説明

代謝年齢に関するバイオマーカー及びその使用方法

代謝年齢に関するバイオマーカーのほか、こうしたバイオマーカーを、代謝年齢を決定するバイオマーカーとして用いる方法も提供される。加えて、対象の代謝年齢を調節する方法もまた提供される。また、代謝年齢のバイオマーカーとしての一連の小分子実体も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2006年10月13日に出願した、米国特許仮出願第60/851,468号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、対象の代謝年齢を決定するバイオマーカー及び方法、並びにこうしたバイオマーカーの使用方法に関する。本発明はまた、性別及び人種に関するバイオマーカー及びバイオマーカーの使用方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
メタボロミクスに対する関心は、目覚ましい速度で高まりつつある。2000年以来、題目又は抄録において「メタボロミクス」という用語を含む、刊行年当たりのPubMed(商標)引用件数が、着実に増加している。メタボロミクスは、いまだ、新興技術であるが、一部の例を挙げるだけでも、医薬の発見及び開発、天然物の研究、並びに疾患診断などの様々な領域における多岐にわたる問題群に既に適用されている(Griffin,J.L.、2006年、Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci、第361巻、第1465号、147〜61頁;Keun,H.C.、2006年、Pharmacol Ther、第109巻、第1〜2号、92〜106頁;Rochfort,S.、J.Nat Prod、2005年、第68巻、第12号、1813〜2頁;Kristal,B.S.及びY.I.Shurubor、Sci Aging Knowledge Environ、2005年、2005年巻、第26号、pe19;Morris,M.及びS.M.Watkins、2005年、Curr Opin Chem Biol、第9巻、第4号、407〜12頁;Witkamp,R.F.、2005年、J Vet Pharmacol Ther、第28巻、第3号、235〜45頁;Watkins,S.M.及びJ.B.German、2002年、Curr Opin Mol Ther、第4巻、第3号、224〜8頁;Fiehn,O.、2002年、Plant Mol Biol、第48巻、第1〜2号、155〜71頁)。
【0004】
個体の代謝は、年齢と共に変化する。近年まで、代謝物変化をモニターする能力は、標的化されたアッセイに限定されてきた。メタボロミクス解析の発達と共に、代謝物変化は、今や、非標的化した形で全般的にモニターできる。このメタボロミクスの手法は、集団又は個体について、代謝プロファイルの決定を可能とする。
【0005】
健康関連問題に対する栄養の影響に関する情報がより多く入手できるようになり、人口が老齢化するにつれ、健康及び栄養に対する関心が高まっている。個体の代謝物レベルを決定し、結果として得られる代謝プロファイルをポジティブ又はネガティブに分類し、次いで、ネガティブプロファイルをどのように改善するかについてのガイダンスを提供する能力は、個体の健康に対して有益な影響を及ぼすであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
対象の代謝年齢を決定する方法が提供される。一態様において、該方法は、(a)対象に由来する生体試料を解析して、試料中における1つ又は複数の代謝年齢のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップであって、1つ又は複数のバイオマーカーが、表2、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせから選択されるステップと、(b)試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢基準レベルと比較して、対象の代謝年齢を決定するステップとを含む。
【0007】
別の態様では、生化学的年齢指数(BAI)を作成する方法が提供される。こうした方法は、(a)複数の対象に由来する生体試料を解析して、年齢と共に変化する1つ又は複数の第1のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、(b)年齢と共に変化する1つ又は複数の第1のバイオマーカーの各々と相関する1つ又は複数の第2のバイオマーカーを同定して、年齢と共に変化する1つ又は複数のバイオマーカー群を生成するステップと、(c)1つ又は複数のバイオマーカー群の各々のレベルを用いて、生化学的年齢指数を生成するステップとを含む。
【0008】
対象の代謝年齢を改変する方法であって、(a)対象に由来する生体試料を解析して、試料中における1つ又は複数の代謝年齢のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップであって、1つ又は複数のバイオマーカーが、表2、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせから選択されるステップと、(b)試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢基準レベルと比較して、対象の代謝年齢を決定するステップと、(c)食事、栄養、ライフスタイルの変化、及び/又は代謝物の投与により、対象の代謝年齢を改変する勧告を行うステップとを含む方法もまた提供される。
【0009】
別の態様では、代謝年齢を調節する組成物の有効性を評価する方法であって、(a)第1の代謝年齢を有し、化合物又は組成物で現在又は以前に治療を受けている対象に由来する第1の生体試料を解析して、表2、7、及び/又は8から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、(b)試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、(i)化合物又は組成物での治療を受ける前の対象から得られた、対象に由来する第2の生体試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベル、(ii)1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢ポジティブの基準レベル、(iii)1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢ネガティブの基準レベル、及び(iv)標的代謝年齢に対する1つ又は複数のバイオマーカーの基準レベルからなる群から選択されるバイオマーカーレベルと比較するステップとを含む方法が提供される。
【0010】
加えて、1つ又は複数の代謝年齢バイオマーカーのレベルを調節する活性について試験化合物をスクリーニングする方法が提供される。こうした方法は、(a)1つ又は複数の細胞を試験化合物と接触させるステップと、(b)1つ若しくは複数の細胞、又は細胞と関連する生体試料の少なくとも一部を解析して、表2、7、及び/又は8から選択される1つ又は複数の代謝年齢バイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、(c)1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、バイオマーカーに対してあらかじめ決定されたレベルと比較して、組成物が1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを調節したかどうかを判定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ヒトの3つの異なる年齢群における、年齢の関数としてのロイシン対バリンの相対濃度間の相関を示すグラフである。黒丸、21〜35歳;×印付きの丸、36〜50歳;白丸、51〜65歳。
【図2】代謝年齢の概念及び代謝年齢と実年齢との間の関連を示すチャートである。代謝年齢(メタボエイジ)の変化は、老化、又は、食事若しくはライフスタイルの変化の影響と関連する。
【図3】試料中における一連の年齢バイオマーカーレベルに基づく、女性個体(図3A)又は男性個体(図3B)の実年齢を予測する年齢バイオマーカーの使用を示す段階的回帰プロットである。
【図4】年齢と共に上昇し、相互にも相関する化合物の例を示す散布図行列である。
【図5】個々の化合物、及び年齢と比較したこれらの化合物を含む指数の散布図である。図5Aはアラニン、図5Bはグルタミン、図5Cはノルメタネフリン、図5Dはオルニチン、図5Eはバリン、図5Fは、個々の化合物対年齢を組み合わせることから導かれる指数である。本実施例における各化合物レベルの上昇は、約45歳においてより著明となり、ばらつきが年齢と共に増大すると思われる。
【図6】生化学的年齢指数(BAI)対年齢の密度等高線チャートである。各領域におけるデータ点の密度が、等高線により示される。BAIは、実線により示される。
【図7】BAI対実年齢の密度等高線チャートであり、正のメタボスコアの決定がどのようにして得られるかを示す。例示では、黒円内の(1例又は複数例の)個体が、+36のメタボスコアをもたらす58歳の代謝年齢(メタボエイジ)及び22歳の実年齢を有し、該個体は、その実年齢よりも生化学的に高齢であることを示す。
【図8】BAI対実年齢の密度等高線チャートであり、負のメタボスコアの決定がどのようにして得られるかを示す。この例示では、黒円内の個体が、−28のメタボスコアをもたらす26歳の代謝年齢(メタボエイジ)及び54歳の実年齢を有し、該個体は、その実年齢よりも生化学的に若齢であることを示す。
【図9】酒石酸濃度対実年齢の密度等高線ダイアグラムである。大半の個体が<2の酒石酸値を有するのに対し、若齢及び老齢の両方において、多数の異常値(>3)が見られる。
【図10】安息香酸対実年齢の散布図ダイアグラムである。大半の個体が<6の安息香酸値を有するのに対し、>10の安息香酸値を有する2例の個体が観察される。
【図11】安息香酸対実年齢の密度等高線ダイアグラムである。安息香酸の低下が示され、低レベル(<0.5)の安息香酸を有する個体が観察される。
【図12】オルニチン濃度対実年齢の密度等高線ダイアグラムである。年齢に伴うオルニチンの上昇が示され、高レベル(>5)のオルニチンを有する個体が観察される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、代謝年齢、性、及び人種のバイオマーカー、代謝年齢を決定する方法、代謝老化の進行/回帰をモニターする方法、個体の代謝年齢を上昇又は低下させる組成物の有効性を評価する方法、年齢、性、又は人種のバイオマーカーを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法、代謝年齢を調節する方法のほか、年齢、性、又は人種のバイオマーカーに基づく他の方法に関する。
【0013】
しかし、本発明をより詳細に説明する前に、まず、以下の用語を定義する。
【0014】
定義:
「生化学的年齢指数」(BAI)とは、年齢と共に変化し、組み合わさって生化学的年齢指数(BAI)を提供しうる、互いに相関し合う一群の化合物の平均レベルを意味する。BAIは、個々の化合物のみについて得られるよりも頑健である(すなわち、より可変性が低く、個々のばらつきの大半を説明する)集団及び/又は群及び/又は複数の試料に関する代謝年齢の尺度を提供する。
【0015】
「バイオマーカー」とは、第2の表現型を有する(例えば、異なる代謝年齢を有する、異なる代謝年齢範囲内にある、又は疾患を有さない)対象又は対象群に由来する生体試料と比較して、第1の表現型を有する(例えば、特定の代謝年齢を有する、特定の代謝年齢範囲内にある、又は疾患を有する)対象又は対象群に由来する生体試料において存在が異なる(すなわち、増加又は減少する)化合物、好ましくは代謝物を意味する。バイオマーカーは、任意のレベルにおいて存在が異なりうるが、一般に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、若しくはこれを超える高いレベルにおいて存在するか、又は、一般に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%(すなわち、不在である)低いレベルにおいて存在する。バイオマーカーは、統計学的に有意な(すなわち、0.05未満のp値、及び/又は、ウェルチのT検定若しくはウィルコクソンのランク和検定を用いて決定される0.10未満のq値)レベルにおいて存在が異なることが好ましい。
【0016】
1つ又は複数のバイオマーカーの「レベル」とは、試料中のバイオマーカーの絶対量若しくは相対量又は濃度を意味する。
【0017】
「試料」又は「生体試料」とは、対象から単離された生物学的物質を意味する。生体試料は、所望のバイオマーカーを検出するのに適する任意の生物学的物質を含有してよく、対象に由来する細胞物質及び/又は非細胞物質を含んでよい。試料は、例えば、血液、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、歯肉溝滲出液、唾液、又は呼気凝縮液など任意の適切な生物学的組織又は体液から単離することができる。
【0018】
「対象」とは、任意の動物を意味するが、例えば、ヒト、サル、非ヒト霊長動物、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、又はウサギなどの哺乳動物であることが好ましい。
【0019】
バイオマーカーの「基準レベル(reference level)」とは、特定の年齢、特定の年齢範囲、疾患状態、表現型、又はその欠如のほか、疾患状態、表現型、又はその欠如の組み合わせを示すバイオマーカーのレベルを意味する。バイオマーカーの「基準レベル」は、バイオマーカーの絶対量若しくは相対量又は濃度、バイオマーカーの存在又は不在、バイオマーカーの分量範囲又は濃度範囲、バイオマーカーの最小量若しくは濃度及び/又は最大量若しくは濃度、バイオマーカーの平均量又は平均濃度、並びに/或いは、バイオマーカーのメジアン量又はメジアン濃度でよく、加えて、バイオマーカーの組み合わせの「基準レベル」もまた、2つ以上のバイオマーカーの絶対量若しくは相対量又は濃度の各々に対する比率でよい。特定の代謝年齢、年齢範囲、疾患状態若しくは疾病状態、表現型、又はその欠如に対するバイオマーカーの適切なポジティブの基準レベル及びネガティブの基準レベルは、1つ又は複数の適切な対象における所望のバイオマーカーレベルを測定することにより決定してよく、こうした基準レベルは、対象の特定の集団に合わせて調整してよい(例えば、基準レベルは、特定の年齢の対象に由来する試料中のバイオマーカーレベルと、特定の年齢群における特定の疾患状態、表現型、又はその欠如に対する基準レベルとの間で比較がなされるように、年齢適合的でよい)。基準レベルはまた、性集団、人種集団、又はその組み合わせ(例えば、黒人男性、黒人女性、白人男性、白人女性、ヒスパニック男性、ヒスパニック女性)を含む、特定の対象集団に合わせて調整してもよい。こうした基準レベルはまた、生体試料中におけるバイオマーカーレベルを測定するのに用いられ、用いられる特定の技法に基づいてバイオマーカーレベルが異なりうる特定の技法(例えば、LC−MS、GC−MSなど)に合わせて調整してもよい。
【0020】
「代謝物」又は「小分子」とは、細胞中に存在する有機分子及び無機分子を意味する。該用語は、大型タンパク質(例えば、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、又は10,000を超える分子量を有するタンパク質)、大型核酸(例えば、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、又は10,000を超える分子量を有する核酸)、又は大型多糖(例えば、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、又は10,000を超える分子量を有する多糖)を含まない。細胞の小分子は、一般に、細胞質、又は、ミトコンドリアなど他の細胞小器官内の溶液中に遊離して見出され、そこで、さらに代謝されうるか、又は、高分子と呼ばれる大型分子を生成するのに用いられうる中間体のプールを形成する。「小分子」という用語は、シグナル伝達分子、及び、食物に由来するエネルギーを使用可能な形態に転換する化学反応中における中間体を含む。小分子の例は、糖、脂肪酸、アミノ酸、ヌクレオチド、細胞過程中に形成される中間体、及び、細胞内で見出される他の小分子を含む。
【0021】
「代謝プロファイル」、又は「小分子プロファイル」、又は「代謝物プロファイル」とは、標的細胞、標的組織、標的臓器、標的生物又はその画分(例えば、細胞内区画)内における小分子の完全又は部分的な一覧表を意味する。該一覧表は、存在する小分子の量及び/又は種別を含んでよい。「小分子プロファイル」は、単一の技法又は複数の異なる技法を用いて決定してよい。該一覧表は、標的細胞、標的組織、標的臓器、標的生物又はその画分内における任意の数の小分子、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20個、又はこれを超える小分子を含んでよい。
【0022】
「非バイオマーカー化合物」とは、第2の表現型(例えば、異なる年齢を有する、又は異なる年齢範囲内にある、又は異なる性若しくは人種)を有する対象又は対象群に由来する生体試料と比較して、第1の表現型(例えば、特定の年齢を有する、又は特定の年齢範囲内にある、又は性若しくは人種)を有する対象又は対象群に由来する生体試料中において存在が異ならない化合物を意味する。しかし、こうした非バイオマーカー化合物は、第1の表現型(例えば、第1の年齢、年齢範囲、性、又は人種を有する)又は第2の表現型(例えば、異なる年齢、年齢範囲、性、又は人種を有する)と比較して、第3の表現型(例えば、さらに異なる年齢を有する、又は異なる年齢範囲内にある、又は性若しくは人種)を有する対象又は対象群に由来する生体試料中におけるバイオマーカーでありうる。さらに、これらの化合物は、BAIを決定するのに有用でありうる。
【0023】
「メタボローム」とは、所与の生体中に存在するすべての小分子を意味する。メタボロームは、代謝物及び異化産物の両方を含む。
【0024】
「代謝年齢」(「メタボエイジ(MetaboAge)」又は「メタブエイジ(MetabAge)」)とは、細胞、組織、及び/又は体液中の代謝物組成により決定される対象の年齢を意味する。対象の代謝年齢は、対象の代謝プロファイルを、各種の年齢群(例えば、<25歳、25〜35歳、36〜50歳、51〜65歳、>65歳)に特徴的な代謝プロファイルと比較することにより決定される(図2を参照されたい)。代謝年齢はまた、対象の代謝プロファイルを生化学的年齢指数と比較することによっても決定してよい。対象のプロファイルが、対象の実年齢よりも若齢の年齢又は年齢群の個体に特徴的なプロファイルに類似する場合、該対象の代謝年齢は「ポジティブ」であるのに対し、該プロファイルが、対象の実年齢よりも高齢の年齢群に特徴的なプロファイルに類似する場合、該対象の代謝年齢は「ネガティブ」である。
【0025】
「メタボスコア」とは、対象の代謝年齢(メタボエイジ)と実年齢との間の差を表す生化学的年齢指数(BAI)を用いて計算される値を意味する。負のメタボスコアが、対象が実年齢よりも生化学的に若齢であることを示すのに対し、正のメタボスコアは、対象が実年齢よりも生化学的に高齢であることを示す。
【0026】
「生体異物」とは、「生体において見出されるが、生体において通常は産生されないか又は存在することが期待されない化学物質」を意味する。生体異物は、生体にとって異物である化合物である。主要な生体異物は、薬剤、発癌物質、及び、人工的な手段により環境内に導入された各種の化合物を含む」(「化学用語に関するIUPACコンペンディアム2003年版(IUPAC Compendium on Chemical Terminology 2003)」、iupac.orgのウェブサイトで入手可能)。生体により産生される、生体異物に由来する代謝物もまた、生体異物であると考えてよい。
【0027】
「生体異物スコア」とは、1つ又は複数の生体異物の(複数の)レベルと、生体異物年齢指数(XAI)により決定される1つ又は複数の生体異物の(複数の)基準レベルとの間の差を表す計算値を意味する。負の生体異物スコアは、対象が、その実年齢に対する基準レベルよりもよりも低レベルの生体異物を有することを示すのに対し、正の生体異物スコアは、対象が、その実年齢に対する基準レベルよりも高レベルの生体異物を有することを示す。
【0028】
メタボローム研究は、老化と関連する代謝プロファイルの同定を可能にする。個体の大規模コホートに対するメタボローム解析は、1つ又は複数のバイオマーカーが、生体、細胞、組織、又はその一部において、生体、細胞、組織、又はその一部の年齢と相関する異なるレベルで存在しうることを示した。レベルは、生体、細胞、組織、又はその一部の年齢に応じて経時的に変化する。特定の年齢又は年齢群と関連する代謝プロファイルを決定してよい。個々の対象に対する代謝プロファイルは、メタボロミクスを用いて得ることができ、年齢に関連する特徴的な代謝プロファイルとの比較により、個体の代謝年齢を決定することができる。代謝プロファイルに基づき、栄養及び/又はライフスタイルに関する勧告を行って、個体の代謝プロファイルを改善することができる。個体のメタボエイジ及び/又はメタボスコアを決定するのに加え、代謝プロファイルを評価して、特定の代謝物及び関連する生化学経路の変化をさらに同定してよい。開示の方法は、選択された集団内における、例えば、人種集団間、性集団間、又は人種集団及び性集団の組み合わせの間におけるバイオマーカーの差異に依存して、選択された対象集団を標的にしてよい。
【0029】
老化と相関する代謝的又は生化学的変化は、本明細書に開示のバイオマーカー及び方法により同定してよく、年齢により個体集団を区別するのに用いてよい。こうして、対象の代謝年齢又は状態は、対象の代謝プロファイルを、特定の年齢又は年齢群の代謝プロファイルと比較することにより決定することができる。こうしたプロファイルは、性特異的プロファイル又は人種特異的プロファイルに基づいてよい。この情報により、対象に対して(例えば、医師、医師の助手、栄養士などにより)勧告を行うことができ、これにより、対象は、治療作用物質、栄養補充物質、及び/又は食事により、彼/彼女の代謝年齢を変化させることができる。本発明はまた、対象の代謝年齢を決定する生化学的年齢指数を開発し、対象の実年齢と代謝年齢との間の差であるメタボスコアを計算する方法についても記載する。
【0030】
こうした方法を用いて対象の代謝年齢の決定を補助する場合、該方法の結果は、臨床的な決定に有用な、例えば、1)手術、化学療法、物理療法、又は他の医学的治療に対する適性を判定する、2)麻酔用量を決定する、3)追加の診断的アッセイの要件を決定する、並びに/又は4)潜在的な薬剤治療、レジメン、及び/若しくは用量を決定する他の方法(又はその結果)と共に用いてよい。代謝年齢解析はまた、疾病及び/又は疾患の危険因子を決定するのにも有用である。
【0031】
本開示は、生体液(例えば、ヒト血漿)中に存在する小分子化合物の数と化学名を、その相対濃度の分布と共に理解するステップを提供する。
【0032】
加えて、本発明は、観察された化合物の相対レベルに対する、年齢、性別、及び人種の影響を理解するステップを提供する。ヒト血漿、及び/又は他の生体試料(例えば、組織、唾液、尿、血漿など)の小分子相補体に対するこれらの因子の影響を理解するステップに加え、こうした知識はまた、メタボロミクスに基づく有効な測定過程を、より伝統的な臨床測定値の決定と比較対照することも可能とする。
【0033】
I.バイオマーカー
本明細書に記載の代謝年齢バイオマーカーは、代謝プロファイリング技法を用いて発見された。こうした代謝プロファイリング技法は、以下に記載の実施例のほか、その内容の全体が、本明細書での参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,005,255号及び米国特許出願第11/357,732号、同第10/695,265号(公開番号第2005/0014132号)、同第11/301,077号(公開番号第2006/0134676号)、同第11/301,078号(公開番号第2006/0134677号)、同第11/301,079号(公開番号第2006/0134678号)、及び同第11/405,033号にも、より詳細に説明されている。
【0034】
一般に、代謝プロファイルは、各年齢群(例えば、<25歳、25〜35歳、36〜50歳、51〜65歳、>65歳)からのヒト対象に由来する生体試料に対して決定された。個体の代謝年齢は、該代謝プロファイルを、各年齢群(例えば、<25歳、25〜35歳、36〜50歳、51〜65歳、>65歳)に特徴的な代謝プロファイルと比較することによって決定される(図2を参照されたい)。個々のプロファイルが、個体の実年齢よりも若齢の年齢群における個体に特徴的なプロファイルに類似する場合、該個体の代謝年齢は「ポジティブ」であるのに対し、該プロファイルが、個体の実年齢よりも高齢の年齢群に特徴的なプロファイルに類似する場合、該個体の代謝年齢は「ネガティブ」である。メタボエイジは、メタボスコアと逆相関する、すなわち、より若齢のメタボエイジは、負のメタボスコアから生じ、より高齢のメタボエイジは、正のメタボスコアから生じる。
【0035】
各年齢群、人種群、及び/又は性群からの対象に由来する試料の代謝プロファイルにおいて、別の群(例えば、異なる年齢群、人種群、及び/又は性群からの対象)と比較して、統計学的に有意なレベルで存在の異なる分子を含む、存在の異なる分子を、これらの群を区別するバイオマーカーとして同定した。
【0036】
代謝年齢を区別するステップに関する方法において用いられるバイオマーカーは、表2、4、5、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせに列挙したバイオマーカーを含む。性を区別するステップに関する方法において用いられるバイオマーカーは、表4に列挙したバイオマーカーを含み、人種を区別するステップに関する方法において用いられるバイオマーカーは、表5に列挙したバイオマーカーを含み、年齢と共に上昇するバイオマーカーは、表2、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせに列挙したバイオマーカーを含み、年齢と共に低下するバイオマーカーは、表2、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせに列挙したバイオマーカーを含み、年齢と共に変化するバイオマーカーは、表2、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせに列挙したバイオマーカーを含む。
【0037】
比較される群と関連する非バイオマーカー化合物もまた、同定されうる。
【0038】
この時点では、一部のバイオマーカー化合物及び非バイオマーカー化合物の化学名が未知であるが、「非命名」化合物は、分析技法により、こうした化学名を可能にするほど十分に特徴づけられているので、こうした化学名は、対象に由来する生体試料中におけるバイオマーカー化合物又は非バイオマーカー化合物の同定には不要である。こうした「非命名」化合物すべての分析的な特徴づけを、実施例において列挙する。本明細書では、特定の代謝物番号を後続させる「代謝物」という命名法を用いて、こうした「非命名」のバイオマーカー化合物及び非バイオマーカー化合物を指示する。
【0039】
例えば、酒石酸及び安息香酸などの生体異物もまた、測定されうる。個体に由来する生体異物化合物を測定し、これを用いて生体異物化合物と年齢との間の相関を決定する。こうした生体異物化合物の測定を用いて生体異物スコアを計算し、個体と年齢による基準との間の食事の差を判定する。生体異物レベルはまた、食事、ライフスタイル、又は投薬の変化に対する勧告を行うのにも用いることができる。
【0040】
II.代謝年齢の解析
対象の代謝年齢を決定する方法は、本明細書に提供される各表中で同定される1つ又は複数のバイオマーカーを用いて実施してよい。例えば、(1)対象に由来する生体試料を解析して、試料中における1つ又は複数の代謝年齢バイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、(2)対象の代謝年齢を決定するために、試料中における1つ又は複数の代謝年齢バイオマーカーの(複数の)レベルを、1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢基準レベルと比較するステップとを含む、対象の代謝年齢を決定する方法である。1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、生化学的年齢指数(BAI)と比較して、対象の代謝年齢を決定してよい。使用される1つ又は複数のバイオマーカーは、表2、4、5、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせから選択される。
【0041】
試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するために、任意の適切な方法を用いて生体試料を解析してよい。適切な方法は、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析(例えば、MS、MS−MS)、ELISA(酵素免疫測定)法、抗体連結法、他の免疫化学法、及びこれらの組み合わせを含む。さらに、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルは、例えば、測定されることが望ましい(複数の)バイオマーカーのレベルと相関する化合物(又は複数の化合物)のレベルを測定するアッセイを用いることにより、間接的に測定してよい。
【0042】
表2、4、5、7、及び/又は8の1つ又は複数のバイオマーカーのレベルは、対象の代謝年齢を決定する方法、及び代謝プロファイルを解析するステップを支援する方法において決定してよい。表2、4、5、7、及び/若しくは8、又はこれらの任意の一部にあるすべてのバイオマーカーの組み合わせを含む、例えば、1つのバイオマーカー、2つ以上のバイオマーカー、3つ以上のバイオマーカー、4つ以上のバイオマーカー、5つ以上のバイオマーカー、6つ以上のバイオマーカー、7つ以上のバイオマーカー、8つ以上のバイオマーカー、9つ以上のバイオマーカー、10以上のバイオマーカー、15以上のバイオマーカーなどの(複数の)レベルを、こうした方法において決定及び使用してよい。バイオマーカーの組み合わせのレベルの決定は、代謝プロファイルを解析するステップ、及び代謝年齢の決定を支援するステップにおけるより高い感度及び特異性を可能とし、代謝年齢と類似又は重複するバイオマーカーを有しうる他の代謝性変異又は疾患からの、代謝年齢のより良好な区別を可能とする。
【0043】
さらに、生体試料中の特定のバイオマーカー(M1/M2)(及び非バイオマーカー化合物)レベルの比率は、代謝年齢を決定するステップ又は代謝性疾患の診断におけるより高い感度及び特異性を可能とし、代謝年齢と類似又は重複するバイオマーカーを有しうる他の代謝性変異又は疾患からの、代謝年齢のより良好な区別を可能としうる。また、生体試料中の生体異物の比率(X1/X2)も、対象の代謝プロファイルにおける差異を測定するのに用いられる。これらの比率は、代謝差を測定するステップにおけるより良好な特異性及び区別を可能としうる。さらに、特定のバイオマーカーと生体異物との比率(M1/X1)もまた、対象の代謝プロファイルを解析するステップにおけるより高い感度及び特異性を提供するのに用いることができる。
【0044】
試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定した後で、(複数の)レベルを代謝年齢基準レベルと比較することにより個体の代謝プロファイルを解析するステップを支援して、対象の代謝年齢を決定する。特定の代謝年齢基準レベル(例えば、基準レベルと同じレベル、基準レベルと実質的に同じレベル、基準レベルの最小値及び/若しくは最大値を上回る及び/若しくは下回るレベル、並びに/又は基準レベルの範囲内のレベル)に適合する試料中における1つ又は複数のバイオマーカーのレベルは、対象の代謝年齢を示す。代謝年齢基準レベル(例えば、基準レベルと同じレベル、基準レベルと実質的に同じレベル、基準レベルの最小値及び/若しくは最大値を上回る及び/若しくは下回るレベル、並びに/又は基準レベルの範囲内のレベル)に適合しない試料中における1つ又は複数のバイオマーカーのレベルは、個体が、特定の代謝年齢内に適合しないことを示す。場合によって、こうした比較に用いられる基準レベルは、選択された集団(例えば、黒人男性集団又はヒスパニック女性集団に対するバイオマーカーの基準レベル)内におけるバイオマーカー基準レベルの性及び/又は人種の差に基づくことがある。性及び/又は人種の差を区別するのに用いうるこうしたバイオマーカーは、表4及び/又は5、並びにこれらの組み合わせにおいて同定されたバイオマーカーを含む。
【0045】
1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルは、異なる代謝年齢基準レベル中のレベルに対する、生体試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルの単純な比較(例えば、手作業による比較)を含む各種の技法を用いて、代謝年齢基準レベルと比較してよい。生体試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルはまた、1つ又は複数の統計学的解析(例えば、t検定、ウェルチのT検定、ウィルコクソンのランク和検定、ランダムフォレスト)を用いて、代謝年齢基準レベルと比較してもよい。
【0046】
加えて、生体試料を解析して、1つ又は複数の非バイオマーカー化合物の(複数の)レベルを決定してよい。こうした非バイオマーカーの(複数の)レベルもまた、特定の代謝年齢と類似又は重複するバイオマーカーを有しうる他の代謝年齢又は代謝性変異若しくは疾患からの、代謝年齢又は代謝性疾患の区別を可能としうる。例えば、他の代謝年齢を有する対象に由来する生体試料が、該非バイオマーカー化合物を有さない場合、特定の代謝年齢の対象及び異なる代謝年齢の対象の生体試料中に存在する既知の非バイオマーカー化合物をモニターして、別の代謝年齢と比較した特定の代謝年齢の推定値を検証することができる。
【0047】
III.代謝年齢の上昇又は低下をモニターする方法
代謝年齢のバイオマーカーの同定はまた、対象における代謝年齢の上昇又は低下をモニターすることも可能にする。対象の代謝年齢の上昇又は低下をモニターする方法は、(1)対象に由来する第1の生体試料を解析して、表2、7、及び/又は8から選択される1つ又は複数の代謝年齢のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップ(第1の試料は、第1の時点における対象から得る)と、(2)対象に由来する第2の生体試料を解析して、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップ(第2の試料は、第2の時点における対象から得る)と、(3)対象の代謝年齢の上昇又は低下をモニターするために、第1の試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、第2の試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルと比較するステップとを含む。1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルはまた、生化学的年齢指数(BAI)と比較されて、対象の代謝年齢の上昇又は低下もモニターしうる。該方法の結果は、対象における代謝年齢差又はメタボスコア(すなわち、変化があれば、上昇又は低下)を示す。1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルの経時的な変化(変化がある場合)は、対象における代謝年齢の上昇又は低下を示しうる。
【0048】
対象における代謝年齢の経過を特徴づけるために、第1の試料における1つ若しくは複数のバイオマーカーの(複数の)レベル、第2の試料における1つ若しくは複数のバイオマーカーの(複数の)レベル、並びに/又は、第1の試料及び第2の試料におけるバイオマーカーレベルの比較の結果を、1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢基準レベルと比較してよい。比較により、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルが、経時的に上昇又は低下し(例えば、第1の試料と比較した第2の試料において)、より高齢の代謝年齢基準レベルにより多く類似する(又は相対的に若齢の代謝年齢基準レベルにより少なく類似する)ことが示されるならば、結果は代謝年齢の上昇を示す。比較により、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルが、経時的に上昇又は低下し、より若齢の代謝年齢基準レベルにより多く類似する(又はより高齢の代謝年齢基準レベルにより少なく類似する)ことが示されるならば、結果は代謝年齢の低下を示す。
【0049】
本明細書に記載の他の方法と同様に、対象における代謝年齢の上昇/低下をモニターする方法においてなされる比較は、単純な比較、1つ又は複数の統計学的解析、及びこれらの組み合わせを含む、各種の技法を用いて実施してよい。
【0050】
該方法の結果は、対象における代謝年齢の上昇/低下に対する臨床モニタリングにおいて有用な他の方法(又はその結果)と共に用いてよい。例えば、代謝年齢のモニタリングをライフスタイル評価の問診と組み合わせて、食事の改善及び/若しくは改変、ビタミン、ミネラル、及び/若しくは他の栄養補助物質、並びに/又はライフスタイルの改変(例えば、禁煙、飲酒量の軽減、身体運動の増大)に関する勧告を行うことができる。さらに、代謝年齢の測定及び/又は代謝年齢の上昇/低下のモニタリングをライフスタイル評価の問診と組み合わせて、不健康及び寿命の低下の危険因子を決定することができる。
【0051】
IV.代謝年齢を調節する組成物の有効性を評価する方法
代謝年齢のバイオマーカーの同定はまた、対象の代謝年齢を調節する(例えば、上昇させる又は低下させる)組成物の有効性の評価のほか、対象の代謝年齢を調節する2つ以上の化合物又は組成物の相対的な有効性の評価も可能とする。こうした評価を、例えば、有効性研究のほか、代謝年齢を調節する化合物又は組成物の主要な選択において用いることができる。
【0052】
代謝年齢を調節する組成物の有効性を評価する方法は、(1)第1の代謝年齢を有し、化合物又は組成物で現在又は以前治療を受けている対象に由来する生体試料を解析して、表2、7、及び/又は8から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、(2)試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、(a)化合物又は組成物での治療を受ける前の対象から得られた、対象に由来する既に採取済みの生体試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベル、(b)1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢ポジティブの基準レベル、(c)1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢ネガティブの基準レベル、及び/又は(d)標的代謝年齢基準レベルと比較するステップとを含む。比較の結果は、代謝年齢を調節する組成物の有効性を示す。
【0053】
こうして、代謝年齢を調節する組成物の有効性を特徴づけるために、生体試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、(1)代謝年齢ポジティブの基準レベル、(2)代謝年齢ネガティブの基準レベル、(3)組成物による治療前の対象における1つ又は複数のバイオマーカーのかつてのレベル、及び/又は(d)標的代謝年齢基準レベルと比較する。
【0054】
生体試料(特定の代謝年齢を有し、組成物で現在又は以前治療を受けている対象に由来する)中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、代謝年齢ポジティブの基準レベル、及び/又は代謝年齢ネガティブの基準レベル、及び/又は標的代謝年齢基準レベルと比較する場合、代謝年齢ネガティブの基準レベル及び/又は標的代謝年齢基準レベル(例えば、基準レベルと同じレベル、基準レベルと実質的に同じレベル、基準レベルの最小値及び/若しくは最大値を上回る及び/若しくは下回るレベル、並びに/又は基準レベルの範囲内のレベル)に適合する試料中の(複数の)レベルは、代謝年齢を調節する有効性を有する組成物を示す。代謝年齢ポジティブの基準レベル(例えば、基準レベルと同じレベル、基準レベルと実質的に同じレベル、基準レベルの最小値及び/若しくは最大値を上回る及び/若しくは下回るレベル、並びに/又は基準レベルの範囲内のレベル)に適合する試料中における1つ又は複数のバイオマーカーのレベルは、代謝年齢を調節する有効性を有さない組成物を示す。該比較はまた、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルに基づき、代謝年齢を調節する有効性の程度も示しうる。
【0055】
生体試料(特定の代謝年齢を有し、組成物で現在又は以前治療を受けている対象に由来する)中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、組成物での治療を受ける前の対象に由来する、既に採取済みの生体試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルと比較する場合、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルの任意の変化が、代謝年齢を調節する組成物の有効性を示す。すなわち、比較により、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルが、組成物での治療後に上昇又は低下し、代謝年齢ネガティブの基準レベル及び/又は標的代謝年齢基準レベルにより多く類似する(又は、代謝年齢ポジティブの基準レベルにより少なく類似する)ことが示されるならば、結果は、該組成物が、代謝年齢を調節する有効性を有することを示す。比較により、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルが、組成物での治療後に上昇又は低下せず、代謝年齢ネガティブの基準レベル及び/又は標的代謝年齢基準レベルにより多く類似する(又は、代謝年齢ポジティブの基準レベルにより少なく類似する)ことが示されるならば、結果は、該組成物が、代謝年齢を調節する有効性を有さないことを示す。比較はまた、治療後における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルにおいて観察される変化量に基づき、代謝年齢を調節する有効性の程度も示しうる。こうした比較を特徴づける一助とするため、1つ若しくは複数のバイオマーカーの(複数の)レベルの変化、治療前における1つ若しくは複数のバイオマーカーの(複数の)レベル、及び/又は組成物で現在若しくは以前治療を受けている対象における1つ若しくは複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢ポジティブ及び/若しくは代謝年齢ネガティブの基準レベル、並びに/又は標的代謝年齢基準レベルと比較してよい。
【0056】
代謝年齢を調節する組成物の有効性を評価する別の方法は、(1)対象に由来する第1の生体試料を解析して、表2、7、及び/又は8から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップ(第1の試料は、第1の時点における対象から得る)と、(2)組成物を対象に投与するステップと、(3)対象に由来する第2の生体試料を解析して、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップ(第2の試料は、組成物投与後の第2の時点における対象から得る)と、(4)代謝年齢を調節する組成物の有効性を評価するために、第1の試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、第2の試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルと比較するステップとを含む。上記に示した通り、試料の比較により、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルが、組成物の投与後に上昇又は低下し、代謝年齢ネガティブの基準レベル及び/又は標的代謝年齢基準レベルにより多く類似する(又は、代謝年齢ポジティブの基準レベルにより少なく類似する)ことが示されるならば、結果は、該組成物が、代謝年齢を調節する有効性を有することを示す。比較により、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルが、組成物の投与後に上昇又は低下せず、代謝年齢ネガティブの基準レベル及び/又は標的代謝年齢基準レベルにより多く類似する(又は、代謝年齢ポジティブの基準レベルにより少なく類似する)ことが示されるならば、結果は、該組成物が、代謝年齢を調節する有効性を有さないことを示す。比較はまた、組成物の投与後における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルにおいて観察される変化量に基づき、代謝年齢を調節する有効性の程度も示しうる。こうした比較を特徴づける一助とするため、1つ若しくは複数のバイオマーカーの(複数の)レベルの変化、組成物の投与前における1つ若しくは複数のバイオマーカーの(複数の)レベル、及び/又は、組成物の投与後における1つ若しくは複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、2つの組成物の1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢ポジティブ及び/若しくは代謝年齢ネガティブの基準レベル、並びに/又は標的代謝年齢基準レベルと比較してよい。
【0057】
代謝年齢を調節する2つ以上の組成物の相対的な有効性を評価する方法は、(1)特定の代謝スコアを有し、第1の組成物で現在又は以前治療を受けている第1の対象に由来する第1の生体試料を解析して、表2、7、及び/又は8から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、(2)同一又は類似の代謝スコアを有し、第2の組成物で現在又は以前治療を受けている第2の対象に由来する第2の生体試料を解析して、1つ又は複数の代謝年齢のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、(3)代謝年齢を調節する第1及び第2の組成物の相対的な有効性を評価するために、第1の試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、第2の試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルと比較するステップとを含む。結果は、2つの組成物の相対的な有効性を示し、その結果(第1の試料中における1つ又は複数のバイオマーカーのレベル及び/又は第2の試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベル)を、代謝年齢ポジティブ若しくは代謝年齢ネガティブの基準レベル又は標的代謝年齢基準レベルと比較して、相対的な有効性を特徴づけるステップを支援することができる。
【0058】
有効性を評価する方法の各々は、1例若しくは複数例の対象、又は1つ又は複数の対象群(例えば、第1群が第1の組成物により治療され、第2群が第2の組成物により治療される)に対して実施してよい。
【0059】
本明細書に記載の他の方法と同様に、代謝年齢を調節する化合物又は組成物の有効性(又は相対的な有効性)を評価する方法においてなされる比較は、単純な比較、1つ又は複数の統計学的解析、及びこれらの組み合わせを含む、各種の技法を用いて実施される。試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するために、任意の適切な方法を用いて生体試料を解析する。加えて、表2、7、及び/若しくは8、又はこれらの任意の一部にあるすべてのバイオマーカーの組み合わせを含む、或いは、表2、7、及び/又は8にある全部又は一部のバイオマーカーに由来する指数を用いる1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定し、代謝年齢を調節する組成物の有効性(又は相対的な有効性)を評価する方法において用いてよい。
【0060】
最後に、代謝年齢を調節する1つ又は複数の化合物又は組成物の有効性(又は相対的な有効性)を評価する方法は、生体試料を解析して、1つ又は複数の非バイオマーカー化合物の(複数の)レベルを決定するステップをさらに含んでよい。次いで、非バイオマーカー化合物は、標的代謝年齢を有する(又は有さない)対象について、非バイオマーカー化合物の基準レベルと比較してよい。
【0061】
V.代謝年齢と関連するバイオマーカーを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法
代謝年齢のバイオマーカーの同定はまた、対象の代謝年齢を調節する(上昇又は低下させる)のに有用でありうる、年齢と関連するバイオマーカーを調節する活性についての組成物のスクリーニングも可能とする。対象の代謝年齢を上昇又は低下させるのに有用な組成物をスクリーニングする方法は、表2、4、5、7、及び/又は8にある1つ又は複数の代謝年齢バイオマーカーのレベルを調節する活性について、試験組成物を調べるステップを含む。こうしたスクリーニングアッセイは、in vitro及び/又はin vivoで実施してよく、例えば、細胞培養アッセイ、臓器培養アッセイ、及びin vivoアッセイ(例えば、動物モデルに関連するアッセイ)など、試験組成物の存在下において、こうした代謝年齢バイオマーカーの調節を調べるのに有用な、当技術分野で知られた任意の形態でよい。
【0062】
一実施形態において、代謝年齢の1つ又は複数のバイオマーカーを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法は、(1)1つ又は複数の細胞を組成物と接触させるステップと、(2)1つ若しくは複数の細胞の少なくとも一部又は該細胞と関連する生体試料を解析して、表2、4、5、7、及び/又は8から選択された、1つ又は複数の代謝年齢バイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、(3)1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、1つ又は複数のバイオマーカーについてあらかじめ決定された標準レベルと比較して、組成物が1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを調節したかどうかを決定するステップとを含む。上記で論じた通り、細胞は、in vitro及び/又はin vivoで組成物と接触させてよい。1つ又は複数のバイオマーカーについてあらかじめ決定された標準レベルは、組成物の不在下における1つ又は複数の細胞中の1つ又は複数のバイオマーカーのレベルでよい。1つ又は複数のバイオマーカーについてあらかじめ決定された標準レベルはまた、組成物と接触させていない対照細胞における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルでもよい。
【0063】
加えて、該方法は、1つ若しくは複数の細胞の少なくとも一部又は該細胞と関連する生体試料を解析して、1つ又は複数の代謝年齢非バイオマーカー化合物の(複数の)レベルを決定するステップをさらに含んでよい。次いで、該非バイオマーカー化合物のレベルを、1つ又は複数の非バイオマーカー化合物のあらかじめ決定された標準レベルと比較してよい。
【0064】
1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベル(又は、非バイオマーカー化合物のレベル)を決定するために、任意の適切な方法を用いて、1つ若しくは複数の細胞の少なくとも一部又は該細胞と関連する生体試料を解析してよい。適切な方法は、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析(例えば、MS、MS−MS)、ELISA(酵素免疫測定)法、抗体連結法、他の免疫化学法、及びこれらの組み合わせを含む。さらに、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルは、例えば、測定されることが望ましい(複数の)バイオマーカー(又は、非バイオマーカー化合物)のレベルと相関する化合物(又は複数の化合物)のレベルを測定するアッセイを用いることにより、間接的に測定してよい。
【0065】
VI.潜在的な薬剤標的を同定する方法
代謝年齢のバイオマーカーの同定はまた、代謝老化用の潜在的な薬剤標的の同定も可能とする。代謝老化用の潜在的な薬剤標的を同定する方法は、(1)表2、4、5、7、及び/又は8から選択された1つ又は複数の代謝年齢バイオマーカーと関連する1つ又は複数の生化学経路を同定するステップと、(2)1つ又は複数の同定された生化学経路の少なくとも1つに影響するタンパク質(例えば、酵素)を同定するステップ(該タンパク質が、代謝老化用の潜在的な薬剤標的である)とを含む。
【0066】
代謝老化用の潜在的な薬剤標的を同定する別の方法は、(1)表2、4、5、7、及び/又は8から選択された1つ又は複数の代謝老化用バイオマーカー、並びに、表2、4、5、7、及び/又は8から選択された1つ又は複数の代謝老化非バイオマーカー化合物と関連する1つ又は複数の生化学経路を同定するステップと、(2)1つ又は複数の同定された生化学経路の少なくとも1つに影響するタンパク質を同定するステップ(該タンパク質が、代謝老化用の潜在的な薬剤標的である)とを含む。
【0067】
1つ又は複数のバイオマーカー(又は、非バイオマーカー化合物)と関連する、1つ又は複数の生化学経路(例えば、生合成経路及び/又は代謝(異化)経路)を同定する。生化学経路を同定した後、該経路の少なくとも1つに影響する1つ又は複数のタンパク質を同定する。該経路の複数に影響するこれらのタンパク質を同定することが好ましい。生化学経路の例は、解糖、トリカルボン酸回路(TCA回路/クレブス回路/クエン酸回路)、ホスホグルコン酸経路、酸化還元及び電子伝達、酸化的リン酸化及び呼吸代謝(呼吸)、脂肪酸生合成及び酸化(B酸化)、アミノ酸生合成及び酸化的分解、炭水化物生合成、糖新生、脂質生合成、HMG−CoA還元酵素経路、五炭糖リン酸経路、ポルフィリン合成経路(ヘム合成)、窒素代謝(尿素回路)、ヌクレオチド生合成、並びに、DNA複製、転写、及び翻訳を含むがこれに限定されない。
【0068】
1つの代謝物(例えば、代謝経路中間体)の蓄積は、該代謝物の下流における「遮断」の存在を示すことがあり、該遮断は、下流代謝物(例えば、生合成経路産物)レベルの低下/不在をもたらすことがある。同様に、代謝物の不在は、(複数の)不活性酵素若しくは非機能酵素から、又は、該産物を産生するのに必要な基質である生化学的中間体が供給されないことから生じる、該代謝物の上流経路における「遮断」の存在を示しうる。或いは、代謝物レベルの上昇は、代謝物の過剰産生及び/又は蓄積をもたらす異常タンパク質を産生し、次いで、これが、他の関連する生化学経路の変化をもたらし、結果として該経路を介する正常な流れの調節異常をもたらす、遺伝子変異を示すことができ、さらに、生化学的中間代謝物の蓄積は、毒性であることもあり、関連する経路に必要な中間体の産生を損なうこともある。経路間の関係が現在のところ未知である可能性があり、このデータから、こうした関係が明らかとなりうる。
【0069】
次いで、潜在的な薬剤標的として同定されたタンパク質を用いて、遺伝子治療用の組成物を含む、代謝老化治療用の潜在的な候補物質でありうる組成物を同定してよい。
【0070】
VII.正の代謝スコアを有する対象を治療する方法
代謝年齢のバイオマーカーの同定はまた、正の代謝スコア(又はネガティブの代謝年齢)を有する対象の治療も可能とする。例えば、正の代謝スコアを有する対象を治療するために、中性の代謝スコア(正でも負でもない代謝スコア)を有する個体においてより低レベルである1つ又は複数の代謝年齢バイオマーカーの有効量を、該対象に投与してよい。投与しうるバイオマーカーは、代謝老化において低下する、表2、4、5、7、及び/又は8中の1つ又は複数のバイオマーカーを含みうる。こうしたバイオマーカーは、表2、4、5、7、及び/又は8に列挙したバイオマーカー用の分析的特徴づけに基づき単離しうる。一部の実施形態において、投与されるバイオマーカーは、加齢において低下し、0.05未満のp値及び/又は0.10未満のq値を有する、表2、4、5、7、及び/又は8、特に、表2、4、5、7、及び/又は8に列挙した1つ又は複数のバイオマーカーである。
【0071】
他の実施形態において、投与されるバイオマーカーは、代謝老化において、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%低下する(すなわち、不在の)、表2、4、5、7、及び/又は8、特に、表2に列挙した1つ又は複数のバイオマーカーである。
【0072】
VIII.生化学的年齢指数を作成する方法
メタボロミクス及び代謝年齢の研究を用いて、医療処置又は治療に対する対象の適性を判定することができる。例えば、生化学的年齢指数(BAI)を作成する1つの方法は、(a)複数の対象に由来する生体試料を解析して、代謝年齢と共に変化する1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、(b)代謝年齢と共に変化する1つ又は複数の最初のバイオマーカーの各々と相関する1つ又は複数の他のバイオマーカーを同定して、代謝年齢と共に変化する1つ又は複数のバイオマーカー群を生成するステップと、1つ又は複数のバイオマーカー群の各々のレベルを用いて、生化学的年齢指数を生成するステップとを含む。BAIを作成する方法の1つの例は、表2、4、5、7、及び/又は8に列挙した1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップに基づいてよい。
【0073】
BAIを作成するのに用いる試料は、2例、3例、4例、5例、6例、7例、8例、9例、10例、15例、20例、25例、30例、35例、40例、45例、50例、若しくは100例、又はこれを超える対象を含む任意の数の対象に基づいてよい。
【0074】
該指数は、指数を生成するのに用いうる任意の方法により作成してよい。一態様において、該指数は、1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、例えば、散布図においてプロットすることにより生成される。次いで、こうした散布図は、2次曲線で近似してよい。
【0075】
加えて、該指数は、選択された集団、例えば、性若しくは人種、又は性及び人種の組み合わせ(例えば、黒人男性、黒人女性、白人男性、白人女性、ヒスパニック男性、又はヒスパニック女性)に基づく集団に合わせて調整してよい。
【0076】
IX.代謝年齢バイオマーカーを他の年齢関連疾患に用いる方法
本明細書に記載の代謝老化用バイオマーカーの一部はまた、他の年齢関連疾患一般に対するバイオマーカーでもありうると考えられる。したがって、代謝老化バイオマーカーの少なくとも一部は、老化関連疾患一般に対する本明細書に記載の方法において用いてよいと考えられる。すなわち、代謝老化に関する本明細書に記載の方法はまた、老化関連疾患を診断するステップ(又は、その診断を支援するステップ)、老化関連疾患の進行/回帰をモニターする方法、年齢関連疾患を治療する組成物の有効性を評価する方法、老化関連疾患と関連するバイオマーカーを調節する活性について組成物をスクリーニングする方法、老化関連疾患用の潜在的な薬剤標的を同定する方法、及び、老化関連疾患を治療する方法にも用いてよい。こうした方法は、代謝老化に関して本明細書に記載の通りに実施しうる。
【0077】
X.報告及び勧告する方法
メタボロミクス解析の後、結果として得られる個体の代謝プロファイルを、異なる年齢群に特徴的な代謝プロファイルと比較して、個体の代謝年齢(メタブエイジ)又はメタボスコアを決定してよい。こうした比較は、対象の代謝年齢の改変を可能としうる。一態様において、対象の代謝年齢の改変のための方法は、(a)対象に由来する生体試料を解析し、試料中の代謝年齢と関連する1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、(b)試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、代謝年齢基準レベルと比較して、対象の代謝年齢を決定するステップと、(c)対象の代謝年齢を改変する勧告を行うステップとを含む。一態様において、用いられる1つ又は複数のバイオマーカーは、表2、4、5、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせから選択される。
【0078】
結果をまとめ、個体の代謝年齢状態を改善することを目的とした勧告を行う報告書を提供してよい。最終報告書は、代謝年齢(メタボエイジ)、個体の実年齢と代謝年齢との間の差(メタボスコア)、影響を受けた(ポジティブ又はネガティブに変化した)生化学経路の一覧、栄養上の勧告(好ましくなければ改善し、好ましければ維持する)、及び対象の代謝年齢を改変するのに有用でありうる治療作用物質を含むがこれに限定されない。
【0079】
代謝年齢解析法をライフスタイル評価の問診と組み合わせて、食事の改善及び/又は改変;ビタミン、ミネラル、及び/又は他の栄養補助物質;並びにライフスタイルの改変(例えば、禁煙、飲酒量の軽減、身体運動の増大)に関する勧告を行うことができる。さらに、該方法及び問診を組み合わせて、不健康及び寿命の低下の危険因子を決定することができる。
【0080】
XI.医療処置又は治療に対する対象の適性を判定する方法
メタボロミクス及び代謝年齢の研究を用いて、医療処置又は治療に対する対象の適性を判定することができる。例えば、代謝年齢を解析するステップは、手術、化学療法、理学療法、又は他の医学的治療に対する適性を判定するステップ、麻酔用量を決定するステップ、追加の診断検査の要件を決定するステップ、並びに薬剤治療、レジメン、及び/又は用量を決定するステップに有用であるがこれに限定されない。本発明は、医療処置、手術、又は治療に対する対象の適性を判定する方法であって、
a)本出願に記載の方法を用いて、代謝年齢若しくはプロファイル、又は、対象に由来する試料中における1つ若しくは複数の年齢に関連するバイオマーカーのレベルを決定するステップと、
b)対象の代謝年齢若しくはプロファイル又はレベルを、1つ又は複数の年齢に関連するバイオマーカーの(複数の)基準レベル又は生化学的年齢指数(BAI)と比較するステップと、
c)対象の代謝年齢と実年齢との間の差を決定して、医療処置、手術、又は治療に対する適性を判定するステップと
を含む方法に関する。
【0081】
本発明はまた、麻酔に対する対象の適性を判定する方法であって、
a)本出願に記載の方法を用いて、代謝年齢若しくはプロファイル、又は、対象に由来する試料中における1つ若しくは複数の年齢に関連するバイオマーカーのレベルを決定するステップと、
b)対象の代謝年齢若しくはプロファイル又はレベルを、1つ又は複数の年齢に関連するバイオマーカーの(複数の)基準レベル又は生化学的年齢指数(BAI)と比較するステップと、
c)対象の代謝年齢と実年齢との間の差を決定して、麻酔に対する適性を判定するステップと
を含む方法にも関する。
【0082】
XII.疾病及び/又は疾患の危険因子を決定する方法
対象の代謝年齢を解析するステップはまた、対象の疾病及び/又は疾患の危険因子を決定するステップにも有用である。
本発明は、対象の疾病及び/又は疾患の危険因子を決定する方法であって、
a)本出願に記載の方法を用いて、代謝年齢若しくはプロファイル、又は対象に由来する試料中における1つ若しくは複数の年齢に関連するバイオマーカーのレベルを決定するステップと、
b)対象の代謝年齢若しくはプロファイル又はレベルを、1つ又は複数の年齢に関連するバイオマーカーの(複数の)基準レベル又は生化学的年齢指数(BAI)と比較するステップと、
c)対象の代謝年齢と実年齢との間の差を決定して、疾病及び/又は疾患の危険因子を決定するステップと
を含む方法に関する。
【0083】
XIII.生体異物及び生体異物スコアを解析する方法
対象に由来する試料中には、生体異物もまた存在し、代謝物と全く同様に、対象の年齢との関連で解析することができる。対象の生体異物スコアを決定する方法は、a)対象に由来する生体試料を解析して、試料中における1つ又は複数の生体異物の(複数の)レベルを決定するステップと、b)対象の生体異物レベルを決定するために、試料中における1つ又は複数の生体異物の(複数の)レベルを、1つ又は複数の生体異物の生体異物基準レベルと比較するステップと、c)対象の生体異物レベルと生体異物基準レベルとの間の差を計算して、生体異物スコアを決定するステップとを含む。
【0084】
生体異物スコアを用いて、食事の改善若しくは改変、ライフスタイルの変化(例えば、禁煙、飲酒量の軽減、身体運動の増大)、並びに/又はビタミン、ミネラル、及び/若しくは栄養補助物質に関する勧告を行うことができる。さらに、ライフスタイル評価の問診もまた、生体異物解析及びスコアと組み合わせて、健康及び生体異物レベルを改善する勧告を行うことができる。
【実施例】
【0085】
本発明は、非限定的であることを意図する以下の例示的な実施例により、さらに説明される。
【0086】
実施例1:代謝年齢バイオマーカーの同定
本実施例は、ヒトの年齢、性、及び人種と共にレベルが変化する代謝物の決定について説明する。
【0087】
試料調製
表1に示すヒト血漿試料は、Bioreclamation社(ニューヨーク州、イーストメドウ)から入手した。試料調製過程は、Hamilton社製のMicroLab STAR(登録商標)液体操作システムを用いて実施した。品質管理(QC)のための抽出過程中における第1工程前に、回収標準物質を添加した。試料調製は、試料タンパク質を除去する一連の特許有機抽出物及び特許水性抽出物を用いて、小分子の回収を最大化しながら実施した。結果として得られる抽出物は、一方は極性液体クロマトグラフィー(LC)による分析用、他方はガスクロマトグラフィー(GC)による分析用に、2つの画分に分割した。TurboVap(登録商標)(Zymark社製)を用いて、有機溶媒を除去した。次いで、真空下で各試料を凍結乾燥させた。次いで、LC/MS又はGC/MSの適切な分析システム用に試料を調製した。
【0088】
表1:年齢群、性、及び自己申告された人種による対象構成
【表1】

【0089】
液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)
LC/MSシステムは、Surveyor HPLC(マサチューセッツ州、ウォルサム、Thermo−Electron社製)及びLTQリニアイオントラップ質量分析計(マサチューセッツ州、ウォルサム、Thermo−Electron社製)から構成された。化合物は、水性/有機溶媒勾配により溶出し、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法によりイオン化した。連続的に陽イオン及び陰イオンを共に発生させることができるよう、連続交流極性切替え法を用いた。
【0090】
5つ以上の注射標準物質を固定濃度で含有する100μlの注射溶媒中に、真空乾燥試料を溶解させた。クロマトグラフィーシステムには、溶媒Aが水であり溶媒Bがメタノールである、勾配として送達された二元溶媒システムを用いた。両者共に高純度グレードであり、pH安定剤として0.1%ギ酸を含有した。HPLCカラムは、Thermo AquaSil C−18(長さ100mm×内径2.1mm)であった。LC−MSを用いて同定された代謝物は、表2〜12にある「ライブラリー」欄中の番号35により示される。
【0091】
ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)
GC試料は、ビストリメチル−シリル−トリフルオロアセトアミド(BSTFA)を用いる乾燥窒素下で誘導体化される前に、最低24時間にわたり真空下で乾燥させた。GCカラム(ペンシルベニア州、ベルフォンテ、Restek社製)は、5%フェニルであった。溶出は、16分間にわたり、40℃〜300℃の温度傾斜により実施した。質量分析計は、TraceDSQ(マサチューセッツ州、ウォルサム、Thermo−Electron社製)単四重極質量分析計から構成された。イオン化は、電子衝撃(EI)法により達成した。GC−MSを用いて同定された代謝物は、表2〜11にある「ライブラリー」欄中の番号50により示される。
【0092】
データ処理
データ処理は、4つの主要な要素である、Metabolon社研究所情報管理システム(MLIMS)、データ抽出及びピーク同定ソフトウェア、QC及び化合物同定用データ処理ツール、並びにデータ解析による使用のための情報解釈及び可視化ツールコレクションからなる、Metabolon社特注開発情報プラットフォームを用いて実施した。
【0093】
化合物の同定
化合物は、精製標準物質又は頻出する非命名実体のライブラリー項目との比較により同定した。既知の化学的実体の同定は、種々のメーカーから購入した精製標準物質のメタボロミクスライブラリー項目との比較に基づいた。
【0094】
統計学的計算
データの統計学的解析は、市販のソフトウェアパッケージであるJMP(SAS社製、jmp.comのウェブサイトで入手できる)、及び、無料で利用できるオープンソースのソフトウェアパッケージである「R」(r−project.orgのウェブサイトで入手できる)を用いて実施した。
【0095】
表1は、本研究で用いる270の試料について、年齢、人種、及び性によるコホートについて記載するデータを含有する。
【0096】
統計学的解析には、全因子に対してANOVAを実施した。一般に、分散は、化合物の平均応答の関数として増大したので、各化合物について観察された相対濃度に対数変換を適用した。一部の化合物、特に、生体異物は、多くの試料が記録された値を有さない「疎な」応答を有する。統計学的解析に組み入れられるには、化合物は、表1に示した年齢、人種及び性の組み合わせの1つにおいて、少なくとも80%の試料に対する応答を有さなければならない。応答が欠如する場合、本発明者らは、該化合物が検出限界未満であるために値が欠如すると推測した。これらの場合、平均を推定するのに控えめである、その化合物に対する最小の応答を値に帰属させた。最後に、誤発見を制限するため、q値(Benjamini,Y.及びY.Hochberg、1995年、Journal of the Royal Statistical Society、Series B、第57巻、289〜300頁)を計算した。年齢、人種、及び性による差異を探索するのに加えて、本発明者らはまた、これらの因子間の相互作用も探索した。大部分において、強い相互作用は観察されなかった。しかし、本発明者らは、尿素レベルが、年齢及び性のいずれによっても影響されうることを観察した。
【0097】
表1に記載され、年齢群分けに基づいて解析され、個体から採取された血漿中で検出された、命名代謝物又は非命名代謝物を表2に列挙する。「ライブラリー」欄は、化合物が、GC−MS又はLC−MSのいずれを用いて検出されたかを示す。GC−MS代謝物が「50」によって示されるのに対し、「35」はLC−MS代謝物を示す。各年齢群の各化合物に対する平均レベルは、年齢群(25〜35歳、36〜50歳、51〜65歳)別の欄において示される。統計学的有意性はp値で示され、誤発見率はq値により示される。「化合物ID」欄は、本発明者らの化学物質ライブラリーにおける該化合物の内部データベース追跡番号を示す。
【0098】
表2:年齢と共に変化する化合物
【表2−1】


【表2−2】


【表2−3】


【表2−4】


【表2−5】


【表2−6】


【表2−7】


【表2−8】


【表2−9】


【表2−10】


【表2−11】


【表2−12】

【0099】
表3は、経路を含む代謝物の変化に基づく、年齢、性、又は人種による差を示した生化学経路の一覧を含む。
【0100】
表3:生化学経路ごとの年齢、人種、及び性による統計学的な有意差を示すバイオマーカー化合物の数
【表3】

【0101】
年齢に関連する変化
年齢群間で異なる化合物の大半は、年齢に伴う増加を示した。年齢に伴う有意差を示したレベルを有する化合物を、表2に示す。本表における1つの興味深い観察は、大多数のアミノ酸が、年齢と共に増加することである。Lepage及び共同研究者により公表された小児対象に関する研究では、生後1年目以後、アミノ酸レベルが着実に上昇することが示された(Lepage,N.ら、1997年、Clin Chem.、第43巻、第12号、2397〜2402頁)。この研究は、18歳までの対象をモニターしたに過ぎないが、その傾向は、本発明者らの研究におけるデータと符合する。また、本発明者らは、対象内におけるアミノ酸レベルが、高度に相関することを見ることも多い。図1では、ロイシンレベル及びバリンレベルが高度に相関していることを見ることができる。
【0102】
複数の化合物が、統計学的に有意なレベルの変化を示すが、年齢に伴う明らかな上昇又は低下の傾向は示さない(表2)。14の化合物が、36〜50歳の対象において最高の存在量を示す。このパターンを有する13の化合物が、非命名である。これらは、代謝物4271、代謝物1129、代謝物2894、代謝物1834、代謝物3310、代謝物2810、代謝物1142、代謝物3018、代謝物1183、代謝物3487、代謝物1262、代謝物1264、代謝物1187、及び代謝物1718である。この群中で命名された唯一の化合物は、グリセロール−3−ホスフェートである。4つの化合物が、中年群において最低であり、2つが非命名化合物(代謝物2558、代謝物3830)であり、2つが命名化合物である。命名化合物は、trans−2,3,4−トリメトキシ桂皮酸及びトリプトファンである。
【0103】
文献及びGeigy社版便覧(「物理化学、血液組成、血液学、身体計測法データ(Physical Chemistry,Composition of Blood,Hematology,Somatometric Data)」、第8版、1984年、「Geigy社科学便覧(Geigy Scientific Tables)」C.Lentner編、第3巻、スイス、バーゼル、Ciba−Geigy社)の探索を実施して、本研究において測定された75の命名代謝物のレベルの変化が、過去の報告と符合するかどうかを判定した。Geigy社版便覧は、75化合物中32化合物の血漿レベルが列挙されており、有用な情報源であった。報告された32化合物中23化合物の傾向は、Geigy社版便覧と一致したが、32化合物中5化合物は、異なる傾向を示した。この相違の一部は、報告のすべてが、本発明者の人口統計学的研究において用いられたのと同じ年齢区分により分類されたわけではないことによる。年齢が記録された場合、年齢群の大半は、新生児、小児、成人の大まかな区分によっていた。
【0104】
これらの代謝物レベルの年齢に関連する変化との関係において、文献探索は、さほど得るところがなかった。化合物の多くが文献中で研究されており、多くの化合物が、アルツハイマー病(AD)などの年齢に関連する疾患と関連したにもかかわらず、年齢に伴う変化は記録されていないことが多かった。1つの例外が、ヒト副腎の主要な分泌産物であるDHEA−Sであると推定され収載される、未知の代謝物1069である。この化合物は、年齢と共に徐々に減少することが報告されている(Birkenhager−Gillesse,E.G.、J.Derksen、及びA.M.Lagaay、1994年、Ann.NY Acad Sci.、第719巻、第1号、543〜552頁)。興味深いことに、この化合物は、対照である対象と比較して、ADにおいて増大することが示されている。しかし、該報告は、DHEASレベルとADとの間の有意な相関は観察されないと述べた。
【0105】
結果と考察
本実施例では、代謝プロファイルが年齢と共に変化することが示された。こうして、生化学的又は生理学的年齢(「代謝年齢」又はメタボエイジ)と関連する、特徴的な代謝プロファイルを、メタボロミクスを用いて決定することができる。
【0106】
性に関連する変化
表4は、男性個体と女性個体との間で異なるレベルを示した代謝物を示す。
【0107】
表4:性に基づき変化する化合物
【表4−1】


【表4−2】


【表4−3】


【表4−4】


【表4−5】


【表4−6】


【表4−7】


【表4−8】

【0108】
人種に関連する変化
本研究では、人種に基づき統計学的に有意に異なる化合物が計24存在した。24化合物中7化合物が、黒人、白人、及びヒスパニックの間の相対濃度において、50%を超える差を有した。これらの有意差の1つが、厳密に食事に関する代謝物であるカフェインであるのに対し、他の6つの有意差は、食事又は生合成の可能性がある。表5は、人種と共に異なった代謝物の一覧を提供する。
【0109】
表5:人種により異なる化合物
【表5】

【0110】
より興味深い代謝物の1つが、白人及びヒスパニックと比較して、黒人において有意に低い、パルミトレイン酸である。パルミトレイン酸は、血中における主要な脂肪酸の1つであり、肝臓において合成されるのに加えて、魚類、赤身の肉、落花生などを含む多数の食品からも摂取できる。遺伝的連関を除外することはできないが、この差は、おそらく食事による。黒人対象の血漿中において、本発明者らは、白人及びヒスパニックにおいて観察されるレベルと比較して25%超低いパルミトレイン酸レベルを観察した。興味深いことに、この観察は、過去の2つの研究(Bhattacharyya,A.K.ら、1987年、Am J Clin Nutr.、第46巻、第1号、41〜46頁;及びKokatnur,M.G.ら、1979年、Am J Clin Nutr.、第32巻、第11号、2198〜2205頁)と符合する。714例の25〜44歳で死亡した黒人及び白人男性を対象とするBhattacharyyaの研究において、同著者らは、黒人と比較して白人に由来する組織中の脂肪蓄積から、有意に高いパルミトレイン酸レベルを示した。406例の男性に対するKokatnurの研究でも、同様の結果が観察された。
【0111】
人種の関数としてのカフェインレベルの差は、パルミトレイン酸の場合よりもさらに大きかった。本研究において、本発明者らは、黒人が、一般に、白人及びヒスパニックと比較して著明に低いカフェインレベルを有することを観察した。食事の差を除外できないにもかかわらず、過去の研究は、CYP2D6レベルを低下させる変異の頻度が低いこと(Evans,W.E.ら、1993年、J Clin Invest.、第91巻、第5号、2150〜2154頁)、又は、CYP1A若しくはn−アセチルトランスフェラーゼ(NAT)レベルが高いこと(Relling,M.V.ら、1992年、Clin Pharmacol Ther.、第52巻、第6号、643〜658頁;及びButler,M.A.ら、1992年、Pharmacogenetics、第2巻、第3号、116〜127頁)により、黒人におけるカフェインの潜在的な代謝レベルが高いことを報告している。
【0112】
概要
270例のヒト対象に由来する血漿に、代謝解析を適用した。考慮された因子は、年齢、性、及び人種であった。血漿中の700を超える化合物が、レベルの差を検出された。本発明者らの統計学的基準に基づき、300を超える化合物が、年齢、性、又は人種についての統計学的有意差を示した。これらの3つの因子について、明らかに強い相互作用は観察されなかったが、尿素は例外である可能性を有する。最後に、過去に公表された臨床研究と符合する多数の傾向が、本発明者らの単独の研究内において観察された。
【0113】
実施例2:非命名化合物の分析的な特徴づけ
以下の表6は、上記の表2〜5に列挙した各非命名代謝物の分析的な特徴を含む。該表は、列挙した各「代謝物」について、上記の分析法を用いて得られた、保持時間(RT)、保持指数(RI)、質量、質量の定量法、及び極性を含む。「質量」は、化合物の定量において用いられた親イオンのC12同位体による質量を指す。「質量の定量法」は、「Y」がGC−MS、並びに、「1」及び「2」がLC−MSを示す、定量に用いられる分析法を示す。「極性」は、定量イオンの極性を、陽イオン(+)又は陰イオン(−)として示す。
【0114】
表6:非命名代謝物の分析的な特徴づけ
【表6−1】


【表6−2】


【表6−3】


【表6−4】


【表6−5】


【表6−6】


【表6−7】


【表6−8】


【表6−9】

【0115】
実施例3:メタボロミクス解析を適用して年齢を予測し、生化学的指数(BAI)を生成する
本実施例は、メタボロミクス解析をどのように用いて、個体の代謝年齢を予測し、個体のメタボスコアを決定するのに用いられる生化学的指数(BAI)を生成するかについて記載する。
【0116】
回帰分析を実施して、メタボロミクスの結果に基づき年齢を予測する能力を評価した。モデルへの追加についての組み入れ基準は、p値が0.05未満であることであり、変数選択の調整済みR平方基準又は赤池情報量基準(AIC)を用いるよりも、最終モデルにおける総変数が少なくなった。性差数のため、性ごとに個別に回帰分析を実施した。生体異物を除く命名化合物及び非命名化合物を、モデルに応じて考察した。回帰分析の結果を、表7及び図3に示す。表7は、モデルを含むバイオマーカー化合物を列挙する。
【0117】
表7:年齢予測のための段階的回帰分析
【表7−1】


【表7−2】

【0118】
ステューデント化残差を用いて、残りのデータと矛盾するデータ点(すなわち、異常値)を同定した。本研究において、異常値は、モデルによく適合しない個体、すなわち、予測された代謝年齢が、実際の実年齢と著明に異なる場合を表す。この場合、ステューデント化残差を、1に等しい分散を有するように基準化し(「ハット」行列(Hoaglin,D.C.及びR.E.Welsch、1978年、「回帰分析とANOVAにおけるハット行列(The Hat Matrix in Regression and ANOVA)」、The American Statistician、第32巻、第1号、17〜22頁)により基準化)、2.0の絶対値よりも大きいステューデント化残差に基づき異常値を決定した。10例の個体(女性6例及び男性4例)を、異常値として同定した。女性6例のうち4例が、実際の実年齢よりも若齢の予測年齢を有したのに対し、2例は、実際の実年齢よりも高齢であると予測された。男性では、2例が、予測年齢よりも実年齢で高齢であり、2例が、予測年齢よりも実年齢で若齢であった。データは、異常値点に丸印をつけて図3にグラフ表示する。予測年齢よりも実年齢で高齢の個体は、実線の対角線より下の丸印をつけた点であり、予測年齢よりも実年齢で若齢の個体は、実線の対角線より上の丸印をつけた点である。
【0119】
生化学的年齢指数を生成するための第1段階は、年齢と関連する命名化合物を同定することである。次いで、明らかな異常値化合物のスコアを除外する。該化合物が生物学的に妥当である(外因性化合物/生体異物、例えば、カフェインでない)ことを確認する。明らかな性差及び人種差について点検する。選択された変数(すなわち、化合物)と相関する変数(すなわち、化合物)を見出す。すなわち、年齢と相関する化合物/代謝物と相関する他の化合物/代謝物を検索することにより、相関化合物の集合及び/又は群を同定する。これらの化合物群又は集合を用いて、単純な指数を確立する。
【0120】
多数の統計学的方法のいずれかを用いて化合物を走査し、年齢と共に変化する化合物を見出す。例えば、化合物濃度対年齢の多項近似解析、化合物濃度対年齢のスプライン近似解析、化合物濃度対年齢の単純2元散布図などがある。本実施例では、線形回帰分析を用いて、年齢と共に変化する化合物レベルを見出した。各年齢の(1例又は複数例の)各個体における化合物レベルを、Partionater 4.1.0(GoldenHelix.comのウェブサイトで入手可能)及びSAS社製のJMP 6.0.2(sas.comのウェブサイトで入手可能)を用いる回帰分析プログラムにより解析した。表8は、この回帰分析から得られた命名化合物の一部を列挙する。
【0121】
表8:年齢と共に変化するバイオマーカー化合物
【表8】

【0122】
レベルが変化し年齢と相関するこれらの化合物の多くはまた、相互にも相関する(図1)。この点を例示するために、上記表8中の一覧における最初の5項を選択した。これらの化合物の相関を表9に示す。
【0123】
表9:化合物の相関
【表9】

【0124】
表9中の化合物対間の相関を示す散布図を、図4及び5に示す。表10に示す通り、これらの化合物の一部はまた、年齢とも有意に相関する。
【0125】
表10:年齢と有意の相関を有する化合物の一部
【表10】

【0126】
各変数に2次曲線を近似し、R(説明された分散の比率)を計算した(表10)。個々の化合物に対して、Rは、0.155〜0.234の範囲にあった。予測の通り、表8に列挙した化合物からなる該指数に対するRの方が大きかった(R=0.255)。こうして、該指数はばらつきを低減し、説明されうるより大きな比率の分散を提供する。
【0127】
図5A〜Eに示す、年齢と比較した各化合物の分散図で例示する通り、本実施例における各化合物レベルの上昇は、約45歳においてより著明となる。ばらつきもまた、年齢と共に大きくなると思われる。アラニン、グルタミン、ノルメタネフリン、オルニチン、及びバリンに由来する指数を、2次曲線(実線)により近似し、図5Fに示す。
【0128】
ばらつきの多数の源泉が、個々の代謝物の変化の原因となっている。代謝物レベルのばらつきの約19%が、加齢、すなわち、生化学的制御の喪失による。その他のばらつきは、各種の源泉から生じうる。ばらつきの一部は、生化学的な解析過程に由来するが、本発明者らのプラットフォームでは、これは、<5〜8%が通例である。一部のばらつきは、遺伝学的特性及び環境における個体差によることがある。一部のばらつきは、人々の間におけるライフスタイルの差に由来する。例えば、食習慣又は身体運動習慣は、代謝物レベル又は化学物質レベルに影響することがある。特定の代謝物レベルが低い人々は、生化学的年齢が若齢の場合と考えられる。
【0129】
表10に示す通り、生化学的年齢の評価における解析的変動を低減する1つの方法は、年齢と共に上昇しつつある(又は低下しつつある(本実施例では、上昇する化合物のみを用いたが、さらに、上昇する化合物及び低下する化合物の両方を用いて指数を計算することが可能である))多数の化合物を平均することである。該平均を、生化学的年齢指数(BAI)と考えることができる。図6は、BAI対実年齢の密度等高線チャートを示す。各領域におけるデータ点の密度を、等高線により示す。BAIは、変数に対する2次曲線近似から生じ、太い実線により示される。
【0130】
化合物は、以下の方法で、該指数への追加について選択することができる。本発明者らは、統計学的に有意な形で年齢と共に上昇又は低下する命名化合物から始めた。食品と明らかに関連する化合物、例えば、紅茶又はコーヒーに由来するカフェイン、ワインに由来する酒石酸は、一覧から除外した(ただし、これらの生体異物を用いて、同様に生体異物指数を決定することができる)。一覧に残る、命名化合物と相関する非命名化合物を一覧に追加して、該指数のばらつきを低減する一助とすることができる。
【0131】
ノンパラメトリックの密度等高線は、データ中の情報を表すのに有用である(図6を参照されたい)。該指数は、個体(20〜45歳)では低く(<0.75)、次いで、45歳を超える個体では著明に上昇すると思われる。そうであるとしても、指数の低い45歳を超える個体も少数ながら存在する。また、該指数値の高い45歳未満の個体が多数存在することも明らかである。これらの個体は、年齢不相応に高齢であると考えうる。
【0132】
年齢と共に変化する多数の命名化合物及び非命名化合物を同定し、これらの化合物を指数に統合することにより、年齢と関連する化合物のより安定的な関係を得る。この情報が、生化学的年齢指数(BAI)を構築することを可能とする。
【0133】
実施例4:指数を適用して代謝年齢スコア(「メタボスコア」)を決定する
個体の代謝年齢を決定するため、生体試料(例えば、血漿、尿、唾液など)を個体(例えば、ヒト、非ヒト霊長動物、哺乳動物、イヌ、ウマ、ネコなど)から得て、メタボロミクス解析にかけた。次いで、結果として得られる代謝プロファイルを用いて、個体の生化学的年齢指数スコア(BAIスコア)を計算する。次いで、個体のBAIスコアを図7に示されたチャートに位置づけることにより、個体の代謝年齢(メタボエイジ)を決定することができる。図7に示す通り、該チャート上の各黒点が、個々のBAIスコアを示す。個体からBAI(対角線)に直線を引き、次いで、X軸に直線を引くことにより、代謝年齢(又はメタボエイジ)を決定する。個体からもX軸に直線を下ろし、実年齢を決定する。実年齢と代謝年齢(又はメタボエイジ)との間の差が、「メタボスコア」である。図7における例示では、黒円内の(1例又は複数例の)個体が、+36のメタボスコアをもたらす58歳の代謝年齢(メタボエイジ)及び22歳の実年齢を有し、該個体は、その実年齢よりも代謝年齢が高齢であることを示す。
【0134】
同様の形で、負のメタボスコアを決定することができる。図8に示す通り、個体からBAIに直線を引き、次いで、X軸に直線を下ろして、代謝年齢(メタボエイジ)を決定する。個体からもX軸に直線を下ろし、実年齢を決定する。実年齢と代謝年齢との間の差が、「メタボスコア」である。図8におけるこの例示では、黒円内の個体が、−28のメタボスコアをもたらす26歳の代謝年齢(メタボエイジ)及び54歳の実年齢を有し、該個体は、その実年齢よりも代謝年齢が若齢であることを示す。
【0135】
実施例5:生化学的年齢指数の改良
本実施例は、多様な条件下における多様な個体中の追加の化合物を解析して、異なる条件及び年齢に関連するようにBAIを強化及び改良する実験について説明する。年齢と共に変化することが示されている追加の命名化合物及び非命名化合物をBAIなどの指数に統合することにより、年齢と代謝プロファイルとの間のより安定的な関係が得られる。本発明は、この情報をどのように用いて、代謝年齢の指標を作成し、生化学的年齢指数を構築するかについて説明する。このBAIを、個体のメタボロミクスプロファイルと組み合わせて用いて、個体の代謝年齢(「メタボエイジ」)の指標を得、ここから、個体のメタボスコアを決定した。
【0136】
追加データにより、より頑健な生化学的年齢指数(BAI)を構築することが可能である。この目的に向けて実験を実施して、測定された化学物質に由来するばらつきを同定及び除外する。これらの実験の実施例を以下に述べ、表10に列挙する。
【0137】
表11に記載の対象群から生体試料を得、メタボロミクス解析にかける。年齢分類ごとに因子(介入)研究を実施する。各群は、例えば、4つの各年齢群(例えば、青年(18〜30歳)、成人(30〜45歳)、中年(46〜65歳)、老年(>65歳))中に25例ずつの対象を有する100例の個体からなる。実施例4に記載の相関化合物に基づき、BAIを決定する。
【0138】
表11:さらなるBAI研究のための例の比較
【表11】

【0139】
これらの処置は、独立に、かつ/又は組み合わせて(例えば、アルコール及び菜食対アルコールなし及び菜食、アルコール及びカフェイン対アルコールなし及びカフェインなし)実施することができる。又は、上記にデザインした単純な2元実験において個体からメタデータを収集し(例えば、組み入れ時の問診)、コホートをさらに層別化し、これによりさらなる識別力を提供することができる。
【0140】
実施例6:健康な食事と生体異物含量(例えば、生体異物スコア)の決定
本実施例は、個体に由来する生体異物化合物の測定について説明し、生体異物化合物と年齢との間の相関を決定する。こうした生体異物化合物の測定を用いて、生体異物スコアを計算し、個体間及び年齢による食事差を決定する。
【0141】
酒石酸は、白色の結晶性有機酸である。それは、多くの植物、特に、ブドウ及びタマリンド中で自然発生し、ワイン中で見出される主要な酸の1つである。それは、他の食物に添加して酸味を与え、抗酸化剤として用いられる。酒石酸の塩は、酒石酸塩として知られる。それは、ジカルボン酸のジヒドロキシ誘導体である。図9は、酒石酸濃度対実年齢の密度ダイアグラムを示す。おそらくはワインに由来する、高レベルの酒石酸を有する人々は、50歳の平均年齢を有し、より高齢である。極めて高レベルの酒石酸を有する異常値は、おそらく、重度のワイン飲用者であることに注意されたい。
【0142】
安息香酸(BA)レベルもまた測定した。安息香酸もまた、よく見られる食品成分である。それは、ピクルス及びランチミートなどの加工食品において防腐剤として用いられ、クランベリーにおいて自然発生する。「アミノ酸フェニルアラニンの細菌による脱アミノ化が安息香酸塩を産生し、これが、肝臓においてグリシンと共役して馬尿酸塩を形成する。尿中における高馬尿酸塩レベルを解釈する場合には、これを考慮すべきである。源泉が食事による摂取又は空腸内の細菌による代謝のいずれであれ、安息香酸塩は、通常、肝臓内のグリシンとの共役により馬尿酸塩に転換される。グリシン及びパントテン酸は、この過程において制約的な因子である。したがって、安息香酸塩の上昇は、これらの栄養素レベルが不十分であることのマーカーである。」(Bralley及びLord、2001年、「分子医学における検査室評価:栄養素、毒物、及び細胞調節物質(Laboratory Evaluations in Molecular Medicine:Nutrients,Toxicants,and Cell Regulators)」、第6章「有機酸」、206頁、米国、ジョージア州、Norcross社分子医学推進研究所(IAMM)、を参照されたい。)
【0143】
図10は、BAレベル対年齢の散布図を示す。BAの2つの異常値(矢印を参照されたい)に注意されたい(偶然ながら共に女性である)。BAは、ダイエット炭酸飲料の成分であり、女性がダイエットソフト飲料を飲用するのは極めて通例であるので、これらの結果は、該個体が、ダイエット炭酸飲料の飲用者であることを示しうる。
【0144】
図11は、年齢と比較した安息香酸の密度等高線ダイアグラムを示す。BAレベルは、より高齢の個体において若干低下しており、高齢者は若齢者よりも迅速にBAを代謝しうることを示唆する。或いは、この差は、食事における差にもよりうる。これらの仮説は、実験的に検証することができ、高齢対象が若齢者よりも効果的にBAを除去するかどうかを見るために、高齢の対象及び若齢の対象にBAを投与しうる。
【0145】
実施例7:個々の代謝物スコア及び比率
本実施例は、特定の代謝物の測定、及び、代謝物オルニチン対年齢間の比率の計算について説明する。図12は、オルニチン濃度対年齢の密度等高線ダイアグラムを示す。該図は、50歳以降上昇し、やや劇的である、血中オルニチン濃度のシフトを示す。結果は、食事により改変されうる年齢の影響が存在することを示唆する。或いは、これは、ライフスタイル、疾患、又は疾患感受性の指標でありうる。この考えは、35〜41歳においてオルニチンの広範な分布が観察されることにより支持される。ほぼどの年齢においても極めて偏ったオルニチン分布は、同定されない原因による不健康の影響を示しうる。豚において誘導された肝不全が、オルニチン及びシトルリン両方の上昇をもたらすことが示されている。
【0146】
本発明を詳細にかつその特定の実施形態を参照しながら記載してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく各種の変更及び改変をなしうることは、当業者には明らかであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の代謝年齢を決定する方法であって、
a)対象に由来する生体試料を解析して、試料中における1つ又は複数の代謝年齢のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップであって、1つ又は複数のバイオマーカーが、表2、4、5、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせから選択されるステップと、
b)試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢基準レベルと比較して、対象の代謝年齢を決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
1つ又は複数のバイオマーカーが、0.05未満のp値を有する、表2、7、及び/若しくは8、並びにこれらの組み合わせにあるバイオマーカー、並びに/又は0.10未満のq値を有する、表2、4、5、7、及び/若しくは8、並びにこれらの組み合わせにあるバイオマーカーから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを生化学的年齢指数と比較して、対象の代謝年齢を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
より高齢の実年齢に対応する代謝年齢基準レベルに類似する、試料中における1つ又は複数のバイオマーカーのレベルが、ネガティブの代謝年齢を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
より若齢の実年齢に対応する代謝年齢基準レベルに類似する、試料中における1つ又は複数のバイオマーカーのレベルが、ポジティブの代謝年齢を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生体試料が血漿であり、1つ又は複数のバイオマーカーが、表2、4、5、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(複数の)基準レベルが、性、人種、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される集団に合わせて調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が男性対象であり、バイオマーカーが表4及び7にある1つ又は複数のバイオマーカーから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が女性対象であり、バイオマーカーが表4及び7にある1つ又は複数のバイオマーカーから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生化学的年齢指数(BAI)を作成する方法であって、
a)複数の対象に由来する生体試料を解析して、年齢と共に変化する1つ又は複数の第1のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、
b)年齢と共に変化する1つ又は複数の第1のバイオマーカーの各々と相関する1つ又は複数の第2のバイオマーカーの(複数の)レベルを組み合わせて、年齢と共に変化する1つ又は複数のバイオマーカー群を生成するステップと、
c)1つ又は複数のバイオマーカー群の各々のレベルを用いて、生化学的年齢指数を生成するステップと
を含む方法。
【請求項11】
1つ若しくは複数の第1のバイオマーカー、又は1つ若しくは複数の第2のバイオマーカーが、表2、4、5、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
生化学的年齢指数が、複数の対象の1つ又は複数のバイオマーカー群のレベル対年齢をプロットすることにより生成される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
生化学的年齢指数が、性集団及び人種集団からなる群から選択される集団に合わせて調整される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
生体試料が、男性対象又は女性対象から得られる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
対象の代謝年齢を改変する方法であって、
a)対象に由来する生体試料を解析して、試料中における1つ又は複数の代謝年齢のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップであって、1つ又は複数のバイオマーカーが、表2、4、5、7、及び/又は8、並びにこれらの組み合わせから選択されるステップと、
b)試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢基準レベルと比較して、対象の代謝年齢を決定するステップと、
c)食事、栄養、ライフスタイルの変化、及び/又は代謝物の投与により、対象の代謝年齢を改変する勧告を行うステップと
を含む方法。
【請求項16】
1つ又は複数のバイオマーカーが、0.05未満のp値を有する、表2、4、5、7、及び/若しくは8、並びにこれらの組み合わせにあるバイオマーカー、並びに/又は、0.10未満のq値を有する、表2、4、5、7、及び/若しくは8、並びにこれらの組み合わせにあるバイオマーカーから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(複数の)代謝年齢基準レベルが、性、人種、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される集団に合わせて調整される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
マーカーが、表4及び/又は5から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
代謝年齢を調節する組成物の有効性を評価する方法であって、
a)第1の代謝年齢を有し、化合物又は組成物で現在又は以前治療を受けている対象に由来する第1の生体試料を解析して、表2、4、5、7、及び/又は8から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、
b)試料中の1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、(a)化合物又は組成物での治療を受ける前の対象から得られた、対象に由来する第2の生体試料中における1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベル、(b)1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢ポジティブの基準レベル、(c)1つ又は複数のバイオマーカーの代謝年齢ネガティブの基準レベル、及び(d)標的代謝年齢に対する1つ又は複数のバイオマーカーの基準レベルからなる群から選択されるバイオマーカーレベルと比較するステップと
を含む方法。
【請求項20】
標的代謝年齢基準レベルが、対象の実年齢に対応する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(複数の)基準レベルが、性、人種、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される集団に合わせて調整される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
c)代謝年齢を調節することができる組成物を同定するステップ
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
1つ又は複数の代謝年齢バイオマーカーのレベルを調節する活性について試験化合物をスクリーニングする方法であって、
a)1つ又は複数の細胞を試験化合物と接触させるステップと、
b)1つ若しくは複数の細胞、又は細胞と関連する生体試料の少なくとも一部を解析して、表2、7、及び/又は8から選択される1つ又は複数の代謝年齢バイオマーカーの(複数の)レベルを決定するステップと、
c)1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを、バイオマーカーに対してあらかじめ決定されたレベルと比較して、組成物が1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベルを調節したかどうかを判定するステップと
を含む方法。
【請求項24】
バイオマーカーについてあらかじめ決定された標準レベルが、組成物の不在下における1つ又は複数の細胞中の1つ又は複数のバイオマーカー、及び試験化合物と接触させていない1つ又は複数の対照細胞中の1つ又は複数のバイオマーカーの(複数の)レベル群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
in vitro又はin vivoで実施される、請求項23に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−507075(P2010−507075A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532611(P2009−532611)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/081268
【国際公開番号】WO2008/063783
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(508038677)メタボロン インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】METABOLON INC.
【住所又は居所原語表記】800 Capitola Drive, Suite 1, Durham, NC 27612 (US)
【Fターム(参考)】