説明

代表周波数帯の生成方法

【課題】 コンピュータを用いて電波干渉発生の有無を判定する計算を実行する際に、膨大な量の計算を大幅に削減し、近似をすることなしに計算すること目的とする。
【解決手段】 コンピュータの電波干渉計算判定部において、周波数帯網1、ビーム11、12、13、グループ111、121、122、131、132、133の三階層に分割されている周波数帯のうち、グループ111、121、122、131、132、133に属する割当周波数帯で、周波数帯が重なる場合にはこれらを集約させ、集約された周波数帯に、規則によりあらかじめ決められた周波数が存在する場合は、この周波数において該集約された周波数帯を分割させることにより代表周波数帯を生成し、これを用いて計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の周波数帯における電波干渉の発生の有無を判定する計算を実行する際、計算回数を大幅に削減できるように、(代表)周波数帯を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際機関(ITU:International Telecommunication Union)に申請し利用する電波の任意の周波数帯において電波干渉が発生すると、事業者間同士では調整業務を行う。従来、特許文献1に記載されているような電波干渉発生の解析には、任意の計算式により申請書類の数値を電子計算機(電卓)で算出していたが、データ量の他、情報量の増加に伴い、申請書類の電子データ化及びデータベース化によりパーソナルコンピュータでの計算処理が一般的になった。
【特許文献1】特開平11−68640号公報(段落[0008]〜[0011]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、対象データは膨大で莫大な計算時間が必要なことから、従来は干渉の可能性(最悪値)となりそうなデータのみを扱い、近似を用いて計算を実施しているという問題点があった。
【0004】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電波干渉の発生の有無を判定する際に行われる膨大な量の計算を大幅に削減するための代表周波数帯の生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明では、コンピュータを用いて電波干渉発生の有無を判定する計算を実行する際に、コンピュータは、電波干渉計算判定部において、判定対象のデータを記憶手段から読み込み、この読み込んだデータに含まれる周波数帯網、ビーム、グループの三階層に分割されている周波数帯のうち、グループに属する割当周波数帯で、周波数帯が重なるか否かを判定する手順と、周波数帯が重なる場合にはこれら重なる周波数帯を全て含むような周波数帯に集約する手順と、集約した周波数帯に、記憶手段に記憶している所定の周波数が存在するか否かを判定する手順と、集約した周波数帯に所定の周波数が存在する場合は、この周波数で該集約した周波数帯を分割することにより代表周波数帯を生成する手順とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
代表周波数帯を生成することで、電波干渉の発生の有無を判定する際に行われる判定計算回数を従来よりも大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1ないし図15は本発明の一実施形態を示すもので、図1は周波数帯網、ビーム、グループの関係の概略図、図2は代表周波数帯生成の概念図を示している。
【0008】
図1は、周波数帯網1と、ビーム11、12、13と、それぞれのビームに対応するグループ111、121、122、131、132、133とを表している。この図1は、例えば、通信衛星から地上局への電波の送信を示しており、周波数帯網は電波の発生元である通信衛星であり、ビームは電波であり、グループは電波を受信するパラボナアンテナである。
【0009】
図2は、グループ131の割当周波数帯131a、131b、131c、グループ132の割当周波数帯132a、132b、グループ133の割当周波数帯133a、133bを束ねることで、2つの集約周波数帯31、32を生成し、このうち集約周波数帯31が電力束密度判定で区分される周波数50を包含しているため、ここで二つに分割し、代表周波数帯41、42および43を生成している様子を表している。ここでは、グループ131、132、133がビーム13を形成し、代表周波数帯41、42、43がビーム40を形成している。周波数50は、ITUによる国際規則により定められている周波数である。本実施形態では、この図2に示した処理を、以下に示すように、コンピュータで構成されるシステム装置により実行する。
【0010】
図3に電波干渉判定計算を実施するシステム装置の構成を示す。このシステム装置8に、電波干渉判定計算の対象となる入力データ7を入力する。この入力データ7はITUから月に2度送られてくるCD−ROMである。システム装置8は、データ読取部81と、データ通信部82と、電波干渉計算判定部83と、判定結果出力部84とを含む。データ保管装置9は、データ通信部91とデータ記憶部92とを含む。
【0011】
入力データ7がシステム装置8に入力されると、CPU(図示しない)によりデータ読取部81からデータが読み取られ、データ通信部82からデータ通信部91へデータが送られ、ハードディスクなどのデータ記憶部92に蓄積される。システム装置8が、電波干渉判定計算を実施するとき、データ記憶部92からCPUがデータを取り出し、データ通信部91、データ通信部82を経由し、CPUにおける電波干渉計算判定部83で計算し、判定結果出力部84が結果を出力する。
【0012】
図4は、図3に示した入力データ7の概要であり、入力データ7は、電力束密度情報72と、ビーム情報73と、グループ情報74と、割当周波数情報75と、電波事業者情報76(電波事業者は国単位)と、その他の情報77とを含む。ここで、電力束密度情報は、電力束密度の値であり、ビーム情報は、ビーム名、ビーム方向などであり、グループ情報はグループのIDなどである。
【0013】
図5は、図3に示したシステム装置8内の電波干渉計算処理部83で処理される電波干渉判定処理のフローチャートである。最初に電力束密度参照周波数帯を取得する(S1)。この電力束密度参照周波数帯取得の処理(S1)については、図6を用いて後に詳述する。次に、既存情報削除を行い(S2)、ビーム情報を取得し(S3)、グループ情報を取得する(S4)。グループ情報取得の処理(S4)については、図10を用いて後に詳述する。次に、代表周波数帯作成を行う(S5)。代表周波数帯作成の処理(S5)については、図14を用いて後に詳述する。そして、次のビーム情報がないかを判定する(S6)。ビーム情報がある場合にはビーム情報取得(S3)に戻り、再度、前記処理を行う。次のビーム情報がない場合には、事業者情報(事業者とは国であって、国単位の情報)がないかを判定する(S7)。事業者情報がある場合には、電力束密度参照周波数帯取得(S1)に戻り、再度、前記処理を行う。次の事業者情報がない場合には電波干渉判定が終了する。
【0014】
図6は、図5に示した電力束密度参照周波数帯取得(S1)の処理の詳細を示したフローチャートであり、処理が終了すると、図5の既存情報削除(S2)へ進む。なお、この図6のフローチャートは、図5のステップS1で呼び出されるサブルーチンの内容を示すものであり、電波干渉計算判定部83が実行する。
【0015】
まず、ITUによって割り振られた通知番号とITUへの申請書類の申請受領日の取得を行い(S11)、割当周波数の開始周波数と終了周波数との取得、開始周波数の昇順にソートを行い(S12)、電力束密度参照周波数帯の一時記憶を行う(S13)。なお、電力束密度参照周波数帯の一時記憶フォーマットを図7に示す。昇順にソートされた初めの開始周波数未満に関して、これを出力対象外とする処理(S14)を行う。次に重複している周波数帯情報で、開始周波数と終了周波数が同一かどうかを判定する(S15)。開始周波数と終了周波数とが同一の場合は、開始周波数と終了周波数を一つにまとめる処理を行い(S16)、ステップS18に進む。開始周波数と終了周波数とが同一でない場合は、それぞれの周波数で分割する処理を行い(S17)、ステップS18に進む。続いて、周波数帯情報の間で、周波数情報が欠落している場合は、この欠落部分を対象外とする処理を行い(S18)、計算し、計算結果を電力束密度参照周波数帯の情報として一時記憶し(S19)、既存情報の削除(S2)へ進む。一時記憶された電力束密度参照周波数帯の例を図8に示す。また、電力束密度参照周波数帯のイメージ図を図9に示す。図8の通番が図9(a)の各数字に対応している。図9(a)の通番2と通番3が周波数帯1を形成しており、図8によれば、開始周波数は100.00Hz、終了周波数は400.00Hzである。図9(a)の通番3と通番4が周波数帯2を形成しており、図8によれば、開始周波数は200.00Hz、終了周波数は500.00Hzである。
【0016】
なお、図6のステップS15で、「開始周波数と終了周波数が同一」とは、例えば、図9(b)のように、周波数帯1と周波数帯2の開始周波数と終了周波数とが同一となる場合をいう。また、図6のステップS18の「周波数情報が欠落」とは、図9(c)のように、周波数帯1と周波数帯2との間に空白部分があることをいう。
【0017】
図10は、図5に示したグループ情報取得(S4)の処理の詳細を示したフローチャートであり、処理が終了すると、図5の代表周波数帯作成(S5)へ進む。なお、この図10は、図5のステップS4で呼び出されるサブルーチンの内容を示すものであり、電波干渉計算判定部83が実行する。
まず、ITUによって定められたグループIDと周波数帯とを一時記憶し(S41)、送信出力情報から最大電力密度の最大値を取得する(S42)。次に割当周波数を取得し、周波数帯の上限値と下限値とを計算する(S43)。次に割当周波数の有無を確認し(S44)、割当周波数がある場合には、もう一度S43を行う。ステップS44で、割当周波数がない場合には、グループIDの有無を確認する(S45)。グループIDがある場合には、ステップS42に戻り、もう一度、前記の処理を行う。グループIDがない場合にはステップS5へ進む。図11に図10のグループ情報取得のイメージ図を示す。図12はグループ情報取得のフォーマットであって、図13は図10のグループ情報取得時の出力情報の例を示している。
【0018】
図14は、図5に示した代表周波数帯作成S5の処理の詳細を示したフローチャートであり、処理が終了すると次のビーム情報の確認(S6)へ進む。なお、この図14は、図5のステップS5で呼び出されるサブルーチンの内容を示すものであり、電波干渉計算判定部83が実行する。
まず、図5のグループ情報の取得(S4)で取得した情報を下限周波数で昇順にソートする(S51)。次に、グループに属する割当周波数帯で、周波数帯が重なるか否かを判定する(S52)。重なる場合はステップS53に進み、重ならない場合はステップS54へ進む。ステップS53では、重なるグループの割当周波数帯を集約して代表周波数帯とし、一時保存を行う。次に、(集約した)周波数帯(代表周波数帯)に所定の周波数が存在するか否かをS1で取得した電力束密度参照周波数帯から判定する(S54)。電力束密度参照周波数帯とは、この判定時に参照する、所定の周波数で区切られた周波数帯のことである。所定の周波数が存在する場合は、ステップS55に進み、存在しない場合はステップS6へ進む。ステップS55では、代表周波数帯を所定の周波数で分割し、一時保存する。図2を用いて、具体的に説明する。割当周波数帯131a、131b、132a、132b、133aは集約されて、集約周波数帯31を形成するが、所定の周波数50を含んでいるため、ここで集約周波数帯31を分割し、代表周波数帯41と代表周波数帯42を形成している。割当周波数帯131cと割当周波数帯133bとは集約周波数帯32を形成し、所定の周波数を含まないので、そのまま代表周波数帯43としている。図15は、代表周波数帯生成のイメージ図である。ここでは、代表周波数帯1は、グループ2と、グループ1と、電力束密度参照周波数帯1、2の切れ目の周波数で区切られたグループ2とからなっている。この電力束密度参照周波数帯の切れ目の周波数は、ITUによって定められた周波数である。代表周波数帯3は、電力束密度参照周波数帯2、3の切れ目の周波数で区切られたグループ1と、グループ3とからなっている。電力束密度参照周波数帯2、3の切れ目の周波数は、同様に、ITUによって定められた周波数である。
【0019】
本発明の実施形態によれば、任意の周波数帯における電波干渉の発生の有無を判定する計算を実行する際、膨大な量の計算を近似することなしに行うことができ、その量も従来の1%程度とすることができる。例えば、図2を用いて説明すると、従来なら、割当周波数帯131a、131b、131c、132a、132b、133a、133bの数値を用いて電波干渉の有無を計算していたが、代表周波数帯を形成することにより、代表周波数帯41、42、43の数値のみを用いて計算するだけでよいことになる。
【0020】
本発明の実施形態では、ビーム単位で集約された代表周波数帯を、ビームの一階層上位の周波数帯網で集約し、代表周波数帯を生成することにより、前記の代表周波数帯生成より、更に判定計算回数を削減できる。
【0021】
また、本発明の実施形態では、周波数帯が三階層に分割され、三階層目のグループ内において、グループごとに周波数の使用開始日を紐付けることにより、使用開始日の早い方が、優先順位が上位となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る周波数帯網、ビーム、グループの関係の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る代表周波数帯生成の概念図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るシステム装置の構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る入力データの概要を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電波干渉判定処理のフローチャートである。
【図6】図5の電力束密度参照周波数帯取得の処理の詳細を示したフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る電力束密度参照周波数帯取得の一時記憶フォーマットを示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る電力束密度参照周波数帯のフォーマットを示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る電力束密度参照周波数帯のイメージ図である。(a)は周波数帯1と周波数帯2が重複している例を示し、(b)は周波数帯1の終了周波数と周波数帯2の開始周波数が同一の例を示し、(c)は周波数帯1と周波数帯2の間の周波数情報が欠落している例を示している。
【図10】図5のグループ情報取得の処理の詳細を示したフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態に係るグループ情報取得のイメージ図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るグループ情報取得の一時記憶フォーマットを示す図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るグループ情報取得の一時記憶情報を示す図である。
【図14】図5の代表周波数帯作成の処理の詳細を示したフローチャートである。
【図15】本発明の一実施形態に係る代表周波数帯作成のイメージ図である。
【符号の説明】
【0023】
1 周波数帯網
8 システム装置
9 データ保管装置
11、12、13、40 ビーム
111、121、122、131、132、133 グループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いて電波干渉発生の有無を判定する計算を実行する際に、
コンピュータは、電波干渉計算判定部において、
判定対象のデータを記憶手段から読み込み、この読み込んだデータに含まれる周波数帯網、ビーム、グループの三階層に分割されている周波数帯のうち、グループに属する割当周波数帯で、周波数帯が重なるか否かを判定する手順と、
周波数帯が重なる場合にはこれら重なる周波数帯を全て含むような周波数帯に集約する手順と、
前記集約した周波数帯に、前記記憶手段に記憶している所定の周波数が存在するか否かを判定する手順と、
前記集約した周波数帯に所定の周波数が存在する場合は、この周波数で前記集約した周波数帯を分割することにより代表周波数帯を生成する手順と、
を実行することを特徴とする代表周波数帯の生成方法。
【請求項2】
ビーム単位で集約された代表周波数帯を、ビームより一階層上位の周波数帯網単位で集約する
ことを特徴とする請求項1に記載の代表周波数帯の生成方法。
【請求項3】
三階層目のグループごとに周波数帯の使用開始日を紐付ける
ことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の代表周波数帯の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−94221(P2006−94221A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278162(P2004−278162)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】