキサンとしては、具体的には下記構造式で示されるものが例示される。なお、下記式において、Meはメチル基を示す。
【0042】
【化27】

【0043】
【化28】

【0044】
【化29】


(p、q及びrは0以上の整数である。)
【0045】
【化30】

【0046】
【化31】

【0047】
【化32】


(p、q及びrは0以上の整数である。)
【0048】
また、上記(D)成分として用いられるトリアルコキシシランは特に限定されないが、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等アルコキシ基の他に反応性有機基を同一分子内に有するシランや、パーフルオロプロピルトリメトキシシラン等の含フッ素トリアルコキシシランが好ましい。
【0049】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部である。0.01質量部未満の場合には十分な接着性が得られず、また10質量部を超えると組成物の流動性が悪くなり、得られる硬化物の物理的強度が低下し、また硬化性も低下するおそれがある。
【0050】
[(E)成分]
(E)成分は、(D)成分の有機ケイ素化合物の加水分解性を高めるための触媒機能を有する加水分解触媒である。
【0051】
(E)成分の例としては、チタンテトライソプロポキシドやチタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラアセチルアセトネート等の有機チタン化合物、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機ジルコニウム化合物、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫アセチルアセトナート等の有機錫化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物、他の酸性触媒、塩基性触媒等が挙げられ、組成物の付加硬化性を阻害しない限り特に限定されないが、中でも、本発明の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物の保存安定性の観点から、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機錫化合物又は有機アルミニウム化合物が好ましい。これら加水分解触媒は、単独で使用されても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0052】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。0.001質量部未満の場合は、十分な触媒効果が得られず、また5質量部を超えると、(D)成分がゲル状に硬化してしまったり、組成物の流動性が悪くなるため好ましくない。
【0053】
[(F)成分]
このような付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物には、その実用性を高めるために種々の添加剤を必要に応じて添加することができる。
特に、接着付与剤の役割で(F)成分として、1分子中に炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基を1個以上有し、且つアルコキシ基を有さないオルガノシロキサンを添加することが好ましい。
【0054】
更に、(F)成分としては、(A)成分との相溶性、分散性及び硬化後の均一性等の観点から、ケイ素原子に結合した炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は1価のパーフルオロオキシアルキル基を1個以上有するものがより好ましい。
また、上記(F)成分は、(A)成分との付加反応性の観点から、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を1個以上有してもよい。
【0055】
上記(F)成分のオルガノシロキサンのシロキサン骨格は、上記(D)成分として用いられるオルガノシロキサンと同様であり、環状、鎖状、分岐状などのいずれでもよく、またこれらの混合形態でもよい。
【0056】
上記(F)成分のオルガノシロキサンとしては、下記一般式で表されるものを用いることができる。
【化33】


(式中、R2、R4、M、Q、v、w、x、yは上記(D)成分のオルガノシロキサンで説明したものと同様である。)
【0057】
(F)成分として用いられるオルガノシロキサンとしては、具体的には下記構造式で示されるものが例示される。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、下記式において、Meはメチル基を示す。
【0058】
【化34】

【0059】
【化35】


(p、q及びrは0以上の整数である。)
【0060】
【化36】

【0061】
【化37】


(p、q及びrは0以上の整数である。)
【0062】
上記(F)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。0.01質量部未満の場合は、十分な接着性が得られず、また10質量部を超えると組成物の流動性が悪くなり、得られる硬化物の物理的強度が低下する。
【0063】
[その他の成分]
このような付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物においては、その実用性を高めるために上記の(A)〜(E)成分及び(F)成分以外にも、可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤、無機質充填剤、接着促進剤等の各種添加剤を必要に応じて配合することができる。これらの添加剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲、並びに組成物の特性及び硬化物の物性を損なわない限りにおいて任意である。
【0064】
可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤としては、下記一般式(10)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物及び/又は下記一般式(11)、(12)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物を併用することができる。
Rf3−(X’)aCH=CH2 (10)
[式中、X’、aは上記式(1)で説明したものと同様であり、Rf3は下記一般式(13)で表される基である。
【化38】


(式中、tは2又は3であり、wは1以上の整数、且つ上記(A)成分のRf2基に関するp、q及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和よりも小さい。)
D−O−(CF2CF2CF2O)c−D (11)
(式中、Dは式:Cs2s+1−(sは1〜3)で表される基であり、cは1〜200の整数であり、且つ、前記(A)成分のRf2基に関するp、q及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和よりも小さい。)
D−O−(CF2O)d(CF2CF2O)e−D (12)
(式中、Dは上記と同じであり、d及びeはそれぞれ1〜200の整数であり、且つdとeの和は、前記(A)成分のRf2基に関するp、q及びrの和、並びにu及びvの和以下である。)
【0065】
上記一般式(10)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる(なお、下記m2は上記要件を満足するものである)。
【0066】
【化39】

【0067】
上記一般式(11)、(12)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる(なお、下記n3又はn3とm3の和は上記要件を満足するものである。)。
CF3O−(CF2CF2CF2O)n3−CF2CF3
CF3−[(OCF2CF2n3(OCF2m3]−O−CF3
(m3+n3=2〜201、m3=1〜200、n3=1〜200)
【0068】
上記一般式(10)〜(12)のポリフルオロ化合物の配合量は、本組成物中の(A)成分100質量部に対して1〜200質量部が好ましく、より好ましくは1〜150質量部である。また、粘度(23℃)は、(A)成分と同様に、5〜100,000mPa・sの範囲であることが望ましい。
【0069】
無機質充填剤として、例えばヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、石英粉末、溶融石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム等の補強性又は準補強性充填剤((A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部、特に1〜25質量部の配合量とすることが好ましい。)、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、アルミン酸コバルト等の無機顔料、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン等の耐熱向上剤、アルミナ、窒化硼素、炭化ケイ素、金属粉末等の熱伝導性付与剤等を添加することができる。
【0070】
ヒドロシリル化反応触媒の制御剤の例としては、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレン性アルコールや、上記の1価含フッ素置換基を有するクロロシランとアセチレン性アルコールとの反応物、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、トリアリルイソシアヌレート等、あるいはポリビニルシロキサン、有機リン化合物等が挙げられ、その添加により硬化反応性と保存安定性を適度に保つことができる。
【0071】
また、カルボン酸無水物やピロメリット酸テトラアリルエステル等の接着促進剤を添加することができる。
【0072】
このような付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物の構成に関しては、用途に応じて上記(A)〜(E)成分や(F)成分及びその他の任意成分全てを1つの組成物として取り扱う、いわゆる1液タイプとして構成してもよいし、あるいは、2液タイプとし、使用時に両者を混合するようにしてもよい。
【0073】
このような付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物の硬化条件は、20℃以上200℃未満の範囲であれば特に制限されないが、50℃以上180℃未満が好ましい。
また、その場合の硬化時間は架橋反応及び基材との接着反応が完了する時間を適宜選択すればよいが、一般的には5分〜24時間が好ましく、より好ましくは10分〜12時間である。
【0074】
このようにして得られる付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物は、金属及びプラスチック基材に対して、良好な接着性を有する硬化物を与えることから、特に電気電子部品周辺や車載用部品周辺用途の接着剤として有用である。
【0075】
なお、本発明の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物を使用するに当たり、その用途、目的に応じて該組成物を適当なフッ素系溶剤、例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、フロリナート(3M社製)、パーフルオロブチルメチルエーテル、パーフルオロブチルエチルエーテル等に所望の濃度に溶解して使用してもよい。特に、薄膜コーティング用途においては上記溶剤を使用することが好ましい。
【0076】
なお、本発明の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物から得られる硬化物を各種基材に接着させる場合、各種プライマーを併用することもできる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示し、Meはメチル基を示す。また、粘度は23℃における測定値を示す(JIS K6249に準拠)。
【0078】
[実施例1]
下記式(14)で示されるポリマー(粘度10,000mPa・s、ビニル基量0.0119モル/100g)100部に疎水化処理されたヒュームドシリカR−976(日本アエロジル社製商品名、BET比表面積250m2/g)4.0部、下記式(15)で示される含フッ素オルガノ水素シロキサン(SiH基量0.00668モル/g)1.24部、下記式(16)で示される含フッ素オルガノ水素シロキサン(SiH基量0.00394モル/g)1.81部、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.20部、下記式(17)で示される有機ケイ素化合物1.5部、下記式(18)で示される有機ケイ素化合物0.20部、下記式(19)で示される加水分解触媒0.07部を順次添加し均一になるように混合した。その後、脱泡操作を行うことにより組成物を調製した。
【0079】
【化40】

【0080】
【化41】

【0081】
次に、各種被着体[アルミニウム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂]の100mm×25mmのテストパネルをそれぞれの端部が10mmずつ重複するように、厚さ1mmの上記実施例1で得られた組成物の層をはさんで重ね合わせ、150℃で1時間加熱することにより該組成物を硬化させ接着試験片を作製した。次いで、これらの試料について引張剪断接着試験(引張速度50mm/分)を行い、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表1に示す。
【0082】
[実施例2]
上記実施例1において、上記式(19)で示される加水分解触媒の代わりに、下記式(20)で示される加水分解触媒0.07部を配合する以外は実施例1と同様の方法で組成物を調製し、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表1に示す。
Zr(O−n−C49)(C572)(C6932 (20)
【0083】
[実施例3]
上記実施例1において、上記式(19)で示される加水分解触媒の代わりに、下記式(21)で示される加水分解触媒0.07部を配合する以外は実施例1と同様の方法で組成物を調製し、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表1に示す。
Ti(O−i−C374 (21)
【0084】
[実施例4]
上記実施例1において、上記式(19)で示される加水分解触媒の代わりに、下記式(22)で示される加水分解触媒0.07部を配合する以外は実施例1と同様の方法で組成物を調製し、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表1に示す。
(n−C492Sn(OCH32 (22)
【0085】
[実施例5]
上記実施例1において、上記式(19)で示される加水分解触媒の代わりに、下記式(23)で示される加水分解触媒0.07部を配合する以外は実施例1と同様の方法で組成物を調製し、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表1に示す。
Al(O−i−C373 (23)
【0086】
[実施例6]
上記実施例1において、上記式(18)で示される有機ケイ素化合物の代わりに、下記式(24)で示される有機ケイ素化合物0.5部を配合する以外は実施例1と同様の方法で組成物を調製し、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表1に示す。
【化42】

【0087】
[実施例7]
上記実施例1において、下記式(25)で示されるオルガノシロキサン1.5部を追加する以外は実施例1と同様の方法で組成物を調製し、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表1に示す。
【化43】

【0088】
[比較例1]
上記実施例1の配合において、上記式(19)で示される加水分解触媒を配合しないこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を調製し、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表2に示す。
【0089】
[比較例2]
上記実施例1の配合において、上記式(17)及び(18)で示される有機ケイ素化合物の代わりに、上記式(25)で示される有機ケイ素化合物1.5部配合すること以外は実施例1と同様の方法で組成物を調製し、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表2に示す。
【0090】
[比較例3]
上記実施例7の配合において、上記式(19)で示される加水分解触媒を配合しないこと以外は実施例1と同様の方法で組成物を調製し、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表2に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有し、且つアルコキシ基及びエポキシ基を有さない含フッ素オルガノ水素シロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してSiH基として0.5〜3.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:白金族金属原子換算で0.1〜500ppm、
(D)1分子中にケイ素原子に結合したアルコキシ基を1個以上有する有機ケイ素化合物:0.01〜10質量部、
(E)加水分解触媒:0.001〜5質量部
を含有してなることを特徴とする付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項2】
更に、
(F)1分子中に炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基を1個以上有し、且つアルコキシ基を有さないオルガノシロキサン:0.01〜10質量部
を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項3】
(A)成分が、下記一般式(1)
CH2=CH−(X)a−Rf2−(X’)a−CH=CH2 (1)
[式中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(2)
【化1】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は水素原子又は置換もしくは非置換の1価炭化水素基である。)で表される基、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(3)
【化2】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は上記と同じ基である。)で表される基であり、aは独立に0又は1である。
Rf2は下記一般式(4)又は(5)で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。
【化3】


(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数であって、且つpとqの和は2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化4】


(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記と同じである。)]
で表される直鎖状ポリフルオロ化合物である請求項1又は2に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項4】
(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物のアルケニル基含有量が、0.002〜0.3mol/100gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項5】
(B)成分の含フッ素オルガノ水素シロキサンが、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基、又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基を有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項6】
(D)成分の有機ケイ素化合物が、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したアルコキシシリル基を1個以上有するオルガノシロキサン又はトリアルコキシシランであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項7】
(E)成分の加水分解触媒が、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機錫化合物、又は有機アルミニウム化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項8】
(F)成分のオルガノシロキサンが、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は1価のパーフルオロオキシアルキル基を1個以上有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の付加硬化型フルオロポリエーテル系接着剤組成物。

【公開番号】特開2011−168768(P2011−168768A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3837(P2011−3837)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】