説明

伸縮門扉

【課題】パンタグラフ機構の斜架材の上下端部の他物との接触による損傷からの防護、斜架材の上下端部の強度アップ、耐久性の向上を図れ、見映えも良好にする伸縮門扉を提供する。
【解決手段】断面四辺形の金属パイプ材からなる斜架材2,3は、相対向する第1,2辺部23・23,24・24の各上端縁23a,24aおよび下端縁23b,24bはそれぞれ凸円弧形状に形成される。斜架材2,3の各上下端部には上部エンドキャップ29および下部エンドキャップ30が挿入嵌合される。上部エンドキャップ29および下部エンドキャップ30はそれぞれ差込脚部29a,30aと、差込脚部29a,30aにそれぞれ凸円弧形状に形成された頭側端縁29b,30bと、頭側端縁29b,30bの各外周に沿って形成された鍔29c,30cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉本体がパンタグラフ機構により伸び縮みする伸縮門扉に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の伸縮門扉として、例えば、図17に示すように、複数本の吊元側上がりに傾斜した斜架材(斜桟)60と吊元側下がりに傾斜した斜架材(斜桟)61とを交差し、交差部がピン軸62で枢着されたパンタグラフ機構63により伸縮する扉本体64を形成し、この扉本体64の吊元側端を吊元柱等の固定部材に連結したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−209671号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、上記構成の伸縮門扉では、斜架材60,61は断面四辺形で、それぞれの上端部60a,61aおよび下端部60b,61bは角型に形成されているので、扉本体64の伸長動作において、斜架材60,61の上端部60a,61aと下端部60b.61bの角部が縦格子65の幅方向から突出して外観体裁の悪化を招くものであった。そこで、斜架材60,61の上下端部の角部が縦格子65の幅方向から突出しないように、縦格子65の幅を大きくすると、扉本体64を折畳んだ際の縮め幅が縦格子65の幅分だけ大きくなり、コンパクトな折畳み状態が得られないものであった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上記のようなパンタグラフ機構を備えた伸縮門扉において、各斜架材の上下端部の構造に工夫を凝らすことにより斜架材の上下端部の角部が縦格子の幅方向から突出しないようにして外観的体裁を良好にし、また扉本体のコンパクトな折畳み状態を得ることができ、さらに斜架材の上下端部の補強、強度アップ、耐久性の向上を図れ、見映えも良好にする伸縮門扉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載のように、その発明の内容を理解しやすくするために図1〜図15に付した符号を参照して説明すると、複数本の吊元側上がりに傾斜した斜架材2と吊元側下がりに傾斜した斜架材3とが交差し、交差部がピン軸(4a,4b,4c,4d)で枢着された伸縮自在なパンタグラフ機構と、このパンタグラフ機構に上下方向に跨って配置された伸縮方向に複数個の縦格子8とを備えた扉本体9を形成し、この扉本体9の吊元側端を吊元柱10等の固定部材に連結する伸縮門扉において、以下のように構成したことに特徴を有するものである。
斜架材2,3は、相対向する第1,2辺部23・23,24・24及び第3,4辺部25・25,26・26を有する断面四辺形の金属パイプ材からなり、第1,2辺部23・23,24・24の上端縁23a,24aおよび下端縁23b,24bはそれぞれ凸円弧形状に形成され、第3,4辺部25・25,26・26の上端縁25a,26aおよび下端縁25b,26bはそれぞれ切除されている。
斜架材2,3の各上端部には上部エンドキャップ29が、斜架材2,3の各下端部には下部エンドキャップ30がそれぞれ挿入嵌合される。上部エンドキャップ29、下部エンドキャップ30はそれぞれ斜架材2,3の各内部空間に嵌合する差込脚部29a,30aを有し、上部エンドキャップ29の差込脚部29aの頭側端縁29bは斜架材2,3の各第1,2辺部23・23,24・24の上端縁23a,24aの凸円弧形状に合致する凸円弧形状に形成され、下部エンドキャップ30の差込脚部30aの頭側端縁30bは斜架材2,3の各第1,2辺部23・23,24・24の下端縁23b,24bの凸円弧形状に合致する凸円弧形状に形成されている。
上部エンドキャップ29の差込脚部29aの凸円弧形状の頭側端縁29bの外周に沿って鍔29cが、斜架材2,3の各第1,2辺部23・23,24・24の凸円弧形状の上端縁23a,24aおよび各第3,4辺部25・25,26・26の上端縁25a,26aをそれぞれ覆う形に形成されている。下部エンドキャップ30の差込脚部30aの凸円弧形状の頭側端縁30bの外周に沿って鍔30cが、斜架材2,3の各第1,2辺部23・23,24・24の凸円弧形状の下端縁23b,24bおよび各第3,4辺部25・25,26・26の下端縁25b,26bをそれぞれ覆う形に形成されている。
【0007】
このような構成の伸縮門扉によれば、斜架材2,3の各第1,2辺部23・23,24・24の上端縁23a,24aおよび下端縁23b,24bはそれぞれ凸円弧形状に形成され、各第3,4辺部25・25,26・26の上端縁25a,26aおよび下端縁25b,26bはそれぞれ切除され、これら斜架材2,3の各第1,2辺部23・23,24・24の凸円弧形状の上端縁23a,24aおよび各第3,4辺部25・25,26・26の上端縁25a,26aは斜架材2,3の上端部、下端部にそれぞれ挿入嵌合された上部エンドキャップ29、下部エンドキャップ30のそれぞれの鍔29c,30cで覆われていることにより、斜架材2,3の上下端部の角部が縦格子8の幅方向から突出しないようにすることできて外観的体裁を良好にし、また扉本体9のコンパクトな折畳み状態を得ることができる。さらに斜架材2,3の凸円弧形状に形成された上下端縁25a,26a、25b,26bは上部エンドキャップ29および下部エンドキャップ30の鍔29c,30cにより覆われて丸味を帯び見映えを良好にする。
【0008】
また、斜架材2,3の各上端部および下端部に上部エンドキャップ29の差込脚部29a、下部エンドキャップ30の差込脚部30aがそれぞれ挿入嵌合されているので、斜架材2,3の各第1,2辺部23,24の上端縁23a,24aおよび下端縁25b,26bがそれぞれ凸円弧形状の自由端に形成されていても、これらが斜架材2,3の内部に向かってたわみ変形するのを防止できて補強、強度アップ、耐久性を向上できる。
【0009】
請求項1記載の伸縮門扉は、請求項2に記載のように、上部エンドキャップ29および下部エンドキャップ30の各差込脚部29a,30aにはピン軸(4a,4b)が挿通する孔31が設けられるという構成を採用することができる。この構成によると、ピン軸(4a,4b)を利用するという簡単な手段で上部エンドキャップ29および下部エンドキャップ30が斜架材2,3の各上端部および各下端部から抜け出るのを確実に阻止することができる。
【0010】
請求項1又は2記載の伸縮門扉は、請求項3に記載のように、斜架材2,3の各第1,2辺部23・23,24・24の各内面にリブ27,28がその長手方向にわたって設けられ、上部エンドキャップ29および下部エンドキャップ30の各差込脚部29a,30aにはリブ27,28に嵌合する凹溝51が形成されるという構成を採用することができる。これにより、斜架材2,3の各上端部および各下端部の強度アップをより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の伸縮門扉によれば、斜架材の上下端部の角部が縦格子の幅方向から突出しないようにすることできて外観的体裁を良好にし、また扉本体のコンパクトな折畳み状態を得ることができ、さらに斜架材の上下端部の補強、強度アップ、耐久性の向上を図れ、見映えも良好にすることができて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例の伸縮門扉の伸長状態を示す全体正面図である。
【図2】同伸縮門扉の上段のパンタグラフ機構の斜架材を一部破断状態で示す正面図である。
【図3】図2の斜架材に各種ピン軸を備えた縦断側面図である。
【図4】同伸縮門扉の下段のパンタグラフ機構の斜架材を一部破断状態で示す正面図である。
【図5】図4の斜架材に各種ピン軸を備えた縦断側面図である。
【図6】図1における交差部C1における断面図である。
【図7】図1における交差部C2における断面図である。
【図8】図1における交差部C3における断面図である。
【図9】図1における交差部C4における断面図である。
【図10】図1における交差部C5における断面図である。
【図11】同伸縮門扉に使用する上下部のエンドキャップを示すものであって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は底面図である。
【図12】同伸縮門扉に使用する他の下部エンドキャップを示すものであって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は底面図である。
【図13】同伸縮門扉に使用する交点ピン軸を示すものであって、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図、(c)は底面図である。
【図14】同伸縮門扉に使用する固定用ブッシュを示すものであって、(a)は平面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図、(c)は底面図である。
【図15】同伸縮門扉に使用する固定用ブッシュのキャップを示すものであって、(a)は平面図、(b)は(a)におけるC−C線断面図、(c)は底面図である。
【図16】同伸縮門扉の伸長状態を無重力状態で示す全体の正面図である。
【図17】従来例の伸縮門扉の伸長状態を示す全体正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施例に係る伸縮門扉1は、複数本の吊元側上がり(図上において右上がり)に傾斜した斜架材2と吊元側下がり(図上において右下がり)に傾斜した斜架材3とが交差し、交差部が各種ピン軸(後記の固定タイプのピン軸4a、移動タイプのピン軸4b、交点ピン軸4c,4d)で枢着されて伸縮自在に構成された上下二段のパンタグラフ機構5,6と、上段のパンタグラフ機構5と下段のパンタグラフ機構6との間の上下方向中間部に形成された、パンタグラフ機構の存在しない無パンタグラフ機構ゾーン7と、上段のパンタグラフ機構5、無パンタグラフ機構ゾーン7、および下段のパンタグラフ機構6に跨って上下方向に配置され且つ前記交差部群のうち所定の交差部で各パンタグラフ機構5,6に連結された伸縮方向に複数個の縦格子8と、を備えた扉本体9を形成し、この扉本体9の吊元側端を吊元柱10等の固定部材に連結している。
【0015】
扉本体9は、左右に間隔をおいて相対向状に地面Gに立設した吊元柱10と戸当り柱11間に配設される。本発明の伸縮扉は、吊元柱10の内端面と戸当り柱11の内端面との間隔が900〜1700mm程度の比較的狭い間口に好適に使用できるものとする。
扉本体9の吊元側端には回転柱12が設けられ、この回転柱12は吊元柱10にヒンジ13を介して水平方向に180°回転自在に取り付けられている。
一方、扉本体9の戸当り側端には移動柱14が設けられ、この移動柱14には錠前15を設け、この錠前15によって移動柱14を戸当り柱11に施錠・解錠可能にしている。移動柱14の前後両側には、扉本体9の伸縮操作用の把手16が設けられている。また、移動柱14には落とし棒装置17が設けられており、扉本体9の全閉状態において、地面Gに穿設した孔(図示せず)に落とし棒17aの下端部が嵌入して、扉本体9の伸縮動作を阻止するようにしている。
【0016】
回転柱12と移動柱14との間には、伸縮自在な上下二段のパンタグラフ機構5,6が設けられる。伸縮門扉全体の軽量化、開閉操作の容易化を図るために、上段のパンタグラフ機構5と下段のパンタグラフ機構6との間の上下方向中間部には、パンタグラフ機構の存在しない無パンタグラフ機構ゾーン7を形成している。各パンタグラフ機構5,6は、複数本の吊元側上がり(図上において右上がり)に傾斜した斜架材2および吊元側下がり(図上において右下がり)に傾斜した斜架材3と、伸縮方向に複数個の縦格子8とから構成されている。縦格子8の前後縦枠8a,8bは、図6、図7、図9にその横断面図を示すように、各外面側に凹溝18を上下方向に亘って形成するウエブ19と、このウエブ19の左右端に連設する左右一対のフランジ20、および左右の各フランジ20に付設したリップ21とを有する断面リップ溝形に形成されている。凹溝18には断面π形状の縦格子カバー22が嵌め込まれる。
【0017】
吊元側上がりの斜架材2及び吊元側下がりの斜架材3は、図6〜図10に各横断面図を示すように、それぞれアルミニウム製の相対向する第1,2辺部(図示例では長辺部)23・23,24・24及び第3,4辺部(図示例では短辺部)25・25,26・26を有する断面四辺形(図示例では断面長方形)のパイプ材からなり、斜架材2,3の各第1,2辺部23,24の内面にはリブ27,28がその長手方向に亘って形成されている。
扉本体9の伸長動作において、斜架材2,3の上下端部の角部が縦格子8の幅方向から突出しないようにして外観的体裁を良好にし、また扉本体9のコンパクトな折畳み状態を得ることができるようにするために、図2、図4に示すように、斜架材2,3の各第1,2辺部23,24の上端縁23a,24aおよび下端縁23b,24bはそれぞれ、斜架材2,3の各幅分長さを直径とした半円形状である凸円弧形状に形成される。これに伴い各第3,4辺部25,26の上端縁25a,26aおよび下端縁25b,26bはそれぞれ切除される。
【0018】
そして、図2〜図5に示すように、斜架材2,3の各第1,2辺部23,24の上端縁23a,24aおよび下端縁25b,26bがそれぞれ凸円弧形状の自由端に形成される形状からしてこれらが斜架材2,3の内部に向かってたわみ変形しやすいのを防止する補強対策を講じるために、斜架材2,3の各上端部および下端部には樹脂製又は金属製の上部エンドキャップ29、下部エンドキャップ30がそれぞれ挿入嵌合される。図11、図12に示すように、上部エンドキャップ29および下部エンドキャップ30はそれぞれ斜架材2,3の各内部空間内に嵌合する差込脚部29a、30aを有し、この差込脚部29a、30aの各頭側端縁29b、30bは斜架材2,3の各第1,2辺部23,24の上端縁23a,24aおよび下端縁25b,26bの凸円弧形状に合致する凸円弧形状に形成され、この凸円弧形状の頭側端縁29b、30bの各外周に沿って鍔29c、30cが形成されている。図2〜図4に示すように、上部エンドキャップ29、下部エンドキャップ30が斜架材2,3の各上端部および下端部にそれぞれ挿入された状態で、各鍔29c,30cは斜架材2,3の各第1,2辺部23,24の凸円弧形状の上端縁23a,24aの表面、下端縁23b,24bの表面、および第3,4辺部25,26の上端縁25a,26aの表面、下端縁25b,26bの表面をそれぞれ覆う形に形成されている。
また、図11、図12に示すように、上部エンドキャップ29の差込脚部29aおよび下部エンドキャップ30の差込脚部30aにはそれぞれ後述するピン軸4a,4bや固定用ブッシュ38,43が挿通する孔31と、リブ27,28に嵌合する凹溝51が形成される。因みに、上段の斜架材2,3の各上下端部および下段の斜架材2,3の各上端部には図11に示す上部エンドキャップ29あるいは下部エンドキャップ30が挿入され、下段の斜架材2,3の各下端部には図12に示す下部エンドキャップ30が挿入される。
【0019】
上記のように上部エンドキャップ29の鍔29cおよび下部エンドキャップ30の鍔30cが各上端縁23a,24a,25a,26aの表面や各下端縁23b,24b,23b,24bの表面を覆うことにより当該箇所の化粧をすることができて見映えを良くする。また、斜架材2,3の各上端部および下端部に上部エンドキャップ29および下部エンドキャップ30がそれぞれ挿入嵌合されるときに、各鍔29c,30cは各上端縁23a,24a,25a,26aの表面や各下端縁23b,24b,23b,24bの表面に覆い当接し、この当接と同時に上部エンドキャップ29および下部エンドキャップ30の差込脚部29a,30aの各孔31がこれに挿通するピン軸4a,4bや固定用ブッシュ38,43の位置と一致するようにすることができる。つまり、鍔29c,30cは上部エンドキャップ29や下部エンドキャップ30の斜架材2,3の上下端部への差込み深さを規制する機能をも兼備することができる。
【0020】
吊元側上がりの斜架材2と吊元側下がりの斜架材3とは相互の交差箇所において各種ピン軸(後記の固定タイプのピン軸4a、移動タイプのピン軸4b、交点ピン軸4c,4d)で相対回転自在に枢着される。
【0021】
すなわち、図1において、上段のパンタグラフ機構5の縦格子8と連結された最上部の交差部C1は縦格子8の定位置に対し固定タイプのピン軸4aを介して回動自在に枢支連結され、同上段のパンタグラフ機構5の縦格子8と連結された最上部以外の交差部C2は縦格子8に対し移動タイプのピン軸4bを介して上下摺動自在に連結される。
【0022】
図6に示すように、上段のパンタグラフ機構5の縦格子8の前後縦枠8a,8bと連結される最上部の交差部C1における固定タイプのピン軸4aは、中空状に形成されて前後両端に雌ねじ32を有し、斜架材2,3の上端部同士と、この斜架材2,3の上端部同士間に介在する減摩材からなるスペーサ33と、斜架材2,3の各上端部と縦格子8の前後縦枠8a,8bとの間にそれぞれ介在する減摩材からなる軸受ブッシュ34,34とに貫通するように枢着される。その際、ピン軸4aが斜架材2,3の各上端に挿通されるとき斜架材2,3の各上端部に挿入された上部エンドキャップ29の差込脚部29aの孔31の位置に一致してこれにも挿通されることにより、上部エンドキャップ29が斜架材2,3の各上端部から抜け出るのを阻止される。そして、縦格子8の前後縦枠8a,8b内に臨むピン軸4aの前後端の各雌ねじ32にはビス35が各縦格子8の凹溝18内からねじ込まれ、これにより固定タイプのピン軸4aは縦格子8の前後縦枠8a,8b内に上下動不能に定着され、扉本体9の伸縮動作の際の上下位置に変動はない。ビス35の頭部35aは縦格子カバー22で覆い隠すことで雨水から防護して錆発生を防止し、また外観的に見映えを良くしている。
【0023】
図7に示すように、上段のパンタグラフ機構5の縦格子8の前後縦枠8a,8bと連結される最上部以外の交差部C2における移動タイプのピン軸4bは、斜架材2,3の下端部同士と、この斜架材2,3の下端部同士間に介在する減摩材からなるスペーサ36と、斜架材2,3の各下端部と縦格子8の前後縦枠8a,8bとの間にそれぞれ介在する減摩材からなる軸受ブッシュ37とに貫通するように枢着される。その際、ピン軸4bが斜架材2,3の各下端に挿通されるとき斜架材2,3の各下端部に挿入された下部エンドキャップ30の差込脚部30aの孔31の位置に一致してこれにも挿通されることにより、下部エンドキャップ30が斜架材2,3の各下端部から抜け出るのを阻止される。前後の各軸受ブッシュ37は左右側部にスライド溝37a、37aを有し、このスライド溝37a,37aを前後縦枠8a,8bの各リップ21に摺動自在に嵌合することで、扉本体9が伸縮する際にピン軸4bが縦格子8の前後縦枠8a,8bの溝内を軸受ブッシュ37を介して上下に移動するようにしている。
【0024】
図8に示すように、上段のパンタグラフ機構5の斜架材2,3の上下中間部同士の交差部C3は交点ピン軸4cで枢着される。図13に示すように、この交点ピン軸4cはこれの一端部に樹脂製の鍔38fを有する断面ハット形の固定用ブッシュ38をインサート成形等で固着し、他端部に雌ねじ39を設けている。図8に示すように、この交点ピン軸4cは固定用ブッシュ38を一方の斜架材2の第1,2辺部23の上下中間部に設けた孔40内に鍔38fを孔40の外周に配するよう抜け止め状に嵌合固定するとともに、斜架材2,3の上下中間部同士と、この斜架材2,3の上下中間部同士間に介在する減摩材からなるスペーサ41に挿通させて他端部を他方の斜架材3の溝内に突出させる。この交点ピン軸4cの突出他端部は他方の斜架材3の第1,2辺部24の上下中間部に設けた孔42内に鍔43fを孔42の外周に配するよう抜け止めに嵌合固定される断面ハット形の鍔付き固定用ブッシュ43(図14参照)に挿通して雌ねじ39にビス44をねじ込むことで枢着される。
【0025】
その際、図8に示すように、一方の斜架材2に嵌合した固定用ブッシュ38はこれの内端面に回り止め溝45を径方向に設けており、この回り止め溝45を一方の斜架材2の第1,2辺部23の内面に設けているリブ27に嵌合させて一方の斜架材2に回り止め状態に結合する。同じように他方の斜架材3に嵌合した固定用ブッシュ43の内端面に回り止め溝46を径方向に設けており、この回り止め溝46を他方の斜架材3の第1,2辺部24の内面に設けているリブ28に嵌合させて他方の斜架材3に回り止め状態に結合する。したがって、ビス44を交点ピン軸4cの雌ねじ39にねじ込むとき固定用ブッシュ38,43が共回りするのを防止できる。固定用ブッシュ43の凹部43aにはキャップ47(図15参照)を嵌合させて固定用ブッシュ43の凹部43a内に臨むビス44の頭部44aを覆い隠している。
【0026】
このように、斜架材2,3の上下中間部同士の交差部C3の交点ピン軸4cを留めつけるビス44の頭部44aは外部に突出することのないように、固定用ブッシュ43の凹部43a内に沈むように納めることで、安全性を確保でき、また開扉時に前後の斜架材2,3を縦格子8の前後縦枠8a,8b間にコンパクトに納められて扉本体9の前後方向(奥行方向)の厚みを少なくすることができて扉本体9の薄型化、コンパクト化を図ることができる。また、キャップ47でビス44の頭部44aを覆い隠すことにより雨水から防護して錆発生を防止し、また外観的体裁を良好にすることができる。
【0027】
図1において、下段のパンタグラフ機構6の縦格子8の前後縦枠8a,8bと連結される最下部以外の交差部C2は、図7に示す上段のパンタグラフ機構5の縦格子8の前後縦枠8a,8bと連結される最上部以外の交差部C2における移動タイプのピン軸4bの場合と同様に、縦格子8の前後縦枠8a,8bに対し移動タイプのピン軸4bを介して上下摺動自在に連結される。
図9に示すように、同下段のパンタグラフ機構6の縦格子8と連結された最下部の交差部C4は、図6に示す上段のパンタグラフ機構5の縦格子8の前後縦枠8a,8bと連結される最上部の交差部C1における固定タイプのピン軸4aの場合と同様に、縦格子8の前後縦枠8a,8bの定位置に対し固定タイプのピン軸4aを介して回動自在に枢支連結される。
【0028】
下段のパンタグラフ機構6の斜架材2,3の上下中間部同士の交差部C3における交点ピン軸4cは、図8に示す上段のパンタグラフ機構5の斜架材2,3の上下中間部同士の交差部C3における交点ピン軸4cの場合と同様の構造でもって枢着される。
【0029】
図10に示すように、下段のパンタグラフ機構6の斜架材2,3の下端部同士の交差部C5における交点ピン軸4dは、図8に示す交点ピン軸4cと同様にその一端部に樹脂製の鍔38fを有する断面ハット形の固定用ブッシュ38をインサート成形等で固着し、他端部に雌ねじ39を設けている。この交点ピン軸4dは固定用ブッシュ38を一方の斜架材2の下端部に設けた孔48内に鍔38fを孔48の外周に配するよう抜け止め状に嵌合固定するとともに、斜架材2,3の下端部同士と、この斜架材2,3の下端部部同士間に介在する減摩材からなるスペーサ49に挿通させて他端部を他方の斜架材3の溝内に突出させる。固定用ブッシュ38が一方の斜架材2の下端部に嵌合固定されるとき、斜架材2の下端部に挿入された図12に示す下部エンドキャップ30の差込脚部30aの孔31の位置に一致してこれにも嵌合されることにより、下部エンドキャップ30が斜架材2の下端部から抜け出るのを阻止される。
【0030】
上記のように他方の斜架材3の溝内に突出する交点ピン軸4dの突出他端部は、他方の斜架材3の下端部に設けた孔50内に図8に示す断面ハット形の鍔付き固定用ブッシュ43と同様に鍔43fを孔50の外周に配するよう抜け止めに嵌合固定される断面ハット形の鍔付き固定用ブッシュ43に挿通して雌ねじ39にビス44をねじ込むことで枢着される。その際、固定用ブッシュ43が、他方の斜架材3の下端部に嵌合固定されるとき、斜架材3の下端部に挿入された図12に示す下部エンドキャップ30の差込脚部30aの孔31の位置に一致してこれにも嵌合されることにより、下部エンドキャップ30が斜架材3の下端部から抜け出るのを阻止される。
【0031】
また、図10に示すように、一方の斜架材2に嵌合した固定用ブッシュ38はこれの内端面に回り止め溝45を径方向に設けており、この回り止め溝45を一方の斜架材2の第1,2辺部23の内面に設けているリブ27に嵌合させて一方の斜架材2に回り止め状態に結合する。同じように他方の斜架材3に嵌合した固定用ブッシュ43の内端面に回り止め溝46を径方向に設けており、この回り止め溝46を他方の斜架材3の第1,2辺部24の内面に設けているリブ28に嵌合させて他方の斜架材3に回り止め状態に結合する。したがって、ビス44を交点ピン軸4dの雌ねじ39にねじ込むとき固定用ブッシュ38,43が共回りするのを防止できる。固定用ブッシュ43の凹部43aにはキャップ47を嵌合させて固定用ブッシュ43の凹部43a内に臨むビス44の頭部44aを覆い隠している。
このように、斜架材2,3の下端部同士の交差部C5のピン軸4dを留めつけるビス44の頭部44aは外部に突出することのないように、固定用ブッシュ43の凹部43a内に沈むように納めることで、安全性を確保でき、また開扉時に前後の斜架材2,3を縦格子8の前後縦枠8a、8b間にコンパクトに納められて扉本体9の前後方向(奥行方向)の厚みを少なくすることができて扉本体9の薄型化、コンパクト化を図ることができる。また、キャップ47でビス44の頭部44aを覆い隠すことにより雨水から防護して錆発生を防止し、また外観的体裁を良好にすることができる。
【0032】
次に、上記構成の伸縮門扉1の開閉動作について説明する。先ず扉本体9を図1に仮想線Fで示す開扉状態から伸長させて図1に実線で示すように閉扉するときには、扉本体9の移動柱14の把手16を持って戸当り柱11側へ引いて行く。すると、上段のパンタグラフ機構5の縦格子8と連結された最上部以外の交差部C2は縦格子8に対し移動タイプのピン軸4bを介して上方向に摺動し、下段のパンタグラフ機構6の縦格子8に連結された最下部以外の交差部C2は移動タイプのピン軸4bを介して下方向へ摺動して扉本体9は伸長する。その際、上段のパンタグラフ機構5の縦格子8と連結された最上部の交差部C1(固定タイプのピン軸4a)は縦格子8の定位置に、また下段のパンタグラフ機構6の縦格子8と連結された最下部の交差部C4(固定タイプのピン軸4a)も縦格子8の定位置にそれぞれ定着されてその上下位置に変動はないため、扉本体9の隣り合う縦格子8,8同士間の上端側および下端側にそれぞれ透き間が大きく生じることがなくて遮蔽感の低下半減を回避でき、門扉としての遮蔽感を確保でき、見映えも良好になる。
【0033】
斜架材2,3同士の各交差箇所間の距離について、具体的には、例えば、図2に示すように、上段のパンタグラフ機構5の斜架材2,3の交差部C1と交差部C3間の距離d1は154mm、交差部C3と交差部C2間の距離d2は154.5mmとする。図4に示すように、下段のパンタグラフ機構6の斜架材2,3の交差部C2と交差部C3間の距離d3は155,5mm、交差部C3と交差部C4間の距離d4は156mm、交差部C4と交差部C5間の距離d5は156.5mmとする。
このように上方側の交差部間の距離を、下方側の交差部間の距離よりも小さくすることによって、図16に示すように無重力状態での扉本体9、あるいは扉本体9を地面上に寝かせた状態(扉本体9を水平状態に置き扉本体9に縦方向の荷重を与えない状態)で伸長させると、扉本体9は移動側端が次第に上昇する逆扇状に伸長する。
しかしながら、このような扉本体9の吊元側端を吊元柱10等の固定部材に連結すると、扉本体9の重力、斜架材2,3における各ピン軸4a、4b、4c,4dとのクリアランス、斜架材2,3の撓み等により、扉本体9の移動側端に垂れが発生する。この扉本体9の垂れによる下降量と、無重力状態での扉本体9の逆扇状の変形による上昇量とが相殺されて、扉本体9は略水平に移動し、扉本体9の移動側端の垂れによる不具合を解消することができる。
【0034】
図1のように扉本体9を全閉した後は、扉本体9の移動柱14に設けた錠前15によって移動柱14を戸当り柱11に施錠する。
【0035】
つぎに、扉本体9を図1に実線で示す全閉状態から収縮して開く場合は、扉本体9の移動柱14の把手16を持って吊元柱10側へ引いて行く。すると、上段のパンタグラフ機構5の縦格子8と連結された最上部以外の交差部C2は縦格子8に対し移動タイプのピン軸4bを介して下方向に摺動し、下段のパンタグラフ機構6の縦格子8に連結された最下部以外の交差部C2は移動タイプのピン軸4bを介して上方向へ摺動してパンタグラフ機構5,6が収縮し、隣り合う縦格子8,8同士の間隔が一様に狭まって行くので、吊元側に扉本体9を収縮状態に納めることができる(図1の仮想線Fの状態図を参照)。
【0036】
図1に示す実施例では、扉本体9を伸ばした閉扉状態において、下段のパンタグラフ機構6の斜架材2,3と縦格子8とが成す角度θ1と、上段のパンタグラフ機構5の斜架材2,3と縦格子8とが成す角度θ2とを等しくする、つまり下段のパンタグラフ機構6の斜架材2,3と上段のパンタグラフ機構5の斜架材2,3とを平行に配置してあるが、これに代えて、扉本体9を伸ばした閉扉状態において、下段のパンタグラフ機構6の斜架材2,3と縦格子8とが成す角度θ1は、上段のパンタグラフ機構5の斜架材2,3と縦格子8とが成す角度θ2よりも小さく設定することができる。
これによると、扉本体9を伸ばした閉扉状態において、下段のパンタグラフ機構6の斜架材2,3と縦格子8とが成す角度θ1と、上段のパンタグラフ機構5の斜架材2,3と縦格子8とが成す角度θ2とを等しくする、つまり下段のパンタグラフ機構6の斜架材2,3と上段のパンタグラフ機構5の斜架材2,3とを平行に配置するものに比べ、無パンタグラフ機構ゾーン7の上下間隔を狭くすることができるため、それだけ伸縮門扉1による遮蔽感をより高めることができる。
【0037】
上記実施例では、上下二列のパンタグラフ機構5,6、無パンタグラフ機構ゾーン7を備えた伸縮門扉について説明するが、本発明はパンタグラフ機構を一列のみ備える伸縮門扉にも同様に適用できる。また上記実施例の片開き伸縮門扉以外に、両開き伸縮門扉にも適用でき、そのほか扉本体9の下部にキャスターを付ける伸縮門扉などにも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 伸縮門扉
2 吊元側上がり(右上がり)斜架材
3 吊元側下がり(右下がり)斜架材
4a,4b,4c,4d ピン軸
5 上段のパンタグラフ機構
6 下段のパンタグラフ機構
9 扉本体
10 吊元柱
23・23 第1辺部
24・24 第2辺部
23a 第1辺部の上端縁
23b 第1辺部の下端縁
24a 第2辺部の上端縁
24b 第2辺部の下端縁
25・25 第3辺部
26・26 第4辺部
25a 第3辺部の上端縁
25b 第3辺部の下端縁
26a 第4辺部の上端縁
26b 第4辺部の下端縁
27,28 リブ
29 上部エンドキャップ
29a 上部エンドキャップの差込脚部
29b 上部エンドキャップの頭側端縁
29c 上部エンドキャップの鍔
30 下部エンドキャップ
30a 下部エンドキャップの差込脚部
30b 下部エンドキャップの頭側端縁
30c 下部エンドキャップの鍔
31 孔
51 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の吊元側上がりに傾斜した斜架材と吊元側下がりに傾斜した斜架材とが交差し、交差部がピン軸で枢着された伸縮自在なパンタグラフ機構と、このパンタグラフ機構に上下方向に跨って配置された伸縮方向に複数個の縦格子とを備えた扉本体を形成し、この扉本体の吊元側端を吊元柱等の固定部材に連結する伸縮門扉において、
前記斜架材は、相対向する第1,2辺部及び第3,4辺部を有する断面四辺形の金属パイプ材からなり、前記第1,2辺部の上端縁および下端縁はそれぞれ凸円弧形状に形成され、前記第3,4辺部の上端縁および下端縁はそれぞれ切除されており、
前記斜架材の上端部には上部エンドキャップが、前記斜架材の下端部には下部エンドキャップがそれぞれ挿入嵌合され、上部エンドキャップ、下部エンドキャップはそれぞれ前記斜架材の各内部空間に嵌合する差込脚部を有し、上部エンドキャップの差込脚部の頭側端縁は前記斜架材の第1,2辺部の上端縁の凸円弧形状に合致する凸円弧形状に形成され、下部エンドキャップの差込脚部の頭側端縁は前記斜架材の第1,2辺部の下端縁の凸円弧形状に合致する凸円弧形状に形成されており、
前記上部エンドキャップの差込脚部の凸円弧形状の頭側端縁の外周に沿って鍔が、前記斜架材の第1,2辺部の凸円弧形状の上端縁および第3,4辺部の上端縁をそれぞれ覆う形に形成され、前記下部エンドキャップの差込脚部の凸円弧形状の頭側端縁の外周に沿って鍔が、前記斜架材の第1,2辺部の凸円弧形状の下端縁および第3,4辺部の下端縁をそれぞれ覆う形に形成されていることを特徴とする、伸縮門扉。
【請求項2】
前記上部エンドキャップおよび下部エンドキャップの各差込脚部には前記ピン軸が挿通する孔が設けられている、請求項1記載の伸縮門扉。
【請求項3】
前記斜架材の第1,2辺部の内面にリブがその長手方向にわたって設けられ、前記上部エンドキャップおよび下部エンドキャップの各差込脚部には前記リブに嵌合する凹溝が形成されている、請求項1又は2記載の伸縮門扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−202027(P2012−202027A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64702(P2011−64702)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【出願人】(000230928)シコク景材株式会社 (18)
【Fターム(参考)】