説明

伝搬特性測定システム、伝搬特性測定方法および無線装置

【課題】簡易な構成で電波の伝搬特性を測定できる測定システムおよび測定方法、あるいは、そのような測定に用いることが可能な無線装置を提供する。
【解決手段】伝搬特性測定システム2は、無線端末2Aと、測定装置2Bとを備える。無線端末2Aは、既知のデータを無線信号(電波信号)として送信する無線LANアクセスポイント3(電波送信部)から、無線信号を受信するように構成される。測定装置2Bは、無線LANアクセスポイント3から送られた無線信号を受信して、受信した無線信号である受信信号の波形を測定する。測定装置2Bは、受信信号を、無線LANアクセスポイントから送られる無線信号として予め推定された推定信号と比較することによって、無線信号の伝搬特性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝搬特性測定システム、伝搬特性測定方法および無線装置に関し、特に電波の伝搬特性を測定するためのシステム、装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network)システムを代表とする無線通信サービスが屋外で利用可能となっている。このため屋外における無線特性の評価(サービス評価)が求められつつある。
【0003】
屋外で無線通信サービスを利用する場合、たとえば無線アクセスポイントから無線端末に直接届く信号波と、建物で一旦反射してからその無線端末に届く信号波(遅延波)とが重なりあうことで通信品質が劣化する可能性がある。あるいは、無線アクセスポイントから無線端末に送られる信号に外来雑音が加わることで通信品質が劣化することも考えられる。したがって今後は、無線特性の評価の重要性がより高くなると予想される。
【0004】
無線特性を評価するには、無線信号の送信元(たとえば無線LANアクセスポイント)から送出された信号の波形と、無線信号の受信先(無線端末)で受信した信号の波形とを比較することが効果的である。また、遅延プロファイルを測定してフェージングの影響を評価することは、無線品質の確保にとって重要な技術となる。たとえば特開2008−42574号公報(特許文献1)あるいは特開2002−300131号公報(特許文献2)は、各無線局が送出する信号を基準信号として用いることにより遅延プロファイルを測定する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−42574号公報
【特許文献2】特開2002−300131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
送信元と受信先との間で無線信号の波形を比較するための具体的な方法として、たとえば図8に示した方法が考えられる。図8を参照して、無線信号を送信するアクセスポイント(AP)と、その無線信号を受信する無線端末のそれぞれの近傍に測定装置を配置し、両方の測定装置を同期させて測定を行なう。両方の測定装置で得られた信号波形を比較すれば無線特性を評価することができる。しかしながら2つの測定装置の間で測定を同期させるためには、2つの測定装置の間を信号ケーブルで接続することが必要になると考えられる。無線端末とアクセスポイントとはある程度離れているため、信号ケーブルが長くなると考えられる。このため、2つの測定装置および信号ケーブルによって構成される測定システムが大掛かりなものになることが懸念される。
【0007】
図9は、図8に示した方法における課題を解決するための1つの改善例を示した図である。図9を参照して、測定装置は、波形が既知である無線信号を受信して、その受信波形を測定する。測定された信号波形を既知の波形と比較することで無線特性を評価することができる。
【0008】
波形が既知である信号としては、たとえば無線パケットのプリアンブルが考えられる。プリアンブルは、通信の同期などに用いられ、固定されたビットの列からなる。
【0009】
しかしながら、複数のアクセスポイントの各々から無線信号を受信可能な環境に測定装置が置かれている場合、どのアクセスポイントから無線信号が送信されているかを特定することは容易ではない。上記の特許文献1および特許文献2のいずれとも、このような問題に対する解決策を提示していない。
【0010】
さらに、図10に示されるように、従来では、無線特性を測定するために指向性アンテナ22を測定装置に取り付けていた。一般に、指向性アンテナは、複数の素子を一方向に沿って並べて構成されているため大型である。
【0011】
人が密集しやすい場所(たとえば繁華街など)では大型のアンテナを用いて無線特性を測定することは難しい。また、無線通信サービスの利用実態をできるだけ正確に把握するためには、利用者に気付かれない状態で無線特性を測定できることが好ましい。しかしながら大型のアンテナは人目につきやすい。このため、無線端末に内蔵されたアンテナを用いて無線特性を評価することが考えられる。しかし、一般に無線端末に内蔵されたアンテナは無指向性であるため、電波の到来方向の評価、あるいは干渉波の影響を抑制した評価などといった無線特性の評価が難しい。
【0012】
さらに、屋外での電波の受信状態を把握すること(受信環境の把握)は、無線通信に限らず、端末が情報を電波で受信するサービスの多くにおいて要求されると考えられる。このようなサービスの一例としては、たとえば地上デジタル放送が挙げられる。
【0013】
したがって本発明の目的は、簡易な構成で電波の伝搬特性を測定できる測定システムおよび測定方法、あるいは、そのような測定に用いることが可能な無線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある局面に係る伝搬特性測定システムは、既知のデータ系列を電波信号として送信する電波送信部から、電波信号を受信するように構成された端末と、電波送信部から送られた電波信号を受信して、受信した電波信号である受信信号の波形を測定する波形測定部とを備える。波形測定部は、受信信号を、電波送信部から送られる電波信号として予め推定された推定信号と比較することによって、電波信号の伝搬特性を評価する。
【0015】
好ましくは、推定信号は、電波送信部から送信方式に従って既知のデータ系列が端末へと送信されるために、予め推定された信号である。
【0016】
好ましくは、波形測定部は、受信信号と推定信号との間の相関に基づいて、電波信号の伝達関数を推定することにより電波信号の伝搬特性を評価する。
【0017】
好ましくは、伝搬特性測定システムは、電波吸収体を含み、端末を収納する収納体をさらに備える。収納体は、電波信号を端末に通すための開口部と、端末の操作者が収納体の外から端末を操作するために収納体に形成された袋部と、透明でありかつ電波信号を実質的に遮蔽する材料で覆われ、操作者が端末の状態を確認するための窓部とを含む。
【0018】
好ましくは、電波送信部は、無線LANアクセスポイントであり、端末は、無線端末である。
【0019】
本発明の他の局面に係る伝搬特性測定方法は、既知のデータ系列を電波信号として送信する電波送信部から、電波信号を受信するように構成された端末と、電波送信部から送られた電波信号を受信して、受信した電波信号である受信信号の波形を測定する波形測定部とを用いた伝搬特性測定方法であって、電波送信部から既知のデータ系列を電波信号として送信するステップと、波形測定部が電波信号を受信して電波信号の波形を測定するステップと、波形測定部によって測定された波形を、電波送信部から送られる電波信号として予め推定された推定信号の波形と比較して、電波信号の伝搬特性を評価するステップとを備える。
【0020】
本発明のさらに他の局面に係る無線装置は、電波を送信または受信する無線端末と、電波吸収体を含み、無線端末を収納する収納体とを備え、収納体は、無線端末が収納体の外部に対して電波を送信または収納体の外部から電波を受信するために、収納体に形成された開口部と、無線端末の操作者が収納体の外から無線端末を操作するために収納体に形成された袋部と、透明でありかつ電波を実質的に遮蔽する材料で覆われ、操作者が無線端末の状態を確認するための窓部とを含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易な構成で電波の伝搬特性を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1に係る測定装置を用いた伝搬特性の測定を説明するための図である。
【図2】図1に示した無線端末と無線LANアクセスポイントとの間でのリンク手順の一例を説明したシーケンス図である。
【図3】無線LANアクセスポイントと無線端末との間で伝送される無線信号(無線パケット)の構造を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る測定方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る無線装置の概略図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る無線装置の利用形態を模式的に示した図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る測定システムの構成の変形例を模式的に示した図である。
【図8】送信元と受信先との間で無線信号の波形を比較するための具体的な方法として考えられる1つの例を示した図である。
【図9】図8に示した方法における課題を解決するための1つの改善例を示した図である。
【図10】従来の無線特性の測定方法を模式的に説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
また、以下に説明する実施の形態では、電波による情報の伝送の一つの具体例として、無線LANによる無線通信を例示する。
【0025】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る測定装置を用いた伝搬特性の測定を説明するための図である。図1を参照して、この実施の形態では、通信システム100は、サーバ1と、伝搬特性測定システム2と、無線LANアクセスポイント(AP)3と、サーバ1と無線LANアクセスポイント3とを接続するネットワーク4(代表的にはインターネット)とによって構成される。サーバ1には、既知のデータ系列5が格納される。「既知のデータ系列」とは、伝搬特性の測定前の段階で予め定義されたデータ系列である。無線LANアクセスポイント3は、端末に既知のデータ系列を電波信号として送信するための「電波送信部」を構成する。この場合の「電波信号」とは、無線信号である。
【0026】
伝搬特性測定システム2は、無線端末2Aと、測定装置2Bとを備える。無線端末2Aは、無線LANアクセスポイント3を経由してサーバ1に格納されたデータ系列5をダウンロードするように構成される。無線端末2Aの種類は特に限定されず、たとえばパーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯型の無線端末により実現可能である。
【0027】
測定装置2Bは、無線LANアクセスポイント3から送信された無線信号を受信して、その無線信号の波形を測定する。測定装置2Bは、たとえばスペクトルアナライザによって実現される。測定装置2Bは、無線LANの周波数帯(日本では2.4GHz帯、5GHz帯)の電波を受信できるよう構成される。無線信号を受信するためのアンテナが測定装置2Bに外付けされていてもよいし、測定装置2Bに内蔵されていてもよい。
【0028】
この実施の形態では、次のようにして伝搬特性が評価される。まず、無線端末2Aと無線LANアクセスポイント3との間で通信リンクが確立される。これにより、サーバ1と無線端末2Aとの間の通信リンクが確立される。
【0029】
次に、無線端末2Aがサーバ1に格納されたデータ系列5をダウンロードする。サーバ1から無線端末2Aへのデータ系列5の転送の回数は少なくとも1回であるが、複数回行なわれることがより好ましい。
【0030】
サーバ1から無線LANアクセスポイント3に送られたデータ系列5は、無線LANアクセスポイント3において変調および暗号化され、無線信号として送信される。測定装置2Bは、無線LANアクセスポイント3から送信された無線信号を受信する。図1において、無線信号6は、無線LANアクセスポイント3から送られた無線信号を示し、無線信号7は、無線LANアクセスポイント3から送られて測定装置2Bで受信される無線信号を示している。
【0031】
変調方式は通信規格に依存するため特に限定されないが、たとえばOFDM(直交周波数分割多重)を採用できる。また、暗号方式には、無線LANで一般的なWEPを用いることができる。
【0032】
測定装置2Bは無線信号7を受信して、無線信号7の波形を測定する。一方、無線LANアクセスポイント3から送られる無線信号6の波形は、推定によって予め求められる。無線信号6が伝送するデータ系列、無線LANアクセスポイント3と無線端末2Aとの間の通信方式(変調方式および暗号化方式)は予め定められている。したがって、データ系列の内容および通信方式に基づいて、無線信号6の波形を予め推定することが可能である。推定された無線信号6の波形は、測定装置2Bに予め記憶される。なお、無線端末2Aが推定された無線信号6の波形のデータ系列を予め記憶し、無線特性の測定の際にそのデータ系列を測定装置2Bに送信してもよい。
【0033】
測定装置2Bは、受信した無線信号7の波形と推定された無線信号6の波形とを比較して無線特性を評価する。具体的には、受信した無線信号7の波形と推定された無線信号6の波形との相関を求めて無線信号の伝達関数を推定する。伝達関数を推定するための方法には周知の方法を適用できるのでここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0034】
図2は、図1に示した無線端末と無線LANアクセスポイントとの間でのリンク手順の一例を説明したシーケンス図である。図2を参照して、無線LANのリンク手順は、大まかには以下のようになる。
【0035】
(1)無線端末が無線LANの周波数域をスキャンして、無線LANアクセスポイントの出力する電波(ビーコン)を探す。
【0036】
(2)無線端末がビーコンよりESSID(識別名)を得る(Beacon(ESSID))。
(3)無線端末と無線LANアクセスポイントとの間で認証パケットを交換して、お互いに認証(Authentication)を行なう。具体的には、暗号化キーを元に無線LANアクセスポイントに接続してよい無線端末であるかどうかの確認が行なわれる。
【0037】
無線端末から無線LANアクセスポイントにAuthentication Requestが送信される。応じて、無線LANアクセスポイントは無線端末にAuthentication Responseを送信する。このとき無線LANアクセスポイントは任意の乱数(Challenge Test)を送信する。
【0038】
次に無線端末は無線LANアクセスポイントにAuthentication Responseを送信する。このとき、無線端末は、無線LANアクセスポイントから受信したChallenge Testを、暗号化キーを用いて暗号化して送信する。暗号化キーはたとえば事前に取り決められる。
【0039】
無線LANアクセスポイントは暗号化されたChallenge Testを暗号化キーで復号化する。この復号化されたChallenge Testが無線LANアクセスポイントの送信したChallenge Testと一致する場合には、認証が成功する(Success)。
【0040】
(4)無線端末と無線LANアクセスポイントとの間でアソシエーション(Association)を行ない、変調方式などを定める。無線端末は無線LANアクセスポイントに、無線伝送レート(変調方式)など、通信条件を提示する(Association Request)。そして、無線LANアクセスポイントは無線端末に、無線伝送レート(変調方式)などの通信条件を了解したことを回答する(Association Response)。
【0041】
(5)データフレームの伝送を開始する。
図3は、無線LANアクセスポイントと無線端末との間で伝送される無線信号(無線パケット)の構造を説明するための図である。以下では、IEEE802.11g(2.4GHz帯)の無線パケットを例に説明する。図3を参照して、無線パケットは、プリアンブルとヘッダとデータ系列とによって構成される。たとえばプリアンブルは72ビットで構成され、ヘッダは48ビットで構成される。また、データ系列の長さはたとえば可変長(最大32Kビット)である。プリアンブルは、通信の同期などに用いられ、固定されたビットの列からなる。ヘッダには、送信元(無線LANアクセスポイント)および送信先(無線端末)を特定するための情報が格納される。
【0042】
この実施の形態では、無線信号に含まれるデータ系列は、伝搬特性測定システム2にとって既知であるビット列により構成される。したがってビット列は特に限定されない。また、機知のデータ系列であれば、無線測定のために予め用意したデータ系列を用いてもよいし、他の目的で利用されるデータ系列を無線測定にも利用することも可能である。
【0043】
上記2.4GHz帯の場合、無線パケット全体の長さは、データ量あるいは変調速度に依存するものの、たとえば約500μs程度である。この場合、プリアンブルおよびヘッダの長さはそれぞれ約76μs、24μs程度である。なお、無線LANの方式が変わった場合、パケットの長さの変化により時間の長さが変化する可能性があるが、パケットの基本的な構成は上記の通りである。
【0044】
図4は、本発明の実施の形態1に係る測定方法を説明するためのフローチャートである。図1および図4を参照して、ステップS1において、サーバ1と無線端末2Aとの間で無線LANアクセスポイント3を介したリンクが確立される。無線端末2Aと無線LANアクセスポイント3との間では、図2に示した手順に従ってリンクが確立される。
【0045】
ステップS2において、無線端末2A(端末装置)から既知のデータ系列5のダウンロードが要求される。ステップS3において、無線LANアクセスポイント3は、この要求に応じてサーバ1からネットワーク4を介して送られた既知のデータ系列を、変調および暗号化して無線信号として送信する。
【0046】
ステップS4において、測定装置2Bは、無線LANアクセスポイント3から送られた無線信号を受信する。ステップS5において、測定装置2Bは、受信した無線信号の波形を測定する。
【0047】
ステップS6において、測定装置2Bは、受信した無線信号の波形と、既知のデータ系列に基づき推定した無線信号の波形との相関により、無線信号の伝達関数を推定する。
【0048】
以上のように実施の形態1によれば、既知のデータ系列を無線信号として無線LANアクセスポイントから送出し、測定装置2Bはその無線信号を受信する。さらに、無線LANアクセスポイントから送出される信号を、通信方式(変調方式および暗号化方式)に基づいて既知のデータ系列から推定する。この推定された信号の波形は、歪みのない波形である。したがって無線信号の推定波形と測定装置2Bで受信された無線信号の波形との相関を取ることによって、無線信号の伝達関数を推定する。伝達関数を推定することによって伝搬特性の評価が実現される。
【0049】
図8に示されるように、無線LANアクセスポイントと無線端末との両方で信号波形を同期して測定する場合には、無線LANアクセスポイント側の測定装置と無線端末側の測定装置との間をケーブルで接続するなどの準備が必要である。このため、伝搬特性を測定するための構成が大掛かりとなる。これに対して実施の形態1によれば、無線LANアクセスポイントから送信される無線信号の波形を予め推定することによって、無線信号の受信側すなわち無線端末側で無線信号を測定するだけでよい。したがって実施の形態1によれば伝搬特性を測定するための構成を簡素化できる。
【0050】
また、実施の形態1によれば、無線端末がリンクしたアクセスポイントのみが既知のデータによる無線信号を送出するため、複数の無線LANアクセスポイントが存在する環境でも、どのアクセスポイントから送信された無線信号であるかを特定できる。
【0051】
[実施の形態2]
実施の形態2は、伝搬特性を簡易に測定するための無線装置の構成に関する。図5は、本発明の実施の形態2に係る無線装置の概略図である。図5を参照して、実施の形態2に係る無線装置21は、無線端末2Aと、収納体21Aとを備える。実施の形態1と同様に、無線端末2Aの種類は特に限定されず、たとえばパーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯型の無線端末により実現可能である。
【0052】
収納体21Aは無線端末2Aを収納する。収納体21Aは、無線端末2Aを取り囲む電波吸収体(図示せず)を含む。電波吸収体は、たとえばアルミ箔を含んで構成され、無線端末2Aの発する電波を吸収することで、当該電波が収納体21Aの外部に漏れ出ることを防止する。収納体21Aの形状は特に限定されず、箱状あるいは袋状に形成される。たとえば収納体21Aをハンドバック、あるいはポーチのように形成してもよい。
【0053】
収納体21Aには、開口部21Bが形成される。「開口部」とは無線端末2Aから発せられる電波を収納体21Aの外部に通すための部分である。したがって開口部21Bは収納体21Aの一面に穴を形成することで実現されてもよく、さらに、その孔に電波を通す部材を取り付けることで実現されてもよい。
【0054】
収納体21Aには、さらに窓部21Cが形成される。窓部21Cは、無線端末2Aからの電波を通しにくく、かつ、収納体21Aの外部から収納体21Aの内部を見ることができるように構成される。たとえば無線端末2Aからの電波をシールドするフィルム(ただし可視光に対して透明なフィルム)を開口部に張ることで窓部21Cを実現できる。
【0055】
収納体21Aには、さらに袋部21Dが形成される。袋部21Dは、ユーザが収納体21Aの外部から無線端末2Aを操作するために、ユーザが手を入れる部分である。たとえば図5に示すように、袋部21Dは手袋状に形成される。ただし袋部21Dの形状はこのように限定されるものではなく、たとえばポケット状に形成されてもよい。また、袋部21Dはユーザの操作が容易であるように、柔軟性を有する材料によって形成されることが好ましい。ユーザは、袋部21Dを通して無線端末2Aを操作しながら窓部21Cを通して無線端末2Aの操作結果を確認することができる。
【0056】
収納体21Aに無線端末2Aを収納した場合、収納体21Aの外部への電波の放射は開口部21Bからの放射に限定される。収納体21Aの外部から無線端末2Aへの電波の受信についても同様に、開口部21Bからの受信に限定される。したがって、無指向性の無線端末2Aを用いても強い指向性が得られる無線測定装置を実現できる。
【0057】
図6は、本発明の実施の形態2に係る無線装置の利用形態を模式的に示した図である。図6を参照して、実施の形態2に係る無線装置21は、大型アンテナを不要としながら電波の到来方向の推定あるいは干渉波を抑制した電波の受信などを実現できる。
【0058】
実施の形態2によれば大型の指向性アンテナが不要であるため、小型の試験装置を実現できる。例えばハンドバック程度の大きさの試験装置を実現できる。これにより、試験(たとえば無線信号の受信特性の測定)を行なっていることを周囲の人々に気付かれにくくすることができる。さらに実施の形態2によれば、無線サービスに利用される無線端末を無線特性の測定に用いることができる。したがって無線サービスを直接的に評価することができる。
【0059】
このような利点から、実施の形態2に係る無線装置を用いることで、屋外(特に、繁華街といった人々の密集しやすい場所)で周囲の人々の違和感を生じさせることなく伝搬特性(たとえば無線信号の受信特性)を測定できる。これにより、たとえば無線通信サービスの利用実態を正確に把握できる。
【0060】
なお、図7に示すように、実施の形態1に係る測定システムの構成において、無線端末2Aのみを収納体21Aの内部に収めるように構成してもよい。無線端末2Aと測定装置2Bとはケーブルで接続してもよい。さらに、周囲の人々に、できるだけ気付かれない状態で無線特性を測定するためには、無線端末2Aと測定装置2Bとがケーブルで接続されていないことが好ましい。
【0061】
このように実施の形態2によれば、携帯型の無線端末を用いて、小型でありながら強い指向性を有する無線装置(試験装置)を実現することができる。
【0062】
なお、電波を利用してデータ系列を受信するシステムであれば、本発明を適用できる。本発明の他の適用形態として、たとえば地上デジタル放送でのデータ受信が挙げられる。この場合、電波送信部として図1に示した無線LANアクセスポイントを放送局あるいは再送局に置き換え、無線端末を受信機(チューナ)あるいは受信機を内蔵したテレビ受像機等に置き換えればよい。この場合、受信機(テレビ受像機)は本発明の「端末」に相当し、放送局あるいは再送局は「電波送信部」に相当する。このような構成でも、端末側で既知のデータを受信しているときに電波信号の伝搬特性を評価することができる。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 サーバ、2 伝搬特性測定システム、2A 無線端末、2B 測定装置、3 無線LANアクセスポイント、4 ネットワーク、5 データ、6,7 無線信号、21 無線装置、21A 収納体、21B 開口部、21C 窓部、21D 袋部、22 指向性アンテナ、100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知のデータ系列を電波信号として送信する電波送信部から、前記電波信号を受信するように構成された端末と、
前記電波送信部から送られた前記電波信号を受信して、受信した電波信号である受信信号の波形を測定する波形測定部とを備え、
前記波形測定部は、前記受信信号を、前記電波送信部から送られる前記電波信号として予め推定された推定信号と比較することによって、前記電波信号の伝搬特性を評価する、伝搬特性測定システム。
【請求項2】
前記推定信号は、前記電波送信部から送信方式に従って前記既知のデータ系列が前記端末へと送信されるために、予め推定された信号である、請求項1に記載の伝搬特性測定システム。
【請求項3】
前記波形測定部は、前記受信信号と前記推定信号との間の相関に基づいて、前記電波信号の伝達関数を推定することにより前記電波信号の伝搬特性を評価する、請求項2に記載の伝搬特性測定システム。
【請求項4】
電波吸収体を含み、前記端末を収納する収納体をさらに備え、
前記収納体は、
前記電波信号を前記端末に通すための開口部と、
前記端末の操作者が前記収納体の外から前記端末を操作するために前記収納体に形成された袋部と、
透明でありかつ前記電波信号を実質的に遮蔽する材料で覆われ、前記操作者が前記端末の状態を確認するための窓部とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の伝搬特性測定システム。
【請求項5】
前記電波送信部は、無線LANアクセスポイントであり、
前記端末は、無線端末である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の伝搬特性測定システム。
【請求項6】
既知のデータ系列を電波信号として送信する電波送信部から、前記電波信号を受信するように構成された端末と、前記電波送信部から送られた前記電波信号を受信して、受信した電波信号である受信信号の波形を測定する波形測定部とを用いた伝搬特性測定方法であって、
前記電波送信部から前記既知のデータ系列を前記電波信号として送信するステップと、
前記波形測定部が前記電波信号を受信して前記電波信号の波形を測定するステップと、
前記波形測定部によって測定された波形を、前記電波送信部から送られる前記電波信号として予め推定された推定信号の波形と比較して、前記電波信号の伝搬特性を評価するステップとを備える、伝搬特性測定方法。
【請求項7】
電波を送信または受信する無線端末と、
電波吸収体を含み、前記無線端末を収納する収納体とを備え、
前記収納体は、
前記無線端末が前記収納体の外部に対して電波を送信または前記収納体の外部から電波を受信するために、前記収納体に形成された開口部と、
前記無線端末の操作者が前記収納体の外から前記無線端末を操作するために前記収納体に形成された袋部と、
透明でありかつ前記電波を実質的に遮蔽する材料で覆われ、前記操作者が前記無線端末の状態を確認するための窓部とを含む、無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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