任意信号発生装置
【課題】比較的低い周波数のサンプリング周波数を用いつつ、生成する信号の周波数帯域を拡張し、より高周波域までの任意波形の信号を生成可能とする。
【解決手段】目的信号を離散フーリエ変換した周波数領域の複素スペクトルをP組の信号成分に分割し、低サンプリングクロックで動作するP個の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPに分配して分割処理し、それぞれの出力を合成することにより、任意信号を生成する。各信号モジュールは、分配された信号成分を逆離散フーリエ変換器10で逆離散変換し、デジタル信号処理の困難な高周波成分は、逆離散フーリエ変換出力を直交変調器17でアップコンバートする。これにより、並列数Pに反比例した低速のクロックで各信号モジュールSG2,SG3,…,SGPを動作させることができる。
【解決手段】目的信号を離散フーリエ変換した周波数領域の複素スペクトルをP組の信号成分に分割し、低サンプリングクロックで動作するP個の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPに分配して分割処理し、それぞれの出力を合成することにより、任意信号を生成する。各信号モジュールは、分配された信号成分を逆離散フーリエ変換器10で逆離散変換し、デジタル信号処理の困難な高周波成分は、逆離散フーリエ変換出力を直交変調器17でアップコンバートする。これにより、並列数Pに反比例した低速のクロックで各信号モジュールSG2,SG3,…,SGPを動作させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の任意波形の目的信号を生成する任意信号発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルスレーダ等に用いられるパルス幅の小さい信号を生成する技術として、ステップリカバリダイオード、アバランシェダイオード、高速論理ゲート等を用いて任意波形の目的信号を生成する技術が知られている。これらの技術は、アナログ信号処理によりパルス幅の小さい信号を生成する技術であり、温度や湿度等の環境変化による回路特性の変化、素子や材料の特性の経年変化等により、性能が変化する虞がある。
【0003】
また、アナログ信号処理用の回路は、一度作成されると、その後の変更が困難であり、仕様や目的の変更に対して必ずしも自由度が高いとは言えない。例えば、レーダ用の信号発生装置としての用途の場合、レーダの割り当て周波数が変更されても、アナログ回路では対応困難である。さらに、送信波のスペクトルを変更する場合、外付けのフィルタを変更する等の対策が必要であるが、アナログ回路では、送信スペクトルの形状やレベルを適応的に変更することは困難である。
【0004】
このため、近年では、デジタル信号処理によって目的信号を生成する技術が採用されることが多い。このデジタル信号処理による信号発生装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなダイレクトデジタルシンセサイザ(Direct Digital Synthesizer;DDS)が知られている。DDSは、波形データの入ったメモリの指定アドレスを更新して行き、その指定アドレスのデータをD/A変換によりアナログ波形に変換することで、任意の波形を発生させる技術である。
【特許文献1】特開平11−225022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなDDSによる信号発生装置は、基準クロック周波数に同期してその基準クロックの有理数倍の周期を有する信号波形をデジタル的に合成した後、A/D変換を行っている。よって、サンプリング定理により、目的信号に含まれる最高周波数の2倍以上のサンプリング周波数でD/A変換器を動作させなければならない。このため、目的信号のパルス幅を小さくすると、必要とされるサンプリング周波数がパルス幅に反比例して高くなる。よって、生成可能な信号の周波数には限界がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、比較的低い周波数のサンプリング周波数を用いつつ、生成する信号の周波数帯域を拡張することができ、より高周波域までの任意波形の信号を生成可能な任意信号発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による任意信号発生装置は、時間領域の信号から算出した周波数領域のスペクトルを、複数の信号成分に分割して分配する信号分配部と、前記信号分配部から分配された複数の信号成分のそれぞれを時間領域の信号に変換する信号変換部と、前記信号変換部で変換された複数の信号のうち、少なくとも一つ以上の信号の周波数をアップコンバートする周波数変換部と、前記周波数変換部によりアップコンバートされた信号を含む複数の信号を合成して目的信号を出力する信号合成部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比較的低い周波数のサンプリング周波数で動作しながら、発生信号の周波数帯域を拡張することができ、より高周波域までの任意波形の信号を生成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図12は本発明の実施の第1形態に係り、図1は任意信号発生装置の構成図、図2は分割処理による任意信号発生の基本アルゴリズムを示す説明図、図3は低周波用信号モジュールでの信号スペクトラムを示す説明図、図4は低周波用信号モジュールでの逆離散フーリエ変換後のスペクトラムを示す説明図、図5は低周波用信号モジュールでのインターポレーション後のスペクトラムを示す説明図、図6は低周波用信号モジュールでの複素バンドパスフィルタによるフィルタリング後のスペクトラムを示す説明図、図7は低周波用信号モジュールで抽出された信号を示す説明図、図8は高周波用信号モジュールでの逆離散フーリエ変換後のスペクトラムを示す説明図、図9は高周波用信号モジュールでのインターポレーション後のスペクトラムを示す説明図、図10は高周波用信号モジュールでの複素バンドパスフィルタによるフィルタリング後のスペクトラムを示す説明図、図11は直交変調器の出力スペクトラムを示す説明図、図12は混合器の出力スペクトラムを示す説明図である。
【0010】
図1に示す任意信号発生装置1には、生成したい任意の周波数帯域の目的信号を時間領域で離散化したデータが入力信号xinとして与えられる。この入力信号xinをデジタル信号処理して実際の目的信号xoutを生成する。従来のデジタル信号処理では、精度は高いが扱える周波数は比較的低いため、任意の広帯域の信号を処理することは難しい。本発明では、任意の目的信号をデジタル信号処理が可能なP組の信号に分割して並列処理を行う。信号処理の都合上、分割数は2のべき乗が好ましい。すなわちN/P=2a(aは任意の自然数)が好ましい。ただし、2のべき乗に限ることなく、任意の数で分割して処理することが可能である。
【0011】
この任意信号発生装置1は、入力信号xinをN個の並列データに変換する直並列変換器2、N個の並列データを離散フーリエ変換して周波数領域でP組の信号成分に分割し、各周波数領域毎のデータ(複素スペクトル)をP個の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPに分配する離散フーリエ変換器3、離散フーリエ変換器3から分配された複素スペクトルを並列で処理し、互いに異なる周波数の信号を発生するP個の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGP、信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPの各出力を合成し、任意の周波数帯域の目的信号xoutを出力する混合器4を備えて構成されている。
【0012】
尚、本実施の形態ではP個の信号モジュールはそれぞれ互いに異なる周波数の信号を発生する、換言すればそれぞれ重なる周波数領域の信号を扱わないこととしているが、これに限られない。複数の信号モジュールで重複して扱う周波数領域が存在していても、それを考慮して目的信号を設定することで、本発明の信号処理に関しては問題は生じない。
【0013】
また、目的信号の周波数帯域内に、出力を希望しない特定の周波数領域が存在している場合には、その特定の周波数領域をいずれの信号モジュールでも扱わないことで、特定の周波数領域の信号を含まない目的信号を得ることができる。例えば法規制等により出力を制限されている周波数領域が存在している場合に、その周波数領域を扱わないことで、法規制に対応した目的信号を得ることができる。
【0014】
各信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPは、1つのモジュールSG1が最も低い周波数の信号を生成する低周波用のモジュールであり、他のモジュールSG2,SG3,…,SGPは、モジュールSG1よりも高い周波数の信号を、それぞれ異なる帯域で発生する高周波用のモジュールである。これらの信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPは、それぞれが生成する信号の周波数帯域の相違から、以下に示す共通の構成要素と個別に異なる構成要素とを有している。
【0015】
すなわち、各信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPの共通の構成として、離散フーリエ変換器3から分配された複素スペクトルを逆離散フーリエ変換する逆離散フーリエ変換器10、逆離散フーリエ変換された並列データを直列データ(シリアルデータ)に変換する並直列変換器11、並直列変換器11の出力データを逓倍するインターポレータ12、逓倍された信号から希望周波数帯域のスペクトルを取り出す複素バンドパスフィルタ(複素BPF)13、複素BPF13からの出力をI(In-Phase;同相成分)信号とQ(Quadrature;直交成分)信号とに分離するIQ分離器14、IQ分離されたデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器15、D/A変換されたアナログ信号をフィルタリングしてスプリアス(不必要な成分)を除去するローパスフィルタ(LPF)16が備えられている。
【0016】
また、各信号モジュールで異なる構成としては、以下のものがある。低周波用の信号モジュールSG1は、複素BPF13で帯域制限された信号からIQ分離器14でI信号(実数成分)のみを取り出すため、I信号に対応して1組のD/A変換器15及びLPF16を備えている。このLPF16からのアナログ信号が混合器4に出力される。一方、高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPは、動作周波数帯域が異なるのみで同一の構成であり、IQ分離器14からのI信号(実数成分)とQ信号(複素数成分)とに対応して、D/A変換器15としての2つのD/A変換器15a,15b、及びLPF16としての2つのLPF16a,16bを備える。更に、LPF16aからのI信号とLPF16bからのQ信号とを直交変調する直交変調器17を備えている。
【0017】
低周波用の信号モジュールSG1のLPF16から出力される信号と、高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPの各直交変調器17から出力される信号は、混合器4に入力されて合成され、最終的に目的信号xoutが出力される。尚、高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPからの出力中にDC成分の存在が懸念される場合には、高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPの各直交変調器17と混合器4との間に、必要に応じてBPF或いはLPFを追加するようにしても良い。
【0018】
次に、任意信号発生装置1の動作について説明する。概略的に、任意信号発生装置1は、周波数領域の複素スペクトルを、低サンプリングクロックで動作するP個の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPで分割処理し、それぞれの出力を合成することにより、任意信号を生成する。従来のデジタル信号処理では扱うことが困難な高周波成分は、各モジュールにおける逆離散フーリエ変換出力をアナログ信号処理で直交変調することにより、並列に処理する数である分割Pに反比例した低速のクロックで各信号モジュールSG2,SG3,…,SGPを動作させることで処理することができる。
【0019】
ここで、分割処理による任意信号発生の基本アルゴリズムについて説明する。図2に模式的に示すように、目的信号として時間的に連続したアナログ信号を想定し、このアナログ信号を離散フーリエ変換により周波数領域のスペクトルに変換し、その出力スペクトルを複数の成分に分割する。図2において、A,B,C,Dの4つの成分に分割した例を示す。この4つの成分のうち、最も周波数の低いAの成分がデジタル信号処理の可能な周波数帯域である。
【0020】
成分Aの信号は、逆離散フーリエ変換し、D/A変換する。成分Bの信号は、成分Aの周波数帯域にシフトさせ、逆離散フーリエ変換し、D/A変換によりアナログ信号に変換し、更に、直交変調して周波数帯域を成分Aに隣接する高周波側にシフトする。同様に、成分Cの信号も、成分Aの周波数帯域にシフトさせ、逆離散フーリエ変換し、D/A変換によりアナログ信号に変換し、直交変調により周波数帯域を成分Bに隣接する高周波側にシフトする。同様に、成分Dの信号も、成分Aの周波数帯域にシフトさせ、逆離散フーリエ変換し、D/A変換によりアナログ信号に変換し、直交変調により周波数帯域を成分Cに続く高周波側にシフトする。最後に、アナログ信号に変換した成分Aの信号と、アナログ信号に変換して高周波側にシフトした成分B,C,Dの信号を合成することにより、目的信号と同様の信号を得ることができる。
【0021】
このことは、各信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPに、目的信号の周波数領域の複素スペクトルを分割して与え、各信号モジュールでデジタル信号処理可能な成分を処理すると共に、デジタル信号処理の困難な高周波成分をアナログ信号処理で直交変調することにより、並列数Pに比例した広帯域の任意信号を生成(合成)できることを意味する。1つのモジュールで処理し得る周波数帯域幅をBwとするとき、生成可能な信号の周波数帯域は、Bw・Pとなる。つまり、処理し得る周波数帯域がBwである信号モジュールさえあれば、これを複数用意することで周波数帯域Bw・Pの目的信号を得ることができる。これにより、本形態の任意信号発生装置1では、各モジュールのサンプリング周波数を比較的低い周波数に抑えつつ高い周波数の任意信号を生成することができる。
【0022】
また、ある所定の周波数帯域Bwに対して、分割数Pを増減することにより生成可能な信号の周波数帯域を増減することができ、拡張性の高い信号発生装置を実現することができる。すなわち、目的信号の周波数帯域の状況に応じて動的にPの数を変えることで、不要な信号モジュールの動作を抑制し、消費電力を低減することができる。
【0023】
例えば、目的信号の周波数帯域幅が1GHz、分割数が4である場合、各信号モジュールで250MHzの周波数帯域を扱うことで、目的信号を得ることができる。また等分にせずとも、4つの信号モジュールで全体として1GHzの周波数帯域を扱うことができれば、各信号モジュールで扱うのは不等分の周波数帯域であっても良い。例えば100MHz、200MHz、300MHz、400MHzとすることも可能である。ただし、信号処理の都合上、等分に扱うことが好ましい。以下では、各信号モジュールに等分に分配する例を示す。
【0024】
詳細には、実数の連続信号をx(t)とし、この信号x(t)を離散化した信号をx(n)とする。この信号x(n)を総ポイント数Nで離散フーリエ変換した結果をX(m)とすると、x(n)とX(m)との関係は、以下の(1)式で表される。
但し、n,m=0,1,2,・・・,N−1
【0025】
次に、(1)式を、以下の(2)式のように変形する。
【0026】
ここで、信号X(m)は、実数信号x(n)の離散フーリエ変換であるから、X(1)=X*(N−k)が成り立ち、(2)式は、以下の(3)式で表現することができる。但し、*は共役複素数を示し、k=1,2,…,mである。
【0027】
(3)式において、x(n)が実数信号のとき、X(0),X(N/2)は実数となるから、以下の(4)式で示すことができ、更に、(5)式のように展開することができる。但し、Pは分割数、すなわち並列数を表し、自然数を取るものとする。
【0028】
ここで、(5)式を使って信号X(n)を生成する条件について考える。この条件は、処理の簡素化のため、信号x(n)に含まれる周波数成分のうち、X(N/2)はゼロであるとし、信号x(n)に適当な低域通過フィルタ処理を行えば達成し得る。すなわち、(5)式で表される信号を、サンプリング周波数fsで処理したときに目的信号x(n)が得られるものとし、目的信号x(n)のスペクトラムは、図3に示すようなスペクトラムであるとして、直並列変換器2からの総ポイント数Nのデータを、離散フーリエ変換器3でポイント数N/(2P)の離散フーリエ変換のP組に分割してP個の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPに分配して並列処理することにより、目的信号x(n)を得ることができる。
【0029】
具体的には、離散フーリエ変換器3における離散フーリエ変換は、離散フーリエ変換の対称性を利用して演算量を減らし、高速に変換を行う高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform;FFT)である。離散フーリエ変換器3は、離散フーリエ変換した信号{X(0),X(1),X(2),X(3),…,X(N-1)}のうち、後半のN/2項をフーリエ変換の対称性を利用して除去し、前半の信号成分{X(0)/2,X(1),X(2),X(3),…,X(N/2-1)}をN/(2P)個ずつP組に分割する。
【0030】
分割したP組の最初の信号成分{X(0)/2,X(1),…,X(N/(2P)-1)}は、低周波用の信号モジュールSG1に分配される。次の信号成分{X(N/(2P)),X(N/(2P)+1),…,X(2N/(2P)-1)}が高周波用の信号モジュールSG2に分配される。更に、信号成分{X(2N/(2P)),X(2N/(2P)+1),…,X(3N/(2P)-1)}が信号モジュールSG3に分配される。以下、信号成分{X((i-1)N/(2P)),X((i-1)N/(2P)+1),…,X(iN/(2P)-1)}が高周波用の信号モジュールSGiに分配される。以下、同様に分配されてゆき、最後の信号成分{X((P-1)N/(2P)),X((P−1)N/(2P)+1),…,X(PN/(2P)-1)}が信号モジュールSGPに分配される。
【0031】
すなわち、各信号モジュールにN/2P項の成分が以下の通り分配される。
【0032】
この場合、予め複数の目的信号を離散フーリエ変換して、それらの値をメモリに保存しておき、目的信号の種類に応じて複素スペクトルをメモリから各信号モジュールの逆離散フーリエ変換器10に読み出し、目的信号を生成するようにしても良い。これにより、離散フーリエ変換器3を常に動作させて目的信号の複素スペクトルをその都度求める必要がなくなり、回路規模を小さくできると共に消費電力の低減を図ることができる。
【0033】
低周波用の信号モジュールSG1の処理が(5)式の第1項に対応する。高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPでの各処理が(5)式の第2項以下に対応している。以下、各信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPにおける信号処理について説明する。
【0034】
[低周波用の信号モジュールSG1における信号処理]
信号モジュールSG1のサンプリング周波数をfs/(2P)として、モジュールへの入力成分{X(0)/2,X(1),…,X(N/(2P)-1)}を逆離散フーリエ変換器10で逆離散フーリエ変換する。この逆離散フーリエ変換により以下の(6)式に示す出力が得られる。
【0035】
サンプリング周波数をfs/(2P)としたときの(6)式のスペクトルは、0〜fs/(2P)−fs/Nの周波数範囲において(5)式のスペクトルと等価である。図4に示すように、(6)式のスペクトルは、周波数がfs/(2P)の繰返し信号である。
【0036】
逆離散フーリエ変換10の出力は、並直列変換器11に入力され、N/(2P)項づつシリアルデータに変換され、インターポレータ12で2倍以上のインターポレーションが施されてアップサンプリングされる。本実施の形態においては、2倍のインターポレーションを施す。すなわち、図5に示すように、インターポレータ12出力でのサンプリング周波数が、元の周波数の2倍のfs/Pとなる。ここで、インターポレーションは2倍に限られることはなく、状況に応じて適宜、2倍以上でインターポレーションを行うことが可能である。
【0037】
次に、インターポレータ12の出力は複素BPF13に入力される。これにより、図6に示すように、信号のスペクトルから周波数0〜fs/(2P)−fs/Nの成分のみが取り出される。このとき、逆離散フーリエ変換の(6)式に必要とされるサンプリング周波数は、(5)式で必要とされるサンプリング周波数の1/(2P)倍であるため、信号処理に要求されるサンプリング周波数は並列数Pに反比例することとなり、その結果、大幅にサンプリング周波数を低減することができる。
【0038】
その後、複素BPF13で帯域制限された信号から、IQ分離器14にて実数成分(I成分)のみを取り出し、D/A変換器15にてアナログ信号に変換する。更に、D/A変換器15の出力をLPF16に通し、図7に示すように、スプリアスを除去した周波数0〜fs/(2P)−fs/Nのスペクトルを抽出する。
【0039】
以上が、(5)式の第1項に対応する低周波用の信号モジュールSG1における信号処理であり、(5)式の第2項以下に対応する高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPにおける信号処理と並列的に実行される。
【0040】
[高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPにおける信号処理]
前述したように、高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPにおける信号処理は、(5)式の第2項以下に対応するものである。各モジュールSG2,SG3,…,SGPは、動作周波数帯域が異なるのみで基本的な動作は同様であるため、以下では、主として、信号成分{X(N/(2P)),X(N/(2P)+1),…,X(2N/(2P)-1)}に対する処理を行う信号モジュールSG2で代表して説明する。
【0041】
信号モジュールSG2への入力信号成分{X(N/(2P)),X(N/(2P)+1),…,X(2N/(2P)-1)}は、先ず、逆離散フーリエ変換器10へ入力されて逆離散フーリエ変換される。逆離散フーリエ変換器10は、サンプリング周波数fs/(2P)で信号成分{X(N/(2P)),X(N/(2P)+1),…,X(2N/(2P)-1)}を逆離散フーリエ変換し、以下の(7)式に示す変換結果が得られる。
【0042】
(7)式の信号処理をサンプリング周波数fs/(2P)で行ったとき、そのスペクトルは、周波数0〜fs/(2P)−fs/Nの範囲において、(5)式の第2項の中括弧内{}の複素スペクトルと等価である。図8に示すように、その他の周波数領域では、周波数0〜fs/(2P)−fs/Nのスペクトルの繰り返しとなる。
【0043】
逆離散フーリエ変換10の出力は、並直列変換器11を介してインターポレータ12に入力され、図9に示すように、2倍以上のインターポレーションが施される。更に、インターポレータ12の出力からスプリアスを除去し、周波数成分0〜fs/(2P)−fs/Nの複素スペクトルを抽出するため、インターポレータ12からの出力信号は、複素BPS13に入力される。これにより、図10に示すように、周波数0〜fs/(2P)−fs/Nの成分のみが取り出される。ここで、インターポレーションは2倍に限られることはなく、状況に応じて適宜、2倍以上でインターポレーションを行うことが可能である。また、信号モジュールSG1で行った処理と同じ倍数にする必要性は特にない。異なった倍数で行っても構わない。
【0044】
次に、複素BPS13の出力に、複素正弦波EXP(j・π・fs・t/P)を乗算し、その出力信号の実数部を取り出すことにより、(5)式の第2項が得られる。但し、tは連続の時間変数である。実際には、(5)式の第2項の大括弧[ ]内の成分を得るために、複素BPS13の出力を、IQ分離器14で実数部(I成分)と虚数部(Q成分)に分離する。その上で、それぞれをD/A変換器15a,15bにてアナログ信号に変換する。
【0045】
そして、アナログ信号からスプリアスを除去するため、D/A変換器15a,15bの出力信号を、それぞれ、LPF16a,16bに入力して周波数0〜fs/(2P)−fs/Nの周波数成分のみに帯域制限する。一方のLPF16aによって帯域制限されたI成分信号は、直交変調器17の同相側に入力され、他方のLPF16bによって帯域制限されたQ成分信号は、直交変調器17の直交入力側に入力される。
【0046】
直交変調器17は、fs/(2P)の局部発振周波数でLPF16a,16bからのI,Q信号を直交変調してアップコンバートし、混合器4に出力する。直交変調器17の出力スペクトルは図11に示すようなスペクトルとなり、(5)式の第2項と等価である。
【0047】
他の高周波用の信号モジュールSG3,…,SGPにおいても、同様の信号処理が行われる。すなわち、信号モジュールSG3で、信号成分{X(2N/(2P)),X(2N/(2P)+1),…,X(3N/(2P)-1)}が処理される。以下、同様にして、最後の信号成分{X((P-1)N/(2P)),X((P−1)N/(2P)+1),…,X(PN/(2P)-1)}が信号モジュールSGPで処理される。但し、信号モジュールSG3における直交変調器17の局部発振器周波数は(2fs)/(2P)であり、最後の信号モジュールSGPにおける直交変調器17の局部発振器周波数は、(P−1)・fs/(2P)である。
【0048】
以上の信号処理を行った低周波用の信号モジュールSG1及び高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPの各出力は、混合器4にて合成される。これにより、図12に示す出力スペクトルを有する目的信号xoutが得られる。この目的信号xoutは、(5)式を連続化した信号と等価であるとみなせる。
【0049】
以上のように本実施の形態においては、逆離散フーリエ変換を実現可能な程度の低サンプリング周波数で動作する複数の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPで分割処理する。続いて、実現可能な程度の低サンプリング周波数で動作する逆離散フーリエ変換器10の出力を、直交変調器17でアップコンバートする。最終的に、各信号モジュール出力を混合器4にて合成する。これにより、任意の信号を生成することができる。
【0050】
しかも、精度の高いデジタル信号処理と高速のアナログ信号処理とを組み合わせて信号モジュールを構成し、複数の信号モジュールを並列動作させる。これにより、温度や湿度等の環境変化による性能変化、素子や材料の特性の経年変化による性能変化を低減することができる。さらに、目的信号の帯域幅を増加することができる。
【0051】
また、逆離散フーリエ変換を用いて変調を行っているので、各信号モジュールのスペクトルの振幅と位相とを直接的に制御することができる。さらに、目的信号の周波数とスペクトルを自由に設定することが可能となる。
【0052】
本実施の形態では、目的信号の複素スペクトルを離散フーリエ変換器3で計算し、逆離散フーリエ変換器10,10,…を介して目的信号を生成する例について説明した。ここで、離散フーリエ変換と逆離散フーリエ変換とは変換対であるから、逆離散フーリエ変換を利用して複素スペクトルを求め、離散フーリエ変換を利用して目的信号を生成することも可能である。
【0053】
次に、本発明の実施の第2形態について説明する。図13は本発明の実施の第2形態に係り、任意信号発生装置の構成図である。
【0054】
第2形態は、1つの信号発生装置で目的信号の生成とデータ伝送とを可能とするものであり、第1形態に対して、複数の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPのうち、1つの信号モジュールを、直交周波数多重分割方式(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)によるデータ伝送用の信号モジュールとして構成する。以下、第1形態と相違する部分を中心に説明する。
【0055】
図13は、データ伝送用の信号モジュールSGdとして、第1形態における信号モジュールSG1を割り当てる例を示す。そして、逆離散フーリエ変換器10を、離散フーリエ変換器10Aに変更する。この信号モジュールSGdには、複素数若しくは実数のデータ信号xdが直並列変換器20を介して入力される。入力された信号xdは、離散フーリエ変換器10Aを介してOFDM変調され、混合器4に出力される。
【0056】
他の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPは、第1形態と同様である。時間領域の信号xinが直並列変換器2を介して離散フーリエ変換器3に入力される。入力された信号xinに基づいて、離散フーリエ変換器3で複素スペクトルが計算される。得られた複素スペクトルは、各モジュールの逆離散フーリエ変換器10,10,…で分散処理され、第1形態で説明したように、所定周波数の信号が生成されて混合器4に出力される。
【0057】
これにより、混合器4から目的信号の出力とデータ伝送とを行うことができる。例えば、パルスレーダ用として用いる場合に、レーダパルスの生成とデータの伝送とを1つの信号発生装置で行うことができる。尚、データ伝送と目的信号の生成は、同時に行っても良い。また、サブキャリアの一部若しくは全部を使って時分割で交互に行うようにしても良い。
【0058】
また、目的信号を生成する場合、前述したように、時間領域の目的信号を予め離散フーリエ変換した複素スペクトルをメモリに保存しておき、必要なときにメモリから逆離散フーリエ変換器に読み出し、目的信号を生成するようにしても良い。
【0059】
また、データ伝送用の信号モジュールSGdとして、信号モジュールSG1ではなく、他の信号モジュール、例えばSG2を割り当てることも可能である。これにより、データ伝送を行う周波数を変えることができる。
【0060】
第2形態においては、第1形態と同様、目的信号の周波数とスペクトルを自由に設定することができるばかりでなく、パルスレーダ等に用いる信号の生成とデータ伝送とを1つの装置で実現することができ、コスト増加を抑えつつより適用範囲の広い装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の第1形態に係り、任意信号発生装置の構成図
【図2】同上、分割処理による任意信号発生の基本アルゴリズムを示す説明図
【図3】同上、低周波用信号モジュールでの信号スペクトラムを示す説明図
【図4】同上、低周波用信号モジュールでの逆離散フーリエ変換後のスペクトラムを示す説明図
【図5】同上、低周波用信号モジュールでのインターポレーション後のスペクトラムを示す説明図
【図6】同上、低周波用信号モジュールでの複素バンドパスフィルタによるフィルタリング後のスペクトラムを示す説明図
【図7】同上、低周波用信号モジュールで抽出された信号を示す説明図
【図8】同上、高周波用信号モジュールでの逆離散フーリエ変換後のスペクトラムを示す説明図
【図9】同上、高周波用信号モジュールでのインターポレーション後のスペクトラムを示す説明図
【図10】同上、高周波用信号モジュールでの複素バンドパスフィルタによるフィルタリング後のスペクトラムを示す説明図
【図11】同上、直交変調器の出力スペクトラムを示す説明図
【図12】同上、混合器の出力スペクトラムを示す説明図
【図13】本発明の実施の第2形態に係り、任意信号発生装置の構成図
【符号の説明】
【0062】
1 任意信号発生装置
3 離散フーリエ変換器
4 混合器
10 逆離散フーリエ変換器
12 インターポレータ
17 直交変調器
SG1,…,SGP 信号モジュール
xin 入力信号
xout 目的信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の任意波形の目的信号を生成する任意信号発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルスレーダ等に用いられるパルス幅の小さい信号を生成する技術として、ステップリカバリダイオード、アバランシェダイオード、高速論理ゲート等を用いて任意波形の目的信号を生成する技術が知られている。これらの技術は、アナログ信号処理によりパルス幅の小さい信号を生成する技術であり、温度や湿度等の環境変化による回路特性の変化、素子や材料の特性の経年変化等により、性能が変化する虞がある。
【0003】
また、アナログ信号処理用の回路は、一度作成されると、その後の変更が困難であり、仕様や目的の変更に対して必ずしも自由度が高いとは言えない。例えば、レーダ用の信号発生装置としての用途の場合、レーダの割り当て周波数が変更されても、アナログ回路では対応困難である。さらに、送信波のスペクトルを変更する場合、外付けのフィルタを変更する等の対策が必要であるが、アナログ回路では、送信スペクトルの形状やレベルを適応的に変更することは困難である。
【0004】
このため、近年では、デジタル信号処理によって目的信号を生成する技術が採用されることが多い。このデジタル信号処理による信号発生装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなダイレクトデジタルシンセサイザ(Direct Digital Synthesizer;DDS)が知られている。DDSは、波形データの入ったメモリの指定アドレスを更新して行き、その指定アドレスのデータをD/A変換によりアナログ波形に変換することで、任意の波形を発生させる技術である。
【特許文献1】特開平11−225022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなDDSによる信号発生装置は、基準クロック周波数に同期してその基準クロックの有理数倍の周期を有する信号波形をデジタル的に合成した後、A/D変換を行っている。よって、サンプリング定理により、目的信号に含まれる最高周波数の2倍以上のサンプリング周波数でD/A変換器を動作させなければならない。このため、目的信号のパルス幅を小さくすると、必要とされるサンプリング周波数がパルス幅に反比例して高くなる。よって、生成可能な信号の周波数には限界がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、比較的低い周波数のサンプリング周波数を用いつつ、生成する信号の周波数帯域を拡張することができ、より高周波域までの任意波形の信号を生成可能な任意信号発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による任意信号発生装置は、時間領域の信号から算出した周波数領域のスペクトルを、複数の信号成分に分割して分配する信号分配部と、前記信号分配部から分配された複数の信号成分のそれぞれを時間領域の信号に変換する信号変換部と、前記信号変換部で変換された複数の信号のうち、少なくとも一つ以上の信号の周波数をアップコンバートする周波数変換部と、前記周波数変換部によりアップコンバートされた信号を含む複数の信号を合成して目的信号を出力する信号合成部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比較的低い周波数のサンプリング周波数で動作しながら、発生信号の周波数帯域を拡張することができ、より高周波域までの任意波形の信号を生成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図12は本発明の実施の第1形態に係り、図1は任意信号発生装置の構成図、図2は分割処理による任意信号発生の基本アルゴリズムを示す説明図、図3は低周波用信号モジュールでの信号スペクトラムを示す説明図、図4は低周波用信号モジュールでの逆離散フーリエ変換後のスペクトラムを示す説明図、図5は低周波用信号モジュールでのインターポレーション後のスペクトラムを示す説明図、図6は低周波用信号モジュールでの複素バンドパスフィルタによるフィルタリング後のスペクトラムを示す説明図、図7は低周波用信号モジュールで抽出された信号を示す説明図、図8は高周波用信号モジュールでの逆離散フーリエ変換後のスペクトラムを示す説明図、図9は高周波用信号モジュールでのインターポレーション後のスペクトラムを示す説明図、図10は高周波用信号モジュールでの複素バンドパスフィルタによるフィルタリング後のスペクトラムを示す説明図、図11は直交変調器の出力スペクトラムを示す説明図、図12は混合器の出力スペクトラムを示す説明図である。
【0010】
図1に示す任意信号発生装置1には、生成したい任意の周波数帯域の目的信号を時間領域で離散化したデータが入力信号xinとして与えられる。この入力信号xinをデジタル信号処理して実際の目的信号xoutを生成する。従来のデジタル信号処理では、精度は高いが扱える周波数は比較的低いため、任意の広帯域の信号を処理することは難しい。本発明では、任意の目的信号をデジタル信号処理が可能なP組の信号に分割して並列処理を行う。信号処理の都合上、分割数は2のべき乗が好ましい。すなわちN/P=2a(aは任意の自然数)が好ましい。ただし、2のべき乗に限ることなく、任意の数で分割して処理することが可能である。
【0011】
この任意信号発生装置1は、入力信号xinをN個の並列データに変換する直並列変換器2、N個の並列データを離散フーリエ変換して周波数領域でP組の信号成分に分割し、各周波数領域毎のデータ(複素スペクトル)をP個の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPに分配する離散フーリエ変換器3、離散フーリエ変換器3から分配された複素スペクトルを並列で処理し、互いに異なる周波数の信号を発生するP個の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGP、信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPの各出力を合成し、任意の周波数帯域の目的信号xoutを出力する混合器4を備えて構成されている。
【0012】
尚、本実施の形態ではP個の信号モジュールはそれぞれ互いに異なる周波数の信号を発生する、換言すればそれぞれ重なる周波数領域の信号を扱わないこととしているが、これに限られない。複数の信号モジュールで重複して扱う周波数領域が存在していても、それを考慮して目的信号を設定することで、本発明の信号処理に関しては問題は生じない。
【0013】
また、目的信号の周波数帯域内に、出力を希望しない特定の周波数領域が存在している場合には、その特定の周波数領域をいずれの信号モジュールでも扱わないことで、特定の周波数領域の信号を含まない目的信号を得ることができる。例えば法規制等により出力を制限されている周波数領域が存在している場合に、その周波数領域を扱わないことで、法規制に対応した目的信号を得ることができる。
【0014】
各信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPは、1つのモジュールSG1が最も低い周波数の信号を生成する低周波用のモジュールであり、他のモジュールSG2,SG3,…,SGPは、モジュールSG1よりも高い周波数の信号を、それぞれ異なる帯域で発生する高周波用のモジュールである。これらの信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPは、それぞれが生成する信号の周波数帯域の相違から、以下に示す共通の構成要素と個別に異なる構成要素とを有している。
【0015】
すなわち、各信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPの共通の構成として、離散フーリエ変換器3から分配された複素スペクトルを逆離散フーリエ変換する逆離散フーリエ変換器10、逆離散フーリエ変換された並列データを直列データ(シリアルデータ)に変換する並直列変換器11、並直列変換器11の出力データを逓倍するインターポレータ12、逓倍された信号から希望周波数帯域のスペクトルを取り出す複素バンドパスフィルタ(複素BPF)13、複素BPF13からの出力をI(In-Phase;同相成分)信号とQ(Quadrature;直交成分)信号とに分離するIQ分離器14、IQ分離されたデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器15、D/A変換されたアナログ信号をフィルタリングしてスプリアス(不必要な成分)を除去するローパスフィルタ(LPF)16が備えられている。
【0016】
また、各信号モジュールで異なる構成としては、以下のものがある。低周波用の信号モジュールSG1は、複素BPF13で帯域制限された信号からIQ分離器14でI信号(実数成分)のみを取り出すため、I信号に対応して1組のD/A変換器15及びLPF16を備えている。このLPF16からのアナログ信号が混合器4に出力される。一方、高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPは、動作周波数帯域が異なるのみで同一の構成であり、IQ分離器14からのI信号(実数成分)とQ信号(複素数成分)とに対応して、D/A変換器15としての2つのD/A変換器15a,15b、及びLPF16としての2つのLPF16a,16bを備える。更に、LPF16aからのI信号とLPF16bからのQ信号とを直交変調する直交変調器17を備えている。
【0017】
低周波用の信号モジュールSG1のLPF16から出力される信号と、高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPの各直交変調器17から出力される信号は、混合器4に入力されて合成され、最終的に目的信号xoutが出力される。尚、高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPからの出力中にDC成分の存在が懸念される場合には、高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPの各直交変調器17と混合器4との間に、必要に応じてBPF或いはLPFを追加するようにしても良い。
【0018】
次に、任意信号発生装置1の動作について説明する。概略的に、任意信号発生装置1は、周波数領域の複素スペクトルを、低サンプリングクロックで動作するP個の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPで分割処理し、それぞれの出力を合成することにより、任意信号を生成する。従来のデジタル信号処理では扱うことが困難な高周波成分は、各モジュールにおける逆離散フーリエ変換出力をアナログ信号処理で直交変調することにより、並列に処理する数である分割Pに反比例した低速のクロックで各信号モジュールSG2,SG3,…,SGPを動作させることで処理することができる。
【0019】
ここで、分割処理による任意信号発生の基本アルゴリズムについて説明する。図2に模式的に示すように、目的信号として時間的に連続したアナログ信号を想定し、このアナログ信号を離散フーリエ変換により周波数領域のスペクトルに変換し、その出力スペクトルを複数の成分に分割する。図2において、A,B,C,Dの4つの成分に分割した例を示す。この4つの成分のうち、最も周波数の低いAの成分がデジタル信号処理の可能な周波数帯域である。
【0020】
成分Aの信号は、逆離散フーリエ変換し、D/A変換する。成分Bの信号は、成分Aの周波数帯域にシフトさせ、逆離散フーリエ変換し、D/A変換によりアナログ信号に変換し、更に、直交変調して周波数帯域を成分Aに隣接する高周波側にシフトする。同様に、成分Cの信号も、成分Aの周波数帯域にシフトさせ、逆離散フーリエ変換し、D/A変換によりアナログ信号に変換し、直交変調により周波数帯域を成分Bに隣接する高周波側にシフトする。同様に、成分Dの信号も、成分Aの周波数帯域にシフトさせ、逆離散フーリエ変換し、D/A変換によりアナログ信号に変換し、直交変調により周波数帯域を成分Cに続く高周波側にシフトする。最後に、アナログ信号に変換した成分Aの信号と、アナログ信号に変換して高周波側にシフトした成分B,C,Dの信号を合成することにより、目的信号と同様の信号を得ることができる。
【0021】
このことは、各信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPに、目的信号の周波数領域の複素スペクトルを分割して与え、各信号モジュールでデジタル信号処理可能な成分を処理すると共に、デジタル信号処理の困難な高周波成分をアナログ信号処理で直交変調することにより、並列数Pに比例した広帯域の任意信号を生成(合成)できることを意味する。1つのモジュールで処理し得る周波数帯域幅をBwとするとき、生成可能な信号の周波数帯域は、Bw・Pとなる。つまり、処理し得る周波数帯域がBwである信号モジュールさえあれば、これを複数用意することで周波数帯域Bw・Pの目的信号を得ることができる。これにより、本形態の任意信号発生装置1では、各モジュールのサンプリング周波数を比較的低い周波数に抑えつつ高い周波数の任意信号を生成することができる。
【0022】
また、ある所定の周波数帯域Bwに対して、分割数Pを増減することにより生成可能な信号の周波数帯域を増減することができ、拡張性の高い信号発生装置を実現することができる。すなわち、目的信号の周波数帯域の状況に応じて動的にPの数を変えることで、不要な信号モジュールの動作を抑制し、消費電力を低減することができる。
【0023】
例えば、目的信号の周波数帯域幅が1GHz、分割数が4である場合、各信号モジュールで250MHzの周波数帯域を扱うことで、目的信号を得ることができる。また等分にせずとも、4つの信号モジュールで全体として1GHzの周波数帯域を扱うことができれば、各信号モジュールで扱うのは不等分の周波数帯域であっても良い。例えば100MHz、200MHz、300MHz、400MHzとすることも可能である。ただし、信号処理の都合上、等分に扱うことが好ましい。以下では、各信号モジュールに等分に分配する例を示す。
【0024】
詳細には、実数の連続信号をx(t)とし、この信号x(t)を離散化した信号をx(n)とする。この信号x(n)を総ポイント数Nで離散フーリエ変換した結果をX(m)とすると、x(n)とX(m)との関係は、以下の(1)式で表される。
但し、n,m=0,1,2,・・・,N−1
【0025】
次に、(1)式を、以下の(2)式のように変形する。
【0026】
ここで、信号X(m)は、実数信号x(n)の離散フーリエ変換であるから、X(1)=X*(N−k)が成り立ち、(2)式は、以下の(3)式で表現することができる。但し、*は共役複素数を示し、k=1,2,…,mである。
【0027】
(3)式において、x(n)が実数信号のとき、X(0),X(N/2)は実数となるから、以下の(4)式で示すことができ、更に、(5)式のように展開することができる。但し、Pは分割数、すなわち並列数を表し、自然数を取るものとする。
【0028】
ここで、(5)式を使って信号X(n)を生成する条件について考える。この条件は、処理の簡素化のため、信号x(n)に含まれる周波数成分のうち、X(N/2)はゼロであるとし、信号x(n)に適当な低域通過フィルタ処理を行えば達成し得る。すなわち、(5)式で表される信号を、サンプリング周波数fsで処理したときに目的信号x(n)が得られるものとし、目的信号x(n)のスペクトラムは、図3に示すようなスペクトラムであるとして、直並列変換器2からの総ポイント数Nのデータを、離散フーリエ変換器3でポイント数N/(2P)の離散フーリエ変換のP組に分割してP個の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPに分配して並列処理することにより、目的信号x(n)を得ることができる。
【0029】
具体的には、離散フーリエ変換器3における離散フーリエ変換は、離散フーリエ変換の対称性を利用して演算量を減らし、高速に変換を行う高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform;FFT)である。離散フーリエ変換器3は、離散フーリエ変換した信号{X(0),X(1),X(2),X(3),…,X(N-1)}のうち、後半のN/2項をフーリエ変換の対称性を利用して除去し、前半の信号成分{X(0)/2,X(1),X(2),X(3),…,X(N/2-1)}をN/(2P)個ずつP組に分割する。
【0030】
分割したP組の最初の信号成分{X(0)/2,X(1),…,X(N/(2P)-1)}は、低周波用の信号モジュールSG1に分配される。次の信号成分{X(N/(2P)),X(N/(2P)+1),…,X(2N/(2P)-1)}が高周波用の信号モジュールSG2に分配される。更に、信号成分{X(2N/(2P)),X(2N/(2P)+1),…,X(3N/(2P)-1)}が信号モジュールSG3に分配される。以下、信号成分{X((i-1)N/(2P)),X((i-1)N/(2P)+1),…,X(iN/(2P)-1)}が高周波用の信号モジュールSGiに分配される。以下、同様に分配されてゆき、最後の信号成分{X((P-1)N/(2P)),X((P−1)N/(2P)+1),…,X(PN/(2P)-1)}が信号モジュールSGPに分配される。
【0031】
すなわち、各信号モジュールにN/2P項の成分が以下の通り分配される。
【0032】
この場合、予め複数の目的信号を離散フーリエ変換して、それらの値をメモリに保存しておき、目的信号の種類に応じて複素スペクトルをメモリから各信号モジュールの逆離散フーリエ変換器10に読み出し、目的信号を生成するようにしても良い。これにより、離散フーリエ変換器3を常に動作させて目的信号の複素スペクトルをその都度求める必要がなくなり、回路規模を小さくできると共に消費電力の低減を図ることができる。
【0033】
低周波用の信号モジュールSG1の処理が(5)式の第1項に対応する。高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPでの各処理が(5)式の第2項以下に対応している。以下、各信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPにおける信号処理について説明する。
【0034】
[低周波用の信号モジュールSG1における信号処理]
信号モジュールSG1のサンプリング周波数をfs/(2P)として、モジュールへの入力成分{X(0)/2,X(1),…,X(N/(2P)-1)}を逆離散フーリエ変換器10で逆離散フーリエ変換する。この逆離散フーリエ変換により以下の(6)式に示す出力が得られる。
【0035】
サンプリング周波数をfs/(2P)としたときの(6)式のスペクトルは、0〜fs/(2P)−fs/Nの周波数範囲において(5)式のスペクトルと等価である。図4に示すように、(6)式のスペクトルは、周波数がfs/(2P)の繰返し信号である。
【0036】
逆離散フーリエ変換10の出力は、並直列変換器11に入力され、N/(2P)項づつシリアルデータに変換され、インターポレータ12で2倍以上のインターポレーションが施されてアップサンプリングされる。本実施の形態においては、2倍のインターポレーションを施す。すなわち、図5に示すように、インターポレータ12出力でのサンプリング周波数が、元の周波数の2倍のfs/Pとなる。ここで、インターポレーションは2倍に限られることはなく、状況に応じて適宜、2倍以上でインターポレーションを行うことが可能である。
【0037】
次に、インターポレータ12の出力は複素BPF13に入力される。これにより、図6に示すように、信号のスペクトルから周波数0〜fs/(2P)−fs/Nの成分のみが取り出される。このとき、逆離散フーリエ変換の(6)式に必要とされるサンプリング周波数は、(5)式で必要とされるサンプリング周波数の1/(2P)倍であるため、信号処理に要求されるサンプリング周波数は並列数Pに反比例することとなり、その結果、大幅にサンプリング周波数を低減することができる。
【0038】
その後、複素BPF13で帯域制限された信号から、IQ分離器14にて実数成分(I成分)のみを取り出し、D/A変換器15にてアナログ信号に変換する。更に、D/A変換器15の出力をLPF16に通し、図7に示すように、スプリアスを除去した周波数0〜fs/(2P)−fs/Nのスペクトルを抽出する。
【0039】
以上が、(5)式の第1項に対応する低周波用の信号モジュールSG1における信号処理であり、(5)式の第2項以下に対応する高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPにおける信号処理と並列的に実行される。
【0040】
[高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPにおける信号処理]
前述したように、高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPにおける信号処理は、(5)式の第2項以下に対応するものである。各モジュールSG2,SG3,…,SGPは、動作周波数帯域が異なるのみで基本的な動作は同様であるため、以下では、主として、信号成分{X(N/(2P)),X(N/(2P)+1),…,X(2N/(2P)-1)}に対する処理を行う信号モジュールSG2で代表して説明する。
【0041】
信号モジュールSG2への入力信号成分{X(N/(2P)),X(N/(2P)+1),…,X(2N/(2P)-1)}は、先ず、逆離散フーリエ変換器10へ入力されて逆離散フーリエ変換される。逆離散フーリエ変換器10は、サンプリング周波数fs/(2P)で信号成分{X(N/(2P)),X(N/(2P)+1),…,X(2N/(2P)-1)}を逆離散フーリエ変換し、以下の(7)式に示す変換結果が得られる。
【0042】
(7)式の信号処理をサンプリング周波数fs/(2P)で行ったとき、そのスペクトルは、周波数0〜fs/(2P)−fs/Nの範囲において、(5)式の第2項の中括弧内{}の複素スペクトルと等価である。図8に示すように、その他の周波数領域では、周波数0〜fs/(2P)−fs/Nのスペクトルの繰り返しとなる。
【0043】
逆離散フーリエ変換10の出力は、並直列変換器11を介してインターポレータ12に入力され、図9に示すように、2倍以上のインターポレーションが施される。更に、インターポレータ12の出力からスプリアスを除去し、周波数成分0〜fs/(2P)−fs/Nの複素スペクトルを抽出するため、インターポレータ12からの出力信号は、複素BPS13に入力される。これにより、図10に示すように、周波数0〜fs/(2P)−fs/Nの成分のみが取り出される。ここで、インターポレーションは2倍に限られることはなく、状況に応じて適宜、2倍以上でインターポレーションを行うことが可能である。また、信号モジュールSG1で行った処理と同じ倍数にする必要性は特にない。異なった倍数で行っても構わない。
【0044】
次に、複素BPS13の出力に、複素正弦波EXP(j・π・fs・t/P)を乗算し、その出力信号の実数部を取り出すことにより、(5)式の第2項が得られる。但し、tは連続の時間変数である。実際には、(5)式の第2項の大括弧[ ]内の成分を得るために、複素BPS13の出力を、IQ分離器14で実数部(I成分)と虚数部(Q成分)に分離する。その上で、それぞれをD/A変換器15a,15bにてアナログ信号に変換する。
【0045】
そして、アナログ信号からスプリアスを除去するため、D/A変換器15a,15bの出力信号を、それぞれ、LPF16a,16bに入力して周波数0〜fs/(2P)−fs/Nの周波数成分のみに帯域制限する。一方のLPF16aによって帯域制限されたI成分信号は、直交変調器17の同相側に入力され、他方のLPF16bによって帯域制限されたQ成分信号は、直交変調器17の直交入力側に入力される。
【0046】
直交変調器17は、fs/(2P)の局部発振周波数でLPF16a,16bからのI,Q信号を直交変調してアップコンバートし、混合器4に出力する。直交変調器17の出力スペクトルは図11に示すようなスペクトルとなり、(5)式の第2項と等価である。
【0047】
他の高周波用の信号モジュールSG3,…,SGPにおいても、同様の信号処理が行われる。すなわち、信号モジュールSG3で、信号成分{X(2N/(2P)),X(2N/(2P)+1),…,X(3N/(2P)-1)}が処理される。以下、同様にして、最後の信号成分{X((P-1)N/(2P)),X((P−1)N/(2P)+1),…,X(PN/(2P)-1)}が信号モジュールSGPで処理される。但し、信号モジュールSG3における直交変調器17の局部発振器周波数は(2fs)/(2P)であり、最後の信号モジュールSGPにおける直交変調器17の局部発振器周波数は、(P−1)・fs/(2P)である。
【0048】
以上の信号処理を行った低周波用の信号モジュールSG1及び高周波用の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPの各出力は、混合器4にて合成される。これにより、図12に示す出力スペクトルを有する目的信号xoutが得られる。この目的信号xoutは、(5)式を連続化した信号と等価であるとみなせる。
【0049】
以上のように本実施の形態においては、逆離散フーリエ変換を実現可能な程度の低サンプリング周波数で動作する複数の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPで分割処理する。続いて、実現可能な程度の低サンプリング周波数で動作する逆離散フーリエ変換器10の出力を、直交変調器17でアップコンバートする。最終的に、各信号モジュール出力を混合器4にて合成する。これにより、任意の信号を生成することができる。
【0050】
しかも、精度の高いデジタル信号処理と高速のアナログ信号処理とを組み合わせて信号モジュールを構成し、複数の信号モジュールを並列動作させる。これにより、温度や湿度等の環境変化による性能変化、素子や材料の特性の経年変化による性能変化を低減することができる。さらに、目的信号の帯域幅を増加することができる。
【0051】
また、逆離散フーリエ変換を用いて変調を行っているので、各信号モジュールのスペクトルの振幅と位相とを直接的に制御することができる。さらに、目的信号の周波数とスペクトルを自由に設定することが可能となる。
【0052】
本実施の形態では、目的信号の複素スペクトルを離散フーリエ変換器3で計算し、逆離散フーリエ変換器10,10,…を介して目的信号を生成する例について説明した。ここで、離散フーリエ変換と逆離散フーリエ変換とは変換対であるから、逆離散フーリエ変換を利用して複素スペクトルを求め、離散フーリエ変換を利用して目的信号を生成することも可能である。
【0053】
次に、本発明の実施の第2形態について説明する。図13は本発明の実施の第2形態に係り、任意信号発生装置の構成図である。
【0054】
第2形態は、1つの信号発生装置で目的信号の生成とデータ伝送とを可能とするものであり、第1形態に対して、複数の信号モジュールSG1,SG2,SG3,…,SGPのうち、1つの信号モジュールを、直交周波数多重分割方式(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)によるデータ伝送用の信号モジュールとして構成する。以下、第1形態と相違する部分を中心に説明する。
【0055】
図13は、データ伝送用の信号モジュールSGdとして、第1形態における信号モジュールSG1を割り当てる例を示す。そして、逆離散フーリエ変換器10を、離散フーリエ変換器10Aに変更する。この信号モジュールSGdには、複素数若しくは実数のデータ信号xdが直並列変換器20を介して入力される。入力された信号xdは、離散フーリエ変換器10Aを介してOFDM変調され、混合器4に出力される。
【0056】
他の信号モジュールSG2,SG3,…,SGPは、第1形態と同様である。時間領域の信号xinが直並列変換器2を介して離散フーリエ変換器3に入力される。入力された信号xinに基づいて、離散フーリエ変換器3で複素スペクトルが計算される。得られた複素スペクトルは、各モジュールの逆離散フーリエ変換器10,10,…で分散処理され、第1形態で説明したように、所定周波数の信号が生成されて混合器4に出力される。
【0057】
これにより、混合器4から目的信号の出力とデータ伝送とを行うことができる。例えば、パルスレーダ用として用いる場合に、レーダパルスの生成とデータの伝送とを1つの信号発生装置で行うことができる。尚、データ伝送と目的信号の生成は、同時に行っても良い。また、サブキャリアの一部若しくは全部を使って時分割で交互に行うようにしても良い。
【0058】
また、目的信号を生成する場合、前述したように、時間領域の目的信号を予め離散フーリエ変換した複素スペクトルをメモリに保存しておき、必要なときにメモリから逆離散フーリエ変換器に読み出し、目的信号を生成するようにしても良い。
【0059】
また、データ伝送用の信号モジュールSGdとして、信号モジュールSG1ではなく、他の信号モジュール、例えばSG2を割り当てることも可能である。これにより、データ伝送を行う周波数を変えることができる。
【0060】
第2形態においては、第1形態と同様、目的信号の周波数とスペクトルを自由に設定することができるばかりでなく、パルスレーダ等に用いる信号の生成とデータ伝送とを1つの装置で実現することができ、コスト増加を抑えつつより適用範囲の広い装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の第1形態に係り、任意信号発生装置の構成図
【図2】同上、分割処理による任意信号発生の基本アルゴリズムを示す説明図
【図3】同上、低周波用信号モジュールでの信号スペクトラムを示す説明図
【図4】同上、低周波用信号モジュールでの逆離散フーリエ変換後のスペクトラムを示す説明図
【図5】同上、低周波用信号モジュールでのインターポレーション後のスペクトラムを示す説明図
【図6】同上、低周波用信号モジュールでの複素バンドパスフィルタによるフィルタリング後のスペクトラムを示す説明図
【図7】同上、低周波用信号モジュールで抽出された信号を示す説明図
【図8】同上、高周波用信号モジュールでの逆離散フーリエ変換後のスペクトラムを示す説明図
【図9】同上、高周波用信号モジュールでのインターポレーション後のスペクトラムを示す説明図
【図10】同上、高周波用信号モジュールでの複素バンドパスフィルタによるフィルタリング後のスペクトラムを示す説明図
【図11】同上、直交変調器の出力スペクトラムを示す説明図
【図12】同上、混合器の出力スペクトラムを示す説明図
【図13】本発明の実施の第2形態に係り、任意信号発生装置の構成図
【符号の説明】
【0062】
1 任意信号発生装置
3 離散フーリエ変換器
4 混合器
10 逆離散フーリエ変換器
12 インターポレータ
17 直交変調器
SG1,…,SGP 信号モジュール
xin 入力信号
xout 目的信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間領域の信号から算出した周波数領域のスペクトルを、複数の信号成分に分割して分配する信号分配部と、
前記信号分配部から分配された複数の信号成分のそれぞれを時間領域の信号に変換する信号変換部と、
前記信号変換部で変換された複数の信号のうち、少なくとも一つ以上の信号の周波数をアップコンバートする周波数変換部と、
前記周波数変換部によりアップコンバートされた信号を含む複数の信号を合成して目的信号を出力する信号合成部と
を備えることを特徴とする任意信号発生装置。
【請求項2】
前記信号変換部による処理は、前記目的信号の周波数帯域と比較して狭い所定の周波数帯域内で処理されることを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項3】
前記狭い所定の周波数帯域は、前記目的信号の周波数帯域幅を、前記信号分配部による前記信号成分への分割数で割った値であることを特徴とする請求項2記載の任意信号発生装置。
【請求項4】
前記信号変換部による処理はデジタル信号処理であり、前記周波数変換部による処理はアナログ信号処理であることを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項5】
前記信号分配部による処理はデジタル信号処理であることを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項6】
前記信号合成部による処理はアナログ信号処理であることを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項7】
前記信号変換部により変換された複数の信号を、前記周波数変換部によるアップコンバートを介して互いに重なる領域を含む周波数帯域の複数の信号に変換することを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項8】
前記信号変換部により変換された複数の信号を、前記周波数変換部によるアップコンバートを介して互いに重ならない周波数帯域の複数の信号に変換することを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項9】
前記目的信号の出力スペクトルを構成する複数のキャリアのうちの一部をデータ信号で変調してデータ伝送を行うことを特徴とする請求項1〜8の何れか一に記載の任意信号発生装置。
【請求項10】
前記目的信号の出力スペクトルを構成する複数のキャリアのうちの一部又は全部をデータ信号で変調してデータ伝送を行う処理と、前記複数のキャリアのうちの一部又は全部で前記目的信号を発生させる処理とを時分割で交互に行うことを特徴とする請求項1〜9の何れか一に記載の任意信号発生装置。
【請求項11】
前記アップコンバートを、直交変調によるパスバンド信号の取得によって行うことを特徴とする請求項1〜10の何れか一に記載の任意信号発生装置。
【請求項12】
前記目的信号を、パルスレーダの送信信号とすることを特徴とする請求項1〜11の何れか一に記載の任意信号発生装置。
【請求項1】
時間領域の信号から算出した周波数領域のスペクトルを、複数の信号成分に分割して分配する信号分配部と、
前記信号分配部から分配された複数の信号成分のそれぞれを時間領域の信号に変換する信号変換部と、
前記信号変換部で変換された複数の信号のうち、少なくとも一つ以上の信号の周波数をアップコンバートする周波数変換部と、
前記周波数変換部によりアップコンバートされた信号を含む複数の信号を合成して目的信号を出力する信号合成部と
を備えることを特徴とする任意信号発生装置。
【請求項2】
前記信号変換部による処理は、前記目的信号の周波数帯域と比較して狭い所定の周波数帯域内で処理されることを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項3】
前記狭い所定の周波数帯域は、前記目的信号の周波数帯域幅を、前記信号分配部による前記信号成分への分割数で割った値であることを特徴とする請求項2記載の任意信号発生装置。
【請求項4】
前記信号変換部による処理はデジタル信号処理であり、前記周波数変換部による処理はアナログ信号処理であることを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項5】
前記信号分配部による処理はデジタル信号処理であることを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項6】
前記信号合成部による処理はアナログ信号処理であることを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項7】
前記信号変換部により変換された複数の信号を、前記周波数変換部によるアップコンバートを介して互いに重なる領域を含む周波数帯域の複数の信号に変換することを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項8】
前記信号変換部により変換された複数の信号を、前記周波数変換部によるアップコンバートを介して互いに重ならない周波数帯域の複数の信号に変換することを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項9】
前記目的信号の出力スペクトルを構成する複数のキャリアのうちの一部をデータ信号で変調してデータ伝送を行うことを特徴とする請求項1〜8の何れか一に記載の任意信号発生装置。
【請求項10】
前記目的信号の出力スペクトルを構成する複数のキャリアのうちの一部又は全部をデータ信号で変調してデータ伝送を行う処理と、前記複数のキャリアのうちの一部又は全部で前記目的信号を発生させる処理とを時分割で交互に行うことを特徴とする請求項1〜9の何れか一に記載の任意信号発生装置。
【請求項11】
前記アップコンバートを、直交変調によるパスバンド信号の取得によって行うことを特徴とする請求項1〜10の何れか一に記載の任意信号発生装置。
【請求項12】
前記目的信号を、パルスレーダの送信信号とすることを特徴とする請求項1〜11の何れか一に記載の任意信号発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−127645(P2010−127645A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299937(P2008−299937)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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