説明

伝熱充填材、及び地中熱交換装置

【課題】複雑な調合調整を要することなく、伝熱充填材中の伝熱材を削孔内の所望の位置に設ける。
【解決手段】ベントナイト12Bに鉄粉12Cを添加し、伝熱充填材12たるペレット12Aを形成する。ペレット12Aを土壌Gに設けた削孔H内に投入して水を供給し、ペレット12Aを膨潤状態とすることで伝熱充填材12を形成する。このように、伝熱充填材12を粒状のペレット12Aとして固形化すると共に、鉄粉12Cをペレット12Aに添加することで、ペレット12Aを削孔Hに投入した場合であっても、鉄粉12Cがペレット12A内に留まり、当該ペレット12Aから落下する恐れがない。これにより、ベントナイト12Bよりもよい伝熱特性を備えた鉄粉12Cを分散させた状態のまま、削孔H内に伝熱充填材12を充填することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅用の地中熱利用システムにおける地中熱交換装置に関し、特に地盤から地中に向けて掘削される削孔を利用して、土壌との間で熱交換を行う地中熱交換装置及び、地中熱交換装置で用いられる伝熱充填材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中の温度は、一年間を通じて温度変化が少なく、外気温と比べて比較的安定している。特に、地盤面下の地中は、ある深さ以上であれば外気の影響を受けにくく恒温の地熱が得られるものであって、例えば日本の気候において、地中の温度は、夏季は外気温に対して低く、冬季は外気温に対して高い。そこで、地盤に杭状の地中熱交換装置を埋設し、該地中熱交換装置と地上の建物内等に設けられる空調機器との間で熱交換を行うことにより、地中の熱を当該空調機器の熱源として利用する地中熱利用システムが提案されている。この種のシステムとして、建物の基礎下に埋設された基礎杭の中空内部に、地上と地中との間で熱媒体を循環させる熱媒体伝熱管(熱交換パイプ)を配置すると共に、該熱媒体伝熱管の周囲を所定の伝熱特性を有する伝熱充填材により充填した構成が知られている。この伝熱充填材は、地中と熱媒体伝熱管との間での熱交換を促進させるものであって、その伝熱特性や熱容量の観点から水を採用する構成が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、伝熱特性がよい鉄粉等の伝熱材と硬化性材料たるグラウト材とを混合して伝熱充填材を形成し、グラウト材が硬化する前の流動状態の伝熱充填材を削孔内に流し込んだ後、グラウト材を硬化させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−54850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、流動性のあるグラウト材と鉄粉とは比重が異なるため、鉄粉を混ぜた流動状態の伝熱充填材を削孔内に流し込むと、伝熱充填材内の鉄粉が削孔の底部に向けて重力落下する。これによって、削孔内の底部から上部に亘って、鉄粉を均等に分散させることが困難であった。この点について特許文献1には、鉄粉の調合等を調整することで鉄粉の落下を防止することについての開示があるが、かかる調合調整には、単に鉄粉の重量のみならず、鉄粉の形状、削孔の口径やグラウト材の粘性などを考慮した極めて高精度な調合が必要となり、施工が煩雑化するという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、複雑な調合調整を要することなく、伝熱充填材中の伝熱材を削孔内の所望の位置に設けることができる伝熱充填材及び地中熱交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る伝熱充填材は、地中に設けられた削孔に挿入された熱交換パイプの周囲に充填される伝熱充填材であって、所定の伝熱特性を備えた主材に該主材よりも伝熱特性のよい粉体を添加して形成されたペレットよりなる、ことを特徴とする。
【0008】
この発明では、主材に伝熱材たる粉体を添加して伝熱充填材とし、さらに伝熱充填材をペレットとして粒状に固形化しているので、伝熱充填材を削孔に投入した場合であっても、粉体がペレット内に留まり、したがって、粉体が主材から分離して削孔内のいずれかに偏って溜まってしまうことがない。これにより、主材よりもよい伝熱特性を備えた伝熱材たる粉体を分散させた状態のまま、削孔内を伝熱充填材で充填することができる。このように、伝熱材として、主材とは比重が異なる粉体を用いた場合であっても、主材と粉体とが分離することなく、削孔内で粉体を均等に分散させることができる。以上、この発明によれば、伝熱充填材を形成する材料の複雑な調合調整を要することなく、伝熱充填材中の伝熱材(粉体)を削孔内の所望の位置に設けることができる、即ち、伝熱材を初期の高さ位置に留めることができる。
【0009】
また、主材は、ベントナイトからなることが好ましい。ベントナイトは、水の供給を受けることにより膨潤する膨潤性を備えている。このため、ペレットの投入後、削孔内に水を供給することでペレットが膨潤し、これによってペレット間の隙間が埋められることとなる。これにより、伝熱充填材における伝熱効率をより一層向上させることができる。また、ベントナイトは攪拌されることがなく、粘度を保っている。このため、比重の重い粉体を用いた場合であっても、主材と粉体とが分離することがなく、削孔内で粉体を均等に分散させることができる。
【0010】
また、粉体は、鉄粉又は黒鉛粉からなることが好ましい。粉体として、鉄粉又は黒鉛粉を用いる場合には、伝熱充填材の伝熱特性が土壌よりもよくなり、熱交換パイプ内を流れる熱媒体と土壌との間の熱交換をより一層向上させることができる。また、粉体として鉄粉又は黒鉛粉を用いることで、これらの鉄粉又は黒鉛粉を主材に添加するだけで、伝熱特性のよい伝熱充填材を容易に作成することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る地中熱交換装置は、地中に設けられた削孔に挿入される熱交換パイプと、該熱交換パイプの周囲に充填される伝熱充填材とを備えた地中熱交換装置であって、伝熱充填材は、主材としてのベントナイトに該ベントナイトよりも伝熱特性のよい粉体を添加して形成されたペレットよりなる、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、主材としてのベントナイトに、伝熱材たる粉体を添加して伝熱充填材とし、さらに伝熱充填材をペレットとして粒状に固形化しているので、伝熱充填材を削孔に投入した場合であっても、粉体がペレット内に留まり、したがって、粉体が主材から分離して削孔内のいずれかに偏って溜まってしまうことがない。これにより、主材よりもよい伝熱特性を備えた伝熱材たる粉体を分散させた状態のまま、削孔内に伝熱充填材を充填することができる。このように、伝熱材として、ベントナイトとは比重の異なる粉体を用いた場合であっても、ベントナイトと粉体とが分離することなく、削孔内で粉体を均等に分散させることができる。また、ベントナイトは、水の供給を受けることにより膨潤する膨潤性を備えている。このため、ペレットの投入後、削孔内に水を供給することでペレットが膨潤し、これによってペレット間の隙間が埋められることとなる。これにより、伝熱効率をより一層向上させることができる。また、ベントナイトは攪拌されることがなく、粘度を保っている。このため、比重の重い粉体を用いた場合であっても、ベントナイトと粉体とが分離することがなく、削孔内で粉体を均等に分散させることができる。以上、この発明によれば、複雑な調合調整を要することなく、伝熱充填材中の伝熱材(粉体)を削孔内の所望の位置に設けることができる。
【0013】
また、伝熱充填材の外周は、削孔の周壁を形成する地中土壌に接触していることが好ましい。この場合には、地中土壌に伝熱充填材が直接接することとなるため、充填材と地中土壌との間での熱交換が可能となり、伝熱効率をより一層向上させることができる。また、ベントナイトの膨潤後において、伝熱充填材を地中土壌の地下水に接触させることができる。地下水は、地中土壌の温度に依存した所定の温度範囲にある有効な熱源であり、しかも所定温度の流体(地下水)が、熱交換部分で常に更新されるため、地中土壌よりも伝熱効率が高い。このため本構成によれば、伝熱充填材が熱源たる地下水との間でも熱交換できるものとなり、伝熱効率をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複雑な調合調整を要することなく、伝熱充填材中の伝熱材たる粉体を削孔内の所望の位置に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る地中熱交換システムの全体構成を示す図である。
【図2】膨潤前のペレットの詳細構造を示す図である。
【図3】削孔内に伝熱充填材を充填する工程を示すフローチャートである。
【図4】削孔内に伝熱充填材を充填する工程の変形例を示すフローチャートである。
【図5】伝熱充填材が充填される様子を示す図である。
【図6】削孔内に投入されたペレットの膨潤前の状態を示す図である。
【図7】削孔内に投入されたペレットの膨潤後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る地中熱交換装置を地中熱交換システムに適用した実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、実施形態の全体構成を示す図である。図1に示すように、地中熱交換システム1は、地中熱交換装置10と、ヒートポンプ20と、室内ユニット30とを含んで構成される。
【0018】
地中熱交換装置10は、土壌Gの地表面から地中に向けて掘削された削孔H内に設置された地中側熱交換パイプ11と、削孔H内において地中側熱交換パイプ11の周囲に充填された伝熱充填材12とを含んでいる。
【0019】
地中側熱交換パイプ11は、ヒートポンプ20側から削孔H側へ熱媒体を導く導入側パイプ11Aと、削孔H側からヒートポンプ20側へ熱媒体を導く導出側パイプ11Bとを有している。導入側パイプ11A及び導出側パイプ11Bのそれぞれの一端は、削孔Hの底部近傍まで延び、一端同士が互いに流通可能に連結されている。また、導入側パイプ11A及び導出側パイプ11Bのそれぞれの他端は、ヒートポンプ20まで延び、他端同士がヒートポンプ20内で流通可能に連結されている。これにより、地中側熱交換パイプ11によって、削孔Hの底部からヒートポンプ20に亘って、閉じた流路が形成される。
【0020】
また、地中側熱交換パイプ11には、循環ポンプ21が取り付けられている。循環ポンプ21は、地中側熱交換パイプ11内において熱媒体を循環させるポンプとして機能する。これにより、循環ポンプ21を作動させることで、地中側熱交換パイプ11内を熱媒体が流れ、削孔H内において地中側熱交換パイプ11内の熱媒体に伝達された熱等を、ヒートポンプ20側で利用することができる。
【0021】
なお、地中側熱交換パイプ11の材料として、例えば、樹脂製(架橋ポリエチレン、金属補強ポリエチレン)、或いは金属製(銅、ステンレス)のパイプを用いることができる。また、循環ポンプ21として、直流ポンプ、或いは交流ポンプ等を用いることができ、出力は地中側熱交換パイプ11の全長等に合わせて選択することができる。
【0022】
また、削孔Hは、例えば、口径が100〜200mm、深さが5〜100mの孔を用いることができる。また、削孔Hの形成方法として、ボーリング、回転埋設、或いは打撃等を用いることができる。
【0023】
伝熱充填材12は、削孔H内に投入された複数のペレット12Aにより形成される。ペレット12Aは水を含んで膨潤状態となっている。図2に、膨潤前のペレットの詳細構造を示す。図2に示すように、ペレット12Aは、主材としてのベントナイト12Bに、ベントナイト12Bよりも伝熱特性のよい鉄粉(粉体)12Cを添加して形成されている。ペレット12Aは、鉄粉12Cを添加したベントナイト12Bを乾燥させたものであり、膨潤前の状態において、大きさが5〜20mm程度の円筒状に形成されている。また、ペレット12Aは、比重が1以上となっている。なお、ペレット12Aの大きさは、一定であってもよく、図2に示すように、大きさが違うペレット12Aが混ざっていてもよい。
【0024】
なお、ベントナイト12Bとして、主成分が、モンモリトナイト、石英、雲母、長石等を含有し、熱伝導率が0.2〜1.0W/mKの材料特性を有するものを用いることが好ましい。さらに本実施形態では、ベントナイト12Bとして、乾燥した砂(熱伝導率0.3W/mK)、水(熱伝導率0.2W/mK)よりも熱伝導率が良いものを用いることがより好ましい。また、ペレット12Aを形成する際の、ベントナイト12Bと鉄粉12Cとの混合割合は、例えば、ベントナイト12Bを60%〜80%、鉄粉12Cを20%〜40%程度とすることが好ましい。
【0025】
ヒートポンプ20は、地中側熱交換パイプ11を流れる熱媒体を介して得られる熱を用いて、室内ユニット30側の室内側熱交換パイプ31を流れる熱媒体との間で熱交換を行うものである。
【0026】
室内ユニット30は、住宅の室内に取り付けられ、室内側熱交換パイプ31を流れる熱媒体を用いて冷房或いは暖房等を行うものである。室内ユニット30として、例えば、エアコン、或いは床暖房設備等を用いることができる。
【0027】
次に、削孔H内に伝熱充填材12を充填する方法について説明する。図3は、削孔内に伝熱充填材を充填する工程を示すフローチャートであり、図5は、伝熱充填材が充填される様子を示す図である。まず、図5(a)及び図5(b)に示すように、掘削機械100を用いて、土壌Gの地表面から地中に向けて掘削を行い、削孔Hを形成する(ステップS101)。続いて、図5(c)に示すように、削孔H内に、地中側熱交換パイプ11を設置する(ステップS102)。
【0028】
次に、図5(d)に示すように、削孔H内に伝熱充填材12たるペレット12Aを投入する(ステップS103)。削孔H内に投入するペレット12Aの量は、ペレット12Aに水を供給したときに、投入したすべてのペレット12Aに水が行き渡る量とする。これにより、すべてのペレット12Aが膨潤状態にされることとなる。このため、ペレット12A間の隙間は、ペレット12Aの膨潤によって著しく狭められるか或いはペレット12A同士が密着し合って埋められる。この結果、ペレット12A間の伝熱を阻害する空気の滞留空間が縮減され、伝熱充填材12の伝熱特性が向上する。本実施形態においては、例えば、1回目に削孔H内に投入するペレット12Aの量として、削孔H内が深さの8分目程度までペレット12Aによって満たされる量とすることができる。但し、投入するペレット12Aの量は、削孔Hの径やペレット12Aの膨潤性能によっては、削孔H内が深さの8分目程度までペレット12Aによって満たされる量よりも少ない量であってもよく、或いは削孔Hが完全に埋まる量であってもよい。
【0029】
次に、図5(e)に示すように、削孔H内のペレット12Aに水Wを供給し、ペレット12Aを膨潤状態にする(ステップS104)。ペレット12Aは、水Wの投入直後において急激に膨張し、水Wの投入後8時間目以降は緩やかに膨張を続け、1週間程度で膨張が終了する。図6に示すように、削孔H内に水Wを供給する前は、ペレット12A間に隙間がある。ペレット12Aに水Wを供給してペレット12Aを膨潤状態にすることで、図7に示すようにペレット12Aが膨張し、ペレット12A間の隙間、及びペレット12Aを削孔Hの周壁との隙間が埋まる。
【0030】
なお、かかる工程は、上記の施工に限定されず、図4のフローチャートに示すように、例えば削孔H内に全体の10%〜20%のペレット12Aを投入し(ステップS103)、その後水を供給し(ステップS104)、当該ペレット12Aをある程度膨潤させた後、削孔H内が膨潤状態のペレット12Aで満杯でない場合(ステップS104A:NO)には、再び当該膨潤状態のペレット12A上にペレット12Aを投入し(ステップS103)、その後水を供給し(ステップS104)・・・との工程を、削孔H内の膨潤状態のペレット12Aが地表面と同じ高さとなる(ステップS104A:YES)まで複数回繰り返す構成も採用可能である。
【0031】
これらの工程を経て、膨潤状態としたペレット12Aによって削孔H内を満たすことで、図5(f)に示すように、伝熱充填材12の充填が完了する(ステップS105)。
【0032】
本実施形態は以上のように構成され、ベントナイト12Bに鉄粉12Cを添加して伝熱充填材12とし、さらに伝熱充填材12をペレット12Aとして粒状に固形化しているので、伝熱充填材12たるペレット12Aを削孔Hに投入した場合であっても、鉄粉12Cがペレット12A内に留まり、したがって、鉄粉12Cがベントナイト12Bから分離して削孔H内のいずれかに偏って溜まってしまうことがない。これにより、ベントナイト12Bよりもよい伝熱特性を備えた鉄粉12Cを分散させた状態のまま、削孔H内を伝熱充填材12で充填することができる。このように、伝熱材として、ベントナイト12Bよりも比重の重い鉄粉12Cを用いた場合であっても、ベントナイト12Bと鉄粉12Cとが分離することなく、削孔H内で鉄粉12Cを均等に分散させることができる。以上、この実施形態によれば、伝熱充填材12の複雑な調合調整を要することなく、伝熱充填材12中の鉄粉12Cを削孔H内の所望の位置に設けることができる、即ち、鉄粉12Cを初期の高さ位置に留めることができる。
【0033】
また、ベントナイト12Bは、水Wの供給を受けることにより膨潤する膨潤性を備えている。このため、ペレット12Aの投入後、削孔H内に水Wを供給することでペレット12Aが膨潤し、これによってペレット12A間の隙間が埋められることとなる。これにより、伝熱充填材12の伝熱効率をより一層向上させることができる。また、ベントナイト12Bは攪拌されることがなく、粘度を保っている。このため、比重の重い鉄粉12Cを用いた場合であっても、ベントナイト12Bと鉄粉12Cとが分離することがなく、削孔H内で鉄粉12Cを均等に分散させることができる。
【0034】
また、ベントナイト12Bに添加する伝熱材として鉄粉12Cを用いる場合には、伝熱充填材12の伝熱特性が土壌Gよりもよくなり、地中側熱交換パイプ11を流れる熱媒体と土壌Gとの間の熱交換をより一層向上させることができる。また、鉄粉12Cをベントナイト12Bに添加するだけで、伝熱特性のよい伝熱充填材12を容易に作成することが可能となる。
【0035】
また、土壌Gに伝熱充填材12が直接接することとなるため、伝熱充填材12と土壌Gとの間での熱交換が可能となり、伝熱効率をより一層向上させることができる。また、伝熱充填材12を土壌Gの地下水に直接接触させることも可能となっている。地下水は、土壌Gの温度に依存した所定の温度範囲にある有効な熱源であり、しかも所定温度の流体(地下水)が、熱交換部分で常に更新されるため、土壌Gよりも伝熱効率が高い。このため、伝熱充填材12が熱源たる地下水との間でも熱交換できるものとなり、伝熱効率をさらに向上させることができる。
【0036】
また、伝熱充填材12が削孔Hの周壁に接している、即ち、伝熱充填材12が土壌Gに直接接触していることで、土壌Gからの水分によっても、ペレット12Aを膨潤させることができる。
【0037】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ベントナイト12Bに添加する伝熱材として鉄粉12Cを用いるものとしたが、これに限定されず、例えば、黒鉛粉を用いた場合であっても、鉄粉12Cの場合と同様の効果を得ることができる。なお、黒鉛粉を用いた場合には、黒鉛の純度が80%以上のものを用いることが好ましい。また、鉄粉や黒鉛粉以外にも、伝熱材として他の材料を用いることもできる。
【0038】
また、ペレット12Aにおいて、鉄粉12Cの添加割合は適宜変更することができる。例えば、鉄粉12Cの割合の多いペレット12Aと、鉄粉12Cの割合の少ないペレット12Aとを混合し、伝熱充填材12として使用することもできる。
【0039】
また、ボーリング調査等を行うことにより、削孔Hを設ける土壌Gの層構成を把握することができ、土壌Gの各層の熱効率を知ることができる。これにより、削孔H内にペレット12Aを投入する際に、熱効率の大きい層の高さ位置には、この層と同程度の熱効率を有するペレット12Aを投入する等、削孔H内の伝熱充填材12を周囲の土壌に合わせて層状に形成することも可能である。本実施形態では、ペレット12Aを用いて伝熱充填材12を形成する構成であるために、伝熱充填材12を土壌Gの各層の熱効率に合わせて層状に形成する施工を極めて容易に行うことができる。なお、従来は削孔の底部から上部に亘って一様に液体(スラリー)等を充填していたため、伝熱充填材を層状に形成することは困難である。
【0040】
また、本実施形態では、ペレット12Aを円筒状としたが、円筒状に限定されるものではなく、適宜の形状のペレットを用いることができる。
【0041】
また、本実施形態では、削孔H内に伝熱充填材12たるペレット12Aを投入する構成であったが、削孔H内に鋼管を挿入し、当該鋼管内に伝熱充填材12たるペレット12Aを投入する構成であってもよい。
【0042】
また、本実施形態では、1つの削孔Hに地中側熱交換パイプ11の設置及び伝熱充填材12の充填を行って地中熱交換装置10を形成する場合を例に説明したが、複数の削孔Hに、それぞれ地中側熱交換パイプ11の設置及び伝熱充填材12の充填を行って地中熱交換装置10を形成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…地中熱交換システム、10…地中熱交換装置、11…地中側熱交換パイプ、12…伝熱充填材、12A…ペレット、12B…ベントナイト(主材)、12C…鉄粉(粉体)、G…土壌、H…削孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に設けられた削孔に挿入された熱交換パイプの周囲に充填される伝熱充填材であって、所定の伝熱特性を備えた主材に該主材よりも伝熱特性のよい粉体を添加して形成されたペレットよりなる
ことを特徴とする伝熱充填材。
【請求項2】
前記主材は、ベントナイトからなることを特徴とする請求項1に記載の伝熱充填材。
【請求項3】
前記粉体は、鉄粉又は黒鉛粉からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伝熱充填材。
【請求項4】
地中に設けられた削孔に挿入される熱交換パイプと、該熱交換パイプの周囲に充填される伝熱充填材とを備えた地中熱交換装置であって、
前記伝熱充填材は、主材としてのベントナイトに該ベントナイトよりも伝熱特性のよい粉体を添加して形成されたペレットよりなる
ことを特徴とする地中熱交換装置。
【請求項5】
前記伝熱充填材の外周は、前記削孔の周壁を形成する地中土壌に接触していることを特徴とする請求項4に記載の地中熱交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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