説明

伝熱フィン付き省エネなべ

【課題】加熱調理中の火炎や高温ガスを有効に活用し、熱効率に優れた省エネ鍋を提供する。
【解決手段】火炎や高温ガスを鍋本体側面の外側に設けた隙間イ部に通し、隙間の中に設けたフィン2を介して熱交換を効率的に行い、燃料ガスの消費を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鍋、やかん、フライパン等の加熱調理器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鍋、やかん、フライパン(以後、鍋)では主たる伝熱面はほとんどが底面であり、エネルギーを有効に活用しているとは言えない。これを改善するために下記特許文献に示す発明が公知となっている。
【0003】
【特許文献1】実公昭56−125128
【特許文献2】特開平4−22844
【特許文献3】特開2000−005049
【特許文献4】特開2002−219056
【特許文献5】特開2006−238992
【特許文献6】特開2008−272006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の鍋では底面を加熱した後の高温ガスや火炎(以後高温ガス)は、一部が側面を加熱するのみで、ほとんどはそのまま調理とは関係ない大気に拡散していく。
【0005】
特許文献1、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6による発明は、鍋の側面に高温ガスを導入して熱効率の改善を図ったものであるが、空間の外側を構成する部材は空間の構成に使用されるのみで鍋本体への熱の移動はない。そのため伝熱面は鍋本体のみであり効率が悪い。また外側部材の冷却性が悪く、調理後の安全性に問題がある。
【0006】
特許文献2の発明はなべの利便性を損ない、形状が複雑で加工が難しい。
【0007】
本発明は、拡散していく高温ガスを有効に活用し、現在のなべの利便性を確保しつつ、加工も容易で外観も良好な省エネなべを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は高温ガスを拡散させることなく、鍋本体側面で熱交換をさせるために設けた隙間であり、隙間には熱交換を効率的に行わせるために、外側部材と鍋本体とを繋ぐ熱伝導に優れた部材(以後伝熱フィン)を挿入し、隙間を構成する部材と鍋本体とは熱の移動を妨げないようにロウ付け等により一体化する。即ち、外側部材と鍋本体とは伝熱フィンを介して連結されることになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は高温ガスを大気中に拡散させることなく隙間に誘導するために隙間の下部に設けた案内板である。
【発明の効果】
【0010】
現状の鍋及び、特許文献1,3,4,5,6に示す鍋の側面を利用した発明ではその構造から熱効率の改善に寄与する伝熱面は鍋底面と鍋側面と考えられるが、請求項1に記載の発明によれば、隙間を構成する部材は伝熱フィンを介して熱伝導を妨げないようにロウ付け等によって一体化されているので高温ガスとの接触面(伝熱フィン両面、外側部材内面)が伝熱面として増加する。
【0011】
熱交換部である隙間に導入された高温ガスは拡散することなく伝熱フィンが挿入された小さな隙間を流れを乱されながら通過するので伝熱面積の増加によって期待される熱効率の改善以上の効果が得られる。
【0012】
隙間を構成する部材で得られた熱は、熱伝導を妨げないようにロウ付け等によって一体とされた鍋本体に速やかに移動するので省エネに貢献することになる。
【0013】
鍋本体内部及び五徳と接触する底面は現状と同じであるので鍋の機能と利便性を損なうことはない。また、外側部材は現状鍋の側面と同じように滑らかであるので現状の鍋に比較して重量の増加を除けば、隙間の分だけ径が増加するのみで収納性や外観についての問題はない。
【0014】
隙間の上部から熱交換の済んだガスが流出すると、隙間の下部ではガスを吸い込む作用が発生する。請求項2に記載の発明は隙間の下部に発生している吸い込み部に高温ガスを確実に導くために設けた案内板である。従来、鍋底面から横方向に流れ、調理とはまったく関係のなかった高温ガスを隙間、即ち熱交換部に導くことができる。また、高温ガスの広がりを今までより抑えることが出来るために、火災や、火傷の防止にも繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に本発明の第1実施形態を示す。1は鍋本体、2は隙間に設けた伝熱フィン、3は隙間を構成する外側部材、イ部は請求項1に示す隙間部、ロ部は請求項2に示す高温ガス導入部、ハ部は吹き零れによる調理カスの隙間への侵入防止と外観調整及び、高温ガスの流速調整の為に設けた上部絞り部である。
【0017】
鍋本体底部を加熱した高温ガスは口部高温ガス導入部から熱交換部であるイ部隙間に導入され隙間を構成する伝熱フィン、鍋本体、外側部材との間で熱交換され、ハ部上部絞りを通じて大気に拡散していく。
【0018】
図2は高温ガス導入部まで伝熱フィンを延長し、伝熱フィンの下部を鍋側面の接触部端から外側部材の端面までカットした第2実施形態を示す。加熱効率の向上と調理後の高温ガス導入部の速やかな冷却が可能となる。
【0019】
図3は伝熱フィン近傍の鍋側面の過熱を避け、鍋底への熱の移動を促進するために、伝熱フィンと鍋本体との間に、伝熱部材4を挟み込んだ第3実施形態を示す。
【0020】
伝熱フィンの形状については図4に示すような種々の形状が考えられるが、隙間に流入する高温ガスとの熱伝達を効率的に行い、同時にロウ付け等により外側部材と鍋本体を確実に固定できることが必要である。熱交換を効率的に実施するために、図5に示す突起やスリットを伝熱フィンに設けることにより高温ガスから伝熱フィンへの熱伝達率を向上させることができる。
【0021】
伝熱フィンについては一つ一つを隙間に挿入することも可能であるが、図6に示すように帯状に成形された部材を鍋に巻きつけて挿入することが可能である。
隙間寸法より大きな寸法で成形した伝熱フィンを隙間に圧入することで伝熱抵抗の削減と、ロウ付けを確実に実施することができる。また、伝熱フィンのロウ付け位置に予めロウ材のコーティングをしておけば容易にロウ付けすることが可能である。
【0022】
図7は高温ガス導入部の形状例を示す。鍋底の形状と、外観から種々の形状が選択できるが、使用される高温ガス全量を確実に隙間に導入できるようにする必要があるが鍋底から突出することは五徳との干渉や、収納性の観点から好ましくない。
【0023】
上部絞りは鍋蓋の納まるフランジ径より絞り径を小さくすることで隙間に入り込む調理かすを減らすことが出来るが、図8は調理かすから隙間を確実に守るために上部絞りの上にさらに防護リング5を取り付けたものである。
【0024】
上部絞りの量を調整することによって隙間を流れる高温ガス量を調整することが出来るので高温ガス量との関係で熱交換に適した絞り量が決まる。
【0025】
図9は鍋の取っ手6に熱交換の済んだ排ガスが当たって高温になることを防止するために上部絞りの上に過熱防止板7を取り付けたものである。隙間を流れる高温ガスの熱交換に悪影響を与えなければ上部絞りの量を取っ手の部分だけさらに絞り込んでも構わない。
【0027】
図10は本発明をフライパンに適用したものである。フライパンの場合にはフライパン側面がテーパとなるため外側部材と伝熱フィンの形状が複雑となるが、図11に示す形状ではプレスによる一体成形が可能である。
【0028】
図12は本発明をやかんに適用した時の実施例である。注湯口のある位置を考慮すれば鍋と同様に適用することが可能である。尚、やかんの場合には調理かすに対する考慮は不要となる。
【0029】
図13は外側部材の過熱防止の為に伝熱フィンと鍋側面の間にのみ高温ガスを通すように考慮したものである。図4に示す波状をした伝熱フィンの下部を塞いで側面から矢印のように高温ガスを隙間に導入すると、伝熱面積は減少するが高温ガスは伝熱フィンと鍋側面の間にのみ流れ、外側部材に直接接触することはない。したがって、外側部材の過熱防止に役立つ。伝熱フィンと外側部材、鍋本体との間に通す高温ガスの流量比は伝熱フィンの下部を塞ぐ量によって調整することが可能である。
【0030】
伝熱フィンの肉厚、ピッチ、上部絞り量、隙間寸法については鍋の大きさによって想定される最大の高温ガス量が隙間に流入出来、同時に最も効率的に熱交換できるような寸法に設定されることが望ましい。
【0031】
外側部材の外面に耐熱コーティングを施せば外観の改善と同時に、コーティングの持っている断熱効果によって外側部材の過熱による火傷等の事故の防止と、さらなる熱効率の改善が期待できる。
【実施例】
【0032】
図14に試験確認をした試作品を示す。試作能力の関係で、図1から外側部材3をはずし、フィンを導入部まで延長して高温ガス導入部とし、高温ガスをなべ側面と伝熱フィンとの間に流し、図4に示すフィンAを直径160mmの片手鍋本体側面にはんだ付けした試作品を試験した結果、過熱に要する時間を25%程度短縮できた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図
【図2】第1実施形態の高温ガス導入部まで伝熱フィンを延長した第2実施形態を示す断面図
【図3】本発明の第1実施形態に伝熱部材を取り付けた第3実施形態を示す断面図
【図4】伝熱フィンの形状例を示す断面図
【図5】伝熱フィンに加工された熱伝達率向上のための形状例
【図6】一体成形した伝熱フィンを組み込んだ形状例を示す断面図
【図7】高温ガス導入部を示す断面図
【図8】隙間への調理カスの侵入防止のために設けた遮蔽板を示す断面図
【図9】取っ手の過熱防止のために設けた過熱防止板を示す正面図と断面図
【図10】フライパンに適用したときの断面図
【図11】フライパンに適用した一体成形された伝熱フィンの正面図
【図12】やかんに適用したときの断面図
【図13】伝熱フィンと鍋側面との間にのみ高温ガスを通すようにした断面図
【図14】試験品の断面図
【符号の説明】
【0034】
1 鍋本体 2 伝熱フィン 3 外側部材 4 伝熱部材 5 防護リング 6 取っ手 7 過熱防止板
イ部 請求項1に示す隙間部 ロ部 請求項2に示す高温ガス導入部 ハ部 上部絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋本体側面とその外側に設けた外側部材との間に火炎や高温ガスを通す隙間を設け、隙間には伝熱面積を増やし、熱交換を効率的に行うために外側部材と鍋本体とを繋ぐ熱伝導に優れた部材を挿入し、隙間を構成する部材と鍋本体とをロウ付け等により一体とした鍋、やかん、フライパン等の調理器具。
【請求項2】
隙間の下部に高温ガスを導入するために案内部を設けた請求項1に示す鍋、やかん、フライパン等の調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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