説明

付着物の処理方法、仕切り壁の設置方法、及び、仕切り壁

【課題】少なくとも3つの昇降空間が水平方向の左右に並列して設定された中空構造体内付を容易に密閉区画して付着物を処理する付着物の処理方法等を提供する。
【解決手段】物体を上下昇降する少なくとも3つの昇降空間が水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内にて付着物の処理をする付着物の処理方法であって、両端に位置する前記昇降空間を除く中間昇降空間に、前記中空構造体内を、前記付着物が先に処理される先作業空間と、後で処理される後作業空間とに密閉区画する仕切り壁を形成する区画工程と、前記後作業空間を前記物体が上下昇降可能な状態とし、前記先作業空間にて前記処理をする付着物処理工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター等が設けられる、建物の中空空間内における付着物の処理方法、仕切り壁、及び、仕切り壁の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の中空空間としては、たとえば鉛直方向に長い内部空間内を乗りかごが上下昇降するように構成されたエレベーターシャフトがある。エレベーターには、複数台の乗りかごが左右に並列配置された、いわゆる多連式のエレベーターがあり、多連式のエレベーターのエレベーターシャフト内には、乗りかご毎に、互いに独立して昇降動作を行えるように昇降空間が設けられている。
【0003】
また、エレベーターシャフト内には、鉄骨架構の耐火被覆目的で施工されたアスベストがそのまま鉄骨に付着状態で残存していることがあり、このようなアスベストは、飛散前に一刻も早く除去等の無害化処理を施す必要がある。
【0004】
エレベーターシャフト内の付着物を取る方法として、例えば、付着物として綿ゴミ等の塵埃を清掃する方法は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−145448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、建屋内のアスベストを処理する際には、養生シート等により隔離密閉された作業空間を形成し、その中で処理作業を行うことが義務付けられている。ところが、上述のような多連式のエレベーターの場合にエレベーターシャフト全体を隔離密閉すると、全てのエレベーターが使えなくなってしまい著しく不便となる。このため、少なくとも1台のエレベーターは稼働状態のままで処理作業ができるように昇降空間毎に隔離密閉することが望ましい。
【0007】
しかしながら、多連式のエレベーターの場合には、左右方向に隣接する2つの昇降空間の間隔が狭く、また、左右方向に隣接する昇降空間の間に複数の中間ビームや梁などが設けられている場合があり、隣接する昇降空間の間を隔離密閉することは、中間ビームや梁などに遮られて難しく、作業も繁雑であるという課題がある。
【0008】
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、少なくとも3つの昇降空間が水平方向の左右に並列して設定された中空構造体内を容易に密閉区画して付着物を処理する付着物の処理方法、仕切り壁の設置方法、及び、仕切り壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために本発明の付着物の処理方法は、物体を上下昇降する少なくとも3つの昇降空間が水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内にて付着物の処理をする付着物の処理方法であって、前記少なくとも3つの昇降空間の両端に位置する前記昇降空間を除く中間昇降空間に、前記中空構造体内を、前記付着物が先に処理される先作業空間と、後で処理される後作業空間とに密閉区画する仕切り壁を形成する区画工程と、前記後作業空間を前記物体が上下昇降可能な状態とし、前記先作業空間にて前記処理をする付着物処理工程と、を有することを特徴とする付着物の処理方法である。
【0010】
昇降空間は物体が昇降移動する空間なので、隣接する昇降空間の間のように梁や中間ビーム等が設けられていることはない。このため、上記付着物の処理方法のように、昇降空間内に先作業空間と後作業空間とに密閉区画する仕切り壁を形成する場合には、梁や中間ビームを避ける必要がないので容易に仕切り壁を形成することが可能である。このとき、仕切り壁を設ける昇降空間が、左右に並列して設定された少なくとも3つの昇降空間の両端に位置する昇降空間を除く中間昇降空間である場合には区画された後作業空間に含まれる昇降空間にて物体を昇降可能としつつ、先作業空間にて付着物を処理することが可能である。
【0011】
かかる付着物の処理方法であって、前記区画工程は、前記中間昇降空間に前記中空構造体の天井面から床面にかけて壁下地材を設ける下地配設工程と、設けられた前記壁下地材に、前記中空構造体の内周面との間に空隙を設けて壁面材を取り付ける壁面形成工程と、前記壁面材の端部と前記中空構造体の内周面とを繋ぐ中継部材を取り付けて前記空隙を閉塞する閉塞工程と、を有することが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、中間昇降空間に中空構造体の天井面から床面にかけて設けた壁下地材に壁面材を取り付けて壁面を構成するので、中空構造体の天井面から床面に至るほぼ全面を覆う壁面を容易に設けることが可能である。このとき、壁面材は中空構造体の内周面との間に空隙を設けて壁下地材に取り付け、壁面材と内中面との間の空隙を中継部材にて閉塞するので、中空構造体を全面に亘って密閉区画することが可能である。
【0012】
かかる付着物の処理方法であって、前記中継部材にて塞がれる前記空隙が前記壁面材の端部と前記付着物との間の空隙の場合には、当該付着物の表面に飛散防止シートを設けて前記内周面を形成することが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、壁面材の端部と付着物との間の空隙は、付着物の表面に飛散防止シートを設けて内周面とするので、空隙を中継部材にて閉塞することによる付着物の飛散を防止することが可能である。
【0013】
かかる付着物の処理方法であって、前記中継部材は前記壁面材に前記後作業空間側から固定されており、前記付着物処理工程では、前記先作業空間側にて前記付着物を除去し、除去した部位に飛散防止剤を塗装し、前記飛散防止シートに当接された前記中継部材を取り外した際に、前記先作業空間と前記後作業空間とが連通される部位を覆う覆い部材を前記先作業空間側から前記壁面材に固定し、前記先作業空間側にて前記飛散防止剤が塗装された部位の前記覆い部材より前記先作業空間側に前記付着物と異なる新設付着物を付着させた後に、前記後作業空間側から前記中継部材を取り外して前記後作業空間において前記付着物を除去することが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、壁面材及び中継部材により先作業空間と後作業空間とに密閉区画された後に、先作業空間側の付着物が除去されるので、除去された付着物が外部に飛散することを確実に防止することが可能である。このとき、除去された付着物は後作業空間にも飛散しないので、後作業空間は先作業空間での付着物の除去処理に拘わらず使用することが可能である。このため、先作業空間にて付着物を処理しつつ、後作業空間に含まれる昇降空間にて物体を昇降させることが可能である。また、付着物が除去された部位には飛散防止剤を塗装するので、付着物の飛散をより確実に防止することが可能である。さらに、覆い部材を取り付けてから、飛散防止シートと壁面材との間の空隙を閉塞する中継部材を取り外すので、先作業空間内を密閉区画した状態に保ったままで、即ち、先作業空間と後作業空間とが連通されることなく、中継部材を取り外すことが可能である。また、覆い部材を取り付けた後に、覆い部材より先作業空間側に新設付着物を付着させる処理を実行するので、付着物が付着していた部位の覆い部材より先作業空間側を新設付着物で覆うことが可能である。
【0014】
かかる付着物の処理方法であって、前記後作業空間にて前記付着物が除去された部位に前記飛散防止剤を塗装した後に、前記覆い部材の前記後作業空間側に前記新設付着物を付着させることが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、後作業空間の付着物を除去した部位に飛散防止剤を塗装した後に、覆い部材の後作業空間側に新設付着物を付着させるので、後作業空間においても、付着物の飛散を防止しつつ新設付着物を付着させることが可能である。
【0015】
かかる付着物の処理方法であって、前記覆い部材は、平板状をなし、前記飛散防止剤が塗装された部位と交差する交差方向に沿って配置するとともに当該覆い部材の縁部を前記飛散防止剤が塗装された部位に当接させ、前記覆い部材の前記後作業空間側に前記新設付着物が付着された後に、前記覆い部材が、前記交差方向に引き抜かれて取り外されることが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、平板状の覆い部材を、飛散防止剤が塗装された部位と交差方向に配置して、その縁部を飛散防止剤が塗装された部位に当接するので、覆い部材と内周面との接触面積を小さくすることが可能であり、より広い領域に新設付着物を付着させることが可能である。このため、先作業空間にて飛散防止剤が塗装された部位に当接された覆い部材の後作業空間側にて付着物を除去した後に、飛散防止剤を塗装するので、付着物が付着していた部位のほぼ全域に飛散防止剤を塗装することが可能である。そして、覆い部材が当接していた部位、すなわち、覆い部材の板厚分を除いた領域に新設付着物を付着させることが可能である。また、覆い部材を当該覆い部材が当接された部位と交差方向に引き抜いて取り外すので、覆い部材を取り外しても覆い部材の板厚分の隙間が形成されるだけで、新設付着物を剥がすことなく覆い部材を取り外すことが可能である。
【0016】
かかる付着物の処理方法であって、前記覆い部材を引き抜いた部位に、前記新設付着物を充填することが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、覆い部材を引き抜いて形成された隙間にも新設付着物を充填するので、付着物が付着していた部位の全域に新設付着物を設けることが可能である。
【0017】
かかる付着物の処理方法であって、前記中継部材と前記飛散防止シートとの間にシール材を充填することが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、中継部材と内周面との間にシール材を充填するので、中継部材と内周面との間も確実に密閉することが可能である。
【0018】
かかる付着物の処理方法であって、前記区画工程では、前記下地配設工程にて、前記中空構造体の前記天井面から前記床面にかけてワイヤーを張設し、張設した前記ワイヤーに、上下方向に互いに間隔を隔てて前記左右方向と交差する前後方向に沿う複数の板状部材を固定し、前記壁面形成工程にて、前記左右のぞれぞれの側から前記壁面材として気密性シートを前記複数の板状部材に貼り付けることが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、中空構造体の天井から床にかけて張設されたワイヤーに上下方向に間隔を隔てて前後方向に沿う複数の板状部材を固定するので、ワイヤーと板状部材とが格子状をなして高い剛性を備えた壁面の下地を形成することが可能である。そして、格子状をなすワイヤーと板状部材とに気密性シートを貼り付けるので、軽量でありつつ高い剛性を備え気密性にも優れた壁面を形成することが可能である。
【0019】
また、物体を上下昇降する少なくとも3つの昇降空間が水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内にて付着物の処理をする際に前記中空構造体を仕切る仕切り壁の設置方法であって、前記少なくとも3つの昇降空間の両端に位置する前記昇降空間を除く中間昇降空間に前記中空構造体の天井面から床面にかけて壁下地材を設ける下地配設工程と、設けられた前記壁下地材に、前記中空構造体の内周面との間に空隙を設けて壁面材を取り付ける壁面形成工程と、前記壁面材の端部と前記中空構造体の内周面とを繋ぐ中継部材を取り付けて前記空隙を閉塞する閉塞工程とを有することを特徴とする仕切り壁の設置方法である。
【0020】
昇降空間は物体が昇降移動する空間なので、隣接する昇降空間同士の間のように梁や中間ビーム等が設けられていることはない。このため、上記仕切り壁の設置方法のように、昇降空間内に先作業空間と後作業空間とに密閉区画する仕切り壁を形成する場合には、梁や中間ビームを避ける必要がないので容易に仕切り壁を形成することが可能である。
【0021】
また、物体を上下昇降する少なくとも3つの昇降空間が水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内にて付着物の処理をする際に前記中空構造体を仕切る仕切り壁であって、前記少なくとも3つの昇降空間の両端に位置する前記昇降空間を除く中間昇降空間に前記中空構造体の天井面から床面にかけて設けられた壁下地材と、設けられた前記壁下地材に、前記中空構造体の内周面との間に空隙を設けて取り付けられた壁面材と、前記壁面材の端部と前記中空構造体の内周面とを繋いで前記空隙を閉塞し前記壁面材に取り付けられる中継部材と、を有することを特徴とする仕切り壁である。
【0022】
昇降空間は物体が昇降移動する空間なので、隣接する昇降空間の間のように梁や中間ビーム等が設けられていることはない。このため、上記仕切り壁のように、昇降空間内に先作業空間と後作業空間とに密閉区画する仕切り壁が形成されている場合には、梁や中間ビームを避ける必要がないのでより簡単な構造にて先作業空間と後作業空間とに密閉区画することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、少なくとも3つの昇降空間が水平方向の左右に並列して設定された中空構造体内付を容易に密閉区画して付着物を処理する付着物の処理方法、仕切り壁の設置方法、及び、仕切り壁を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の仕切り壁が設けられたエレベーターシャフトを説明するためのイメージ図である。
【図2】本実施形態の仕切り壁が設けられる中空構造体を説明するための平断面の概略図である。
【図3】本実施形態の仕切り壁の正面図である。
【図4】本実施形態の仕切り壁の縦断面図である。
【図5】本実施形態の仕切り壁の平断面図である。
【図6】エレベーターシャフトに張設されたワイヤーを説明するための図である。
【図7】飛散防止シートを囲むように取り付けられる中継部材の配置を説明するための図である。
【図8】壁部材を示す正面図である。
【図9】アスベストの表面に貼り付けられた飛散防止シートを示す図であり、図9(a)は正面図、図9(b)は縦断面図、図9(c)は平断面図を示している。
【図10】閉塞プレートを説明するための図であり、図9(a)は正面図、図9(b)は縦断面図、図9(c)は平断面図を示している。
【図11】中継部材を説明するための図であり、図11(a)は正面図、図11(b)は縦断面図、図11(c)は平断面図を示している。
【図12】先作業空間のアスベスト除去処理及び飛散防止剤の塗装処理を説明するための図であり、図12(a)は正面図、図12(b)は縦断面図、図12(c)は平断面図を示している。
【図13】突当部材を取り付けた状態を示す図であり、図13(a)は正面図、図13(b)は縦断面図、図13(c)は平断面図を示している。
【図14】後作業空間のアスベスト除去処理及び飛散防止剤の塗装処理を説明するための図であり、図13(a)は縦断面図、図13(b)は平断面図を示している。
【図15】突当部材を取り外した後に形成されるロックウールの隙間を示す図であり、図15(a)は縦断面図、図15(b)は平断面図を示している。
【図16】壁面材の他の取り付け方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態の付着物の処理方法、仕切り壁の設置方法、及び、仕切り壁の一例について図を用いて詳細に説明する。
【0026】
本実施形態においては、処理すべき付着物が付着した中空構造体の内部空間の一例として、エレベーターシャフトを例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態の仕切り壁が設けられたエレベーターシャフトを説明するためのイメージ図である。図2は、本実施形態の仕切り壁が設けられる中空構造体を説明するための平断面の概略図である。
【0027】
本実施形態の仕切り壁30は、中空構造体10の内部空間の一例としてのエレベーターシャフトEVS内において、鉄骨梁21aに耐火被覆として既に吹き付けられている付着物としてのアスベストに対し除去等の無害化処理を施し、さらに、新たに付着させる新設付着物としてのロックウールを耐火被覆として鉄骨梁21aに施す耐火被覆処理をする際に用いられるものである。なお、以下の説明では、図1に示すように、互いに直交する三方向をそれぞれ、エレベーターシャフト内を乗りかごが昇降する方向を上下方向(鉛直方向)、乗りかごに乗り降りするための開口が設けられた壁面に沿う方向を左右方向(水平方向)、及び、乗りかごに対して奥行き方向となる方向を前後方向(水平方向)と言う。
【0028】
===エレベーターEVについて===
エレベーターEVは、図1、図2に示すように、ビル等の建物の一部に区画されたエレベーターシャフトEVSと、このエレベーターシャフトEVS内を鉛直方向に沿って上下昇降可能に案内された乗りかご13と、エレベーターシャフトEVSの上方の機械室MR内に配置されて、つり合い重りWを備えた吊りロープRを用いて前記乗りかご13を吊り下げつつ上下昇降する巻き上げ機19と、を備えている。
【0029】
このエレベーターEVは所謂3連式のエレベーターEVであり、エレベーターシャフトEVS内には、3つの乗りかご13が左右に並列して設けられており、各乗りかご13は、それぞれに対応して機械室MRに設置された各巻き上げ機19によって、各昇降空間TR(TRL,TRC,TRR)に沿って独立に昇降動作をする。
【0030】
エレベーターシャフトEVSは、鉛直方向に長い直方体形状の空間である。詳しくは、鉄骨梁21aと鉄骨柱21bとが鉛直方向に長い略直方体形状に組まれてエレベーターシャフトEVSの柱梁架構21が構築されている。また、左右に並列して設けられた3つの乗りかご13の各昇降空間TRの間には、各階床間の鉄骨梁21aに前後方向に架け渡して中間ビーム24が設けられている。ここで、鉄骨梁21a、鉄骨柱21bは、いずれもH型鋼である。
【0031】
また、上下に隣り合う鉄骨梁21a同士の間にはALC(気泡コンクリート)版等のコンクリートパネルが配置され、このコンクリートパネルにより、エレベーターシャフトEVSの側壁28が前後左右の四方を囲って形成されている。また、これら四方の側壁28の上端及び下端には、それぞれ、天井面10a及び床面10bが形成されており、これにより、エレベーターシャフトEVS内は、概ね上下前後左右の六方の全てが閉じた略閉空間になっている。
【0032】
なお、四方の側壁28のうちの前方の側壁28には、各乗りかご13及び建物の各階フロアーに対応させてエレベーターEVの乗り場出入口28aが開口形成されているとともに、各乗り場出入口28aには、左右にスライドする開閉扉25が設けられている。よって、乗りかご13の無い状態において前記開閉扉25が開くと、エレベーターシャフトEVS内は、建物側の空間であるエレベーターホールEVHと連通状態になる。
【0033】
ところで、上述からわかるように、一般にエレベーターシャフトEVS内には、柱梁架構21の鉄骨梁21aが部分的に露出している。このような鉄骨露出部位に対しては建築基準法上耐火被覆が必須であり、以前はその素材としてアスベストが使用されていた。このため、現在も既存のエレベーターシャフトEVS内にはアスベストが露出していることがある。
【0034】
このようなアスベストに対しては、例えば、既存エレベーターEVの設備更新工事等に併せて、無害化処理が行われる。無害化処理としては、アスベストを剥がす等の物理的に取り除く除去処理や、薬液塗布等により塗布部位の表面を固めてその場にアスベストを封じ込める封じ込め処理、更には、板材等でアスベストの付着部位を囲って外に露出しないようにする囲い込み処理等が挙げられる。
【0035】
そして、何れの処理を行うにせよ、その処理作業時には、周囲にアスベストが飛散しないように、その作業空間WSを隔離密閉養生することが義務付けられている。
【0036】
しかし、上述したような3連式等の多連式エレベーターEVの場合にエレベーターシャフトEVS全体を隔離密閉養生すると、全てのエレベーターEVが使えなくなり著しく不便となるので、少なくとも1台のエレベーターEVを稼働状態としたままで無害化処理が実施できることが望ましい。
【0037】
このため、エレベーターシャフトEVS内を水平方向の左右に仕切って、前記作業空間WSを乗りかご13単位、つまり昇降空間TR単位(エレベーターEV単位)で密閉区画することが求められている。しかしながら、エレベーターシャフトEVS内の隣接する昇降空間の間は狭く、梁や中間ビームを避けつつ密閉区画しなければならないため、仕切り壁の構造が複雑になるとともに仕切り壁を設けるための施工が煩雑である。
【0038】
そこで、本実施形態の仕切り壁は、梁や中間ビームが設けられることがない昇降空間内に設けることにより、隣接する昇降空間の間に梁や中間ビームなどを有する中空構造体内を容易に複数の空間に密閉区画し、区画した作業空間WS外の乗りかご13(昇降空間TR、エレベーターEV)の稼働を確保している。
【0039】
==本実施形態に係る仕切り壁、仕切り壁の設置方法、及び、付着物の処理方法===
<<仕切り壁>>
図3は、本実施形態に係る仕切り壁を示す正面図であり、図4は、本実施形態に係る仕切り壁の縦断面図、図5は、本実施形態に係る仕切り壁の平断面図である。図6は、エレベーターシャフトに張設されたワイヤーを説明するための図である。
【0040】
仕切り壁30は、例えば、図1〜図5に示すように、水平方向の左右に並列して設定された3つ以上の昇降空間のうちの両端に位置する昇降空間を除く昇降空間(以下、中間昇降空間という)に、エレベーターシャフトEVSの天井面10aから床面10bにかけて張設された複数本のワイヤー32及びワイヤー32に固定された板状部材としてのフラットバー62とを有する壁下地材に壁面材35としての気密性シート40が貼り付けられた壁部材34と、壁部材34の周端部に取り付けられる中継部材36と、壁部材34とアスベスト31との取り合い部分に設けられる閉塞プレート37と、を有している。
【0041】
ワイヤー32は、図6に示すように、エレベーターシャフトEVSの天井面10aと床面10bとにそれぞれ前後方向に沿わされて固定された上下の仮設鉄骨梁61間にテンションが導入されて張設されている。より具体的には、上下の仮設鉄骨梁61に前後方向に互いに間隔を隔てて、上下に対向する位置に設けられた複数のワイヤー係止部61aにワイヤー32が張設されている。
【0042】
上下に対向するワイヤー係止部61aのうちの上側のワイヤー係止部61aには、挿通されたワイヤー32の一端が折り返されてワイヤークリップ61bにて固定されている。下側のワイヤー係止部61aには、ワイヤー32の他端にワイヤークリップ61bにて設けられたシャックル61cを介してターンバックル61dと荷重計61eが設けられ、さらにその先に設けられたシャックル61cが固定されている。図3、図6の例では、前後方向に6本のワイヤー32が互いに間隔を隔てて鉛直方向に沿って設けられている。
【0043】
鉛直方向に張設された複数のワイヤー32には、上下方向に互いに間隔を隔てて、平板状をなす鋼製の複数のフラットバー62が前後方向に沿って配置され、各ワイヤー32とフラットバー62とはU字状をなすUボルト63にて固定されている。前後方向に沿わされてワイヤー32に固定されたフラットバー62の前後の端部は、側壁28と間隔が隔てられている。すなわち、フラットバー62の前後の端部と側壁28との間には空隙10c(図8参照)が設けられている。
【0044】
そして、各フラットバー62の両端部には、鉄骨梁21aを覆うアスベスト31の近傍を除いて、ほぼ鉛直方向に沿わせたフラットバー62が、前後方向に沿う複数のフラットバー62に渡って固定されている。また、鉄骨梁21aを覆うアスベスト31の近傍では、アスベスト31の上縁より上側のフラットバー62からアスベスト31の下縁より下側のフラットバー62に渡るように、後に貼り付けられる気密性シート40の周縁よりアスベスト31と反対側に離れた位置に、ほぼ鉛直方向に沿わせたフラットバー62が前後方向に沿うフラットバー62に固定されている。
【0045】
壁部材34は、上下方向に沿って張設された6本のワイヤー32とワイヤー32に固定されたフラットバー62を一体とする壁下地材を、左右の両面から覆う2枚の壁面材としての気密性シート40と、を有している。気密性シート40は、例えば、ポリエチレンシートやPETシート等であり、中空構造体10内を仕切るべく、上下方向に沿って張設されたワイヤー32とワイヤー32に固定されたフラットバー62に左右の両面から貼り付けられている。具体的には、気密性シート40はフラットバー62の両面に貼り付けられた両面テープ等により面接触状態に貼り付けられている。そして、気密性シート40は、中空構造体10の内周面との境界部分では、僅かに間隔が隔てられて空隙10c(図8参照)が設けられている。この空隙10cは中継部材36及び閉塞プレート37にて塞がれている。ここで、中空構造体10の内周面とは、中空構造体10の前後の側壁28、天井面10a及び床面10bと、各階床間にてエレベーターシャフトEVS内に露出しているスラブ12の端部及び鉄骨梁21aを被覆するアスベスト31の表面が相当するが、中継部材36により気密性シート40と繋がれる内周面としては、側壁28、天井面10a、床面10b、スラブ12の端部と、アスベスト31の表面に貼着された飛散防止シート38の表面に相当する。飛散防止シート38は、中継部材36を取り付ける際にアスベスト31が飛散することを防止するために設けられた耐火性を有する部材である。
【0046】
図7は、飛散防止シートを囲むように取り付けられる中継部材の配置を説明するための図である。
【0047】
中継部材36は、断面がL字状をなす鋼板であり、L字をなす一方の板部が中空構造体10の内周面に当接される当接板部36aをなし、他方の板部が、気密性シート40の一方の面に当接されてテープ材にて固定される固定板部36bをなしている。
【0048】
アスベスト31は鉄骨梁21aの表面に吹き付けられているので、鉄骨梁21aの表面を覆うように湾曲した曲面をなしており、その表面に貼り付けられた飛散防止シート38の表面も湾曲している。即ち、飛散防止シート38の表面は、側壁28等とは相違して平坦ではなく、また、鉄骨梁21aをなすH型鋼のフランジが突き出しているので、L字状の鋼板でなる中継部材36は、可及的に飛散防止シート38の表面に沿って当接板部36aが当接されるように、鉄骨梁21aの周りに配置される。このため、図7に示すように、飛散防止シート38に当接される中継部材36は幅が狭く形成されており、複数の中継部材36にて鉄骨梁21aの周囲を覆うように気密性シート40に取り付けられる。そして、複数の中継部材36の隣接する中継部材36と飛散防止シート38との間には、それらの隙間を埋めるようにシール材39が充填されている。
【0049】
閉塞プレート37は、鉄骨梁21aを被覆しているアスベスト31の表面に貼り付けられた飛散防止シート38の輪郭にほぼ沿う形状に形成された突き当て部を有する平板状の板金であり、気密性シート40の端部が固定されて飛散防止シート38と気密性シート40との端部間を繋ぐように配置される。この閉塞プレート37は、例えば、断面が1cm角の正方形状をなす角柱状の複数の木片が、同一方向に沿わされるとともに、長手方向に各々独立してスライド可能にガイドされつつ重ねられた治具により飛散防止シート38の表面形状、即ち輪郭が型取りされた形状に基づいて形成される。
【0050】
具体的には、治具が有する複数の木片が中空構造体10内に露出しているアスベスト31の上下方向の幅より広く重ねられており、各木片の先端部分が揃った状態にて、アスベスト31の表面に設けられた飛散防止シート38に正面、即ち、気密性シート40に沿う方向から当接させることにより、各木片を飛散防止シート38の表面の形状に沿ってスライドさせる。そして、上下端側の木片が側壁28に当接した後に、各木片がずれないように治具を飛散防止シート38から引き離し、そのまま、板金材料の上に各木片が平らに並ぶように配置する。その後、板金材料に各木片の先端の輪郭を写し、写した輪郭に沿って板金材料を切断して閉塞プレート37が形成される。
【0051】
<<仕切り壁の設置方法及びアスベストの処理方法>>
本実施形態では、3つの乗りかご13が左右に並列して設けられた3連式のエレベーターEVのエレベーターシャフトEVS内にて、最も左側の昇降空間TRLを含む作業空間WSからアスベスト31の処理を行うこととして説明する。ここでアスベスト31の処理には、既存のアスベスト31を除去する除去処理と、アスベスト31を除去した部位に新たな耐火被覆としてロックウール46を施す耐火被覆処理とが含まれる。
【0052】
エレベーターシャフトEVSの最も左側の昇降空間TRLを含む作業空間WSにてアスベスト31の除去処理を行う場合には、まず、中央に位置する昇降空間TRCに仕切り壁30を設置する。仕切り壁30は、まず、中央の昇降空間TRCの中央近傍に上下方向に沿ってワイヤー32を張設して設置する。以下の説明では、仕切り壁の設置方法を明確にすべく、各階床間に設けられアスベストに被覆された鉄骨梁21aの周辺を主に説明する。また、最も左側の昇降空間TRLを含み先に処理を行う作業空間を先作業空間WSBといい、左から右側に位置する昇降空間TRRを含む作業空間を、先作業空間WSBより後に処理を行う後作業空間WSAという。
【0053】
仕切り壁30を設置する際には、まず、先に処理対象となる左側の昇降空間TRL及び中央の昇降空間TRCに位置する乗りかご13や吊りロープR等を取り外す。ここで、中央の昇降空間TRCは、仕切り壁30により仕切られて、先作業空間WSBと後作業空間WSAとに区画されるので、左側の昇降空間TRLとともに乗りかご13や吊りロープR等を取り外しておく。
【0054】
そして、図1に示すように中空構造体10の天井面10aから、先に処理対象となる先作業空間WSBに含まれる左側の昇降空間TRL内に吊りワイヤー73を垂下する。また、エレベーターシャフトEVSの床面10b上に、作業ゴンドラ71を搬入するとともに、吊りワイヤー73の下端を作業ゴンドラ71の巻き上げ機75にセットする。そして、これにより、作業ゴンドラ71は、処理対象のエレベーターEVの昇降空間TRにおいて使用可能状態となる。作業者はこの作業ゴンドラ71を移動させつつアスベスト31の除去処理及び耐火被覆処理を実行する。また、エレベーターシャフトEVS内には作業空間内を換気すべく作業空間内の空気を吸い込む集塵機を備えておく。
【0055】
まず、図6に示すように、中空構造体10の天井面10a及び床面10bに複数のワイヤー係止部61aが長手方向に適宜間隔を隔てて設けられた仮設鉄骨梁61を、左側の昇降空間TRLと中央の昇降空間TRCとの間に長手方向を前後方向に沿わせるとともに上下に対向する位置に固定する。
【0056】
上下に配置された各係止部61aに、ターンバックル61d、荷重計61e及びシャックル61cが結合されたワイヤー32を接合し、ターンバックル61dを回動させつつ荷重計61eにてテンションを確認して適宜テンションを導入してワイヤー32を張設する(下地配設工程)。
【0057】
図8は、壁部材を示す正面図である。
次に、図8に示すように、鉛直方向に張設された複数本のワイヤー32に、互いに上下方向に間隔を隔ててフラットバー62を配置し、Uボルト63にてワイヤー32に固定する。このとき、フラットバー62の前後方向における端部と側壁28との間には空隙10cを設けておく。
【0058】
次に、フラットバー62が取り付けられたワイヤー32に、先作業空間WSB及び後作業空間WSA側の両側から中空構造体10のほぼ全体を仕切る大きさの気密性シート40を貼り付ける(壁面形成工程)。このとき、気密性シート40の端部と、中空構造体の内周面との間、すなわち天井面10a、床面10b、側壁28の表面、及びアスベスト31の表面との間に空隙10cを設けておく。
【0059】
図9は、アスベストの表面に貼り付けられた飛散防止シートを示す図であり、図9(a)は正面図、図9(b)は縦断面図、図9(c)は平断面図を示している。
【0060】
次に、図9に示すように、仕切り壁30を形成する気密性シート40の位置に基づいて、気密性シート40の端部に取り付けられて、側壁側に当接される中継部材36及び閉塞プレート37の位置を想定し、壁部材34の周縁部の近傍に位置する中継部材36及び閉塞プレート37が当接される位置、即ち、エレベーターシャフトEVSに露出する、鉄骨梁21aを被覆しているアスベスト31の表面に飛散防止シート38を貼着する。この作業は、飛散防止シート38が貼着される箇所に、HEPAフィルター付きの掃除機の吸引口を向けて吸引しつつ作業を進める。このとき貼着する飛散防止シート38の幅は、中継部材36の当接板部36aの左右方向の幅より広くしておく。また、飛散防止シート38は、形成される壁面材の左側面より左側(先作業空間WSB側)にはみ出さないように貼着する。
【0061】
図10は、閉塞プレートを説明するための図であり、図10(a)は正面図、図10(b)は縦断面図、図10(c)は平断面図を示している。
【0062】
次に、図10に示すように、飛散防止シート38と気密性シート40の端部との間を塞ぐ閉塞プレート37を後作業空間WSA側から固定する。この閉塞プレート37は、アスベスト31上に貼着された飛散防止シート38の表面の輪郭にほぼ沿った縁部を、飛散防止シート38の表面に当接させて気密性シート40に両面テープ等にて固定する。
【0063】
図11は、中継部材を説明するための図であり、図11(a)は正面図、図11(b)は縦断面図、図11(c)は平断面図を示している。
【0064】
次に、図11に示すように、中空構造体10の内周面に中継部材36の当接板部36aを当接させ、固定板部36bを気密性シート40に後作業空間WSA側から重ねて両面テープ等にて固定する(閉塞工程)。このとき、閉塞プレート37が設けられている部位においては、気密性シート40との間に閉塞プレート37を挟んで中継部材36を固定する。
【0065】
また、各階床を形成するスラブ12の端部は、スラブ12の上面における側壁28より内側及びスラブ12の端面においてアスベスト31に覆われていない部位がエレベーターシャフトEVS内に露出しているが、スラブ12の上面にて露出している左右方向の幅及びスラブ12の端面にて露出している上下方向の幅に渡るとともに、隣接する中継部材36同士が重なるようなサイズに形成された中継部材36をそれぞれスラブ12の上面及びスラブ12の端面に当接させて気密性シート40に後作業空間WSA側から固定する。
【0066】
飛散防止シート38は鉄骨梁21aを被覆しているアスベスト31上に貼り付けられているので、表面は、平坦ではなく曲面をなしている。このため、飛散防止シート38と鋼板パネル49との間に設ける中継部材36は、図7に示すように、まず、飛散防止シート38の曲面に拘わらず、中継部材36の当接板部36aが鉛直または水平に沿う状態にて飛散防止シート38に当接させる。即ち、当接板部36aを側壁28の内面と対向する方向及び上方、下方に向けて飛散防止シート38に当接させて固定板部36bを閉塞プレート37に後作業空間WSA側から固定する。この状態では、飛散防止シート38の曲面部分に、互いに隣り合っている中継部材36間に、繋がらない部位が形成されてしまう。このため、この時点で互いに隣り合っている中継部材36の当接板部36a間にて間隔が空いている部分を覆うように、さらに中継部材36を閉塞プレート37に後作業空間WSA側から固定する。
【0067】
具体的には、当接板部36aが側壁28の内面と対向する方向及び当接板部36aが上方、下方に向けられた中継部材36が鉛直または水平に配置される複数の中継部材36のうち、互いに隣り合う中継部材36の当接板部36aの各縁部に、さらに設ける中継部材36cの当接板部36aの縁部が接触するように中継部材36cを配置して閉塞プレート37に後作業空間WSA側から固定する。図7の例では、隣接する中継部材36間を塞ぐために設けられる中継部材36cは、当接板部36aが、鉛直及び水平方向とほぼ45度をなすように配置されている。
【0068】
アスベスト31上に貼り付けられた飛散防止シート38と、隣接する中継部材36間を塞ぐために設けられた中継部材36cとの間には空隙が生じているので、図7に示すように、飛散防止シート38と、隣接する中継部材36間を塞ぐために設けられた中継部材36cの当接板部36aとの間にシール材39を充填する。
【0069】
また、気密性シート40の端部と中空構造体10の内周面との間、すなわち、気密性シート40の端部とエレベーターシャフトEVSの天井面10a及び床面10b、及び、側壁28の内面との間には、中継部材36の当接板部36aを側壁28の内面、エレベーターシャフトEVSの天井面10a及び床面10bに当接させた状態にて中継部材36の固定板部36bを気密性シート40の端部に後作業空間WSA側から貼り付ける(区画工程)。
【0070】
このとき、側壁28の内面、エレベーターシャフトEVSの天井面10a及び床面10bは平坦なので、上下方向または水平方向に沿わせた各々1本の中継部材36の当接板部36aを側壁28の内面、エレベーターシャフトEVSの天井面10a及び床面10bに当接させた状態にて中継部材36の固定板部36bを気密性シート40の端部に後作業空間WSA側から貼り付ける。ここで、上下に隣り合う鉄骨梁21a間の側壁28の内面、エレベーターシャフトEVSの天井面10a及び床面10bに当接させる中継部材36は1本に限るものではないが、1本であれば継ぎ目が発生しないので気密状態が確保し易い。
【0071】
この状態にて、先作業空間WSBと後作業空間WSAとを仕切り密閉区画する仕切り壁30が完成する。
【0072】
仕切り壁30により先作業空間WSBと後作業空間WSAとが密閉状態に仕切られた後に、後作業空間WSAの右側の昇降空間TRRでは乗りかご13を昇降させてエレベーターEVを稼働させつつ先作業空間WSBにてドライアイスブラスト工法によりアスベスト31の除去処理を実行する(付着物処理工程)。
【0073】
アスベスト31の除去処理は、以下の手順にて行われる。
図12は、先作業空間のアスベスト除去処理及び飛散防止剤の塗装処理を説明するための図であり、図12(a)は正面図、図12(b)は縦断面図、図12(c)は平断面図を示している。
まず、先作業空間WSBに対する乗り場出入口28a等の隙間をポリエチレンシート等で密閉養生する。また、床面10bには、その全面に亘り養生シートを敷いて覆っておく。
次に、集塵機を稼働させ、作業空間WS内を負圧状態にする。
【0074】
作業者は、作業ゴンドラ71に乗りながら先作業空間WSB内を上下昇降することにより鉄骨梁21aを被覆しているアスベスト31の付着部位へと接近し、飛散防止シート38より先作業空間WSB側のアスベスト31をけれん棒等により掻き落とし、残ったアスベスト31を、ドライアイスブラスト装置を用いて除去していく。このとき、図12に示すように、先作業空間WSB側に存在する飛散防止シート38は、ほぼ閉塞プレート37の当接されている位置にて削除し、削除された飛散防止シート38の際までアスベスト31を除去しておく。ここで、ドライアイスブラスト装置から噴射したドライアイス粒は、アスベストに衝突後に昇華して二酸化炭素ガスとなり作業空間WS中の下部に溜まるが、溜まった二酸化炭素ガスは、集塵機の吸気口から吸い込まれて速やかに外部空間に排気される。
【0075】
そして、アスベスト31が除去されて露出した部位に液体状の飛散防止剤42を吹き付ける。このとき、除去により床面10bの養生シート上に落下等したアスベスト31は掃除機等で吸い込んで先作業空間WSB内から排出しておく。
【0076】
図13は、突当部材を取り付けた状態を示す図であり、図13(a)は正面図、図13(b)は縦断面図、図13(c)は平断面図を示している。
【0077】
飛散防止剤42を吹き付けた後に、図13に示すように、仕切り壁30と内周面との取り合いの部位にて、アスベスト31にて被覆されていた部位よりも上下方向において広い範囲に対し突き当てられる覆い部材としての突当部材44を先作業空間WSB側から気密性シート40に取り付ける。突当部材44は、鉄骨梁21aを被覆するアスベスト31の上側に位置する側壁28の下端側、スラブ12の端部、露出された鉄骨梁21a、鉄骨梁21aを被覆するアスベスト31下側に位置する側壁28の上端側、の輪郭に沿うように形成された平板状の部材である。
【0078】
この突当部材44が突き当てられる部位は既にアスベスト31が除去されて表面の輪郭に曲線が含まれないので、中空構造体10の内周面に沿うように直線的に切断されて形成されている。また、突当部材44は、先作業空間WSB側から気密性シート40に固定されるとともに、上側の側壁28の内面及び下側の側壁28の内面に当接されて気密性シート40に固定されている中継部材36、36cと対向している。このため、突当部材44を取り付けた後には、突当部材44と対向する中継部材36、36c及び閉塞プレート37を取り外しても先作業空間WSBと後作業空間WSAとが連通しないように構成されている。
【0079】
突当部材44は、気密性シート40の先作業空間WSB側に位置し、飛散防止シート38より左側(後作業空間WSA側)にて飛散防止剤42が吹き付けられた鉄骨梁21aとその上下の部位に渡って突き当てられた状態にて、当接面に対しほぼ直交するように、飛散防止シート38より左側にて気密性シート40に取り付けられる。
【0080】
突当部材44を取り付けた後に、先作業空間WSBの飛散防止剤42が吹き付けられた部位に、新たな耐火被覆材としてロックウール46を吹き付けて先作業空間WSBでのアスベスト除去処理が完了する。
【0081】
次に、後作業空間WSA側のアスベスト除去処理を実行する。このとき、本実施形態は、3連式のエレベーターEVなので、後作業空間WSA側には、右側の昇降空間TRRが含まれる。このため、右側の昇降空間TRRにて作業ゴンドラ71昇降させて後作業空間WSAのアスベスト31の除去処理を行う。
【0082】
まず、左側の昇降空間TRLの場合と同様に右側の昇降空間TRRの乗りかご13や吊りロープR等を取り外す。そして、既にアスベスト31の除去処理が完了した左側の昇降空間TRLから吊りワイヤー73、作業ゴンドラ71、作業ゴンドラ71の巻き上げ機75、集塵機等を取り外して中央の昇降空間TRCにセットする。また、左側の昇降空間TRLには、乗りかご13や吊りロープR等をセットして、エレベーターEVを稼働させる。
【0083】
そして、後作業空間WSAに存在する乗り場出入口28a等の隙間をポリエチレンシート等で密閉養生すると、後作業空間WSAが密閉された作業空間WSとなる。また、床面10bには、その全面に亘り養生シートを敷いて覆い、集塵機を稼働させ、作業空間WS内を負圧状態にする。
【0084】
図14は、後作業空間のアスベスト除去処理及び飛散防止剤の塗装処理を説明するための図であり、図14(a)は縦断面図、図14(b)は平断面図を示している。
【0085】
後作業空間WSAのアスベスト除去処理は、まず、図14に示すように、突当部材44が取り付けられた部位を後作業空間WSA側から覆っている中継部材36及び閉塞プレート37を後作業空間WSA側から撤去する。突当部材44と対向する位置に設けられた中継部材36を取り外した状態であっても後作業空間WSAの密閉状態は維持されている。
【0086】
図14に示すように、中継部材36が当接されていた飛散防止シート38を撤去し、後作業空間WSA内のアスベスト31の除去処理を実行する。アスベスト31の除去処理は、左側の昇降空間TRLの場合と同様である。後作業空間WSAにてアスベスト31の除去が終了したら、図14に示すように、アスベスト31が除去されて露出した部位に液体状の飛散防止剤42を吹き付け、飛散防止剤42が吹き付けられた部位に、新たな耐火被覆材としてロックウール46を吹き付ける。
【0087】
図15は、突当部材を取り外した後に形成されるロックウールの隙間を示す図であり、図15(a)は縦断面図、図15(b)は平断面図を示している。
【0088】
ロックウール46の吹き付けが終了した後、側壁28、天井面10a、床面10bに当接されている気密性シート40、ワイヤー32、フラットバー62、突当部材44、即ち、仕切り壁30を撤去する。このとき突当部材44は、先作業空間WSBにて吹き付けたロックウール46と、後作業空間WSAにて吹き付けたロックウール46との間から、飛散防止剤42が吹き付けられた部位とほぼ直交する方向に引き抜くように撤去する。
【0089】
突当部材44を撤去した後には、図15に示すように、先作業空間WSBにて吹き付けたロックウール46と、後作業空間WSAにて吹き付けたロックウール46との間に突当部材44の厚み分の隙間46aが生じるので、この隙間46aにロックウール46を充填して補修する。ロックウール46の補修が完了すると、エレベーターシャフトEVS内、すなわち、左側の昇降空間TRLと、中央の昇降空間TRCと、右の昇降空間TRRにおけるアスベスト31の除去処理が完了する。
【0090】
昇降空間TRは、のりかご13が昇降移動する空間なので、隣接する昇降空間TRの間のように鉄骨梁21aや中間ビーム24等が設けられていることはない。このため、本実施形態のアスベスト31の処理方法のように、昇降空間TR内に先作業空間WSBと後作業空間WSAとに密閉区画する仕切り壁30を形成する場合には、鉄骨梁21aや中間ビーム24を避ける必要がないので容易に仕切り壁30を形成することが可能である。このとき、仕切り壁30を設ける昇降空間TRが、左右に並列して設定された少なくとも3つの昇降空間TRL、TRC、TRRの両端に位置する昇降空間TRL、TRRを除く中間昇降空間TRCである場合には区画された後作業空間WSAに含まれる昇降空間TRRにてのりかご13を昇降可能としつつ、先作業空間WSBにてアスベスト31を処理することが可能である。
【0091】
また、中間昇降空間TRCに中空構造体10の天井面10aから床面10bにかけて設けた壁下地材となるワイヤー32及びフラットバー62に気密性シート40を取り付けて壁面を構成するので、中空構造体10の天井面10aから床面10bに至るほぼ全面を覆う壁面を容易に設けることが可能である。このとき、気密性シート40は中空構造体10の内周面との間に空隙10cを設けて、格子状をなすワイヤー32及びフラットバー62に取り付け、気密性シート40と内周面との間の空隙10cを中継部材36、36cにて閉塞するので、中空構造体10を全面に亘って密閉区画することが可能である。
【0092】
また、気密性シート40の端部とアスベスト31との間の空隙10cは、アスベスト31の表面に飛散防止シート38を設けて内周面とするので、空隙10cを中継部材36、36cにて閉塞することによるアスベスト31の飛散を防止することが可能である。
【0093】
また、気密性シート40及び中継部材36、36cにより先作業空間WSBと後作業空間WSAとに密閉区画された後に、先作業空間WSB側のアスベスト31が除去されるので、除去されたアスベスト31が外部に飛散することを確実に防止することが可能である。このとき、除去されたアスベスト31は後作業空間WSAにも飛散しないので、後作業空間WSAは先作業空間WSBでのアスベスト31の除去処理に拘わらず使用することが可能である。このため、先作業空間WSBにてアスベスト31を処理しつつ、後作業空間WSAに含まれる昇降空間TRLにての乗りかご13を昇降させることが可能である。また、アスベスト31が除去された部位には飛散防止剤42を塗装するので、アスベスト31の飛散をより確実に防止することが可能である。さらに、閉塞プレート37を取り付けてから、飛散防止シート38と気密性シート40との間の空隙10cを閉塞する中継部材36、36cを取り外すので、先作業空間WSB内を密閉区画した状態を保ったままで、即ち、先作業空間WSBと後作業空間WSAとが連通されることなく、中継部材36、36cを取り外すことが可能である。また、閉塞プレート37を取り付けた後に、閉塞プレート37より先作業空間WSB側にロックウール46を付着させる処理を実行するので、アスベスト31が付着していた部位の閉塞プレート37より先作業空間WSB側をロックウール46で覆うことが可能である。
【0094】
また、後作業空間WSAのアスベスト31を除去した部位に飛散防止剤42を塗装した後に、閉塞プレート37の後作業空間WSA側にロックウール46を付着させるので、後作業空間WSAにおいても、アスベスト31の飛散を防止しつつロックウール46を付着させることが可能である。
【0095】
また、平板状の閉塞プレート37を、飛散防止剤42が塗装された部位と交差方向に配置して、その縁部を飛散防止剤42が塗装された部位に当接するので、閉塞プレート37と内周面との接触面積を小さくすることが可能であり、より広い領域にロックウール46を付着させることが可能である。このため、先作業空間WSBにて飛散防止剤42が塗装された部位に当接された閉塞プレート37の後作業空間WSA側にてアスベスト31を除去した後に、飛散防止剤42を塗装するので、アスベスト31が付着していた部位のほぼ全域に飛散防止剤42を塗装することが可能である。そして、閉塞プレート37が当接していた部位、すなわち、閉塞プレート37の板厚分を除いた領域にロックウール46を付着させることが可能である。また、閉塞プレート37を当該閉塞プレート37が当接された部位と交差方向に引き抜いて取り外すので、閉塞プレート37を取り外しても閉塞プレート37の板厚分の隙間46aが形成されるだけで、ロックウール46を剥がすことなく閉塞プレート37を取り外すことが可能である。
【0096】
また、閉塞プレート37を引き抜いて形成された隙間46aにもロックウール46を充填するので、アスベスト31が付着していた部位の全域にロックウール46を設けることが可能である。
【0097】
また、中継部材36、36cと内周面との間にシール材39を充填するので、中継部材36、36cと内周面との間も確実に密閉することが可能である。
【0098】
また、中空構造体10の天井から床にかけて張設されたワイヤー32には上下方向に間隔を隔てて前後方向に沿う複数のフラットバー62を固定するので、ワイヤー32とフラットバー62とが格子状をなして高い剛性を備えた壁面の下地を形成することが可能である。そして、格子状をなすワイヤー32とフラットバー62とに気密性シート40を貼り付けるので、軽量でありつつ高い剛性を備え気密性にも優れた壁面を形成することが可能である。
【0099】
また、本実施形態の仕切り壁30及び仕切り壁30の設置方法によれば、隣接する昇降空間TRの間のように鉄骨梁21aや中間ビーム24等が避ける必要がないので容易に仕切り壁30を形成することが可能である。
【0100】
昇降空間は物体が昇降移動する空間なので、隣接する昇降空間の間のように梁や中間ビーム等が設けられていることはない。このため、上記仕切り壁のように、昇降空間内に先作業空間と後作業空間とに密閉区画する仕切り壁が形成されている場合には、梁や中間ビームを避ける必要がないのでより簡単な構造にて先作業空間と後作業空間とに密閉区画することが可能である。
【0101】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0102】
上述の実施形態では、中空構造体10の内部空間の一例としてエレベーターシャフトEVSを示したが、何等これに限るものではなく、多連式のタワーパーキング(立体駐車場とも言い、タワー状構造物の内部空間に、複数の自動車を上下昇降するための無端の周回軌道を設けたもの)を中空構造体として、これに適用しても良い。すなわち、タワーパーキングの内部空間には、複数の周回軌道が水平方向の左右に並列に設けられており、各周 回軌道は、それぞれ独立に周回運動可能である。
【0103】
また、上記実施形態においては、3連式のエレベーターEVのエレベーターシャフトEVSの中央の昇降空間に仕切り壁30を設けて、先作業空間WSBと後作業空間WSAとに区画して処理を行う例について説明したが、3連式のエレベーターEVのように昇降空間TRが4つある場合には、両端の昇降空間を除く2つの昇降空間の内のいずれかに仕切り壁30を設けて2つの空間に分け、3連式のエレベーターEVの同様に処理を行う。また、昇降空間TRが5つ以上ある場合には、いずれか一方の端側から2番目に位置する昇降空間TRに仕切り壁30を設け、一方の端側の作業空間WSにて処理を行った後、仕切り壁30を設けた昇降空間TRの2つ隣位置する昇降空間TRに新たに仕切り壁30を設け、2つの仕切り壁30間において処理を行う。その後も、仕切り壁30が設けられた昇降空間TRとの間に1つの昇降空間TRを挟んだ位置にある昇降空間TRに仕切り壁30を設けて、仕切り壁30間のアスベスト31を処理していくと、先作業空間WSBを密閉するために設置した仕切り壁30を、後作業空間WSAの仕切り壁30として流用できるので、仕切り壁30の設置及び取り外し作業を省略できて、効率良く作業を進めることが可能である。このとき、仕切り壁30を隣の昇降空間TRに設けないのは、仕切り壁30間にて作業ゴンドラ71が使用できないからである。
【0104】
上述の実施形態では、気密性シート40は一枚ものであるように説明したが、これに限らず、気密性シート40を適宜なサイズの複数のシートから構成し、これらを粘着テープ等によって繋ぎ合わせて上記の仕切り壁30の大きさまで大きくしても良い。
【0105】
上記実施形態においては、アスベスト31の表面に貼着する飛散防止シートを、耐火性を有するシートとしたが、必ずしも耐火性を有していなくても良い。
【0106】
図16は、壁面材の他の取り付け方法を示す斜視図である。
【0107】
また、上記実施形態においては、壁面材としての気密性シート40を上下方向に沿って張設されたワイヤー32とワイヤー32に固定されたフラットバー62に左右の両面から貼り付けた例について説明したが、これに限らず、例えば図16に示すように、左右方向に隣接させて張設した2本のワイヤー32(ワイヤー対33)間に気密性シート40を狭持させることにより壁面を形成しても良い。この場合には、気密性シートを貼り付けないので、壁面を形成する施工が容易である。また、前後方向におけるワイヤー対33の間隔を狭くすることにより、形成される壁面の剛性を容易に高めることが可能である。
【0108】
上記実施形態においては、壁面材を気密性シート40としたが、これに限るものではなく、例えばガルバリウム鋼板等の剛性が高い板材を用いても構わない。このとき、ガルバリウム鋼板等の複数の壁面材を、それらの端部同士を重ね合わせて壁面を形成してもよい。さらに、壁面材の両面に気密性シートを設けたり、壁面材の継ぎ目にシール材を充填すると、より確実に密閉区画することが可能である。
【0109】
上記実施形態においては、中間昇降空間内にて、中空構造体の天井面から床面にかけてワイヤーを張設し、張設されたワイヤーに壁面材を取り付けて仕切り壁を形成する例について説明したが、ワイヤーの代わりに例えば軽量形鋼材を中空構造体の天井面から床面にかけて立設し、軽量形鋼材に壁面材を取り付けても構わない。
【0110】
上述の実施形態では、エレベーターシャフトEVS内に乗りかご13が無い状態でアスベスト処理を行う場合を例示したが、仕切り壁が設けられていない昇降空間TR内に乗りかご13が在る状態でアスベスト処理を行っても良い。なお、この場合には、乗りかご13は、アスベストの処理作業の邪魔にならないように、昇降空間TRの上端又は下端へ移動されており、上端又は下端の無害化処理をする際には、乗りかご13は処理済みの位置へ移動されるのは言うまでもない。
【0111】
上述の実施形態では、エレベーターシャフトEVS内に作業ゴンドラ71を持ち込んでアスベストの処理作業を行っていたが、各エレベーターEV(昇降空間TR)が具備する乗りかご13を作業ゴンドラ71の代わりに使用しても良い。すなわち、乗りかご13の屋根面に作業者が乗って処理作業を行っても良い。
【0112】
また、上記実施形態においては、中継部材36、閉塞プレート37、突当部材44をそれぞれ両面テープ等にて気密性シート40に固定する例について説明したが、気密性シート40の周縁部に配置されているフラットバー62にビス等により固定してもよい。
【0113】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0114】
10 中空構造体、10a 天井面、10b 床面、10c 空隙、
12 スラブ、19 巻き上げ機、21 柱梁架構、21a 鉄骨梁、
21b 鉄骨柱、24 中間ビーム、24a 右側のフランジ、
24b 左側のフランジ、25 開閉扉、28 側壁、28a 乗り場出入口、
30 仕切り壁、31 アスベスト、32 ワイヤー、33 ワイヤー対、
34 壁部材、36 中継部材、36a 当接板部、36b 固定板部、
36c 中継部材、37 閉塞プレート、38 飛散防止シート、39 シール材、
40 気密性シート、42 飛散防止剤、44 突当部材(覆い部材)、
46 ロックウール、46a 隙間、47 47 角パイプ材、48 取付金物、
48a 係合部、49 鋼板パネル、49a 上鋼板パネル、49b 下鋼板パネル、
61 仮設鉄骨梁、61a 係止部、61b ワイヤークリップ、
61c シャックル、61d ターンバックル、61e 荷重計、
62 フラットバー、63 Uボルト、65 長ボルト、66 ナット、
67 ボルト、71 ゴンドラ、73 ワイヤー、75 巻き上げ機、
EV エレベーター、EVH エレベーターホール、
EVS エレベーターシャフト、TR 昇降空間、
TRL 左側の昇降空間、TRC 中央の昇降空間、
TRR 右側の昇降空間、 WS 作業空間、
WSA 後作業空間、WSB 先作業空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を上下昇降する少なくとも3つの昇降空間が水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内にて付着物の処理をする付着物の処理方法であって、
前記少なくとも3つの昇降空間の両端に位置する前記昇降空間を除く中間昇降空間に、前記中空構造体内を、前記付着物が先に処理される先作業空間と、後で処理される後作業空間とに密閉区画する仕切り壁を形成する区画工程と、
前記後作業空間を前記物体が上下昇降可能な状態とし、前記先作業空間にて前記処理をする付着物処理工程と、
を有することを特徴とする付着物の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の付着物の処理方法であって、
前記区画工程は、
前記中間昇降空間に前記中空構造体の天井面から床面にかけて壁下地材を設ける下地配設工程と、
設けられた前記壁下地材に、前記中空構造体の内周面との間に空隙を設けて壁面材を取り付ける壁面形成工程と、
前記壁面材の端部と前記中空構造体の内周面とを繋ぐ中継部材を取り付けて前記空隙を閉塞する閉塞工程と、
を有することを特徴とする付着物の処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の付着物の処理方法であって、
前記中継部材にて塞がれる前記空隙が前記壁面材の端部と前記付着物との間の空隙の場合には、当該付着物の表面に飛散防止シートを設けて前記内周面を形成することを特徴とする付着物の処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の付着物の処理方法であって、
前記中継部材は前記壁面材に前記後作業空間側から固定されており、
前記付着物処理工程では、
前記先作業空間側にて前記付着物を除去し、除去した部位に飛散防止剤を塗装し、
前記飛散防止シートに当接された前記中継部材を取り外した際に、前記先作業空間と前記後作業空間とが連通される部位を覆う覆い部材を前記先作業空間側から前記壁面材に固定し、
前記先作業空間側にて前記飛散防止剤が塗装された部位の前記覆い部材より前記先作業空間側に前記付着物と異なる新設付着物を付着させた後に、
前記後作業空間側から前記中継部材を取り外して前記後作業空間において前記付着物を除去することを特徴とする付着物の処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の付着物の処理方法であって、
前記後作業空間にて前記付着物が除去された部位に前記飛散防止剤を塗装した後に、
前記覆い部材の前記後作業空間側に前記新設付着物を付着させることを特徴とする付着物の処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の付着物の処理方法であって、
前記覆い部材は、平板状をなし、前記飛散防止剤が塗装された部位と交差する交差方向に沿って配置するとともに当該覆い部材の縁部を前記飛散防止剤が塗装された部位に当接させ、
前記覆い部材の前記後作業空間側に前記新設付着物が付着された後に、前記覆い部材が、前記交差方向に引き抜かれて取り外されることを特徴とする付着物の処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の付着物の処理方法であって、
前記覆い部材を引き抜いた部位に、前記新設付着物を充填することを特徴する付着物の処理方法。
【請求項8】
請求項2乃至請求項7のいずれかに記載の付着物の処理方法であって、
前記中継部材と前記飛散防止シートとの間にシール材を充填することを特徴とする付着物の処理方法。
【請求項9】
請求項2乃至請求項8のいずれかに記載の付着物の処理方法であって、
前記区画工程では、
前記下地配設工程にて、前記中空構造体の前記天井面から前記床面にかけてワイヤーを張設し、張設した前記ワイヤーに、上下方向に互いに間隔を隔てて前記左右方向と交差する前後方向に沿う複数の板状部材を固定し、
前記壁面形成工程にて、前記左右のぞれぞれの側から前記壁面材として気密性シートを前記複数の板状部材に貼り付けることを特徴とする付着物の処理方法。
【請求項10】
物体を上下昇降する少なくとも3つの昇降空間が水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内にて付着物の処理をする際に前記中空構造体を仕切る仕切り壁の設置方法であって、
前記少なくとも3つの昇降空間の両端に位置する前記昇降空間を除く中間昇降空間に前記中空構造体の天井面から床面にかけて壁下地材を設ける下地配設工程と、
設けられた前記壁下地材に、前記中空構造体の内周面との間に空隙を設けて壁面材を取り付ける壁面形成工程と、
前記壁面材の端部と前記中空構造体の内周面とを繋ぐ中継部材を取り付けて前記空隙を閉塞する閉塞工程と、
を有することを特徴とする仕切り壁の設置方法。
【請求項11】
物体を上下昇降する少なくとも3つの昇降空間が水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内にて付着物の処理をする際に前記中空構造体を仕切る仕切り壁であって、
前記少なくとも3つの昇降空間の両端に位置する前記昇降空間を除く中間昇降空間に前記中空構造体の天井面から床面にかけて設けられた壁下地材と、
設けられた前記壁下地材に、前記中空構造体の内周面との間に空隙を設けて取り付けられた壁面材と、
前記壁面材の端部と前記中空構造体の内周面とを繋いで前記空隙を閉塞し前記壁面材に取り付けられる中継部材と、
を有することを特徴とする仕切り壁。

【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−111599(P2012−111599A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261792(P2010−261792)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】