伝送媒体のノイズ低減装置
【課題】同軸構造の伝送媒体で静電気放電で放射される過渡的な電磁波等の電磁干渉によるノイズを低減させる。
【解決手段】同軸ケーブル1の分岐部分に隣接した位置に、同軸ケーブル1のシールド構造物に電気的に接続されるシールドタップコネクタ410を装着する。さらに、同軸ケーブル1の分岐部分に隣接して同軸ケーブル1にフェライトコア300に挿入接続させる。シールドタップコネクタ410の接続端子411を介して、複数の接続線402により高周波接続装置400と伝送媒体のシールド構造物とを電気的に接続させる。接地板は、微小コンデンサの集合体とみなすことができ、ノイズ電流は、インダクタンス素子を介して接地板にバイパスされる。このため、ノイズを低減することができる。
【解決手段】同軸ケーブル1の分岐部分に隣接した位置に、同軸ケーブル1のシールド構造物に電気的に接続されるシールドタップコネクタ410を装着する。さらに、同軸ケーブル1の分岐部分に隣接して同軸ケーブル1にフェライトコア300に挿入接続させる。シールドタップコネクタ410の接続端子411を介して、複数の接続線402により高周波接続装置400と伝送媒体のシールド構造物とを電気的に接続させる。接地板は、微小コンデンサの集合体とみなすことができ、ノイズ電流は、インダクタンス素子を介して接地板にバイパスされる。このため、ノイズを低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、同軸構造の伝送媒体のノイズ低減装置に係り、特に、同軸構造の伝送媒体を分岐して利用する場合において、環境からの電磁干渉を受けて誘起するノイズを低減する伝送媒体のノイズ低減装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、クライアント・サーバ型データ通信システムの通信基盤には、複数の局が一つの伝送路を共用するバス型形態のローカル・エリア・ネットワーク(以下、LANと略す)である、JIS X 5252 規格のLANが多用されている。JIS X5252 規格のLANに接続する各局は、CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)と呼ぶアクセス方式を用いてデータ送信を行う。このアクセス方式の概略動作を以下に示す。
【0003】(1) フレーム(送信データに、宛先のアドレス、発信元アドレス、誤り検査用冗長ビット等を付加した情報ブロック)の送信を行う局は、他のすべての局が送信していないときを待つ。
【0004】(2) フレームをビット直列の形で伝送路に送出する。送信中は、他の局が送出したフレームとの衝突の有無を監視する。
【0005】(3) 衝突を検出したときは、直ちに送信を打ち切った後、他のすべての局に対して衝突の発生を確実に伝えるための信号を送出する。
【0006】(4) ランダムな時間待った後、項番(1)から再度送信を試みる。
【0007】また、各局のデータ受信動作の概略を以下に示す。
【0008】(1)フレームの受信終了を待つ。
【0009】(2)もし、衝突フレームを検出した場合(送信動作の項番(3)による)は、そのフレームを破棄して、項番(1)に戻る。
【0010】(3)受信したフレームが自局宛のフレームであるかチェックする。もし、自局宛のフレームでない場合は、そのフレームを破棄して、項番(1)に戻る。
【0011】(4)誤り検査等により、受信データの正常性をチェックする。
【0012】次に、JIS X 5252 規格LANの、物理的仕様について説明する。JIS X 5252規格では、物理層サービスインタフェース部での平均ビット誤り率が、10~8以下で、伝送速度が10Mbit/sの性能を有する物理的通信手段を各局に対して提供するために、10BASE5形式と呼ばれるベースバンド同軸システム(同軸ケーブルを用いた伝送媒体に情報を直接符号化して出力するシステム)を規定している。
【0013】ベースバンド同軸システムの構成の一例を、図2( JIS X 5252 の図 8.11 を引用)に示す。このシステムでは、図示したように、両端を、整合する特性インピーダンスを有する終端器4で終端した1本の同軸ケーブル1が、一つのケーブル・セグメントを形成する。一つのケーブル・セグメントの最大長は、500mである。一つのケーブル・セグメントには、データ通信を行う局を接続するための媒体接続ユニット(以下、MAUと略す)5を最大100台接続することができる。データ通信を行う局のデータ端末装置(以下、DTEと略す)3は、最大ケーブル長が50mのアタッチメント・ユニット・インタフェース(以下、AUIと略す)ケーブル2を介在させて、MAU5に接続する。なお、図示していないが、図2に示す何れか一つのMAU5の位置に設けた中継器セットにより、他のケーブル・セグメントまたはリンク・セグメント(両端に中継器セットが付いたポイント・ツー・ポイント接続の同軸ケーブル)を連結することで、一つのシステム内の任意のMAU間の同軸ケーブルの線路長を最大2.5kmまで延長することができる。
【0014】MAU5は、AUIケーブル2と接続するためのAUIコネクタと、同軸ケーブル1と接続するための同軸タップコネクタとが設けられ、かつ、電気的に接続するための回路を内蔵するシールド・エンクロージャとを有する。そして、MAU5は、DTE3と同軸ケーブル1との結合を司るために、(1)媒体(同軸ケーブル1)に対して直列なデータビット列を送信する、送信機能と、(2)媒体(同軸ケーブル1)から直列なデータビット列を受信する、受信機能と、(3)二つ以上の局が同時に送信していることを検出する、衝突検出機能と、(4)送信機能を自動的に中断し、異常に長いデータ列の出力を禁止する、ジャバ機能との、4つの機能を持つ。
【0015】このようなMAU5は、次のことを前提にして設計されている。
【0016】(a)DTE3は適切に接地して使用する。
【0017】(b)同軸ケーブル1のシールドは一点接地方式で接地されている。
【0018】(c)AUIケーブル2は個別にシールドされた4組のより線およびそれらを覆っている全体シールドからなり、全体シールドは、AUIコネクタ・シェルを介してMAU5およびDTE3のシールド・エンクロージャと接続される。
【0019】また、MAU5は、同軸ケーブル1とAUIケーブル2とを電気的に絶縁する。絶縁インピーダンスは、60Hzにおいて250kΩ以上で、3MHzから30MHzで15Ω以下である。なお、3MHzから30MHzの仕様は、MAU5が過渡的な電磁干渉を受けた場合、そのエネルギーをAUIの全体シールドとDTEの接地を通して大地にバイバスさせるための仕様である。
【0020】MAU5と同軸ケーブル1との接続は、ケーブルの伝送特性を劣化させないように、同軸ケーブル1からの引き出し線の長さを極力短くしなければならない。JIS X 5252 規格では、前記の引き出し線の長さが30mm以上あると、システムの要求仕様を満足できないとしている。このため、通常、MAU5と同軸ケーブル1の接続器具とは一体構造をとる。
【0021】JIS X 5252 規格では、MAU5と同軸ケーブル1の接続方法の一つとして、同軸ケーブルの切断を必要としない、穴あけ形の同軸タップ・コネクタ方式を規定している。この方式は、工事作業の容易性とネットワークの変更(局の増減設や移設)に対する柔軟性に優れているため、多く採用されている。
【0022】同軸タップ・コネクタ方式によりMAU5を同軸ケーブル1に取り付ける手順は、図3(a)( JIS X 5252 の図 8.8 を引用)の「同軸タップ・コネクタの概念図」、および、図3(b)( JIS X 5252 の図 8.9 を引用)の「代表的な同軸タップ・コネクタ回路」に示すように、例えば、次の手順で行う。
【0023】(1)タップ・ブロック5a、5bを同軸ケーブル1に取り付ける。
【0024】(2)同軸ケーブル1の外皮102を貫通してシールド構造物103に食い込ませて、シールド構造物103と電気的に接触するシールド接点5eを取り付ける。
(3)タッピングねじ5dを用いて、同軸ケーブル1の外皮102、シールド構造物103、絶縁層104をそれぞれ貫通して中心導体105に至る穴106をあける。その穴106を通して、中心導体105と電気的に接触する信号接点5fを取り付ける。
【0025】(4)50MHzで40dB以上のシールド性能を有するコネクタ・ハウジング50に収められたMAU5の電子回路基板(図示せず)を、タップ・ブロック5aに取り付ける。このとき、前記の信号接点5fおよびシールド接点5eは、MAU5の能動回路に至る信号線の端子5hと帰線の端子5gに、それぞれ接続される。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】上述したように構成されるMAUを用いているLANを用いたデータ通信システムにおいて、LANの物理チャンネルを形成するハードウェアは、電磁界、静電気放電、接地点間電位の一時的変動等の、環境からの電磁干渉に対して耐えなければならない。このハードウェアが耐えなければならない干渉レベルとしては、例えば、JIS X 5252 規格によれば、次のとおりである。
【0027】(1)周囲の平面波の電界強度が、周波数10kHzから30MHzにわたっては2V/m、30MHzから1GHzにわたっては5V/m。なお、この電界強度は、放送局から1km離れた地点での典型的な値である。
【0028】(2)同軸ケーブルのシールドとDTEの接地点との間の瞬時傾斜が1V/nsの干渉電圧。なお、この干渉電圧は、例えば、信号源の内部インピーダンスが50Ωで、ピーク値が15.8V、周波数が10MHzの正弦波を印加した場合に相当する。
【0029】ところが、上述したように構成されるLANシステムを稼働させていると、多数のシステムにおいて、原因が良く分からない、次のような現象が観測されている。
【0030】(1)LANのスループットが、通常より低下する現象がよく起きる。
【0031】(2)LANに接続された装置が動作しなくなる(例えば、パーソナルコンピュータ(PC:Personal computer)のキーボード入力やマウス操作が突然できなくなる)現象がよく起きる。
【0032】(3)MAUの設計信頼度に比べてかなり短い稼働時間内に、MAUが故障する。これらの現象は、本発明者等の調査によれば、コンピュータ設置用の金属製二重床(以下、フリーアクセス・フロアと呼ぶ)、オフィス用の金属製二重床(以下、OAフロアと呼ぶ)等の床下に、LANの同軸ケーブルとMAUが敷設されていて、それらの床の使用年数が数年以上経過している場所で起きやすい傾向にあることが分かった。なお、フリーアクセス・フロアとOAフロアの基本的な構造は、同一(本来の床面にフロア・パネルを支える支持脚を格子状に配置して、その上に金属製のフロア・パネルを敷き詰め、二重床を形成する)である。
【0033】この原因については、従来、明らかではなかった。しかし、これについて、本発明者等は、従来の同軸タップ・コネクタ方式を用いたMAU部分において、静電気放電に伴って放射される過渡電磁波による干渉に対して耐性が不足しているため、同軸ケーブルから引き出した信号接点およびシールド接点に、ノイズが重畳しやすいこと、および、その結果、種々の障害を引き起こすことを、研究の結果、突きとめた。
【0034】すなわち、図3(b)に示すように、同軸ケーブル1の外皮102、シールド構造物103および絶縁層104をそれぞれ貫通した穴106を通して、中心導体105と電気的に接触する信号接点5fが設けられているため、以下に示すような二つ作用によりノイズが同軸ケーブルの中心導体に注入すると考えられる。
【0035】(1)シールド構造物103にあけられた穴の部分では、導体の一様性が崩れているため、周囲に乱磁界が発生する。この時、信号接点5fの導体部分には相互誘導作用によるノイズ電圧が誘起され、誘起されたノイズ電圧は中心導体105に注入される。
【0036】(2)シールド構造物103にあけられた穴の周囲と信号接点5fの導体とは静電結合している。シールド構造物103にあけられた穴の周囲では、インピーダンスが急激に高まるため、シールド構造物の表皮を流れるノイズ電流は、前述の静電結合により一部が中心導体105に流れ込む。
【0037】本発明の目的は、同軸構造の伝送媒体を分岐して利用する場合において、静電気放電で放射される過渡的な電磁波等の電磁干渉によるノイズを低減する伝送媒体のノイズ低減装置を提供することにある。
【0038】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明は、中心導体、絶縁層、シールド構造物および外皮を有する同軸構造の伝送媒体を分岐して利用する場合の伝送媒体のノイズ低減装置であって、前記伝送媒体の分岐部分に隣接し、当該伝送媒体のシールド構造物に電気的に接続されるシールドタップコネクタと、前記伝送媒体の分岐部分に隣接し、前記伝送媒体に挿入接続されるインダクタンス素子と、導電性の接地板と前記導電性の接地板と、前記シールドタップコネクタとを電気的に接続させる複数の接続線とを有し、前記シールドタップコネクタは、前記複数の接続線が接続され、前記伝送媒体のシールド構造物に電気的に接続される接続端子を備える。また、前記接地板は、前記複数の接続線を各々接続させるための複数の端子を備える。
【0039】この場合、シールドタップコネクタは、伝送媒体のシールド構造物に電気的に接続され、また、シールドタップコネクタの接続端子と接地板の複数の端子とは複数の接続線によりそれぞれ接続される。一方、接地板は、施工時において建家自体の床、すなわち、建家の鉄骨などの導電性構造体を覆っているコンクリート床面に密着させて敷かれている。接地板は、それ自体と、大地と等価であると見做せる建家の導電性構造体との間に生じる微小コンデンサの集合体とみなすことができ、ノイズ電流は、インダクタンス素子を介して大地にバイパスされる。このため、ノイズを低減することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0041】図1に本発明の実施の形態におけるノイズ低減装置の構成図を示す。
【0042】図1に示すように、本発明の実施の形態においては、同軸ケーブルを分岐して利用する場合の同軸ケーブルにおけるノイズ低減装置を提供する。
【0043】図1において、ノイズ低減装置は、同軸ケーブル1を分岐させる分岐用コネクタのMAU5に隣接し、同軸ケーブル1のシールド構造物に電気的に接続されるシールドタップコネクタと、MAU5に隣接し、同軸ケーブル1に挿入接続されるインダクタンス素子のフェライトコア300と、導電性の高周波接地装置400とを有する。シールドタップコネクタは、複数の接続線402により高周波接地装置400と同軸ケーブル1のシールド構造物とを電気的に接続させる接続端子411を備え、高周波接地装置400は、複数の接続線402を各々接続させるための複数の端子401を備える。
【0044】フェライトコア300は、図1に示すように、同軸ケーブル1に対して、MAU5のタップブロック5aおよび5bの両端に近接させて装着する。フェライトコア300は、少なくとも1つ備え、同軸ケーブル1上において、MAU5のタップブロック5aおよび5bの両端の少なくとも一方か、MAU5とシールドタップコネクタ410とが装着された両端の少なくとも一方に装着される。
【0045】フェライトコア300は、例えば、2つのブロックに分割される分割型で、2つのブロックが連結されたときに同軸ケーブルが挿通される貫通孔を有する。すなわち、同軸ケーブルをはさみ込んで2つのブロックが連結され、同軸ケーブルと接触する部分は同軸ケーブルの外周に合致する窪みをそれぞれのブロックが備える。このため、同軸ケーブルの切断を必要としない。2つのブロックが連結結合されるために、ブロックの一方には凹部(図示せず)を有し、他方には凸部(図示せず)を有する。これらの凹部と凸部とが噛み合わされることにより連結される。同軸ケーブル1の中心導体105(図3参照)に注入されるノイズの大きさは、シールド構造物に流れるノイズ電流に比例するので、フェライトコア300を付加することにより、同軸ケーブルのシールド構造物に流れるノイズを阻止することができ、これにより同軸ケーブル1の中心導体105(図3参照)に注入されるノイズを減衰させることができる。使用するフェライトコアは、例えば、挿入インビーダンスが50MHzにおいて100Ω程度のものを用いる。
【0046】図5に、シールドタップコネクタ410の構成図を示す。図5において、シールドタップコネクタ410は、同軸ケーブルのシールド構造物と電気的に接続される。シールドタップコネクタ410には接続線を接続するための接続端子411が設けられている。また、シールドタップコネクタ410は、例えば、二つのブロック410aおよびbで構成される。各ブロック410aおよびbは、同軸ケーブルを挟み込むことができるように、同軸ケーブルと接触する部分は同軸ケーブルの外周に合致する窪みを持っている。片方のブロックの同軸ケーブルの外周に接する面には金属製のブレード端子413が取り付けられている。二つのブロックは、同軸ケーブルを挟み、締め付け用ボルト412によって締めつける。このとき、ブレード端子413の先端は同軸ケーブルの外皮を貫通してシールド構造物と電気的に接触する。
【0047】図6に示すブレード端子413の三面図を参照してブレード端子の構成をさらに説明する。図6に示すように、ブレード端子413は、同軸ケーブル1の外皮102(図5参照)の外周の一部に沿って接触するためのブレード支持部531と、ブレード支持部531に設けられて、同軸ケーブル1の外皮102を貫通してシールド構造物103と接続するための少なくとも1個のブレード532とを備える。
【0048】ブレード支持部531およびブレード532は、それぞれ導体、例えば、金属で形成されている。ブレード支持部531は、同軸ケーブル1の外皮102の外周に倣って、円筒の一部をなすように、湾曲した形状を有し、ブロック410aまたはbの一方に接触する。ブレード支持部531は、それ自身が湾曲して構成している円筒面の軸方向に沿って、かつ、円筒面の内側向きに、2箇所に、合計2個のブレード532を切り起こしにより形成してある。このブレード532は、それぞれを二つ割りすると共に、先端を尖らせる加工を施しておく。これにより、外皮102に容易に突き刺すことができるようになる。なお、ブレード支持部531の、ブレード切り起こし部分は、貫通孔535となる。
【0049】また、前述したように、図5に示すように、シールドタップコネクタ410は、第1のブロック410aと、この第1のブロック410aに対向して、同軸ケーブル1を挟む第2のブロック410bと、第1および第2のブロック410a、410bを連結して、かつ、固定する連結部材の締め付け用の締め付け用ボルト412とを有する。締め付け用ボルト412は金属で形成される。第1のブロック410aと第2のブロック410bとには、締め付け用ボルト412が挿入されるネジ穴が設けられている。締め付け用ボルト412は、第1のブロック410a側から締め付けるボルトと、第2のブロック410b側から締め付けるボルトとを2つ備えるようにしてもよい。連結部材としては、第1のブロック410aと第2のブロック410bとを締め付けて、連結し、固定するものならば、ボルト以外のもので構成してもよい。また、接続端子411は、接続線が接続される端子であり、第1のブロック410a、第2のブロック410bもしくは締め付け用ボルト412に電気的に接続される。本実施の形態においては、接続線の端部に接続されている圧着端子140(図7(c)参照)の穴に締め付け用ボルト412を挿通させ、締め付け用ボルト412の頭部により圧着端子140を第1のブロック410aに圧接させる。
【0050】第1のブロック410aは、同軸ケーブル接触面側に、凹部562が設けられている。また、第2のブロック410bにも、同様に、凹部568が設けられている。これらの凹部562および568は、それぞれ、同軸ケーブル1の外周に倣うため、テーパが設けられている。また、第1のブロック410aの凹部562の内面には、同軸ケーブル1の外皮102およびブレード支持部531を固定するような窪みを備えるようにしている。さらに、第1のブロック410aの凹部562の内面に突起部を、ケーブル1の延長方向に平行な線上に沿って配置されるように1又は2以上設けておく(図示せず)ようにしてもよい。この突起部は、ブレード端子413のブレード支持部531からブレード532を切り起こしたことによって形成された孔535に嵌まり込む位置に設けられる。突起部が孔535にはめ込まれることにより、ブレード端子413は、第1のブロック410aに対して、位置決めされる。もしくは、ブレード支持部531の外側であって、ブレード支持部531を挾み込むような位置、例えば、ブレード端子413の長手方向の両端のすぐ外側の位置にも突起部を設けるようにしてもよい。また、突起部は、第1のブロック410aの湾曲面を基準として、ブレード端子413のブレード支持部531の厚みに等しい長さ分だけ突出している。これにより、突起部は、ブレード支持部531と共に、同軸ケーブル1の外皮102に圧接することができる。
【0051】シールドタップコネクタを組み立てる場合には、第1のブロック410aの突起部にブレード端子413を嵌め合わせ、第1のブロック410aと第2のブロック410bとにより同軸ケーブル1を挟み込んで締め付け、突起部は、同軸ケーブル1の外皮102の表面に圧接する。その過程において、ブレード端子413のブレード532は、同軸ケーブル1の外皮102を突き破ってシールド構造物103に突き刺さる。このようにして、同軸ケーブル1およびブレード端子413は、第1のブロック410aおよび第2のブロック410bにより固定される。
【0052】本実施形態では、第1のブロック410aおよび第2のブロック410bとネジは、金属で形成する。これにより、同軸ケーブル1のシールド構造物に、金属製のブレード端子413と、金属製の第1のブロック410aおよび第2のブロック410bと、それらに電気的に接続される接続端子とを介して接続線が接続される。
【0053】なお、シールドタップコネクタは、組立て後、表面に電気絶縁テープ等を巻きつけて、周囲の金属物、例えば、フリーアクセス床の支持脚との、意図しない電気的接触を防止するのが望ましい。
【0054】つぎに、高周波接地装置400について、図7〜図12を参照して説明する。
【0055】高周波接地装置400は、図7(a)に示すように、表面の一部に絶縁加工が施された導電性の接地板110と、シールドタップコネクタに接続される接続線を接続させるために、接地板110にはんだ付けされた突起端子である複数のL字タブ端子100とを備える。さらに、図7(c)に示すように、複数のL字タブ端子100にそれぞれ接続される複数の接続ケーブル160をさらに備える。接続線は、絶縁のためにビニールで表面がコーティングされた導電線であり、一方の端部に、シールドタップコネクタ410に接続されるための接続端子である圧着端子140が接続され、他方の端部に、L字タブ端子100に接続されるファストン端子などの差込型接続端子150が接続されている。
【0056】L字タブ端子100は、図7(b)に示すように、接地板に電気的に接続される座部102と、接続線が結合される結合部104とを備え、結合部104は、接地板の表面に突起し、座部に電気的に接続されている。また、結合部104は、搬入時には接地板の平面に対して平行になるように寝かしておき、接続線を接続させるときに、接地板の平面に対し、ほぼ垂直方向になるように起こすようにすることができる。これにより、搬入時には、接地板を重ねることができ持ち運びが容易となる。また、L字タブ端子100は、図7(b)に示すように、ロック穴106があけられており、差込型接続端子150の内部にはロック用の突起が設けられている(図示せず)。差込型接続端子150にL字タブ端子100が挿入されて嵌合すると、差込型接続端子150内部にあるロック用の突起が、L字タブ端子100のロック穴にはまる構成になっている。
【0057】突起端子としたのは、接続線に接続しやすくするためである。また、一般に、導電板に接続線を接続するのには時間がかかり、また、接続用の工具が必要となる。本発明の実施の形態においては、導電板に予め突起端子を、図7(a)に示すように、はんだ付けしておくことにより、施工時の作業が容易になる。また、タブ端子とすることにより特別な工具なしで嵌合することができる。はんだ付けの代わりに、タブ端子を、接地板にねじ止めしておいたり、溶接により結合させたり、圧着させたりしてもよい。
【0058】L字タブ端子100の代わりに、図8(a)および(b)に示すような、T字のタブ端子200を複数備えるようにしてもよい。図8(a)および(b)において、T字タブ端子200は、接地板に電気的に接続される座部202と、接続線が結合される結合部204とを備え、結合部204は、接地板の表面に突起し、座部に電気的に接続されている。また、T字タブ端子200は、L字タブ端子100と同様に、図8(b)に示すように、ロック穴206があけられており、図7に示す差込型接続端子150にT字タブ端子200が挿入されて嵌合すると、差込型接続端子150内部にあるロック用の突起が、T字タブ端子200のロック穴にはまる構成になっている。T字タブ端子200の場合、L字タブ端子より座部が大きくなるため接地板との接触面積が大きくなる。
【0059】さらに、L字タブ端子100の代わりに、図9(a)および(b)に示すような、切り込み端子180を複数備えるようにしてもよい。切り込み端子180は、図9(a)に示すように、接地板の一部を予め切り込んでおき、施工時に、図9(b)に示すように、切り込み端子180を起こして利用する。また、切り込み端子180には、L字タブ端子100と同様に、図9(b)に示すように、ロック穴306があけられており、図7に示す差込型接続端子150に切り込み端子180が挿入されて嵌合すると、差込型接続端子150内部にあるロック用の突起が、切り込み端子180のロック穴にはまる構成になっている。この場合、接地板の厚さは、差込型接続端子150に嵌合するような厚さにしておく。切り込み端子180を備える場合には、タブ端子などのような接続端子を設置する必要がない。また、搬入時には接地板の平面に対して平行になるように寝かしておき、接続線を接続させるときに、接地板の平面に対し、ほぼ垂直方向になるように起こすようにすることができるので、搬入時には、接地板を重ねることができ持ち運びが容易となる。また、切り込み端子の各々に、接続線を結合させるためのコネクタを装着するようにしてもよい。
【0060】また、接地板110の材質は、銅、アルミニウム、鉄などの導電性の金属とするができる。持ち運びや取扱を考慮すると、なるべく薄い厚さが望ましいので、本実施の形態においては、厚みが0.2mmの銅板を用いている。接地板110の平面的な大きさは、勿論、静電容量に影響するが、大き過ぎると、取扱いが不便であったり、電子機器設置後に高周波雑音障害が生じて其の対策を講ずる場合などにも大き過ぎると施工し難いので、本発明の実施の形態では、取扱い易さを考慮して0.3m×0.3mの板を標準仕様とする。また、接地板110は、その裏面と、表面の周辺の端部とを絶縁加工しておく。確実に絶縁するために市販の厚さ0.1mm程度のいわゆる絶縁フィルムで被覆してみたところ、良い実験結果を得た。絶縁加工を施すのは、フリーアクセス床板の鉄製支持脚に接地板周縁端面が接触して電気的接続状態になってしまうと、後述する接地板の静電容量効果がなくなってしまうのを防ぐためである。また、シールドタップコネクタ410の接続端子411から上記接地板までの間の接続線の長さは、0.5m以下にすることが望ましい。また、接続線の太さは、断線等を考慮し、断面積1mm2以上にすることが望ましい。更に、接続線の本数は、複数本にする。接地板上を接続点から四方へ電流が広がって流れて行く状況をミクロに考えると、高周波接地板は、図10に示すように、微小なインダクタンスを持つ経路の先に微小容量が接続されたものが繰返して直列に接続された等価モデルとして考えられ、電流の伝搬にも時間が必要であるから、高周波の場合には、大きさ0.3m×0.3mという比較的小さい接地板の場合でも、板の中央の一点に接続しただけでは板の全面積を有効に利用していないことになる。そのため、図11に示すように5つの接続端子(接続線5本)を用いた場合と、図7に示すように3つの接続端子(接続線3本)を用いた場合とのように、方形の接地板の対角線上に互いに近接しないように、接続端子を配置することができる。実際の工事を考えると、5本の接続線を必ず接続するのはかなり厄介なので、本実施の形態においては、3本で接続することにした。また、L字タブ端子100の配置位置は、以下に説明するように、決定することができる。高周波接地板は、図10に示すように、微小コンデンサの集合体とみなすことができる。この場合、接続線の高周波接地板上の接続点(図7に示すL字タブ端子100が配置される位置)と、各微小コンデンサ(C1〜Cn)との間にはインダクタンス(L1〜Ln)が存在する。すなわち、接地板上を接続点から四方へ電流が広がって流れて行く状況をミクロに考えると、高周波接地板は、図10に示すように、微小なインダクタンスを持つ経路の先に微小容量が接続されたものが繰返して直列に接続された等価モデルとして考えられる。このため、接続線の高周波接地板上の接続点から離れるにつれて、インダクタンスが増すのでコンデンサの効果がなくなる。この様子を、模式的に図12および図13に示す。図12に示すように、接続線が1本の場合は、高周波接地板全体を有効に使うことができない。これに対して、接続線を5本にし、図13に示すように接続線の接続位置を配置した場合には、高周波接地板を有効に使用することができる。この場合、L字タブ端子100の各々が配置される位置を円の中心と仮定したときの同一半径rの各々の円が、接地板の平面上において、重ならないような位置に配置しておく。各々の円が互いに接していて、半径rが最大値をとるとき、高周波接地板の長さがaである場合に、数1に示すような式により求めることができる。
【0061】
【数1】r=(√2−1)a/2L字タブ端子100を5個配置する場合の位置は、方形の接地板の場合、2つの対角線が交差する位置に1つを配置し、その配置した位置から、2r離れた対角線上の4つの位置にそれぞれ配置する。このように、L字タブ端子100の各々が配置される位置を、ある程度距離を離して配置しておくことにより、より有効に接地板を使うことができる。
【0062】実際に施工する場合には、以上説明したような構成の高周波接地装置を、同軸ケーブル1とMAU5とが敷設されている、軸組が鉄骨または鉄筋構造のビルの床(二重床であるフリーアクセス床の場合は建家自体の床)に、図14に模式的に示すように配置する。本発明の実施の形態では、図1に示したように、そのMAU5に隣接する位置に、同軸ケーブル1を挾み込んでシールドタップコネクタ410を配置し、同軸ケーブル1のシールド構造物に電気的に接続させる。さらに、MAU5とシールドタップコネクタ410とが装着された両端に近接させて、同軸ケーブル1を挾み込んでフェライトコア300を装着する。フェライトコア300は、少なくとも1つが装着され、フェライトコア300の装着される位置は、MAU5のタップブロック5aおよび5bの両端の少なくとも一方か、MAU5とシールドタップコネクタ410とが装着された両端の少なくとも一方でもよい。また、前述した接地板は、建家のコンクリート床面に密着させて敷設され、粘着テープ等で床に固定させる。また、それぞれが長さ0.5m以下で断面積1mm2以上の導線複数本以上を用いて、シールドタップコネクタ410に各接続線の一端を接続し、この接続線の他の一端を接地板の複数の突起端子に、それぞれ接地板上に互いに離れた位置で分散接続する。
【0063】本発明の実施の形態では、高周波接地を、標準的な資材、施工法で実施することを狙って、実験を重ね、費用対効果の点で最も良好な結果が得られる方法として上記のようにしたのである。従って、上記の高周波接地板の大きさが多少大きくても小さくても勿論差し支えないが、標準化の点、材料取りの経済性などから上記寸法を定めた。なお、インピーダンス測定の結果では、接地板の材質や厚さも、殆ど効果には影響しない。これに対して、接続線の長さの上限は是非この程度に抑えることが重要である。しかし、接続線の材質や断面積の影響は小さい。断面積もあまり細くすれば取扱い中に断線する恐れがあるから一応1mm2以上の銅線とした。また、接地板の周縁端面部がフリーアクセス床板の支持脚に触れて電気的接続状態となってしまって接地板の静電容量の効果が現れなくなる場合が実際には意外に多く発生しており、この端面部の絶縁について特に注意しなければならない。
【0064】以上のように接続させることにより、ノイズ低減装置であるシールドタップコネクタ410と、フェライトコア300と、高周波接地装置400とが接続される。
【0065】つぎに、本実施の形態において、フェライトコアとシールドタップコネクタ410と高周波接地装置とを用いることによりノイズが低減される理由を説明する。
【0066】フェライトコア300のみを用いて十分なノイズ抑制効果を得るためには、MAU5において高周波電流のバイパス路が必要である。ところで、MAUの内部には、MAUが過渡的な電磁干渉を受けた場合にそのエネルギーをAUIケーブル(MAUとDTEとを接続させるケーブル)の全体シールドとDTEの接地線とを通して大地にバイパスさせる回路が設けられている。JIS X 5252規格によれば、バイパス回路のインピーダンスは、60Hzにおいて250kΩ以上で、3MHzから30MHzで15Ω以下と規定されている。実際のMAUでは、この規定を満足させるために、同軸ケーブルのシールド部分と、AUIケーブルを接続するコネクタの金属製勘合部(AUIケーブルの全体シールドが接続される部分)との間に、例えば1MΩの固定抵抗器と0.01μFのコンデンサを並列接続した回路が形成されている。しかし、AUIケーブルの長さは50mまで許容されているうえにDTEの接地線の長さは不定であり、MAUから見たバイパス路の1MHz以上の高周波インピーダンスは、並列共振を起こして、インピーダンスが急激に上昇する周波数が多数存在するため非常に不安定である。このように、DTEの接地線が長く、インダクタンス素子であるフェライトコア300を用いただけでは、MAU5から見た場合のインピーダンスは、高インピーダンス状態になり、十分なノイズ抑制効果は期待できない。
【0067】一方、MAUが備えている高周波電流バイパス路とは別系統の高周波接地装置を備えた場合の本発明の実施形態における接続状態を図15に等価的に示す。図15において、接地板は、微小コンデンサの集合体とみなすことができ、フェライトコア300のインダクタンス素子とこの接地板とにより、10MHzぐらいの高周波数においては直列共振の状態になり、MAU5から見た場合の接地インピーダンスは、低インピーダンス状態になる。このため、同軸ケーブル1のシールド構造物の表皮を流れるノイズ電流は、フェライトコア300のインダクタンス素子とコンデンサと見做せる接地板を介して大地にバイパスされる。また、MAU5の同軸ケーブル1から引き出した信号接点およびシールド接点から見た同軸ケーブルのシールド構造物のインピーダンスは、フェライトコア300のインダクタンス素子の作用で高インピーダンス状態となるため、MAU5の同軸ケーブルから引き出した信号接点およびシールド接点に結合するノイズを低減することができる。
【0068】このように構成したノイズ低減装置において、シールドタップコネクタ410の端子411から見た大地間の容量性インピーダンスの実測値は、20MHzで20Ω以下となった。なお、JIS X 5252規格では、1つのケーブルセグメントは1点接地とすることが規定されている。この高周波接地回路の60Hzにおけるインピーダンスは1MΩ以上であるので、この高周波接地回路によって、同軸ケーブルの1点接地が崩されることはない。
【0069】同軸タップコネクタ方式のMAUが取り付けられている同軸ケーブルが静電気放電により放出される過渡電磁波に曝されたとき、同軸ケーブルに誘起するノイズ電圧の実測値は、図16で示す通りであった。また、図17に、その実験の構成図を示す。以下に、実験の手順を示す。
【0070】(1)周囲に対して電気的に絶縁したフロア・パネルAと、接地されたフロア・パネルBを所定の間隔を隔てて配置する。なお、これらのパネルA、Bの下方には、接地された銅板Cが、床に配置されている。パネルAおよびBは、支持脚901により絶縁された状態で、銅板C上に支持されている。
【0071】(2)ケーブルの両端を特性インピーダンスに等しいターミネータ(図示せず)で終端した供試同軸ケーブル1を、ケーブル1の中央がフロア・パネルAとフロア・パネルBの対向面と一致する位置に配置する。
【0072】(3)内部抵抗が極めて高い(公称2GΩ)高圧電源装置910を、導電ゴムひも(20kΩ/m)911用いて、絶縁されたフロアパネルAと接続する。また、フロアパネルAに導電ゴムひも921を介して円盤電極922を接続し、この円盤電極921に表面電位計920の電位検出用の電極923を対向させる。この状態で、高圧電源装置910により、フロアパネルAを所定の電圧(表面電位計920の指示値)に帯電させ、接地されたフロアパネルBとの隙間で放電を起こす。なお、実際は、試験しようとする電圧で放電が起こるように、両パネル間の間隔を調整する。
【0073】(4)供試同軸ケーブル1の片側のターミネータの位置にディジタル式のオシロスコープ(図示せず)を接続して、供試同軸ケーブル1に誘起するノイズ電圧を測定する。
【0074】(5)実験は、MAUが一つも接続されていない供試同軸ケーブルA(リンク・セグメントに相当)と、ケーブルの中央位置に1個だけMAUを接続した供試同軸ケーブルB(ケーブル・セグメントに相当)と、ケーブルの中央位置に1個だけMAUを接続し、前述したフェライトコアのみを装着した供試同軸ケーブルCと、ケーブルの中央位置に1個だけMAUを接続し、本発明の実施の形態におけるノイズ低減装置を装着した供試同軸ケーブルDとの4種類に対して行った。なお、供試同軸ケーブルB、CおよびDのMAUには、分岐ケーブル(AUIケーブル)およびデータ端末装置(DTE)は接続しない。図16においては、供試同軸ケーブルに誘起したノイズ電圧のピーク・ツー・ピーク値を、フロア・パネルA、B間の放電電圧毎にプロットしたグラフである。図16に示したように、MAUを接続した同軸ケーブルBに誘起するノイズ電圧は、MAUが接続されていないケーブルAに比べて約1000倍増加する。しかも、その電圧は、データ通信を行うときにケーブル上を伝播する信号の定格振幅(約2V)に対して、数倍の振幅に達している。また、フェライトコアのみを装着した供試同軸ケーブルCおよび本発明の実施形におけるノイズ低減装置を装着した供試同軸ケーブルDにおいては、放電電圧を2kVにしたときのみ測定した。この結果、同軸ケーブルBに誘起するノイズ電圧に比べて、同軸ケーブルCでは約1/2に減少し、同軸ケーブルDでは約1/4に減少した。このように、フェライトコアと高周波接地装置とを用いた本発明の実施の形態によれば、よりノイズ電圧を低減させることができる。
【0075】
【発明の効果】本発明のノイズ低減装置によれば、同軸構造の伝送媒体で静電気放電で放射される過渡的な電磁波等の電磁干渉によるノイズを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるノイズ低減装置の構成図。
【図2】JIS X 5252 規格が示す、10BASE5 形式ベースバンド同軸システムのシステム構成例を示すブロック図。
【図3】(a)JIS X 5252 規格が示す、同軸タップ・コネクタの概念を示す斜視図、(b)JIS X 5252 規格が示す、代表的な同軸タップ・コネクタ回路を示す説明図。
【図4】同軸タップコネクタ方式MAUの一般的な接続方法を示す説明図。
【図5】本発明の実施の形態におけるシールドタップコネクタの構成図。
【図6】本発明の実施の形態において用いられるブレード端子の一例を示し、(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図。
【図7】(a)本発明の実施の形態における高周波接地装置の外観図。
(b)本発明の実施の形態におけるL字タブ端子の外観図。
(c)本発明の実施の形態における接続ケーブルの外観図。
【図8】(a)本発明の実施の形態における高周波接地装置のT字タブ端子を用いる場合の外観図。
(b)本発明の実施の形態におけるT字タブ端子の外観図。
【図9】(a)本発明の実施の形態における高周波接地装置の切り込み端子を用いる場合の外観図。
(b)本発明の実施の形態における高周波接地装置の切り込み端子を起こした場合の外観図。
【図10】高周波接地板の等価モデルの説明図。
【図11】本発明の実施の形態における接地板を5本の接続線で接続する際の接続位置を示す図。
【図12】接続線が1本の場合の微小コンデンサの働きを示す模式図。
【図13】接続線が5本の場合の微小コンデンサの働きを示す模式図。
【図14】本発明の実施の形態における接地方法を模式的に説明する図。
【図15】本発明の実施形態における接続状態を等価的に示す説明図。
【図16】供試同軸ケーブルA、B及びCの夫々に誘起したノイズ電圧のピーク・ツー・ピーク値を、フロア・パネル間の放電電圧毎にプロットしたグラフ。
【図17】過渡電磁波に曝されることによって、同軸ケーブル端に誘起するノイズ電圧を調べる実験の構成を示す説明図。
【符号の説明】
1…同軸ケーブル、2…分岐ケーブル(AUIケーブル)、3…データ端末装置、5…媒体接続ユニット(MAU)、5aおよび5b…タップブロック、50…コネクタハウジング、300…フェライトコア、410…シールドタップコネクタ、411…接続端子、400…高周波接地装置、401…端子、402…接続線、102…外皮、103…シールド構造物、104…絶縁層、105…中心導体、410aおよびb…ブロック、412…締め付け用ボルト、413…ブレード端子、562および568…凹部、531…ブレード支持部、532…ブレード、535…貫通孔、100…L字タブ端子、110…接地板、120…絶縁フィルム、102および202…座部、104および204…結合部、106および206…ロック穴、130…ビニール絶縁電線、140…圧着端子、150…差し込み型接続端子、200…T字タブ端子、910…高圧電源装置、921および911…導電ゴムひも、922…円盤電極、923…電極、920…表面電位計、901…支持脚。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、同軸構造の伝送媒体のノイズ低減装置に係り、特に、同軸構造の伝送媒体を分岐して利用する場合において、環境からの電磁干渉を受けて誘起するノイズを低減する伝送媒体のノイズ低減装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、クライアント・サーバ型データ通信システムの通信基盤には、複数の局が一つの伝送路を共用するバス型形態のローカル・エリア・ネットワーク(以下、LANと略す)である、JIS X 5252 規格のLANが多用されている。JIS X5252 規格のLANに接続する各局は、CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)と呼ぶアクセス方式を用いてデータ送信を行う。このアクセス方式の概略動作を以下に示す。
【0003】(1) フレーム(送信データに、宛先のアドレス、発信元アドレス、誤り検査用冗長ビット等を付加した情報ブロック)の送信を行う局は、他のすべての局が送信していないときを待つ。
【0004】(2) フレームをビット直列の形で伝送路に送出する。送信中は、他の局が送出したフレームとの衝突の有無を監視する。
【0005】(3) 衝突を検出したときは、直ちに送信を打ち切った後、他のすべての局に対して衝突の発生を確実に伝えるための信号を送出する。
【0006】(4) ランダムな時間待った後、項番(1)から再度送信を試みる。
【0007】また、各局のデータ受信動作の概略を以下に示す。
【0008】(1)フレームの受信終了を待つ。
【0009】(2)もし、衝突フレームを検出した場合(送信動作の項番(3)による)は、そのフレームを破棄して、項番(1)に戻る。
【0010】(3)受信したフレームが自局宛のフレームであるかチェックする。もし、自局宛のフレームでない場合は、そのフレームを破棄して、項番(1)に戻る。
【0011】(4)誤り検査等により、受信データの正常性をチェックする。
【0012】次に、JIS X 5252 規格LANの、物理的仕様について説明する。JIS X 5252規格では、物理層サービスインタフェース部での平均ビット誤り率が、10~8以下で、伝送速度が10Mbit/sの性能を有する物理的通信手段を各局に対して提供するために、10BASE5形式と呼ばれるベースバンド同軸システム(同軸ケーブルを用いた伝送媒体に情報を直接符号化して出力するシステム)を規定している。
【0013】ベースバンド同軸システムの構成の一例を、図2( JIS X 5252 の図 8.11 を引用)に示す。このシステムでは、図示したように、両端を、整合する特性インピーダンスを有する終端器4で終端した1本の同軸ケーブル1が、一つのケーブル・セグメントを形成する。一つのケーブル・セグメントの最大長は、500mである。一つのケーブル・セグメントには、データ通信を行う局を接続するための媒体接続ユニット(以下、MAUと略す)5を最大100台接続することができる。データ通信を行う局のデータ端末装置(以下、DTEと略す)3は、最大ケーブル長が50mのアタッチメント・ユニット・インタフェース(以下、AUIと略す)ケーブル2を介在させて、MAU5に接続する。なお、図示していないが、図2に示す何れか一つのMAU5の位置に設けた中継器セットにより、他のケーブル・セグメントまたはリンク・セグメント(両端に中継器セットが付いたポイント・ツー・ポイント接続の同軸ケーブル)を連結することで、一つのシステム内の任意のMAU間の同軸ケーブルの線路長を最大2.5kmまで延長することができる。
【0014】MAU5は、AUIケーブル2と接続するためのAUIコネクタと、同軸ケーブル1と接続するための同軸タップコネクタとが設けられ、かつ、電気的に接続するための回路を内蔵するシールド・エンクロージャとを有する。そして、MAU5は、DTE3と同軸ケーブル1との結合を司るために、(1)媒体(同軸ケーブル1)に対して直列なデータビット列を送信する、送信機能と、(2)媒体(同軸ケーブル1)から直列なデータビット列を受信する、受信機能と、(3)二つ以上の局が同時に送信していることを検出する、衝突検出機能と、(4)送信機能を自動的に中断し、異常に長いデータ列の出力を禁止する、ジャバ機能との、4つの機能を持つ。
【0015】このようなMAU5は、次のことを前提にして設計されている。
【0016】(a)DTE3は適切に接地して使用する。
【0017】(b)同軸ケーブル1のシールドは一点接地方式で接地されている。
【0018】(c)AUIケーブル2は個別にシールドされた4組のより線およびそれらを覆っている全体シールドからなり、全体シールドは、AUIコネクタ・シェルを介してMAU5およびDTE3のシールド・エンクロージャと接続される。
【0019】また、MAU5は、同軸ケーブル1とAUIケーブル2とを電気的に絶縁する。絶縁インピーダンスは、60Hzにおいて250kΩ以上で、3MHzから30MHzで15Ω以下である。なお、3MHzから30MHzの仕様は、MAU5が過渡的な電磁干渉を受けた場合、そのエネルギーをAUIの全体シールドとDTEの接地を通して大地にバイバスさせるための仕様である。
【0020】MAU5と同軸ケーブル1との接続は、ケーブルの伝送特性を劣化させないように、同軸ケーブル1からの引き出し線の長さを極力短くしなければならない。JIS X 5252 規格では、前記の引き出し線の長さが30mm以上あると、システムの要求仕様を満足できないとしている。このため、通常、MAU5と同軸ケーブル1の接続器具とは一体構造をとる。
【0021】JIS X 5252 規格では、MAU5と同軸ケーブル1の接続方法の一つとして、同軸ケーブルの切断を必要としない、穴あけ形の同軸タップ・コネクタ方式を規定している。この方式は、工事作業の容易性とネットワークの変更(局の増減設や移設)に対する柔軟性に優れているため、多く採用されている。
【0022】同軸タップ・コネクタ方式によりMAU5を同軸ケーブル1に取り付ける手順は、図3(a)( JIS X 5252 の図 8.8 を引用)の「同軸タップ・コネクタの概念図」、および、図3(b)( JIS X 5252 の図 8.9 を引用)の「代表的な同軸タップ・コネクタ回路」に示すように、例えば、次の手順で行う。
【0023】(1)タップ・ブロック5a、5bを同軸ケーブル1に取り付ける。
【0024】(2)同軸ケーブル1の外皮102を貫通してシールド構造物103に食い込ませて、シールド構造物103と電気的に接触するシールド接点5eを取り付ける。
(3)タッピングねじ5dを用いて、同軸ケーブル1の外皮102、シールド構造物103、絶縁層104をそれぞれ貫通して中心導体105に至る穴106をあける。その穴106を通して、中心導体105と電気的に接触する信号接点5fを取り付ける。
【0025】(4)50MHzで40dB以上のシールド性能を有するコネクタ・ハウジング50に収められたMAU5の電子回路基板(図示せず)を、タップ・ブロック5aに取り付ける。このとき、前記の信号接点5fおよびシールド接点5eは、MAU5の能動回路に至る信号線の端子5hと帰線の端子5gに、それぞれ接続される。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】上述したように構成されるMAUを用いているLANを用いたデータ通信システムにおいて、LANの物理チャンネルを形成するハードウェアは、電磁界、静電気放電、接地点間電位の一時的変動等の、環境からの電磁干渉に対して耐えなければならない。このハードウェアが耐えなければならない干渉レベルとしては、例えば、JIS X 5252 規格によれば、次のとおりである。
【0027】(1)周囲の平面波の電界強度が、周波数10kHzから30MHzにわたっては2V/m、30MHzから1GHzにわたっては5V/m。なお、この電界強度は、放送局から1km離れた地点での典型的な値である。
【0028】(2)同軸ケーブルのシールドとDTEの接地点との間の瞬時傾斜が1V/nsの干渉電圧。なお、この干渉電圧は、例えば、信号源の内部インピーダンスが50Ωで、ピーク値が15.8V、周波数が10MHzの正弦波を印加した場合に相当する。
【0029】ところが、上述したように構成されるLANシステムを稼働させていると、多数のシステムにおいて、原因が良く分からない、次のような現象が観測されている。
【0030】(1)LANのスループットが、通常より低下する現象がよく起きる。
【0031】(2)LANに接続された装置が動作しなくなる(例えば、パーソナルコンピュータ(PC:Personal computer)のキーボード入力やマウス操作が突然できなくなる)現象がよく起きる。
【0032】(3)MAUの設計信頼度に比べてかなり短い稼働時間内に、MAUが故障する。これらの現象は、本発明者等の調査によれば、コンピュータ設置用の金属製二重床(以下、フリーアクセス・フロアと呼ぶ)、オフィス用の金属製二重床(以下、OAフロアと呼ぶ)等の床下に、LANの同軸ケーブルとMAUが敷設されていて、それらの床の使用年数が数年以上経過している場所で起きやすい傾向にあることが分かった。なお、フリーアクセス・フロアとOAフロアの基本的な構造は、同一(本来の床面にフロア・パネルを支える支持脚を格子状に配置して、その上に金属製のフロア・パネルを敷き詰め、二重床を形成する)である。
【0033】この原因については、従来、明らかではなかった。しかし、これについて、本発明者等は、従来の同軸タップ・コネクタ方式を用いたMAU部分において、静電気放電に伴って放射される過渡電磁波による干渉に対して耐性が不足しているため、同軸ケーブルから引き出した信号接点およびシールド接点に、ノイズが重畳しやすいこと、および、その結果、種々の障害を引き起こすことを、研究の結果、突きとめた。
【0034】すなわち、図3(b)に示すように、同軸ケーブル1の外皮102、シールド構造物103および絶縁層104をそれぞれ貫通した穴106を通して、中心導体105と電気的に接触する信号接点5fが設けられているため、以下に示すような二つ作用によりノイズが同軸ケーブルの中心導体に注入すると考えられる。
【0035】(1)シールド構造物103にあけられた穴の部分では、導体の一様性が崩れているため、周囲に乱磁界が発生する。この時、信号接点5fの導体部分には相互誘導作用によるノイズ電圧が誘起され、誘起されたノイズ電圧は中心導体105に注入される。
【0036】(2)シールド構造物103にあけられた穴の周囲と信号接点5fの導体とは静電結合している。シールド構造物103にあけられた穴の周囲では、インピーダンスが急激に高まるため、シールド構造物の表皮を流れるノイズ電流は、前述の静電結合により一部が中心導体105に流れ込む。
【0037】本発明の目的は、同軸構造の伝送媒体を分岐して利用する場合において、静電気放電で放射される過渡的な電磁波等の電磁干渉によるノイズを低減する伝送媒体のノイズ低減装置を提供することにある。
【0038】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明は、中心導体、絶縁層、シールド構造物および外皮を有する同軸構造の伝送媒体を分岐して利用する場合の伝送媒体のノイズ低減装置であって、前記伝送媒体の分岐部分に隣接し、当該伝送媒体のシールド構造物に電気的に接続されるシールドタップコネクタと、前記伝送媒体の分岐部分に隣接し、前記伝送媒体に挿入接続されるインダクタンス素子と、導電性の接地板と前記導電性の接地板と、前記シールドタップコネクタとを電気的に接続させる複数の接続線とを有し、前記シールドタップコネクタは、前記複数の接続線が接続され、前記伝送媒体のシールド構造物に電気的に接続される接続端子を備える。また、前記接地板は、前記複数の接続線を各々接続させるための複数の端子を備える。
【0039】この場合、シールドタップコネクタは、伝送媒体のシールド構造物に電気的に接続され、また、シールドタップコネクタの接続端子と接地板の複数の端子とは複数の接続線によりそれぞれ接続される。一方、接地板は、施工時において建家自体の床、すなわち、建家の鉄骨などの導電性構造体を覆っているコンクリート床面に密着させて敷かれている。接地板は、それ自体と、大地と等価であると見做せる建家の導電性構造体との間に生じる微小コンデンサの集合体とみなすことができ、ノイズ電流は、インダクタンス素子を介して大地にバイパスされる。このため、ノイズを低減することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0041】図1に本発明の実施の形態におけるノイズ低減装置の構成図を示す。
【0042】図1に示すように、本発明の実施の形態においては、同軸ケーブルを分岐して利用する場合の同軸ケーブルにおけるノイズ低減装置を提供する。
【0043】図1において、ノイズ低減装置は、同軸ケーブル1を分岐させる分岐用コネクタのMAU5に隣接し、同軸ケーブル1のシールド構造物に電気的に接続されるシールドタップコネクタと、MAU5に隣接し、同軸ケーブル1に挿入接続されるインダクタンス素子のフェライトコア300と、導電性の高周波接地装置400とを有する。シールドタップコネクタは、複数の接続線402により高周波接地装置400と同軸ケーブル1のシールド構造物とを電気的に接続させる接続端子411を備え、高周波接地装置400は、複数の接続線402を各々接続させるための複数の端子401を備える。
【0044】フェライトコア300は、図1に示すように、同軸ケーブル1に対して、MAU5のタップブロック5aおよび5bの両端に近接させて装着する。フェライトコア300は、少なくとも1つ備え、同軸ケーブル1上において、MAU5のタップブロック5aおよび5bの両端の少なくとも一方か、MAU5とシールドタップコネクタ410とが装着された両端の少なくとも一方に装着される。
【0045】フェライトコア300は、例えば、2つのブロックに分割される分割型で、2つのブロックが連結されたときに同軸ケーブルが挿通される貫通孔を有する。すなわち、同軸ケーブルをはさみ込んで2つのブロックが連結され、同軸ケーブルと接触する部分は同軸ケーブルの外周に合致する窪みをそれぞれのブロックが備える。このため、同軸ケーブルの切断を必要としない。2つのブロックが連結結合されるために、ブロックの一方には凹部(図示せず)を有し、他方には凸部(図示せず)を有する。これらの凹部と凸部とが噛み合わされることにより連結される。同軸ケーブル1の中心導体105(図3参照)に注入されるノイズの大きさは、シールド構造物に流れるノイズ電流に比例するので、フェライトコア300を付加することにより、同軸ケーブルのシールド構造物に流れるノイズを阻止することができ、これにより同軸ケーブル1の中心導体105(図3参照)に注入されるノイズを減衰させることができる。使用するフェライトコアは、例えば、挿入インビーダンスが50MHzにおいて100Ω程度のものを用いる。
【0046】図5に、シールドタップコネクタ410の構成図を示す。図5において、シールドタップコネクタ410は、同軸ケーブルのシールド構造物と電気的に接続される。シールドタップコネクタ410には接続線を接続するための接続端子411が設けられている。また、シールドタップコネクタ410は、例えば、二つのブロック410aおよびbで構成される。各ブロック410aおよびbは、同軸ケーブルを挟み込むことができるように、同軸ケーブルと接触する部分は同軸ケーブルの外周に合致する窪みを持っている。片方のブロックの同軸ケーブルの外周に接する面には金属製のブレード端子413が取り付けられている。二つのブロックは、同軸ケーブルを挟み、締め付け用ボルト412によって締めつける。このとき、ブレード端子413の先端は同軸ケーブルの外皮を貫通してシールド構造物と電気的に接触する。
【0047】図6に示すブレード端子413の三面図を参照してブレード端子の構成をさらに説明する。図6に示すように、ブレード端子413は、同軸ケーブル1の外皮102(図5参照)の外周の一部に沿って接触するためのブレード支持部531と、ブレード支持部531に設けられて、同軸ケーブル1の外皮102を貫通してシールド構造物103と接続するための少なくとも1個のブレード532とを備える。
【0048】ブレード支持部531およびブレード532は、それぞれ導体、例えば、金属で形成されている。ブレード支持部531は、同軸ケーブル1の外皮102の外周に倣って、円筒の一部をなすように、湾曲した形状を有し、ブロック410aまたはbの一方に接触する。ブレード支持部531は、それ自身が湾曲して構成している円筒面の軸方向に沿って、かつ、円筒面の内側向きに、2箇所に、合計2個のブレード532を切り起こしにより形成してある。このブレード532は、それぞれを二つ割りすると共に、先端を尖らせる加工を施しておく。これにより、外皮102に容易に突き刺すことができるようになる。なお、ブレード支持部531の、ブレード切り起こし部分は、貫通孔535となる。
【0049】また、前述したように、図5に示すように、シールドタップコネクタ410は、第1のブロック410aと、この第1のブロック410aに対向して、同軸ケーブル1を挟む第2のブロック410bと、第1および第2のブロック410a、410bを連結して、かつ、固定する連結部材の締め付け用の締め付け用ボルト412とを有する。締め付け用ボルト412は金属で形成される。第1のブロック410aと第2のブロック410bとには、締め付け用ボルト412が挿入されるネジ穴が設けられている。締め付け用ボルト412は、第1のブロック410a側から締め付けるボルトと、第2のブロック410b側から締め付けるボルトとを2つ備えるようにしてもよい。連結部材としては、第1のブロック410aと第2のブロック410bとを締め付けて、連結し、固定するものならば、ボルト以外のもので構成してもよい。また、接続端子411は、接続線が接続される端子であり、第1のブロック410a、第2のブロック410bもしくは締め付け用ボルト412に電気的に接続される。本実施の形態においては、接続線の端部に接続されている圧着端子140(図7(c)参照)の穴に締め付け用ボルト412を挿通させ、締め付け用ボルト412の頭部により圧着端子140を第1のブロック410aに圧接させる。
【0050】第1のブロック410aは、同軸ケーブル接触面側に、凹部562が設けられている。また、第2のブロック410bにも、同様に、凹部568が設けられている。これらの凹部562および568は、それぞれ、同軸ケーブル1の外周に倣うため、テーパが設けられている。また、第1のブロック410aの凹部562の内面には、同軸ケーブル1の外皮102およびブレード支持部531を固定するような窪みを備えるようにしている。さらに、第1のブロック410aの凹部562の内面に突起部を、ケーブル1の延長方向に平行な線上に沿って配置されるように1又は2以上設けておく(図示せず)ようにしてもよい。この突起部は、ブレード端子413のブレード支持部531からブレード532を切り起こしたことによって形成された孔535に嵌まり込む位置に設けられる。突起部が孔535にはめ込まれることにより、ブレード端子413は、第1のブロック410aに対して、位置決めされる。もしくは、ブレード支持部531の外側であって、ブレード支持部531を挾み込むような位置、例えば、ブレード端子413の長手方向の両端のすぐ外側の位置にも突起部を設けるようにしてもよい。また、突起部は、第1のブロック410aの湾曲面を基準として、ブレード端子413のブレード支持部531の厚みに等しい長さ分だけ突出している。これにより、突起部は、ブレード支持部531と共に、同軸ケーブル1の外皮102に圧接することができる。
【0051】シールドタップコネクタを組み立てる場合には、第1のブロック410aの突起部にブレード端子413を嵌め合わせ、第1のブロック410aと第2のブロック410bとにより同軸ケーブル1を挟み込んで締め付け、突起部は、同軸ケーブル1の外皮102の表面に圧接する。その過程において、ブレード端子413のブレード532は、同軸ケーブル1の外皮102を突き破ってシールド構造物103に突き刺さる。このようにして、同軸ケーブル1およびブレード端子413は、第1のブロック410aおよび第2のブロック410bにより固定される。
【0052】本実施形態では、第1のブロック410aおよび第2のブロック410bとネジは、金属で形成する。これにより、同軸ケーブル1のシールド構造物に、金属製のブレード端子413と、金属製の第1のブロック410aおよび第2のブロック410bと、それらに電気的に接続される接続端子とを介して接続線が接続される。
【0053】なお、シールドタップコネクタは、組立て後、表面に電気絶縁テープ等を巻きつけて、周囲の金属物、例えば、フリーアクセス床の支持脚との、意図しない電気的接触を防止するのが望ましい。
【0054】つぎに、高周波接地装置400について、図7〜図12を参照して説明する。
【0055】高周波接地装置400は、図7(a)に示すように、表面の一部に絶縁加工が施された導電性の接地板110と、シールドタップコネクタに接続される接続線を接続させるために、接地板110にはんだ付けされた突起端子である複数のL字タブ端子100とを備える。さらに、図7(c)に示すように、複数のL字タブ端子100にそれぞれ接続される複数の接続ケーブル160をさらに備える。接続線は、絶縁のためにビニールで表面がコーティングされた導電線であり、一方の端部に、シールドタップコネクタ410に接続されるための接続端子である圧着端子140が接続され、他方の端部に、L字タブ端子100に接続されるファストン端子などの差込型接続端子150が接続されている。
【0056】L字タブ端子100は、図7(b)に示すように、接地板に電気的に接続される座部102と、接続線が結合される結合部104とを備え、結合部104は、接地板の表面に突起し、座部に電気的に接続されている。また、結合部104は、搬入時には接地板の平面に対して平行になるように寝かしておき、接続線を接続させるときに、接地板の平面に対し、ほぼ垂直方向になるように起こすようにすることができる。これにより、搬入時には、接地板を重ねることができ持ち運びが容易となる。また、L字タブ端子100は、図7(b)に示すように、ロック穴106があけられており、差込型接続端子150の内部にはロック用の突起が設けられている(図示せず)。差込型接続端子150にL字タブ端子100が挿入されて嵌合すると、差込型接続端子150内部にあるロック用の突起が、L字タブ端子100のロック穴にはまる構成になっている。
【0057】突起端子としたのは、接続線に接続しやすくするためである。また、一般に、導電板に接続線を接続するのには時間がかかり、また、接続用の工具が必要となる。本発明の実施の形態においては、導電板に予め突起端子を、図7(a)に示すように、はんだ付けしておくことにより、施工時の作業が容易になる。また、タブ端子とすることにより特別な工具なしで嵌合することができる。はんだ付けの代わりに、タブ端子を、接地板にねじ止めしておいたり、溶接により結合させたり、圧着させたりしてもよい。
【0058】L字タブ端子100の代わりに、図8(a)および(b)に示すような、T字のタブ端子200を複数備えるようにしてもよい。図8(a)および(b)において、T字タブ端子200は、接地板に電気的に接続される座部202と、接続線が結合される結合部204とを備え、結合部204は、接地板の表面に突起し、座部に電気的に接続されている。また、T字タブ端子200は、L字タブ端子100と同様に、図8(b)に示すように、ロック穴206があけられており、図7に示す差込型接続端子150にT字タブ端子200が挿入されて嵌合すると、差込型接続端子150内部にあるロック用の突起が、T字タブ端子200のロック穴にはまる構成になっている。T字タブ端子200の場合、L字タブ端子より座部が大きくなるため接地板との接触面積が大きくなる。
【0059】さらに、L字タブ端子100の代わりに、図9(a)および(b)に示すような、切り込み端子180を複数備えるようにしてもよい。切り込み端子180は、図9(a)に示すように、接地板の一部を予め切り込んでおき、施工時に、図9(b)に示すように、切り込み端子180を起こして利用する。また、切り込み端子180には、L字タブ端子100と同様に、図9(b)に示すように、ロック穴306があけられており、図7に示す差込型接続端子150に切り込み端子180が挿入されて嵌合すると、差込型接続端子150内部にあるロック用の突起が、切り込み端子180のロック穴にはまる構成になっている。この場合、接地板の厚さは、差込型接続端子150に嵌合するような厚さにしておく。切り込み端子180を備える場合には、タブ端子などのような接続端子を設置する必要がない。また、搬入時には接地板の平面に対して平行になるように寝かしておき、接続線を接続させるときに、接地板の平面に対し、ほぼ垂直方向になるように起こすようにすることができるので、搬入時には、接地板を重ねることができ持ち運びが容易となる。また、切り込み端子の各々に、接続線を結合させるためのコネクタを装着するようにしてもよい。
【0060】また、接地板110の材質は、銅、アルミニウム、鉄などの導電性の金属とするができる。持ち運びや取扱を考慮すると、なるべく薄い厚さが望ましいので、本実施の形態においては、厚みが0.2mmの銅板を用いている。接地板110の平面的な大きさは、勿論、静電容量に影響するが、大き過ぎると、取扱いが不便であったり、電子機器設置後に高周波雑音障害が生じて其の対策を講ずる場合などにも大き過ぎると施工し難いので、本発明の実施の形態では、取扱い易さを考慮して0.3m×0.3mの板を標準仕様とする。また、接地板110は、その裏面と、表面の周辺の端部とを絶縁加工しておく。確実に絶縁するために市販の厚さ0.1mm程度のいわゆる絶縁フィルムで被覆してみたところ、良い実験結果を得た。絶縁加工を施すのは、フリーアクセス床板の鉄製支持脚に接地板周縁端面が接触して電気的接続状態になってしまうと、後述する接地板の静電容量効果がなくなってしまうのを防ぐためである。また、シールドタップコネクタ410の接続端子411から上記接地板までの間の接続線の長さは、0.5m以下にすることが望ましい。また、接続線の太さは、断線等を考慮し、断面積1mm2以上にすることが望ましい。更に、接続線の本数は、複数本にする。接地板上を接続点から四方へ電流が広がって流れて行く状況をミクロに考えると、高周波接地板は、図10に示すように、微小なインダクタンスを持つ経路の先に微小容量が接続されたものが繰返して直列に接続された等価モデルとして考えられ、電流の伝搬にも時間が必要であるから、高周波の場合には、大きさ0.3m×0.3mという比較的小さい接地板の場合でも、板の中央の一点に接続しただけでは板の全面積を有効に利用していないことになる。そのため、図11に示すように5つの接続端子(接続線5本)を用いた場合と、図7に示すように3つの接続端子(接続線3本)を用いた場合とのように、方形の接地板の対角線上に互いに近接しないように、接続端子を配置することができる。実際の工事を考えると、5本の接続線を必ず接続するのはかなり厄介なので、本実施の形態においては、3本で接続することにした。また、L字タブ端子100の配置位置は、以下に説明するように、決定することができる。高周波接地板は、図10に示すように、微小コンデンサの集合体とみなすことができる。この場合、接続線の高周波接地板上の接続点(図7に示すL字タブ端子100が配置される位置)と、各微小コンデンサ(C1〜Cn)との間にはインダクタンス(L1〜Ln)が存在する。すなわち、接地板上を接続点から四方へ電流が広がって流れて行く状況をミクロに考えると、高周波接地板は、図10に示すように、微小なインダクタンスを持つ経路の先に微小容量が接続されたものが繰返して直列に接続された等価モデルとして考えられる。このため、接続線の高周波接地板上の接続点から離れるにつれて、インダクタンスが増すのでコンデンサの効果がなくなる。この様子を、模式的に図12および図13に示す。図12に示すように、接続線が1本の場合は、高周波接地板全体を有効に使うことができない。これに対して、接続線を5本にし、図13に示すように接続線の接続位置を配置した場合には、高周波接地板を有効に使用することができる。この場合、L字タブ端子100の各々が配置される位置を円の中心と仮定したときの同一半径rの各々の円が、接地板の平面上において、重ならないような位置に配置しておく。各々の円が互いに接していて、半径rが最大値をとるとき、高周波接地板の長さがaである場合に、数1に示すような式により求めることができる。
【0061】
【数1】r=(√2−1)a/2L字タブ端子100を5個配置する場合の位置は、方形の接地板の場合、2つの対角線が交差する位置に1つを配置し、その配置した位置から、2r離れた対角線上の4つの位置にそれぞれ配置する。このように、L字タブ端子100の各々が配置される位置を、ある程度距離を離して配置しておくことにより、より有効に接地板を使うことができる。
【0062】実際に施工する場合には、以上説明したような構成の高周波接地装置を、同軸ケーブル1とMAU5とが敷設されている、軸組が鉄骨または鉄筋構造のビルの床(二重床であるフリーアクセス床の場合は建家自体の床)に、図14に模式的に示すように配置する。本発明の実施の形態では、図1に示したように、そのMAU5に隣接する位置に、同軸ケーブル1を挾み込んでシールドタップコネクタ410を配置し、同軸ケーブル1のシールド構造物に電気的に接続させる。さらに、MAU5とシールドタップコネクタ410とが装着された両端に近接させて、同軸ケーブル1を挾み込んでフェライトコア300を装着する。フェライトコア300は、少なくとも1つが装着され、フェライトコア300の装着される位置は、MAU5のタップブロック5aおよび5bの両端の少なくとも一方か、MAU5とシールドタップコネクタ410とが装着された両端の少なくとも一方でもよい。また、前述した接地板は、建家のコンクリート床面に密着させて敷設され、粘着テープ等で床に固定させる。また、それぞれが長さ0.5m以下で断面積1mm2以上の導線複数本以上を用いて、シールドタップコネクタ410に各接続線の一端を接続し、この接続線の他の一端を接地板の複数の突起端子に、それぞれ接地板上に互いに離れた位置で分散接続する。
【0063】本発明の実施の形態では、高周波接地を、標準的な資材、施工法で実施することを狙って、実験を重ね、費用対効果の点で最も良好な結果が得られる方法として上記のようにしたのである。従って、上記の高周波接地板の大きさが多少大きくても小さくても勿論差し支えないが、標準化の点、材料取りの経済性などから上記寸法を定めた。なお、インピーダンス測定の結果では、接地板の材質や厚さも、殆ど効果には影響しない。これに対して、接続線の長さの上限は是非この程度に抑えることが重要である。しかし、接続線の材質や断面積の影響は小さい。断面積もあまり細くすれば取扱い中に断線する恐れがあるから一応1mm2以上の銅線とした。また、接地板の周縁端面部がフリーアクセス床板の支持脚に触れて電気的接続状態となってしまって接地板の静電容量の効果が現れなくなる場合が実際には意外に多く発生しており、この端面部の絶縁について特に注意しなければならない。
【0064】以上のように接続させることにより、ノイズ低減装置であるシールドタップコネクタ410と、フェライトコア300と、高周波接地装置400とが接続される。
【0065】つぎに、本実施の形態において、フェライトコアとシールドタップコネクタ410と高周波接地装置とを用いることによりノイズが低減される理由を説明する。
【0066】フェライトコア300のみを用いて十分なノイズ抑制効果を得るためには、MAU5において高周波電流のバイパス路が必要である。ところで、MAUの内部には、MAUが過渡的な電磁干渉を受けた場合にそのエネルギーをAUIケーブル(MAUとDTEとを接続させるケーブル)の全体シールドとDTEの接地線とを通して大地にバイパスさせる回路が設けられている。JIS X 5252規格によれば、バイパス回路のインピーダンスは、60Hzにおいて250kΩ以上で、3MHzから30MHzで15Ω以下と規定されている。実際のMAUでは、この規定を満足させるために、同軸ケーブルのシールド部分と、AUIケーブルを接続するコネクタの金属製勘合部(AUIケーブルの全体シールドが接続される部分)との間に、例えば1MΩの固定抵抗器と0.01μFのコンデンサを並列接続した回路が形成されている。しかし、AUIケーブルの長さは50mまで許容されているうえにDTEの接地線の長さは不定であり、MAUから見たバイパス路の1MHz以上の高周波インピーダンスは、並列共振を起こして、インピーダンスが急激に上昇する周波数が多数存在するため非常に不安定である。このように、DTEの接地線が長く、インダクタンス素子であるフェライトコア300を用いただけでは、MAU5から見た場合のインピーダンスは、高インピーダンス状態になり、十分なノイズ抑制効果は期待できない。
【0067】一方、MAUが備えている高周波電流バイパス路とは別系統の高周波接地装置を備えた場合の本発明の実施形態における接続状態を図15に等価的に示す。図15において、接地板は、微小コンデンサの集合体とみなすことができ、フェライトコア300のインダクタンス素子とこの接地板とにより、10MHzぐらいの高周波数においては直列共振の状態になり、MAU5から見た場合の接地インピーダンスは、低インピーダンス状態になる。このため、同軸ケーブル1のシールド構造物の表皮を流れるノイズ電流は、フェライトコア300のインダクタンス素子とコンデンサと見做せる接地板を介して大地にバイパスされる。また、MAU5の同軸ケーブル1から引き出した信号接点およびシールド接点から見た同軸ケーブルのシールド構造物のインピーダンスは、フェライトコア300のインダクタンス素子の作用で高インピーダンス状態となるため、MAU5の同軸ケーブルから引き出した信号接点およびシールド接点に結合するノイズを低減することができる。
【0068】このように構成したノイズ低減装置において、シールドタップコネクタ410の端子411から見た大地間の容量性インピーダンスの実測値は、20MHzで20Ω以下となった。なお、JIS X 5252規格では、1つのケーブルセグメントは1点接地とすることが規定されている。この高周波接地回路の60Hzにおけるインピーダンスは1MΩ以上であるので、この高周波接地回路によって、同軸ケーブルの1点接地が崩されることはない。
【0069】同軸タップコネクタ方式のMAUが取り付けられている同軸ケーブルが静電気放電により放出される過渡電磁波に曝されたとき、同軸ケーブルに誘起するノイズ電圧の実測値は、図16で示す通りであった。また、図17に、その実験の構成図を示す。以下に、実験の手順を示す。
【0070】(1)周囲に対して電気的に絶縁したフロア・パネルAと、接地されたフロア・パネルBを所定の間隔を隔てて配置する。なお、これらのパネルA、Bの下方には、接地された銅板Cが、床に配置されている。パネルAおよびBは、支持脚901により絶縁された状態で、銅板C上に支持されている。
【0071】(2)ケーブルの両端を特性インピーダンスに等しいターミネータ(図示せず)で終端した供試同軸ケーブル1を、ケーブル1の中央がフロア・パネルAとフロア・パネルBの対向面と一致する位置に配置する。
【0072】(3)内部抵抗が極めて高い(公称2GΩ)高圧電源装置910を、導電ゴムひも(20kΩ/m)911用いて、絶縁されたフロアパネルAと接続する。また、フロアパネルAに導電ゴムひも921を介して円盤電極922を接続し、この円盤電極921に表面電位計920の電位検出用の電極923を対向させる。この状態で、高圧電源装置910により、フロアパネルAを所定の電圧(表面電位計920の指示値)に帯電させ、接地されたフロアパネルBとの隙間で放電を起こす。なお、実際は、試験しようとする電圧で放電が起こるように、両パネル間の間隔を調整する。
【0073】(4)供試同軸ケーブル1の片側のターミネータの位置にディジタル式のオシロスコープ(図示せず)を接続して、供試同軸ケーブル1に誘起するノイズ電圧を測定する。
【0074】(5)実験は、MAUが一つも接続されていない供試同軸ケーブルA(リンク・セグメントに相当)と、ケーブルの中央位置に1個だけMAUを接続した供試同軸ケーブルB(ケーブル・セグメントに相当)と、ケーブルの中央位置に1個だけMAUを接続し、前述したフェライトコアのみを装着した供試同軸ケーブルCと、ケーブルの中央位置に1個だけMAUを接続し、本発明の実施の形態におけるノイズ低減装置を装着した供試同軸ケーブルDとの4種類に対して行った。なお、供試同軸ケーブルB、CおよびDのMAUには、分岐ケーブル(AUIケーブル)およびデータ端末装置(DTE)は接続しない。図16においては、供試同軸ケーブルに誘起したノイズ電圧のピーク・ツー・ピーク値を、フロア・パネルA、B間の放電電圧毎にプロットしたグラフである。図16に示したように、MAUを接続した同軸ケーブルBに誘起するノイズ電圧は、MAUが接続されていないケーブルAに比べて約1000倍増加する。しかも、その電圧は、データ通信を行うときにケーブル上を伝播する信号の定格振幅(約2V)に対して、数倍の振幅に達している。また、フェライトコアのみを装着した供試同軸ケーブルCおよび本発明の実施形におけるノイズ低減装置を装着した供試同軸ケーブルDにおいては、放電電圧を2kVにしたときのみ測定した。この結果、同軸ケーブルBに誘起するノイズ電圧に比べて、同軸ケーブルCでは約1/2に減少し、同軸ケーブルDでは約1/4に減少した。このように、フェライトコアと高周波接地装置とを用いた本発明の実施の形態によれば、よりノイズ電圧を低減させることができる。
【0075】
【発明の効果】本発明のノイズ低減装置によれば、同軸構造の伝送媒体で静電気放電で放射される過渡的な電磁波等の電磁干渉によるノイズを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるノイズ低減装置の構成図。
【図2】JIS X 5252 規格が示す、10BASE5 形式ベースバンド同軸システムのシステム構成例を示すブロック図。
【図3】(a)JIS X 5252 規格が示す、同軸タップ・コネクタの概念を示す斜視図、(b)JIS X 5252 規格が示す、代表的な同軸タップ・コネクタ回路を示す説明図。
【図4】同軸タップコネクタ方式MAUの一般的な接続方法を示す説明図。
【図5】本発明の実施の形態におけるシールドタップコネクタの構成図。
【図6】本発明の実施の形態において用いられるブレード端子の一例を示し、(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図。
【図7】(a)本発明の実施の形態における高周波接地装置の外観図。
(b)本発明の実施の形態におけるL字タブ端子の外観図。
(c)本発明の実施の形態における接続ケーブルの外観図。
【図8】(a)本発明の実施の形態における高周波接地装置のT字タブ端子を用いる場合の外観図。
(b)本発明の実施の形態におけるT字タブ端子の外観図。
【図9】(a)本発明の実施の形態における高周波接地装置の切り込み端子を用いる場合の外観図。
(b)本発明の実施の形態における高周波接地装置の切り込み端子を起こした場合の外観図。
【図10】高周波接地板の等価モデルの説明図。
【図11】本発明の実施の形態における接地板を5本の接続線で接続する際の接続位置を示す図。
【図12】接続線が1本の場合の微小コンデンサの働きを示す模式図。
【図13】接続線が5本の場合の微小コンデンサの働きを示す模式図。
【図14】本発明の実施の形態における接地方法を模式的に説明する図。
【図15】本発明の実施形態における接続状態を等価的に示す説明図。
【図16】供試同軸ケーブルA、B及びCの夫々に誘起したノイズ電圧のピーク・ツー・ピーク値を、フロア・パネル間の放電電圧毎にプロットしたグラフ。
【図17】過渡電磁波に曝されることによって、同軸ケーブル端に誘起するノイズ電圧を調べる実験の構成を示す説明図。
【符号の説明】
1…同軸ケーブル、2…分岐ケーブル(AUIケーブル)、3…データ端末装置、5…媒体接続ユニット(MAU)、5aおよび5b…タップブロック、50…コネクタハウジング、300…フェライトコア、410…シールドタップコネクタ、411…接続端子、400…高周波接地装置、401…端子、402…接続線、102…外皮、103…シールド構造物、104…絶縁層、105…中心導体、410aおよびb…ブロック、412…締め付け用ボルト、413…ブレード端子、562および568…凹部、531…ブレード支持部、532…ブレード、535…貫通孔、100…L字タブ端子、110…接地板、120…絶縁フィルム、102および202…座部、104および204…結合部、106および206…ロック穴、130…ビニール絶縁電線、140…圧着端子、150…差し込み型接続端子、200…T字タブ端子、910…高圧電源装置、921および911…導電ゴムひも、922…円盤電極、923…電極、920…表面電位計、901…支持脚。
【特許請求の範囲】
【請求項1】中心導体、絶縁層、シールド構造物および外皮を有する同軸構造の伝送媒体を分岐して利用する場合の伝送媒体のノイズ低減装置であって、前記伝送媒体の分岐部分に隣接し、当該伝送媒体のシールド構造物に電気的に接続されるシールドタップコネクタと、前記伝送媒体の分岐部分に隣接し、前記伝送媒体が挿入接続されるインダクタンス素子と、導電性の接地板と、前記導電性の接地板と前記シールドタップコネクタとを電気的に接続させる複数の接続線とを有し、前記シールドタップコネクタは、前記複数の接続線が接続され、前記伝送媒体のシールド構造物に電気的に接続される接続端子を備えることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項2】請求項1において、前記接地板は、前記複数の接続線が各々接続される複数の端子を備えることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項3】請求項1において、前記インダクタンス素子は、前記伝送媒体を間に挾んで結合される2つのブロックを備えるフェライトコアであることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項4】請求項1において、前記シールドタップコネクタは、前記伝送媒体の外皮を貫通してシールド構造物と接続するための少なくとも1のブレードと、前記ブレードを支持するブレード支持部と、前記伝送媒体を間に挾んで結合される2つのブロックとをさらに備え、前記ブレード、前記ブレード支持部および前記2つのブロックのうち一方のブロックは、導体で形成され、前記一方のブロックは、前記ブレード支持部に接触し、前記接続端子を備えることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項5】請求項1において、前記接地板は、当該接地板の一方の面の周辺の端部と、他方の面とが絶縁加工されていることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項6】請求項2において、前記接地板の複数の端子の各々は、当該端子の各々が配置される位置を円の中心と仮定したときの任意長の同一半径の各々の円が、前記接地板の平面上において、重ならないような位置に配置されていることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項1】中心導体、絶縁層、シールド構造物および外皮を有する同軸構造の伝送媒体を分岐して利用する場合の伝送媒体のノイズ低減装置であって、前記伝送媒体の分岐部分に隣接し、当該伝送媒体のシールド構造物に電気的に接続されるシールドタップコネクタと、前記伝送媒体の分岐部分に隣接し、前記伝送媒体が挿入接続されるインダクタンス素子と、導電性の接地板と、前記導電性の接地板と前記シールドタップコネクタとを電気的に接続させる複数の接続線とを有し、前記シールドタップコネクタは、前記複数の接続線が接続され、前記伝送媒体のシールド構造物に電気的に接続される接続端子を備えることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項2】請求項1において、前記接地板は、前記複数の接続線が各々接続される複数の端子を備えることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項3】請求項1において、前記インダクタンス素子は、前記伝送媒体を間に挾んで結合される2つのブロックを備えるフェライトコアであることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項4】請求項1において、前記シールドタップコネクタは、前記伝送媒体の外皮を貫通してシールド構造物と接続するための少なくとも1のブレードと、前記ブレードを支持するブレード支持部と、前記伝送媒体を間に挾んで結合される2つのブロックとをさらに備え、前記ブレード、前記ブレード支持部および前記2つのブロックのうち一方のブロックは、導体で形成され、前記一方のブロックは、前記ブレード支持部に接触し、前記接続端子を備えることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項5】請求項1において、前記接地板は、当該接地板の一方の面の周辺の端部と、他方の面とが絶縁加工されていることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【請求項6】請求項2において、前記接地板の複数の端子の各々は、当該端子の各々が配置される位置を円の中心と仮定したときの任意長の同一半径の各々の円が、前記接地板の平面上において、重ならないような位置に配置されていることを特徴とする伝送媒体のノイズ低減装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図15】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図16】
【図2】
【図3】
【図6】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図15】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図16】
【公開番号】特開平10−116638
【公開日】平成10年(1998)5月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−270681
【出願日】平成8年(1996)10月14日
【出願人】(000233491)日立電子サービス株式会社 (394)
【公開日】平成10年(1998)5月6日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)10月14日
【出願人】(000233491)日立電子サービス株式会社 (394)
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