説明

伸縮性を有する肌着

【課題】着用感に優れ、身体的にハンディキャップを有する者や介護者でも着脱が容易に行える伸縮性を有する肌着を提供できるようにする。
【解決手段】フライス編み機により、筒状に編成された胴部を有する肌着であって、編み出し部分から編み終わり部分にかけて、綿糸等の吸湿性を有する編糸が給糸されて編成された複数コースおきにナイロン糸をカバーリング糸とする伸縮弾性糸がリブ編みの裏目部分に給糸されて筒状の胴部を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にリハビリ等の機能回復運動をする者や、入院患者等を含む被介護者が着用するために大きく伸縮させることができる伸縮性を有する肌着に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、下着は、伸縮性のある編地を用いた衣料は肌に密着して、体温を保温する役目と、肌から放出される水分および皮膚の老化物等の排出物を吸収して肌表面を衛生的に保つ役目と中衣の摩擦による肌の損傷を防ぐ役目で着用される。
一方、機能回復運動をする者や介護における被介護者等は身体の動作等にハンディキャップがあり、筒状の下着では着脱するのが困難になる。
【0003】
上記問題に対処するために、身体的にハンディキャップを有する者が着用する下着としては特許文献1に示すように開口部を紐で結ぶ前開きの寝巻き形式の下着や、特許文献2に示すように前後二枚あわせにした素材の周縁部分の適宜部分を紐で結ぶ形式の下着が知られている。
ところが、こうした前開きの下着の場合、紐の結び目が嵩高くなり、着用感が悪いうえ、結んだ紐がほどけ易く、すぐにはだけてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平10−130917号公報
【特許文献2】特開2007−154325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑み提案されたもので、着用感に優れ、身体的にハンディキャップを有する者や介護者でも着脱が容易に行える伸縮性を有する肌着を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る伸縮性を有する肌着は、フライス編み機により、筒状に編成された胴部を有する肌着であって、編み出し部分から編み終わり部分にかけて、綿糸等の吸湿性を有する編糸が給糸されて編成された複数コースおきにナイロン糸をカバーリング糸とする伸縮弾性糸がリブ編みの裏目部分に給糸されて筒状の胴部が形成されていることを最も主要な特徴とするものである。
【0006】
また、本発明にかかる伸縮性を有する肌着は、フライス編み機に少なくとも9本のヤーンフィーダが備えられており、そのうちの1本のヤーンフィーダからナイロン糸をカバーリング糸とする伸縮弾性糸が給糸され、8本のヤーンフィーダから綿糸等の吸湿性を有する編糸が給糸されることにより、編地の8コースおきに伸縮弾性糸を設けてあることや、 肌着が医療用患者若しくは被介護者が着用する肌着であることも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る伸縮性を有する肌着によれば、筒状の胴部を編成するにあたり、その編み出し部分から編み終わり部分にかけて、綿糸等の吸湿性を有する編糸が給糸されて編成された複数コースおきにナイロン糸をカバーリング糸とする伸縮弾性糸がリブ編みの裏目部分に給糸されて筒状の胴部を形成するようにしてある。
これにより、綿糸等の吸湿性を有する編糸が給糸されて編成された部分で肌から放出される水分および皮膚の老化物等の排出物を吸収して肌表面を衛生的に保つとともに、ナイロン糸をカバーリング糸とする伸縮弾性糸が給糸されて編成されたリブ編み部分で伸縮性が確保されるので、従来の前開きの下着の場合のような紐の結び目が嵩高くなり、着用感が悪いうえ、結んだ紐がほどけ易く、すぐにはだけてしまうという問題をなくして、快適な着用感を有する伸縮性を有する肌着を提供することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にかかる伸縮性を有する肌着では、フライス編み機に少なくとも9本のヤーンフィーダが備えられており、そのうちの1本のヤーンフィーダからナイロン糸をカバーリング糸とする伸縮弾性糸が給糸され、8本のヤーンフィーダから綿糸等の吸湿性を有する編糸が給糸されることにより、編地の8コースおきに伸縮弾性糸を設けることが望ましい。
また、本発明にかかる伸縮性を有する肌着を、医療用患者若しくは被介護者が着用する肌着にすることが望ましい。
【実施例】
【0009】
以下、本発明にかかる伸縮性を有する肌着の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、フライス編み機である丸編み機により、編成された伸縮性を有する肌着1であって、筒状に編成された胴部2と、左右のアームホール部分3・3に縫着された袖筒部分4・4とからなる肌着の正面図である。
この肌着1を編成する丸編み機の詳細な図示は省略したが、概略を示す図2で概要を説明すると、円筒に形成されたシリンダの針溝にシリンダ針5を昇降摺動可能に収納し、このシリンダ針5に直交するダイヤル針6を進退摺動可能に設けるとともに、両編み針5・6に形成されたバットを操作するカム群を備えた編針駆動手段と、編針駆動手段と前記両編み針5・6の進退駆動に連動して編糸を給糸する複数(本例では9個)のヤーンフィーダを備えてなる丸編み機を使用している。
【0010】
上記の丸編み機を使用して発明にかかる伸縮性を有する肌着を編成する手順を次に説明する。
先ず、上記丸編み機の9個のヤーンフィーダのうちの第1ヤーンフィーダ〜第8ヤーンフィーダからは綿糸のコーマ糸40番手の単糸が給糸され、第9ヤーンフィーダからは140デニールのポリウレタンのコアを70デニールのナイロンフィラメント糸でカバーリングしたカバーリング弾性糸、いわゆるFTYが給糸されるようになっている(図2参照)。
【0011】
そして、図1に示す伸縮性を有する肌着1の胴部2は、下端部の着用口部分7から編みだされ、えりぐり側部分に向けて編成されている。
この編み出しにあたっては、第1ヤーンフィーダからの綿糸10がシリンダ針5とダイヤル針6とにわたってジグザグに給糸されて編み出された後、後続の第2ヤーンフィーダ乃至第8ヤーンフィーダでそれぞれ綿糸10がシリンダ針5とダイヤル針6とにわたってジグザグに給糸されることにより、シリンダ針5で形成される表目8とダイヤル針6で形成される裏目9とが交互にできる1×1のリブ編み(フライス編)が8コース形成される。
【0012】
然る後、第9ヤーンフィーダからの伸縮弾性糸11が適宜の張力が付与された状態でダイヤル針6に給糸される。
第9ヤーンフィーダからダイヤル針6に伸縮弾性糸11が適宜の張力が付与された状態で給糸されて、ダイヤル針6には裏目9のループが形成される。
このダイヤル針6に形成された伸縮弾性糸11による裏目9のループは、次に給糸される第1ヤーンフィーダからシリンダ針5とダイヤル針6とにわたってジグザグに給糸された綿糸10で形成される裏目9のループに移される。
【0013】
このように、第9ヤーンフィーダからの伸縮弾性糸11は筒状の編地(胴部2)の内面側で裏目9を形成するダイヤル針6でループが形成されることから、当該伸縮弾性糸11が筒状の編地の表面に現れにくく、筒状編地の外観を阻害することはない。
以後、こうした第1ヤーンフィーダから第9ヤーンフィーダの給糸が繰り返されることにより、図1に点線で示すように伸縮弾性糸11が8コースおきに編みこまれた胴部2用の筒状の編地が形成される。
【0014】
伸縮弾性糸11が8コースおきに編み込まれた筒状の胴部2は上部の中央にえりぐり用の開口部13を残した状態で、左右から縫着して肩部分12を形成して、えりぐり用の開口部13を形成するとともに、上部の左右側方部分を開口してアームホール部分3・3を形成する。
えりぐり用の開口部13には解れ止めようの細幅編地14がリンキングにより縫着され、左右のアームホール部分3・3には袖筒部分4・4が縫着されると、ここに伸縮性を有する肌着1が完成する。
【0015】
斯くして形成された伸縮性を有する肌着1は、胴部2に8コースおきに伸縮弾性糸11が設けられていることから、この伸縮弾性糸11の張力により肌着1が適度に身体にフィットする。
また、肌着1の着脱時には、伸縮性の高いリブ編みと伸縮弾性糸11とがあいまって肌着1の胴部2が大きく伸びるので、身体にハンディキャップがあるような場合や、介護者が被介護者に対して行う着脱を楽に行うことができる。
【0016】
尚、上記の実施例では、肌着1の胴部2を編成するにあたり、8コースおきに伸縮弾性糸11を設けるようにしてあるが、こうしたものに限られず、伸縮弾性糸11の種類や胴部2の径の大きさ、肌着1の使用目的等によって伸縮弾性糸11の挿入間隔は任意に設定することができるのはいうまでもないことである。
また、本発明にかかる伸縮性を有する肌着1は、医療用患者若しくは被介護者が着用する肌着1に限定されるものではなく、健常者が着用することができるのは言うまでもなく、特に登山やスポーツ等、汗を多くかき、短時間に着替えをするような場合に着用するのに適している。
【0017】
さらに、上記の実施例では、図上、肌着1の胴部2に所定の間隔で伸縮弾性糸11を給糸するようにしてあるが、袖筒部分4・4にも上記伸縮弾性糸11を所定間隔設けるようにすることも望ましいことである。
加えて、上記の実施例では、編地の組織をリブ編みにしてあるが、平編みはもちろんのこと、パール編みやその他の編み組織にすることもできる。
また、ヤーンフィーダの数は上記実施例の9本に限られないことは言うまでもなく、仮に8コースおきに伸縮弾性糸11を編みこむ場合でも、第9ヤーンフィーダに限られず、いずれかの1つのヤーンフィーダから伸縮弾性糸11を給糸すれば、8コースおきに伸縮弾性糸を編みこむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】は本発明にかかる肌着の正面図である。
【図2】は本発明にかかる肌着のヤーンフィーダの給糸関係を示す概略図である。
【符号の説明】
【0019】
1・・・肌着
2・・・胴部
3・・・アームホール部分
4・・・袖筒部分
5・・・シリンダ針
6・・・ダイヤル針
7・・・着用口
8・・・表目
9・・・裏目
10・・・綿糸
11・・・伸縮弾性糸
12・・・肩部分
13・・・えりぐり用の開口部
14・・・細幅編地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライス編み機により、筒状に編成された胴部を有する肌着であって、編み出し部分から編み終わり部分にかけて、綿糸等の吸湿性を有する編糸が給糸されて編成された複数コースおきにナイロン糸をカバーリング糸とする伸縮弾性糸が給糸されてリブ編みの筒状の胴部が形成されていることを特徴とする伸縮性を有する肌着。
【請求項2】
フライス編み機に少なくとも9本のヤーンフィーダが備えられており、そのうちの1本のヤーンフィーダからナイロン糸をカバーリング糸とする伸縮弾性糸が給糸され、8本のヤーンフィーダから綿糸等の吸湿性を有する編糸が給糸されることにより、編地の8コースおきに伸縮弾性糸を設けてあることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性を有する肌着。
【請求項3】
肌着が医療用患者若しくは被介護者が着用する肌着であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の伸縮性を有する肌着。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−133057(P2010−133057A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310749(P2008−310749)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(501205913)株式会社又一洋行 (2)
【Fターム(参考)】