説明

代謝性疾患および糖尿病を治療するための方法、化合物、および組成物

本明細書において、真性糖尿病(例えば、1型および/または2型糖尿病)を含む、膵臓疾患を予防または治療するための方法、化合物、および組成物を開示する。本発明は、概して、1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸ナトリウム塩を対象に投与するステップを含む。また本発明は、膵機能を改善する、または少なくとも安定させるため、ならびに代謝症候群およびその構成要素を予防および/または治療するための方法、化合物、および組成物にも関する。本発明は、さらに異常脂質血症を予防および/または治療するため、有害な血清脂質値、より具体的には、糖尿病患者を含む、それを必要とする患者において、特にコレステロールおよびトリグリセリドを低減するための方法、化合物、および組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35USC119(e)に基づく2007年5月7日提出の米国暫定出願第60/916,488号からの優先権、および35USC365(a)に基づく2006年12月22日提出のPCT/IB2006/004262号への優先権を主張し、それらは、いずれも参照することにより、本明細書に組み込まれる。本出願は、2006年12月22日提出の米国特許出願第11/643,946号にも関し、それは、参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、腎機能異常合併症を予防または治療するための方法、化合物、および組成物にも関する。本発明は、さらに、腎機能異常、慢性腎臓病、および腎障害に見られる合併症である異常脂質血症を予防および/または治療するための方法、化合物、および組成物に関する。本発明の化合物、方法、および組成物は、異常脂質血症およびいわゆる代謝症候群、微小血管および大血管障害、ならびに糖尿病に関連する他の状態を含む、膵機能異常、糖尿病、インスリン耐性、代謝性疾患の予防または治療にも有用である。本発明は、さらにランゲルハンス島および/またはベータ細胞の減少を予防する、または新生を刺激する、および膵臓のインスリン分泌機能を安定させることによって、膵機能を回復または改善するための方法、化合物、および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、複数の因子によって引き起こされ、空腹状態における高い血漿グルコース濃度(高血糖)によって特徴付けられる。一般に認識される2つの糖尿病の型は、患者がインスリンをほとんどまたはまったく生成しない1型糖尿病、すなわちインスリン依存性糖尿病と、患者はインスリンを生成するが、同時に高血糖を示す2型糖尿病、すなわち非インスリン依存性糖尿病である。1型糖尿病は、典型的には、注射により投与される外因性インスリンで治療される。しかしながら、2型糖尿病は、「インスリン耐性」を示す場合が多く、主要なインスリン感作組織、すなわち筋肉、肝臓、および脂肪組織において、グルコースおよび脂質代謝を刺激する上でインスリンの効果が減退し、高血糖に至る。
【0004】
糖尿病において生じる持続性または制御不良の高血糖は、罹患率および早期死亡率の増加と関連する。異常なグルコースホメオスタシスは、肥満症、高血圧、ならびに脂質、リポタンパク質、およびアポリポタンパク質代謝の変性にも直接的および間接的に関連する。2型糖尿病は、アテローム性動脈硬化、冠状動脈性心疾患、脳梗塞、末梢血管障害、高血圧、腎障害、網膜症、および神経障害等の心血管性合併症のリスクが高い。インスリン耐性を有するが、2型糖尿病を発症していない多くの患者は、「X症候群」または「代謝症候群」と称される症状を発症するリスクもある。代謝症候群は、腹部肥満症、高インスリン血、高血圧、低HDL(高密度リポタンパク質)、および高VLDL(超低密度リポタンパク質)、高トリグリセリド血、および高尿酸血とともに、インスリン耐性によって特徴付けられる。明らかな糖尿病を発症するか否かにかかわらず、かかる患者は、心血管性合併症を発症するリスクが高い。
【0005】
現在の糖尿病治療は、膵臓細胞を刺激して、より多くのインスリンを生成する、スルホニル尿素またはメグリチニド等の薬物を含み、これらの薬物が有効でなくなる場合は、インスリンの注射を含む。しかしながら、危険なまでに低い血漿グルコース濃度に至る可能性があり、最終的に高レベルのインスリン耐性が生じ得る。ビグアニジンの作用は、肝臓でのグルコース新生の低減、胃腸管からのグルコース吸収の減少、およびインスリン感度の増加に依存するが、不快な胃腸の副作用を引き起こす場合がある。インスリン感度を減少させる特定の薬剤は、細胞核内の受容体分子の群であるPPAR(ペルオキシソーム増殖活性化受容体)に結合することによって作用する、チアゾリジンジオンすなわちTZDであるが、TZDには、心不全の高い有病率および体重増加を含む、主要な副作用がある。糖尿病および関連状態を治療する新しい方法が依然として必要とされている。
【0006】
腎機能異常は、腎臓の正常な生理および機能における変性を伴う。腎機能異常は、身体的、化学的、または生物学的負傷、発作、または外傷、例えば、高血圧、糖尿病、うっ血性心不全、狼瘡、鎌状赤血球貧血、ならびに様々な炎症性および自己免疫疾患、HIV関連腎症等の疾病を含む、広範な急性および慢性の状態および事象から生じ得る。腎機能異常は、腎機能の低下、高血圧、および腎不全に至る可能性があり、生活の質を著しく損ない、時には透析、およびある状況においては、腎臓移植を必要とする。
【0007】
キンメルスティールウィルソン症候群および結節性糸球体腎炎としても知られる糖尿病性腎症は、腎臓糸球体における毛細血管障害によって引き起こされる進行性の腎臓疾患である。その疾患は、長期の真性糖尿病に起因する結節性の糸球体硬化症によって特徴付けられ、多数の西洋諸国では、透析の主因となっている。該症候群は、慢性糖尿病の患者において見ることができる。該疾病は進行性であり、初期障害から2〜3年後に死を招く場合があり、女性においてより頻繁に見られる。糖尿病性腎症は、米国において慢性腎不全および末期の腎臓病の最も一般的な原因である。1型および2型糖尿病の人々はそのリスクがある。血中グルコース濃度の制御が不十分である場合に、そのリスクは一層高まる。しかしながら、腎障害を発症すると、血圧の制御が不十分な患者において、最大の進行率が見られる。
【0008】
糖尿病性腎症は、臨床的に明確に定義され、タンパク尿、高血圧、浮腫、および腎不全によって特徴付けられる。糖尿病性腎症のための治療オプションは限定されている。現在の治療は、主に以下のような疾患の合併症を改善することを目的とする。1)血圧の制御(ACE阻害剤阻害剤またはアンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)、2)血糖値の制御、および3)リポタンパク質ダイエット、運動または他の生活習慣の改善。しかしながら、現在の治療は、腎臓機能の進行性低下に対する影響が制限される場合があり、患者は依然として、透析または腎臓移植のいずれかの腎代償療法に進行するため、より優れた薬物および治療に対する重要な必要性がある。
【0009】
脂質異常症は、糖尿病性腎症の主要合併症であり、糖尿病における腎機能異常の進行の決定因子である。脂質異常症は、糖尿病性腎症の病原因子であり、脂質異常症の治療的介入に関与する臨床研究は、少なくとも糖尿病性腎機能異常の進行を減速させる上で、このアプローチの重要性を示唆している(Rosario and Prabhakar(2006),Current Diabetes Reports,6:455−462)。したがって、血中脂質濃度を調節する、より具体的には、有害な血清脂質濃度、特に糖尿病患者におけるコレステロールおよびトリグリセリド濃度を低減するための方法および化合物が必要である。
【0010】
膵臓のランゲルハンス島は、体内でインスリンを生成する唯一の器官である。しかしながら、それらの再生能力は限られている。この限られた再生能力は、アポトーシス破壊に対する脆弱性とともに、哺乳動物に真性糖尿病を発症させやすくする。したがって、再生を刺激し、ランゲルハンス島のアポトーシスを回避して、真性糖尿病の症状を予防または緩和できる生成物が必要となる。(1)それを必要とする個人において、ベータ細胞の質量および機能を回復する、(2)それを必要とする個人において、1型糖尿病を予防または治療する、(3)それを必要とする個人において、成人の緩徐進行型糖尿病(LADA)を予防または治療する、(4)機能的インスリン生成細胞(例えば、ベータ細胞)の数を保存または増加させることによって2型糖尿病を治療する、および/または(5)インスリンへの耐性を減少させる、および/またはインスリン感度を増加させるための化合物および組成物も必要である。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、異常脂質血症を予防および/または治療するため、より具体的には、腎機能異常合併症、血管および心血管疾患、肥満症等に関与する脂質の血清濃度を低減するための方法、化合物、および組成物に関する。
【0012】
本発明は、高血糖を予防および/または治療するため、より具体的には、糖尿病、肥満症等に関与するグルコースの血清濃度を低減するための方法、化合物、および組成物にさらに関する。
【0013】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において、腎機能異常合併症を予防または治療するための方法に関連し、有効量の式(I)の化合物を前記対象に投与するステップを含み、
Y−(CH−(CH)−[CHY] (I)
式中、Yは、各発生に対して独立して選択されるSOXまたはOSOXであり、Xは、各発生に対して独立して水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム、またはアルミニウムである、陽性基であり、nは1、2、3、または4であり、tはmが1である場合に0であり、tは、mが2である場合に1であって、前記対象はアミロイド症を有しない。
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において、異常脂質血症を予防または治療するための方法に関連し、有効量の式(I)の化合物を前記対象に投与するステップを含み、
Y−(CH−(CH)−[CHY] (I)
式中、Yは、各発生に対して独立して選択されるSOXまたはOSOXであり、Xは、各発生に対して独立して水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム、またはアルミニウムである、陽性基であり、nは1、2、3、または4であり、tはmが1である場合に0であり、tは、mが2である場合に1である。
【0014】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において、血清脂質濃度を低減する方法に関連し、有効量の式(I)の化合物を前記対象に投与するステップを含み、
Y−(CH−(CH)−[CHY] (I)
式中、Yは、各発生に対して独立して選択されるSOXまたはOSOXであり、Xは、各発生に対して独立して水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム、またはアルミニウムである、陽性基であり、nは1、2、3、または4であり、tはmが1である場合に0であり、tは、mが2である場合に1である。
【0015】
一部の実施形態においては、本発明は、1,2−エタンジスルホン酸、1,2−エタンジオールビス(硫酸水素)、1,3−プロパンジオールビス(硫酸水素)、2−スルホメチル−1,4−ブタンジスルホン酸、およびその医薬的に許容される塩から成る群より選択される治療有効量の化合物の使用を含む、方法および医薬的組成物に関する。
本発明は、式(I)の化合物をそのような治療を必要とする患者への投与によって、血液脂質関連状態を予防および/または治療するための化合物、方法、および組成物にも関する。
【0016】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において、膵臓疾患を予防および/または治療するための方法であって、有効量の式(I)の化合物を前記対象に投与するステップを含み、
Y−(CH−(CH)−[CHY] (I)
式中、Yは、各発生に対して独立して選択されるSOXまたはOSOXであり、Xは、各発生に対して独立して水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム、またはアルミニウムである陽性基であり、nは、1、2、3、または4であり、tは、mが1の場合に0であり、tは、mが2の場合に1であって、前記対象はアミロイド症を有しない。
【0017】
好適な実施形態において、式(I)の化合物の投与は、以下の医薬的効果のうちのいずれかを有する。(i)食物に反応して血液中のインスリン値が増加する、(ii)選択した組織(例えば、脂肪、筋肉、および肝臓)において、インスリンへの耐性が減少する、および/またはインスリン感度が増加する、(iii)膵臓細胞によるインスリン分泌が増加する、(iv)ベータ細胞および/またはランゲルハンス島の新生および/またはランゲルハンス島の再生が増加する、またはアポトーシスによるそれらの破壊を回避する、(v)ベータ細胞におけるアポトーシスを回避する、および(vi)膵機能を安定化、回復、および/または改善する、より具体的には、ベータ細胞の大きさ、成長および/または機能を安定化、回復、および/または改善する。
【0018】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において高血糖を予防または治療するための方法であって、以上に定義される有効量の式(I)の化合物を該対象に投与するステップを含む方法に関する。さらに別の実施形態において、本発明は、望ましくない高血糖、または望ましくないインスリンの低血中濃度および/または膵臓細胞による低インスリン分泌に直接関連する疾患を予防または治療する、および/またはグルコース処理に関するその作用に対するその標的臓器の感度を回復するための方法を含む。別の関連態様において、本発明は、有効量の式(I)の化合物を前記対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象において、血清グルコース濃度を低減する方法に関する。好ましくは、疾患は糖尿病、例えば、1型および/または2型である。より好ましくは、該方法は、腎機能を安定化する、または腎機能異常の進行を遅延させるように、治療有効量の式(I)の化合物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸またはその医薬的に許容される塩、例えば、2ナトリウム塩を対象に投与するステップを含む。
【0019】
別の態様において、本発明の実施形態は、糖尿病を有する対象を治療するための方法であって、本発明に記載の化合物または組成物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸またはその医薬的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0020】
本発明は、本発明に記載の化合物または組成物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することによる、対象における島細胞およびインスリンの生成に関する。
【0021】
本発明は、真性糖尿病を有する患者を治療するために、本発明に記載の化合物または組成物を使用して、新しいベータ細胞を生成し、および/またはそれらの破壊を回避するための方法にも関する。本発明の関連態様は、対象の膵臓における島細胞の生成のための方法に関する。本発明の別の関連態様は、機能ベータ細胞の形成を誘発することによって、対象においてインスリンを生成するための方法に関する。本発明の別の関連態様は、ベータ細胞の損傷、アポトーシスまたは死を低減する、および/または島の機能不全を低減することによって、対象においてインスリンを生成するための方法に関する。本発明の別の関連態様は、選択した組織において(例えば、脂肪、筋肉、および肝臓)、インスリン耐性を減少させる、および/またはインスリン感度を増加させるための方法に関する。本発明のさらに別の態様は、島新生を必要とする患者において、糖尿病を治療する方法に関し、本発明に記載の化合物または組成物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸またはその医薬的に許容される塩を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。
【0022】
さらに別の態様において、本発明は、インスリン欠乏の糖尿病患者においてインスリン使用を低減する方法に関し、方法は、本発明の化合物または組成物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸またはその医薬的に許容される塩を投与するステップを含む。別の態様において、本発明は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって、インスリンを用いて糖尿病患者を治療する必要性を遅延させるための方法に関する。
【0023】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において、代謝症候群を予防および/または治療するための方法に関し、有効量の本発明の化合物または組成物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩を前記対象に投与するステップを含む。
【0024】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において、代謝症候群の特徴を有する糖尿病を予防および/または治療するための方法に関し、有効量の本発明の化合物または組成物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩を前記対象に投与するステップを含む。
【0025】
一部の実施形態においては、方法は、本発明の化合物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩、および第2の薬剤を投与するステップを含む。一態様において、第2の薬剤は抗糖尿病薬である。別の態様において、第2の薬剤は、ビグアニドおよびスルホニル尿素、例えば、メトホルミンまたはスルホニル尿素を有するメトホルミンから選択される。一実施形態においては、該方法は、本発明の化合物を投与するステップを含み、副作用を低下させるように、単独で投与する場合よりも低用量の第2の薬剤の投与を可能する。別の実施形態においては、血中グルコース濃度の制御の改善が実現する。さらに別の実施形態においては、該方法は、代謝症候群の1つ以上の症状または特徴の治療または予防をさらに提供する。
【0026】
一部の実施形態においては、本発明は、アミロイド症(例えば、AAアミロイド症、IAPP関連アミロイド症)を有する者以外の対象、および/または腎障害(例えば、糖尿病性腎症)を有する者以外の対象における上記の方法に関する。
【0027】
一態様において、本発明は、式Iの化合物を投与することによる糖尿病の治療に関する。一実施形態においては、かかる治療は、式Iの化合物が腎臓病学において使用されている糖尿病患者の治療を含まない。別の実施形態においては、かかる治療は、式Iの化合物が腎機能異常を治療する目的で投与されている糖尿病患者の治療を含まない。別の実施形態においては、糖尿病患者は、他のいかなる目的、例えば、腎機能異常、腎障害、またはアミロイド症等の治療のために、式Iの化合物を用いる治療を受けていない。さらに別の実施形態において、かかる治療は、腎機能異常、例えば、腎障害を治療する目的で、式Iの化合物を用いて該患者を治療する結果として、糖尿病患者において糖尿病を治療するステップを含む。
【0028】
本発明のこれらおよび他の目的、利点、および特徴は、以下でより完全に説明される発明の詳細を読むことによって、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図中のアスタリスク(*)を使用して、治療したラットと対照ラットとの差が統計的に有意である、特定の図の結果を示す。
【図1】実施例11(a)に従って、Zucker糖尿病性肥満雄ラットに12週間投与された、1,3−プロパンジスルホン酸の日用量を示す線グラフである。
【図2A】実施例11(a)に従って、12週間の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットの血清クレアチニン中央値を示す線グラフである。
【図2B】実施例11(a)に従って、12週間の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットの体重補正したクレアチニンクリアランス中央値を示す線グラフである。
【図3】実施例11(a)に従って、12週間の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットの尿タンパク質含有量の中央値を示す線グラフである。
【図4A】実施例11(a)に従って、12週間の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットにおける血清尿酸の中央値を示す線グラフである。
【図4B】実施例11(a)に従って、12週間の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットにおける体重補正した尿酸クリアランスの中央値を示す線グラフである。
【図5】実施例11(a)に従って、12週間の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットにおける血清カリウム濃度(カリウム血)の中央値を示す線グラフである。
【図6A】実施例11(a)に従って、12週間の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットにおける血清トリグリセリドの中央値を示す線グラフである。
【図6B】実施例11(a)に従って、10週目および12週目の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットの血清コレステロール中央値を示す棒グラフである。
【図7】実施例11(a)に従って、12週間後の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットの糸球体グローバルスコアを示す棒グラフである。カテゴリ:(−)グローバルスコアなし、(−/+)軽度のグローバルスコア、(+)軽度から中度のグローバルスコア、(++)中度のグローバルスコア。
【図8】実施例11(b)に従って、RIAによって測定された、12週間後の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットの血清インスリンの分布を示す棒グラフである。ボックスプロットの下限は、25パーセンタイル値を表し、上限は75パーセンタイル値を表す。その上および下のひげは、90パーセンタイル値および10パーセンタイル値を表し、中央値および平均値は、それぞれ実線および破線で表される。
【図9A】実施例11(b)に従って、12週間の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットの平均(±標準誤差)血清グルコース濃度(ヘキソキナーゼ(HK)II方法)を示す線グラフである。
【図9B】実施例11(b)に従って、12週間の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットにおける毛細血中グルコース濃度の中央値(グルコース測定キット)を示す線グラフである。
【図10】実施例11(b)に従って、12週間の対照および治療した知覚Zucker糖尿病性肥満雄ラットにおける利尿中央値を示す線グラフである。
【図11】実施例11(b)に従って、12週目の対照および治療Zucker糖尿病性肥満雄ラットからの膵臓の組織学的検査中に数えた領域当たりのランゲルハンス島の数の分布を示す棒グラフである。ボックスプロットの下限は、25パーセンタイル値を表し、上限は75パーセンタイル値を表す。その上および下のひげは、90パーセンタイル値および10パーセンタイル値を表し、中央値および平均値は、それぞれ実線および破線で表される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
「腎機能異常」、「腎臓病」または「腎疾患」という用語は、腎臓の正常な生理および機能におけるいかなる変性を意味する。これは、身体的、化学的、または生物学的負傷、発作、外傷、または例えば、高血圧、糖尿病、うっ血性心不全、狼瘡、鎌状赤血球貧血、および様々な炎症性、感染性、および自己免疫性疾患、HIV関連腎症等の疾病を含む、広範な急性および慢性状態および事象から生じ得る。本用語は、限定されないが、腎臓移植、腎障害、慢性腎疾患(CKD)、糸球体腎炎、多発性嚢胞腎等の遺伝性疾患、腎肥大(片方または両方の腎臓の過度の肥大)、ネフローゼ症候群、末期腎臓病(ESRD)、急性および慢性腎不全、間質性疾患、腎炎、硬化症、例えば、疾病または損傷による炎症を含む原因から生じる組織および/または血管の硬結または硬化、腎線維症および瘢痕、腎関連増殖性疾患、および他の一次的または二次的腎性状態等の疾病および状態を含む。腎不全後の透析およびカテーテル配置に関連する線維症、例えば、腹膜および血管アクセス線維症も含まれる。
【0031】
腎機能異常または腎疾患は、一般に、「腎障害」または「腎症」としても定義され得る。「腎障害」または「腎症」という用語は、腎線維症および/または糸球体疾患(例えば、糸球体硬化症、糸球体腎炎)、および/または慢性腎不全を生じ得る、および末期の腎臓病および/または腎不全を引き起こし得る、腎臓におけるあらゆる臨床、病理的変化を包含する。本発明の一部の態様は、高血圧性腎障害、糖尿病性腎症、および鎮痛腎障害等の他の種類の腎障害、免疫介在性糸球体症(例えば、IgA腎障害、またはバージャー病、ループス腎炎)、虚血性腎障害、HIV関連腎障害、膜性腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、造影剤による腎障害、中毒性腎症、鎮痛剤誘発性腎毒性、シスプラチン腎障害、移植腎障害、および他の形態の糸球体異常または損傷、糸球体毛細血管損傷(管状線維症)を予防および/または治療するための組成物およびそれらの使用に関する。一部の実施形態においては、「腎障害」または「腎症」という用語は、対象の尿中にタンパク質が存在する(すなわち、タンパク尿)、および/または腎不全が存在する、疾患または疾病を特異的に意味する。
【0032】
「線維症」という用語は、線維組織の異常処理、または類線維腫、または線維退化を意味する。線維症は、様々な損傷または疾病から生じる可能性があり、様々な臓器の移植に関連する慢性の移植拒絶から生じる場合が多い。線維症は、典型的には、細胞外基質成分の異常な生成、蓄積、または沈着を伴い、例えば、コラーゲンおよびフィブロネクチンの過剰生成および沈着増加を含む。本明細書で使用される、「腎臓線維症」または「腎線維症」または「腎臓の線維症」という用語は、細胞外基質成分、特にコラーゲンの過剰生成または異常な沈着に関連し、腎機能の低下または障害に至る疾病または疾患を意味する。
【0033】
「膵臓」は、胃の後方、脾臓と十二指腸との間に横方向に位置する、大きく細長い胞状腺を意味する。膵臓は、内分泌部分(pars endocrina)および外分泌部分(pars exocrina)で構成される。ランゲルハンス島を包含する内分泌部分は、インスリンを含むタンパク質を生成し、血流に直接分泌する。外分泌部分は、分泌単位を包含し、タンパク質分解に不可欠な酵素を含有する膵液を生成し、十二指腸に分泌する。
【0034】
「島細胞」は、通常、膵臓ランゲルハンス島を含む、ホルモン生成細胞と類似した表現型を有し、通常、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、または島アミロイドポリペプチド(IAPPまたはアミリン)等の膵臓ランゲルハンス島の細胞を他の膵臓細胞から区別する標識の発現によって一般に特長付けられる、細胞を意味する。
【0035】
「ベータ細胞」または「β−細胞」は、通常、インスリン、Nkx6.1、またはグルコキナーゼ等の、ベータ細胞を他の膵臓島細胞から区別する標識の発現によって特徴付けられる表現型を有する、膵臓島細胞を意味する。「膵臓疾患」、「膵疾患」または「ベータ細胞関連疾患」という用語は、膵臓の正常な生理および/または機能における任意の変性を意味する。本明細書で使用されるように、より具体的には、インスリンの生成および/または分泌、および適切な血中グルコース濃度の維持に関連する、膵臓の内分泌機能を意味する。これらの用語は、あらゆる臨床、病理状態または望ましくない高血糖、または望ましくない低濃度の血中インスリン濃度に直接的または間接的に関連する疾病も包含する。これは、身体的、化学的、または生物学的負傷、発作、外傷、または例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、若年成人発症型糖尿病、成人潜在性自己免疫糖尿病(LADA)、妊娠糖尿病、肥満症、高血圧、代謝症候群、腎機能異常等の疾病を含む、広範な急性および慢性状態および事象から生じ得る。「膵臓疾患」、「膵疾患」または「ベータ細胞関連疾患」という用語は、限定されないが、ランゲルハンス島および/またはベータ細胞の減少の予防または新生の刺激、膵臓のインスリン分泌機能の安定化が望ましい疾病および状態(例えば、1型および2型糖尿病)も含む。本発明の化合物および組成物は、それを必要とする対象において、糖尿病性腎症を予防または治療するために有用である。糖尿病性腎症は、タンパク尿、高血圧、浮腫、および腎不全によって特徴付けられる臨床的に明確な病状である。糖尿病性腎症の特徴的な態様は、糸球体硬化症、血管構造の変態、および尿細管間質疾患を含む。糖尿病性腎症の第1の臨床的証拠は、尿中のアルブミン尿の存在、例えば、微小アルブミン尿またはマクロアルブミン尿である場合が多い。
【0036】
周知のように、糖尿病性腎症は、典型的には、以下によって特徴付けられる。1)糸球体硬化症、2)主に小動脈における血管構造の変態、および3)尿細管間質疾患。糖尿病性腎症の最も特徴的な態様は、メサンギウムの拡大および基底膜の肥厚によって検出可能な糸球体障害であり、糸球体全体の広範性瘢痕形成のように見える場合が多い。糖尿病性腎症の第1の臨床的証拠は、アルブミン尿またはタンパク尿の存在である。尿中のアルブミン量が300mg/日以下の場合は微小アルブミン尿を意味し、尿中タンパク質の総量が1g/日を超える場合はタンパク尿を意味する。本発明の文脈における、HIV関連腎障害の症状または合併症の予防、低減、または排除は、HIV関連腎障害が生じる前の予防(例えば、CD4担持細胞の減少等のHIVの初期臨床的適応の兆候とともに治療を開始する場合)、確立されたHIVANの一掃除去(例えば、腎機能パラメータが正常値に戻ることによって決定されるように)、またはHIVANの現状の重症度の減少に現れる疾病の望ましくない症状の低減を意味する。望ましくない症状の低減は、例えば、治療前の機能と比較した場合に、腎機能の改善によって決定され得る。かかる改善は、腎不全の発現(透析または移植を含む)の遅延、または例えばタンパク尿の増加率の減速または血清クレアチニンの上昇率によって、またはクレアチニンクリアランスまたはGFR等のパラメータの低下によって判定される、腎機能の悪化速度の減少、または入院率または死亡率を含む、HIVANによって引き起こされる少なくとも1つの症状または合併症の減少において明らかになり得る。
【0037】
本発明は、腎機能異常合併症の予防および/または治療するための方法、化合物、および組成物にさらに関する。「腎機能異常合併症」という用語は、腎機能異常、健康状態、事故またはその重症度が悪化し得る腎機能異常の経過中に生じる陰性反応と相関する二次的症状を意味する。「腎機能異常合併症」は、通常、症状または病変に罹患する対象における重症度の増す腎臓病に関連し、体中に広がり得る、または他の臓器系に影響し得る。本明細書で使用される「腎機能異常合併症」という用語は、限定されないが、血管疾患(例えば、高血圧、大血管合併症、微小血管合併症等)、心血管疾患(例えば、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、うっ血性心不全、脳梗塞、狭心症、虚血性心疾患、心筋梗塞等)、糖尿病性異常脂質血症、脂質異常症(例えば、高コレステロール血、高トリグリセリド血、高リポタンパク血)、代謝症候群、肥満症、貧血、浮腫、膵炎、骨の減弱、栄養失調、および神経損傷を包含する。
【0038】
本発明は、異常脂質血症を予防および/または治療するための方法、化合物、および組成物にさらに関する。「異常脂質血症」または「異常脂質血」という用語は、望ましくない高または低濃度、および/または望ましくない比率の任意の循環血脂質および/またはリポタンパク質に直接的または間接的に関連する、あらゆる臨床病理学的状態または疾病を包含し、限定されないが、トリグリセリド、コレステロール、ApoB、LpA、高密度リポタンパク質(HDL)、高密度リポタンパク質コレステロール(HDLC)、超低密度リポタンパク質コレステロール(VLDLC)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDLC)、中間密度リポタンパク質コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)、および遊離脂肪酸の濃度および/または比率を含む。
【0039】
異常脂質血症という用語は、リポタンパク質代謝の疾患を包含し、リポタンパク質の過剰生成または欠乏、高脂質血症(例えば、高コレステロール血、高トリグリセリド血、高リポタンパク血等)、糖尿病性異常脂質血症、および血中脂質濃度が病原因子であると考慮される他の疾病および状態を含み、限定されないが、血管疾患、(例えば、高血圧、大血管合併症、微小血管合併症等)、心血管疾患(例えば、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、うっ血性心不全、脳梗塞、狭心症、虚血性心疾患、心筋梗塞等)、代謝症候群、および肥満症を含む。
【0040】
別の態様において、化合物は、腎症(例えば、糖尿病性腎症)を予防または治療する上で有用である。該方法は、概して、本明細書に記載される、本発明の化合物を対象に投与するステップを含む。例えば、一実施形態においては、化合物は、1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩である。一実施形態においては、腎障害は糖尿病性腎症である。一実施形態においては、本発明の化合物を投与することによって、腎機能が改善し得る。一実施形態においては、本発明の化合物を投与することによって、アルブミンの尿中排出を低下させ得る。別の実施形態においては、本発明の化合物を投与することによって、クレアチニンクリアランスおよび/または尿酸クリアランスの増加をもたらし得る。
【0041】
本発明は、膵機能異常に罹患する哺乳動物(ヒトおよび動物を含む)の予防および/または治療(反転および治癒を含む)するための方法、化合物、および医薬組成物にも関する。より具体的には、本明細書に記載の方法、化合物、および組成物は、血中グルコース濃度を維持するためのインスリンが不足している(例えば、膵臓疲労)、真性糖尿病(例えば、1型、2型、LADA、若年成人発症型糖尿病、成人発症型糖尿病、および妊娠糖尿病)、高血糖、インスリン欠乏、ベータ細胞機能不全等によって引き起こされる、または関連する疾病または状態に罹患するヒトの予防および/または治療に有用である。一部の実施形態においては、本発明の化合物の投与は、結果として膵機能の改善をもたらし得る。一部の実施形態においては、本発明は、アミロイド症(例えば、AAアミロイド症、lAPP関連アミロイド症)を有する者以外の、および/または腎障害(例えば、糖尿病性腎症またはインスリン耐性)を有する者以外の、対象における膵臓疾患の予防および/または治療に関する。
【0042】
一部の実施形態においては、本発明は、インスリン依存真性糖尿病(すなわち、1型またはIDDM)患者の治療に関する。
【0043】
一部の実施形態においては、本発明は、非インスリン真性糖尿病(すなわち、2型またはNI−DDM)患者の治療に関する。
【0044】
本発明の方法は、哺乳動物、例えば、それを必要とするヒト患者または動物に対して、予防的または治療的に有効量の本明細書に記載の化合物または医薬組成物を投与するステップを含む。
【0045】
大部分のインスリン依存性糖尿病患者は、少なくとも毎日インスリンを注射する必要がある。該疾病を適切に制御するために、現在はインスリンを1日に複数回投与することが推奨され、インスリンの投与は、頻繁なグルコースのモニタリング、糖尿病患者の最適な疾病管理のために必要とされ、例えば1日に5回行われる、別の取り組みの結果によって指示される。さらに別の態様において、本発明は、インスリン欠乏性糖尿病患者におけるインスリン使用を低減する方法に関し、該方法は、本発明の化合物または組成物を投与するステップを含む。その実施形態に従って、この投与の結果として、糖尿病の回復が始まり、モニタリングによって、例えば、治療の間および後に、患者が自分でモニタリングすることによって得られる血中グルコース濃度によって決定されるように、治療前に糖尿病患者に付与される標準用量のインスリンが低減される。本発明に従う治療の成功に起因する糖尿病からの回復は、空腹時のグルコース血中濃度の減少、および食負荷の糖消費に反応して上昇する血中グルコースの減少レベルおよび期間によって示され得る。さらに別の関連態様において、本発明は、インスリンを必要とする対象において、インスリン感度を改善する、および/またはインスリン耐性を減少させる方法に関し、該方法は、本発明の化合物または組成物を投与するステップを含む。したがって、好適な実施形態においては、本発明の化合物または組成物を投与した後のインスリン送達は、本発明の化合物または組成物を投与する前の糖尿病患者における使用と比較して、約75%未満、または約50%未満、または約10%未満、または約1%未満まで低減する。他の好適な実施形態においては、インスリン投与は、血中グルコース濃度のモニタリングから得られるデータによって示されるように、例えば、1日5回の注射から2回の注射、1日2回の注射から1回の注射、および1回の注射からゼロ回まで低減される。
【0046】
一部の実施形態においては、本発明の方法は、以下のパラメータのうちの1つ以上に関して、対象を評価するステップをさらに含む。(1)インスリンの血中濃度、(2)グルコースの血中濃度、(3)体重。例えば、一実施形態においては、方法は、血中グルコース濃度を、約1日1回または約1日1回未満の間隔でモニタリングするステップ、および、患者の血中グルコース濃度に従って調節した用量で、患者への組成物の投与を繰り返すステップを含む。薬理学の当業者は、糖尿病患者を治療する際に、絶食後および他の生理学的状態下で、血中グルコース濃度に対してインスリン用量を調節することに精通している。
【0047】
別の態様において、本発明は、対象においてインスリン感度を改善し、および/またはインスリン耐性を減少させるための方法に関し、該方法は、本発明の化合物または組成物を投与するステップを含む。
【0048】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において、高カリウム血を制御または低減するための方法に関し、有効量の本発明の化合物または組成物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸またはその医薬的に許容される塩を、該対象に投与するステップを含む。一実施形態においては、本発明の化合物または組成物の投与は、カリウム排出を増加させる。
【0049】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において、心血管合併症を制御、緩和、または低減するための方法に関し、有効量の本発明の化合物または組成物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸またはその医薬的に許容される塩を、前記対象に投与するステップを含む。一実施形態においては、本発明の化合物または組成物の投与は、血清中の尿酸排出を増加させる、および/または尿酸を低下させる。
【0050】
好適な実施形態においては、1,3−プロパンジスルホン酸および/または1,3−プロパンジスルホン酸ナトリウム塩を対象に投与する。他の適切な塩は、限定されないが、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、メシラート、トリアルキルアンモニウムおよびアルミニウム塩を含む。
【0051】
「対象」という用語は、腎機能異常または腎障害が起こり得る、または腎機能異常または腎障害になりやすい生物を含む。
【0052】
「対象」という用語は、動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、マウスまたはラット、ウサギ、リス等の齧歯類、クマ、霊長類(例えば、チンパンジー、サル、ゴリラ、およびヒト)等の哺乳動物))、ならびにニワトリ、アヒル、北京ダック、ガチョウおよびそれらの遺伝子組み換え種を含む。好ましくは、対象は哺乳動物である。より好ましくは、対象はヒトである。
【0053】
一部の実施形態においては、対象は、糸球体ろ過障害(例えば、糖尿病性腎症)および/または腎不全を有するか、または有しやすいヒト患者である。一部の実施形態においては、対象は、限定されないが、糖尿病性異常脂質血症、高脂質血症、血管および心血管疾患、代謝症候群X、および肥満症を含む、異常脂質血症を有するか、または有しやすいヒト患者である。
【0054】
一部の実施形態においては、対象は、例えば、糖尿病、HIV、後生的な進行性腎臓病、および線維化した腎臓病、および/または本明細書に記載の疾病/疾患のうちのいずれかといった疾患に罹患し得る。一態様において、対象はアミロイド症を有しない。一態様において、対象はアミロイドA(AA)アミロイド症を有しない。別の実施形態においては、対象はアミロイド症を有する。別の実施形態においては、対象はアミロイドA(AA)アミロイド症を有する。
【0055】
一部の実施形態においては、腎臓病はアミロイドに関連せず、対象は、アミロイド症(例えば、AAアミロイド症またはIAPP関連アミロイド症)を有する場合と有しない場合とがある。一部の実施形態においては、腎障害はアミロイドに関連せず、対象は、アミロイド症(例えば、AAアミロイド症またはIAPP関連アミロイド症)を有する場合と有しない場合とがある。一部の実施形態においては、糖尿病性腎症はアミロイドに関連せず、対象は、アミロイド症(例えば、AAアミロイド症またはIAPP関連アミロイド症)を有する場合と有しない場合とがある。一部の実施形態においては、腎臓疾患の合併症はアミロイドに関連せず、対象は、アミロイド症(例えば、AAアミロイド症またはIAPP関連アミロイド症)を有する場合と有しない場合とがある。特定の実施形態においては、本発明のすべての方法において、対象はアミロイド症(例えば、AAアミロイド症またはIAPP関連アミロイド症)を有しない。特定の実施形態においては、本発明のすべての方法において、対象はAAアミロイド症を有しない。特定の実施形態においては、本発明のすべての方法において、対象はIAPP関連アミロイド症を有しない。一部の実施形態においては、対象はタンパク尿(例えば、微量アルブミン尿またはマクロアルブミン尿)を呈し得る。一部の実施形態においては、対象は、尿素、尿酸、およびクレアチニン等の毒素を血液から除去する能力が低下した腎臓を有し得る。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者のクレアチニンクリアランスの減少を、少なくとも0.5、1、2、5、10、15、または20ml/分/1.73m/年遅延させる上で有効である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者の尿酸クリアランスを、少なくとも1、2、5、10、15、または20mg/dL安定化させる上で有効である。
【0056】
一部の実施形態においては、対象は、腎障害、例えば、糖尿病性腎症のリスクがあるか、または診断されている。典型的には、ヒトにおける正常な糸球体ろ過量(GFR)は、約100〜約140ml/分である。一部の実施形態においては、対象は、進行した腎障害を有する(すなわち、GFRが75ml/分より低い)ヒト患者である。一部の実施形態においては、対象は、ESRDを有する(すなわち、GFRが10ml/分より低い)ヒト患者である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者のGFR値を、少なくとも1、5、10、15、20、または25ml/分以上増加させる上で有効である。
【0057】
一部の実施形態においては、対象は、腎臓病のリスクがあるか、または診断されている。様々な実施形態において、対象は、ステージI腎臓病、ステージII腎臓病、ステージIII腎臓病、ステージIV腎臓病、またはステージV腎臓病を有するか、または進行中のヒト患者である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者の腎臓病を安定化または改善する上で有効である(例えば、ステージVからステージIV、またはステージIVからステージIII、またはステージIIIからステージII、またはステージIIからステージI)。
【0058】
一部の実施形態においては、対象は、タンパク尿のリスクがあるか、または診断されている。一部の実施形態においては、対象は、その尿中で約300mg/日未満のタンパク質を生成するヒト患者である。一部の実施形態においては、対象は、その尿中で約1g/日より多くのタンパク質を生成するヒト患者である。一部の実施形態においては、対象は、微量アルブミン尿を有するヒト患者である。一部の実施形態においては、対象は、尿中のアルブミン量が200μg/分を超えるヒト患者である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者のアルブミン尿を、少なくとも10、25、50、75、100、150、200μg/分以上低下させる上で有効である。
【0059】
一部の実施形態においては、対象は、高カリウム血症のリスクがあるか、または診断されている。ヒトの血液中の正常カリウム濃度は、3.5〜5.0mEq/Lである。典型的には、高カリウム血症は、5.5mEq/Lより高いカリウム濃度によって定義される。一部の実施形態においては、対象は、軽度の高カリウム血症を有する、すなわち、カリウム濃度が約5.5〜約6.0mEq/Lのヒト患者である。一部の実施形態においては、対象は、中度の高カリウム血症を有する、すなわち、カリウム濃度が約6.1〜約7.0mEq/Lのヒト患者である。一部の実施形態においては、対象は、重度の高カリウム血症を有する、すなわち、カリウム濃度が約7.0mEq/L以上のヒト患者である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者のカリウム濃度を、少なくとも0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0mEq/L以上減少させる上で有効である。
【0060】
一部の実施形態においては、対象は、高血圧症または高血圧のリスクがあるか、または診断されている。高血圧と腎障害等の腎臓病、特に糖尿病性腎症との間には強い相関がある場合が多い。腎機能が乏しい個人は、頻繁に高血圧を呈する。一部の実施形態においては、対象は、収縮期血圧140mmHg以上、および/または拡張期血圧90mmHg以上の高血圧のヒト患者である。一部の実施形態においては、対象は、収縮期血圧120〜139mmHg以上、および/または拡張期血圧80〜89mmHg以上の前高血圧のヒト患者である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者の収縮期および/または拡張期血圧を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mmgHg以上低下させる上で有効である。
【0061】
一部の実施形態においては、対象は、脂質異常症のヒト患者である。一部の実施形態においては、血中の脂質濃度が高すぎるため、本発明の組成物を患者に投与し、正常濃度を回復する。脂質の正常濃度は、当業者に既知の医学論文において報告されている。例えば、LDL、HDL、遊離トリグリセリドおよび脂質代謝に関連する他のパラメータの推奨血中濃度は、米国心臓協会のウェブサイト、および国立心肺血液研究所の全米コレステロール教育プログラムのウェブサイトで見出することができる(それぞれhttp://www.americanheart.org/およびhttp://www.nhlbi.nih.gov/health/public/heart/を参照)。一部の実施形態においては、対象は、血漿LDLコレステロール値が100mg/dLを超え、および/または血漿HDLコレステロール値が40mg/dL以下の高コレステロールのヒト患者である。一部の実施形態においては、対象は、境界型高血漿トリグリセリド濃度150〜199mg/dL、または高血漿トリグリセリド濃度200〜499mg/dL、または極めて高い血漿トリグリセリド濃度500mg/dL以上を有する高トリグリセリドのヒト患者である。それらの値は、空腹状態下での測定値に基づく。高トリグリセリドは、腎臓病および腎障害、特に糖尿病性腎症に関連して頻繁に見出される。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者のLDLコレステロール値、および/または血漿トリグリセリド濃度を、少なくとも5、10、15、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200mg/dL以上低下させる上で有効である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者のHDLコレステロール値、および/または血漿トリグリセリド濃度を、少なくとも1、2、5、10、15、20、25、30mg/dL以上増加させる上で有効である。本発明に従う高コレステロール血症の一連の治療例は、ヒトの血清コレステロール値を5.0mmol/lまで低下させることを目的とする。
【0062】
一部の実施形態においては、対象は、過体重または肥満である。一部の実施形態においては、対象は、体格指数(BMI)約25から30(グレード1)、またはBMI30から40(グレード2)、またはBMI40超(グレード3)を有する肥満のヒト患者である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者の体格指数の値を1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、またはそれ以上低減する上で有効である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、患者のBMIグレードを改善する上で有効である(例えば、グレード3からグレード2、またはグレード2からグレード1)。
【0063】
一部の実施形態においては、対象は、代謝症候群のリスクがあるか、または代謝症候群と診断されている(X症候群、インスリン耐性症候群、レーブン症候群およびCHAOS等の様々な名称でも知られる)。一部の実施形態においては、対象は、高血清トリグリセリド(例えば、150mg/dL超)、低HDL(例えば、男性の場合40mg/dl未満、および女性の場合50mg/dl未満)、体幹部肥満症(すなわち、増大した腰周囲:男性の場合102cm超、および女性の場合88cm超)、高い血圧、および高い空腹時血漿グルコース(例えば、100mg/dl)のうちの3つ以上が存在するヒト患者である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、代謝症候群の上述の構成要素のうちのいずれか1つを喪失させる上で有効である。代謝症候群の関連疾患および兆候は、非アルコール性脂肪肝疾患に進行する脂肪肝(特に並存肥満症における)、多嚢胞性卵巣症候群、ヘモクロマトーシス(鉄過負荷)、および黒色表皮腫(暗い斑点を特徴とする皮膚状態)である。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、それらの関連疾病のうちのいずれかを予防および/または治療する上で有効である。
【0064】
一部の実施形態においては、対象は、糖尿病のリスクがあるか、または診断されている(例えば、1型、2型、若年成人発症型糖尿病、成人緩徐進行型糖尿病(LADA)、妊娠糖尿病)。一部の実施形態においては、本発明の化合物または組成物は、糖尿病の臨床症状開始の初期段階で投与される。
【0065】
一部の実施形態においては、対象は高血糖である。一部の実施形態においては、対象の血中グルコース濃度が高く、本発明の化合物および/または組成物を患者に投与して、正常値を回復する。グルコースの正常値は、当業者に既知の医学論文において報告されている。典型的には、グルコース測定器を用いて血糖値を測定し、その結果は、血液のmg/dL(米国においてはデシリットル当たりのミリグラム)またはmmol/L(カナダおよび欧州においてはリットル当たりのミリモル)で示される。例えば、平均的な健常者は、約4.5から7.0mmol/L(80から125mg/dL)のグルコース濃度を有する。糖尿病患者において、食前の値6.1mmol/L未満(110mg/dL未満)および食事開始2時間後の値7.8mmol/L未満(140mg/dL未満)が許容される。本発明に従う一部の実施形態においては、対象の血中グルコース濃度は150mg/dlより高く、または175mg/dl、または200mg/dl、または225mg/dl、または250mg/dlより高く、または300mg/dlを超える。
【0066】
一部の実施形態においては、対象は2型糖尿病を有するヒト患者である。周知のように、2型糖尿病は、インスリン耐性および低下したインスリン分泌から生じるが、最終的に2型糖尿病を有する多くの人々は、顕著に低減した膵臓ベータ細胞の質量および機能を示し、膵臓ベータ細胞がインスリンを十分に生成せず、グルコースが細胞に入ってエネルギーを適切に生成できないため、順に、2型糖尿病患者にインスリンの「相対的な」欠乏をもたらす。制御されていない2型糖尿病は、血中の過剰なグルコースにつながり、結果として高血糖症、または高血糖を生じる。2型糖尿病を有する個人は、疲労、激しい口渇感、頻尿、乾燥・敏感肌、視覚低下、傷または痛みの治癒力の低下、通常よりも多い感染、足のしびれおよびうずきを経験する。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、それらの症状のうちの1つ以上を改善、治癒、および/または緩和する上で有効である。
【0067】
一部の実施形態においては、本発明の化合物または組成物は、対象が高グルコース濃度、または高いベータ細胞の機能不全を示し始めるが、ベータ細胞不全が完了する前の初期段階で投与される。本発明の化合物または組成物は、ベータ細胞質量の減少が可逆的であると考えられる場合に投与することもできる。
【0068】
一部の実施形態においては、対象は、1型糖尿病を有するヒト患者である。周知のように、1型糖尿病は、ヒトの免疫系が、膵臓においてインスリン生成ベータ細胞を攻撃し、それらを破壊して、膵臓が後にインスリンをほとんどまたはまったく生成しなくなる場合に生じる。最も一般的な1型糖尿病の症状は、過度の口渇(多渇症)、頻尿(多尿症)、過度の空腹(多食症)、過度の疲労、および体重の減少を含む。一部の実施形態においては、本発明の方法、化合物、または組成物は、それらの症状のうちの1つ以上を改善、治癒、および/または緩和する上で有効である。一部の実施形態においては、対象は、ベータ細胞の破壊および/またはアポトーシスに至る自己免疫反応である。一部の実施形態においては、ケトンが対象の尿中に存在する。炎症の初期兆候(例えば、細胞性免疫反応、サイトカイン(例えば、TNF−アルファ、IFN−ガンマ、IL−1、IL−2およびIL−8)の過剰生成)がある場合は、本発明の化合物または組成物を投与することができる。一部の実施形態においては、本発明の化合物または組成物の投与は、(a)インスリン関連疾患のリスクのある対象が、インスリン関連疾患の臨床症状を示す前、(b)対象が、インスリン関連疾患の兆候を示し始めた後、例えば、高いグルコース濃度またはベータ細胞不全(例えば、参照値、例えば、無病状態の対照等の対照と比較して、グルコース濃度またはベータ細胞不全の5、10、20、または30%以上の増大または減少から明らかなように)、(c)インスリン関連疾病、例えば、糖尿病または本明細書に記載の別のインスリン関連疾患が診断された場合、(d)インスリン関連疾患、例えば、糖尿病の治療を開始する前、間、もしくは後、またはその影響を及ぼし始める前、間、あるいは後に開始することができる。薬剤が投与される期間(または対象において臨床的に有効な値が維持される期間)は、長期、例えば、6ヶ月以上、または1年以上、もしくは短期、例えば、1年未満、6ヶ月、1ヶ月、2週間以内であり得る。
【0069】
一部の実施形態においては、本発明の化合物または組成物は、対象が、膵機能異常の臨床症状を示す前であるが、対象が膵機能異常のリスクがあること、例えば、対象が肥満であるか、または対象が、膵機能異常の家族歴を有する(例えば、対象の親、兄弟、または祖父母が糖尿病等の膵機能異常を有する)ことが判断された後に投与される。
【0070】
一部の実施形態においては、本発明の化合物または組成物は、膵機能異常の補足治療として投与され、例えば、薬剤は、インスリンの投与に加えて投与される。
【0071】
一部の実施形態においては、対象は、膵機能の異常を呈する(例えば、対象は異常なインスリン分泌を示す、対象はインスリン耐性の兆候を示す、対象は高インスリン血または高血糖を示す等)。
【0072】
本発明の一部の実施形態においては、対象は、膵機能異常の動物モデル等の非ヒト動物、例えば、NODマウスおよびその関連系、BBラット、レプチンまたはレプチン受容体突然変異齧歯類、Zucker糖尿病性肥満(ZDF)ラット、Sprague−Dawleyラット、肥満自然発症高血圧ラット(SHROB、Koletskyラット)、Wistar脂肪ラット、ニュージーランド肥満マウス、NSYマウス、Goto−Kakizakiラット、OLETFラット、JCR:LA−cpラット、新生仔期ストレプトゾトシン誘発(n−STZ)糖尿病ラット、アカゲザル、デブスナネズミ(脂肪スナネズミ)、C57B1/6Jマウス、ob/obマウス、および糖尿病Toriラットである。好適な実施形態において、対象は、哺乳動物、例えばヒトである。より好ましくは、対象は、膵機能異常のリスクがあるか、または膵機能異常(例えば、1型または2型糖尿病)を有する。
【0073】
本発明の別の態様は、高血糖、低グルコース耐性、インスリン耐性、肥満症、脂質機能異常、異常脂質血症、高脂質血、高トリグリセリド血、高コレステロール血、低HDLレベル、高LDLレベル、脂肪肝、悪液質、アテローム性動脈硬化およびその続発症、血管再狭窄、膵炎、腹部肥満症、腎障害、神経障害、先端の潰瘍形成、およびインスリン耐性が構成要素である他の状態から選択される状態の発症を治療、予防、または遅延する方法に関する。別の態様において、本発明は、糖尿病患者をインスリンで治療するための要件を遅延させるための方法に関する。
【0074】
本発明のさらなる態様は、腎障害、神経障害、白内障、および網膜症等の微小血管合併症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、高血圧、冠状動脈性心疾患、脳血管疾患および末梢血管障害等の大血管合併症、および肥満症、早老、白内障、および場合によってはアルツハイマー病等の関連する病的状態を含む、インスリン耐性および/または2型糖尿病によって引き起こされる病的状態の治療、予防、または緩和に関する。
【0075】
一部の実施形態においては、医薬的に許容される媒体をさらに含む医薬組成物において、化合物を対象に投与する。一部の実施形態においては、方法は、医薬組成物を経口投与するステップを含む。一部の実施形態においては、方法は、医薬組成物を経静脈的に投与するステップを含む。
【0076】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、本明細書において同義的に使用され、対象を治療する、例えば、膵機能異常(例えば、糖尿病)および/または代謝症候群等の別の状態の対象を治療するために有効な化合物の量を意味する。治療有効量は、特定の対象が罹患している特定の疾患、年齢、体重、および生活習慣に基づいて異なり得る。加えて、治療有効量は、対象の血液パラメータ(例えば、脂質プロファイル、インスリン濃度、血糖)、病状の重症度、臓器機能、腎機能、膵機能、または基礎疾患または合併症に依存し得る。
【0077】
例えば、治療有効量の式(I)の化合物は、1日に約100mgから4000mgの間であり得る。本発明の化合物は、用量200mg、400mg、または800mg、または1200mgまたは1800mgの本発明の化合物を含む錠剤、ピル、またはカプセルで製造することができる。一部の実施形態においては、治療有効量は、400mgBID、800mgBID、1200mg、1600mg、2400mg、または3600mgBIDであり得る。BIDは1日2回を意味する。一部の実施形態においては、治療有効量は、ヒト患者において、少なくとも1、5、10、25、50、75、または100μg/mlに対応する血清濃度を得ることを目的とする。
【0078】
本明細書で使用される、「予防する」または「予防」は、少なくとも疾病または疾患にかかるリスク(またはかかりやすさ)の可能性の低減を意味することが意図される(すなわち、疾病の臨床症状のうちの少なくとも1つが、疾病に暴露され得る、またはかかりやすいが、疾病の症状をまだ経験または示していない患者において発症しない)。一部の実施形態においては、予防的治療の対象候補は、血管または心血管疾患、膵機能異常、糖尿病、代謝症候群、肥満症等のリスクのある患者、診断された患者、または進行している患者である。かかる患者を同定するための生物学的および生理学的パラメータは、本明細書において提供し、医師にもよく知られている。
【0079】
対象の「治療」または「治療する」という用語は、疾病または状態、疾病または状態の症状、または疾病または状態のリスク(またはかかりやすさ)を安定化、治療、治癒、軽減、緩和、変性、修繕、悪化の減少、改良、改善、または影響することを目的とした、対象への本発明の化合物の適用または投与(または対象から得た細胞または組織への本発明の化合物の適用または投与)を含む。「治療する」という用語は、損傷、病変、または状態の治療または軽減における成功の、いかなる印をも意味し、軽減、緩和、悪化率の低下、疾病の重症度の低減、症状の安定化、排除、または損傷、病変、または状態を対象に対してより耐容されるようにする、退化または減退率の減速、退化の最終点を衰弱化させる、または対象の身体的または精神的健康を改善する等の任意の客観的または主観的パラメータを含む。例えば、膵機能または機能不全の定量評価は、当該技術分野において周知であり、膵機能/機能不全を判断するためのアッセイの実施例は、以下で提供され、ランゲルハンス島の大きさ、成長、および/または分泌活性、ベータ細胞の大きさ、成長、および/または分泌活性、インスリン分泌および循環血中濃度、グルコース血中濃度、および膵臓生検等の生物学的および/または生理学的パラメータを評価するステップを含む。
【0080】
本発明の化合物の例は、以下の表における化合物、およびその医薬的に許容される塩を含む。
1,2−エタンジスルホン酸 HOSCHCH2SO
1,2−エタンジスルホン酸ナトリウム NaOSCHCHSONa
1,3−プロパンジスルホン酸 HOSCHCHCHSO
1,3−プロパンジスルホン酸ナトリウム NaOSCHCHCHSONa
(1,3−プロパンジスルホン酸,2ナトリウム塩)
1,2−エタンジオールビス(硫酸水素) HOSOCHCHOSO
1,2−エタンジオール二硫酸塩、2ナトリウム塩 NaOSOCHCHOSONa
1,3−プロパンジオールビス(硫酸水素) HOSOCHCHCHOSO
1,3−プロパンジオール二硫酸塩、2ナトリウム塩 NaOSOCHCH2CHOSONa
2−スルホメチル−1,4−ブタンジスルホン酸 HOSCHCHCH(CHSOH)
2−スルホメチルブタン−1,4−ジスルホン酸、3ナトリウム塩 NaOSCHCHCH(CHSONa)3ナトリウム塩
【0081】
「化合物」という用語は、化学物質を含む。化合物は、固体、液体、または気相であり得る。化合物という用語は、式(I)の化合物、およびその医薬的に許容される塩を含む。本発明の化合物は、本明細書において、それらの化学構造および/または化学名によって特定される。化合物が化学構造および化学名の両方によって参照される場合で、その化学構造および化学名の間に矛盾を生じる場合、化学構造が、化合物の独自性を決定する。本発明の化合物は、キラル中心を含有する場合があり、したがって、立体異性体として存在し得る。本明細書に記載される化合物は、商業的供給源から購入した天然源から精製され得るか、または認識されている手技を使用して化学的に合成することができる。
【0082】
一般に、本発明のすべての化合物は、任意の従来方法によって、容易に入手可能なおよび/または従来的に調製可能な出発物質、試薬、および従来の合成手法を使用して調製することができる。より具体的には、1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩は、米国特許第5,643,562号に記載の方法によって調製することができる。加えて、本発明の化合物は、水和および無水形態でも存在し得る。式(I)の化合物の水和物は、式(I)の化合物として含まれる。さらなる実施形態においては、式(I)の化合物は一水和物である。一実施形態においては、式(I)の化合物は、約10重量%以下、約9%重量以下、約8%重量以下、約7%重量以下、約6%重量以下、約5%重量以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.1重量%以下の水を含む。別の実施形態においては、本発明の化合物は、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、または約6重量%以上の水を含む。
【0083】
加えて、本発明の化合物は、1つ以上の多様形態、水和状態等も包含し得る。例えば、1つの形態、すなわちI型は、本発明の化合物の直接再結晶によって調製することができ、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸、2ナトリウム塩である。化合物は、16:1エタノール:水(v/v)の溶液から沈殿される。再結晶化した生成物は、精細な白色粉末として回収され、次いで、65℃で16時間、4mmHgで乾燥させる。結果として生じる非水和形態は、0.2%の水分含有量、および0.64g/mlの見掛け密度を有する。さらなる実施形態においては、式(I)の化合物は、約0.2%の水分含有量を有する。
さらに、別の形態、すなわちII型は、I型に類似する様式で、市販の1,3−プロパンジスルホン酸、2ナトリウム塩の直接再結晶化によって調製することができる。化合物は、8:1エタノール:水(v/v)の溶液から沈殿される。再結晶化した生成物は、白色の固体として回収され、次いで20℃から25℃で16時間、4mmHgで乾燥させる。結果として生じる一水和型は、約7%w/wの水分含有量、および0.46g/mlの見掛け密度を有する。さらなる実施形態においては、式(I)の化合物は、約7%の水分含有量を有する。
【0084】
I型は、減圧下で長期加熱することによって、II型多形体から調製することもできる。最初に、II型多形体(水分含有量6.8%)を65℃で16時間、4mmHgの真空中で乾燥させる。この初期乾燥によって、以前に水和化多形体の水分を2.3%まで低減する。65℃でさらに24時間後、以前に一水和化多形体の水分含有量を1%まで低減する。77℃でさらに48時間乾燥させた後にのみ、化合物は全体的にI型に変換される。
【0085】
本発明の化合物は、1つ以上の酸性官能基を含有し、したがって、医薬的に許容される塩基を有する医薬的に許容される塩を形成することができる。化合物の「医薬的に許容される塩」は、医薬的に許容される化合物の塩を意味する。望ましいのは、本明細書に定義されるように、親化合物の遊離酸および塩基の生物学的有効性および特性を維持または改善する、または分子上の本質的に塩基性、酸性、または荷電性官能基を利用する、および生物学的または別様に望ましくなくはない、親化合物の塩である。医薬的に許容される塩の例は、例えば、Berge et al.,“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66,1−19(1977)においても説明されている。かかる塩は、親化合物に存在する酸性プロトンが、アルカリ金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類イオン(例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム)を含む金属イオン、またはアルミニウム、亜鉛、鉄等の他の金属イオンのいずれかによって置換されると形成される塩基付加塩を含むか、またはアンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリアルキルアミン(例えば、C−Cアルキルを有する)、トロメタミン、N−メチルグルカミン、ピペラジン、クロロプロカイン、プロカイン、コリン、リジン等の有機塩基と組み合わされる。
【0086】
医薬的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、酸性部分を含有する親薬剤から合成することができる。一般に、かかる塩は、これらの薬剤の遊離酸形態を、水または有機溶媒中、またはそれら2つの混合物中で、化学量論的量の適切な塩基と反応させることによって調製される。塩は、薬剤の最終分離または精製中に原位置調製するか、またはその遊離酸形態の本発明の精製化合物を、望ましい対応塩基と個別に反応させ、したがって形成される塩を分離することによって調整される。
【0087】
記載の化合物のすべての酸、塩、および他のイオンおよび非イオン形態は、本発明の化合物として含まれる。例えば、本明細書において化合物が酸として示される場合、化合物の塩形態も含まれる。同様に、化合物が塩として示される場合は、酸形態も含まれる。
【0088】
さらなる実施形態においては、式(I)の化合物は、1,3−プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩、または1,3−プロパンジスルホン酸ではない。
【0089】
さらなる実施形態においては、本発明の化合物は、国際公開第WO94/22437号、WO96/28187号、およびWO00/64420号に開示される化合物を含み、その内容は、それら全体を参考することにより本明細書に組み込まれる。
【0090】
さらなる実施形態においては、組成物または製剤は、実施例1または実施例のうちのいずれかに記載のとおりではない。別のさらなる実施形態においては、少なくとも1つの成分は、実施例1または実施例のうちのいずれかに記載の成分ではない。
【0091】
医薬組成物
本発明の関連態様は、(i)腎機能異常、より具体的には腎障害の予防または治療、(ii)腎機能異常合併症の予防または治療、および/または(iii)異常脂質血症の予防および/または治療に使用するための医薬的組成物に関する。
【0092】
本発明の関連態様は、(i)腎機能異常、より具体的には腎障害の予防または治療、(ii)腎機能異常合併症の予防または治療、および/または(iii)異常脂質血症の予防および/または治療に際しての薬剤の製造において、本明細書に記載されている、式(I)の化合物、好ましくは1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩、より好ましくは1,3−プロパンジスルホン酸ナトリウム塩の使用に関する。本明細書で使用される、「医薬組成物」および「薬物」という用語は、同義的に使用される。
【0093】
別の好適な実施形態において、本明細書に定義される治療有効量の式(I)の化合物を含む、1型糖尿病、2型糖尿病、LADA、および/または妊娠性糖尿病の予防および/または治療に有用な医薬組成物も提供する。
【0094】
一部の実施形態においては、本発明の組成物は、本明細書で前述されている、有効量の式(I)の化合物、好ましくは1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩、より好ましくは1,3−プロパンジスルホン酸ナトリウム塩を含む。
【0095】
したがって、別の実施形態においては、本発明は、有効量の本明細書に記載の式(I)に従う1つ以上の化合物、および医薬的に許容される媒体を含む医薬組成物、ならびにかかる医薬組成物を使用および製造する方法に関する。
【0096】
本明細書で使用される、「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの化合物、および化合物がともに対象に投与される少なくとも1つの医薬的に許容される媒体を意味する。
【0097】
「医薬的に許容される媒体」は、化合物がともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を意味する。「医薬的に許容される」という用語は、薬剤、薬物、不活性成分等を意味し、この用語は、適度なリスク対効果比に対応して、過度の毒性、不適合、炎症、アレルギー反応等を起こすことなく、ヒトおよび下位動物の組織と接触して使用するために適切であることを説明する。好ましくは、動物、より具体的にはヒトにおいて使用するための、連邦政府または州政府の規制当局によって承認される、または承認可能な化合物または組成物、または米国薬局方または他の一般に認識される薬局方に列挙される化合物または組成物を意味する。
【0098】
本明細書で使用される、「治療有効量」という用語は、疾病を治療または予防するために対象に投与されると、疾病のかかる治療または予防に影響するために十分な化合物の量を意味する。上で示されるように、「治療有効量」は、化合物、疾病およびその重症度、および治療を必要とする対象の年齢、体重等によって異なる。
【0099】
本発明の化合物は、投与する前に、使用可能な手技および手法を使用して、医薬組成物に製剤することができる(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許出願第US2006/0252829号に記載)。例えば、医薬組成物は、適切な投与(経口、非経口(IV、IM、デポIM、SC、およびデポSC)、舌下、経鼻(吸入)、髄腔内、局所的、または経直腸的)に製剤される。適切な医薬的に許容される媒体は、制限なく、経口、非経口、経鼻、粘膜、経皮、局所、髄腔内、直腸、静脈内(IV)、動脈内(IA)、筋肉内(IM)、および皮下(SC)投与経路に適切な、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の任意の非免疫原性医薬担体または希釈剤を含む。本発明は、凍結乾燥されており、静脈内、筋肉内、または皮下注射による投与のために再構築されて医薬的に許容される製剤を形成することができる、かかる化合物を含む。投与は、皮内または経皮投与であることができる。
【0100】
媒体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、および植物油を含有する溶剤または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング、分散の場合に必要とされる粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成することができる。多くの場合において、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、またはマンニトールおよびソルビトール等のポリアルコールが組成物に含まれる。注射可能な組成物の長期吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えば、アルミニウムモノステアレートまたはゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0101】
好ましくは、本発明の化合物は、経口投与され得る。本発明の製剤は、経口投与に適したものを含む。製剤は、便宜上、単位剤形で提供することができ、薬学の分野で周知の任意の方法で調製することができる。これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物を医薬的に許容される媒体(例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体)、および任意に、1つ以上の副成分と関連付けるステップを含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を液体担体、または精細に分割された固形担体、またはそれら両方と均一且つ密接に関連付け、次いで、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。かかる治療上有用な組成物における治療薬の量は、適切な用量が得られるようにする。
【0102】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル(例えば、硬または軟殻ゼラチンカプセル)、カシェット、ピル、錠剤、薬用飴、粉末、顆粒、小丸薬、糖衣錠、例えば、コーティング(例えば、腸溶性コーティング)または非コーティングとして、水溶液または非水溶液中の溶液または懸濁液として、水中油または油中水乳液として、エリキシル剤またはシロップとして、トローチ(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア等の不活性塩基を使用する)として、あるいはマウスウォッシュとしての形態であることができ、それぞれ活性成分として、規定量の本発明の化合物を含有する。本発明の化合物は、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与するか、もしくは対象の食事に直接組み込むことができる。さらに、所定の実施形態において、これらのトローチは、(a)即時または急速薬物放出を提供する(すなわち、薬物上にコーティングを有しない)、(b)例えば、長期間の持続的薬物放出を提供するようにコーティングされる、または(c)より良い胃腸認容性のために腸溶性コーティングで被覆されるように形成することができる。
【0103】
経口投与するための本発明の固体剤形において、クエン酸ナトリウムまたはリン酸ジカルシウム等の1つ以上の医薬的に許容される担体、もしくはスターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、またはケイ素酸等の充填剤または拡張剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、またはアカシア等の結合剤、グリセロール等の保湿剤、寒天、炭酸カルシウム、ポテトまたはタピオカスターチ、アルギン酸、特定のケイ素、および炭酸ナトリウム等の分解剤、パラフィン等の溶液緩染剤、第4アンモニウム化合物等の吸収促進剤、例えば、セチルアルコール等の湿潤剤、およびグリセロールモノステアレート、カオリンおよびベントナイト泥等の吸収剤、タルク、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、固体ポリエチレングリコール、硫酸ラウリルナトリウム等の潤滑剤、およびそれらの混合物、および着色剤のうちのいずれかと混合される。カプセル、錠剤、およびピルの場合において、医薬組成物は、緩衝剤を含み得る。類似型の固体組成物を、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコール等のかかる賦形剤を使用して、軟および硬充填ゼラチンカプセルの充填剤として採用することもできる。
【0104】
経口組成物は、典型的には液体溶液、乳剤、懸濁液等を含む。かかる組成物の調製に適した医薬的に許容される媒体は、当該技術分野において周知である。シロップ、エリキシル剤、乳剤、および懸濁液用の担体の典型的な構成成分は、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体スクロース、ソルビトール、および水を含む。懸濁液の場合、典型的な懸濁液は、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、トラガカント、およびナトリウムアルギネートを含み、典型的な湿潤剤は、レシチンおよびポリソルベート80を含み、典型的な保存剤は、メチルパラベンおよびナトリウムベンゾエートを含む。経口液体組成物は、上文で開示した甘味料、香料添加剤、および着色剤等の1つ以上の成分も含有し得る。
【0105】
注入可能な使用に適切な医薬組成物は、滅菌注入溶液または分散の即時調製のための滅菌水溶液(水溶性)または分散、および滅菌粉末を含む。すべての場合において、組成物は滅菌されていなければならず、容易な注入操作性が存在する程度の液体である必要がある。製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌等の微生物の夾雑する作用から保存されなければならない。滅菌注入溶液は、必要量の適切な溶剤中の治療薬を、必要に応じて、上で列挙した成分のうちの1つまたは組み合わせと組み込み、ろ過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散剤は、治療薬を、塩基性分散媒体および上で列挙したものから必要とされる他の成分を含有する滅菌媒体に組み込むことによって調製される。滅菌注入溶液の調製のための滅菌粉末の場合において、調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、その既に滅菌ろ過した溶液から、活性成分(すなわち、治療薬)に加えて任意の追加の望ましい成分の粉末を得る。
【0106】
エアロゾルとして、吸入による投与に適切な医薬製剤も提供する。これらの製剤は、本明細書に記載される任意の式の望ましい化合物の溶液または懸濁液、またはかかる化合物の複数の固形粒子を含む。望ましい製剤は、小室に入れて噴霧することができる。噴霧は、薬剤または塩から成る複数の液体滴または固形粒子を形成するように、圧縮空気または超音波エネルギーによって実現することができる。液体滴または固形粒子は、約0.5から約5ミクロンの範囲で粒径を有するべきである。固形粒子は、本明細書に記載の任意の式の固形剤、またはその塩を、微粉化等の当該技術分野で周知の任意の適切な方法で処理することによって得ることができる。固形粒子または滴の大きさは、例えば、約1〜約2ミクロンである。この態様において、市販の噴霧器を使用して、この目的を達成することができる。
【0107】
エアロゾルとしての投与に適した医薬製剤は、液体形態であり得、該製剤は、本明細書に記載の任意の式の水溶剤、またはその塩を、水を含む担体中に含む。製剤の表面張力を十分に低減することにより、噴霧される場合に望ましい大きさの範囲内で滴を形成する、界面活性剤が存在し得る。
【0108】
本発明の組成物は、例えば、組成物を対象の表皮または上皮組織上に直接配置または塗布することによって、または「パッチ」によって経皮的に、対象に局所投与することもできる。かかる組成物は、例えば、ローション、クリーム、溶液、ゲル、および固体を含む。これらの局所組成物は、有効量、通常は少なくとも約0.1%、または約1%から約5%の本発明の化合物を含み得る。局所投与に適した担体は、典型的には、連続フィルムとして皮膚上の所定の位置に留まり、蒸散または水に浸漬することによって除去されないようにする。一般に、担体は有機性であり、そこで治療薬を分散または溶解することができる。担体は、医薬的に許容される皮膚軟化剤、乳化剤、増粘剤、溶媒等を含み得る。
【0109】
対象薬剤の全身送達を得るために有用な他の組成物は、舌下腺、頬、および鼻剤形を含む。かかる組成物は、典型的には、スクロース、ソルビトール、およびマンニトール等の水溶性充填物質、およびアカシア、微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤のうちの1つ以上を含む。上文で開示される流動促進剤、潤滑剤、甘味料、着色料、酸化防止剤、および香料添加剤も含まれ得る。本発明の化合物は、非経口、腹腔内、髄腔内、または大脳内投与することもできる。かかる組成物の場合、本発明の化合物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物および油中で調製することができる。通常の保管および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を回避するための保存料を含有することができる。
【0110】
非経口投与以外で本発明の化合物を投与するには、その不活性化を回避するための材料で化合物をコーティングするか、または化合物と同時に投与することが有用であり得る。例えば、本発明の化合物は、適切な担体、例えば、リポソーム、または希釈剤で対象に投与することができる。医薬的に許容される希釈剤は、生理食塩水および水性緩衝溶液を含む。リポソームは、水中CGF乳化剤中の油中水、ならびに従来のリポソームを含む。
【0111】
本発明に従う医薬組成物は、従来の方法によって、典型的には、pHまたは時間依存性コーティングでコーティングすることもでき、本発明の化合物が望ましい位置の付近または様々な時間で放出されて、望ましい作用を拡大するようにする。かかる剤形は、典型的には、限定されないが、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、ワックス、およびセラックのうちの1つ以上を含む。
【0112】
用量
適切な用量は、通常の技術を有する医師、獣医、または研究者の知識の範囲内の多数の要因に依存することを理解されたい(例えば、Wells et al.eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000)、PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calig.(2000)を参照)。本発明の化合物の用量は、例えば、採用される特定薬剤の活性、対象の年齢、体重、健康状態、性別、および食事、投与時間、投与経路、排出率、および任意の薬物の組み合わせ、該当する場合は、化合物が対象に有することを医師が望む効果、および化合物の特性(例えば、バイオアベイラビリティ、安定性、効能、毒性等)を含む、多様な要因によって異なる。かかる適切な用量は、本明細書に記載のアッセイを含む、任意の利用可能なアッセイを使用して決定され得る。1つ以上の本発明の化合物をヒトに投与することになっており、医師は、例えば、最初は相対的に低用量を処方し、その後は、適切な反応が得られるまで用量を増加させることができる。
【0113】
例えば、治療有効量の式(I)の化合物は、1日に約100mgから4000mgの間であり得る。本発明の化合物は、用量200mg、400mg、または800mg、または1200mg、または1800mg、または2400mgの本発明の化合物を含む錠剤、ピル、またはカプセルで使用することができる。一部の実施形態においては、治療有効量は、400mgBID、800mgBID、1200mg、1600mg、2400mg、または3600mgBIDであり得る。BIDは、1日2回を意味する。一部の実施形態においては、治療有効量は、ヒト患者において、少なくとも1、5、10、25、50、75、または100μg/mlに対応する血清濃度を得ることを目的とする。
【0114】
典型的な用量は、対象または試料の体重1キログラム当たりの化合物のミリグラムまたはマイクログラム量を含む(例えば、約1mg/kgから約200mg/kg、約5mg/kgから約100mg/kg、約10mg/kgから約50mg/kg)。追加の典型的用量は、1日に約1から約500mg、または約5から約300mg、または約10から約200mg、1日2回または3回、またはそれより低いまたは高い用量を含む。比較のために述べると、AAアミロイド症を治療するためのエプロジセート(1,3−プロパンジスルホン酸ナトリウム塩)の典型的な用量は、患者のクレアチニンクリアランスに基づいて、約400mg、800mg、または1200mgBID(1日当たり2回)である。参照することにより本明細書に組み込まれる、公開済みの米国特許出願第US2006/0252829号も参照されたい。
【0115】
非経口組成物を単位剤形で形成することは、投与を容易にし、用量を均一にするために一般に有利である。「単位剤形」という用語は、ヒト対象および他の哺乳動物に対する単位用量として適切な物理的不連続単位を意味し、各単位は、適切な医薬媒体と関連して、望ましい治療効果を生成するように計算された規定量の活性成分を含有する。一実施形態においては、本発明に記載の組成物は、単位剤形で形成され、各剤形は、本発明に記載の化合物を約100mgから約2000mg、より好ましくは約200mgから約1000mg、さらに好ましくは約400mgから約800mg含有する。参照することにより本明細書に組み込まれる、公開済みの米国特許出願第US2006/0252829も参照されたい。本発明の用量単位形態に対する仕様は異なる場合があり、(a)治療薬の固有の特徴および達成されるべき特定の治療効果、および(b)対象におけるアミロイド沈着の治療のためのかかる治療薬を結合する技術に固有の制限によって決定され、直接依存する。
【0116】
治療される対象に対する本発明の化合物および組成物の投与は、望ましい目的(例えば、腎障害の予防または治療、一般的な腎機能の改善、および/または血中脂質関連状態の予防および/または治療等)を達成するために有効な公知の手法、用量および期間を使用して行うことができる。用法用量は、最適な治療反応を提供するように調節することができる。例えば、1日にいくつかの分割用量を投与するか、または治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少させることができる。
【0117】
一実施形態においては、本発明の化合物は、アルブミン尿、タンパク尿、クレアチニンクリアランス、尿素クリアランス等の腎機能パラメータに良好な効果、影響、および/または改変を与えるのに十分な治療有効量で投与される。別の実施形態においては、本発明の化合物は、循環血濃度および/またはトリグリセリド比、コレステロール、高密度リポタンパク質コレステロール(HDLC)、超低密度リポタンパク質コレステロール(VLDLC)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDLC)、中間密度リポタンパク質コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)、および遊離脂肪酸に良好な効果、影響、および/または改変を与えるのに十分な治療有効量で投与される。
【0118】
腎機能パラメータまたは循環血濃度の良好な効果、影響、および/または改変に言及する場合、「治療上有効な」用量は、未治療の対象と比較して、例えば、少なくとも約1%、または少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも75%、または少なくとも約100%以上の改変(例えば、腎機能低下の減速、循環する有害な脂質濃度の低下)を意味する。
【0119】
同時投与
本発明の治療方法は、腎機能異常または合併症、腎障害(例えば、糖尿病性腎症)、糖尿病、異常脂質血症、高血圧、および/または肥満症を予防または治療するために、本発明に記載の少なくとも1つの化合物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩を、別の治療有効剤の投与とともに同時投与することを含むこともできる。
【0120】
一実施形態においては、第2の薬剤と併せた本発明の化合物のかかる同時投与によって、第2の薬剤の必要用量を低下させることができ、例えば、同時投与によって、副作用が減少するか、または血中グルコース濃度の管理を改善することができる。同時投与によって、代謝症候群の1つ以上の症状または特徴を予防、治療または軽減するか、または糖尿病関連の健康合併症のリスクを低減することもできる。
【0121】
一実施形態においては、本発明の化合物は、糖尿病を予防または治療するために現在使用されているか、または開発段階にある、少なくとも1つの追加の公知の化合物と併せて使用される。かかる公知の化合物の例は、限定されないが、スルホニルウレア(例えば、グリカジド、グリピジド)、メトホルミン、グリタゾン(例えば、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)、プランジアルグルコース解除剤(例えば、レパグリニド、ナテグリニド)およびアカルボース等の一般的な抗糖尿病薬を含む。本発明の化合物と併用することができる抗糖尿病化合物または薬剤のより詳細であるが制限されない一覧は、インスリン、例えばメトホルミン(Glucophage(登録商標),Bristol−Myers Squibb Company,U.S.、Stagid(登録商標),Lipha Sante,Europe)等のビグアニド、例えば、グリクラジド(Diamicron(登録商標))、グリベンクラミド、ジルピジド(Glucotrot(登録商標)およびGlucotrol XL(登録商標),Pfizer)、グリメピリド(Amaryl(登録商標),Aventis)、クロルプロパミド(例えば、Diabinese(登録商標),Pfizer)、トルブタミド、およびグリブリド(例えば、Micronase(登録商標)、Glynase(登録商標)、およびDiabeta(登録商標))等のスルホニル尿素薬、例えば、レパグリニド(Prandin(登録商標)またはNovoNorm(登録商標)、NovoNordisk)、オルミチグリニド、ナテグリニド(Starlix(登録商標))、セナグリニド、およびBTS−67582等のグリニド、ビルダグリプチンおよびシタグリプチン等のDPP−IV阻害剤、例えば、グリタゾン等のインスリン感作物質、マレイン酸ロシグリタゾン(Avandia(登録商標)、Glaxo SmithKline)、ピオグリタゾン(Actos(登録商標),Eli Lilly,Takeda)、トログリタゾン、シグリタゾン、イサグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン等のチアゾリジンジオン、例えば、エクセンジン−4(1−39)(Ex−4)、Byetta(登録商標)(Amylin Pharmaceuticals Inc.)、CJC−1 131(Conjuchem Inc.)、NN−221 I(Scios Inc.)、国際公開第WO98/08871号に記載されるGLP−1作用薬等のグルカゴン様ペプチドI(GLP−1)受容体作用薬、例えば、a−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ミグリトール、ボグリボース、およびエミジルテート)等の炭水化物の吸収を減速させる薬剤、例えば、グルカゴン様ペプチド1、コレシストキニン、アミリン、およびプラムリンチド等の胃内容排出を阻害する薬剤、例えば、キノキサリン誘発剤(例えば、2−スチリル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピルメチルアミノ1−6,7−ジクロロキノキサリン、Collins et al.,Bioorganic and Medicinal Chemistiy Letters 2(9):915−918,1992]、スキリンおよびスキリン類似体(例えば、国際公開第WO94/14426号に記載されるもの)、1−フェニルピラゾール誘発物(例えば、米国特許第4,359,474号に記載されるもの)、置換ジスラシクロヘキサン(例えば、米国特許第4,374,130号に記載されるもの)、置換ピリジンおよびビフェニル(例えば、国際公開第WO98/04528号に記載されるもの)、置換ピリジルピロール(例えば、米国特許第5,776,954号に記載されるもの)、2,4−ジアリール−5−ピリジルイミダゾール(例えば、国際公開第WO98/21957号、WO98/22108号、WO98/22109号、および米国特許第5,880,139号に記載されるもの)、2,5−置換アリールピロール(例えば、国際公開第WO97/16442号および米国特許第5,837,719号に記載されるもの)、置換ピリミジノン、ピリドン、およびピリミジン化合物(例えば、国際公開第WO98/24780号、WO98/24782号、WO99/24404号、およびWO99/32448号に記載されるもの)、2−(ベンジルニダゾール−2−イルチオ)−1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−エタノン(Madsen et al,J.Med.Chem.41:5151−5157,1998を参照)、アルキリデンヒドラジド(例えば、国際公開第WO99/01423号およびWO00/39088号に記載されるもの)等のグルカゴン拮抗薬、例えば、国際公開第WO00/58293号、WO01/44216号、WO01/83465号、WO01/83478号、WO01/85706号、およびWO01/85707号に記載されるグルコキナーゼ活性体、および選択的ADP感性Kチャネル活性剤(例えば、ジアゾキシド)、ホルモン等の他の化合物(例えば、コレシトキニン、GRP−ボンベシン、およびガストリンプラスEGF受容体リガンド、Banerjee et al.Rev Diabet Stud,2005 2(3):165−176を参照)、ペルオキシソーム増殖活性化受容体−ガンマ(PPAR−ガンマ)作用薬(例えば、ピオグリタゾン、Ishida et al.,Metabolism,2004,53(4),488−94を参照)、酸化防止剤(例えば、1−ビス−o−ヒドロキシシナモイルメタン、クルクミノイド ビス−デメトキシクルクミン、Srivivasan et al.,J Pharm Pharm Sci.2003,6(3):327−33を参照)、国際公開第WO00/69810号、WO02/00612号、WO02/40444、WO02/40445号、WO02140446号、およびWO97/41097号(DRF−2344)、WO97/41119号、WO97/41120号、WO98/45292号、WO99/19313号(NN622/DRF−2725)、WO00/23415号、WO00/23416号、WO00/23417号、WO00/23425号、WO00/23445号、WO00/23451号、WO00/41121号、WO00/50414号、WO00/63153号、WO00/63189号、WO00/63190号、WO00/63191号、WO00/63192号、WO00/63193号、WO00/63196号、WO00/63209号、米国特許第US6,967,019号、US7,101,845号、US7,074,433号、US6,992,060号、US RE39,062号、国際公開第WO2006/131836号、およびWO2006/120574号に記載の化合物、およびT−174、GI−262570、YM−440、MCC−555、JTT−501、AR−H039242、KRP−297、GW−409544、CRE−16336、AR−H049020、LY510929、MBX−102、CLX−0940、およびGW−501516等の公有財産において参照される化合物を含む。
【0122】
本発明に記載の化合物と同時投与できる薬剤の追加例は、膵臓ベータ細胞新生および/または島の再生を刺激するための化合物である。島の数(すなわち、ベータ細胞)に良好な効果を有する現在使用されている、または開発中の化合物の例は、Byetta(登録商標)(エクセンジン−4阻害剤)、ビルダグリプチン(Galvus(登録商標)、ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤)、Januvia(登録商標)(リン酸シタグリプチン)、およびギムネマシルベスタ葉(Pharma Terra)からの抽出物を含む。本発明に記載の化合物は、βセルリン、ベータブルガリまたは麻黄からの植物抽出物、およびニコチンアミド等の細胞再生に関連する生分子とともに投与することもできる(Banerjee et al.Rev Diabet Stud,2005 2(3):165−176を参照)。
【0123】
本発明の原理に従って使用できる追加化合物または薬剤は、膵臓ベータ細胞成長またはインスリン生成細胞成長、および/またはインスリン生成を誘発できるものである。かかる化合物は、限定されないが、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)およびその長時間作用性のDPP−IV耐性GLP−1類似体、GLP−1受容体作用薬、消化阻害ポリペプチド(GIP)およびその類似体(例えば、米国特許公開第20050233969号において開示される)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害剤、インスリン製剤、インスリン誘発剤、インスリン様作用薬、インスリン分泌促進薬、インスリン増感剤、ビグアニド、グルコース新生阻害剤、糖吸収阻害剤、腎グルコース再摂取阻害剤、β3アドレナリン受容体作用薬、アルドースレダクターゼ阻害剤、進行血糖症の最終生成物生成阻害剤、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、抗脂血症薬、食欲減退薬、リパーゼ阻害剤、降圧剤、抹消循環改善薬、酸化防止剤、糖尿病性神経障害治療薬等を含む。
【0124】
一実施形態においては、本発明の化合物は、腎障害等の腎機能異常または関連疾患または合併症を予防または治療するために現在使用されているか、または開発中の少なくとも1つの追加の公知の化合物と併用される。かかる公知の化合物の例は、限定されないが、ACE阻害剤(例えば、カプトプリル(Capoten(登録商標))、エナラプリル(Innovace(登録商標))、ホシノプリル(Staril(登録商標))、リシノプリル(Zestril(登録商標))、ペリンドプリル(Coversyl(登録商標))、キナプリル(Accupro(登録商標))、トランダナロプリル(Gopten(登録商標))、ロテンシン、モエキシプリル、ラミプリル);RAS遮断薬;アンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)(例えば、オルメサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン、テルミサルタン等);タンパク質キナーゼC(PKC)阻害剤(例えば、ルボキシスタウリン);AGE依存経路の阻害剤(例えば、アミノグアニジン、ALT−946、ピロドキサミン(ピロドドリン)、OPB−9295、アラゲブリウム);抗炎症薬(例えば、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、マイコフェノレートモフェチル、ミゾリビン、ペントキシフィリン)、GAG(例えば、スルオデキシド(US5,496,807号));ピリドキサミン(US7,030,146号);エンドセリン作用薬(例えば、SPP301)、COX−2阻害剤、PPAR−γ作用薬、およびアミフォスチン(シスプラチン腎障害に使用)、カプトプリル(糖尿病性腎症に使用)、シクロホスファミド(特発膜性腎症に使用)、チオ硫酸塩ナトリウム(シスプラチン腎障害に使用)、トラニラスト等の他の化合物を含む(Williams and Tuttle(2005)、Advances in Chronic Kidney Disease,12(2):212−222;Giunti et al.(2006),Minerva Medica,97:241−62)を含む。
【0125】
加えて、本発明の方法は、糖尿病および/または限定されないが、異常脂質血症、高血圧、肥満症、神経障害、炎症、および/または網膜症等を含む、糖尿病および/または腎機能異常合併症に直接的または間接的に関連する別の疾患を治療するための、少なくとも1つの他の治療薬を同時投与することも含み得る。本発明に記載の化合物と同時投与可能な薬剤の追加例は、コルチコステロイド、免疫抑制薬、抗生物質、降圧剤および利尿薬(チアジド利尿薬およびACR阻害剤またはβ−アドレナリン拮抗薬)、胆汁金属イオン封鎖樹脂、コレスチラミン、コレスチポール、ニコチン酸、およびより具体的な薬物等の脂質低下剤、およびコレステロールおよびトリグリセリドの低減に使用される薬剤(例えば、フィブレート(例えば、ゲンフィブロジル(登録商標))およびロバスタチン(登録商標)、アトルバスタチン(登録商標)、フルバスタチン(登録商標)、レスコール(登録商標)、リピトール(登録商標)、メバコール(登録商標)、プラバコール(登録商標)、プラバスタチン(登録商標)、シンバスタチン(登録商標)、ゾコール(登録商標)、セリバスタチン(登録商標)等のHMG−CoA阻害剤、脂質(例えば、エゼチミド)、ニコチン酸、およびビタミンDの腸内吸収を阻害する化合物である。本発明に記載の化合物と同時投与可能な薬剤の追加例は、(糖尿病性腎症を発症した場合に)膵臓移植および/または腎臓移植を受けた1型糖尿病患者に使用される、免疫賦活剤または免疫抑制剤である(Vinik Al et al.Advances in diabetes for the millennium:toward a cure for diabetes.Med Gen Med 2004,6:12を参照)。
【0126】
本発明に記載の化合物と同時投与可能な薬剤の追加例は、抗肥満症薬、および食欲減退薬である。本発明に記載の化合物と同時投与可能な抗肥満症薬の例は、Xenical(登録商標)(Roche)、Meridia(登録商標)(Abbott)、Acomplia(登録商標)(Sanofi−Aventis)、および交感神経興奮剤を含む。潜在的に有用な公知および新興の抗肥満症薬の限定されない一覧は、国際公開第WO2006/131836号の表2に記載され、その表は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0127】
本発明に記載の化合物は、高カリウム血を治療する、および/または高カリウム血によって引き起こされる心室細動のリスクを低減するために使用される、公知の薬剤と同時投与することもできる(例えば、グルコン酸カルシウム、インスリン、重炭酸ナトリウム、サルブタモール(アルブテロール、ベントリン(登録商標))等のβ−選択的カタコルアミン、およびスルフォン酸ポリスチレン(レソニウムカルシウム、カエクサレート))。
【0128】
したがって、本発明の付加的な態様は、対象を同時治療する方法に関し、有効量の第1の薬剤および第2の薬剤を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、該薬剤は、式(I)に定義されるとおりであり、第2の薬剤は、腎機能異常、腎症、糖尿病性腎症、糖尿病、高血圧、高脂質血症、代謝症候群、または肥満症を予防または治療することを目的とする。
【0129】
本発明は、腎機能異常、腎症、糖尿病性腎症、糖尿病、高血圧、高脂質血症、代謝症候群、または肥満症を同時治療または予防するための薬剤または薬剤キットを製造するために、式(I)に定義される少なくとも1つの第1の薬剤、および腎機能異常、腎症、糖尿病性腎症、糖尿病、高血圧、高脂質血症、または肥満症の予防または治療のための化合物から選択される少なくとも1つの第2の薬剤の使用にも関する。
【0130】
本明細書で使用される、「同時治療」または「と同時に」という表現に見られる「同時」または「同時に」という用語は、第2の薬剤の存在下で、第1の薬剤を投与するステップを含む。同時治療方法は、第1、第2、第3、または追加の薬剤が同時投与される方法を含む。同時治療方法は、第1または追加の薬剤が、第2または追加の薬剤の存在下で投与される方法も含み、該第2または追加の薬剤は、例えば、既に投与されていてもよい。同時治療方法は、異なる施術者が段階的に実行することができる。例えば、1人の施術者が第1の薬剤を対象に投与し、第2の施術者が第2の薬剤を対象に投与することができ、投与ステップは、第1の薬剤(および/または追加の薬剤)が、第2の薬剤(および/または追加の薬剤)の存在下で投与される限りにおいて、同時または略同時、または時間を隔てて実行することができる。施術者および対象は、同一の実態(例えば、ヒト)であり得る。好ましくは、第1の薬剤は、3−プロパンジスルホン酸またはその医薬的に許容される塩、例えば2ナトリウム塩であり得る。第2の薬剤は、上文で示した化合物の一覧から選択することができる。
【0131】
したがって、本発明は、上述の疾病または状態(例えば、糖尿病、腎障害、または糖尿病に直接的または間接的に関連する合併症)のうちのいずれか1つの症状または合併症を予防、低減、または排除するための方法も提供する。方法は、少なくとも1つの本発明の化合物を含む第1の医薬組成物および1つ以上の追加の活性成分を含む第2の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、すべての活性成分は、治療される疾病または状態の1つ以上の症状または合併症を阻害、低減、または排除するために十分な量で投与される。一態様において、第1および第2の医薬組成物の投与は、少なくとも約2分は時間的に離れている。
【0132】
さらに、公知の血糖降下薬の多くは、望ましくない副作用を呈し、ある場合には毒性を有する。例えば、膵臓のインスリン分泌が深刻に低い糖尿病患者の場合において、インスリン分泌促進薬およびインスリン増感剤の効果は減退する。同様に、インスリン耐性が著しく高い糖尿病患者の場合において、インスリン製剤およびインスリン分泌促進薬の効果が減退する。さらに、糖尿病患者に対するチアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン)の処方に関連する深刻な障害があり、体重増、体液貯留、および心不全リスクの増大を含む。したがって、別の態様において、本発明は、血糖降下薬の望ましくない副作用を低減する方法に関し、方法は、本発明の化合物または組成物、好ましくは、1,3−プロパンジスルホン酸および/または1,3−プロパンジスルホン酸ナトリウム塩を、低用量の血糖降下薬(例えば、インスリン)と同時に投与するステップを含み、それによって、本発明の化合物または組成物の不在下での、高用量血糖降下薬の投与と比較した場合に、本質的に同様の治療効果(例えば、血糖が望ましい値に低減する)を得る。別の関連態様において、本発明は、体重の増加、および/またはチアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン)の体液貯留を予防する方法に関し、該方法は、本発明の化合物または組成物、好ましくは、1,3−プロパンジスルホン酸および/または1,3−プロパンジスルホン酸ナトリウム塩を、低用量のチアゾリジンジオンと同時に投与するステップを含み、それによって、本質的に同様の治療効果を達成し、および/または心不全のリスクを低減する。
【0133】
キット
本発明の化合物は、任意に容器(例えば、パッケージ、ボックス、バイアル等)を含むキットの一部としてパッケージ化することができる。キットは、本明細書に記載の方法に従って商業的に使用することができ、本発明の方法における使用説明書を含み得る。追加キットの構成要素は、酸、塩基、緩衝剤、無機塩、溶媒、酸化防止剤、保存料、または金属キレート剤を含む。追加キットの構成要素は、純粋な組成物、1つ以上の追加キット構成要素を組み込む水性または有機溶液として存在する。キット構成要素のいずれかまたはすべては、さらに任意に緩衝剤を含む。
【0134】
本発明の化合物は、同時または同一の投与経路で患者に投与される場合とされない場合がある。したがって、本発明の方法は、医師が使用する場合に、適量の2つ以上の活性成分を患者に投与することを簡素化できる、キットを包含する。
【0135】
本発明の典型的なキットは、単位剤形の本発明に記載の少なくとも1つの化合物、例えば、1,3−プロパンジスルホン酸またはその医薬的に許容される塩、および単位剤形の少なくとも1つの追加活性成分を含む。本発明に記載の化合物と併用できる追加活性成分の例は、限定されないが、本明細書において「同時投与」のセクションの前に列挙される、本発明の化合物と併用可能な化合物のうちのいずれかを含む。
【0136】
本発明のキットは、活性成分の投与に使用される装置をさらに含むことができる。かかる装置の実施例は、限定されないが、シリンジ、ドリップバッグ、パッチ、吸入器、浣腸、および座薬製剤の投与のためのディスペンサを含む。
【0137】
本発明のキットは、1つ以上の活性成分を投与するために使用できる医薬的に許容される媒体をさらに含むことができる。例えば、活性成分が、非経口投与のために再構成しなければならない固形で提供される場合、キットは、適切な媒体の密閉容器を含むことができ、活性成分を溶解して、非経口投与に適した、微粒子を含まない滅菌溶液を形成することができる。医薬的に許容される担体の例は、限定されないが、注入USP用の水;限定されないが、塩化ナトリウム注射、リンガー注射、デキストロース注射、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射、および乳酸化リンガー注射等の水性媒体;限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール等の水混和性媒体;および限定されないが、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジル等の非水性媒体を含む。
【0138】
腎機能、脂質状態、および膵機能の評価
本発明の方法、化合物、および/または組成物の有効性を評価、査定、および/または確認するために、本発明の方法、化合物、および/または組成物の一連の測定値を決定することができる。
【0139】
腎機能および腎機能不全のパラメータの定量評価は、当該技術分野において周知であり、例えば、Levey(Am J Kidney Dis.1993,22(1):207−214)において見出すことができる。腎機能/機能不全を判断するためのアッセイの例は、血清クレアチニンレベル、クレアチニンクリアランス率、シスタチンCクリアランス率、24時間尿クレアチニンクリアランス、24時間尿タンパク質分泌、糸球体ろ過率(GFR)、尿アルブミンクレアチニン比(ACR)、アルブミン排出率(AER)、および腎生検である。
【0140】
膵機能および膵機能不全または不足のパラメータの定量評価は、当該技術分野において周知である。前述のように、膵機能/機能不全を判断するためのアッセイの例は、ランゲルハンス島の大きさ、成長、および/または分泌活性、ベータ細胞の大きさ、成長、および/または分泌活性、インスリン分泌および循環血中濃度、グルコース血中濃度、膵臓の画像、および膵臓生検等の生物学的および/または生理学的パラメータを使用して評価される、少なくとも1つの膵機能の評価を含む。例えば、米国特許第5,424,286号における実施例は、膵臓インスリン分泌の化合物刺激を試験する、化合物のインスリン分泌活性を試験する、または血糖に対する化合物活性を試験するための方法を説明する。
【0141】
本発明の化合物は、動物モデルにおける活性を試験することができる。2型糖尿病および肥満症の動物モデルの例は、限定されないが、Ob/Obマウス(肥満症の一遺伝子性モデル、レプチン欠乏)、db/dbマウス(肥満症の一遺伝子性モデル、レプチン耐性)、Zucker(fa/fa)ラット(肥満症の一遺伝子性モデル、レプチン耐性)、Goto−Kakizakiラット、KKマウス、NSYマウス、OLETFラット、イスラエルスナネズミ、脂肪を与えたストレプトゾトシン治療ラット、CBA/Caマウス、糖尿病Torriラット、ニュージーランド肥満マウス(Rees and Alcolado(2005),Diabet.Med.22,359−370を参照)、NODマウスおよびその関連系、BBラット、レプチンまたはレプチン受容体突然変異齧歯類、および肥満自然発生高血圧ラット(SHROB,Koletskyラット)を含む。
【0142】
自然発生2型糖尿病性腎症の公知動物モデルは、自然発生高血圧/NIH−肥満(SHR/N−cp)ラット(肥満症、2型糖尿病、および腎障害のモデル)、痩せたSHR/N−cpラット、およびWistar−Kyoto/NIH−肥満(WKY/N−cp)ラット(いずれも、糖尿病性腎症の病因における高血圧および肥満症の役割の評価を可能にし、SHR/N−cpラットは、異常なグルコース耐性、高血圧を有し、ヒト糖尿病性腎症を暗示する腎臓病を発症するが、WKY/N−cpラットも肥満であり、高脂質血症を有するが、それらのグルコース制御は、SHR/N−cpラットよりも若干悪い)、およびLA/N−cpラット(肥満症の遺伝子も担持し、高脂質血症を呈する)(Kimmel et al.(1992),Acta Diabetologica,Volume29(3−4),142−148を参照)を含む。
【0143】
当業者は、本明細書に記載の特定の手法、実施形態、請求項、および実施例に対する多数の相当物を、日常的な実験を使用して認識するか、または解明することができる。かかる相当物は、本発明の範囲内であると見なされ、そこに添付される請求項によって網羅される。本出願を通して引用されるすべての参照文献、発行済み特許、および公開済み特許出願の内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明は、以下の実施例によってさらに例示され、その実施例は、さらなる限定として見なされるべきではない。
【実施例】
【0144】
本明細書で以下に記載される実施例は、本発明のある代表的な化合物の例示的な製剤を提供する。糖尿病、代謝症候群、腎障害、および関連合併症の予防および治療に使用するために、本発明の化合物を検査するための方法も提供する。
【0145】
別段の指示がない限り、明細書および請求項において使用される、量を表すあらゆる数の材料、反応状態、濃度、特性等は、すべての場合において、「約」という用語によって修正されるものとして理解されるものである。最低限でも、各数値パラメータは、少なくとも、報告される有効数字の数に照らして、通常の四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。したがって、別段の指示がない限り、本明細書および添付の請求項に記載の数値パラメータは、得ようとする特性によって異なり得る近似値である。広範囲の実施形態を説明する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施例において記載される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、本質的に、実験、試験測定値、統計分析等におけるばらつきから生じるある程度の誤差を含む。
【0146】
実施例1
400mgの1,3プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩カプセル製剤の実施例について以下に説明する。
【0147】
400mgの1,3プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩カプセルは、ゼロ番白色不透明の硬ゼラチンカプセルに、400mgの1,3プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩および40mgの賦形剤から成る白色粉末を充填することによって製造した。
【表1】

【0148】
実施例2:
1,3プロパンジスルホン酸を活性薬剤として用い、実施例1に記載されるように医薬組成物を形成する。
【0149】
実施例3:
1,2−エタンジスルホン酸を活性薬剤として用い、実施例1に記載されるように医薬組成物を形成する。
【0150】
実施例4:
1,2−エタンジスルホン酸ナトリウムを活性薬剤として用い、実施例1に記載されるように医薬組成物を形成する。
【0151】
実施例5:
1,2−エタンジオールビス(硫酸水素)を活性薬剤として用い、実施例1に記載されるように医薬組成物を形成する。
【0152】
実施例6:
1,2−エタンジオール二硫酸2ナトリウム塩を活性薬剤として用い、実施例1に記載されるように医薬組成物を形成する。
【0153】
実施例7:
1,3−プロパンジオールビス(硫酸水素)を活性薬剤として用い、実施例1に記載されるように医薬組成物を形成する。
【0154】
実施例8:
1,3−プロパンジオール二硫酸2ナトリウム塩を活性薬剤として用い、実施例1に記載されるように医薬組成物を形成する。
【0155】
実施例9:
2−スルホメチル−1,4−ブタンジスルホン酸を活性薬剤として用い、実施例1に記載されるように医薬組成物を形成する。
【0156】
実施例10:
2−スルホメチルブタン−1,4−ジスルホン酸三ナトリウム塩を活性薬剤として用い、実施例1に記載されるように医薬組成物を形成する。
【0157】
実施例11:腎機能、代謝状態、および膵機能の体内予防研究
Zuckerラット(ZDF)モデルにおける腎機能、ならびに代謝状態および糖尿病に対するその影響の予防研究のために、化合物1,3プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩(PDS)を選択した。
【0158】
DNの主要な研究モデルは、近交系Zucker糖尿病性肥満ラット(ZDF)である。ZDFラットは、糖尿病誘発の食餌を与えられ、ヒト成人発症型糖尿病(2型)、および糸球体硬化症および腎障害を含む関連合併症を、通常の食餌を与えられた場合よりも早く(すなわち、14〜18週齢で)厳密に模倣する。加えて、肥満症、軽度の高血圧、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、空腹時高血糖、グルコース耐性不全、および高インスリン血症はすべて、ZDFラットにおいて特徴となる主な表現型である。
【0159】
方法
32匹の6週齢雄ZDFラット(Charles River,St.Constant,Canada)を無作為抽出して、治療群(PDS、1%スクロース飲用液)および対照群(1%スクロース飲用液)の2群に分け、12週間研究した。PDSは、最初に高用量(平均:4270mg/kg/日)で1週間与え、次いで2〜5週間は、中間低用量(平均:592mg/kg/日)で、最後に6〜12週間はわずかに増量して与えた(図1)。すべてのラットに高脂肪/高スクロースの糖尿病誘発食餌(Harlan(登録商標)TD95217)を与えた。体重、食物および飲用液消費を毎日測定した。各群から12匹のラットを、1週間に一度、24時間、代謝ケージに個別に収容した。2、3、4、および5週間の間、代謝ケージに入れたラットには飲用液を与えるが空腹状態にし、1、3、6〜12週間は、食物および飲用液に自由にアクセスさせた。各代謝ケージセッションの最後に、尿排出を測定し、血液および尿試料を収集して、血清および/または尿中のPDS、クレアチニン、タンパク質、尿酸、トリグリセリド、グルコース、および電解質濃度を定量した。これらの変数を使用して、クレアチニンクリアランス(CCr)およびタンパク尿を計算し、一般代謝および腎臓の健康状態を評価した。研究の最後に、動物を犠牲死させて、選択した臓器をさらなる分析(例えば、計量、組織学)のために保存した。
【0160】
a)腎機能および代謝
背景
糖尿病性腎症(DN)は、慢性腎不全および末期腎臓病の最も一般的な原因である。増大する証拠が、異常脂質血症、すなわち糖尿病において偏在的に見られる状態が、DNの進行に対する主要な独立要因であることを示唆している。
【0161】
目的
この臨床前調査は、化合物1,3−プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩(PDS)(エプロジセート2ナトリウム)の、ZDFラットモデルにおけるDNおよび関連病態生理学の予防治療としての役割および効果を評価する。一次測定結果は、クレアチニンクリアランスの悪化およびタンパク尿の減衰/反転である。二次測定結果は、このモデルにおける代謝状態への影響である。
【0162】
結果
結果を図1〜図7に示す。各時点の結果は、中央値または平均±標準誤差として表す。傾向統計は、反復測定あり、あるいは無しで双方向ANOVAによって計算し、p<0.05を統計的に有意であると見なす。
【0163】
治療した動物には、研究を進めるにつれて増加する量のPDSを毎日与えた(図1)。治療動物および対照動物の体重に有意な差はなかった(データ表示せず)。予想されるように、動物の体重は、研究を通して約175gから12週間後には約525gに増加した。体重のわずかな減少は、高濃度のPDSに関連する下痢に起因して、研究の最初に観察された。
【0164】
血清クレアチニンは、研究を通して両群で安定していたが、治療動物において、治療週6週目と9週目との間に値が低下する傾向があり、それらの動物における排出能力の増大を示唆した(図2A)。12週間の治療期間を通して、PDSで治療されたラットにおいて、治療週6週目と8週目との間に値が高まる傾向がわずかに見られたが、クレアチニンクリアランスに有意差はなかった(図2B)。
【0165】
治療の8週間後に、PDSは、タンパク尿に対して測定可能な効果を有し(図3)、対照と治療郡との間のタンパク尿の差は、治療の10週間から12週間の間に有意であった。対照群の動物が呈した高タンパク尿は、血漿巨大分子を漏出し始める、さらなる腎臓損傷を示し得る。PDSで治療された動物が、より少ないタンパク尿を示すという事実は、腎機能、特に糸球体の完全性に対する薬物の、いくらかの有益な効果を示唆する。
【0166】
尿酸は、プリン代謝の産物である。同一の食餌を与えられる動物は、同様の血清尿酸濃度を示すはずである。対照群の動物の血清中尿酸濃度は、6〜12週間において変動し、PDSで治療された動物から得た値よりも一貫して高かった(図4A)。かかる結果は、対照動物における尿酸の排出能力が不十分であることを示唆する。これは、再度、PDSで治療されたラットと比較した場合に、対照動物における腎機能不全を反映し得る。図4Bに示されるように、尿酸のクリアランスも、治療した動物において良好であった。
【0167】
7週目から、両群は、顕著な高カリウム血(すなわち、電解質カリウムの高い血中濃度)を示し、対照群において有意に深刻であった(図5)。動物は同一の食餌を与えられ、さらなる尿細管再吸収を示唆するいかなる兆候も見られないため、この高カリウム血が、腎臓のカリウム排出不能に起因すると結論付けることが適当である。カリウム血中濃度が対照動物において有意に高いため(8〜12週間、p<0.001)、これは、PDSが治療動物の腎機能をいくらか改善したことを示唆する。
【0168】
図6Aに示されるように、血清トリグリセリドは、対照と比較して、PDSで治療されたラットにおいて一貫して低かった。この差は、治療の開始時から見られ、研究を通して維持され、有意である(p=0.002)。これは、脂質代謝に対するPDSの有意な影響を強く示唆する。治療10週間目に測定した血清コレステロール(図6Bを参照)も、PDS治療群において有意に低く、差は12週まで継続した(7.1mmol/Lに対して4.5mmol/L、p<0.001)。
【0169】
臓器対体重(BW)の比は、病的状態の指標または進行しているリモデリングの兆候として使用される場合が多い。例えば、動物ならびにヒトにおいて、高血圧の一部形態は、左心室の肥大によって特徴付けられる。これは、体重に対する心臓重量の比によって容易に測定される。図示されないが、心臓重量/体重、膵臓重量/体重、および腎臓重量/体重の比に有意差が見られた。治療した動物の腎臓は、対照から得た腎臓よりも小さい傾向があった。しかしながら、両群の間で、肝臓重量/体重(p<0.001)および副腎重量/体重(p<0.012)の比に極めて有意な差が見られた。これは、肝臓のPDS治療の効果を示唆する。これらの現象は、高血圧の低下に関連し得るが、これは研究において測定しなかった。アミロイドの沈着は、いずれの群の腎臓においても検出されなかった。
【0170】
対照およびPDSで治療された動物の両方で、組織学検査を行った。図7に示されるように、グローバルスコアから、大部分のPDSで治療されたラットが最低スコアを有し、対照動物から得たスコアが最も高かった(p=0.001)ことが観察された。グローバルスコアは、各組織学的パラメータ(メサンギウム基質拡大、糸球体細胞増殖、基底膜の肥厚、および糸球体の肥大)に関する観察数を合計することによって計算した。これは、腎臓に対するPDSの保護能力の有意な指標である。個別に表示されないが、対照ラットの腎臓は、糸球体の肥大、糸球体細胞の増殖、および基底膜の肥厚を示した。PDSで治療されたラットから得た腎臓は、少ない病変を呈した。かかる結果は、例えば、糖尿病および/または慢性腎疾患、または基底膜が関与する他の疾病の特質である、基底膜の変質(例えば、基底膜の肥厚)の予防または治療に対するPDSの有益な効果を示唆する。PDSは、これらの疾病における後次の病変(または瘢痕化または線維症等)を反転させる上でも有用であり得る。
【0171】
総合すると、かかる結果は、1,3プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩(PDS)が、Zucker肥満糖尿病ラットの腎臓を保護することを示唆する。これは、治療した動物において呈される低いタンパク尿、ならびに組織学検査の結果によって示される。PDSに起因し得る、糸球体への一般的な保護効果があると考えられる。ナトリウム利尿、クレアチニンクリアランス、および尿酸クリアランスからの結果も、腎臓に対する保護効果を示唆する。加えて、PDSで治療されたラットにおける研究の最後に観察されたトリグリセリドおよびコレステロールの極めて有意な減少を考慮すると、PDSは、脂質代謝に有意に影響し得る。
【0172】
b)膵機能に対する効果
背景
既知のとおり、糖尿病は、インスリン分泌の欠失(I型糖尿病)、またはインスリン作用に対する末梢組織の耐性(同一時間において、血中グルコースを対照と同一濃度まで減少させるために、より多くのインスリンが必要とされる、II型糖尿病)に起因し得る。本研究に採用したZucker肥満糖尿病ラットは、インスリン耐性のモデルである。高血糖は、このモデルにおいてほぼ常に観察され、初期に非常に高い循環インスリン濃度が、膵臓のベータ細胞の疲労によって、疾病の進行とともに下降する。インスリン分泌を増大させる、他の手段によってグルコース濃度を減少させる、または末梢組織によるグルコース利用を増大させるために有益な治療が期待される。
【0173】
結果
結果を図8〜図11に示す。各時点の結果は、中央値または平均±標準誤差として表す。傾向統計は、測定あり、あるいは無しで双方向ANOVAによって計算し、p<0.05を統計的に有意であると見なす。
【0174】
図8に示されるように、血清インスリンは、実験の最後、すなわちベータ細胞分泌能力の保存を試験する時点で、対照動物と比較して、PDSで治療されたラットにおいて2倍以上高かった。測定は食餌した動物において行ったため、対照と比較して、PDSで治療された動物におけるインスリン分泌能力の増加を示唆する。
【0175】
図9Aは、ヘキソキナーゼ(HK)II方法を使用して測定した血清平均グルコース濃度を示し、図9Bは、グルコース計測キットを使用して測定した末梢血グルコース濃度の中央値を示す。両方法(図9Aおよび図9B)を使用して測定したグルコース濃度は、グリセミアおよび/またはインスリン分泌に対するPDSの効果を示唆する。治療の9週までに、グリセミアは対照において安定し、10週までには、対照ラットよりもPDSで治療されたラットにおいて有意に低かった(HKによってp<0.001、グルコース計測によりp=0.002)。
【0176】
図10に示されるように、利尿(すなわち、尿生成)は、対照動物において9週目から増大し始め、グリセミアの増加と極めて良好に相関した(r=0.888、p<0.001)。これは、高血糖に続発する浸透圧利尿に起因する可能性が最も高い。群間の利尿の差(PDSで治療されたラットの方が低い)は、同時点に観察されるグリセミアの差も反映する。
【0177】
図11は、対照およびPDSで治療されたラットの膵臓の組織学検査の結果を示す。治療した動物からの膵臓は、フィールド当たりのランゲルハンス島数が高く、対照との有意差を示し、図8において測定および表示される高いインスリン濃度を説明することができる。かかる組織学的結果は、PDSが、膵機能を保護し、島の消失率を減速させる上で有益であることを示唆する。
【0178】
腎臓遺伝子発現に対するPDS治療の効果についても測定した。簡潔に述べると、各群(対照および治療群)から2〜4匹の個別ラットから全体腎臓RNAを分離および保管した。次いで、Gene Chip Rat Exon 1.0 STアレイ(登録商標)(Affimetrix)を使用して、保管したRNAを、製造者の標準手法に従って処理し、遺伝子およびエクソンレベルに関して、2群間の発現差を分析した。図示されていないが、治療群において、75遺伝子が上方調節され、43遺伝子が下方調節されることが分かった。ペロキソーム増殖因子活性受容体ガンマ(PPARG)が、上方調節を示す遺伝子に含まれ、1.85倍増であった。PPARGは、脂質、グルコース、およびアミノ酸代謝を調節する、よく知られる転写調節因子であり、この受容体は、真性糖尿病およびインスリン耐性を特徴とする他の疾病において使用されるチアゾリジンジオンの主要標的である。
【0179】
総合すると、かかる結果は、1,3プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩(PDS)が、グリセミアを減少させる、およびインスリン分泌を増加させる、および/またはインスリン感度を増加させることによって、グルコース代謝およびインスリン分泌に対して有益な効果を有することを示唆する。かかる生物化学的結果は、PDSで治療されたラットにおける高いランゲルハンス島の数によって裏付けられ、島の消耗率の減少を示唆し、観察される高いインスリン濃度を説明することができる。膵臓細胞およびグルコース/インスリン濃度に対するかかる効果は、ランゲルハンス島の減少を回避し、それらの機能を安定化させることが望ましい、1型および2型糖尿病を含む、様々な膵臓疾患の予防または治療におけるPDSの潜在的な医療実用性を支持する。
【0180】
トリグリセリド濃度ならびにコレステロール濃度に関するPDSの効果は、グルコース濃度ならびにインスリン濃度に対して有益な効果を有することが示されたという事実と組み合わされ、代謝症候群または代謝症候群の特徴を有する糖尿病等の状態および疾病の治療におけるその使用可能性を支持する。
【0181】
実施例12:SHRラットにおける膵機能の体内予防研究
SHRラットは、糖尿病ではないが、インスリン耐性を有するラットである。ラットを2群に分け、それぞれPDSまたは媒体を投与する。治療の開始後、ランゲルハンス島の一部を化学的に破壊することを目的として、すべてのラットにストレプトゾトシンを低用量で投与する。治療したラットおよび対照ラットの両方を、経口グルコース耐性試験(OGTT)によってチャレンジし、グルコース濃度を測定する。PDSを前に受た動物は、対照よりも低いグルコース濃度を経験する。低いグルコース濃度は、糖尿病患者におけるランゲルハンス島の保護における効果、ならびインスリンを用いた治療を遅延させることにおける、その使用可能性を示唆し得る。
【0182】
実施例13:ヒト患者(糖尿病性腎症)の治療
糖尿病性神経障害の治療を必要とする患者を、1日2回、1,3プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩(PDS)(800mg)で治療する。用量は、腎機能(例えば、GFR、クレアチニンクリアランス、尿酸クリアランス、アルブミン尿等)によって測定される、治療に対する患者の反応に従って、医師が調節する(例えば、1200mgに維持する、1200mgまで増加する、または400mgまで減少させる)。
【0183】
実施例14:ヒト患者(糖尿病)の治療
糖尿病の治療を必要とする患者を、1日2回、1,3プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩(PDS)(800mg)で治療する。用量は、その膵機能またはそのインスリン感度(例えば、インスリン血清濃度、インスリン分泌能、グリセミア、利尿等)によって測定される、治療に対する患者の反応に従って、医師が調節する(例えば、1200mgに維持する、1200mgまで増加する、または400mgまで減少させる)。
【0184】
実施例15:ヒト患者(高脂質血症)の治療
高脂質血症(例えば、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高リポタンパク血症等)の治療を必要とする患者を、1日2回、1,3プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩(PDS)(800mg)で治療する。用量は、その血中脂質濃度(例えば、遊離トリグリセリド、LDL、コレステロール、HDLコレステロール等)によって測定される、治療に対する患者の反応に従って、医師が調節する(例えば、1200mgに維持する、1200mgまで増加する、または400mgまで減少させる)。
【0185】
実施例16:ヒト患者(血管または心疾患)の治療
血管または心血管疾患(例えば、高血圧、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化、心筋梗塞等)の治療を必要とする患者を、1日2回、1,3プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩(PDS)(800mg)で治療する。用量は、治療に対する患者の反応(例えば、血圧)に従って、医師が調節する(例えば、1200mgに維持する、1200mgまで増加する、または400mgまで減少させる)。
【0186】
実施例17:ヒト患者(代謝症候群の特徴を有する糖尿病)の治療糖尿病
前述のように、現在の糖尿病治療を用いる患者において、深刻な副作用が見られる場合があるため、これらの治療に必要とされる用量を低減することが極めて望ましい。加えて、治療にかかわらず、多くの糖尿病患者が、血中グルコース濃度を十分に管理せず、依然として糖尿病関連の健康上の合併症のリスクがある。かかる患者における代謝症候群の存在もまた、これらの健康上のリスクを促進し得る。したがって、代謝症候群の特徴を標的することを含む、作用の相補機構を伴う追加治療は、2型糖尿病患者に対して有益であり得る。しかしながら、かかる患者が、既に深刻な合併症のリスクが高いことを考慮すると、任意の追加治療は、加えて良好な安全プロファイルを有しなければならない。化合物1,3−プロパンジスルホン酸は、既にAAアミロイド症の患者において臨床的に試験されており、ヒトにおいて安全に使用することができる。
【0187】
2型糖尿病および代謝症候群の特徴を有する患者は、1600mgのPDS(400mgカプセル4個)を1日に2回受ける(BID)。患者は、PDSを用いた治療を開始する前に、安定した治療用量のメトホルミン単独、またはメトホルミンとスルホニル尿素剤との組み合わせを、最短で3ヶ月間受ける。加えて、患者は、スタチン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、チアジド利尿薬、またはβ遮断薬等の他の併用薬を受けることができる。患者のパラメータをモニタする。
【0188】
例として、PDSは、HbA1c(グリコシル化ヘモグロビン)濃度が(包括的に)7.5%から10%の範囲である、管理が不適切な2型糖尿病患者において、メトホルミン、またはメトホルミン/スルホニル尿素併用療法と組み合わせて投与される。
【0189】
評価されるパラメータは、HbA1cレベルのベースラインからの変化、治療,中のHbA1cの変化率、血糖管理の達成率である。赤血球細胞内のHbA1cは、その通常の数週間のライフサイクル中に細胞が曝露されるグルコースの平均濃度を反映する。HbA1c測定値は、信頼性があり、且つ正確であるため、血中グルコースの適切な測定値である。
【0190】
測定される他のパラメータは、糖尿病および代謝症候群の特徴を評価するための標準試験を含み、空腹時血清グルコース、インスリン耐性、インスリン分泌レベル、血清トリグリセリド、血清インスリン、コレステロール(総、HDL、およびLDL)、腰周囲、体インピーダンス、微小アルブミン尿/タンパク尿、クレアチニンクリアランス、血清クレアチニン、および血圧(収縮時および拡張時)を含む。尿酸クリアランスも評価して、PDSの潜在的薬理効果をさらに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象において膵臓疾患を予防または治療するための方法であって、有効量の式(I)の化合物を前記対象に投与するステップを含み、
Y−(CH−(CH)−[CHY] (I)
式中、Yは、各発生に対して独立して選択されるSOXまたはOSOXであり、Xは、各発生に対して独立して水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム、またはアルミニウムである陽性基であり、nは、1、2、3、または4であり、tは、mが1である場合に0であり、tは、mが2である場合に1である、方法。
【請求項2】
前記対象は高血糖症を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膵臓疾患は真性糖尿病である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記糖尿病は、代謝症候群の特徴と関連する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、第2の薬剤を投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の薬剤は、ビグアニドまたはスルホニル尿素である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の薬剤は、メトホルミンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、スルホニル尿素を投与するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
それを必要とする対象において代謝症候群を予防または治療するための方法であって、有効量の式(I)の化合物を前記対象に投与するステップを含み、
Y−(CH−(CH)−[CHY](I)
式中、Yは、各発生に対して独立して選択されるSOXまたはOSOXであり、Xは、各発生に対して独立して水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム、またはアルミニウムである陽性基であり、nは、1、2、3、または4であり、tは、mが1である場合に0であり、tは、mが2である場合に1である、方法。
【請求項10】
それを必要とする対象において真性糖尿病を予防または治療するための方法であって、有効量の式(I)の化合物を前記対象に投与するステップを含み、
Y−(CH−(CH)−[CHY](I)
式中、Yは、各発生に対して独立して選択されるSOXまたはOSOXであり、Xは、各発生に対して独立して水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリアルキルアンモニウム、またはアルミニウムである陽性基であり、nは、1、2、3、または4であり、tは、mが1である場合に0であり、tは、mが2である場合に1である、方法。
【請求項11】
前記真性糖尿病は1型糖尿病である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記真性糖尿病は2型糖尿病である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記糖尿病は、代謝症候群の特徴と関連する、請求項10乃至12のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記対象において、ランゲルハンス島の大きさ、成長および/または分泌活性、ベータ細胞のサイズ、成長および/または分泌活性、インスリン分泌、血中インスリン値、または血中グルコース値である、膵機能パラメータの少なくとも1つに好ましい影響を及ぼす、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、ランゲルハンス島の減少を予防する、または新生を刺激することによって、膵機能を回復または改善する、請求項1または10に記載の方法。
【請求項16】
前記膵機能は、血清インスリン値を測定する、血糖を測定する、利尿を測定する、カリウム血を測定する、膵臓を撮像する、または膵臓の組織学的検査を行うことによって評価される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物は、1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物は、1,3−プロパンジスルホン酸2ナトリウム塩である、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象は、アミロイド症を有しない、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象は、AA−アミロイド症を有しない、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象は、IAPP−アミロイド症を有しない、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象は、腎機能異常を有しない、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象は、腎障害(例えば、糖尿病性腎症)を有しない、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
それを必要とする対象において、膵臓疾患を予防または治療するための1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩の使用。
【請求項25】
それを必要とする対象において、代謝症候群を予防または治療するための1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩の使用。
【請求項26】
それを必要とする対象において、真性糖尿病を予防または治療するための1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩の使用。
【請求項27】
それを必要とする対象において、代謝症候群の特徴を有する真性糖尿病を予防または治療するための1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩の使用。
【請求項28】
それを必要とする対象において、タンパク尿を予防または減少させる方法であって、有効量の1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項29】
それを必要とする対象において、インスリン分泌を増加させる、および/またはインスリン感度を増加させる方法であって、有効量の1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項30】
それを必要とする対象において、インスリン耐性を減少させる方法であって、有効量の1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項31】
それを必要とする対象において、高血糖を減少させる方法であって、有効量の1,3−プロパンジスルホン酸、またはその医薬的に許容される塩を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項32】
有効量の1,3−プロパンジスルホン酸を投与することによって、糖尿病患者をインスリンで治療する必要性を遅延させるための方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−529947(P2010−529947A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542265(P2009−542265)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004088
【国際公開番号】WO2008/078176
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(509160339)ベラス ヘルス(インターナショナル)リミテッド (1)
【Fターム(参考)】