説明

伸縮性化学防護材料

選択的浸透性化学防護フィルムと弾性繊維製品とを含む伸縮性化学防護材料が述べられる。さらに、伸縮性化学防護材料を生産する方法及びそれを使用する方法が述べられる。これらの方法から作製された材料は改良された屈曲耐久性を有することができる。これらの材料から作製された衣服は改良された改良された熱損失を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伸縮性化学防護材料に関し、並びに耐久性及び低熱ストレスの化学防護衣服に関する。化学防護衣服は、化学及び生物材料を有意に制限して水蒸気を浸透する選択的浸透性フィルムを含む伸縮性化学防護から生産される。
【背景技術】
【0002】
化学及び生物薬品からの様々なレベルの脅威が多数の技術に基づく化学防護衣服を生み出す。例えば、最もレベルが高い化学及び生物課題から防護を達成するために、衣服は不浸透性の化学防護材料から形成されてよく、その不浸透性の化学防護材料は、毒物が材料を通り抜けて着用者の体の中まで届くことを防止する。同様に、これらの不浸透性材料は非通気性であり、水蒸気が不浸透性材料を通り抜けることや水蒸気が着用者の体から逃げることを防止する。吸着材料、例えば、活性炭ベースの材料から形成される防護衣服は、材料に触れた毒物を吸着する。吸着材料は毒物を吸着する能力が限定的である。毒物を吸着するこの能力は、環境に存在する非毒物の化学物質の見境いのない吸着によって、すぐに消耗してしまう。また、防護衣服は、液体状及び気体状の化学物質が防護衣服を通過することを有意に抑止する選択的浸透性材料から作製されてもよく、一方では、水蒸気を衣服を通り抜けて通過させて、着用者の体から水蒸気を逃がすことを可能にさせる。
【0003】
防護衣服は、度々、予測される課題の組み合わせに対して着用者の防護を提供する複数の層を有するように設計される。個々の層は好ましい特性の要求に答えるように選択されて、複数層の防護材料に導入されて、その後、その防護材料によって衣服が形成される。複数層の防護材料は、度々、厚いか、及び/又は剛性である。結果的に、これらの材料から形成される防護衣服は、分厚く、剛性であり、及び/又は体に対するフィット感がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
体にフィットするボディースーツを含む化学防護スーツが述べられる。体にフィットするボディースーツは、接着剤によって結合される選択的に浸透する化学防護フィルムと弾性繊維製品とを含む伸縮性化学防護積層体を含む。伸縮性化学防護積層体は、例えば、マスタードガス(HD)、アクリロニトリルのような毒素に対して浸透性が低い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態として、体にフィットするボディースーツは、良好な化学防護と低熱ストレスとの両方を提供する。例えば、伸縮性化学防護衣服は、35℃及び60%RHで100W/m2超のように高熱損失性を有して、そして、耐久性のある化学防護を提供する。
【0006】
さらに、良好な回復性を有しながら高伸長度を有する伸縮性化学防護積層体を形成するために、弾性繊維製品に剛性のある選択的浸透性化学防護フィルムを積層する方法が本明細書において述べられる。
【0007】
別の実施形態においては、剛性のある選択的浸透性化学防護フィルムから、耐久性のある化学防護積層体を生産する方法が更に述べられて、そして、積層体は、屈曲及び洗濯後に化学気相に対して低浸透性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、伸縮性積層体の略断面図である。
【図2】図2は、伸縮性積層体のフィルムの略断面図である。
【図3】図3は、伸縮性積層体のフィルムの略断面図である。
【図4】図4は、防護スーツの略図である。
【図5】図5は、体にフィットする防護スーツの略図である。
【図6】図6は、体にフィットする防護スーツの上に着用した繊維製の非化学防護のユニフォームの略図である。
【図7】図7は、積層体の断面の光学顕微鏡写真である。
【図8】図8は、積層体の断面の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図を参照すると、伸縮性化学防護材料から作製される、体にフィットするボディースーツ(図5)を含む高熱損失の化学防護スーツが述べられる。
【0010】
図1は、体にフィットする衣服(図5)を作製する場合に、使用されるのに適する積層体(10)形態の伸縮性化学防護材料についての断面略図を示す。伸縮性化学防護積層体(10)は、接着剤(13)によって結合される選択的に浸透する化学防護フィルム(11)と弾性繊維製品(12)とを含む。本明細書で用いることに関して、本明細書で述べられる方法にしたがって試験をした場合に、伸縮性化学防護積層体(10)が、約1000g/m2/day超の水蒸気透過率を有し、そして、6μg/cm2 未満のアクリロニトリルの浸透率を有するか、20μg/cm2未満のHD浸透率を有するか、又は両方を有する場合に、伸縮性化学防護積層体(10)は選択的浸透性であると考えられる。
【0011】
選択的浸透性化学防護フィルムはポリマーを含み、そのポリマーは、有意に、有毒であるか又は有害である化学及び生物の毒素を抑止して、一方では、水蒸気の浸透を提供して、フィルムを含む衣服の着用者に対して熱ストレスを軽減する。選択的浸透性化学防護フィルム(11)は、商標名GoreTMChempakTM-Slectively Permeableの布帛で販売されている積層体で用いられるフィルムを含んでよい。また、これらの用途に適することができるポリマーは、例えば、U.S. Pat. No. 6,395,383号で述べられているようにポリアミンポリマーであり、U.S. Pat. Pub. No.2004/0259446号で述べられているようにスルホン化芳香族ポリマーであり、それらの文献は、これによって本明細書に援用される。さらに、これらの用途に適することができるポリマーは、商標名NafionTMで販売されて、U.S. Pat. No.4,515,761号で述べられている材料を含むフッ素化イオノマーであり、U.S. Pat. Publication 2007/0190166号で述べられているようなポリマーに基づいたキトサンであり、U.S. Pat.No.6,792,625号で述べられているような材料に基づいたセルロースアセテートであり、U.S. Pat. No.5,869,193号で述べられているようなポリマーに基づいたポリビニルアルコールであり、WO Pat. Publication No.03/037443号で述べられているようなPVOHとPEIとのブレンド材料であり、U.S. Pat. Pub. 2006/0205300号で述べられているようなポリウレタンとPEIとのブレンドポリマーであり、そして、WO Publication No.03/068010号で述べられているようなエチレンビニルアルコール含有ポリマー及びコポリマーである。
【0012】
選択的浸透性化学防護フィルム(11)は2層以上含んでよく、例えば、図2及び3で示されているように、複数層のコンポジット材料でよい。それらの層は、例えば、水蒸気浸透性のような特性を提供するために選択されて、化学防護フィルムに、通気性、例えば、洗濯耐久性, 屈曲耐久性のような耐久性を提供して、さらに、亀裂からの耐久性を提供して、それによって、化学物質の浸透を軽減する。多孔性又は非多孔性の支持層は、選択的に浸透性である化学防護層の片面又は両面に提供されてよい。多孔性支持層は、例えば微小孔性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のような微小孔性支持層を含んでよい。1つの実施形態として、選択的浸透性化学防護フィルム(11)は、図3の断面図によって例示されている複数層のコンポジット材料を含み、選択的浸透性ポリマー層(1)のいずれか一方の側に2つの多孔性支持層(2)を含む。選択的浸透性ポリマーの一部分は、多孔性支持層の多孔部内に存在する。別の実施形態として、複数層のコンポジット材料を含む選択的浸透性化学防護フィルムの断面図は図2に示される。複数層のコンポジット材料は、選択的浸透性ポリマー層(3)の片側にコンポジット支持層(7)を含み、そして、選択的浸透性ポリマー(3)は、もう一方の片側で、例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)支持材料のような多孔性支持層(4)に少なくとも部分的に組み込まれる。図2に示されるように、コンポジット支持層(7)は、例えば、ポリウレタンのような非多孔性層(6)によって少なくとも部分的に浸透されるか、又はコーティングされる多孔性層(5)を含んでよく、その多孔性層(5)は選択的浸透性層(3)と相互作用をする。
【0013】
1つの実施形態として、伸縮性化学防護材料は、剛性である選択的浸透性化学防護フィルム(11)から形成されて、その剛性である選択的浸透性化学防護フィルム(11)は、本明細書で述べられるStiffness試験方法にしたがって試験する場合に、約20g以上の剛性を有する。他の実施形態としては、本明細書で述べられるStiffness試験方法にしたがって試験すると、選択的浸透性フィルムは、約3Og超の剛性か、約5Og超の剛性か、又は約7Og超の剛性を有する。本明細書で述べられるElongation and 回復度の試験方法にしたがうと、伸縮性材料で用いられる選択的浸透性化学防護フィルム(11)は、伸縮性材料に組み込まれる前は、4lbfで約10%未満の伸長度を有するか、又は4lbfで約5%未満の伸長度を有する。
【0014】
伸縮性化学防護材料を形成するのに適する繊維製品は弾性であり、本明細書で述べられるElongation and 回復度の試験方法にしたがうと、少なくとも約95%の回復性を有しながら、4lbfで約100%超の伸長度を有するか、又は4lbfで約200%超の伸長度を有する。適切な弾性繊維製品は、弾性ニット、及び弾性布帛又は弾性不織布を含む。弾性繊維製品は、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、スパンデクッス、コットン、商標名Lycra, Elaspan,Dorlastan, Linelで販売されている繊維、及びそれらの同類物、並びにそれらの組み合わせのような合成又は天然繊維を含んでよい。例えば、図1で示されている材料のような伸縮性化学防護積層体を作製する1つの方法は、選択的浸透性化学防護フィルム(11)の表面に接着剤(13)をプリンティングする工程、弾性繊維製品(12)を引き伸ばす工程、及び選択的浸透性化学防護フィルム(11)と引き伸ばされた弾性繊維製品(12)とを結合する工程を含む。その方法における更なる工程としては、選択的浸透性化学防護フィルムを引き伸ばされた弾性繊維製品に結合させるために接着剤を充分に硬化させることが挙げられる。弾性繊維製品を引き伸ばすために用いられた荷重を取り除いて、引き伸ばされた弾性繊維製品(12)を緩和させて、波形の選択的浸透性化学防護フィルム(11)を有する伸縮性化学防護材料(10)を形成する。
【0015】
接着剤は、特に限定されないが、例えば、U.S. Pat. No.5,209,969号(Crowtherによる)に開示されているカルバミン酸塩/ポリウレタン接着剤のような熱硬化接着剤、例えば、U.S. Pat. No.4,532,316号(Hennによる)に開示されているような水分硬化接着剤が挙げられ、これら2つの文献は引用によって本明細書に完全に組み込まれる。そして、さらに、接着剤は、特に限定されないが、Bostik Inc. 11320 Watertown Plank Road Wauwatosa, Wl 53226から市販されている水分硬化接着剤、R.S. Hughes Company, 2605-F Lord Baltimore Dr., Woodlawn, MD 21244から市販されている3M接着剤が挙げられる。代替的には、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンのようなホットメルト接着剤も用いてよい。接着剤(13)は、例えば、間隔が空いた構造形態の接着ドットのように不連続的に適用されてよい。用語「ドット」は、例えば、円形、ピラミッド形、ダイヤモンド形、円筒形、四角形、ダッシュ形等のような形状を含むことを意味する。選択的浸透性化学防護フィルムが2Og超の剛性を有する場合、接着ドット間隔は、好ましくは約400um超であるか、約500um超であるか、約700um超であるか、約800um超であるか、約1000um超であるか、約1500um超であるか、又は約2000um超である。この発明の目的のために、ドット間隔は、あるドットのエッジから最も近い近接のドットまで測定される。
【0016】
一般的には、接着剤被覆の割合は、選択的浸透性化学防護フィルムの表面の約50%未満である。また、接着剤の被覆率は、選択的浸透性化学防護フィルムの表面の約40%以下か、約30%以下か、約20%以下か、約10%以下か、又は約7%以下である。
【0017】
体にフィットするボディースーツで利用するのに適切であるように、述べられた方法によって形成された伸縮性化学防護積層体は4lbfで30%以上の伸長度を有し、好ましくは、4lbfで40%以上の伸長度を有するか、4lbfで50%以上の伸長度を有するか、4lbfで60%以上の伸長度を有するか、又は4lbfで70%以上の伸長度を有し、そして、4lbf荷重を取り除いた後に約80%超の回復度を有する。高伸長度は着用者の動きやすさに対して重要項目であって、結果的に、体の形状及びサイズの範囲にわたって体にフィットするスーツを提供する。これらの方法によって作製された、選択的浸透性化学防護フィルムと弾性繊維製品とを含む積層体は、本明細書で述べられるElongation and 回復度の試験にしたがってテストをすると、4lbfで少なくとも約30%の伸長度を有するか、4lbfで約40%超の伸長度を有するか、4lbfで約50%超の伸長度を有するか、4lbfで約60%超の伸長度を有するか、又は4lbfで約70%超の伸長度を有する。また、本明細書で述べられるElongation and 回復度の試験にしたがってテストをすると、選択的浸透性化学防護フィルム及び弾性繊維製品を含む積層体は、4lbfで約80%超の伸長度を有するか、4lbfで約90%超の伸長度を有するか、4lbfで約100%超の伸長度を有するか、又は4lbfで約120%超の伸長度を有して形成されてよい。また、積層体は、初期長の約90%超の回復度を有するか、又は初期長の約95%超の回復度を有して形成されてよい。
【0018】
1つの実施形態において、方法は、20g超の剛性度を有する剛性であって選択的浸透性である化学防護フィルムから伸縮性化学防護積層体を作製するために提供される。選択的浸透性化学防護フィルムは、接着剤によって弾性繊維製品に積層されて、その接着剤は、ドット間隔が約400um以上になるように適用されて、伸縮性化学防護積層体を形成する。Stiffness、Elongation及び回復度について、本明細書において提供される試験方法にしたがってテストをすると、積層体は、4lbfで約30%以上の平均伸長度を有するか、又は約50%以上の平均伸長度を有し、4lbf荷重を解放した後には、約80%超の回復度を有する。
【0019】
他の方法として、約5Og超又は約7Og超の剛性を有する選択的浸透性化学防護フィルムは、ドット間隔が約400um以上であるように適用される接着剤によって弾性繊維製品に積層される。Stiffness、Elongation及び回復度について、本明細書において提供される試験方法にしたがってテストをすると、伸縮性積層体は、4lbfで30%以上の平均伸長度を有するか又は約50%以上の平均伸長度を有して形成される。
【0020】
更なる実施形態として1つの方法が提供されるが、その方法においては、Stiffness、Elongation及び回復度について、本明細書において提供される試験方法にしたがってテストをすると、5Og超又は約7Og超の剛性を有する選択的浸透性化学防護フィルムが、ドット間隔が約600um以上であるように適用される接着剤によって弾性繊維製品に積層されて、4lbfで約40%以上の平均伸長度を有するか、4lbfで50%超の平均伸長度を有するか、又は4lbfで70%超の平均伸長度を有する伸縮性積層体が提供される。
【0021】
別の方法も提供されて、その方法においては、Stiffness、Elongation及び回復度について、本明細書において提供される試験方法にしたがってテストをすると、5Og超又は約7Og超の剛性を有する選択的浸透性化学防護フィルムが、ドット間隔が約800um以上であるように適用される接着剤によって弾性繊維製品に積層されて、4lbfで約50%以上の平均伸長度を有するか、4lbfで60%超の平均伸長度を有するか、4lbfで70%超の平均伸長度を有するか、又は4lbfで80%超の平均伸長度を有する伸縮性積層体が提供される。
【0022】
更なる方法としては、Stiffness、Elongation及び回復度について、本明細書において提供される試験方法にしたがってテストをすると、5Og超又は約7Og超の剛性を有する選択的浸透性化学防護フィルムが、ドット間隔が約1500um以上であるように適用される接着剤によって弾性繊維製品に積層されて、4lbfで約50%以上の平均伸長度を有するか、4lbfで60%超の平均伸長度を有するか、4lbfで80%超の平均伸長度を有するか、4lbfで100%超の平均伸長度を有するか、又は4lbfで120%超の伸長度を有する伸縮性積層体が提供される。
【0023】
本明細書において述べられる、伸縮性化学防護積層体及び選択的浸透性化学防護フィルムは、フィルムの中を通る有害な化学物質の透過を有意に抑止して、そして、典型的には、化学的に防護する活性化カーボンベースの吸着材料よりも有意に小さいBET表面積を有する非吸着性のものである。本明細書で述べられる伸縮性積層体及び選択的浸透性フィルムは、50m2/g未満のBET表面積を有するか、25m2/g未満のBET表面積を有するか、10m2/g未満のBET表面積を有するか、5m2/g未満のBET面積を有するか、又は2m2/g未満の面積を有する。典型的には、カーボンベースの化学防護スーツは約200又は300m2/g超のBET表面積を有する。
【0024】
伸縮性化学防護積層体は、驚くべきことに、非伸縮化学防護積層体よりも高い屈曲耐久性を有することが見出された。非伸縮性化学防護積層体よりも伸縮性化学防護積層体の方がGelbo屈曲後の化学気相の浸透が低いことが実証された。化学防護積層体は、伸縮性化学防護積層体として形成される場合、有毒な化学気相の貫通が少なくとも25パーセント低いか、又は少なくとも50パーセント低い状態で形成される。1つの実施形態として、本明細書で述べられるGelbo Flex試験方法にしたがってテストされる場合に、1万回のGelboサイクル後、約6μg/cm2未満のアクリロニトリルの浸透を有する伸縮性化学防護積層体が提供される。この方法にしたがって試験される場合に、伸縮性化学防護積層体は、1万回のGelboサイクル後、約3μg/cm2未満のアクリロニトリルの浸透を有するか、又は約2μg/cm2未満のアクリロニトリルの浸透を有する。
【0025】
驚くべきことに、伸縮性化学防護積層体は、また、本明細書で述べられるGelbo Flex試験方法にしたがってテストされる場合に、1万回のGelboサイクル後、約20μg/cm2未満のマスタードガス(HD)の浸透を有することが見出された。この方法にしたがって試験される場合に、1万回のGelboサイクル後、耐久性のある伸縮性化学防護積層体は約4μg/cm2未満のHDの浸透を有するか、約3μg/cm2未満のHDの浸透を有するか、又は約2μg/cm2未満のHDの浸透を有して形成されてよい。
【0026】
このように、本明細書で述べられる1つの実施形態は、選択的浸透性化学防護材料を作製する方法であり、その選択的浸透性化学防護材料についての屈曲後の有毒な化学気相の浸透は低くなる。その方法は、20g超又は5Og超の剛性を有する剛性のある選択的浸透性化学防護フィルムと、弾性繊維製品とを提供する工程と、本明細書で述べられる方法によって、伸縮性化学防護積層体を形成するためにそれらを接合工程とを含み、その方法において、伸縮性化学防護積層体は、4lbfで少なくとも30%の伸長度を有して、かつ、少なくとも80%の回復度を有して形成される。この方法によって形成された材料は選択的浸透性があり、少なくとも1万回のGelboサイクルでアクリロニトリル又はHDの浸透性に対して試験を実施した後、その材料は非伸縮性積層体として提供される選択的浸透性材料よりも、アクリロニトリル又はHDの浸透が少なくとも25パーセント又は少なくとも50%の割合で少ない。
【0027】
別の実施形態としては、伸縮性化学防護積層体は、洗濯後、化学気相の浸透に対して高い耐性を有する。Laundry Procedureを実施した後にChemical Permeation試験方法にしたがってテストすると、伸縮性化学防護積層体は、16回の洗濯サイクル後、約20μg/cm2未満のHDの浸透性を有する。なお、Laundry Procedure及びchemical Permeation試験方法の両方は、本明細書に述べられている。伸縮性化学防護積層体は、16回の洗濯サイクル後、約4μg/cm2未満のHDの浸透性を有することが好ましい。
【0028】
本発明の伸縮性化学防護積層体は、驚くべきことに、同一の選択的浸透性化学防護フィルムを含んで同様に構成される非伸縮化学防護積層体と比較した場合に、より低い音の大きさの値を有する。1つの実施形態として、本明細書で述べられるNoise Measurement試験にしたがってテストを行うと、伸縮性化学防護積層体は、約5ソーン以下か、又は約3ソーン以下のノイズ測定値を示し、非伸縮化学防護積層体と比較して、ソーンの単位で25%超又は50%超の軽減を示す。
【0029】
別の実施形態として、体にフィットするボディースーツは、剛性である、選択的浸透性化学防護フィルムを含む伸縮性化学防護積層体から構成される。驚くべきことに、積層体を含む、体にフィットするボディースーツを着用すると、着用者の熱損失は、それだけ着用しようが、ユニフォームの下に着用しようが有意に改良され得る。このようにして、1つの実施形態として、特に、高温、かつ、低湿条件下で試験をする場合に、改良された熱損失を提供する体にフィットするボディースーツを含んだ低熱ストレスの化学防護スーツが形成される。高伸長度を有する伸縮性積層体は、じかに肌につけて体にフィットすることを保証して、熱損失を最大にして、着用者が長時間着用するのに充分な安らぎを提供する。ボディースーツは、例えば、仕事着又はつなぎの作業着のようなワンピーススーツとして設計されるか、又はツーピーススーツとして設計されよく、ツーピーススーツについては、1つのピースは着用者の胴及び腕を覆って、もう1つのピースは着用者の体の下半身及び足を覆う。ボディースーツは、例えばユニフォーム、又は化学若しくは生物の脅威に対して、あっても少ししか防護しない衣服のような外側の衣服を着用するか、着用しない状態で、低熱ストレス化学防護スーツとして着る。図5は、外側の衣服がない状態で着用したツーピースの体にフィットするボディースーツ(14)を示す。図6は、体にフィットするボディースーツ(14)と、その上に着用した非化学防護ユニフォーム(15)とを示す。
【0030】
1つの実施形態として、低熱ストレス化学防護スーツが提供されて、その低熱ストレス化学防護スーツは体にフィットするボディースーツを含み、体にフィットするボディースーツは、本明細書で述べられるHeat Loss Measurementの方法にしたがって試験をすると、35℃及び60%の相対湿度(RH)の条件下で、約140W/m2超の熱損失を有するか、又は約150W/m2超の熱損失を有する。
【0031】
別の実施形態としては、低熱ストレス化学防護スーツが提供されて、その低熱ストレス化学防護スーツは、図6で示されるように、非化学防護ユニフォーム(15)の下に着用した体にフィットするボディースーツ(14)を含む。ユニフォームは、例えば330D CorduraTM布帛のような高エアー浸透性布帛を含んでよく、市販されているArmy Combat Uniform(ACU)でもよい。ワンピーススーツ又はツーピーススーツとして提供される、体にフィットするボディースーツは、ユニフォームと組み合わせて着用する場合に、本明細書で述べられる、Heat Loss Measurementの方法にしたがって試験をすると、35℃及び60%RHの条件下で、約100W/m2超の熱損失を有するか又は約130W/m2超の熱損失を有し、代替的には、45℃及び15%RHの条件下で、約150W/m2超の熱損失を有するか、約200 W/m2超の熱損失を有するか、又は約240W/m2超の熱損失を有する。
【0032】
本発明の範囲を限定する意図はなく、次の実施例は、本発明がどのように作製されて使用されるかを示す。本発明の特定の実施形態は、本明細書において例示されて述べられるが、本発明はそのような例示及び記述に限定されるべきではない。
【0033】
試験方法
剛性試験
「Standard 試験 Method for Stiffness of Fabric by the Blade/スロット Method」の題名のASTM試験方法のD6828が、フィルムの剛性を測定するために用いられた。この方法は、特定のギャップ全体に渡って4"×4"の面積の平面材料を配置する工程を含み、その後は材料上のブレードにプレスをかける工程を含み、材料をギャップの中に移動させる。
【0034】
この特許の目的のために、次の試験パラメーターを用いた。スロット幅を0.25インチで維持した。ビームは100グラムである。典型的な試験においては、エッジがスロットと垂直になるようにサンプルを装置上に配置する。試験を開始して、ビームを低くさせて、試験テーブル上でサンプルに力をかけてスロットの中を通過させる。ピーク耐性数を表示して記録する。その後、同じサンプルをひっくり返して180度回転させる。この新しい構造形態において、再び、試験を開始して、サンプルに力をかけてスロットの中を通過させる。第2の耐性数を記録する。サンプルを90度回転させて手順を繰り返して(その場合に、近接のエッジはスロットに対して垂直である。)、2つ以上の数を算出する。サンプルの全剛性数を算出するために4つの値を足し算する(非対称性及び指向性を考慮する。)。本明細書において報告された数は、同様な少なくとも3つのサンプルのグラム単位の個々の測定値の平均の全剛性数である。
【0035】
伸長度及び回復度試験
「Standard 試験 Method for Breaking Force and Elongation of Textile Fabrics (Strip Method)」の題名のASTM試験方法のD5035-06を用いて、伸縮積層体の試験サンプルの伸長度及び回復度を測定した。1"幅X6"長の試験サンプルを、試験サンプルを撓み方向に沿って切断した。伸長度を4"長のゲージを用いたInstronTM機械を用いて測定した。伸長度は力をかけたところでのゲージ長の増加の割合(%)として定義された。4lbfの測定値を記録した。%回復度の計算を、荷重を取り除いた後、下記に示される式を用いて実行した。
【0036】
フィルム及び繊維製品の試験サンプルの伸長度を測定するために、サンプルサイズは3"幅x8"長であり、ゲージ長は4"であり、4lbfの伸長度の測定値を記録した。回復度の割合を次のように計算をした。
【0037】
【数1】

【0038】
BET表面積試験
「Standard 試験 Methods for Carbon Black -Surface Area by Multipoint B. ET. Nitrogen Adsorption」の題名のASTMD4820-99を用いて、サンプルの表面積を測定した。Coulter SA3100 Series Surface Area Analyzerを用いた。
【0039】
0.5-1.0グラムのサンプルをサンプルチューブに配置する。その後、サンプルを、ヘリウム散布下で、120分間、110℃で処理をする。最終的な質量を記録した後、サンプルをその分析器に配置する。その分析器において真空下でサンプルを排気する。その後、液体窒素のデユワー瓶をサンプルチューブの周りに配置する。
【0040】
その後、サンプルチューブの圧力を測定しながら、少量の窒素で分析器は脈動する。11ポイントを記録して、0.05-0.20Ps/Po(Ps=サンプル圧、Po =飽和圧)間の5ポイントを付け加えた。このデータを用いて、Brunauer, Emmett及びTeller (BET)計算を用いて、サンプルの表面積を計算した。
【0041】
Gelbo屈曲試験
「Standard 試験 Method for Flex Durability of Flexible Barriers」の題名のASTM F392-93(2004)を用いて試験をした。屈曲テスターを、40℃及び10%相対湿度で維持された環境的に制御されたチャンバーに配置をした。サンプルを10,000ストロークで屈曲した。屈曲行為はねじれの動きに続いて水平の動きから成り、このようにして繰り返し的に、積層体をねじって破砕をする。頻度は毎分45ストロークの割合である。屈曲後の損傷の程度は、本明細書で述べられる対応する化学物質浸透試験に基づいて、屈曲サンプルの化学物質の割合を測定することによって決定される。3" の直径サンプルを、浸透試験のために屈曲サンプルの中心部からカットした。
【0042】
洗濯手順
洗濯手順はウオッシュ/ドライサイクルを含んだ。それらは、フロントローディングウオッシングマシン、また「Milner Washer」として表される24"X24"サイスのサンプルで実行された。ウオッシングマシンに対する明細は、MIL-DTL 32101、段落6.11で確認される。約120°F でアイテムを乾燥することができる任意の市販のドライヤーを用いることができる。16回の洗濯のサイクル後のサンプルについて化学物質浸透試験を実施して、伸縮積層体のウオッシュ/ドライの耐久性を確認した。
【0043】
化学物質浸透試験
初期サンプル、並びに洗濯及びGelbo屈曲サンプルの化学防護性能を決定するために、標準浸透試験方法を用いた。NFPA 1994、October 2007版を用いて、アクリロニトリル気体に対する浸透耐性を評価した。惹起濃度は350ppmであった。伸縮積層体を試験する際に、フィルム側を330D CorduraTMナイロン66布帛 (Style W330dX330d, それはGlen Raven Techniふくらはぎabrics, 1831 North Park Ave., Burlington, NC 27217から市販されている。) で積層して、アクリロニトリル気体に曝した。試験をする位置は屈曲領域の中心部を選択した。名目上0.008インチ厚みの熱可塑性ポリビニリデンフルオライド (PVDF)を含んで、1 5/8インチの外径を有して、1インチの内径を有するガスケットが各々のサンプルの繊維製品に適用されて、ガスケットが試験位置の周りの中心に来るようにした。32O°Fの熱及び圧力を90秒間適用してガスケットをサンプルに固定した。このガスケットの目的は試験用の固定治具とサンプルとの間で充分な封印を可能とすることである。試験時間は、1時間(hr)であった。浸透させるアクリロニトリルの気体を32℃50%RHで1000 ml/minのエア−量で流して、FID検出器 (VIG Industries, Inc., Anaheim, CA より市販されたModel 20)を備えた「Heated Total Hydrocarbon Analyzer」を通過させた。60分間にわたって浸透された累積的な量を報告する。
【0044】
「Permeation and Penetration Testing of Air-Permeable, Semi-Permeable, and Impermeable Materials with Chemical Agents or Simulants (Swatch Testing)」の題名のTest Operating Procedure (TOP) 8-2-501 January 2002版にしたがって、マスタードガス (HD)の浸透性を測定した。試験を、Security and Safety Labs in Rijswijk, The NetherlandsによるTNO Defenceによって実行した。デユアルフローモードを用いた液体投入/気体貫通法を利用した。 エアーを32℃及び80%RHを維持したが、セルの上部と底部の流量は、それぞれ、250ml/min及び300ml/minであった。試薬投入の量は5g/m2の液体HDであった。24時間にわたる試薬の累積的な浸透量を報告する。
【0045】
エアー浸透性試験
ASTM D737-04 「Standard Test Method for Air permeability of Fabrics」を利用した。125Paの圧力差を維持して、そして、布帛を通ったエアーフローの量(リットル/m2.sec)を記録した。
【0046】
熱損失測定
ボディースーツを、Measuring Evaporative Resistance of Clothing Using a Sweating マネキンのASTM F 2370-05の標準試験方法にしたがって試験をした。26個のセンサーを用いて、頭, 胸, 背中、腹, 尻、左右両方の上腕, 下腕、手, もも、ふくらはぎ及び足の部分のマネキン表面温度を測定して制御をした。等温(8.1.1 )及び非等温 (8.1.2) の両方の条件下で、試験手順8.6のMeasurement Option 1 (マネキン電力消費の測定)を用いて、シミュレートした環境条件の範囲にわたって熱損失の値が得られた。
【0047】
これらの特定の試験の特定の手順から次の限界があった。
1.頭、手及び足については、全体の電力消費の測定及び計算から除外をした。これらの領域は発汗する皮膚によって覆われていないのでボディースーツを評価していない。
2.45℃、15%相対湿度の非等温の環境条件に対して、マネキン表面温度を37℃に設定して制御した。
3.これらの試験に対しては蒸発耐性を記録していない。代わりに、計算9.1で述べられるように、発汗領域に対して必要とされる電力、Heとして測定をした。この値は、1.43m2の発汗マネキンの表面積を補正してWatts/meter2(W/m2)として報告される。
【0048】
ノイズ測定
Loudness測定のためのISO標準を用いて、サンプルのノイズを決定した。音の大きさ(ソーン)の計算のためにISO532-1975(E)にしたがった。
【0049】
水蒸気浸透
水蒸気透過率(MVTRs)を、U.S. Pat. No.4,862,730号で述べられている手順を用いて決定した。その手順は、塩としてカリウムアセテートと、耐水性の水蒸気浸透性膜として、開口孔のePTFEとを用いた。これらの膜は、名目上、75%〜80%の多孔度を有して0.2umの平均多孔サイズを有し、およそ0.04mmの厚みを有する。環境は50%の相対湿度で維持した。水浴を23±0.5℃で維持した。試験開始前に、約15分間、塩(ソルト)カップを上部に置いて水浴上でサンプルを調整した。測定中、積層体のニット面を水浴に向けた。MVTRをg/m2/day単位で報告する。
【実施例】
【0050】
実施例
選択的浸透性フィルム
実施例で用いられた選択的浸透性ポリマーコンポジット(SP)フィルムを、共同所有しているMaplesのU.S. Pat.No.6,395,383号の実施例2に実質的にしたがって作製をし、U.S. Pat.No.6,395,383号は、引用によって本明細書に完全に援用される。
【0051】
SPフィルムAは、Blauer Manufacturing Company, inc., Boston, MAから市販されている、ClassIII、Model WZ9430 「Homeland Defender Series Perimeter Suit」で用いられているフィルムと実質的に同じであった。それは、U.S. Pat. No.6,395,383号の図18にしたがって実質的に構成され、その図18においては、空隙がない基板はポリウレタン被覆の微小孔性ePTFE基板を含み、図1で例示されている。
【0052】
SPフィルムBは、U.S. Pat. No.6,395,383号の図16に実質的にしたがって構成されて、図2で例示されている。
【0053】
耐水性である/耐水性であって通気性である(WWB)衣服のための積層体で用いられる、ポリウレタン被覆の微小孔性ePTFE (PU被覆のePTFE)フィルムを、US Pat. No.4,194,041 (Goreによる)及びUS Pat. No.4942214 (Sakhparaによる)の教示に実質的にしたがって作製をした。高密度PTFEフィルムのサンプルを、US Pat.Application No.2005238872号に実質的にしたがって作製した。これらのフィルムの両方をSPフィルムA及びBと比較して試験をした。
【0054】
本明細書で述べられる方法にしたがって、それらのフィルムの曲げ剛性と%伸長度の試験をした。結果を表1で報告する。
【0055】
【表1】

【0056】
SPフィルムA及びBは、実質的に剛性度は高いが、PU被覆ePTFE及び高密度PTFEフィルムと比較してたいへん低い伸長度を有する。
【0057】
伸縮繊維製品
約1.8oz/yd2の質量を有する、Milliken Co. Spartanburg, SC (Style #247579)による、トリコットニットを含有するライクラを用いて、伸縮性化学防護積層体を作製した。ニットは、本明細書で述べられる方法にしたがって試験をすると、4lbfで約100%の伸長度を有して、95%を超える回復度を有した。
【0058】
積層グラビア
様々なドット間隔及び接着剤被覆率を有するグラビアロールを、積層の試作をする上で用いた。それらの特性を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
積層接着剤
次の接着剤を、SPフィルムA、B及びPU被覆ePTFEフィルムを繊維製品に積層するために用いられた。
【0061】
Henn による、U.S. Pat. No4,532,316号に実質的にしたがって作製されるGoreTM 水分硬化接着剤、R. S. Hughes Company,2605-F Lord Baltimore Dr., Woodlawn, MD 21244から購入される3MTMの水分硬化接着剤のGrade TS115 HGS、及びCrowtherによる、U.S. Pat. No.5,209,969号に実質的にしたがって作製されるGoreTMの熱硬化カルバミン酸塩/ポリウレタン接着剤を、積層加工の際に使用するために入手した。
【0062】
比較例1-5及び実施例6-12
伸縮繊維製品、フィルム (PU被覆ePTFE、SPフィルム又はSPフィルムB)及び水分硬化接着剤を含む積層体のサンプルを次のように調製をした。
【0063】
グラビアロールコーティング方法を利用してフィルムのePTFE側に水分硬化接着剤をプリントして、そのフィルムにその水分硬化接着剤を非連続的に提供した。グラビアロールを約120℃の温度までプレヒートして接着剤を溶融した。伸縮繊維製品ニットを、初期長の約2倍になるまでリ−スプーラー 上でプレ伸縮した。そのニットを、フィルムのプリント面に接触させて、一方で、伸縮状態でニットを保持するためには充分なテンションを維持してパッケージを形成した。フィルムとニットとを含有するパッケージを、連続的な方法でニップに導入して、それらを結合させた。ニップロール温度を約50℃に維持し、一方で圧力を約50psiに維持した。ラインスピードは約10feet/minであった。パッケージを、テンションをかけて巻き取りロールで巻き取り、室温条件下で少なくとも2日間硬化させた。
【0064】
伸縮繊維製品、フィルム (PU被覆ePTFE、又はSPフィルム)及び熱硬化接着剤を含む積層体のサンプルを次のように調製をした。グラビアロールコーティング方法を利用してフィルムに熱硬化接着剤をプリントして、そのフィルムの層にその熱硬化接着剤を提供した。グラビアロールを約40℃の温度までプレヒートして接着剤を溶融した。伸縮繊維製品ニットを、初期長の約2倍になるまで、別個独立の工程でリ−スプーラー上でプレ伸縮した。そのニットをフィルムのプリント面に接触させて、一方で、伸縮状態でニットを保持するためには充分なテンションを維持してパッケージを形成した。フィルムと伸縮繊維製品のニットとを含有するパッケージを、連続的な方法でニップに導入して、それらを結合させた。ニップロール温度及び圧力を、それぞれ約180℃及び約65psiに維持した。ラインスピードは約6feet/minであった。
【0065】
本明細書で述べられるElongation and Recovery Test方法を用いて、結果として得られた積層体の伸縮特性を測定した。様々なフィルム及び接着剤タイプに対して、4lbfで測定されたグラビア特性と積層体の伸長とを表3に報告する。4lbf荷重を解放したときに、作製された全ての積層体は80%以上の回復度を有した。典型的な回復度の値は90〜100%であった。
【0066】
【表3】

【0067】
低剛性度を有する、PU被覆ePTFEのフィルムで作製された積層体は、約70%超の伸長度を有する (比較例1-2)。360μmのドット間隔を有する、SPフィルムAで作製された積層体は約23%の伸長度を有する(比較例5)。約220μmのドット間隔を有する、SPフィルムAで作製された積層体は、熱硬化性接着剤を用いて約20%の伸長度を有し、水分硬化性接着剤を用いて約32%の伸長度を有する(それぞれ、比較例3及び4)。
【0068】
それらデータは、50%超の伸長度を有する伸縮性積層体は、360μm超のドット間隔を利用して伸縮性繊維製品に積層された場合に、20超の剛性度を有するフィルムで構成されてよい。
【0069】
比較例5及び実施例12の積層体の断面光学顕微鏡写真を図7及び8に示す。 1500μmのドット間隔を有する、実施例12にしたがって作製された積層体は、ドット間隔が360μmである、比較例5にしたがって作製された積層体と比較して、SPフィルムの有意な波形を示す。
【0070】
伸縮積層体のMVTR
本明細書で述べられる手順にしたがって、実施例5及び7の伸縮積層体の水蒸気浸透速度(MVTR)を測定した。その値は、それぞれ約5930及び約5470g/m2/dayであった。
【0071】
熱損失測定の結果
ボディースーツは、実施例8に実質的にしたがって形成された伸縮性化学防護積層体から構成された。ボディースーツ(図 5)は、マネキンの胴及び腕を覆うロングスリーブトップと、マネキンの足を覆うボトムとを含むツーピーススーツとして形成された。Heat Loss Measurementについて、本明細書で述べられる試験にしたがって、保温性であって、発汗性であって、かつ、歩行するマネキンを用いてボディースーツの熱損失の試験を行った。2m/secの風速を使用した。
【0072】
異なる3つの形態で試験をした。
1)図5で示されるそのもののボディースーツは実施例8の伸縮積層体から構成された。ボディースーツは、積層体のニット面が着用者の体に面するように構成された。
2)上記1)のようなボディースーツであって、BDU.COM,1065 Executive Parkway Drive STE 201, St. Louise, MO 63141から市販されている、 両方ともUniversal Camo Pattern である、 Nylon/Cotton Ripstop ACU Coat (パーツナンバー F545921394)及びNylon/Cotton Ripstop ACU Pants(パーツナンバー F520921394)から成る陸軍戦闘服(ACU)を、図6で示されるようにそのボディースーツの上に着用した、ボディースーツ。
3)上記1)のようなボディースーツであって、ACUと同様なデザインを有するが、約4.5oz/yd2 330D CorduraTMナイロン66布帛(Glen Raven Technical Fabrics, 1831 North Park Ave., Burlington, NC 27217から市販されている、Style W330dX330d)から作製された戦闘服をボディースーツの上に着用した(図6)、ボディースーツ。
【0073】
本明細書で述べられるエアー浸透性試験によって測定されるように、ACUで用いられる布帛は、約 57±2リットル/cm2/minの低エアー浸透性を有した。330D CorduraTM布帛のエアー浸透性は223±46リットル/cm2/minであった。熱損失性能の結果は表4に示される。
【0074】
図4(16)で例示される、比較例である、非伸縮の体にフィットする選択的浸透性スーツ (Blauer Manufacturing Company, inc., Boston, MAから市販されている、Class III, Model WZ9430「Homeland Defender Series Perimeter Suit」)もまた、本明細書で述べられる方法にしたがって、熱損失の試験を行った。2つの異なった環境条件下の熱損失性能の結果を表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
外側の衣服(ユニフォーム)の有するか、又は有しない伸縮ボディースーツは、比較例の非伸縮の体にフィットしない選択的浸透性スーツと比較して、より大きな熱損失を有した。
【0077】
さらに、330D CorduraTMユニフォーム及びACUを外側に着用した伸縮ボディースーツを、45℃及び15%RHで試験をした。熱損失測定値は、それぞれ244W/m2及び162W/m2であった。
【0078】
洗濯後の浸透性
本明細書で述べられる手順にしたがって、実施例10の伸縮性化学防護積層体について、洗濯後のHDの浸透性の試験を行った。結果を表5に示す。
【0079】
【表5】

【0080】
伸縮性積層体は良好な耐久性を有し、洗濯後のHDの低浸透性を維持した。
【0081】
Gelbo屈曲後の浸透性
本明細書で述べられるGelbo屈曲試験方法を用いて、実施例9の伸縮性化学防護積層体及び比較例の非伸縮積層体について屈曲耐久性の試験を行った。弾性ニットが積層前にプレ屈曲されないことを除いて、実施例9と同様に非伸縮積層体を調製した。環境条件は約 45℃及び約10%RHであった。本明細書で述べられる手順を用いて、屈曲されたサンプルについてアクリロニトリル及びマスタードガス(HD)を使用した浸透性能の試験を行った。結果を表6に示す。
【0082】
【表6】

【0083】
非伸縮積層体と比較して、伸縮性化学防護積層体は、50%以上のGelbo屈曲後の軽減された化学物質の浸透性を有した。
【0084】
ノイズ測定の結果
ニットが積層前にプレ屈曲されないことを除いて、実施例10で述べられたグラビア仕様書と積層の手順を用いて、非伸縮積層体を作製した。結果として得られた積層体は、伸縮特性を有さなかった。
【0085】
本明細書で述べられるNoise Measurementの試験方法を用いて、積層体のノイズ測定の結果を、表7において比較する。
【0086】
【表7】

【0087】
このデータは、非伸縮積層体のノイズと比較して、伸縮性積層体のノイズは50%以上の軽減をすることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学防護積層体の10,000回のGelbo屈曲サイクル後の化学物質浸透性を、少なくとも25パーセントの割合で軽減する方法であって、
該軽減する方法が、20μg/cm2未満のHDの浸透性を有する化学防護積層体を形成する工程を含み、
該形成する工程が、
約20g超の剛性度を有する選択的浸透性化学防護フィルムと、弾性繊維製品とを用意する工程と、
該選択的浸透性化学防護フィルムに、400μm超のドット間隔で接着剤を適用する工程と、
該弾性繊維製品をプレ伸縮する工程と、
該選択的浸透性化学防護フィルムと該弾性繊維製品とを積層して、17.8N(4lbf)で約50%超の伸長度を有する該化学防護積層体を形成する工程と、
を含み、
該化学防護積層体のHDの浸透性が、該弾性繊維製品をプレ伸縮する工程を経由しないで作製された同じ積層体のHDの浸透性よりも、少なくとも25パーセントの割合で少ない、
方法。
【請求項2】
40℃10%RHで、かつ、約1万回のGelbo屈曲サイクル後で、20μg/cm2未満のマスタードガス(HD)の浸透性を有する伸縮性化学防護積層体を含む耐久性化学防護材料であって、
該伸縮性化学防護積層体が、
選択的浸透性化学防護フィルムと、
接着剤によって該選択的浸透性フィルムに接合される弾性繊維製品と、
を含み、
該伸縮性化学防護積層体が、17.8N(4lbf)で約50%超の伸長度を有し、80%超の回復度を有し、かつ、1000g/m2/day超のMVTRを有する、
耐久性化学防護材料。
【請求項3】
前記選択的浸透性化学防護フィルムがポリアミンポリマーを含む、請求項2に記載の耐久性化学防護材料。
【請求項4】
前記選択的浸透性化学防護フィルムが少なくとも1つの多孔性支持層を含む、請求項3に記載の耐久性化学防護材料。
【請求項5】
前記ポリアミンポリマーが前記少なくとも1つの多孔性支持層中に少なくとも部分的に存在する、請求項3に記載の耐久性化学防護材料。
【請求項6】
前記少なくとも1つの多孔性支持層が延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む、請求項4に記載の耐久性化学防護材料。
【請求項7】
前記選択的浸透性化学防護フィルムが20g超の剛性度を有する、請求項2に記載の耐久性化学防護材料。
【請求項8】
体にフィットするボディースーツを含む低熱ストレス化学防護スーツであって、
該ボディースーツが、20μg/cm2未満のHDの浸透性を有する伸縮性化学防護積層体を含み、
該伸縮性化学防護積層体が、接着剤によって接合される、選択的浸透性化学防護フィルムと弾性繊維製品とを含み、
該低熱ストレス化学防護スーツの熱損失が35℃及び60%RHで100W/m2超である、
低熱ストレス化学防護スーツ。
【請求項9】
前記低熱ストレス化学防護スーツの熱損失が35℃及び60%RHで125W/m2超である、請求項8に記載の低熱ストレス化学防護スーツ。
【請求項10】
前記低熱ストレス化学防護スーツの熱損失が35℃及び60%RHで140W/m2超である、請求項8に記載の低熱ストレス化学防護スーツ。
【請求項11】
前記選択的浸透性化学防護フィルムが20g超の剛性度を有する、請求項8に記載の低熱ストレス化学防護スーツ。
【請求項12】
前記選択的浸透性化学防護フィルムが50m2/g未満のBETを有する、請求項8に記載の低熱ストレス化学防護スーツ。
【請求項13】
前記接着剤が400μm超の間隔で非連続的に適用される、請求項8に記載の低熱ストレス化学防護スーツ。
【請求項14】
20g超の剛性度を有する化学防護フィルムと、
弾性繊維製品と、
約400μm超のドット間隔を有して、該化学防護フィルムと該弾性繊維製品とを接合させる非連続的な接着剤と、
を含む、伸縮性積層体であって、
17.8N(4lbf)で、該伸縮性積層体の伸長度が約50%超である、
伸縮性積層体。
【請求項15】
前記化学防護フィルムが30g超の剛性度を有する、請求項14に記載の伸縮性積層体。
【請求項16】
前記化学防護フィルムが50g超の剛性度を有する、請求項14に記載の伸縮性積層体。
【請求項17】
前記化学防護フィルムが60g超の剛性度を有する、請求項14に記載の伸縮性積層体。
【請求項18】
前記伸縮性積層体の伸長度が、17.8N(4lbf)で約60%超である、請求項14に記載の伸縮性積層体。
【請求項19】
前記化学防護積層体が約1000g/m2/day超のMVTRを有する、請求項14に記載の伸縮性積層体。
【請求項20】
前記ドット間隔が約800μm超であり、17.8N(4lbf)で前記伸長度が約70%超である、請求項14に記載の伸縮性積層体。
【請求項21】
前記ドット間隔が約1500μm超であり、17.8N(4lbf)で前記伸長度が約100%超である、請求項14に記載の伸縮性積層体。
【請求項22】
前記伸縮性積層体が20μg/cm2未満のHDの浸透性を有する、請求項14に記載の伸縮性積層体。
【請求項23】
20g超の剛性度を有する通気性化学防護フィルムと、
弾性繊維製品と、
該通気性化学防護フィルム上に400μm超のドット間隔を有する不連続パターンで適用されて、該化学防護フィルムと該弾性繊維製品とを接合させる接着剤と、
を含む、耐久性化学防護伸縮積層体であって、
該耐久性伸縮性積層体が、約1万回のGelbo屈曲サイクル後で20μg/cm2未満のHDの浸透性を有する、
耐久性化学防護伸縮積層体。
【請求項24】
10,000回のGelboサイクル後で約4μg/cm2未満のHDの浸透性を有する、請求項23に記載の耐久性化学防護伸縮積層体。
【請求項25】
10,000回のGelboサイクル後で約3.0μg/cm2未満のHDの浸透性を有する、請求項23に記載の耐久性化学防護伸縮積層体。
【請求項26】
10,000回のGelboサイクル後で約2.0μg/cm2未満のHDの浸透性を有する、請求項23に記載の耐久性化学防護伸縮積層体。
【請求項27】
約20g超の剛性度の選択的浸透性フィルムを有する伸縮性化学防護材料を作製する方法であって、
該方法が、
約20g超の剛性度を有する選択的浸透性フィルムを用意する工程と、
弾性繊維製品を用意する工程と、
該弾性繊維製品を伸縮する工程と、
該選択的浸透性フィルムに接着剤をプリントする工程と、
該選択的浸透性フィルムを該伸縮弾性繊維製品に接着させて、17.8N(4lbf)で50%超の平均伸長度を有する伸縮性化学防護材料を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項28】
前記接着剤が不連続なドットパターンでプリントされる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記接着剤のドットの間隔が約400μm超である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記接着剤のドットの間隔が約600μm超である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
化学防護積層体のノイズを、少なくとも25パーセントの割合で軽減する方法であって、
該軽減する方法が、20μg/cm2未満のHD浸透性を有する化学防護積層体を形成する工程を含み、
該形成する工程が、
約20g超の剛性度を有する選択的浸透性化学防護フィルムと、弾性繊維製品とを用意する工程と、
該選択的浸透性化学防護フィルムに、400μm超のドット間隔で接着剤を適用する工程と、
該弾性繊維製品をプレ伸縮する工程と、
該選択的浸透性化学防護フィルムと該弾性繊維製品とを積層して、17.8N(4lbf)で約50%超の伸長度を有する該化学防護積層体を形成する工程と、
を含み、
該化学防護積層体のノイズ測定値が、該弾性繊維製品をプレ伸縮する工程を経由しないで作製された同じ積層体のノイズ測定値よりも、少なくとも約25パーセントの割合で少ない、
方法。
【請求項32】
前記ボディースーツ上に外側の衣服を更に含む、請求項8に記載の低熱ストレス化学防護スーツ。
【請求項33】
45℃及び15%RHで150W/m2超の熱損失を有する、請求項32に記載の低熱ストレス化学防護スーツ。
【請求項34】
45℃及び15%RHで200W/m2超の熱損失を有する、請求項32に記載の低熱ストレス化学防護スーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−519535(P2012−519535A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552916(P2011−552916)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/001398
【国際公開番号】WO2010/101544
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】