説明

伸縮継手

【課題】耐久性を有し、交換回数削減及びメンテナンスコスト削減が可能な伸縮継手を提供すること。
【解決手段】高温排ガス通路に使用する伸縮継手1の筒状部4を、曲げ変形により伸縮可能になるように、外周側から順番に第1金属層9、メッシュ層10、耐熱層11、第2金属層12を積層することにより構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発電所における鋼製ダクトに使用される伸縮継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発電所における鋼製ダクトでは、伸縮継手を要所に配設する。この伸縮継手には、一般に、金属ベローズ型伸縮継手が使用されている。金属ベローズ型伸縮継手は、金属製のベローズ(蛇腹)部を有しており、ボイラの排ガス等による温度変化に起因する鋼製ダクトの変形をベローズ部が伸縮することにより許容する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−220777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の金属ベローズ型伸縮継手に使用される材料は、柔軟性は高いが耐食性が低い鋼材であった。そのため、伸縮継手が使用中に高温の排ガスの熱等に起因して腐食し、頻繁に交換しなければならず、メンテナンスのコストが増大していた。
【0004】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、耐久性を有し、交換回数削減及びメンテナンスコスト削減が可能な伸縮継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための請求項1の発明は、高温排ガス通路に使用する曲げ変形により伸縮可能な伸縮継手であって、外周側から順番に第1金属層、メッシュ層、耐熱層、第2金属層を積層したことを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、高温排ガス通路に使用する曲げ変形により伸縮可能な伸縮継手の強度が確保できるとともに耐熱性が向上するため、耐久性が向上する。これにより、伸縮継手の交換作業の回数を削減できるため、メンテナンスのコストの削減が可能になる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記耐熱層がセラミックファイバブランケットから成るものである。
【0008】
ここで、セラミックファイバブランケットとは、繊維状のセラミックス材料を、連続的に重ねて不織布状に成形したものである(以下、同じ)。
【0009】
請求項2の発明によれば、耐熱層の柔軟性が向上する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記メッシュ層がカーボンファイバから成るものである。
【0011】
請求項3の発明によれば、メッシュ層の強度と柔軟性が向上する。またメッシュ層の耐食性が向上すると共に軽量化ができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか一の発明において、前記第1及び第2金属層がアルミニウムシートから成るものである。
【0013】
請求項4の発明によれば、金属層の耐食性が向上すると共に金属層の軽量化ができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか一の発明において、周方向に厚みを均等にすると共に、継手の長手方向では厚みを変化させたものである。
【0015】
請求項5の発明によれば、伸縮継手において通路方向の皺の発生が抑制され、伸縮継手の伸縮率が周方向で均等になるため、ダクトに配設された場合に、熱によるダクトの変形を周方向で均等に許容することができる。
【0016】
請求項6の発明は、請求5の発明において、継手の長手方向では一端から他端に行くに従って漸次厚みを薄くして成るものである。
【0017】
請求項6の発明によれば、請求項5の作用効果の他に、厚みがある側が上になるように配設された場合に、上側の方が厚みがあるので形状を維持しやすく、伸縮を許容するための周方向の皺が下側に偏ることを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐久性を有し、交換回数削減及びメンテナンスコスト削減が可能な伸縮継手を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る伸縮継手の配設例を示す模式図である。この伸縮継手1は、上方に位置する上側鋼製ダクト2と下方に位置する下側鋼製ダクト3との間に配設されている。上側鋼製ダクト2及び下側鋼製ダクト3はともに筒状で、かつ軸直角方向の断面形状は正方形である。伸縮継手1との接続部分付近以外では軸は水平方向に延在し、伸縮継手1との接続部分付近で屈曲している。伸縮継手1は、上側鋼製ダクト2及び下側鋼製ダクト3と断面形状を等しくする筒状であり、軸方向が鉛直方向である。
【0021】
この実施形態では、例えば、ボイラからの高温の排ガスは、図1の白矢印で示すように、上側鋼製ダクト2、伸縮継手1、下側鋼製ダクト3の順に流れて、例えば煙突から外部に出て行く。すなわち、上側鋼製ダクト2、伸縮継手1、下側鋼製ダクト3で高温排ガス通路を形成している。
【0022】
伸縮継手1は、詳述すれば、図2に示すように、筒状部4と上側取り付け部5、下側取り付け部6を主要な構成要素とする。筒状部4は筒状であり軸直角方向の断面形状が略正方形である。また、筒状部4は、伸縮を許容するための周方向の皺を有する。上側取り付け部5は、筒状部4に対してフランジ状に外側に突出しており、例えばボルト7により、上側鋼製ダクト2の端面に固定されている。下側取り付け部6は、筒状部4に対してフランジ状に外側に突出しており、例えばボルト8により、下側鋼製ダクト3の端面に固定されている。
【0023】
伸縮継手1の筒状部4は、外周側から順番に第1金属層9、メッシュ層10、耐熱層11、第2金属層12を積層した構造である。第1金属層9及び第2金属層12は、例えばアルミシート等である。メッシュ層10は、強度と柔軟性を有するものであり、例えばカーボンファイバ等である。耐熱層11は、柔軟性を有するものであり、例えばセラミックファイバブランケット等である。これらの層は、例えばステンレス製糸で縫合することにより互いに固定されている。第1金属層9は、伸縮継手1内部への雨水や塵埃等の浸入を防止する。メッシュ層10は、強度に劣る耐熱層11に密着し、層全体に強度と可撓性を付与する。耐熱層11は、伸縮継手1の主たる機能を有する層であり、熱と排ガスの外部への漏洩を防止する。第2金属層12は、排ガスの流れによる耐熱層の損傷を防止し、灰の堆積防止や排ガスの整流の機能を有する。
【0024】
伸縮継手1の筒状部4は、周方向に厚みを均等にすると共に継手の長手方向(高温排ガスの通路方向)では上端から下端に行くに従って厚みが薄くなるようにしている。この厚みの変化は、耐熱層11の厚みの変化で与えられている。他の層9、10、12は、周方向及び上端から下端にかけて均等な厚みである。これらの形状ないし厚みにより、伸縮継手1の筒状部4において軸方向の皺の発生が抑制され、伸縮継手1の筒状部4の伸縮率が周方向で均等になる。このため、伸縮継手1は、上側鋼製ダクト2、下側鋼製ダクト3の熱による変形を周方向で均等に許容することができる。
【0025】
耐熱層11と第2金属層12は、筒状部4から上側取り付け部5に沿って延在している。第1金属層9とメッシュ層10は、筒状部4から上側取り付け部5に沿って延在し、更に2回折り返して上側取り付け部5に沿って延在している。これにより、上側取り付け部5が補強されボルト7の頭部による変形や損傷が抑制され、また上側取り付け部5の適度な弾力性によりボルト7の緩み止めが確実になる。
【0026】
耐熱層11と第2金属層12は、筒状部4から下側取り付け部6に沿って延在している。第1金属層9とメッシュ層10は、筒状部4から下側取り付け部6に沿って延在し、更に1回折り返して下側取り付け部6に沿って延在している。これにより、下側取り付け部6が補強されボルト8の頭部による変形や損傷が抑制され、また下側取り付け部6の適度な弾力性によりボルト8の緩み止めが確実になる。
【0027】
上記の構成により、伸縮継手1は、曲げ変形により伸縮可能であり、強度が確保できるとともに耐熱性が向上するため、耐久性が向上する。これにより、伸縮継手1は、交換作業の回数を削減できるため、メンテナンスのコストの削減が可能になる。また、各層の厚みを調節する等して筒状部4の柔軟性を更に向上させた場合、従来の伸縮継手では許容できずにダクトの内部応力の原因となっていたダクトの微小な変形をも許容できる。このため、内部応力が抑制されることによりダクトの長寿命化が可能になる。
【0028】
上記実施形態では、第1金属層9、メッシュ層10は上側取り付け部5で2回折り返し、下側取り付け部6で1回折り返しているが、本発明はこれに限定されることなく、固定が担保されれば折り返し回数は限定されず、また折り返しがなくてもよい。
【0029】
上記実施形態では、伸縮継手1は、軸方向が鉛直方向になるように配設されているが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、水平方向になるように配設されてもよい。
【0030】
本発明は、上記実施形態の他にも、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る伸縮継手の配設例を示す模式図である。
【図2】図1の伸縮継手についての縦断面図の一部である(伸縮継手の左側が伸縮継手の内部、伸縮継手の右側が伸縮継手の外部)。
【符号の説明】
【0032】
1 伸縮継手
2 上側鋼製ダクト
3 下側鋼製ダクト
9 第1金属層
10 メッシュ層
11 耐熱層
12 第2金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温排ガス通路に使用する曲げ変形により伸縮可能な伸縮継手であって、
外周側から順番に第1金属層、メッシュ層、耐熱層、第2金属層を積層したことを特徴とする伸縮継手。
【請求項2】
前記耐熱層がセラミックファイバブランケットから成る請求項1に記載の伸縮継手。
【請求項3】
前記メッシュ層がカーボンファイバから成る請求項1又は2に記載の伸縮継手。
【請求項4】
前記第1及び第2金属層がアルミニウムシートから成る請求項1〜3の何れか一に記載の伸縮継手。
【請求項5】
周方向に厚みを均等にすると共に、継手の長手方向では厚みを変化させた請求項1〜4の何れか一に記載の伸縮継手。
【請求項6】
継手の長手方向では一端から他端に行くに従って漸次厚みを薄くして成る請求項5に記載の伸縮継手。

【図1】
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【図2】
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