説明

伸縮パイプ

【課題】伸縮操作が容易で、ストッパー部材の外側への突出が小さく、スライド方向への固定強度の高い伸縮パイプを提供すること。
【解決手段】嵌合側先端から基端側に向けて所定長さで形成される肉薄部13と、肉薄部13内の下方側に形成される切り込み状であって、先端にパイプ内周面より内側に突出する突起部152を設けた可撓性係合部材15と、を有する第1パイプ部材1、第1パイプ部材1の中にスライド挿入し嵌合するものであって、長手方向に所定のピッチで外周面に形成される突起部152と係合する複数の溝23を有する第2パイプ部材2と、肉薄部13に嵌る肉厚部31を有し、締め付け側にスライド移動させて、肉厚部31を第1パイプ部材1の肉薄部13に対峙且つ近接させて可撓性係合部材15の外側への撓みを規制する環状形状のストッパー部材3と、を備える伸縮パイプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さ(高さ)調節が自在でスライド方向における固定強度が高い伸縮パイプであり、例えば商品展示用の多段の平台において、数段階の高さ調節が可能な支柱として使用できる。
【背景技術】
【0002】
長さ調節自在の伸縮パイプとしては、伸縮パイプの自在ワンタッチ伸縮装置(特開2010−281439号公報)、金属伸縮パイプ(特開2004−114113号公報)、農園芸用の簡易伸縮パイプ(特開2003−130018号公報)など多数の技術が提案されている。また、2つのパイプを互いに嵌め込んだ後、一方のパイプの端部近傍に形成された螺子で両者を固定する伸縮パイプや2つのパイプを互いに螺子込みにより嵌め込んだ伸縮パイプが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−281439号公報
【特許文献2】特開2004−114113号公報
【特許文献3】特開2003−130018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の伸縮パイプは、プッシュボタン操作によるワンタッチもの、簡易なナット締めやボルト螺子による固定ものなどがほとんどであり、スライド方向における高い固定強度を必要とするものではない。このため、例えば重量物商品等が載置される多段の平台における支柱などへは適用できないものであった。また、重量商品が載置される多段の平台において、例えば、支柱の長さ方向における中間部に位置する長さ調整用の締付け具(ストッパー部材)が、支柱の外周面より外側へ突出する部分が大きい場合、商品を載置するスペースが制限されるという問題があった。また、見栄えが悪く、商品イメージが悪くなるという問題があった。また、螺子込み伸縮パイプは、螺子込みが予想以上に面倒な作業となるという問題があった。
【0005】
そこで、伸縮操作が容易で、ストッパー部材が概ね肉薄であり、パイプの径方向外側への突出が小さく、スライド方向への固定強度の高い伸縮パイプの開発が望まれていた。また、伸縮パイプの使用状態において、伸縮操作を容易に行いたいという要望があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、組み付け状態であっても、伸縮操作が容易で、ストッパー部材が概ね肉薄であり、パイプの径方向外側への突出が小さく、スライド方向への固定強度の高い伸縮パイプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、上記課題を解決するものであって、嵌合側先端から基端側に向けて所定長さで形成される肉薄部と、該肉薄部内の下方側に形成される切り込み状であって、先端にパイプ内周面より内側に突出する突起部を設けた可撓性係合部材と、を有する第1パイプ部材と、該第1パイプ部材の端部に挿入し嵌合するものであって、軸方向に所定のピッチで外周面に形成される該突起部と係合する複数の溝を有する第2パイプ部材と、該肉薄部に嵌る肉厚部を有し、該可撓性係合部材の突起部と該溝が係合した状態において、該第2パイプ部材側から該第1パイプ部材側にスライド移動させて、該肉厚部を第1パイプ部材の肉薄部に対峙且つ近接させて可撓性係合部材の外側への撓みを規制する環状形状のストッパー部材と、を備えるものであることを特徴とする伸縮パイプを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、組み付け状態であっても、伸縮操作が容易で、支柱の長さ方向における中間部に位置するストッパー部材の外側への突出が小さく、スライド方向への固定強度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態における伸縮パイプの斜視図である。
【図2】図1の伸縮パイプの分解斜視図である。
【図3】図1の伸縮パイプで使用するストッパー部材の一部を破断して示す斜視図である。
【図4】図1の伸縮パイプで使用する第1パイプ部材の一部を破断して示す斜視図である。
【図5】第1及び第2パイプ部材が嵌る初期の状態を示す図である。
【図6】図5の状態から更にスライド移動が進行し、突起部と周溝が係合した状態を示す図である。
【図7】図6の状態においてストッパー部材の固定状態を示す図である。
【図8】図7の状態における一部を破断して示す斜視図である。
【図9】図1の伸縮パイプの使用例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態における伸縮パイプを図1〜図9を参照して説明する。伸縮パイプ10は、第1パイプ部材1と、第2パイプ部材2と、第1パイプ部材1と第2パイプ部材2の係合の外れを規制するストッパー部材3とからなる。
【0011】
第1パイプ部材1は、嵌合側先端aから基端側bに向けて所定長さで形成される肉薄部13と、肉薄部13内の下方側に形成される切り込み状であって、先端にパイプ内周面151より内側に突出する突起部152を設けた可撓性係合部材15と、を有し、本例では樹脂製の角パイプ11である。
【0012】
肉薄部13は、角パイプ11の4つの面に形成されるものであり、所定長さ(高さ)hと、所定幅wの寸法で、内周面はパイプ内周面と面一のものである。すなわち、肉薄部13は、パイプの肉部(壁厚)の外側部が切り欠き状に形成されたものである。所定長さhは、可撓性係合部材15が、第1パイプ1と第2パイプ2が嵌合する際、外側に撓むと共に、可撓性係合部材15の突起部152と周溝23が対峙する位置関係となった際、復元して可撓性係合部材15の突起部152と周溝23が係合するという作用を奏するのに十分な高さと、樹脂の材質等から適宜決定される。また、肉薄部13の厚みは、概ね第1パイプ部材1の本体部18の厚みの1/3〜2/3程度である。
【0013】
また、肉薄部13を形成することで、可撓性係合部材15の形成が容易となり、また、ストッパー部材3が嵌っても、ストッパー部材3の径方向における外側への突出(膨らみ)は小さく、例え、多段の平台の支柱に適用した場合でも、商品を載置するスペースが制限されることはない。
【0014】
可撓性係合部材15は、肉薄部13内の下方側に形成される切り込み状である。本例の切り込みは、切り込み形状である四角形における両側と上側の3辺であり、下側はパイプ本体と連続している。すなわち、図4の円形内に示すように、可撓性係合部材15の両側と上側は、パイプ本体との間で若干の隙間155を有している。このような可撓性係合部材15は、外側方向に外力がかかると、固定部である下側部を支点に外側に撓み、外力が除かれると元の形状に復元するようになっている。なお、可撓性係合部材15の上記「上」、「下」は、第1パイプ部材1が、図2及び図4に示す姿勢における位置を言う。
【0015】
また、可撓性係合部材15の先端には、パイプ内周面151より内側に突出する突起部152が形成されている。突起部152は、周方向長さは、可撓性係合部材15の周方向の長さ(可撓性係合部材15の幅寸法)と同じであり、断面形状は周溝23に係合する形状であり、例えば半円形断面形状、先が細くなる略三角形断面形状、台形断面形状等である。断面形状が四角形断面あるいは先が広くなる逆三角形断面のものは、周溝23との係合が強くなり過ぎ、パイプ伸縮操作の際、第1パイプ部材1と第2パイプ部材2が外れ難くなる。可撓性係合部材15の突起部152は、内周面151より内側に突出しているため、第2パイプ部材2が挿入されると、突起部152は第2パイプ部材2に押されて、外側に撓むことになる。
【0016】
肉薄部13の嵌合側先端aの外側の面には、外側に凸の端面突起16が形成されている。端面突起16の突起高さは、可撓性係合部材15の突起部152の高さより小さいものであってもよい。端面突起16は、ストッパー部材3の裏側の係止端341と係止するものである。これにより、ストッパー部材3のスライド移動を規制することができ、固定解除状態を容易に実現できる。また、パイプの長さを調整する際、ストッパー部材3を固定状態から固定解除の方向、すなわち反締め付け方向にスライド移動させる際、軽い係止を実現でき、作業者に体感により、固定解除のシグナルを与えることができる。固定解除とは、図6に示すように、可撓性係合部材15の外側に隙間331ができ、可撓性係合部材15が外側に撓むことを可能にする状態を言う。
【0017】
第1パイプ部材1の肉薄部13より締め付け方向側(基端側)には、突起17をパイプ周りに形成している。突起17は、ストッパー部材3の締め付け方向へのスライド移動を規制する。これにより、ストッパー部材3による固定状態が確認できる。
【0018】
第1パイプ部材1の基端側bの形状は、特に制限されず、用途に応じた種々のものが選択できる。第1パイプ部材1の基端とは、反嵌合側を言う。本例では、第1パイプ部材1の基端側bは、角パイプ11の径方向における最大長さより大きな径を有する円板状の鍔部12と、鍔部12から更に反嵌合側に延びる短尺の円筒パイプ18とからなっている。円筒パイプ18は、例えば、図9に示すように、平板状の棚部材20a〜20cの嵌合孔に嵌るものである。なお、鍔部12の裏面には、補強用のリブが形成されており、円筒パイプ18には、縦溝181が形成され、係合安定性を高めている。
【0019】
第2パイプ部材2は、第1パイプ部材1の中にほとんど隙間なく、スライド挿入され嵌合するものである。すなわち、第1パイプ部材1の内周面111と第2パイプ部材2の外周面24間には、ほとんど隙間が存在しない。従って、第2パイプ部材2は、第1パイプ部材1と同様に、角パイプである。第2パイプ部材2は、第1パイプ部材1の突起部152と係合する長手方向に所定のピッチで外周面に形成される複数の溝23、本例では周溝23を有する。周溝23は、パイプの周方向に1周連続する連続溝である。周溝23の設置個数及びピッチは、用途及びパイプ長さ等により適宜決定される。周溝23の断面形状は、突起部152の突起形状に対応したものであればよく、例えば、半円形断面、底側が細くなる略三角形断面、底側が短辺となる台形断面等である。断面形状が四角形断面あるいは底側が広くなる逆三角形断面のものは、可撓性係合部材15の突起部152との係合が強くなり過ぎ、パイプ伸縮操作の際、第1パイプ部材1と第2パイプ部材2が外れ難くなる。また、溝23は、周方向に1周連続する周溝に限定されず、不連続な周溝(分断溝)であってもよい。すなわち、周溝23は、第1パイプ部材1の突起部152と係合する位置に形成されていればよい。
【0020】
第2パイプ部材2の基端側の形状は、特に制限されず、用途に応じた種々のものが選択できる。第2パイプ部材2の基端とは、反嵌合側を言う。本例では、第2パイプ部材2の基端側は、角パイプ21の径方向の最大長さより大きな径を有する円板状の鍔部22と、鍔部22から更に反嵌合側に延びる短尺の円筒パイプ25とからなっている。円筒パイプ25は、例えば、図9に示すように、平板状の棚部材20a〜20cの嵌合孔に嵌るものである。なお、鍔部22の裏面には、補強用のリブが形成され、円筒パイプ25の周面には、嵌合用のリブがそれぞれ形成されている。
【0021】
ストッパー部材3は、締め付け前は、第2パイプ部材2側に遊嵌しているもので、所定の高さを有する環状形状、すなわち短尺状の角パイプであり、反締め付け方向側には、第1パイプ部材1の肉薄部13に対峙且つ近接する肉厚部31を有している。すなわち、肉厚部31は、肉厚部31の締め付け方向側に位置する肉薄部32より内側に突出したものである。肉厚部31は、ストッパー部材3の締め付けによるスライド移動により、第1パイプ部材1の可撓性係合部材15に対峙且つ近接する位置となり、可撓性係合部材15の外側への撓みを規制する。また、ストッパー部材3の固定解除による反締め付け方向へのスライド移動により、肉薄部32が、第1パイプ部材1の可撓性係合部材15に対峙する位置となり、肉薄部32と可撓性係合部材15間に隙間331を作るため、可撓性係合部材15の外側への撓みを許容する(図6)。
【0022】
ストッパー部材3の肉厚部31内において、肉厚部31の反締め付け方向側の先端cから基端側dに向けて所定の長さで延びる凹溝34が形成されている。凹溝34の横幅l及び溝深さは、第1パイプ部材1の端面突起16が嵌る長さと深さがあればよい。凹溝34内の締め付け側の端は、端面突起16の係止端341となる。これにより、パイプの長さを調整するため、ストッパー部材3を固定状態から固定解除の方向にスライド移動させる際、軽い係止を実現でき、作業者に体感により、固定解除のシグナルを与えることができる。
【0023】
ストッパー部材3の外周の4面には、手が掛かる凹部33がそれぞれ形成されている。これにより、手によるストッパー部材3のスライド操作を容易にする。ストッパー部材3は、肉厚部31が存在するものの、ストッパー部材3の内周面に内側に突出して形成されており、ストッパー部材3全体の厚みは概ね肉薄である。これにより、ストッパー部材3の外側への突出(膨らみ)が小さく、例え、多段の平台の支柱に適用した場合でも、商品を載置するスペースが制限されることはない(図9)。
【0024】
伸縮パイプ10は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂等の硬化性樹脂で作成されたものが、優れた操作性、高い強度及び安価な製作コスト等が得られる点で好ましい。また、伸縮パイプ10は、多段の平台の支柱(脚部)として使用することができる。平台は、平面視が四角形、円形、楕円形又は不定形の板状部材を天板とし、これを支柱(脚部)で支持する台である。伸縮パイプ10は、面-面間の外寸法が、300〜1000mm、好適には400〜700mm、更に好適には300〜500mmである。伸縮パイプ10がこの程度の太さであれば、パイプの厚みが十分に採れ、強度が高く、多段の平台の支柱として、重量物の載置が可能である。
【0025】
次に、本発明の伸縮パイプ10を多段の平台の支柱として使用する方法の一例について説明する。伸縮パイプ10を10本、四角形状の板状部材20a〜20cを3枚準備する。3枚の板状部材20a〜20cは全て同じ形状であるため、ひとつの板状部材20aについて説明する。板状部材20aは、所定の厚みを有し、四隅及び中央に円形状の貫通孔21aを有する四角形の板である。また、第1パイプ部材1が第2パイプ部材2より下方側となるように配置する。
【0026】
先ず、第1パイプ部材1、第2パイプ部材2及びストッパー部材3を組み付けて、伸縮パイプ10を完成させる。すなわち、ストッパー部材3は予め、第2パイプ部材2に遊嵌させておく。次いで、第1パイプ部材1の中空部に第2パイプ部材2を挿入する。この際、第1パイプ部材1の内周面111と第2パイプ部材2の外周面24とはほとんど隙間は存在しないため、第2パイプ部材2の嵌合側の先端eが第1パイプ部材1の可撓性係合部材15の突起部152に当たり、次いで、第2パイプ部材2の外周面24が突起部152を外側に押し、可撓性係合部材15を外側に撓ませつつ第2パイプ部材2は挿入される(図5)。
【0027】
そして、予め目論んだ周溝23と可撓性係合部材15の突起部152が対応位置にくると、可撓性係合部材15は元の形状に戻るため、周溝23と可撓性係合部材15の突起部152は係合する(図6)。この状態において、第1パイプ部材1と第2パイプ部材2は、係合状態にあるものの、両者を手で伸縮操作すれば、その係合は外れて、長さ調節ができる。
【0028】
周溝23と可撓性係合部材15の突起部152が係合した状態において、ストッパー部材3を、第2パイプ部材2側から第1パイプ部材1側にスライド移動させる。そして、ストッパー部材3の先端dが、第1パイプ部材1に形成された突起17に当たって、ストッパー部材3の締め付け方向へのスライド移動はできなくなる。なお、ストッパー部材3をスライド移動させる際、第1パイプ部材1の嵌合側の先端に形成された端面突起16は、ストッパー部材3の肉厚部31と相対的にスライド移動しながら接触するが、端面突起16の高さが小さいため、ストッパー部材3のスライド移動を妨げるほどの摩擦力は発生しない。
【0029】
ストッパー部材3の固定状態において、ストッパー部材3の肉厚部31が、第1パイプ部材1の肉薄部13と対峙する位置に、ストッパー部材3の肉薄部32が、第1パイプ部材1の肉厚部(パイプの厚み部)18と対峙する位置にそれぞれくる。また、第1パイプ部材1の端面突起16は、ストッパー部材3の肉厚部31の凹溝34内に位置している。すなわち、第1パイプ部材1の可撓性係合部材15の外側面とストッパー部材3の内側面とはほぼ隙間なく対峙している。このため、可撓性係合部材15の外側への撓みを規制する。このため、第1パイプ部材1と第2パイプ部材2は、軸方向において強く固定される。なお、ストッパー部材3の肉薄部(内周面)32と、これに接する第1パイプ部材1の外周面18は寸法差ゼロであり、スライド移動に際し摩擦抵抗が存在するため、ストッパー部材3が反締め付け方向に移動することはない。このため、ストッパー部材3が自然に外れることはない(図7)。
【0030】
このような伸縮パイプ10を10本容易し、一端の短尺の円筒パイプ25を、中段の板状部材20bの貫通孔21aに嵌合し、他端の短尺の円筒パイプ18を、下段の板状部材20cの貫通孔21aに嵌合し、2つの板状部材20b、20cを接続する。また、他の4本についても同様にして貫通孔21aに嵌め込み、2つの板状部材20b、20cを接続する。また、中段の板状部材20bと上段の板状部材20aとの接続も同様の方法で行なう。なお、本例では、伸縮パイプ10同士の接続は、短尺の円筒パイプ25と短尺の円筒パイプ18との嵌合と、鍔部12、22の挟み込みでよく、また、伸縮パイプ10の端部は、不図示のキャップ部材による締め付けなどの方法でよい。このようにして、3段の平台20Aが得られる。
【0031】
次に、図9の3段の平台20Aにおいて、3枚の板状部材20a〜20cを取り外すことなく、伸縮パイプ10の長さを調整する方法を以下に説明する。
【0032】
先ず、ストッパー部材3を、図7から図6の状態、すなわち、反締め付け方向側にスライド移動させる。この場合、端面突起16はストッパー部材3の凹溝34内で移動するため、端面突起16はストッパー部材3とは接触せず、移動は円滑に行われる。このスライド移動により、端面突起16がストッパー部材3の凹溝34の反締め付け側の溝端341と係止する。これにより、ストッパー部材3の移動は規制される。また、この係止強度は、弱いものであるが、係止を作業者に体感させ、固定解除のシグナルを与えることができる(図6)。すなわち、図6は、ストッパー部材3の固定が解除された状態であり、可撓性係合部材15とストッパー部材3との間に隙間331ができるため、可撓性係合部材15が外側に撓むことを可能にする。すなわち、図6において、第1パイプ部材1と第2パイプ部材2は、係合状態にあるものの、ストッパー部材3が解除状態にあるため、両者を手で相対的に伸縮する操作を行えば、可撓性係合部材15の突起部152と周溝23の係合は外れて、長さ調節ができる。
【0033】
そして、予め目論んだ他の周溝23と可撓性係合部材15の突起部152を係合させ、ストッパー部材3を締め付け側にスライド移動させれば、第1パイプ部材1と第2パイプ部材2を強く固定できる。また、他の4本の伸縮パイプ10も同様の操作を行う。これにより、5つの伸縮パイプ10の長さ調整が完了する。このように、本願発明の伸縮パイプ10を支柱として使用した多段の平台20Aにおいて、板状部材20a〜20cと支柱10を組み付けたまま、支柱10の長さを容易に調整することができる。また、多段の平台20Aは、5本の伸縮パイプ10のストッパー部材3の外側形状が角パイプの外側形より大きく突出するものではないため、展示品などを載せるスペースを制限することがない。
【0034】
伸縮パイプ10は、上記実施の形態例に限定されず、種々の変形を採ることができる。すなわち、伸縮パイプ10は、角パイプに限定されず、楕円形パイプ、円形パイプあるいは不定形パイプ等であってもよい。楕円形パイプの場合、円弧の径が大きな部分に可撓性係合部材を形成すればよい。円弧の径が大きな辺部は、直線状の辺部に近いため、可撓性係合部材を形成し易い点で好ましい。円弧の径が大きな部分に可撓性係合部材を形成する場合あるいは円形パイプの場合、必要であれば、可撓性係合部材の本体部分と接続する基端側よりやや先端側に薄肉部を別途形成し、可撓性係合部材が撓み易くなるようにしてもよい。不定形パイプの場合、周形状において、直線状の辺部が対峙する位置にあるものが好ましい。
【0035】
伸縮パイプ10は、角パイプを形成する4つの面の全てに、肉薄部13が形成されたものであるが、これに限定されず、少なくとも1つの面に形成されていればよい。1つの可撓性係合部材であっても、係合強度は十分である。
【0036】
伸縮パイプ10において、端面突起16は、前記の実施の形態例のような棒状突起に限定されず、例えば半球状突起、半円錐状突起のような、点状突起であってもよい。端面突起16が点状突起のように小さいものであっても、ストッパー部材3の凹溝34とで軽い係止が実現でき、操作者にその係止を体現させることができる。この場合、ストッパー部材3の凹溝34は端面突起16に対応した形状としてもよい。
【0037】
ストッパー部材3の外周面の形状は、本実施の形態例のような凹部に限定されず、凹部のない平坦面、凹凸面等種々の形状から選択できる。ストッパー部材3は、凹部が無くとも、手で把持して操作することが可能だからである。
【0038】
伸縮パイプ10において、第1パイプ部材1と第2パイプ部材2の位置関係は、上記形態例に限定されず、図1を上下反転させたような位置関係、すなわち、第1パイプ部材1が上方位置に、第2パイプ部材2が第1パイプ部材1の下方位置にあってもよい。また、伸縮パイプ10が使用される平台20Aは、3段に限定されず、1段や2段あるいは4段以上の平台であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の伸縮パイプによれば、伸縮パイプを組み付けたまま伸縮操作が可能で且つ容易である。このため、伸縮操作はひとりでも可能である。また、伸縮パイプを使用した多段の平台は、支柱の長さ方向における中間部に位置するストッパー部材の外側への突出が小さいため、載置面のスペースを広く採れると共に、伸縮パイプのスライド方向への固定強度が高いため、重量物の載置が可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 第1パイプ部材
2 第2パイプ部材
3 ストッパー部材
10 伸縮パイプ
13 第1パイプ部材の肉薄部
15 可撓性係合部材
16 端面突起
17 突起
20A 平台
23 第2パイプ部材の溝(周溝)
331 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合側先端から基端側に向けて所定長さで形成される肉薄部と、該肉薄部内の下方側に形成される切り込み状であって、先端にパイプ内周面より内側に突出する突起部を設けた可撓性係合部材と、を有する第1パイプ部材と、
該第1パイプ部材の中に挿入し嵌合するものであって、長手方向に所定のピッチで外周面に形成される該突起部と係合する複数の溝を有する第2パイプ部材と、
該肉薄部に嵌る肉厚部を有し、該可撓性係合部材の突起部と該溝が係合した状態において、該第2パイプ部材側から該第1パイプ部材側にスライド移動させて、該肉厚部を第1パイプ部材の肉薄部に対峙且つ近接させて可撓性係合部材の外側への撓みを規制する環状形状のストッパー部材と、を備えるものであることを特徴とする伸縮パイプ。
【請求項2】
該溝が、周方向に延出する連続又は不連続の周溝であることを特徴とする請求項1記載の伸縮パイプ。
【請求項3】
該ストッパー部材の締付け方向へのスライド移動を規制する突起を、該第1パイプ部材の該肉薄部より締付け方向側に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の伸縮パイプ。
【請求項4】
該肉薄部の嵌合側先端に、外側に凸の端面突起を更に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸縮パイプ。
【請求項5】
該肉厚部の先端から基端側に向けて所定の長さを有する凹溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸縮パイプ。
【請求項6】
該端面突起が、該肉厚部の凹溝内の締め付け方向側の端に当接する状態において、該可撓性係合部材と該ストッパー部材の間には該可撓性係合部材の突起高さに相当する幅の隙間が存在することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の伸縮パイプ。
【請求項7】
該可撓性係合部材の突起部は、該溝の溝形状に対応した断面形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の伸縮パイプ。
【請求項8】
角パイプであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の伸縮パイプ。
【請求項9】
少なくとも1段の平台の支柱として用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の伸縮パイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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