説明

伝送路特性測定装置およびそれを利用した伝送路特性測定システム

【課題】基準タイミングが示された信号を送信しない場合であっても、簡易にタイミング同期を確立する技術を提供する。
【解決手段】クロックカウンタ40は、第1値から第2値までの範囲においてカウンタ値を順次増加させるとともに、カウンタ値が第2値に達した場合、カウンタ値を第1値に戻してカウンタ値の増加を繰り返す。復調部46は、クロックカウンタ40と同一の範囲を有したクロックカウンタが搭載された複数の送信装置のそれぞれから、信号を受信する。抽出部48は、各信号に含まれたカウンタ値であって、かつ当該信号を送信した送信装置に搭載されたクロックカウンタでのカウンタ値を抽出する。導出部50は、抽出したカウンタ値と、クロックカウンタ40でのカウンタ値とをもとに、カウンタ値の補正値を送信装置単位に導出する。通信部42は、補正値によるカウンタ値の補正を各送信装置へ指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路特性測定技術に関し、無線装置間の伝送路特性を測定する伝送路特性測定装置およびそれを利用した伝送路特性測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線システムが、複数の送信ユニットとひとつの受信ユニットによって構成されている場合、複数の送信ユニットのそれぞれから送信される信号間の衝突確率の低減が要求される。特に、各送信ユニットが、それぞれに内蔵された時計により独立に計時を行ない、かつ計時した時刻に応じて信号を送信している場合、各送信ユニットの時計の時刻が異なっているので、複数の送信ユニットが同時に同一周波数で信号を送信するおそれがある。その結果、送信された信号間において混信が発生して、受信ユニットへの通信が失敗してしまう。そのため、複数の送信ユニットは、共通の時間フレームを有し、これに応じて信号を送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−127685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の送信ユニットから送信される信号間の衝突確率を低減するために、複数の送信ユニットが共通の時間フレームを有すること、つまり複数の送信ユニット間のタイミングが同期されていることが重要になる。このような同期は、例えば、受信ユニットが、基準になるタイミング(以下、「基準タイミング」という)が示された信号を送信し、複数の送信ユニットが、当該信号にて示されたタイミングに同期することによって実現される。しかしながら、受信ユニットが測定装置である場合、測定装置は、一般的に、基準タイミングが示された信号を送信する機能を有さない。また、タイミングの同期は、簡易になされる方が望ましい。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、基準タイミングが示された信号を送信しない場合であっても、簡易にタイミング同期を確立する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の伝送路特性測定装置は、クロックに応じて、第1値から第2値までの範囲においてカウンタ値を順次増加させるとともに、カウンタ値が第2値に達した場合、カウンタ値を第1値に戻してカウンタ値の増加を繰り返すクロックカウンタと、クロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタが搭載された複数の送信装置のそれぞれから、信号を受信する受信部と、受信部において受信した各信号に含まれたカウンタ値であって、かつ当該信号を送信した送信装置に搭載されたクロックカウンタでのカウンタ値を抽出する抽出部と、抽出部において抽出したカウンタ値と、クロックカウンタでのカウンタ値とをもとに、カウンタ値の補正値を送信装置単位に導出する導出部と、導出部において導出した補正値によるカウンタ値の補正を各送信装置へ指示する指示部と、指示部においてカウンタ値を補正させた後、各送信装置から信号をもとに、各送信装置との間の伝送路特性を測定する測定部と、を備える。
【0007】
この態様によると、各送信装置に搭載されたクロックカウンタでのカウンタ値に対する補正値を導出し、補正値によるカウンタ値の補正を各送信装置へ指示するので、基準タイミングがなくても、簡易にタイミング同期を確立できる。
【0008】
本発明の別の態様は、伝送路特性測定システムである。この伝送路特性測定システムは、クロックに応じて、第1値から第2値までの範囲においてカウンタ値を順次増加させるとともに、カウンタ値が第2値に達した場合、カウンタ値を第1値に戻してカウンタ値の増加を繰り返すクロックカウンタを搭載した伝送路特性測定装置と、伝送路特性測定装置に搭載されたクロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタを搭載し、クロックカウンタでのカウンタ値が含まれた信号を送信する複数の送信装置とを備える。伝送路特性測定装置は、複数の送信装置のそれぞれからの信号を受信する受信部と、受信部において受信した各信号に含まれたカウンタ値を抽出する抽出部と、抽出部において抽出したカウンタ値と、クロックカウンタでのカウンタ値とをもとに、カウンタ値の補正値を送信装置単位に導出する導出部と、導出部において導出した補正値によるカウンタ値の補正を各送信装置へ指示する指示部と、指示部においてカウンタ値を補正させた後、各送信装置から信号をもとに、各送信装置との間の伝送路特性を測定する測定部とを備える。
【0009】
この態様によると、伝送路特性測定装置が、各送信装置に搭載されたクロックカウンタでのカウンタ値に対する補正値を導出し、補正値によるカウンタ値の補正を各送信装置へ指示するので、基準タイミングがなくても、簡易にタイミング同期を確立できる。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、伝送路特性測定装置である。この装置は、クロックに応じて、第1値から第2値までの範囲においてカウンタ値を順次増加させるとともに、カウンタ値が第2値に達した場合、カウンタ値を第1値に戻してカウンタ値の増加を繰り返すクロックカウンタと、クロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタが搭載された複数の送信装置のそれぞれから、信号を受信する受信部と、受信部において受信した各信号に含まれたカウンタ値であって、かつ当該信号を送信した送信装置に搭載されたクロックカウンタでのカウンタ値を抽出する抽出部と、抽出部において抽出したカウンタ値のうちのひとつを参照値として、クロックカウンタでのカウンタ値を補正する補正部と、抽出部において抽出したカウンタ値のうちの残りと、補正部において補正したカウンタ値とをもとに、補正部での参照値の送信元になる送信装置とは別の送信装置に対するカウンタ値の補正値を導出する導出部と、導出部において導出した補正値によるカウンタ値の補正を、補正部での参照値の送信元になる送信装置とは別の送信装置へ指示する指示部と、指示部においてカウンタ値を補正させた後、各送信装置から信号をもとに、各送信装置との間の伝送路特性を測定する測定部と、を備える。
【0011】
この態様によると、ひとつの送信装置でのカウンタ値に合うようにカウンタ値を補正し、残りの送信装置でのカウンタ値に対する補正値を導出し、補正値によるカウンタ値の補正を指示するので、基準タイミングがなくても、簡易にタイミング同期を確立できる。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、伝送路特性測定システムである。この伝送路特性測定システムは、クロックに応じて、第1値から第2値までの範囲においてカウンタ値を順次増加させるとともに、カウンタ値が第2値に達した場合、カウンタ値を第1値に戻してカウンタ値の増加を繰り返すクロックカウンタを搭載した伝送路特性測定装置と、伝送路特性測定装置に搭載されたクロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタを搭載し、クロックカウンタでのカウンタ値が含まれた信号を送信する第1送信装置と、伝送路特性測定装置に搭載されたクロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタを搭載し、クロックカウンタでのカウンタ値が含まれた信号を送信する少なくともひとつの第2送信装置とを備える。伝送路特性測定装置は、第1送信装置と少なくともひとつの第2送信装置とのそれぞれからの信号を受信する受信部と、受信部において受信した各信号に含まれたカウンタ値を抽出する抽出部と、抽出部において抽出したカウンタ値のうち、第1送信装置からのカウンタ値をもとに、クロックカウンタでのカウンタ値を補正する補正部と、抽出部において抽出したカウンタ値のうちの残りと、補正部において補正したカウンタ値とをもとに、少なくともひとつの第2送信装置に対するカウンタ値の補正値を導出する導出部と、導出部において導出した補正値によるカウンタ値の補正を、少なくともひとつの第2送信装置へ指示する指示部と、指示部においてカウンタ値を補正させた後、第1送信装置と少なくともひとつの第2送信装置とから信号をもとに、第1送信装置と少なくともひとつの第2送信装置との間の伝送路特性を測定する測定部と、を備える。
【0013】
この態様によると、伝送路特性測定装置が、ひとつの送信装置でのカウンタ値に合うようにカウンタ値を補正し、残りの送信装置でのカウンタ値に対する補正値を導出し、補正値によるカウンタ値の補正を指示するので、基準タイミングがなくても、簡易にタイミング同期を確立できる。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基準タイミングが示された信号を送信しない場合であっても、簡易にタイミング同期を確立できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係る測定システムの構成を示す図である。
【図2】図1の測定装置の構成を示す図である。
【図3】図2の測定部に記憶したテーブルのデータ構造を示す図である。
【図4】図1の第1送信装置の構成を示す図である。
【図5】図2の測定装置における補正手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の変形例に係る測定装置の構成を示す図である。
【図7】図6の測定装置における補正手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、複数の送信装置と、各送信装置との間の伝送路特性を測定する測定装置とを含んで構成される測定システムに関する。各送信装置には複数のアンテナが備えられ、測定装置にも複数のアンテナが備えられており、測定装置は、送信装置のアンテナと測定装置のアンテナとの間の伝送路特性を測定する。例えば、送信装置数が「2」であり、各送信装置のアンテナ数が「2」であり、測定装置のアンテナ数が「4」であれば、測定装置は、「16」の伝送路特性を測定する。このような伝送路特性は、互いに異なったタイミングで測定されるべきであり、そのために、複数の送信装置間においてタイミングが同期し、互いに異なったタイミングで信号を送信することが要求される。前述のごとく、測定装置が基準タイミングを送信しない場合であっても、これらの間におけるタイミング同期を簡易に確立するために、本実施例に係る測定システムは、次の処理を実行する。
【0018】
本実施例に係る測定装置は、所定の範囲を有したクロックカウンタを有し、入力したクロックに応じてクロックカウンタのカウンタ値を周期的に増加させる。以下では、所定の範囲で特定される期間を「フレーム」として規定する。また、複数の送信装置のそれぞれも、測定装置のクロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタを備え、測定装置と同様にカウンタ値を増加させる。起動直後などの初期状態において、複数の送信装置と測定装置は同期していないので、互いに異なったカウンタ値を有する。任意のタイミングでひとつの送信装置(以下、「第1送信装置」という)は、送信時のカウンタ値が含まれた無線信号を送信する。測定装置は、受信した無線信号に含まれたカウンタ値と、自らのカウンタ値との差異を導出する。
【0019】
ここで、測定装置と送信装置とは、携帯電話システムのような無線システムにも対応しており、測定装置は、携帯電話システムにて第1送信装置へ差異の値を送信する。第1送信装置は、差異の値をもとに、カウンタ値を補正する。その後、別の送信装置(以下、「第2送信装置」という)も同様の動作を実行することによって、複数の送信装置のそれぞれは、測定装置のタイミングに同期する。その結果、これらのフレームタイミングが同期される。さらに、フレームは、測定すべき伝送路特性の数に応じたスロット、前述の例では「16」のスロットに分割されている。複数の送信装置と測定装置では、スロット単位に、信号を送信すべきアンテナと、信号を受信すべきアンテナとの組合せが予め定められている。前述のごとく、フレームタイミングが同期されると、各スロットのタイミングも特定されるので、所定のスロットにおいて、ひとつのアンテナのみから信号が送信される。その結果、信号の衝突が低減され、伝送路特性の測定精度が向上する。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る測定システム100の構成を示す。測定システム100は、送信装置10と総称される第1送信装置10a、第2送信装置10b、測定装置12、基準信号発生器14と総称される第1基準信号発生器14a、第2基準信号発生器14b、第3基準信号発生器14cを含む。第1送信装置10aは、第1送信アンテナ16a、第2送信アンテナ16b、第1通信アンテナ20aを含み、第2送信装置10bは、第3送信アンテナ16c、第4送信アンテナ16d、第2通信アンテナ20bを含む。測定装置12は、受信アンテナ18と総称される第1受信アンテナ18a、第2受信アンテナ18b、第3受信アンテナ18c、第4受信アンテナ18d、第3通信アンテナ20cを含む。ここで、第1送信アンテナ16a、第2送信アンテナ16b、第3送信アンテナ16c、第4送信アンテナ16dは、送信アンテナ16と総称され、第1通信アンテナ20a、第2通信アンテナ20b、第3通信アンテナ20cは、通信アンテナ20と総称される。
【0021】
図1における通信アンテナ20は、携帯電話システムに対応したアンテナである。ここで、第1送信装置10a、第2送信装置10b、測定装置12は、いずれも携帯電話システムにおける端末装置に相当する。そのため、第1通信アンテナ20a、第2通信アンテナ20b、第3通信アンテナ20cのそれぞれから送信された信号は、図示しない基地局装置を介して、他の通信アンテナ20へ到達される。しかしながら、図1では、図面を簡易にするために、基地局装置の表示を省略する。そのため、図1において、通信アンテナ20間で直接の通信がなされているように示されているが、実際は、基地局装置を介した通信がなされている。
【0022】
基準信号発生器14は、所定の周波数のクロック信号を基準信号として発生する。基準信号発生器14は、セシウムやルビジウムにてクロック信号を発生する。例えば、クロック信号の周波数は、102.4MHzに設定される。基準信号発生器14は、クロック信号を出力する。測定装置12は、基準信号発生器14からのクロック信号を入力する。測定装置12は、クロックカウンタを搭載し、クロック信号をクロックカウンタへ入力する。クロックカウンタは、クロック信号に応じて、第1値から第2値までの範囲においてカウンタ値を順次増加させる。
【0023】
さらに、クロックカウンタは、カウンタ値が第2値に達した場合、カウンタ値を第1値に戻してカウンタ値の増加を繰り返す。例えば、第1値は「0」と設定され、第2値は「16383」と設定される。カウンタ値が第1値から第2値になるまでの期間がフレームである。複数の送信装置10のそれぞれも、基準信号発生器14からのクロック信号を入力する。各送信装置10は、測定装置12に搭載されたクロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタを搭載する。測定システム100での処理を時系列に沿って説明するために、以下では、(1)同期処理、(2)測定処理の順に説明する。
【0024】
(1)同期処理
各送信装置10は、通信アンテナ20を介して測定装置12からの指示を受けつける。当該指示は、送信装置10単位に出力されている。各送信装置10は、指示に応じて、互いに異なったタイミングにて、クロックカウンタでのカウンタ値が含まれた無線信号を送信アンテナ16から送信する。例えば、第1送信装置10aからの無線信号が送信され、測定装置12におけるカウンタ値の差異の導出処理が終了した後、第2送信装置10bからの無線信号が送信される。測定装置12は、受信アンテナ18を介して、複数の送信装置10のそれぞれから、互いに異なったタイミングにて無線信号を受信する。
【0025】
測定装置12は、無線信号に含まれたカウンタ値を抽出するとともに、当該カウンタ値と、クロックカウンタでのカウンタ値との差異をもとに、カウンタ値の補正値を送信装置10単位に導出する。測定装置12は、第3通信アンテナ20cから、補正値が含まれたパケット信号を送信する。ここで、第1送信装置10aに対する補正値が含まれたパケット信号の送信先は、第1送信装置10aに設定される。パケット信号を送信することによって、測定装置12は、補正値によるカウンタ値の補正を各送信装置10へ指示する。送信装置10は、通信アンテナ20を介して、測定装置12からのパケット信号を受信する。送信装置10は、パケット信号に含まれた補正値を抽出し、補正値によって、クロックカウンタのカウンタ値を補正する。
【0026】
(2)測定処理
測定処理を説明する前に、ここでは、測定システム100が測定すべき伝送路を説明する。第1送信装置10aと第2送信装置10bには、第1送信アンテナ16aから第4送信アンテナ16dまでの4つの送信アンテナ16が備えられている。一方、測定装置12には、第1受信アンテナ18aから第4受信アンテナ18dまでの4つの受信アンテナ18が備えられている。ひとつの送信アンテナ16とひとつの受信アンテナ18との組合せによって、ひとつの伝送路が決定される。図1の場合、第1送信アンテナ16aと第1受信アンテナ18aとの組合せ、第1送信アンテナ16aと第2受信アンテナ18bとの組合せのように、16の組合せが形成される。測定システム100では、組合せの数に応じて、フレームを16のスロットに分割する。
【0027】
ひとつのスロットは、「1024」クロックの期間として規定される。また、ひとつのスロットにおいて、ひとつの伝送路特性が測定される。また、各スロットに対して、送信アンテナ16と受信アンテナ18との組合せが予め対応づけられている。例えば、フレームの先頭のスロットにおいて、第1送信アンテナ16aから送信された信号(以下、「トレーニング信号」という)が第1受信アンテナ18aにて受信され、次のスロットにおいて、第1送信アンテナ16aから送信されたトレーニング信号が第2受信アンテナ18bにて受信される。このような測定順序は、第1送信装置10a、第2送信装置10b、測定装置12に予め記憶されている。
【0028】
ユーザが測定装置12に対して測定開始を指示する。測定装置12は、第3通信アンテナ20cを介して、第1送信装置10aと第2送信装置10bへ測定開始を指示する。第1送信装置10aは、カウンタ値を監視し、カウンタ値が「0」になるタイミング、つまり新たなフレームが開始になるタイミングを検出する。第1送信装置10aは、先頭のスロットにおいて第1送信アンテナ16aからトレーニング信号を送信する。トレーニング信号は、測定装置12にとって既知のパターンを有する。測定装置12は、第1受信アンテナ18aにてトレーニング信号を受信する。また、測定装置12は、受信したトレーニング信号をもとに伝送路特性を測定する。スロットが変更になると、送信アンテナ16と受信アンテナ18との組合せが変えられながら、同様の処理が繰り返される。つまり、測定装置12は、カウンタ値を補正させた後、各送信装置10からトレーニング信号をもとに、各送信装置10との間の伝送路特性を測定する。
【0029】
図2は、測定装置12の構成を示す。測定装置12は、受信アンテナ18と総称される第1受信アンテナ18a、第2受信アンテナ18b、第3受信アンテナ18c、第4受信アンテナ18d、第3通信アンテナ20c、無線部30と総称される第1無線部30a、第2無線部30b、第3無線部30c、第4無線部30d、直交検波部32と総称される第1直交検波部32a、第2直交検波部32b、第3直交検波部32c、第4直交検波部32d、測定部34、操作部36、調節部38、クロックカウンタ40、通信部42、制御部44を含む。また、調節部38は、復調部46、抽出部48、導出部50を含む。
【0030】
クロックカウンタ40は、図示しない第3基準信号発生器14cからのクロック信号を入力する。クロックカウンタ40は、クロック信号をもとにカウンタ値を順次増加させる。前述のごとく、カウンタ値は、第1値から第2値までの範囲となるように規定されており、第2値に達した場合に第1値に戻るようにも規定されている。クロックカウンタ40は、カウンタ値を測定部34および導出部50へ出力する。これは、フレームのタイミング、スロットのタイミングを出力することにも相当する。以下では、図1との対応を明確にするために、(1)同期処理、(2)測定処理の順に説明する。
【0031】
(1)同期処理
操作部36は、ボタン等のインターフェイスによって構成されており、ユーザからの各種指示を受けつける。操作部36は、受けつけた指示を測定部34へ出力する。測定部34は、伝送路特性の測定機能を有するが、それ以外にも、伝送路特性の測定のために必要な処理を実行するための機能を有する。例えば、伝送路特性を測定するために送信装置10に送信を指示する機能や、同期処理を実行するための機能である。測定部34は、操作部36を介して、送信装置10に無線信号を送信させるための指示を受けつけると、指示に応じて、無線信号の送信指示が含まれたパケット信号を生成する。ここで、受けつけた指示には、送信装置10を特定するための情報が含まれており、測定部34は、当該情報をもとにパケット信号の宛先を特定する。測定部34は、パケット信号を通信部42へ出力する。通信部42は、携帯電話システムに対応しており、第3通信アンテナ20cを介して、パケット信号を送信装置10へ送信する。これは、例えば、第1送信装置10aへ無線信号を送信させる指示に相当する。
【0032】
無線部30は、受信アンテナ18を介して、送信装置10からの無線信号を受信する。前述のごとく、無線信号には、送信元の送信装置10に搭載されたクロックカウンタでのカウンタ値が含まれる。無線部30は、無線信号に対して、無線周波数から中間周波数への周波数変換を実行する。無線部30は、中間周波数へ変換した無線信号(以下、これも「無線信号」という)を直交検波部32へ出力する。直交検波部32は、無線部30からの無線信号を直交検波することによって、無線信号に対して、中間周波数からベースバンドへの周波数変換を実行する。さらに、直交検波部32は、ベースバンドの無線信号(以下、これも「無線信号」という)をA/D変換する。直交検波部32は、デジタル信号に変換された無線信号(以下、これも「無線信号」という)を復調部46へ出力する。一般的に、ベースバンドの信号は、同窓成分と直交成分を含むので、ふたつの信号線にて示されるべきである。しかしながら、ここでは、図面を明瞭にするために、ベースバンドの信号をひとつの信号線で示す。
【0033】
復調部46は、直交検波部32からの無線信号を入力し、無線信号を復調する。また、復調部46は、復調した信号を抽出部48へ出力する。抽出部48は、信号に含まれたカウンタ値であって、かつ当該信号を送信した送信装置10に搭載されたクロックカウンタでのカウンタ値を抽出する。抽出部48は、カウンタ値を導出部50へ出力する。導出部50は、抽出部48において抽出したカウンタ値(以下、「第1カウンタ値」という)と、クロックカウンタ40でのカウンタ値(以下、「第2カウンタ値」という)とを入力する。導出部50は、第1カウンタ値と第2カウンタ値とをもとに、第1カウンタ値に対する補正値を導出する。具体的に説明すると、導出部50は、第2カウンタ値から第1カウンタ値を減算することによって、補正値を導出する。導出部50は、補正値が含まれたパケット信号を生成する。また、導出部50は、パケット信号と、補正値に対応した送信装置10に関する情報とを通信部42へ出力する。
【0034】
通信部42は、導出部50から、パケット信号と、補正値に対応した送信装置10に関する情報とを入力する。通信部42は、補正値に対応した送信装置10をパケット信号の宛先として、パケット信号を第3通信アンテナ20cから送信する。これによって、通信部42は、導出部50において導出した補正値によるカウンタ値の補正を送信装置10へ指示する。このような処理の後、操作部36が、次の送信装置10に無線信号を送信させるための指示を受けつけると、測定部34等は、処理対象になる送信装置10を変更して前述の処理を繰り返し実行する。その結果、導出部50は、補正値を送信装置10単位に導出し、通信部42は、補正値によるカウンタ値の補正を各送信装置10へ指示する。
【0035】
(2)測定処理
通信部42において、各送信装置10にカウンタ値を補正させた後、操作部36は、ユーザから、測定開始の指示を受けつける。操作部36は、測定開始の指示を測定部34へ出力する。測定部34は、測定開始の指示が含まれたパケット信号を生成する。測定部34は、パケット信号を通信部42へ出力する。通信部42は、第3通信アンテナ20cから複数の送信装置10へパケット信号を送信する。つまり、通信部42は、複数の送信装置10に測定開始を指示する。
【0036】
測定部34は、測定手順に関するテーブルを予め記憶する。図3は、測定部34に記憶したテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、開始タイミング欄200、終了タイミング欄202、送信アンテナ欄204、受信アンテナ欄206が含まれる。開始タイミング欄200に示されたカウンタ値と、終了タイミング欄202に示されたカウンタ値とによって特定される期間がスロットに相当する。例えば、カウンタ値「0」から「1023」の期間が先頭のスロットに対応し、カウンタ値「1024」から「2047」の期間が次のスロットに対応する。また、送信アンテナ欄204と受信アンテナ欄206には、各スロットで使用すべき送信アンテナ16と受信アンテナ18とが示されている。例えば、先頭のスロットでは、第1送信アンテナ16aと第1受信アンテナ18aとが使用され、次のスロットでは、第1送信アンテナ16aと第2受信アンテナ18bとが使用される。このように、16スロットのそれぞれにおいて使用すべき送信アンテナ16と受信アンテナ18とが規定される。また、当該テーブルは、各送信装置10にも記憶される。図2に戻る。
【0037】
測定開始を指示し、カウンタ値が0になった後、第1受信アンテナ18aと第1無線部30aは、図示しない第1送信アンテナ16aからの信号を受信する。当該信号には、既知パターンが含まれており、以下では、当該信号を「トレーニング信号」という。第1無線部30aは、トレーニング信号に対して無線信号と同様の処理を実行する。第1直交検波部32aも、トレーニング信号に対して無線信号と同様の処理を実行するが、ベースバンドでのデジタル信号に変換されたトレーニング信号(以下、これも「トレーニング信号」という)を測定部34へ出力する。測定部34は、第1直交検波部32aからのトレーニング信号をもとに、第1送信アンテナ16aと第1受信アンテナ18aとの間の伝送路特性を測定する。伝送路特性として、例えば、遅延プロファイルが測定されるが、遅延プロファイルの測定には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0038】
カウンタ値が「1024」になった後、第2受信アンテナ18bは、図示しない第1送信アンテナ16aからのトレーニング信号を受信する。第2無線部30b、第2直交検波部32bは、第1無線部30a、第1直交検波部32aと同様の処理を実行する。測定部34は、第2直交検波部32bからのトレーニング信号をもとに、第1送信アンテナ16aと第2受信アンテナ18bとの間の伝送路特性を測定する。図2のテーブルに示されたカウンタ値になると、送信アンテナ16や受信アンテナ18が切りかえられて同様の処理が繰り返される。そのため、第3無線部30c、第4無線部30dは、第1無線部30aと同様の処理を実行し、第3直交検波部32c、第4直交検波部32dは、第1直交検波部32aと同様の処理を実行する。最終的に、測定部34は、「16」の伝送路特性を測定する。制御部44は、測定装置12全体のタイミングを制御する。
【0039】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0040】
図4は、第1送信装置10aの構成を示す。第1送信装置10aは、測定用生成部60、直交変調部62と総称される第1直交変調部62a、第2直交変調部62b、無線部64と総称される第1無線部64a、第2無線部64b、クロックカウンタ66、補正部68、通信部70、調節用生成部72、制御部74を含む。なお、図1の第2送信装置10bも、図4と同様の構成を有する。クロックカウンタ66は、前述のごとく、図2のクロックカウンタ40と同一の範囲において、図示しない第1基準信号発生器14aからのクロック信号をもとに、カウンタ値を増加させる。クロックカウンタ66は、測定用生成部60および調節用生成部72へカウンタ値を順次出力する。図4の説明も、図1および図2の説明に合わせて、(1)同期処理、(2)測定処理の順に説明する。
【0041】
(1)同期処理
通信部70は、携帯電話システムに対応しており、第1通信アンテナ20aを介して、図示しない測定装置12からパケット信号を受信する。通信部70は、受信したパケット信号を復調し、復調したパケット信号(以下、これも「パケット信号」という)を測定用生成部60、補正部68、調節用生成部72へ出力する。パケット信号が無線信号の送信指示を含んでいる場合、調節用生成部72は、無線信号の送信指示を抽出する。調節用生成部72は、無線信号の送信指示を抽出すると、クロックカウンタ66からカウンタ値を取得する。また、調節用生成部72は、カウンタ値が含まれた無線信号を生成し、無線信号を直交変調部62へ出力する。
【0042】
直交変調部62は、無線信号を直交変調することによって、無線信号をベースバンドから中間周波数へ変換する。なお、直交変調部62は、デジタル/アナログ変換も実行する。直交変調部62は、中間周波数へ変換した無線信号(以下、これも「無線信号」という)を無線部64へ出力する。無線部64は、直交変調部62からの無線信号を入力し、無線信号に対して、中間周波数から無線周波数への周波数変換を実行する。無線部64は、無線周波数へ変換した無線信号(以下、これも「無線信号」という)を増幅した後に送信アンテナ16から送信する。
【0043】
無線信号が送信された後、通信部70は、測定装置12からのパケット信号を受信する。パケット信号が補正値を含んでいる場合、補正部68は、補正値を抽出する。補正部68は、クロックカウンタ66でのカウンタ値を補正値によって補正させる。クロックカウンタ66は、カウンタ値に補正値を加算することによって、カウンタ値を補正する。また、補正されたカウンタ値が新たなカウンタ値とされる。
【0044】
(2)測定処理
カウンタ値が補正された後、通信部70は、測定装置12からのパケット信号を受信する。パケット信号が測定開始の指示を含んでいる場合、測定用生成部60は、測定開始の指示を抽出する。ここで、測定用生成部60は、図3と同様のテーブルを予め記憶しており、測定開始の指示を抽出すると、テーブルの中から、関連するカウンタ値を特定する。例えば、測定用生成部60は、送信アンテナ欄204に第1送信アンテナ16aと第2送信アンテナ16bとが含まれたスロットに対して、開始タイミング欄200および終了タイミング欄202のカウンタ値を特定する。測定用生成部60は、クロックカウンタ66からのカウンタ値を監視する。監視しているカウンタ値が、特定したカウンタ値に一致した場合、測定用生成部60は、対応した送信アンテナ16からトレーニング信号を送信させる。
【0045】
例えば、図3のテーブルにおいて、開始タイミングとしてカウンタ値「0」が特定されている場合、測定用生成部60は、クロックカウンタ66のカウンタ値が「0」になったことを検出すると、第1直交変調部62aへトレーニング信号を出力する。第1直交変調部62a、第1無線部64aは、これまでと同様の処理を実行して、第1送信アンテナ16aからトレーニング信号を送信する。トレーニング信号の送信は、終了タイミングまでには終了される。さらに、監視しているカウンタ値が、特定した次のカウンタ値に一致した場合、測定用生成部60は、送信アンテナ欄204をもとに送信アンテナ欄204を選択して、同様の処理を繰り返す。このような処理は、1フレームの期間にわたってなされる。制御部74は、第1送信装置10a全体のタイミングを制御する。
【0046】
以上の構成による測定システム100の動作を説明する。図5は、測定装置12における補正手順を示すフローチャートである。測定部34は、iを1に設定する(S10)。無線部30、直交検波部32は、第i送信装置10iからの無線信号を受信し(S12)、抽出部48は、無線信号からカウンタ値を抽出する(S14)。導出部50は、抽出したカウンタ値に対する補正値を導出する(S16)。導出部50は、通信部42を介して、第i送信装置10iへ補正を指示する(S18)。測定部34は、iに1を加算する(S20)。iがNよりも大きくなければ(S22のN)、ステップ12に戻る。一方、iがNよりも大きくなれば(S22のY)、処理は終了される。
【0047】
次に、本発明の変形例を説明する。変形例は、実施例と同様に、複数の送信装置と測定装置とを含んで構成される測定システムに関し、測定装置が基準タイミングを送信しない場合であっても、これらの間におけるタイミング同期を簡易に確立することを目的とする。一方、実施例に係る測定装置は、複数の送信装置のそれぞれに対して補正値を送信する。その結果、複数の送信装置のそれぞれは、測定装置のクロックカウンタに同期するようにクロック値を補正する。しかしながら変形例に係る測定装置は、ひとつの送信装置のクロックカウンタに同期するように、カウンタ値を補正する。また、測定装置は、残りの送信装置のそれぞれに対して補正値を送信する。その結果、残りの送信装置のそれぞれは、測定装置のクロックカウンタに同期するようにクロック値を補正する。
【0048】
図6は、本発明の変形例に係る測定装置12の構成を示す。測定装置12は、図2の測定装置12と比較して、調節部38に補正部52も含まれている。ここでは、図2との差異を中心に説明し、測定処理の説明を省略する。無線信号を送信させる指示が含まれたパケット信号を送信した後、無線部30は、受信アンテナ18を介して、送信装置10からの無線信号を受信する。ここでは、第1送信装置10aからの無線信号を最初に受信するものとする。当該無線信号は、無線部30、直交検波部32、復調部46を介して抽出部48へ出力される。抽出部48は、無線信号に含まれたカウンタ値を抽出して、カウンタ値を導出部50へ出力する。
【0049】
導出部50は、前述のごとく、抽出部48において抽出したカウンタ値(以下、これまでと同様に「第1カウンタ値」という)と、クロックカウンタ40でのカウンタ値(以下、これまでと同様に「第2カウンタ値」という)とを入力する。導出部50は、第1カウンタ値と第2カウンタ値とをもとに、第2カウンタ値に対する補正値を導出する。具体的に説明すると、導出部50は、第1カウンタ値から第2カウンタ値を減算することによって、補正値を導出する。導出部50は、補正値を補正部52へ出力する。補正部52は、クロックカウンタ40のカウンタ値を補正値で補正する。つまり、補正部52は、カウンタ値に補正値を加算することによって、カウンタ値を補正する。これは、複数の送信装置10におけるカウンタ値のうちのひとつを参照値として、クロックカウンタ40でのカウンタ値を補正することに相当する。
【0050】
クロックカウンタ40でのカウンタ値が補正された後、操作部36が、次の送信装置10に無線信号を送信させるための指示を受けつける。測定部34は、処理対象になる送信装置10を変更し、例えば第2送信装置10bを宛先として、無線信号を送信させる指示が含まれたパケット信号を通信部42に送信させる。無線部30は、受信アンテナ18を介して、第2送信装置10bからの無線信号を受信する。当該無線信号は、これまでと同様に、無線部30、直交検波部32、復調部46を介して抽出部48へ出力される。抽出部48は、無線信号に含まれたカウンタ値を抽出して、カウンタ値を導出部50へ出力する。
【0051】
導出部50は、前述のごとく、抽出部48において抽出したカウンタ値(以下、これまでと同様に「第1カウンタ値」という)と、クロックカウンタ40でのカウンタ値(以下、これまでと同様に「第2カウンタ値」という)とを入力する。ここで、第2カウンタ値は、補正部52によって既に補正された値である。導出部50は、第1カウンタ値と第2カウンタ値とをもとに、第1カウンタ値に対する補正値を導出する。これは、図2の導出部50と同様の補正値が導出されることに相当する。つまり、導出部50は、第1送信装置10a以外の送信装置10におけるカウンタ値と、補正部52において補正したカウンタ値とをもとに、第1送信装置10a以外の送信装置10に対するカウンタ値の補正値を導出する。
【0052】
導出部50は、補正値が含まれたパケット信号を生成する。また、導出部50は、パケット信号と、補正値に対応した送信装置10に関する情報とを通信部42へ出力する。通信部42は、導出部50から、パケット信号と、補正値に対応した送信装置10に関する情報とを入力する。通信部42は、補正値に対応した送信装置10をパケット信号の宛先として、パケット信号を第3通信アンテナ20cから送信する。これによって、通信部42は、導出部50において導出した補正値によるカウンタ値の補正を送信装置10へ指示する。なお、以上の処理は他の送信装置10に対してもなされる。つまり、測定装置12は、第1送信装置10aからのカウンタ値をもとに、クロックカウンタ40でのカウンタ値を補正する。さらに、測定装置12は、第1送信装置10a以外の送信装置10からのカウンタ値と、補正したカウンタ値とをもとに、当該送信装置10に対するカウンタ値の補正値を導出し、補正を指示する。
【0053】
図7は、測定装置12における補正手順を示すフローチャートである。測定部34は、iを1に設定する(S40)。無線部30、直交検波部32は、第i送信装置10iからの無線信号を受信し(S42)、抽出部48は、無線信号からカウンタ値を抽出する(S44)。導出部50は、抽出したカウンタ値をもとに補正値を導出する(S46)。iが1であれば(S48のY)、補正部52は、補正値にてカウンタ値を補正する(S50)。一方、iが1でなければ(S48のN)、導出部50は、通信部42を介して、第i送信装置10iへ補正を指示する(S52)。測定部34は、iに1を加算する(S54)。iがNよりも大きくなければ(S56のN)、ステップ42に戻る。一方、iがNよりも大きくなれば(S56のY)、処理は終了される。
【0054】
本発明の実施例によれば、内蔵したクロックカウンタのカウンタ値をもとに、各送信装置に搭載されたクロックカウンタでのカウンタ値に対する補正値を導出し、補正値によるカウンタ値の補正を各送信装置へ指示するので、タイミング同期を確立できる。また、補正値を導出するために、カウンタ値を受けつけるだけなので、基準タイミングがなくても、簡易にタイミング同期を確立できる。また、容易にタイミング同期が確立されるので、測定処理の前段階の処理を簡易に実行できる。また、タイミング同期が確立されるので、トレーニング信号の衝突確率を低減できる。また、トレーニング信号の衝突確率が低減されるので、伝送路特性の測定精度を向上できる。
【0055】
また、ひとつの送信装置でのカウンタ値に合うように、内蔵したクロックカウンタのカウンタ値を補正するので、ひとつの送信装置とのタイミング同期を簡易に確立できる。また、内蔵したクロックカウンタのカウンタ値を補正するので、ひとつの送信装置に対して何らかの指示を送信することを省略できる。また、ひとつの送信装置に対して何らかの指示を送信することが省略されるので、処理を簡易に実行できる。また、補正したクロックカウンタのカウンタ値をもとに、残りの送信装置でのカウンタ値に対する補正値を導出し、補正値によるカウンタ値の補正を指示するので、残りの送信装置ともタイミング同期を確立できる。
【0056】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素の組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0057】
本発明の実施例において、各送信装置10は、ふたつの送信アンテナ16を備え、測定装置12は、4つの受信アンテナ18を備える。しかしながらこれに限らず例えば、送信アンテナ16の数および受信アンテナ18の数は、これらの値に限定されず、任意の値が設定されればよい。本変形例によれば、測定項目の自由度を向上できる。
【0058】
本発明の実施例において、測定部34は、遅延プロファイルを測定している。しかしながらこれに限らず例えば、測定部34は、遅延プロファイル以外の伝送路特性を測定してもよい。具体的には、到来角、発射角、ドップラー周波数等が伝送路特性として測定されてもよい。このような伝送路特性の測定には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。本変形例によれば、さまざまな伝送路特性を測定できる。
【0059】
本発明の変形例において、測定部34は、ひとつの送信アンテナ16とひとつの受信アンテナ18とを組合わせ、一回の測定において当該組合せに対する伝送路特性を測定している。しかしながらこれに限らず例えば、測定部34は、ひとつの送信アンテナ16に対して複数の受信アンテナ18を組合わせ、一回の測定において複数の組合せに対する伝送路特性を測定してもよい。本変形例によれば、測定の期間を短縮できる。
【0060】
本発明の変形例において、通信アンテナ20は、携帯電話システムのような無線システムに対応するとしている。しかしながらこれに限らず例えば、無線システムが、携帯電話システムではなく、無線LAN(Local Area Network)であってもよい。本変形例によれば、無線システムの採用の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0061】
10 送信装置、 12 測定装置、 14 基準信号発生器、 16 送信アンテナ、 18 受信アンテナ、 20 通信アンテナ、 30 無線部、 32 直交検波部、 34 測定部、 36 操作部、 38 調節部、 40 クロックカウンタ、 42 通信部、 44 制御部、 46 復調部、 48 抽出部、 50 導出部、 52 補正部、 60 測定用生成部、 62 直交変調部、 64 無線部、 66 クロックカウンタ、 68 補正部、 70 通信部、 72 調節用生成部、 74 制御部、 100 測定システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロックに応じて、第1値から第2値までの範囲においてカウンタ値を順次増加させるとともに、カウンタ値が第2値に達した場合、カウンタ値を第1値に戻してカウンタ値の増加を繰り返すクロックカウンタと、
前記クロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタが搭載された複数の送信装置のそれぞれから、信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信した各信号に含まれたカウンタ値であって、かつ当該信号を送信した送信装置に搭載されたクロックカウンタでのカウンタ値を抽出する抽出部と、
前記抽出部において抽出したカウンタ値と、前記クロックカウンタでのカウンタ値とをもとに、カウンタ値の補正値を送信装置単位に導出する導出部と、
前記導出部において導出した補正値によるカウンタ値の補正を各送信装置へ指示する指示部と、
前記指示部においてカウンタ値を補正させた後、各送信装置から信号をもとに、各送信装置との間の伝送路特性を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする伝送路特性測定装置。
【請求項2】
クロックに応じて、第1値から第2値までの範囲においてカウンタ値を順次増加させるとともに、カウンタ値が第2値に達した場合、カウンタ値を第1値に戻してカウンタ値の増加を繰り返すクロックカウンタを搭載した伝送路特性測定装置と、
前記伝送路特性測定装置に搭載されたクロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタを搭載し、クロックカウンタでのカウンタ値が含まれた信号を送信する複数の送信装置とを備え、
前記伝送路特性測定装置は、
前記複数の送信装置のそれぞれからの信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信した各信号に含まれたカウンタ値を抽出する抽出部と、
前記抽出部において抽出したカウンタ値と、前記クロックカウンタでのカウンタ値とをもとに、カウンタ値の補正値を送信装置単位に導出する導出部と、
前記導出部において導出した補正値によるカウンタ値の補正を各送信装置へ指示する指示部と、
前記指示部においてカウンタ値を補正させた後、各送信装置から信号をもとに、各送信装置との間の伝送路特性を測定する測定部とを備えることを特徴とする伝送路特性測定システム。
【請求項3】
クロックに応じて、第1値から第2値までの範囲においてカウンタ値を順次増加させるとともに、カウンタ値が第2値に達した場合、カウンタ値を第1値に戻してカウンタ値の増加を繰り返すクロックカウンタと、
前記クロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタが搭載された複数の送信装置のそれぞれから、信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信した各信号に含まれたカウンタ値であって、かつ当該信号を送信した送信装置に搭載されたクロックカウンタでのカウンタ値を抽出する抽出部と、
前記抽出部において抽出したカウンタ値のうちのひとつを参照値として、前記クロックカウンタでのカウンタ値を補正する補正部と、
前記抽出部において抽出したカウンタ値のうちの残りと、前記補正部において補正したカウンタ値とをもとに、前記補正部での参照値の送信元になる送信装置とは別の送信装置に対するカウンタ値の補正値を導出する導出部と、
前記導出部において導出した補正値によるカウンタ値の補正を、前記補正部での参照値の送信元になる送信装置とは別の送信装置へ指示する指示部と、
前記指示部においてカウンタ値を補正させた後、各送信装置から信号をもとに、各送信装置との間の伝送路特性を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする伝送路特性測定装置。
【請求項4】
クロックに応じて、第1値から第2値までの範囲においてカウンタ値を順次増加させるとともに、カウンタ値が第2値に達した場合、カウンタ値を第1値に戻してカウンタ値の増加を繰り返すクロックカウンタを搭載した伝送路特性測定装置と、
前記伝送路特性測定装置に搭載されたクロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタを搭載し、クロックカウンタでのカウンタ値が含まれた信号を送信する第1送信装置と、
前記伝送路特性測定装置に搭載されたクロックカウンタと同一の範囲を有したクロックカウンタを搭載し、クロックカウンタでのカウンタ値が含まれた信号を送信する少なくともひとつの第2送信装置とを備え、
前記伝送路特性測定装置は、
前記第1送信装置と前記少なくともひとつの第2送信装置とのそれぞれからの信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信した各信号に含まれたカウンタ値を抽出する抽出部と、
前記抽出部において抽出したカウンタ値のうち、前記第1送信装置からのカウンタ値をもとに、前記クロックカウンタでのカウンタ値を補正する補正部と、
前記抽出部において抽出したカウンタ値のうちの残りと、前記補正部において補正したカウンタ値とをもとに、前記少なくともひとつの第2送信装置に対するカウンタ値の補正値を導出する導出部と、
前記導出部において導出した補正値によるカウンタ値の補正を、前記少なくともひとつの第2送信装置へ指示する指示部と、
前記指示部においてカウンタ値を補正させた後、前記第1送信装置と前記少なくともひとつの第2送信装置とから信号をもとに、前記第1送信装置と前記少なくともひとつの第2送信装置との間の伝送路特性を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする伝送路特性測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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