説明

付着性蔓植物の面状案内体

【課題】構造物等の外面を付着性蔓植物によって、短期間に、目的とする状態に覆うことのできる付着性蔓植物の面状案内体を提案しようとするものである。
【解決手段】付着性蔓植物Eを案内する面状案内体Aであって、この面状案内体Aの表面10が、当該付着性蔓植物Eの茎から生ずる根や髭等の付着手段Eaの付着可能な帯状粗面10bを当該表面10の下側から上側に向かうように備えており、この帯状粗面10b以外の表面10を当該付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aとして構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、付着性蔓植物を用いて塀、外壁、擁壁等の構造物の側面を覆うようにして壁面等の構造物の面を確実に、かつ、目的とする態様に、比較的短期間で緑化することのできる付着性蔓植物の面状案内体の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁面、ブロック塀その他の塀や門柱、境界壁、擁壁等の各種構造体の外側面を覆うように蔓植物を植栽することが試みられている。
【0003】
このように構造物の外側面を蔓植物で覆うことによって、たんに構造物の外観の景観を整えるばかりでなく、構造物の外側面の直射光による蓄熱を避けることができ、また、当該構造物を含む空間全体の環境を整えうる利点を有している。しかしながら、蔓植物は、この蔓植物で、構造物の外側面を予定される態様に都合良く覆うには、多くのガイド手段や人手が必要とされ、その育成管理が難しかった。
【0004】
また、かかる蔓植物、特に、付着性蔓植物は、その蔓植物の備える特性に従って生長する傾向が強く、構造物の外側面のなす形態や向きに対応して、その生長に方向性を有することがあり、構造物表面を覆う付着性植物に斑を生ずることがあり、構造物の外側面を都合良く覆うのに多くの年月を要する傾向にあった。
【0005】
かかる点から、建物の壁面に多孔質セラミックスを取り付けたタイルパネルを備えさせて、この多孔質セラミックスを取り付けたタイルパネルを伝わって蔓性植物が建物を覆うようにした緑化用壁構造体が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−153117公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように建物の壁面を多孔質セラミックスを取り付けたタイルパネルで面状に覆う構成にあっては、植栽された蔓性植物は、当該蔓性植物の特性に従って、当該面状のパネル面における付着生長し易い部分を選んで生長することとなり、壁を構成するパネル面を、偏った状態や斑の状態に覆う傾向が強く、予期している状態に都合良く被覆させるには難があった。
【0008】
また、このような多孔質セラミックスを取り付けたタイルパネルで構成される壁面に蔓性植物を任意に這わせるようにした場合、蔓性植物は当該蔓性植物の特性に従ってパネル面の最も付着生長し易い部分を選んで延びることとなり、当該壁面全体の緑化に多くの年月を要する不具合があった。
【0009】
この発明は、構造物等の外面を付着性蔓植物によって、短期間に、しかも、目的とする状態に覆うことのできる付着性蔓植物の面状案内体を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、前記課題を解決するために、付着性蔓植物を案内する面状案内体であって、この面状案内体の表面が、当該付着性蔓植物の茎から生ずる根や髭等の付着手段の付着可能な帯状粗面を当該表面の下側から上側に向かうように備えており、この帯状粗面以外の表面を当該付着性蔓植物の付着不可能な平滑面としてあることを特徴とする付着性蔓植物の面状案内体としてある。
【0011】
このように構成される面状案内体にあっては、付着性蔓植物は、当該蔓性植物における付着手段である根や髭等の付着生成し易い前記帯状粗面に沿って生長し、当該蔓性植物における生長の向きの制御が可能とされる。
【0012】
この結果、各種構造物における外面を当該面状案内体で構成することによって、これら構造物の外面を、目的とする形態に効率良く蔓性植物で被覆でき、予定通りの緑化をなすことができる。
【0013】
また、このように、面状案内体における下側から上側に向けて蔓性植物の生長する向きに当該蔓性植物の付着に都合の良い帯状粗面を設けることで、構造物の外面に案内される蔓性植物は当該帯状粗面に効率良く根や髭等を付着生成することができ、当該帯状粗面に沿って、効率よく生長し、短期間で、壁面等の面状案内面を被覆、緑化することができる。
【0014】
また、前記面状案内体にあって、前記帯状粗面を、前記面状案内体の表面に設けられている溝内に備えた構成の付着性蔓植物の面状案内体にあっては、壁面等の構造物の外面に備えられている当該面状案内体に案内される蔓性植物が、この溝内に案内されながら付着、生長されることから、その付着状態を、より確実に維持され、風等による当該蔓性植物の壁面等の面状案内体からの剥離、脱落を効果的に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る付着性蔓植物の面状案内体は、付着性蔓植物によって、建物や塀あるいは擁壁等の各種構造物の面を、確実に目的とする態様に覆い得ると共に、短期間に効率よく緑化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜図10にもとづいて、この発明を実施するための最良の形態に係る付着性蔓植物Eの面状案内体Aについて説明する。
【0017】
なお、ここで図1は当該発明を実施するための最良の形態に係る付着性蔓植物Eの面状案内体Aを斜め上方から見て、図2では、これを横向きに断面して上方から見て示している。
図3〜図6は、各種形態に係る面状案内体Aを、その要部を断面して、上方から見て示している。
図7〜図9は面状案内体Aを備える構造物Bの上部側の要部を破断した状態で斜め上方から見て示している。
図10は、面状案内体Aを備える構造物Bを斜め上方から見て示している。
【0018】
この発明を実施するための最良の形態に係る付着性蔓植物Eの面状案内体Aは、付着性蔓植物Eを案内する面状案内体Aであって、この面状案内体Aの表面10が、当該付着性蔓植物Eの茎から生ずる根や髭等の付着手段Eaの付着可能な帯状粗面10bを当該表面10の下側から上側に向かうように備えており、この帯状粗面10b以外の表面10を当該付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aとして構成してある。
【0019】
かかる面状案内体Aでは、付着性蔓植物Eは、当該付着性蔓植物Eにおける付着手段Eaである付着根や付着髭等の付着生成し易い前記帯状粗面10bに沿って生長することとなり、当該付着性蔓性植物における生長の向きの制御が可能であり、各種構造物Bにおける外面を、当該面状案内体Aで覆って構成することにより、効率良く当該付着性蔓植物Eで被覆することができ、企画した通りの緑化面Cを得ることができる特長を有している。
【0020】
また、このように、面状案内体Aにおける下側から上側に向けて付着性蔓植物Eの生長する向きに当該付着性蔓植物Eの付着に都合の良い帯状粗面10bを設けることで、当該面状案内体Aで覆われた構造物Bの外面に案内される付着性蔓植物Eは当該帯状粗面10bに効率良く根や髭等の付着手段Eaを付着生成することができ、当該帯状粗面10bに沿って、効率よく生長し、短期間で、面状案内体Aを被覆して構成される構造物B面に緑化面Cを構成することができる。
【0021】
かかる面状案内体Aは、その表面10に付着性蔓植物Eの付着根や付着髭等の付着手段Eaの付着可能な帯状粗面10bを備え、かつ、この帯状粗面10b以外の当該表面10を当該付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aとしてものであれば、いかなる素材によって構成してあっても、また、いかなる形態に構成してあってもよい。
【0022】
かかる面状案内体Aは、典型的には、当該面状案内体Aを単体又は複数枚の連設によって、建物に備えられて当該建物の外壁面を構成し、塀や門柱等に備えられて当該塀や門柱等の表面を構成したり、擁壁等の構造物Bの外側に備えられて当該構造物Bの表面を構成するように用いられるが、この面状案内体Aを用いて隔壁体を構成するなど、当該面状案内体Aを単体で独立に用いるようにしてあってもよい。
【0023】
また、かかる面状案内体Aは、当該面状案内体Aの表面10に付着性蔓植物Eの付着可能な帯状粗面10bを備え、かつ、この帯状粗面10b以外の当該面状案内体Aの表面10が付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aとしてあれば、単一素材によって構成してあっても、複合素材によって構成してあってもよい。
【0024】
かかる面状案内体Aにおいて、付着性蔓植物Eの付着可能な粗面は、この付着性蔓植物Eにおける付着根や付着髭等の付着手段Eaに適合して、当該付着性蔓植物Eの付着根、付着髭等の付着手段Eaが都合良く付着する粗面を備えるものとしてある。
【0025】
かかる付着性蔓植物Eの付着可能な粗面は、例えば、植栽される付着性蔓植物Eにおける各節から発生する付着根における主根、当該主根から伸びる細根、当該細根から発生する根毛等が絡みつき、かつ、当該根毛からの滲出液と共に当該付着性蔓植物Eを効果的に付着する凹凸を備える粗面として構成される。
【0026】
また、かかる付着性蔓植物Eの付着可能な粗面は、例えば、植栽される付着性蔓植物Eにおける付着面に接した巻髭のクワの実状の先端から伸びる多数の指状部の指先を絡ませ、かつ、当該先端からの滲出液と共に当該付着性蔓植物Eを効果的に付着する凹凸を備える粗面として構成される。
【0027】
かかる帯状粗面10bは、付着性蔓植物Eの付着根や巻髭の付着細胞の入り込み易い凹凸又は空隙を備えるものとして、典型的には、当該付着性蔓植物Eの根毛及び付着根の細胞の投錨できる0.2mm〜1μmの凹凸を備える面であることが好ましい。
【0028】
かかる付着性蔓植物Eの付着可能な粗面としては、例えば、コンクリート面、モルタル面、けい酸カルシウム面、陶器面等の種々の粗面がある。
【0029】
また、かかる付着性蔓植物Eの付着不可能な面としては、例えば、平滑なガラス面、平滑なプラスチックス面、平滑な金属面、陶器の釉面等がある。
【0030】
かかる面状案内体Aは、例えば、付着性蔓植物Eの付着可能な粗面を備えるサイディングなどのパネル材の表面10に、帯状にマスキングを施して、吹き付け等適宜の手法で平滑な塗膜を形成し、付着性蔓植物Eの付着されない平滑面10aと当該付着性蔓植物Eの付着される帯状粗面10bとを備えるように構成することができる。
【0031】
かかる面状案内体Aは、例えば、付着性蔓植物Eの付着可能な粗面を備えるサイディングなどのパネル材の表面10の全面に適宜の手法で平滑な塗装塗膜を形成し、この全面に設けられた塗装塗膜を帯状に削り取ることによって、付着性蔓植物Eの付着されない平滑面10aと当該付着性蔓植物Eの付着される帯状粗面10bとを備えるように構成することができる。
【0032】
かかる面状案内体Aは、例えば、サイディングなどのパネル材を、帯状の無釉薬部を残して焼成された陶器製プレートを備えた構成とし、付着性蔓植物Eの付着されない平滑面10aと当該付着性蔓植物Eの付着される帯状粗面10bとを備えるように構成することができる。
【0033】
かかる面状案内体Aは、例えば、サイディングなどのパネル材を、釉薬を施して焼成された陶器製プレートを備える構成とし、この釉薬を施して焼成された陶器面を帯状に削り取り、付着性蔓植物Eの付着されない平滑面10aと当該付着性蔓植物Eの付着される帯状粗面10bとを備えるように構成することができる。
【0034】
かかる面状案内体Aは、例えば、付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aを備えるサイディングなどのパネル材の表面10に、ヤスリがけ等によって、帯状の粗面を作り出して、付着性蔓植物Eの付着されない平滑面10aと当該付着性蔓植物Eの付着される帯状粗面10bとを備えるように構成することができる。
【0035】
かかる面状案内体Aは、例えば、付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aを備えるサイディングなどのパネル材の表面10に、塗膜面が粗面をなす塗料を帯状に塗布することで、付着性蔓植物Eの付着されない平滑面10aと当該付着性蔓植物Eの付着される帯状粗面10bとを備えるように構成することができる。
【0036】
かかる面状案内体Aは、例えば、付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aを備えるガルバニウム鋼板からなるサイディングなどのパネル材の表面10に、塗膜面が粗面をなす断熱セラミック無機塗料を帯状に塗布することで、付着性蔓植物Eの付着されない平滑面10aと当該付着性蔓植物Eの付着される帯状粗面10bとを備えるように構成することができる。
【0037】
かかる面状案内体Aにおける帯状粗面10bは、当該面状案内体Aの下側から上側に向けて延びるように設けてあり、この帯状粗面10bを伝わって付着性蔓植物Eが、当該面状案内体Aを備えて構成される壁面等を効率よく這い上がり得るようにしてある。
【0038】
かかる点から、この面状案内体Aは、壁面緑化の目的で植栽される蔓植物Eが付着しながら当該壁面等を這い上がるのに都合の良い粗面と幅を備えたものとして用意される。
【0039】
かかる面状案内体Aに備えられる帯状粗面10bは、その幅、即ち、当該帯状粗面10bを横向きの幅が、当該面状案内体Aの帯状粗面10bに案内される蔓植物Eの根や髭などが都合よく付着生長し得る幅を備えたものとして用意される。かかる帯状粗面10bは、平行な直線状縁を備えて構成してあっても、ギザギザ縁を備えて構成してあってもよい。
【0040】
また、この面状案内体Aに備えられる帯状粗面10bは、当該面状案内体Aの下側から上側に向けて延びる態様に設けてあれば、垂直向きにストレート状や蛇行状に設けてあっても、斜め方向にストレートにあがるように設けてあっても、蛇行しながら斜め上方に向けてあがるように設けてあってもよい。かかる斜め上方に向けて備えられる帯状粗面10bは、この面状案内体Aに案内される付着性蔓植物Eの生長特性に都合の良い傾きを備えるものとしてあり、当該帯状粗面10bから、これに案内される付着性蔓植物Eがはみ出して生長し難い傾きとしてある。
【0041】
かかる面状案内体Aに備えられる帯状粗面10bは、当該面状案内体Aに一本の帯状粗面10bとして設けてあっても、複数本の帯状粗面10bとして設けてあってもよく当該各帯状粗面10bが並列状態に設けてあっても、一部が交叉するように設けてあってもよい。
【0042】
かかる面状案内体Aに備えられる帯状粗面10bは、これを、当該面状案内体Aに備えられる溝11内に構成することで、付着性蔓植物Eを、より効果的に案内させることができる。
【0043】
この面状案内体Aに備えられる溝11は、この溝底又は、当該溝底及び溝側壁面とが、前記帯状粗面10bをなすように当該面状案内体Aに備えられている。従って、当該溝11は、前記帯状粗面10bとほぼ同一の態様で当該面状案内体Aに備えられる。
【0044】
かかる面状案内体Aに備えられる溝11は、その溝幅を5mm〜50mm、溝深さを5mm〜50mmとし、その溝底面又は当該溝底面及び溝側壁面を粗面とすることで、当該溝11に付着性蔓植物Eを都合良く案内することができ、強風等にあっても、壁面等に付着生長されている付着性蔓植物Eが付着壁面等から剥がれ落ちる虞を少なくすることができる。
【0045】
かかる面状案内体Aは、単体で、又は、複数枚を左右方向、上下方向、又は上下左右方向に連続させて、壁、塀、門柱、擁壁等の構造体の表面を構成するように備えて、当該壁、塀、門柱、擁壁等の表面に付着性蔓植物Eの付着案内される緑化面Cを構成して用いる。
【0046】
このような構成からなる面状案内体Aを用いることによって、建物の壁面や、塀、門柱、擁壁等の構造物B表面の緑化を、計画的に、かつ、速やかになすことができる。
【0047】
かかる壁面緑化等に用いられる付着性蔓植物Eは、緑化対象壁面を都合良く覆うように生育させることが好ましく、当該緑化壁面の面積に対応して必要量の繁茂をなすように、一定量の培地量を備える植栽桝Daを用意し、この植栽桝Daに当該付着性蔓植物Eを植栽、管理することが好ましい。
【0048】
例えば、比較的、小さな壁面緑化に用いられる付着性蔓植物Eの植栽に際して、50〜100リットル前後の植栽桝Daに必要培地Dを充填し、これに、付着性蔓植物Eを植栽することで、必要以上の繁茂を生じない状態での壁面緑化を都合良くなすことができる。
【0049】
また、壁面等の対象緑化面Cから上方に伸び出す蔓植物Eは、この対象緑化面Cの上端部で、これを適宜トリマー等で一括して剪定することで、対象緑化面Cを整然とした緑化面Cとして維持することができる。
【0050】
また、この壁面等の対象緑化面Cの上端部に、面状案内体Aによって案内された付着性蔓植物Eの上方に伸びる先端の生長を阻害する手段、例えば、直射日光による蓄熱バー20を設け、あるいは、随時通電可能なヒーター21を設け、上方に伸びようとする付着性蔓植物Eの生長を阻害するように構成することで、緑化対象面を整然とした緑化面Cとして維持することができる。
【0051】
また、この壁面等の緑化対象面の上端部に、面状案内体Aによって案内された付着性蔓植物Eの上方に伸びる先端部における根や髭等の付着できない平滑面10aを設けることで、蔓植物Eにおける付着根や巻髭を脱落させ、蔓植物Eの上方に向けた付着生長を阻害するように構成することで、緑化対象面を整然とした緑化面Cとして維持することができる。
【0052】
また、この壁面等の対象緑化面Cの上端部に、面状案内体Aによって案内された付着性蔓植物Eの上方に伸びる先端部を誘え入れて反転するように案内する透明、半透明の円弧状断面をな遮蔽体22を設け、この遮蔽体22の下部側開口22aから付着性蔓植物Eの上部先端を誘い入れて、反転させ、当該蔓植物Eの上方に向けた生長を阻害するように構成することで、緑化対象面を整然とした緑化面Cとして維持することができる。
【0053】
このように構成される面状案内体Aにあっては、ナツヅタ、オオイタビ等の種々の付着性蔓植物Eを都合よく案内して壁面、塀面、門柱面、擁壁面等の各種構造物B面を確実に緑化することができる。
【0054】
図1及び図2は、典型的な面状案内体Aであって、例えば、矩形のコンクリート板等からなるパネルA’として構成してあり、このパネルA’を建物の外壁、塀、門柱、擁壁等に、順次に必要枚数を張り込むことで、当該外壁、塀、門柱、擁壁等の構造物Bに対象緑化面Cを構成するようにしてある。
【0055】
この図示例に係る面状案内体AをなすパネルA’は、その表面10の下側から上側に向けて複数条の、この図示例では三条の溝11を設けてあり、当該溝11は、概ね、5mm〜50mmの溝幅で、かつ、概ね、5mm〜50mmの溝深さにしてある。
【0056】
このパネルA’に備えられる溝11は当該パネルA’の下端と上端間にわたって、即ち、その溝11下端と溝11上端とを解放した状態に設けてあり、当該パネルA’を上方に向けて順次に連続して張り込んだ際に、この一連に連続して備えられる各パネルA’における溝11が連通して一連に連続する溝11を構成するようにしてある。
【0057】
この図示例に係るパネルA’は、その表面10にある溝11、即ち、溝底面及び溝側壁面を除く表面10を塗装してあり、塗膜による平滑面10aとしてあり、この溝底面及び溝側壁面で当該面状案内体Aの下側から上側に向かう帯状粗面10bを構成してある。
【0058】
この結果、付着性蔓植物Eは、パネルA’の素材であるコンクリート面とされている溝底面及び溝側壁面に付着根、付着巻き鬚を付着させるように当該溝11内を下方から上方に向けて生長し、この溝11から側方の平滑面10aに向けた生長が阻止されることとなり、この溝11に沿った生長方向の規制によって、比較的短期間に、対象緑化面Cの緑化をなすことができる。
【0059】
図3〜図6は、各種の面状案内体Aの要部、特に、その面状案内体Aの下側から上側に向かうように備えられている帯状粗面10b部分を、当該面状案内体Aを水平向きに断面して示したものである。
【0060】
図3に示される面状案内体Aは、付着性蔓植物Eの付着可能な素材に断面がコ字状の溝11を当該面状案内体Aの下側から上側に向けて設けてあり、この溝11の溝底面及び溝側壁面を除く当該面状案内体Aの表面10を付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aとして構成したものであって、付着性蔓植物Eは、この凹状溝11内を這うようにして下側から上側に向けて、その付着根、付着巻髭等の付着手段Eaを帯状粗面10bに付着させながら生長する。
【0061】
図4に示される面状案内体Aは、付着性蔓植物Eの付着可能な素材に断面がV字状の溝11を当該面状案内体Aの下側から上側に向けて設けてあり、この溝11の溝面を除く当該面状案内体Aの表面10を付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aとして構成したものであって、付着性蔓植物Eは、このV字状溝11の底を這うようにして下側から上側に向けて、その付着根、付着巻髭等の付着手段Eaを帯状粗面10bに付着させながら生長する。
【0062】
図5に示される面状案内体Aは、付着性蔓植物Eの付着可能な素材の表面10に付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aを備えた構成としてあると共に、この表面10の一部が下側から上側に向けて帯状に取り除かれた帯状粗面10bとしてあり、付着性蔓植物Eは、この帯状粗面10bに沿って下側から上側に這うように、その付着根、付着巻髭等の付着手段Eaを当該帯状粗面10bに付着させながら生長する。
【0063】
図6に示される面状案内体Aは、表面10が付着性蔓植物Eの付着不可能な平滑面10aとされている面状案内体Aの表面10に、塗着、焼き付け等の適宜の手法で付着性蔓植物Eの付着可能な素材を設けることで、帯状粗面10bを下側から上側に向けて備える構成としてあり、付着性蔓植物Eは、この帯状粗面10bに沿って下側から上側に這うように、その付着根、付着巻髭等の付着手段Eaを当該帯状粗面10bに付着させながら生長する。
【0064】
図7〜図9は、かかる面状案内体Aを備えて構成される壁、塀、門柱、擁壁等の構造物Bにおける緑化面Cの上端部を示したものであって、図7では、この緑化面Cの上面に直射日光により蓄熱される蓄熱バー20を、前記面状案内体Aの帯状粗面10bを這い上がる付着性蔓植物Eの上端部が入り込む隙間20aを、当該面状案内体Aとの間に生ずるように設け、この隙間20aに入り込む付着性蔓植物Eの先端生長部分を当該蓄熱バー20で焼損させて、当該面状案内体Aから上方に向けた付着性蔓植物Eの伸びだしを防ぐように構成してある。
また、図8では、この緑化面Cの上面に随時、通電可能なヒーター21を、前記面状案内体Aの帯状粗面10bを這い上がる付着性蔓植物Eの上端部が入り込む隙間21aを、当該面状案内体Aとの間に生ずるように設け、この隙間21aに入り込む付着性蔓植物Eの先端生長部分を当該ヒーター21で、必要に応じて焼損させて、当該面状案内体Aから上方に向けた付着性蔓植物Eの伸びだしを防ぐように構成してある。
また、図9では、ポリカーボネイト等からなる透明、半透明で、前記面状案内体Aの帯状粗面10bに連続するように付着性蔓植物Eの生長上端を誘導案内する開口22aを備える断面が弧状の遮蔽体22を、前記緑化面Cの上面に設け、前記面状案内体Aの帯状粗面10bを這い上がる付着性蔓植物Eの上端部を当該開口22aから遮蔽体22内に誘導すると共に、この透明、半透明の遮蔽体22の弧状面に沿って付着性蔓植物Eを案内するようにして、当該面状案内体Aから上方に向けた付着性蔓植物Eの伸びだしを防ぐように構成してある。
【0065】
図10は、かかる面状案内体Aを備えて構成される緑化面Cを備える構造物Bを示すものであって、構造物Bに備えられているエントランス等の各種開口部Ba等を避けるように、斜め向きにあがる帯状粗面10bを備える面状案内体Aを、上下方向に帯状粗面10bを備える面状案内体Aに適宜組み付けて、当該構造物Bの面を、複数枚の面状案内体Aで構成し、この構造物Bにおける面状案内体Aの備えられている側に植栽桝Daを設置し、この植栽桝Daの培地Dに、好みの付着性蔓植物Eを植栽し、この付着性蔓植物Eを前記面状案内体Aの帯状粗面10bに沿って上方に向けて案内すると共に、当該緑化面Cの上端部分で、この上方に伸び出す付着性蔓植物Eの上端を適宜トリマー等で一括剪定する構成としてある。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】典型的な面状案内体の斜視図
【図2】同断面図
【図3】同要部拡大断面図
【図4】同他の面状案内体の要部拡大断面図
【図5】同更に他の面状案内体の要部拡大断面図
【図6】同更に他の面状案内体の要部拡大断面図
【図7】同面状案内体を備えた構造物の上端部を示す要部斜視図
【図8】同面状案内体を備えた構造物の他の上端部を示す要部斜視図
【図9】同面状案内体を備えた構造物の更に他の上端部を示す要部斜視図
【図10】同面状案内体を備えた構造物の要部斜視図
【符号の説明】
【0067】
A 面状案内体
A’パネル
B 構造物
C 緑化面
E 付着性蔓植物
Ea 付着手段
10 表面
10a 平滑面
10b 帯状粗面
11 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着性蔓植物を案内する面状案内体であって、
この面状案内体の表面が、当該付着性蔓植物の茎から生ずる根や髭等の付着手段の付着可能な帯状粗面を当該表面の下側から上側に向かうように備えており、この帯状粗面以外の表面を当該付着性蔓植物の付着不可能な平滑面としてあることを特徴とする付着性蔓植物の面状案内体。
【請求項2】
前記帯状粗面が、前記面状案内体の表面に設けられている溝内に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の付着性蔓植物の面状案内体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate