説明

伸縮性不織布の製造方法

【課題】 製造ライン巾を大きくすることなく、或いは製造ラインによる制約をできる限り減少することができる、しかも簡易な手段で伸長回復率を向上させることができる伸縮性不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】 潜在捲縮性繊維を主体とする繊維ウエブに、高圧水流を作用させて繊維同士を交絡させ、次いで熱収縮処理を行い前記潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、次いで一定方向に10%以上伸長することを特徴とする伸縮性不織布の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用貼付薬基材、化粧用貼付剤の基材など、伸縮性を必要とする用途に好適な伸縮性不織布の製造方法に関し、特に伸長回復性の向上した伸縮性不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、伸縮性不織布は様々な用途で用いられており、特に、医療分野や化粧品分野では、その優れた伸長回復性の特性を利用することによって、関節など、貼付部位の動きに追従する貼付薬基材、或いは表面状態のソフト感を生かした化粧用貼付剤の基材などに用いられている。このような伸縮性不織布に対する技術として、潜在捲縮性繊維を使用して熱収縮させる技術が、例えば特開平9−87950号公報(特許文献1)及び特開平2001−11762号公報(特許文献2)に開示されている。しかし、伸縮性不織布には、各用途における機能性向上のため近年ますます高い伸長回復性が求められるようになってきている。そこで、このような高い伸長回復率を有する不織布を製造しようとすると、熱収縮率をさらに大きくする必要があり、そのため製造ラインの収縮工程までのライン巾を非常に大きくする必要があった。しかし、製造ラインの巾に必要なスペースが確保できなかったり、熱収縮前の繊維ウエブに対して巾方向の均一性などが保てなくなったり、機械の大改造が必要となる等の問題があった。このように、製造ラインによる制約があるため、伸縮性不織布からなる製品の伸長回復率の向上は困難な課題となっていた。
【0003】
【特許文献1】特開平9−87950号公報
【特許文献2】特開平2001−11762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を解決し、製造ライン巾を大きくすることなく、或いは製造ラインによる制約をできる限り減少することができる、しかも簡易な手段で伸長回復率を向上させることができる伸縮性不織布の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の不織布の製造方法に係る解決手段は、潜在捲縮性繊維を主体とする繊維ウエブに、高圧水流を作用させて繊維同士を交絡させ、次いで熱収縮処理を行い前記潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、次いで一定方向に10%以上伸長することを特徴とする伸縮性不織布の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の伸縮性不織布の製造方法によって、製造ライン巾を大きくすることなく、或いは製造ラインによる制約をできる限り減少することができ、しかも簡易な手段で伸長回復率が向上した伸縮性不織布を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係る伸縮性不織布の製造方法の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0008】
本発明で使用する繊維ウエブは、潜在捲縮性繊維を主体としている。このような潜在捲縮繊維としては、融点の異なる複数の樹脂が複合された複合繊維や、繊維の一部に特定の熱履歴を施した繊維が使用される。複合繊維には、例えば偏心型の芯鞘構造のものや、サイドバイサイド型の複合繊維が好適に用いられる。融点の異なる樹脂の組み合わせとして、ポリエステル−低融点ポリエステル、ポリアミド−低融点ポリアミド、ポリエステル−ポリアミド、ポリエステル−ポリプロピレン、ポリプロピレン−低融点ポリプロピレン、ポリプロピレン−ポリエチレンなど種々の合成樹脂を組み合わせたものが使用できる。特に、ポリエステル−低融点ポリエステル若しくはポリプロピレン−低融点ポリプロピレンの組み合わせからなる潜在捲縮繊維は、化学的な耐性と伸度特性の点で優れており好ましい。また、融点の異なる樹脂の組み合わせのうち片方の樹脂がポリエステルエーテルなどの熱可塑性エラストマー樹脂成分を有する樹脂であることにより、具体的には繊維ウエブがエラストマー成分を有する繊維を1〜40%含むことにより伸縮性不織布の伸長回復性の向上に寄与するので好ましい。また、繊維の一部に特定の熱履歴を施した潜在捲縮繊維としては、例えば熱刃などにポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルなどの熱可塑性樹脂からなる繊維の一側面をあてながら通過させたものが使用できる。
【0009】
なお、本発明で使用する繊維ウエブは、前記潜在捲縮性繊維を主体としているが、「主体とし」とは、潜在捲縮性繊維を少なくとも50質量%以上含むことを言う。本発明では、より好ましくは80質量%以上の潜在捲縮性繊維を含むことが望ましく、100質量%潜在捲縮性繊維であってもよい。
【0010】
本発明で使用する繊維ウエブに含まれる潜在捲縮性繊維以外の繊維としては、伸縮性不織布の使用用途によって、適宜選択することが可能であり、例えば、レーヨン繊維などの再生繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維、綿などの植物繊維、羊毛などの動物繊維などを使用できる。例えば、伸縮性不織布を外用薬の基布として使用する場合には、耐薬品性に優れたポリエステル繊維やポリプロピレン繊維が好適に使用できる。また、ポリエステルエーテルなどの熱可塑性エラストマー樹脂成分を有する樹脂からなる繊維であれば、伸縮性不織布の伸長回復性向上に寄与するので好ましい。具体的にはエラストマー成分を有する繊維を1〜40%含むことにより、好ましくは1〜20%含むことにより、伸縮性不織布の伸長回復性向上に寄与することができるので好ましい。
【0011】
また、潜在捲縮性繊維以外の繊維として、接着性繊維を使用することも可能である。接着性繊維としては、例えば前記潜在捲縮性繊維の樹脂成分の融点よりも低い融点の樹脂成分からなる、例えば150℃以下の融点の樹脂成分からなる低融点繊維を適用することができる。また、例えば、融点の異なる樹脂成分と組合せてなる複合繊維であって、前記潜在捲縮性繊維の樹脂成分の融点よりも低い融点の樹脂成分を有する複合繊維を適用することができる。このような複合繊維には、例えばポリエステル−低融点ポリエステル、ポリアミド−低融点ポリアミド、ポリエステル−ポリアミド、ポリエステル−ポリプロピレン、ポリプロピレン−低融点ポリプロピレン、ポリプロピレン−ポリエチレンなど種々の合成樹脂を組み合わせたものがある。特に、ポリエステル−低融点ポリエステル若しくはポリプロピレン−低融点ポリプロピレンの組み合わせからなる複合繊維は、化学的な耐性の点で優れており好ましい。本発明では、このような接着性繊維を1〜40%含むことにより、好ましくは1〜20%含むことにより、A%伸長回復性を向上させると共に、A%伸長時の引張強度を高めることができる。(但し、Aは例えば10〜100の何れかの値)
【0012】
また、前記接着性繊維としては、熱可塑性エラストマー樹脂成分を有する繊維であることも好ましく、更にA%伸長回復性を向上させると共に、A%伸長時の引張強度を高めることができる。(但し、Aは例えば10〜100の何れかの値)このような接着性繊維としては、例えば芯鞘型の複合繊維からなり鞘成分が潜在捲縮性繊維よりも低融点のポリエステルエラストマー樹脂であり、芯成分が鞘成分よりも更に低融点の変性ポリエステル樹脂である複合繊維がある。
【0013】
なお、前記繊維ウエブは、前記潜在捲縮性繊維から選ばれる複数の潜在捲縮性繊維を含むことが可能であり、また潜在捲縮性繊維以外の繊維についても前述の潜在捲縮性繊維以外の繊維から選ばれる複数の繊維を含むことが可能である。
【0014】
前記繊維ウエブの形成法は、公知の不織布の製法に従うことが可能であり、例えば湿式法、乾式法、或いはスパンボンド法などがある。このうち、乾式法であれば捲縮処理を予め施した繊維を使用することができること、或いは繊維配向を変更しやすいこと等の有利性があり好ましい。
【0015】
前記乾式法では、短繊維を使用し、カード機またはエアレイ機等によってシート状に繊維ウエブを形成する。当該短繊維は、特にカード機の工程通過性を良好に保つため、繊維にクリンパーなどの機械的な手段によって予めジグザグ状の捲縮を付与し、例えばカード機投入前の捲縮数が20個/インチ以下程度に設計することが好ましい。このような捲縮数を上記設計値よりも大きく採ると、繊維ウエブの形成装置内で繊維同士が過度に絡み合い、均一な繊維ウエブを形成することが困難になる場合がある。また、潜在捲縮性繊維の場合は、さらにその後の熱処理によって、例えば50個/インチ以上の比較的高い捲縮数を発現することができる。
【0016】
前記繊維ウエブは、一台または複数台のカード機またはエアレイ機などから形成されるウエブを積層した繊維ウエブを使用することができる。この積層に際しては、カード機またはエアレイ機などにより繊維が一方向に配向したパラレルウエブを使用することが可能である。また、前記パラレルウエブを更にクロスレイヤーなどによって、交差するように配向させたクロスレイドウエブを使用することが可能である。また、たて方向とよこ方向の強度バランスを良くするために、或いはたて方向とよこ方向の伸長回復性のバランスを良くするために、前記パラレルウエブと前記クロスレイドウエブとを積層させたクリスクロスウエブを使用することが可能である。また、前記クロスレイドウエブの構成繊維の配向状態については、構成繊維のたて方向となす交差角度(α:鋭角)は、15〜80度であるのが好ましい。交差角度が15度未満では、たて方向とよこ方向との強度差などが大きくなり、交差角度が80度を越えると、たて方向とよこ方向の強度差などが大きくなるばかりでなく、極端に生産性が悪くなるためであり、より好ましい交差角度は20〜65度である。この交差角度は、例えば、クロスレイヤーとクロスレイドウエブを受け取るコンベアの相対速度を調節することにより設定できる。
【0017】
本発明では、前記繊維ウエブに高圧水流を作用させて繊維同士を交絡させて交絡シートとする。高圧水流を作用させる方法は、公知の方法で行うことが可能であり、例えば金属性ネットやプラスチックネットなどの多孔性支持体上に前記繊維ウエブを載置して、その上方から繊維ウエブに向けて、高圧のノズルから水流を噴射する方法を適用することができる。
【0018】
前記水流の発生に用いる好ましいノズルとしては、例えばノズル孔が一列又は複数列に配置されたノズルがあり、ノズル孔の列は繊維ウエブの生産方向或いは繊維ウエブの処理方向(以下たて方向と称する場合がある。)と交差する方向に配置される。ノズル孔の孔径は直径0.05〜0.5mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましく、0.1〜0.18mmがさらに好ましい。また隣り合うノズル孔の間隔は0.2〜4mmが好ましく、0.3〜3mmが好ましく、0.4〜2mmがさらに好ましい。ノズルから噴射される水流の形状は柱状が好ましいが、ノズル孔から離れるほど水流の太さが広がるような円錐形状も可能である。円錐形状である場合は、円錐の垂線と円錐の斜面とがなす角度が10度以内が好ましく、5度以内がさらに好ましい。またノズル内の圧力は好ましくは0.1〜15MPaである。また前記ノズルを複数配置しておくことも可能であるが、エネルギー消費効率から考慮すると全て合わせて10台以内のノズル台数で噴射処理することが好ましい。
【0019】
本発明では、前記交絡シートに加熱によって熱収縮処理を行い前記繊維ウエブに含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させて捲縮発現シートとする。加熱方法としては、例えば交絡シートをコンベアーに載置して熱風吹き出し型の乾燥機に入れて前記潜在捲縮性繊維の捲縮発現温度以上の温度で連続的に乾燥と同時に捲縮を発現させる方法がある。また例えば交絡シートをエアースルー型の乾燥機に入れて捲縮発現温度以上の温度で連続的に乾燥と同時に捲縮を発現させる方法がある。またより確実に捲縮を発現させようとするならば、例えば交絡シートを捲縮発現温度未満の温度で任意の乾燥機で一旦乾燥させて乾燥交絡シートとしてから、乾燥交絡シートを空中に浮かせるようにして工程テンションがあまり掛からないようにして、加熱処理する方法も可能である。また例えばピンテンター装置を用いてオーバーフィードと巾収縮をかけながら連続的に加熱処理する方法も可能である。
【0020】
また前記交絡シートに接着性繊維が含まれる場合、接着性繊維による繊維の接着を潜在捲縮性繊維の捲縮発現よりも優先させるならば、接着性繊維の融点温度を捲縮発現温度以下とする方法があり、逆に潜在捲縮性繊維の捲縮発現を接着性繊維による繊維の接着よりも優先させるならば、捲縮発現温度を接着性繊維の融点より低くする方法がある。
【0021】
本発明では、前記捲縮発現シートを一定方向に10%以上伸長する。一定方向に伸長する方法としては、その一定方向と直交する方向全体に荷重をかける方法であれは特に限定されず、例えば繊維ウエブの生産方向(たて方向)に交差した2対のロールからなる押さえロール装置を一定の間隔で2組以上配置して、各ロール装置の回転速度を巻き取り装置に近い方が速くなるように設定する方法がある。この方法の場合、本発明では巻き取り装置に最も近いロール装置の回転速度を、最も遠いロール装置の回転速度の10%以上速い速度とする必要がある。また、例えばピンテンター装置を使用して、繊維ウエブの生産方向(たて方向)と直角に交差する方向(よこ方向と称する場合がある)に拡巾する方法がある。また必要に応じてオーバーフィードをかけることも可能である。本発明ではこのようなピンテンター装置を使用する場合は、10%以上拡巾する必要がある。たて方向に伸長するか、又はよこ方向に伸長するか、或いはたて方向とよこ方向共に伸長するかは、伸長回復性を向上させたい方向に対して適宜選択することが可能である。特にパラレルウエブに対しては、たて方向に伸長するのが望ましく、クロスレイドウエブ又はクリスクロスウエブに対しては、たて方向及び/又はよこ方向に伸長するのが望ましい。
【0022】
本発明では、前記捲縮発現シートを一定方向に10%以上伸長する必要があるが、伸長する割合は20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。一定方向に伸長する割合が10%未満の場合は、伸長回復性の向上効果が少なくなり目的とする伸縮性不織布を得ることができなくなる。また、10%未満の伸長は、従来の伸縮性不織布の生産中に速度コントロールの不整合などの原因で一時的に巾引きを伴いながら発生する可能性のある範囲ともいえる。
【0023】
本発明では、一定方向に10%以上伸長した後に、更に一定方向に10%以上伸長する工程を繰り終えし行うことも可能であり、伸長回復性を確実に且つ更に向上させることができる。この場合、例えば、第一回目は10%、第二回目は20%、第三回目は50%というように段階的に伸長の度合いを高めることも可能である。
【0024】
本発明では、前記捲縮発現シートを一定方向に例えば50%以上伸長することによって、伸長した方向の例えば50%伸長回復性を向上させることができる。伸長回復性が向上する理由は、明らかではないが、その理由として、潜在捲縮性繊維の捲縮は十分に発現しているものの、多数存在する繊維結合点の中で伸長回復性を阻害する繊維結合点がある割合で存在しており、一定方向に50%以上伸長することによって、この伸長回復性を阻害する繊維結合点が減少するものと考えられる。すなわち、繊維結合点が絡合によるもの或いは接着によるものを含むとすると、伸長回復性を阻害する繊維結合点とは、前記捲縮発現シートに荷重をかけ一定方向に50%伸長した際に繊維結合点が解消され、荷重がなくなっても元の繊維結合点に戻らない繊維結合点と考えることができる。このように捲縮発現シートに荷重をかけ一定方向に50%以上伸長した後に、更に同じ方向に荷重をかけ50%伸長すると、伸長回復性を阻害する繊維結合点は既に無くなっており、その一方で不織布の構造を支える繊維結合点は維持されているので、50%伸長回復性が向上するものと考えられる。但し、実際には最初に50%伸長した際に伸長回復性を阻害する繊維結合点が解消されたとしても、新たに別の伸長回復性を阻害する繊維結合点が生じる場合があり、50%伸長回復性が必ずしも100%になるとは限らない。このように、本発明では、前記捲縮発現シートを一定方向に例えば20%以上伸長することによって、伸長した方向の例えば20%伸長回復性を向上させることができる。また、前記捲縮発現シートを一定方向に例えば10%以上伸長することによって、伸長した方向の例えば10%伸長回復性を向上させることができる。このように、前記捲縮発現シートを一定方向にA%以上伸長することによって、伸長した方向の例えばA%の伸長回復性を向上させることができる。但し、実用的にはAの値は20〜100程度が好ましい。
【0025】
次に、前記繊維ウエブがエラストマー成分を有する繊維を1〜40%含む場合の効果について考察する。まずエラストマー成分が接着成分でない場合を想定すると、前記捲縮発現シートを一定方向に例えば50%伸長することによって、エラストマー成分を有する繊維の繊維長が伸びる結果となり、一部の本来伸長回復性を阻害するはずの繊維交点は解消されずに、不織布の構造を支える繊維交点として残留することが考えられる。そこで、伸長回復性の向上効果と共に、例えば50%伸長時の引張強度も向上する効果が得られる。また、エラストマー成分が接着成分である場合を想定すると、繊維交点がゴムライクになり50%以上の伸長に対して、その繊維交点を形成する繊維同士の交差角度に弾力性が生じるので、不織布全体が伸縮し易くなり、一部の本来伸長回復性を阻害するはずの繊維交点は解消されずに、例えば50%伸長回復性の向上と共に50%伸長時の引張強度も向上する効果が得られる。
【0026】
本願発明によって得られる伸縮性不織布の面密度は30〜200g/mが好ましく、50〜120g/mがより好ましい。30g/m2未満では耐久性に劣る場合があり、200g/mを超えるとソフト性が低下する場合がある。
【0027】
本発明によって、製造ライン巾を大きくすることなく、或いは製造ラインによる制約をできる限り減少することができ、しかも簡易な手段で伸長回復率が向上した伸縮性不織布を提供することが可能となった。
【0028】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(試験方法)
50%伸長時の引張強度はJIS L1096−1999(一般織物試験方法)に記載される、8.12.1A法(ストリップ法)に準じて測定した。ただし、試験片の巾は5cm、長さ20cm、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分とした。
【0030】
伸長回復率は1096−1999(一般織物試験方法)に記載される、8.12.1A法(繰返し定速定伸長法)に準じて測定した。ただし、試験片の巾は5cm、長さ20cm、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分とした。また、50%伸ばした後同じ速度で元の位置まで戻し、繰返し回数は1回のみとして、試験片5枚の平均値を用いて、50%伸長回復率とした。
【0031】
(実施例1)
潜在捲縮性繊維として2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、サイドバイサイド型で第1樹脂成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、第2樹脂成分は変性ポリエステル樹脂)100質量%からなる原料繊維をカード機を使用して、一方向繊維ウエブ(パラレル繊維ウエブ)を作製した。次いで、この繊維ウエブを80メッシュの金網コンベアーの上にコンベアーの進行方向と繊維ウエブの繊維配向(たて方向)とが一致するように載置した。次いで、孔径が0.13mm、孔間隔が0.6mmで直線状にノズル孔が配列されたノズルを用いて、繊維ウエブの上方から繊維ウエブ向けて、ノズル内圧力3MPaにて柱状水流を噴射した。次いで、繊維ウエブを反転して繊維ウエブの反対面にも同様にして、ノズル内圧力3MPaにて2回目の柱状水流を噴射して、その後120℃に保持された熱風循環型ドライヤーの中で乾燥させて交絡シートを形成した。次いで、交絡シートのたて方向とよこ方向に捲縮が十分に発現できるように、交絡シートを表面抵抗の少ないシート上に載置したまま、145℃に保持された熱風循環型ドライヤーの中に挿入して、30秒間加熱処理することによって、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させて、捲縮発現シートを得た。次いで、捲縮発現シートの繊維配向(たて方向)の方向に荷重をかけ元の長さに対して50%分だけ伸長しその後荷重を除き伸長が限界まで回復するのを待ち伸縮性不織布1を得た。次いで、伸縮性不織布1の繊維配向(たて方向)の方向に更に元の長さに対して50%分だけ伸長しその後荷重を除き伸長が限界まで回復するのを待ち伸縮性不織布2を得た。次いで、伸縮性不織布2の繊維配向(たて方向)の方向に更に元の長さに対して50%分だけ伸長しその後荷重を除き伸長が限界まで回復するのを待ち伸縮性不織布3を得た。得られた伸縮性不織布1〜3及び捲縮発現シートの評価結果を表1に示す。なお、伸長回復率の値及び50%伸長時の強度は、たて方向の値とする。
【0032】
(実施例2)
実施例1において、潜在捲縮性繊維として2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、サイドバイサイド型で第1樹脂成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、第2樹脂成分は変性ポリエステル樹脂)95質量%及び接着性繊維として2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、芯鞘型で芯成分は融点110℃の変性ポリエステル樹脂、鞘成分は融点160℃のポリエステルエラストマー樹脂)5質量%からなる原料繊維を用いたこと以外は実施例1と同様にして伸縮性不織布1〜3を得た。得られた伸縮性不織布1〜3及び捲縮発現シートの評価結果を表1に示す。なお、伸長回復率の値及び50%伸長時の強度は、たて方向の値とする。
【0033】
(実施例3)
実施例1において、潜在捲縮性繊維として2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、サイドバイサイド型で第1樹脂成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、第2樹脂成分は変性ポリエステル樹脂)90質量%及び接着性繊維として2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、芯鞘型で芯成分は融点110℃の変性ポリエステル樹脂、鞘成分は融点160℃のポリエステルエラストマー樹脂)10質量%からなる原料繊維を用いたこと以外は実施例1と同様にして伸縮性不織布1〜3を得た。得られた伸縮性不織布1〜3及び捲縮発現シートの評価結果を表1に示す。なお、伸長回復率の値及び50%伸長時の強度は、たて方向の値とする。
【0034】
(実施例4)
実施例1において、潜在捲縮性繊維として2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、サイドバイサイド型で第1樹脂成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、第2樹脂成分は変性ポリエステル樹脂)80質量%及び接着性繊維として2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、芯鞘型で芯成分は融点110℃の変性ポリエステル樹脂、鞘成分は融点160℃のポリエステルエラストマー樹脂)20質量%からなる原料繊維を用いたこと以外は実施例1と同様にして伸縮性不織布1〜3を得た。得られた伸縮性不織布1〜3及び捲縮発現シートの評価結果を表1に示す。なお、伸長回復率の値及び50%伸長時の強度は、たて方向の値とする。
【0035】
(実施例5〜8)
実施例1〜4において、交絡シートをフローグラスのシート上に載置して、170℃に保持された熱風循環型ドライヤーの中に入れたこと以外は実施例1〜4と同様にして、実施例5〜8の伸縮性不織布1〜3を得た。得られた伸縮性不織布1〜3の評価結果を表2に示す。なお、伸長回復率の値及び50%伸長時の強度は、たて方向の値とする。
【0036】
(比較例1、5及び参考例2、3、4、6、7、8)
実施例1、5において得られた捲縮発現シートを比較例1、5とする。また、実施例2、3、4、6、7、8において得られた捲縮発現シートを参考例2、3、4、6、7、8とする。また、これらの比較例及び参考例の評価結果を表1及び表2に示す。なお、伸長回復率の値及び50%伸長時の強度は、たて方向の値とする。
【0037】
表1

【0038】
表2

【0039】
表1及び表2の結果から明らかなように、実施例1〜8の伸縮性不織布1〜3は50%伸長時の強度がそれぞれ比較例1、5又は参考例2、3、4、6、7、8の捲縮発現シートの値と同等以上であるにもかかわらず、伸長回復率はこれらの比較例又は参考例の捲縮発現シートの値よりも著しく大きくなっている。また、実施例1〜8において、伸縮性不織布1を更に繰返し伸長して得た伸縮性不織布2及び3は、更に伸長回復性の値が大きくなり向上していることが認められる。また、エラストマー樹脂を含む接着性繊維を使用した実施例2〜4の伸縮性不織布は、接着性繊維を使用しない実施例1の伸縮性不織布よりも伸長回復率はやや低下するものの、50%伸長時強度は著しく向上している。同様に、エラストマーを含む接着性繊維を使用した実施例6〜8の伸縮性不織布は、接着性繊維を使用しない実施例4の伸縮性不織布よりも伸長回復率はやや低下するものの、50%伸長時強度は著しく向上している。また、エラストマーを含む接着性繊維を使用した実施例2、3の伸縮性不織布1〜3は、接着性繊維を使用しない比較例1の捲縮発現シートに対して伸長回復率は同等以上であり且つ50%伸長時強度は著しく向上している。同様に、エラストマーを含む接着性繊維を使用した実施例6、7の伸縮性不織布2〜3では、接着性繊維を使用しない比較例5の捲縮発現シートに対して伸長回復率は同等以上であり且つ50%伸長時強度は著しく向上している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜在捲縮性繊維を主体とする繊維ウエブに、高圧水流を作用させて繊維同士を交絡させ、次いで熱収縮処理を行い前記潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、次いで一定方向に10%以上伸長することを特徴とする伸縮性不織布の製造方法。
【請求項2】
前記潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、次いでたて方向に50%以上、及び/又はよこ方向に50%以上伸長することを特徴とする請求項1に記載の伸縮性不織布の製造方法。
【請求項3】
一定方向に10%以上伸長した後に、更に一定方向に10%以上伸長する工程を繰り終えし行うことを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮性不織布の製造方法。
【請求項4】
前記繊維ウエブがエラストマー成分を有する繊維を1〜40%含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の伸縮性不織布の製造方法。
【請求項5】
前記繊維ウエブが接着性繊維を1〜40%含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の伸縮性不織布の製造方法。

【公開番号】特開2006−63496(P2006−63496A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249631(P2004−249631)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】