任意信号発生装置
【課題】比較的低い周波数のサンプリング周波数を用いつつ、生成する信号の周波数帯域を拡張し、より高周波域までの任意波形の信号を生成可能とする。
【解決手段】目的信号を複数の周波数領域で分割し、コントローラ2から各信号処理モジュールM1〜M4に各周波数領域のスペクトル情報を与え、各モジュールで各周波数領域の信号を生成して混合器3で合成することにより、必要なサンプリング周波数を低減しつつ目的信号を得る。このとき、コントローラ2は、信号処理モジュール毎の遅延時間差に相当する初期位相分で各信号処理モジュールへ入力するスペクトル情報(位相)を補正し、更に、信号処理モジュール毎の遅延時間差に起因した出力データの立ち上がり部分,立下り部分の少なくとも一方の不連続点を、混合器3の出力段に設けたスイッチ部4を介して除去する。
【解決手段】目的信号を複数の周波数領域で分割し、コントローラ2から各信号処理モジュールM1〜M4に各周波数領域のスペクトル情報を与え、各モジュールで各周波数領域の信号を生成して混合器3で合成することにより、必要なサンプリング周波数を低減しつつ目的信号を得る。このとき、コントローラ2は、信号処理モジュール毎の遅延時間差に相当する初期位相分で各信号処理モジュールへ入力するスペクトル情報(位相)を補正し、更に、信号処理モジュール毎の遅延時間差に起因した出力データの立ち上がり部分,立下り部分の少なくとも一方の不連続点を、混合器3の出力段に設けたスイッチ部4を介して除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の任意波形の目的信号を生成する任意信号発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルスレーダ等に用いられるパルス幅の小さい信号を生成する技術として、ステップリカバリダイオード、アバランシェダイオード、高速論理ゲート等を用いて目的信号を生成する技術が知られている。これらの技術は、アナログ信号処理によりパルス幅の小さい信号を生成する技術であり、温度や湿度等の環境変化による回路特性の変化、素子や材料の特性の経年変化等により、性能が変化する虞がある。
【0003】
また、アナログ信号処理用の回路は、一度作成されると、その後の変更が困難であり、仕様や目的の変更に対して必ずしも自由度が高いとは言えない。例えば、レーダ用の信号発生装置としての用途の場合、レーダの割り当て周波数が変更されても、アナログ回路では対応困難である。さらに、送信波のスペクトルを変更する場合、外付けのフィルタを変更する等の対策が必要であるが、アナログ回路では、送信スペクトルの形状やレベルを適応的に変更することは困難である。
【0004】
このため、近年では、デジタル信号処理によって目的信号を生成する技術が採用されることが多い。このデジタル信号処理による信号発生装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなダイレクトデジタルシンセサイザ(Direct Digital Synthesizer;DDS)が知られている。DDSは、波形データの入ったメモリの指定アドレスを更新して行き、その指定アドレスのデータをD/A変換によりアナログ波形に変換することで、任意の波形を発生させる技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−225022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなDDSによる信号発生装置は、基準クロック周波数に同期してその基準クロックの有理数倍の周期を有する信号波形をデジタル的に合成した後、D/A変換を行っている。よって、サンプリング定理により、目的信号に含まれる最高周波数の2倍以上のサンプリング周波数でD/A変換器を動作させなければならない。このため、目的信号のパルス幅を小さくすると、必要とされるサンプリング周波数がパルス幅に反比例して高くなる。よって、生成可能な信号の周波数には限界がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、比較的低い周波数のサンプリング周波数を用いつつ、生成する信号の周波数帯域を拡張することができ、より高周波域までの任意波形の信号を生成可能な任意信号発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明による任意信号発生装置は、広帯域の任意波形の目的信号を生成する任意信号発生装置であって、周波数領域毎の入力データに基づいて、互いに異なる周波数領域の信号を生成する複数の信号生成部と、上記複数の信号生成部からの出力を合成する信号合成部と、上記信号合成部で合成された合成信号の通過と遮断を行い、上記目的信号として出力するスイッチ部と、上記複数の信号生成部から上記信号合成部に至るまでの各信号の遅延時間の差に基づいて上記入力データを補正し、上記複数の信号生成部で生成される各信号の相対位相を調整すると共に、上記遅延時間の差に起因する上記合成信号の不連続部分を上記スイッチ部を介して除去する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比較的低い周波数のサンプリング周波数で動作しながら、発生信号の周波数帯域を拡張することができ、より高周波域までの任意波形の信号を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の第1形態に係り、任意信号発生装置の構成図
【図2】同上、目的信号のスペクトルを示す説明図
【図3】同上、A領域をシフトした信号のスペクトルを示す説明図
【図4】同上、第1の信号処理モジュールの出力スペクトルを示す説明図
【図5】同上、B領域をシフトした信号のスペクトルを示す説明図
【図6】同上、第2の信号処理モジュールの出力スペクトルを示す説明図
【図7】同上、C領域をシフトした信号のスペクトルを示す説明図
【図8】同上、第3の信号処理モジュールの出力スペクトルを示す説明図
【図9】同上、D領域をシフトした信号のスペクトルを示す説明図
【図10】同上、第4の信号処理モジュールの出力スペクトルを示す説明図
【図11】同上、遅延及び減衰のない理想信号を示す波形図
【図12】同上、遅延のある信号を示す波形図
【図13】同上、図12の信号を合成した信号を示す波形図
【図14】同上、遅延相当の位相を加算した信号を示す波形図
【図15】同上、図14の信号を合成した信号を示す波形図
【図16】同上、図15の合成信号の立ち上がり部を除去した信号を示す波形図
【図17】本発明の実施の第2形態に係り、繰り返し出力を示す波形図
【図18】同上、遅延差のある信号を合成した信号を示す波形図
【図19】同上、遅延相当の位相を加算した信号及びその合成信号を示す波形図
【図20】同上、図19の合成信号の立ち上がり部を除去した信号を示す波形図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1に示す任意信号発生装置1は、所望する任意の周波数の目的信号を複数の異なる周波数帯域に分割してデジタル信号処理し、生成した各信号を合成することにより、目的信号を得るものである。本実施の形態においては、図2に示すようなスペクトルを有する最高周波数Fmaxの目的信号を生成するものとする。このとき周波数をf,複素スペクトルをH(f)で表わすとすれば、複素スペクトルは、H(f)=H*(−f)を満たす。但し、*は共役複素数を示すものとする。
【0012】
このようなスペクトルを有する信号をデジタル信号処理により生成するには、サンプリング定理より2Fmax以上のサンプリング周波数が必要となる。しかしながら、デジタル信号処理可能な周波数は限られており、目的信号の最高周波数Fmaxが高い場合には、直接的に信号を生成することは困難である。
【0013】
そこで、0(直流成分)からFmaxまでの周波数領域を複数の領域に分割し、各周波数領域で生成した信号を合成することで、目的信号を得る。周波数領域の分割数は、任意の自然数で良く、また、分割領域は均等でも不均等でも良い。例えば、本出願人が先に提出した特願2008−299937号に詳述されているように、目的信号を総ポイント数Nで離散フーリエ変換し、離散フーリエ変換したデータを複数組に分割して並列処理することにより、必要なサンプリング周波数を低減しつつ目的信号を合成することができる。
【0014】
本実施の形態においては、0(直流成分)からFmaxまでの周波数領域を均等に4分割し、第1〜第4の4つの信号処理モジュール(信号生成部)M1,M2,M3,M4で各周波数領域の信号を生成する例について説明する。分割した周波数領域は、周波数の低い方から順にA,B,C,Dとする。
【0015】
第1〜第4の信号処理モジュールM1,M2,M3,M4は、マイクロコンピュータ(CPU)を中心として構成される制御部としてのコントローラ2から入力されるスペクトル情報(振幅、位相)に基づいて、それぞれ、周波数領域A,B,C,Dの信号を分割生成する。各信号処理モジュールM1,M2,M3,M4で生成された信号は、信号合成部としての混合器3で合成され、スイッチ部4を介して出力される。
【0016】
スイッチ部4は、後述するように、合成信号の通過と遮断により、各モジュール間の信号生成処理時間の差や信号伝達時間の差による合成信号の歪みを除去した信号を得るためのものである。このスイッチ部4は、例えば、FETやPINダイオード等の半導体デバイスを用いて構成され、コントローラ2により信号の通過と遮断が制御される。
【0017】
コントローラ2は、目的信号を離散フーリエ変換してA,B,C,Dの4つの周波数領域の信号成分に分割し、それぞれのスペクトル情報を、第1〜第4の信号処理モジュールM1,M2,M3,M4に入力データとして与える。各信号処理モジュールM1,M2,M3,M4は、同様の構成であり、それぞれ、コントローラ2からの離散データをデジタル信号処理するデジタル信号生成モジュールSG1,SG2,SG3,SG4を備えている。
【0018】
各デジタル信号生成モジュールSG1,SG2,SG3,SG4は、ハードウェア実装、ソフトウェア実装、或いはハードウェア処理とソフトウェア処理の混在実装によって構成することができる。例えば、各デジタル信号生成モジュールSG1,SG2,SG3,SG4をハードウェアで構成する場合には、離散フーリエ変換された複素スペクトルを逆離散フーリエ変換する逆離散フーリエ変換器、逆離散フーリエ変換された並列データを直列データ(シリアルデータ)に変換する並直列変換器、並直列変換器の出力データを逓倍するインターポレータ、逓倍された信号から所望の周波数帯域のスペクトルを取り出す複素バンドパスフィルタ(複素BPF)、複素BPFからの出力を、I(In-Phase;同相成分)信号とQ(Quadrature;直交成分)信号とに分離するIQ分離器等によって構成することができる。
【0019】
各デジタル信号生成モジュールSG1,SG2,SG3,SG4には、それぞれ、IQ分離されたデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器5a,5bが接続されている。更に、D/A変換器5a,5bの後段に、D/A変換されたアナログ信号をフィルタリングしてスプリアス(不必要な成分)を除去するローパスフィルタ(LPF)6a,6bが接続され、LPF6aからのI信号とLPF6bからのQ信号とが直交変調器7にて直交変調される。
【0020】
各信号処理モジュールM1,M2,M3,M4の各直交変調器7で直交変調された信号は、混合器3で合成され、合成信号がスイッチ部4を介して出力される。すなわち、本実施の形態における任意信号発生装置1は、精度の高いデジタル信号生成処理と高周波アナログ信号処理を組み合わせて信号処理モジュールを構成し、複数の信号処理モジュールを並列接続することで帯域幅を増加することができる。つまり、周波数領域の複素スペクトルを、低サンプリングクロックで動作する複数のモジュールで分割処理し、それぞれの出力を合成することにより、広帯域の目的信号を生成することができる。
【0021】
個別には、第1の信号処理モジュールM1は、図3に示すように、A領域の信号を−Fmax/8だけシフトした信号を、デジタル信号生成モジュールSG1で生成する。このとき、複素信号処理を施せば、最低限必要とされるサンプリング周波数はFmax/4となり、図2に示す信号を直接生成するのに比べて、サンプリング周波数を8分の1に低減することができる。
【0022】
デジタル信号生成モジュールSG1の出力は複素数であるため、その実数部と虚数部の信号をD/A変換器5a,5bで別々にD/A変換し、アナログ信号に変換する。D/A変換の際に生じるイメージ信号は、D/A変換器5a,5bの後段に位置するLPF6a,6bで除去する。更に、直交変調器7にて、LPF6a,6bの出力信号に対してexp(j・2π・(1/8)・Fmax・t)を乗算して周波数帯域をシフトさせ、その実数部をとれば、図4に示すようなスペクトルが得られる。但し、tは連続時間変数である。
【0023】
尚、このとき、直流以外の複素振幅は、大きさが半分になってしまう。この対策としては、デジタル信号生成モジュールSG1に入力する複素スペクトルデータのうち、直流成分だけを予め1/2倍しておく、或いは、直流成分以外の複素振幅を予め2倍しておく等の対策を取れば良い。
【0024】
次に、第2の信号処理モジュールM2は、図5に示すように、B領域の信号を、−Fmax/4−Fmax/8=−(3/8)・Fmaxだけシフトした信号を、デジタル信号生成モジュールSG2で生成する。このとき、複素信号処理を施せば、必要とされるサンプリング周波数はFmax/4となり、図2に示す信号を直接生成するのに比べて、サンプリング周波数を8分の1に低減することができる。
【0025】
この場合においても、デジタル信号生成モジュールSG2の出力は複素数であるため、その実数部と虚数部の信号をそれぞれD/A変換して、アナログ信号に変換する。D/A変換器5a,5bの出力信号に含まれるイメージ信号は、LPF6a,6bで除去される。そして、LPF6a,6bの出力信号に対して直交変調器7にてexp(j・2π・(3/8)・Fmax・t)を乗算し、その実数部をとれば、図6に示すようなスペクトルが得られる。
【0026】
以下、第3,4の信号処理モジュールM3,M4においても、同様の処理を行う。但し、第3の信号処理モジュールM3においては、図7に示すように、C領域の信号を−(5/8)・Fmaxだけシフトした信号をデジタル信号生成モジュールSG3で生成する。更に、デジタル信号生成モジュールSG3の出力に、直交変調器7でexp(j・2π・(5/8)・Fmax・t)を乗算し、その実数部を出力する。この結果得られる信号のスペクトルは、図8に示される。
【0027】
また、第4の信号処理モジュールM4においては、図9に示すように、D領域の信号を−(7/8)・Fmaxだけシフトした信号をデジタル信号生成モジュールSG4で生成する。そして、デジタル信号生成モジュールSG4の出力に、直交変調器7でexp(j・2π・(7/8)・Fmax・t)を乗算し、その実数部を出力する。この結果得られる信号のスペクトルは、図10に示される。
【0028】
最後に、第1〜第4の信号処理モジュールM1〜M4の出力波を、混合器3にて合成すれば、元の信号(図2参照)のスペクトルを再生することが可能となる。しかしながら、実際には各モジュール間で信号伝達時間が異なるため、そのままでは、合成波形が歪む虞がある。そこで、コントローラ2は、各信号処理モジュール間の遅延時間差に相当する初期位相分で各信号処理モジュールの入力データを補正し、各信号処理モジュール間の相対位相を調整する。
【0029】
ここで、モジュール間の信号伝達時間の相違による合成波形の歪みについて説明する。尚、ここでは、説明を簡略化するため、信号処理の基本となる正弦波を用い、第1の信号処理モジュールM1の出力と第2の信号処理モジュールM2の出力とを合成するものとして説明する。
【0030】
先ず、第1の信号処理モジュールM1は、信号生成に要する処理時間がゼロで、以下の(1)式で表わされる正弦波を出力するものとする。このときの信号は、図11に実線の細線で示される波形となる。
sin(ω0・t) t≧0 …(1)
0 t<0
【0031】
同様に、第2の信号処理モジュールM2は、信号生成に要する処理時間がゼロで、以下の(2)式で表わされる正弦波を出力するものとする。このときの信号は、図11に破線で示される波形となる。
sin(2・ω0・t) t≧0 …(2)
0 t<0
【0032】
また、第1,第2の信号処理モジュールM1,M2の各出力は、それぞれ遅延時間と減衰のない理想伝送路を経由して混合器3に入力されるものとする。以下、混合器3の遅延と減衰はないものとすると、混合器3の合成出力波形は、図11に実線の太線で示す波形となる。
【0033】
次に、第1の信号処理モジュールM1の信号生成に要する処理時間がτ1、第2の信号処理モジュールM2の信号生成に要する処理時間が(τ1+Δτ1)である場合について考える。このとき、第1,第2の信号処理モジュールM1,M2の各出力信号は、それぞれ、伝搬遅延時間τ2,(τ2+Δτ2)の伝送路を介して混合器3に入力されるものとする。
【0034】
処理時間τ1を要する第1の信号処理モジュールM1の出力(正弦波)は、以下の(3)式で表される。
sin(ω0・(t-τ1) t≧τ1 …(3)
0 t<τ1
【0035】
(3)式の信号が遅延時間τ2で減衰のない伝送路を通過した後の信号は、以下の(4)式で表わすことができる。(4)式の信号は、図12に実線の細線で示される波形となる。
sin(ω0・(t-τ1-τ2) t≧τ1+τ2 …(4)
0 t<τ1+τ2
【0036】
一方、処理時間(τ1+Δτ1)を要する第2の信号処理モジュールM2の出力(正弦波)は、以下の(5)式で表される。
sin(ω0・(t-τ1-Δτ1) t≧τ1+Δτ1 …(5)
0 t<τ1+Δτ1
【0037】
(5)式の信号が遅延時間(τ2+Δτ2)で減衰のない伝送路を通過した後の信号は、以下の(6)式で表わすことができる。(6)式の信号は、図12に破線で示される波形となる。
sin(ω0・(t-τ1-τ2-Δτ1-Δτ2) t≧τ1+τ2+Δτ1+Δτ2…(6)
0 t<τ1+τ2+Δτ1+Δτ2
【0038】
混合器3に入力される第1の信号処理モジュールM1の出力波形は、時間遅れτ1+τ2を伴う。同様に、混合器3に入力される第2の信号処理モジュールM2の出力波形は、τ1+τ2+Δτ1+Δτ2の信号遅れを有している。その結果、第1の信号処理モジュールM1の波形と第2の信号処理モジュールM2の波形とをそのまま合成すると、図13に実線の太線で示すような遅延時間に比例した歪みが生じる。
【0039】
ここで、第1の信号処理モジュールM1の時間遅れを基準にした第2の信号処理モジュールM2の時間遅れは、(Δτ1+Δτ2)であることに注目する。この時間遅れ(Δτ1+Δτ2)に相当する第2の信号処理モジュールM2の信号の位相遅れは、以下の(7)式となる。
2・ω0・(Δτ1+Δτ2) …(7)
【0040】
従って、(7)式の位相量を第2の信号処理モジュールM2の初期位相に加算して信号処理を行わせることにより、混合器3に入力される第2の信号処理モジュールM2の出力波形は、図14に破線で示す波形とすることができる。このときの第1の信号処理モジュールM1の出力波形と第2の信号処理モジュールM2の出力波形とを合成した波形は、図15に実線の太線で示される。
【0041】
先に説明した遅延のない信号が理想伝送路を経由した場合の波形を示す図11と、上述の図15とを比較すると、図15に示す信号は、立ち上がり部分で波形が大きく歪んでいるが、それ以降は、図11に示す信号を時間(τ1+τ2)だけ遅らせた信号と等しくなっていることが分かる。従って、図15で示される合成信号の立ち上がり部分を混合器3の後段に設けたスイッチ部4で除去すれば、図16に示すように、スペクトル漏れを抑圧して品質の高い出力信号を得ることができる。
【0042】
各信号処理モジュールの遅延時間差は、予め第1の信号処理モジュールM1を基準として実際に計測した値或いはシミュレーションによって求めた値がコントローラ2にストアされている。コントローラ2は、信号処理モジュール毎の遅延時間差に相当する初期位相分で各信号処理モジュールへ入力するスペクトル情報(位相)を補正し、更に、信号処理モジュール毎の遅延時間差に起因した出力データの立ち上がり部分,立下り部分の少なくとも一方の不連続点を、混合器3の出力段に設けたスイッチ部4を介して除去する。
【0043】
尚、図15の合成信号の立ち上がり部分を、窓関数処理やフィルタ処理により滑らかにするようにしても良く、これによっても同等の効果を得ることができる。
【0044】
以上のように、本実施の形態における任意信号発生装置1は、精度の高いデジタル信号生成処理と高周波アナログ信号処理とを組み合わせて信号処理モジュールを構成し、複数の信号処理モジュールを並列接続するだけで帯域幅を増加することができる。各信号処理モジュールへの入力データには、各信号処理モジュールの遅延時間に相当する位相差分を初期位相として補正することにより、各信号処理モジュール間の同期を容易にとることができる。出力信号の立ち上がりに現れるデータの不連続点は、スイッチにより除去することができ、品質の高い信号を得ることができる。
【0045】
また、変調に逆離散フーリエ変換を使えば、各サブスペクトルの振幅と位相を直接に制御できる。そのため送信信号の周波数とスペクトルを自由に設定できるようになる。よって、目的信号として例えばレーダ送信信号を生成する場合には、ターゲットの特性、ターゲットの距離、測定分解能に応じて最適なレーダ送信信号を効果的に生成することができる。しかも、目的信号をデジタル信号処理を基本として生成するため、動作環境変化や経年変化による特性変化が小さい任意信号発生装置を実現することができる。
【0046】
尚、以上では、連続信号を複数の信号処理モジュールで分割生成した際の位相同期の確立について説明したが、パルス信号やバースト信号を分割生成する場合も同様である。すなわち、各信号処理モジュール間の遅延時間差に相当する位相量分を、各信号処理モジュールへ入力するデータの初期位相に対して加算或いは減算し、更に、所望のパルス信号やバースト信号を2サイクル以上繰り返し出力し、その立ち上がり部分と立下り部分との少なくとも一方をスイッチで除去することにより、連続波を生成する場合と同様に、各信号処理モジュール間の同期を容易に取ることができる。
【0047】
次に、本発明の実施の第2形態について説明する。第2形態は、第1形態と同様の構成でパルス繰り返し周期とパルス幅を可変可能とするものである。以下、第1形態と相違する部分を中心に説明する。
【0048】
第2形態では、第1〜第4の信号処理モジュールM1〜M4のデジタル信号生成モジュールSG1〜SG4にて、総ポイント数Nの逆離散フーリエ変換を行う。時間領域の目的信号の離散フーリエ変換値が、第1形態と同様、コントローラ2から各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4に分配され、各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4において、逆離散フーリエ変換が実施される。各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4は、それぞれデータ保持用のメモリを備えており、各メモリに逆離散フーリエ変換の結果得られた1周期の時間T分のデータを保存する。
【0049】
各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4は、メモリにストアされた1周期分のデータと、任意の数のゼロとを交互に出力することにより、出力パルス信号の繰り返し周波数を任意に可変することが可能になる。また、各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4に供給するクロック周波数を可変すると、生成されるパルス幅はクロック周波数と反比例する。これらの特徴を組み合わせれば、パルス幅とパルス繰り返し周期を離散時間ステップで任意に設定することが可能となる。
【0050】
この場合、実際には、第1形態で説明したように複数のモジュール間には遅延時間の差が存在するため、各モジュール間の時間同期を実現するためには、コントローラ2による調整が必要となる。以下では、説明を簡略化するため、第1の信号処理モジュールM1と第2の信号処理モジュールM2との2つの信号処理モジュールの出力を合成する場合について説明する。
【0051】
第1の信号処理モジュールM1は、図17に実線の細線で示す波形のように、逆離散フーリエ変換の結果得られた周波数1/Tの正弦波を1周期分出力する。また、第2の信号処理モジュールM2は、図17に破線の波形で示すように、周波数2/T正弦波を2周期分出力する。続いて、信号処理モジュールM1,M2は、共に2Tの期間、ゼロを出力する。以後、図17に示すように、正弦波出力とゼロ出力を繰り返すものとする。
【0052】
ここで、第1の信号処理モジュールM1の遅延時間が、第2の信号処理モジュールM2の遅延時間と全く等しい場合を考える。このとき、第1の信号処理モジュールM1の出力と第2の信号処理モジュールM2の出力とを合成した出力信号は、図17に実線の太線で示す波形となる。挿入するゼロの数を変えれば、パルス繰り返し周波数を自由に可変することができる。また、各信号処理モジュールに供給するクロック周波数を可変にすれば、パルス幅を可変とすることができる。
【0053】
次に、第2の信号処理モジュールM2の遅延時間が第1の信号処理モジュールM1の遅延時間に対して若干大きい場合を考える。この場合、第1の信号処理モジュールM1と第2の信号処理モジュールM2との合成信号は、図18に実線の太線で示す波形となり、図17と比較すれば大きく歪んでいることがわかる。
【0054】
このため、以下の処理を行う。第2の信号処理モジュールM2の遅延時間と第1の信号処理モジュールM1の遅延時間との差に相当する位相差を、第2の信号処理モジュールM2の出力信号の初期位相に加算する。第1の信号処理モジュールM1は、周波数1/Tの正弦波を2周期分出力する。第2の信号処理モジュールM2は、補正した初期位相を有する周波数2/Tの正弦波を4周期分出力する。その結果得られた合成信号を図19に実線の太線で示す。
【0055】
図19に示す合成信号において、時間Tから2Tの区間は、図18で示した遅延時間差がない場合に得られる合成信号を時間Tだけ遅延させた信号に等しい。そこで、0からTまでの期間と2Tから3Tまでの期間とを、混合器3の後段に位置するスイッチ部4により除去すると、図20に示した信号が得られる。この波形は、図17の信号を時間Tだけ遅らせた波形となっている。
【0056】
具体的には、第1形態と同様、コントローラ2で目的信号の1周期分を離散フーリエ変換し、そのスペクトル情報(振幅、位相)を分割して第1〜第4の信号処理モジュールM1〜M4の各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4にそれぞれ入力する。続いて各信号処理モジュールM1〜M4の遅延時間差に相当する位相量だけ、各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4に入力するスペクトル情報の初期位相を補正する。
【0057】
そして、この初期位相を補正したスペクトル情報に基づいて各信号処理モジュールM1〜M4で生成出力される信号を混合器3で合成し、その合成出力に含まれる不要信号をスイッチ部4で除去する。これにより、各信号処理モジュール間の遅延時間差の影響を除去することができる。
【0058】
この場合、信号処理モジュールが、平坦な通過特性を有していない場合には、信号処理モジュールに入力するスペクトル情報の振幅を補正したい量だけ加減することにより、信号処理モジュールの通過特性を平坦にすることができる。更に、任意信号発生装置の外部に存在する伝送路の周波数特性が平坦でない場合には、各信号処理モジュールに設定するスペクトル情報にプリディストーション処理を施すことにより、伝送路の周波数特性を補正することも可能である。尚、プリディストーション処理は、予め逆特性の非線形歪を加えておくことで歪補償を行う非線形信号処理である。
【0059】
第2形態では、第1形態と同様、信号処理モジュールの並列数に応じて、各モジュールに必要なサンプリング周波数を効果的に低減することができるばかりでなく、出力信号の繰り返し周期を離散時間ステップで任意に設定することができる。更に、各信号処理モジュールに供給するクロック信号の周波数を可変にすれば、生成する信号のパルス幅を任意に設定することが可能となる。
【0060】
この場合、逆離散フーリエ変換にて信号生成を行うことは、直交周波数多重分割(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式による変調と等価であるため、サブキャリアの一部若しくは全てを使ってデータ通信用の送信波を生成することができる。すなわち、本実施の形態の任意信号発生装置は、1つの信号発生装置でレーダ等の送信波とデータ通信のOFDM被変調波とを時分割方式で生成することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 任意信号発生装置
2 コントローラ
3 混合器
4 スイッチ部
M1〜M4 信号処理モジュール
SG1〜SG4 デジタル信号生成モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の任意波形の目的信号を生成する任意信号発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルスレーダ等に用いられるパルス幅の小さい信号を生成する技術として、ステップリカバリダイオード、アバランシェダイオード、高速論理ゲート等を用いて目的信号を生成する技術が知られている。これらの技術は、アナログ信号処理によりパルス幅の小さい信号を生成する技術であり、温度や湿度等の環境変化による回路特性の変化、素子や材料の特性の経年変化等により、性能が変化する虞がある。
【0003】
また、アナログ信号処理用の回路は、一度作成されると、その後の変更が困難であり、仕様や目的の変更に対して必ずしも自由度が高いとは言えない。例えば、レーダ用の信号発生装置としての用途の場合、レーダの割り当て周波数が変更されても、アナログ回路では対応困難である。さらに、送信波のスペクトルを変更する場合、外付けのフィルタを変更する等の対策が必要であるが、アナログ回路では、送信スペクトルの形状やレベルを適応的に変更することは困難である。
【0004】
このため、近年では、デジタル信号処理によって目的信号を生成する技術が採用されることが多い。このデジタル信号処理による信号発生装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなダイレクトデジタルシンセサイザ(Direct Digital Synthesizer;DDS)が知られている。DDSは、波形データの入ったメモリの指定アドレスを更新して行き、その指定アドレスのデータをD/A変換によりアナログ波形に変換することで、任意の波形を発生させる技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−225022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなDDSによる信号発生装置は、基準クロック周波数に同期してその基準クロックの有理数倍の周期を有する信号波形をデジタル的に合成した後、D/A変換を行っている。よって、サンプリング定理により、目的信号に含まれる最高周波数の2倍以上のサンプリング周波数でD/A変換器を動作させなければならない。このため、目的信号のパルス幅を小さくすると、必要とされるサンプリング周波数がパルス幅に反比例して高くなる。よって、生成可能な信号の周波数には限界がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、比較的低い周波数のサンプリング周波数を用いつつ、生成する信号の周波数帯域を拡張することができ、より高周波域までの任意波形の信号を生成可能な任意信号発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明による任意信号発生装置は、広帯域の任意波形の目的信号を生成する任意信号発生装置であって、周波数領域毎の入力データに基づいて、互いに異なる周波数領域の信号を生成する複数の信号生成部と、上記複数の信号生成部からの出力を合成する信号合成部と、上記信号合成部で合成された合成信号の通過と遮断を行い、上記目的信号として出力するスイッチ部と、上記複数の信号生成部から上記信号合成部に至るまでの各信号の遅延時間の差に基づいて上記入力データを補正し、上記複数の信号生成部で生成される各信号の相対位相を調整すると共に、上記遅延時間の差に起因する上記合成信号の不連続部分を上記スイッチ部を介して除去する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比較的低い周波数のサンプリング周波数で動作しながら、発生信号の周波数帯域を拡張することができ、より高周波域までの任意波形の信号を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の第1形態に係り、任意信号発生装置の構成図
【図2】同上、目的信号のスペクトルを示す説明図
【図3】同上、A領域をシフトした信号のスペクトルを示す説明図
【図4】同上、第1の信号処理モジュールの出力スペクトルを示す説明図
【図5】同上、B領域をシフトした信号のスペクトルを示す説明図
【図6】同上、第2の信号処理モジュールの出力スペクトルを示す説明図
【図7】同上、C領域をシフトした信号のスペクトルを示す説明図
【図8】同上、第3の信号処理モジュールの出力スペクトルを示す説明図
【図9】同上、D領域をシフトした信号のスペクトルを示す説明図
【図10】同上、第4の信号処理モジュールの出力スペクトルを示す説明図
【図11】同上、遅延及び減衰のない理想信号を示す波形図
【図12】同上、遅延のある信号を示す波形図
【図13】同上、図12の信号を合成した信号を示す波形図
【図14】同上、遅延相当の位相を加算した信号を示す波形図
【図15】同上、図14の信号を合成した信号を示す波形図
【図16】同上、図15の合成信号の立ち上がり部を除去した信号を示す波形図
【図17】本発明の実施の第2形態に係り、繰り返し出力を示す波形図
【図18】同上、遅延差のある信号を合成した信号を示す波形図
【図19】同上、遅延相当の位相を加算した信号及びその合成信号を示す波形図
【図20】同上、図19の合成信号の立ち上がり部を除去した信号を示す波形図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1に示す任意信号発生装置1は、所望する任意の周波数の目的信号を複数の異なる周波数帯域に分割してデジタル信号処理し、生成した各信号を合成することにより、目的信号を得るものである。本実施の形態においては、図2に示すようなスペクトルを有する最高周波数Fmaxの目的信号を生成するものとする。このとき周波数をf,複素スペクトルをH(f)で表わすとすれば、複素スペクトルは、H(f)=H*(−f)を満たす。但し、*は共役複素数を示すものとする。
【0012】
このようなスペクトルを有する信号をデジタル信号処理により生成するには、サンプリング定理より2Fmax以上のサンプリング周波数が必要となる。しかしながら、デジタル信号処理可能な周波数は限られており、目的信号の最高周波数Fmaxが高い場合には、直接的に信号を生成することは困難である。
【0013】
そこで、0(直流成分)からFmaxまでの周波数領域を複数の領域に分割し、各周波数領域で生成した信号を合成することで、目的信号を得る。周波数領域の分割数は、任意の自然数で良く、また、分割領域は均等でも不均等でも良い。例えば、本出願人が先に提出した特願2008−299937号に詳述されているように、目的信号を総ポイント数Nで離散フーリエ変換し、離散フーリエ変換したデータを複数組に分割して並列処理することにより、必要なサンプリング周波数を低減しつつ目的信号を合成することができる。
【0014】
本実施の形態においては、0(直流成分)からFmaxまでの周波数領域を均等に4分割し、第1〜第4の4つの信号処理モジュール(信号生成部)M1,M2,M3,M4で各周波数領域の信号を生成する例について説明する。分割した周波数領域は、周波数の低い方から順にA,B,C,Dとする。
【0015】
第1〜第4の信号処理モジュールM1,M2,M3,M4は、マイクロコンピュータ(CPU)を中心として構成される制御部としてのコントローラ2から入力されるスペクトル情報(振幅、位相)に基づいて、それぞれ、周波数領域A,B,C,Dの信号を分割生成する。各信号処理モジュールM1,M2,M3,M4で生成された信号は、信号合成部としての混合器3で合成され、スイッチ部4を介して出力される。
【0016】
スイッチ部4は、後述するように、合成信号の通過と遮断により、各モジュール間の信号生成処理時間の差や信号伝達時間の差による合成信号の歪みを除去した信号を得るためのものである。このスイッチ部4は、例えば、FETやPINダイオード等の半導体デバイスを用いて構成され、コントローラ2により信号の通過と遮断が制御される。
【0017】
コントローラ2は、目的信号を離散フーリエ変換してA,B,C,Dの4つの周波数領域の信号成分に分割し、それぞれのスペクトル情報を、第1〜第4の信号処理モジュールM1,M2,M3,M4に入力データとして与える。各信号処理モジュールM1,M2,M3,M4は、同様の構成であり、それぞれ、コントローラ2からの離散データをデジタル信号処理するデジタル信号生成モジュールSG1,SG2,SG3,SG4を備えている。
【0018】
各デジタル信号生成モジュールSG1,SG2,SG3,SG4は、ハードウェア実装、ソフトウェア実装、或いはハードウェア処理とソフトウェア処理の混在実装によって構成することができる。例えば、各デジタル信号生成モジュールSG1,SG2,SG3,SG4をハードウェアで構成する場合には、離散フーリエ変換された複素スペクトルを逆離散フーリエ変換する逆離散フーリエ変換器、逆離散フーリエ変換された並列データを直列データ(シリアルデータ)に変換する並直列変換器、並直列変換器の出力データを逓倍するインターポレータ、逓倍された信号から所望の周波数帯域のスペクトルを取り出す複素バンドパスフィルタ(複素BPF)、複素BPFからの出力を、I(In-Phase;同相成分)信号とQ(Quadrature;直交成分)信号とに分離するIQ分離器等によって構成することができる。
【0019】
各デジタル信号生成モジュールSG1,SG2,SG3,SG4には、それぞれ、IQ分離されたデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器5a,5bが接続されている。更に、D/A変換器5a,5bの後段に、D/A変換されたアナログ信号をフィルタリングしてスプリアス(不必要な成分)を除去するローパスフィルタ(LPF)6a,6bが接続され、LPF6aからのI信号とLPF6bからのQ信号とが直交変調器7にて直交変調される。
【0020】
各信号処理モジュールM1,M2,M3,M4の各直交変調器7で直交変調された信号は、混合器3で合成され、合成信号がスイッチ部4を介して出力される。すなわち、本実施の形態における任意信号発生装置1は、精度の高いデジタル信号生成処理と高周波アナログ信号処理を組み合わせて信号処理モジュールを構成し、複数の信号処理モジュールを並列接続することで帯域幅を増加することができる。つまり、周波数領域の複素スペクトルを、低サンプリングクロックで動作する複数のモジュールで分割処理し、それぞれの出力を合成することにより、広帯域の目的信号を生成することができる。
【0021】
個別には、第1の信号処理モジュールM1は、図3に示すように、A領域の信号を−Fmax/8だけシフトした信号を、デジタル信号生成モジュールSG1で生成する。このとき、複素信号処理を施せば、最低限必要とされるサンプリング周波数はFmax/4となり、図2に示す信号を直接生成するのに比べて、サンプリング周波数を8分の1に低減することができる。
【0022】
デジタル信号生成モジュールSG1の出力は複素数であるため、その実数部と虚数部の信号をD/A変換器5a,5bで別々にD/A変換し、アナログ信号に変換する。D/A変換の際に生じるイメージ信号は、D/A変換器5a,5bの後段に位置するLPF6a,6bで除去する。更に、直交変調器7にて、LPF6a,6bの出力信号に対してexp(j・2π・(1/8)・Fmax・t)を乗算して周波数帯域をシフトさせ、その実数部をとれば、図4に示すようなスペクトルが得られる。但し、tは連続時間変数である。
【0023】
尚、このとき、直流以外の複素振幅は、大きさが半分になってしまう。この対策としては、デジタル信号生成モジュールSG1に入力する複素スペクトルデータのうち、直流成分だけを予め1/2倍しておく、或いは、直流成分以外の複素振幅を予め2倍しておく等の対策を取れば良い。
【0024】
次に、第2の信号処理モジュールM2は、図5に示すように、B領域の信号を、−Fmax/4−Fmax/8=−(3/8)・Fmaxだけシフトした信号を、デジタル信号生成モジュールSG2で生成する。このとき、複素信号処理を施せば、必要とされるサンプリング周波数はFmax/4となり、図2に示す信号を直接生成するのに比べて、サンプリング周波数を8分の1に低減することができる。
【0025】
この場合においても、デジタル信号生成モジュールSG2の出力は複素数であるため、その実数部と虚数部の信号をそれぞれD/A変換して、アナログ信号に変換する。D/A変換器5a,5bの出力信号に含まれるイメージ信号は、LPF6a,6bで除去される。そして、LPF6a,6bの出力信号に対して直交変調器7にてexp(j・2π・(3/8)・Fmax・t)を乗算し、その実数部をとれば、図6に示すようなスペクトルが得られる。
【0026】
以下、第3,4の信号処理モジュールM3,M4においても、同様の処理を行う。但し、第3の信号処理モジュールM3においては、図7に示すように、C領域の信号を−(5/8)・Fmaxだけシフトした信号をデジタル信号生成モジュールSG3で生成する。更に、デジタル信号生成モジュールSG3の出力に、直交変調器7でexp(j・2π・(5/8)・Fmax・t)を乗算し、その実数部を出力する。この結果得られる信号のスペクトルは、図8に示される。
【0027】
また、第4の信号処理モジュールM4においては、図9に示すように、D領域の信号を−(7/8)・Fmaxだけシフトした信号をデジタル信号生成モジュールSG4で生成する。そして、デジタル信号生成モジュールSG4の出力に、直交変調器7でexp(j・2π・(7/8)・Fmax・t)を乗算し、その実数部を出力する。この結果得られる信号のスペクトルは、図10に示される。
【0028】
最後に、第1〜第4の信号処理モジュールM1〜M4の出力波を、混合器3にて合成すれば、元の信号(図2参照)のスペクトルを再生することが可能となる。しかしながら、実際には各モジュール間で信号伝達時間が異なるため、そのままでは、合成波形が歪む虞がある。そこで、コントローラ2は、各信号処理モジュール間の遅延時間差に相当する初期位相分で各信号処理モジュールの入力データを補正し、各信号処理モジュール間の相対位相を調整する。
【0029】
ここで、モジュール間の信号伝達時間の相違による合成波形の歪みについて説明する。尚、ここでは、説明を簡略化するため、信号処理の基本となる正弦波を用い、第1の信号処理モジュールM1の出力と第2の信号処理モジュールM2の出力とを合成するものとして説明する。
【0030】
先ず、第1の信号処理モジュールM1は、信号生成に要する処理時間がゼロで、以下の(1)式で表わされる正弦波を出力するものとする。このときの信号は、図11に実線の細線で示される波形となる。
sin(ω0・t) t≧0 …(1)
0 t<0
【0031】
同様に、第2の信号処理モジュールM2は、信号生成に要する処理時間がゼロで、以下の(2)式で表わされる正弦波を出力するものとする。このときの信号は、図11に破線で示される波形となる。
sin(2・ω0・t) t≧0 …(2)
0 t<0
【0032】
また、第1,第2の信号処理モジュールM1,M2の各出力は、それぞれ遅延時間と減衰のない理想伝送路を経由して混合器3に入力されるものとする。以下、混合器3の遅延と減衰はないものとすると、混合器3の合成出力波形は、図11に実線の太線で示す波形となる。
【0033】
次に、第1の信号処理モジュールM1の信号生成に要する処理時間がτ1、第2の信号処理モジュールM2の信号生成に要する処理時間が(τ1+Δτ1)である場合について考える。このとき、第1,第2の信号処理モジュールM1,M2の各出力信号は、それぞれ、伝搬遅延時間τ2,(τ2+Δτ2)の伝送路を介して混合器3に入力されるものとする。
【0034】
処理時間τ1を要する第1の信号処理モジュールM1の出力(正弦波)は、以下の(3)式で表される。
sin(ω0・(t-τ1) t≧τ1 …(3)
0 t<τ1
【0035】
(3)式の信号が遅延時間τ2で減衰のない伝送路を通過した後の信号は、以下の(4)式で表わすことができる。(4)式の信号は、図12に実線の細線で示される波形となる。
sin(ω0・(t-τ1-τ2) t≧τ1+τ2 …(4)
0 t<τ1+τ2
【0036】
一方、処理時間(τ1+Δτ1)を要する第2の信号処理モジュールM2の出力(正弦波)は、以下の(5)式で表される。
sin(ω0・(t-τ1-Δτ1) t≧τ1+Δτ1 …(5)
0 t<τ1+Δτ1
【0037】
(5)式の信号が遅延時間(τ2+Δτ2)で減衰のない伝送路を通過した後の信号は、以下の(6)式で表わすことができる。(6)式の信号は、図12に破線で示される波形となる。
sin(ω0・(t-τ1-τ2-Δτ1-Δτ2) t≧τ1+τ2+Δτ1+Δτ2…(6)
0 t<τ1+τ2+Δτ1+Δτ2
【0038】
混合器3に入力される第1の信号処理モジュールM1の出力波形は、時間遅れτ1+τ2を伴う。同様に、混合器3に入力される第2の信号処理モジュールM2の出力波形は、τ1+τ2+Δτ1+Δτ2の信号遅れを有している。その結果、第1の信号処理モジュールM1の波形と第2の信号処理モジュールM2の波形とをそのまま合成すると、図13に実線の太線で示すような遅延時間に比例した歪みが生じる。
【0039】
ここで、第1の信号処理モジュールM1の時間遅れを基準にした第2の信号処理モジュールM2の時間遅れは、(Δτ1+Δτ2)であることに注目する。この時間遅れ(Δτ1+Δτ2)に相当する第2の信号処理モジュールM2の信号の位相遅れは、以下の(7)式となる。
2・ω0・(Δτ1+Δτ2) …(7)
【0040】
従って、(7)式の位相量を第2の信号処理モジュールM2の初期位相に加算して信号処理を行わせることにより、混合器3に入力される第2の信号処理モジュールM2の出力波形は、図14に破線で示す波形とすることができる。このときの第1の信号処理モジュールM1の出力波形と第2の信号処理モジュールM2の出力波形とを合成した波形は、図15に実線の太線で示される。
【0041】
先に説明した遅延のない信号が理想伝送路を経由した場合の波形を示す図11と、上述の図15とを比較すると、図15に示す信号は、立ち上がり部分で波形が大きく歪んでいるが、それ以降は、図11に示す信号を時間(τ1+τ2)だけ遅らせた信号と等しくなっていることが分かる。従って、図15で示される合成信号の立ち上がり部分を混合器3の後段に設けたスイッチ部4で除去すれば、図16に示すように、スペクトル漏れを抑圧して品質の高い出力信号を得ることができる。
【0042】
各信号処理モジュールの遅延時間差は、予め第1の信号処理モジュールM1を基準として実際に計測した値或いはシミュレーションによって求めた値がコントローラ2にストアされている。コントローラ2は、信号処理モジュール毎の遅延時間差に相当する初期位相分で各信号処理モジュールへ入力するスペクトル情報(位相)を補正し、更に、信号処理モジュール毎の遅延時間差に起因した出力データの立ち上がり部分,立下り部分の少なくとも一方の不連続点を、混合器3の出力段に設けたスイッチ部4を介して除去する。
【0043】
尚、図15の合成信号の立ち上がり部分を、窓関数処理やフィルタ処理により滑らかにするようにしても良く、これによっても同等の効果を得ることができる。
【0044】
以上のように、本実施の形態における任意信号発生装置1は、精度の高いデジタル信号生成処理と高周波アナログ信号処理とを組み合わせて信号処理モジュールを構成し、複数の信号処理モジュールを並列接続するだけで帯域幅を増加することができる。各信号処理モジュールへの入力データには、各信号処理モジュールの遅延時間に相当する位相差分を初期位相として補正することにより、各信号処理モジュール間の同期を容易にとることができる。出力信号の立ち上がりに現れるデータの不連続点は、スイッチにより除去することができ、品質の高い信号を得ることができる。
【0045】
また、変調に逆離散フーリエ変換を使えば、各サブスペクトルの振幅と位相を直接に制御できる。そのため送信信号の周波数とスペクトルを自由に設定できるようになる。よって、目的信号として例えばレーダ送信信号を生成する場合には、ターゲットの特性、ターゲットの距離、測定分解能に応じて最適なレーダ送信信号を効果的に生成することができる。しかも、目的信号をデジタル信号処理を基本として生成するため、動作環境変化や経年変化による特性変化が小さい任意信号発生装置を実現することができる。
【0046】
尚、以上では、連続信号を複数の信号処理モジュールで分割生成した際の位相同期の確立について説明したが、パルス信号やバースト信号を分割生成する場合も同様である。すなわち、各信号処理モジュール間の遅延時間差に相当する位相量分を、各信号処理モジュールへ入力するデータの初期位相に対して加算或いは減算し、更に、所望のパルス信号やバースト信号を2サイクル以上繰り返し出力し、その立ち上がり部分と立下り部分との少なくとも一方をスイッチで除去することにより、連続波を生成する場合と同様に、各信号処理モジュール間の同期を容易に取ることができる。
【0047】
次に、本発明の実施の第2形態について説明する。第2形態は、第1形態と同様の構成でパルス繰り返し周期とパルス幅を可変可能とするものである。以下、第1形態と相違する部分を中心に説明する。
【0048】
第2形態では、第1〜第4の信号処理モジュールM1〜M4のデジタル信号生成モジュールSG1〜SG4にて、総ポイント数Nの逆離散フーリエ変換を行う。時間領域の目的信号の離散フーリエ変換値が、第1形態と同様、コントローラ2から各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4に分配され、各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4において、逆離散フーリエ変換が実施される。各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4は、それぞれデータ保持用のメモリを備えており、各メモリに逆離散フーリエ変換の結果得られた1周期の時間T分のデータを保存する。
【0049】
各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4は、メモリにストアされた1周期分のデータと、任意の数のゼロとを交互に出力することにより、出力パルス信号の繰り返し周波数を任意に可変することが可能になる。また、各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4に供給するクロック周波数を可変すると、生成されるパルス幅はクロック周波数と反比例する。これらの特徴を組み合わせれば、パルス幅とパルス繰り返し周期を離散時間ステップで任意に設定することが可能となる。
【0050】
この場合、実際には、第1形態で説明したように複数のモジュール間には遅延時間の差が存在するため、各モジュール間の時間同期を実現するためには、コントローラ2による調整が必要となる。以下では、説明を簡略化するため、第1の信号処理モジュールM1と第2の信号処理モジュールM2との2つの信号処理モジュールの出力を合成する場合について説明する。
【0051】
第1の信号処理モジュールM1は、図17に実線の細線で示す波形のように、逆離散フーリエ変換の結果得られた周波数1/Tの正弦波を1周期分出力する。また、第2の信号処理モジュールM2は、図17に破線の波形で示すように、周波数2/T正弦波を2周期分出力する。続いて、信号処理モジュールM1,M2は、共に2Tの期間、ゼロを出力する。以後、図17に示すように、正弦波出力とゼロ出力を繰り返すものとする。
【0052】
ここで、第1の信号処理モジュールM1の遅延時間が、第2の信号処理モジュールM2の遅延時間と全く等しい場合を考える。このとき、第1の信号処理モジュールM1の出力と第2の信号処理モジュールM2の出力とを合成した出力信号は、図17に実線の太線で示す波形となる。挿入するゼロの数を変えれば、パルス繰り返し周波数を自由に可変することができる。また、各信号処理モジュールに供給するクロック周波数を可変にすれば、パルス幅を可変とすることができる。
【0053】
次に、第2の信号処理モジュールM2の遅延時間が第1の信号処理モジュールM1の遅延時間に対して若干大きい場合を考える。この場合、第1の信号処理モジュールM1と第2の信号処理モジュールM2との合成信号は、図18に実線の太線で示す波形となり、図17と比較すれば大きく歪んでいることがわかる。
【0054】
このため、以下の処理を行う。第2の信号処理モジュールM2の遅延時間と第1の信号処理モジュールM1の遅延時間との差に相当する位相差を、第2の信号処理モジュールM2の出力信号の初期位相に加算する。第1の信号処理モジュールM1は、周波数1/Tの正弦波を2周期分出力する。第2の信号処理モジュールM2は、補正した初期位相を有する周波数2/Tの正弦波を4周期分出力する。その結果得られた合成信号を図19に実線の太線で示す。
【0055】
図19に示す合成信号において、時間Tから2Tの区間は、図18で示した遅延時間差がない場合に得られる合成信号を時間Tだけ遅延させた信号に等しい。そこで、0からTまでの期間と2Tから3Tまでの期間とを、混合器3の後段に位置するスイッチ部4により除去すると、図20に示した信号が得られる。この波形は、図17の信号を時間Tだけ遅らせた波形となっている。
【0056】
具体的には、第1形態と同様、コントローラ2で目的信号の1周期分を離散フーリエ変換し、そのスペクトル情報(振幅、位相)を分割して第1〜第4の信号処理モジュールM1〜M4の各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4にそれぞれ入力する。続いて各信号処理モジュールM1〜M4の遅延時間差に相当する位相量だけ、各デジタル信号生成モジュールSG1〜SG4に入力するスペクトル情報の初期位相を補正する。
【0057】
そして、この初期位相を補正したスペクトル情報に基づいて各信号処理モジュールM1〜M4で生成出力される信号を混合器3で合成し、その合成出力に含まれる不要信号をスイッチ部4で除去する。これにより、各信号処理モジュール間の遅延時間差の影響を除去することができる。
【0058】
この場合、信号処理モジュールが、平坦な通過特性を有していない場合には、信号処理モジュールに入力するスペクトル情報の振幅を補正したい量だけ加減することにより、信号処理モジュールの通過特性を平坦にすることができる。更に、任意信号発生装置の外部に存在する伝送路の周波数特性が平坦でない場合には、各信号処理モジュールに設定するスペクトル情報にプリディストーション処理を施すことにより、伝送路の周波数特性を補正することも可能である。尚、プリディストーション処理は、予め逆特性の非線形歪を加えておくことで歪補償を行う非線形信号処理である。
【0059】
第2形態では、第1形態と同様、信号処理モジュールの並列数に応じて、各モジュールに必要なサンプリング周波数を効果的に低減することができるばかりでなく、出力信号の繰り返し周期を離散時間ステップで任意に設定することができる。更に、各信号処理モジュールに供給するクロック信号の周波数を可変にすれば、生成する信号のパルス幅を任意に設定することが可能となる。
【0060】
この場合、逆離散フーリエ変換にて信号生成を行うことは、直交周波数多重分割(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式による変調と等価であるため、サブキャリアの一部若しくは全てを使ってデータ通信用の送信波を生成することができる。すなわち、本実施の形態の任意信号発生装置は、1つの信号発生装置でレーダ等の送信波とデータ通信のOFDM被変調波とを時分割方式で生成することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 任意信号発生装置
2 コントローラ
3 混合器
4 スイッチ部
M1〜M4 信号処理モジュール
SG1〜SG4 デジタル信号生成モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域の任意波形の目的信号を生成する任意信号発生装置であって、
周波数領域毎の入力データに基づいて、互いに異なる周波数領域の信号を生成する複数の信号生成部と、
上記複数の信号生成部からの出力を合成する信号合成部と、
上記信号合成部で合成された合成信号の通過と遮断を行い、上記目的信号として出力するスイッチ部と、
上記複数の信号生成部から上記信号合成部に至るまでの各信号の遅延時間の差に基づいて上記入力データを補正し、上記複数の信号生成部で生成される各信号の相対位相を調整すると共に、上記遅延時間の差に起因する上記合成信号の不連続部分を上記スイッチ部を介して除去する制御部と
を備えることを特徴とする任意信号発生装置。
【請求項2】
上記入力データは、時間領域の信号を離散フーリエ変換して複数の周波数領域に分割したデータであることを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項3】
上記信号生成部は、生成した信号をメモリに保存し、該メモリに保存したデータと任意の数のゼロデータとを交互に出力することにより、任意の繰り返し周波数の信号を出力可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の任意信号発生装置。
【請求項4】
上記複数の信号生成部の一部若しくは全部に通信用のデータを入力し、直交周波数多重分割方式による被変調波を生成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の任意信号発生装置。
【請求項5】
上記目的信号をレーダ用の送信波とし、該レーダ用の送信波と上記通信用の被変調波とを時分割で生成することを特徴とする請求項4記載の任意信号発生装置。
【請求項1】
広帯域の任意波形の目的信号を生成する任意信号発生装置であって、
周波数領域毎の入力データに基づいて、互いに異なる周波数領域の信号を生成する複数の信号生成部と、
上記複数の信号生成部からの出力を合成する信号合成部と、
上記信号合成部で合成された合成信号の通過と遮断を行い、上記目的信号として出力するスイッチ部と、
上記複数の信号生成部から上記信号合成部に至るまでの各信号の遅延時間の差に基づいて上記入力データを補正し、上記複数の信号生成部で生成される各信号の相対位相を調整すると共に、上記遅延時間の差に起因する上記合成信号の不連続部分を上記スイッチ部を介して除去する制御部と
を備えることを特徴とする任意信号発生装置。
【請求項2】
上記入力データは、時間領域の信号を離散フーリエ変換して複数の周波数領域に分割したデータであることを特徴とする請求項1記載の任意信号発生装置。
【請求項3】
上記信号生成部は、生成した信号をメモリに保存し、該メモリに保存したデータと任意の数のゼロデータとを交互に出力することにより、任意の繰り返し周波数の信号を出力可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の任意信号発生装置。
【請求項4】
上記複数の信号生成部の一部若しくは全部に通信用のデータを入力し、直交周波数多重分割方式による被変調波を生成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の任意信号発生装置。
【請求項5】
上記目的信号をレーダ用の送信波とし、該レーダ用の送信波と上記通信用の被変調波とを時分割で生成することを特徴とする請求項4記載の任意信号発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−66815(P2011−66815A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217484(P2009−217484)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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