説明

仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法と仮設軌道システム

【課題】育苗ハウスの中で敷設及び撤去が簡単であり、容易に育苗箱を運ぶことができる仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法と仮設軌道システムを提供する。
【解決手段】互いに平行な一対のレール部材20と、レール部材20と地面14の間に設けられレール部材20を係止する枕木22と、レール部材20の上を移動する車輪32が取り付けられている台車28を備える。枕木22は地面14とレール部材20に対して取り外し自在である。枕木22は、一対のレール部材20に対してほぼ直角に交差する一方向に長い板状の枕木本体24と、枕木本体24の上面に取り付けられ一対のレール部材20を所定幅で係止する係止手段であるピン26を備える。育苗ハウス12内の地面14上に枕木22を配置し、枕木22にレール部材20を係止しながら、育苗ハウス12の出入口13から奥に向かってレール部材20を敷設する。レール部材20に台車28を載せて、台車28により育苗箱38を搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、育苗ハウス等に設けられる仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法と仮設軌道システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、稲の苗を育成する育苗ハウスは、整地した地面にトンネル状に枠部材を組み立て、強度がある透明なシートを枠組みに張ったものである。育苗ハウス内の地面には、除草シートが敷かれている。そして、除草シートを敷き詰めた地面に、培地と種もみを入れた育苗箱を並べて置き、散水や温度管理を行い、苗を発芽させて一定の高さに生育させる。生育した苗は、育苗箱ごと育苗ハウスから外へ運び出し、水田に植えられる。ここで、育苗ハウスに、育苗箱を運んで並べたり運び出したりする作業は、作業者が手押し式の台車等を使用して行っており、台車に複数個の育苗箱を載せて育苗ハウスの所定の位置まで運び、育苗箱を台車から下ろして地面に並べているものであった。苗を育成した後の苗を運び出す作業も、台車を育苗箱の近くに移動させ、育苗箱を載せて運び出していた。
【0003】
また、屋外の農作物の栽培用地で、肥料、資材、生産物等の運搬を容易に行うための軌道システムが考えられている。特許文献1に開示されている農作物栽培用搬送路は、畝立てされた圃場内に作業台車を走行させる走行レールを施設するものであり、畝上で、且つ畝の長さ方向に点在して載置される複数のベース部材と、当該複数のベース部材上に架設される1又は2本以上のレール部材が設けられている。ベース部材は、畝の横断面における両肩部の上面と法面とに当接する略く字状の肩板部と、一対の肩部板を畝の上面において連結する連結具が設けられているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−22230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術の、育苗箱を作業者が手押し式の台車で運搬する方法は、除草シートの下の地面は土であり地面にわずかな凹凸もあり、台車の車輪が土にめり込んだりして、円滑に進むことができない。このため台車を押す作業は重労働であり作業者の負担が大きいものであった。また、特許文献1に開示されている農作物栽培用搬送路は、常設のもので構造が複雑で、簡単に敷設及び撤去ができないものであった。従って、育苗ハウスの中で簡単に敷設と撤去することができるものではなかった。
【0006】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、育苗ハウスの中で敷設及び撤去が簡単であり容易に育苗箱を運ぶことができる仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法と仮設軌道システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、育苗ハウス内の地面上に枕木を配置し、この枕木にレール部材を係止しながら、前記育苗ハウスの出入口から奥に向かって前記レール部材を敷設し、前記レール部材に台車を載せて、培地と種もみを入れた育苗箱を前記台車に積み重ねて載せ、前記育苗ハウスの奥に移動させ、前記育苗箱を前記台車から下ろして前記育苗ハウスの奥から順に並べ、前記育苗ハウスの奥から前記育苗箱を並べた面積が広くなるに従い、前記台車を前記出入口に向かって後退させるとともに、前記育苗ハウスの奥側の先端部分の不要になった前記レール部材を前記枕木から外して、前記レール部材の敷設長さを短くしていき、順次前記レール部材と前記枕木を撤去しながら前記出入口近傍まで前記育苗箱を並べるようにした仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法。
【0008】
さらに、前記育苗箱を並べ終えた後、苗が生育して、前記育苗箱を運び出す際は、前記出入口近傍の育苗箱を取り出しながら、前記出入口から前記レール部材を前記育苗ハウスの奥に向かって敷設し、前記出入口に近い位置に並べられた前記育苗箱から順に取り上げて前記台車に載せ、前記地面に前記育苗箱がないスペースに次の前記レール部材をつないで前記育苗ハウス内を奥に向かって延長させ、延長した前記レール部材に沿って前記台車を移動させ、前記育苗箱を前記育苗ハウスの外へ運び出すものである。
【0009】
またこの発明は、地面に所定方向に取り付けられる互いに平行な一対のレール部材と、前記レール部材と地面の間に設けられ前記レール部材を係止する枕木と、前記レール部材の上を移動する車輪が取り付けられている台車が設けられ、前記枕木は地面と前記レール部材に対して取り外し自在であり、前記枕木は、前記一対のレール部材に対してほぼ直角に交差する一方向に長い板状の枕木本体と、前記枕木本体の上面に取り付けられ前記一対のレール部材を所定幅で係止する係止手段から成る仮設軌道システムである。
【0010】
前記係止手段は、前記枕木本体の上面に対して略直角に立設されたピンであり、前記ピンは、前記枕木本体の長手方向に沿って4個が、前記枕木本体の上面から略直角に立ち上がって取り付けられ、前記ピンの間隔は、一対のレール部材を所定幅で前記枕木本体に載せたときに、前記各レール部材を前記レール部材の長手方向に対して直角に交差する方向から挟む長さである。
【0011】
前記台車は、前記一対のレール部材の幅よりも大きい矩形の枠部材が設けられ、前記枠部材は、上にフォークリフト用のパレットを安定して載せることができる大きさに形成され、前記枠部材の下面には前記車輪が設けられているものである。
【0012】
前記レール部材は、金属製の円筒状のパイプであり、建築資材でもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法と仮設軌道システムは、敷設及び撤去が簡単であり重量物である育苗箱を小さい力で容易に運ぶことができ、作業性が良いものである。しかも、育苗ハウスの中の必要な場所に敷設し、不要になると撤去することができるので、育苗ハウスを無駄なく使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態の仮設軌道システムを示す斜視図である。
【図2】この実施形態の仮設軌道システムの育苗箱を育苗ハウスに入れる際に、レール部材を敷設した状態を示す斜視図である。
【図3】この実施形態の仮設軌道システムの育苗箱を育苗ハウスから出す際に、レール部材を敷設した状態を示す斜視図である。
【図4】この実施形態の仮設軌道システムのレール部材と枕木を示す斜視図である。
【図5】この実施形態の仮設軌道システムの台車に棚を載せた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図5はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の仮設軌道システム10は、育苗ハウス12の内側にレール部材20を仮設的に敷設するものである。育苗ハウス12は、整地した地面14にトンネル状に枠部材16を組み立て、枠部材16による枠組みに、所定の強度がある塩化ビニル等の透明なシート18を張ったものである。地面14には、除草シートが敷かれている。
【0016】
仮設軌道システム10は、互いに平行な一対のレール部材20が地面14に設けられている。レール部材20は、金属製で円筒状のパイプであり、建築用の仮設足場のパイプ材を用いると安価で良い。レール部材20は、レール部材20と地面14の間に設けられている枕木22で係止されている。枕木22は地面14とレール部材20に対して取り外し自在である。枕木22は、図4に示すように、一対のレール部材20の軌道方向に対してほぼ直角に交差して敷かれ、一方向に長い厚板状の枕木本体24から成る。枕木本体24の上面24aは一対のレール部材20が載せられる面であり、上面24aには、一対のレール部材20を所定幅で係止する係止手段であるピン26が設けられている。ピン26は、枕木本体24の長手方向に沿って4個が、上面24aから略直角に立ち上がって取り付けられ、ピン26の間隔は、一対のレール部材20を所定幅で載せたときに、各レール部材20をレール部材20の長手方向に交差する方向から挟む長さである。レール部材20は、一対のピン26の間に入れると位置決めされて係止され、一対のピン26から外すと簡単に係止が解除される。枕木本体24は、金属製や木製等である。レール部材20を敷設するとき、地面14の凹凸に合わせて枕木本体24と地面14の間に板等を敷いてもよい。
【0017】
仮設軌道システム10には、レール部材20を走行する台車28が設けられている。台車28は、一対のレール部材20の幅よりも少し大きい矩形の枠部材30が設けられ、枠部材30は、上にフォークリフト用のパレット34を安定して載せることができる大きさに形成されている。枠部材30の下面には、枠部材30の角部付近に車輪32が設けられ、車輪32はレール部材20の上を回転して移動するものである。
【0018】
台車28の枠部材30の上には、パレット34が載せられ、パレット34の上には、苗39を育成する育苗箱38が複数個積み重ねられて載せられる。なお、苗39が所定高さに育った育苗箱38を載せるときは、図5に示すように、苗39がつぶれない間隔を保ちながら育苗箱38を重ねて保持する棚36が用いられる。
【0019】
次に、この実施形態の仮設軌道システム10の仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法について説明する。育苗箱38を育苗ハウス12に入れる際は、図2に示すように、育苗ハウス12内の除草シートが敷かれた地面14上に、枕木22を所定位置に配置し、レール部材20を枕木22に係止しながら、育苗ハウス12の長手方向に沿って敷設する。レール部材20の位置は、育苗ハウス12の中央部を、出入口13から奥に向かって敷設する。そして、図1に示すようにレール部材20に台車28をのせ、台車28の枠部材30の上に、培地と種もみを入れた育苗箱38が積み重ねられたパレット34を、フォークリフトにより載せる。台車28を作業者が押して育苗ハウス12の奥に移動させ、育苗箱38を台車28から下ろして育苗ハウス12の奥から並べる。並べ方は任意であるが、作業者が歩くスペースを除いて敷きつめてもよい。育苗ハウス12の奥から育苗箱38を並べた面積が広くなるに従い、台車28を出入口13に向かって後退させて、次々に育苗箱38を下ろして並べる動作を繰り返す。レール部材20の奥側の先端は、不要になったところを枕木22から外し短くしていき、出入口13近傍まで育苗箱38を並び終えるまでに、順次レール部材20と枕木22が撤去され、育苗箱38を並べ終えた状態で、レール部材20の撤去が完了する。
【0020】
育苗箱38を並べ終わった後、育苗箱38を温度管理と散水管理を行って苗39を一定高さに育成させる。苗39が育成した育苗箱38を運び出す際は、図3に示すように、出入口13の正面の育苗箱38を取り出して、出入口13からレール部材20を枕木22で係止しながら奥に向かって敷設する。レール部材20に乗せる台車28の枠部材30には、図5に示すような棚36を載せたパレット34を置く。そして、出入口13に近い位置に並べられた育苗箱38から順に、地面14から取り上げて棚36に載せる。この動作を繰り返して、地面14に育苗箱38がないスペースができたら別のレール部材20をつなげて育苗ハウス12の奥に向かって延長する。延長したレール部材20に沿って台車28を育苗ハウス12の奥に向かって徐々に移動させ、育苗箱38を載せ、棚36が育苗箱36でいっぱいになったら、台車28を移動させて育苗ハウス12の外へ運び出す。育苗ハウス12内の育苗箱38を運び終わったら、台車28をレール部材20から外し、レール部材20を枕木22から外して撤去する。運び出された育苗箱38は、田植え機にセットされ水田に植えられる。
【0021】
この実施形態の仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法と仮設軌道システム10によれば、簡単な構造で敷設及び撤去が容易であり小さい力で容易に重量物である育苗箱38を運ぶことができる。育苗ハウス12の中に、育苗箱38を入れるときと出すときの必要な時に敷設し、作業者に重労働を強いなくても大量の育苗箱38を短時間で簡単に運ぶことができる。これにより、作業者の疲労を軽減し、効率良く作業を行うことができる。しかも、仮設軌道システム10は、育苗ハウス12のスペースを無駄なく使用することができ、敷設及び撤去も容易に可能である。レール部材20は、市販の建築資材を使用することができ、安価で入手しやすいものである。
【0022】
なお、この発明の仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法と仮設軌道システムは、上記実施の形態に限定されるものではなく、各部材の形状や大きさ等、適宜変更可能である。枕木の、レール部材を係止する手段は、ピン以外に確実に係止されるものであればよい。
【符号の説明】
【0023】
10 仮設軌道システム
12 育苗ハウス
13 出入口
14 地面
20 レール部材
22 枕木
24 枕木本体
26 ピン
28 台車
30 枠部材
32 車輪
34 パレット
36 棚
38 育苗箱
39 苗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗ハウス内の地面上に枕木を配置し、この枕木にレール部材を係止しながら、前記育苗ハウスの出入口から奥に向かって前記レール部材を敷設し、前記レール部材に台車を載せて、培地と種もみを入れた育苗箱を前記台車に積み重ねて載せ、前記育苗ハウスの奥に移動させ、前記育苗箱を前記台車から下ろして前記育苗ハウスの奥から順に並べ、前記育苗ハウスの奥から前記育苗箱を並べた面積が広くなるに従い、前記台車を前記出入口に向かって後退させるとともに、前記育苗ハウスの奥側の先端部分の不要になった前記レール部材を前記枕木から外して、前記レール部材の敷設長さを短くしていき、順次前記レール部材と前記枕木を撤去しながら、前記出入口近傍まで前記育苗箱を並べることを特徴とする仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法。
【請求項2】
前記育苗箱を並べ終えた後、苗が生育して、前記育苗箱を運び出す際は、前記出入口近傍の育苗箱を取り出しながら、前記出入口から前記レール部材を前記育苗ハウスの奥に向かって敷設し、前記出入口に近い位置に並べられた前記育苗箱から順に取り上げて前記台車に載せ、前記地面に前記育苗箱がないスペースに次の前記レール部材をつないで前記育苗ハウス内を奥に向かって延長させ、延長した前記レール部材に沿って前記台車を移動させ、前記育苗箱を前記育苗ハウスの外へ運び出す請求項1記載の仮設軌道を利用した育苗箱搬送方法。
【請求項3】
地面に所定方向に取り付けられる互いに平行な一対のレール部材と、前記レール部材と地面の間に設けられ前記レール部材を係止する枕木と、前記レール部材の上を移動する車輪が取り付けられている台車が設けられ、前記枕木は地面と前記レール部材に対して取り外し自在であり、前記枕木は、前記一対のレール部材に対してほぼ直角に交差する一方向に長い板状の枕木本体と、前記枕木本体の上面に取り付けられ前記一対のレール部材を所定幅で係止する係止手段から成ることを特徴とする仮設軌道システム。
【請求項4】
前記係止手段は、前記枕木本体の上面に対して略直角に立設されたピンであり、前記ピンは、前記枕木本体の長手方向に沿って4個が、前記枕木本体の上面から略直角に立ち上がって取り付けられ、前記ピンの間隔は、一対のレール部材を所定幅で前記枕木本体に載せたときに、前記各レール部材を前記レール部材の長手方向に対して直角に交差する方向から挟む長さである請求項3記載の仮設軌道システム。
【請求項5】
前記台車は、前記一対のレール部材の幅よりも大きい矩形の枠部材が設けられ、前記枠部材は、上にフォークリフト用のパレットを安定して載せることができる大きさに形成され、前記枠部材の下面には前記車輪が設けられている請求項3記載の仮設軌道システム。
【請求項6】
前記レール部材は、金属製の円筒状のパイプであり、建築用の仮設足場に用いる資材である請求項3記載の仮設軌道システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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