説明

休耕田を利用した水質浄化方法

【課題】窒素やリン等の栄養塩類を多量に含む畜産排水等を効率的に処理し、水質を浄化することができる方法を提供すること。
【解決手段】飼料用植物を植栽した休耕田に栄養塩を含む排水を供給し、該飼料用植物に該排水中の栄養塩を吸収させることにより、該排水中の栄養塩を除去し、該休耕田の土壌底部から浸透後の排水を排出させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、休耕田を利用した水質浄化方法に関するものである。より詳しくは、休耕田に植栽した飼料用植物を利用して、窒素やリン等の栄養塩類を多量に含む畜産排水等を効率的に処理し、水質を浄化する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川流域の水質管理において、窒素やリン等栄養塩類を多量に含む生活排水、農業排水、畜産排水等の面源汚染対策が重要になってきている。
例えば、作付け転換用飼料米水稲を栽培した水田を利用した汚水浄化方法が開示されている。この方法は、水田土壌に予め汚泥を混合し、飼料米水稲を栽培した水田内に汚水を静かに還流し、微生物の作用により汚泥中の有機物を分解するものである。しかしながら、上記汚水浄化方法は、汚水中の有機物のみを分解処理するものであり、汚水中の窒素やリンを処理することができないという問題点がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、葦等のイネ科多年草を植設し、越流を生じさせる堰を設けた雨水排出水浄化装置が開示されており、該装置により雨水排水処理をしたことが開示されている。しかしながら、この装置は、ゴルフ場や公園等から排出される肥料等を含んでいる排出水を処理することができるにすぎないものであり、高濃度の窒素等を含んだ畜産排水等を処理することができない(例えば、特許文献2)。
【0004】
さらに、下水処理場において活性汚泥法により処理した二次処理水を排水路の水面で水上栽培する単子葉植物の培養水とし、二次処理水中の無機養分を吸収除去する水質浄化方法が開示されている。しかしながら、上記水質浄化方法は、未回収で河川に放流されていた窒素やリンの放出量を減少することができるが、高負荷の窒素、リン処理効果という観点からすると十分でない(例えば、特許文献3)。
【0005】
このような水生植物を用いた水質浄化方法は、ある程度の窒素やリンを処理することができるものの、水質浄化効果を長期間持続させるために、該水生植物を系内から除去するため、収穫する必要がある。しかしながら、水質浄化方法において、収穫された水生植物を有効に利用する方法がなく、多くの場合焼却処分とされている。このため、収穫された水生植物の焼却コストや焼却時に発生する粉塵や延焼が問題となる。
【0006】
一方、ヨシ等に代表される水生植物を使用した休耕田の水質浄化方法が提案されている。この方法においても、水生植物を処分することが必要となるが、ヨシ等は自然植物であるため、収穫後の処分が大きな問題となっている。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−088096
【特許文献2】特開平10−061601
【特許文献3】特開平 5−031494
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、窒素やリン等の栄養塩類を多量に含む畜産排水等を効率的に処理し、水質を浄化するとともに、畜産排水中の栄養塩類を吸収することにより育成、植栽される飼料用植物を飼料等のバイオマス資源として活用することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、休耕田に植栽する水生植物として飼料用植物を採択し、これに畜産排水等に含まれる窒素やリンを吸収させて、効率良く畜産排水等を処理することができ、同時に休耕田に植栽される飼料用植物を活用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は以下の事項に関するものである。すなわち、
(1)飼料用植物を植栽した休耕田に栄養塩を含む排水を供給し、該飼料用植物に該排水中の栄養塩を吸収させることにより、該排水中の栄養塩を除去し、該休耕田の土壌底部から浸透後の排水を排出させることを特徴とする水質浄化方法。
(2)飼料用植物を植栽した休耕田に栄養塩を含む排水を供給し、該飼料用植物に該排水中の栄養塩を吸収させることにより、該排水中の栄養塩を除去し、該休耕田の土壌底部から浸透後の排水を排出させた後、該排水の供給を停止すると同時に該休耕田の土壌底部から浸透後の排水を排出することを特徴とする水質浄化方法。
(3)前記飼料用植物は、ホールクロップサイレージに供することのできる飼料用イネであることを特徴とする(1)ないし(3)にいずれかに記載の水質浄化方法。
(4)前記栄養塩を含む排水は、畜産のし尿を含有する排水を好気発酵処理した排水、畜産のし尿を含有する排水を嫌気発酵処理した排水、河川水から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする(1)ないし(3)にいずれかに記載の水質浄化方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、休耕田に植栽した飼料用植物を利用して、窒素やリン等の栄養塩類を多量に含む畜産排水等を効率的に処理し、水質を浄化することができる。同時に畜産排水中の栄養塩類を吸収することにより育成植裁される飼料用植物を収穫し、畜産等の飼料として活用することができる。すなわち、本発明は、飼料イネ等の飼料用植物により、畜産排水等の排水を処理し水質を浄化することができ、収穫された飼料用植物を家畜等に供することができるので環境負荷を軽減できる。つまり、本発明は、飼料用植物を活用して排水処理による水質浄化とバイオマス資源である飼料用植物によるサイクルを構築し、飼料用作物の自給率向上にも寄与することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の休耕田を利用した水質浄化方法は、休耕田に植栽した飼料用植物を利用して、窒素やリン等の栄養塩類を多量に含む畜産排水等を効率的に処理し、畜産排水等の水質を浄化することを特徴としている。
【0013】
本発明の水質浄化方法において使用される飼料用植物とは、窒素やリン等の栄養塩を大量に吸収し摂取することができる飼料用植物であれば特に制限されるものではないが、飼料イネを例示することができる。
【0014】
上記飼料イネは、多肥栽培に適し、通常のイネよりもバイオマス生産量が大きく、窒素含有量も多い飼料用植物である。しかも飼料イネの窒素含有量は、自然植物であるヨシの窒素含有量に匹敵し、収穫によって休耕田から取り出すことのできる窒素量が大きいという利点を有するものである。かかる飼料イネを採択した場合には、収穫後の飼料イネをすべて畜産等の飼料に供することができることから、従来問題となっていた植物の処理コスト及び処理エネルギーを削減することができるものとなる。
【0015】
上記飼料イネは、ホールクロップサイレージとして家畜用飼料として供することができものである。ここで、ホールクロップサイレージとは、

植物発酵飼料をいう。上記飼料イネは、多肥栽培により大量な栄養塩を摂取することができ、かつ単位面積当たりのバイオマスを多く生産することができる。上記飼料イネとしては、例えば、クサホナミ(品種名)、ホシユタカ(品種名)、ホシアオバ(品種名)、クサノホシ(品種名)、くさなみ(品種名)、はまさり(品種名)、北陸168号(品種名)を例示することができる。これらの品種は、学名(Oryza sativa L)に属するものである。
【0016】
本発明において、上記飼料用植物体が吸収する栄養塩を含む排水とは、
窒素やリン等の栄養塩類を多量に含む排水であれば、特に限定されるものではないが、河川水、河川に排出される畜産排水、生活排水、工業排水等を例示することができる。勿論、窒素やリン等の栄養塩類を微量に含む排水であっても良い。
【0017】
本発明において、上記飼料用植物が植栽される休耕田とは、植物を育成するために必要な条件を満たしていることが必要である。その土壌は、火山灰を母材とした黒ボク土や多湿黒ボク土から構成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の水質浄化方法においては、窒素やリン等栄養塩類を多量に含む排水等を効率的に処理するために、排水中に含まれる窒素やリン等の栄養塩類の濃度及び形態を勘案して、以下の方法を採用することができる。
まず、飼料用植物を植栽した休耕田に栄養塩を含む排水を供給し、該飼料用植物に該排水中の栄養塩を吸収させることにより、該排水中の栄養塩を除去し、該休耕田の土壌底部から浸透後の排水を排出させる方法である。上記方法は湛水連続浸透流れ方法とよばれるものであり、休耕田に畜産排水等を供給し、飼料用植物に排水中の栄養塩を吸収させ、土壌底部から吸収させた後の畜産排水等排出させる方法である。飼料用イネが植栽された休耕田に畜産排水等を供給することによって、供給された排水は、休耕田の全領域に亘って土壌に対して鉛直方向に浸透する。浸透した排水は、飼料イネ等の飼料用植物の根圏領域を通過し、ここで排水中に含まれる窒素、リン等の栄養塩は、飼料用植物に吸収されることとなる。すなわち、本発明の水質浄化方法において、個々の飼料イネ等の飼料用植物は、反応器となり、休耕田の全領域に亘って土壌に対して鉛直方向に浸透することにより通過する排水等に含まれる栄養塩を吸収する。
【0019】
飼料用植物である飼料イネ等の根圏には、微生物が付着しており、この微生物は、排水中の栄養塩であるアンモニア態の窒素を硝化反応により亜硝酸又は硝酸態窒素に硝化する。生成した亜硝酸又は硝酸態窒素は、根圏と根圏の間より嫌気的な環境で脱窒反応により脱窒され、窒素ガスになり、排水中から除去されることとなる。上記硝化反応は、硝化菌の働きでアンモニアを亜硝酸に酸化する反応と、亜硝酸を硝酸に酸化する反応から成り立つ。硝化菌は好気性菌であるため、土壌の通気性、即ち酸素量は重要な要因となる。
以下、反応式に示す。
【0020】
【化1】

上記脱窒反応は、脱窒菌は嫌気性条件下においてNO2-、NO3-が存在すれば、分子状酸素の代わりにこれらを用いて増殖することができる。上記脱窒反応は以下の式から成り立っている。一般に、脱窒菌は従属栄養細菌であるため、水素供与体としての有機物が必要とされる。
【0021】
【化2】

【0022】
上記脱窒反応に必要とされる有機物は、飼料イネ等の飼料用植物の根から放出された有機物又は植物の収穫後に土壌に残った植物残渣である。例えば、排水等が畜産排水である場合には、排水に含まれるリンの大部分は、飼料用植物である飼料イネに吸収される他、土壌中の黒ボク土等にも吸着される。
【0023】
上記湛水連続浸透流れ方式において、休耕田の土壌表面を基準とした一定に保持する場合の水位は、水生植物の種類や排水中の窒素やリン等の栄養塩の含有量の観点から、好ましくは3.0cm〜9.0cm、更に好ましくは5.0cm〜6.0cmであることが好ましい。水位が3.0cm未満である場合には飼料用植物が植栽することができず、結果的に排水の処理が不十分となる。一方、水位が9.0cmを超えると飼料用植物が腐敗してしまうため好ましくない。
【0024】
上記の水位は、休耕田の系外に設置されている上部排出管6の高さを適宜調整することにより設定することができる。
【0025】
さらに、本発明の水質浄化方法においては、窒素やリン等栄養塩類を多量に含む排水等を効率的に処理するために、排水中に含まれる窒素やリン等の栄養塩類の濃度及び形態を勘案して、上記の湛水連続浸透流れ方法を採用した後、栄養塩を含む排水の供給を停止すると同時に該休耕田の土壌底部から浸透後の排水を排出する方法を採用することもできる。上記方法は間欠浸透流れ方法とよばれるものである。
【0026】
すなわち、間欠浸透流れ方法とは、前述した湛水連続浸透流れ方法を採用した後、休耕田の水位を一定に保持した後、畜産排水等の供給を停止し、同時に土壌底部から、水生植物に排水中の栄養塩を吸収させた後の畜産排水等を排出させる方法である。このように排水の供給を停止し、同時に排水の排出を行うことによって、休耕田の土壌表面を基準とした一定に保持された水位は降下し、最終的には、休耕田内の排水は消失する。この結果、飼料イネ等の水生植物の根圏は大気中の酸素と接触することとなり、微生物の活性化を図ることができる。つまり、大気中の酸素を飼料イネの根圏に接触させて好気状態を作り出すことができる。
【0027】
本発明の水質浄化方法においては、上記の湛水連続浸透流れ方法及び/又は間欠浸透流れ方法を採用することによって、窒素やリン等の栄養塩類を多量に含む排水等を効率的に処理することができる。すなわち、排水中に含まれる窒素やリン等栄養塩の濃度や形態に応じて、上記の方式を適宜組み合わせたり、どちらか一方を使い分けたりすることができる。
【0028】
畜産排水中の栄養源である窒素は、アンモニア態窒素(NH4+)として存在する場合と亜硝酸態窒素(NO)又は硝酸態窒素(NO3)として存在する場合がある。例えば、本発明の水質浄化方法により処理される排水が畜産のし尿を含有する排水を好気発酵処理した排水である場合には、該排水中には、硝酸態窒素等が多量に存在するため、湛水連続浸透流れ方法により硝酸態窒素を処理し、脱窒反応により窒素を除去することができる。一方、排水が畜産のし尿を含有する排水を嫌気発酵処理した排水である場合には、該排水中にはアンモニア態窒素が多量に存在するため硝化反応により窒素を除去することが好ましい。また、畜産排水等の窒素及びリンの濃度により上記方法の適用時間、回数等を変化させることができる。
【0029】
本発明の水質浄化方法を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の水質浄化方法に係る休耕田全体の概略を示した断面図である。休耕田は、畦又は仕切り板8で囲まれ、飼料イネ等の飼料用植物1、土壌2及び不透水層4から構成されるものである。飼料用植物1は、茎葉部1aと根部1bから構成されており、飼料用植物1は、根部1bにより、休耕田の土壌2に植栽されている。飼料イネ等の飼料用植物1は、およそ1m2当たり25株〜35株で土壌2に植栽されている。
【0030】
土壌2の上方には、窒素やリン等の栄養塩類を多量に含む排水等を飼料用植物1の根部1bに供給するための排水供給管5が設置されている。
排水供給管5から飼料用植物1に供給される排水の供給量(水量負荷)は、排水供給管5に設置されているポンプ(図示せず)により一定に制御することができる。土壌2の底部には、不透水層4が存在しており、土壌2と不透水層4の境界面には、飼料用植物1に該排水中の栄養塩を吸収させた後の土壌2の底部から浸透後の排水を排出させるための浸透排出管3bが設置されている。浸透排出管3bは、浸透後の排水の排出を円滑にするためやや傾斜して設置され、畦又は仕切り板8で仕切られた休耕田の外部で上部排出管6と底部排出管7に分岐している。上部排出管6と底部排出管7は、畦等で仕切られた休耕田の外部に係属している。
【0031】
暗渠3は、浸透排出管3bと、該浸透排出管3b表面に設けられたろ過帯3aからなり、浸透後の排水は該ろ過帯3aでろ過され、該浸透排出管3bを通じて排出される。
【0032】
本発明の水質浄化方法に係る畦等で仕切られた休耕田に植栽された飼料用植物の根部1bに排水供給管5から窒素やリン等栄養塩類を多量に含む畜産排水等が供給される。その結果、畜産排水等は、休耕田の全領域に亘って土壌に対して鉛直方向に浸透する。浸透した排水は、飼料イネ等の飼料用植物の根圏領域を通過し、ここで排水中に含まれる窒素、リン等の栄養塩は、根圏領域に存在する微生物の作用により吸収されることとなる。
【0033】
さらに、飼料イネ等の飼料用植物によって処理された畜産排水等は、土壌2に浸透し、不透層5との境界面に埋設されているろ過帯3aで被覆された浸透排出管3bからなる暗渠3を通じ上部排出管6を経由して休耕田系外に放出される。水位は、上部排出管6の高さを調節することにより設定することができる。上部排出管6から排出される排水は、循環水として利用できることは勿論のこと、河川に放流しても良いし、地下に浸透させ地下水の涵養に供することもできる。なお、この場合は、底部排出管8は閉じられている。窒素、リン等の栄養塩を吸収して休耕田に栽植された飼料イネ等の飼料用植物は、バイオマスがきわめて多く、その葉、茎、籾を混合処理してホールクロップサイレージとして家畜等に供給することができる。
【0034】
一方、飼料イネ等の飼料用植物の収穫後、土壌中に残存する飼料イネの
茎の一部と根はその後土壌中の微生物に分解され、脱窒反応の炭素源有機物として利用することができる。すなわち、本発明によれば、排水中の窒素、リン等の栄養塩の濃度に応じて、湛水連続浸透流れ方法又は間欠浸透流れ方法を使い分け、さらに、飼料用植物の収穫の際には、植物体の一部を土壌中に残存させ、これを脱窒反応に必要な炭素源有機物として利用し、効率的に窒素、リン等の栄養塩の除去を行うことができる。
【0035】
以下、本発明につき、実施例を用いて説明するが、本発明は、なんらこれに限定されるものではない。
(実施例1)
河川水の水質浄化
休耕田に飼料用植物として、飼料イネを植栽した。水位が5.0cmとなるように排出管7を調整した。対象排水として、河川水を休耕田に供給した。その水量負荷を0.05m3/m2・dに設定して、飼料イネによる河川水中の窒素及びリンの除去を行った。河川水の処理方法は、湛水連続浸透流れ方法及び間欠浸透流れ方法を採用した。排水中の窒素、リンの流入濃度と流出濃度から除去率を算出し、この値より除去速度を決定した。結果を表1及び表2に示す。
【0036】
(実施例2〜12、比較例1〜比較例4)
河川水の水量負荷、浸透流れ法を変化させた以外は実施例1と同様にして、飼料イネによる河川水中の窒素及びリンの除去を行った。結果を表1及び表2に示す。なお、比較例1〜4においては、休耕田に飼料イネを植栽しないで、実施例1と同様の条件にて河川水中の窒素及びリンの除去を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
(実施例13〜18及び比較例5,6)
畜産排水の水質浄化
対象排水として、畜産排水を休耕田に供給した以外は実施例1と同様にして飼料イネによる畜産排水中の窒素及びリンの除去を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
本発明の実施例1〜18、比較例1〜6において、排水中の窒素及びリンの濃度測定及び除去率、除去速度の算出は以下の通りを行った。
(流入濃度及び流出濃度の測定)
流入水および流出水中の全窒素、全リン濃度を測定した。全窒素(T-N)濃度の測定は、アルカリ性ペルオキソ二硫酸カリウム分解-紫外線吸光光度法により行った。全リン(T-P)濃度の測定は、ペルオキソ二硫酸カリウム分解法により行った。
(除去率)
窒素の除去率は、上記測定法によって得られた流入濃度及び流出濃度の測定値を用いて、以下の式により算出した。
除去率(%)=[(流入水中全窒素濃度)−(流出水中全窒素濃度)]/(流入水中全窒素濃度)×100
リンの除去率も窒素の除去率と同様に算出した。
(除去速度)
窒素の除去速度は、以下の式により算出した。
除去速度(mg/m2・d)
=[(流入水中全窒素濃度)−(流出水中全窒素濃度)]×水量負荷
リンの除去速度も窒素の除去速度と同様に算出した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の休耕田を利用した水質浄化方法は、窒素やリン等栄養塩類を多量に含む畜産排水等の水質浄化手段としての利用に供することができる。特に畜産排水中の栄養塩類を吸収することにより植栽される飼料用植物をバイオマス資源として飼料として家畜等に供することができることから畜産業を含めた循環農業の利用に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の水質浄化方法に係る休耕田全体の概略を示した断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 飼料用植物
1a 茎葉部
1b 根部
2 土壌
3 暗渠
3a ろ過帯
3b 浸透排出管
4 不透水層
5 排水供給管
6 上部排出管
7 底部排出管
8 畦又は仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料用植物を植栽した休耕田に栄養塩を含む排水を供給し、該飼料用植物に該排水中の栄養塩を吸収させることにより、該排水中の栄養塩を除去し、該休耕田の土壌底部から浸透後の排水を排出させることを特徴とする水質浄化方法。
【請求項2】
飼料用植物を植栽した休耕田に栄養塩を含む排水を供給し、該飼料用植物に該排水中の栄養塩を吸収させることにより、該排水中の栄養塩を除去し、該休耕田の土壌底部から浸透後の排水を排出させた後、該排水の供給を停止すると同時に該休耕田の土壌底部から浸透後の排水を排出することを特徴とする水質浄化方法。
【請求項3】
前記飼料用植物は、ホールクロップサイレージに供することのできる飼料用イネであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水質浄化方法。
【請求項4】
前記栄養塩を含む排水は、畜産のし尿を含有する排水を好気発酵処理した排水、畜産のし尿を含有する排水を嫌気発酵処理した排水、河川水から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1ないし請求項3にいずれか1項に記載の水質浄化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−255577(P2006−255577A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76065(P2005−76065)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】