説明

位相シフトによる画像コントラストの形成方法および形成装置

【課題】画像コントラストをさらに改善し、しかもその際に許容できないエラーの原因とならないようにすることである。
【解決手段】少なくとも1つの歪像(6、6’)を形成および補償するために、当該歪像(6、6’)の前方および後方に配置された四重極場(Q’、Q’、Q12’、Q14’)を用い、該四重極場の光軸(10)方向における拡がりがそれらの焦点距離の少なくとも2倍に相当するようにし、前記軸光線(xα、yβ)の少なくとも1つが、中間画像(5)の倍率Mの相応の選択によって四重極場(Q’;Q12’)に、前記少なくとも1つの歪像(6、6’)の前方で1/Mの勾配で入射し、当該歪像(6、6’)の長さ(7)は許容可能なエラー範囲内に留まるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子光学系において位相シフトにより画像コントラストを形成する方法に関する。ここでは中間画像に基づいて四重極場により軸光線の歪像が形成され、同時に場光線が少なくとも1つの回折中間画像面でゼロ通過し、そこでは磁界または電界により相対的位相シフトが、0次回折の電子ビームの周辺領域と高次回折した電子ビームとの間で引き起こされ、その後、別の四重極場によって、ビーム路に形成された少なくとも1つの歪曲が再び補償される。
【0002】
本発明はさらに前記方法を実施するための、入力側に四極子を備える装置に関する。この四極子は中間画像に基づいて、軸光線および場光線が2つの垂直区間にフォーカスまたはデフォーカスされるような四重極場を形成し、当該フォーカスまたはデフォーカスによって、回折中間画像面では軸光線が歪像を形成し、場光線がそれぞれゼロを通過するようになり、折中間画像面の領域には、次のような四重極場を備える中央四極子が配置されており、すなわち前記四重極場では、軸光線が当該場に入射するのとは反対に経過する傾斜を以て当該場から出射し、2つの別の四極子が四重極場を形成し、該四重極場は、入力側の四極子の四重極場と同じ大きさと符合であり、これによりビーム路の歪曲が再び補償され、回折中間画像面には位相シフト素子が配置されており、該位相シフト素子の磁界または電界は、0次の回折電子ビームの領域と、高次の回折電子ビームとの間に相対的位相シフトが生じるように配向されている。
【0003】
本発明はまたこの方法を実施するための、入力側に四極子を備える装置に関する。この四極子は中間画像に基づいて、軸光線および場光線が2つの垂直区間にフォーカスまたはデフォーカスされるような四重極場を形成し、当該フォーカスまたはデフォーカスによって、回折中間画像面では軸光線が歪像を形成し、場光線がそれぞれゼロを通過するようになり、回折中間画像面の領域には、次のような四重極場を備える中央四極子が配置されており、すなわち前記四重極場では、軸光線が当該場に入射するのとは反対の傾斜を以て当該場から出射し、回折中間画像面には第1の位相シフト素子が配置されており、該第1の位相シフト素子の磁界または電界は、0次の回折電子ビームの領域と、高次の回折電子ビームとの間に相対的位相シフトが生じるように配向されている。
【背景技術】
【0004】
光学顕微鏡の場合と同じように、電子顕微鏡でも多くの対象物がビームに対してほぼ透明であり、そのため従来の画像形成ではわずかな振幅コントラストしか生じない。しかし軸光線も場光線も対象物を通過する際に、対象物の構造に依存して位置変化する位相シフトを受ける。これによってビームは対象物内で、回折されない、いわゆる0次ビームと、複数の回折次数を有する回折されたビームとに分割される。
【0005】
0次ビームの位相がシフト(有利には90°)されることによって、画像面で0次ビームが回折ビームと再び重畳すると、対象物の位相変調が強い振幅コントラストに変化される。これは位相コントラストとして知られている(例えば非特許文献1を参照)。このような位相シフトには、ビームが対物レンズの焦点面において種々異なる焦点を形成するという事実が利用される。したがって、0次ビームはこの0次ビームに対する焦点面に1つの中央焦点を形成し、この中央焦点は1次の回折から始まって種々異なる次数の回折ビームの焦点によって取り囲まれる。これらの焦点は実質的に同じ焦点面にある。この事実を利用して、0次ビームまたは回折ビームの位相シフトを生じさせることができる。そしてこれによって、位相差を相殺し、振幅を増幅することができる。
【0006】
しかし光学系とは異なり、電子ビームには位相板を保持することのできる透明なプレートがないということが問題である。したがってこの問題を解決するために、種々の形式の位相シフト素子が提案された。これは、位相シフト素子が回折ビームの領域により通過され、これにより0次ビームの領域が検出されるという事実に基づく。しかし0次ビームのみを検出することは技術的に不可能であることに留意されたい。なぜならナノメートル領域の電界が必要であり、このような電界は現在の技術手段では形成することができないからである。この理由からそれぞれの位相シフト素子の構成に応じて、回折ビームも多少の影響を受ける。これらの提案の多くでは、位相シフト素子がリング構造を有している。このリング構造は0次ビームの領域を含み、0次ビームの位相シフトに必要な場をそこに適用する。しかしこの場合、回折ビームが甚だしく遮蔽されてしまい、この回折ビームをコントラスト形成に使用することができなくなってしまう。この理由から特許文献1により、片側でだけ0次ビームの領域に伸長しており、そこに必要な場を適用する位相シフト素子が提案されている。このようにして相互に180°ずらして対向された領域は遮蔽されず、この位相シフト素子では、回折ビームの遮蔽成分を復元し、これをコントラスト形成のために完全に使用することができる。
【0007】
この問題の別の解決手段は、特許文献2により提案された、冒頭に述べた形式の位相シフト素子である。この位相シフト素子は上記の方法にしたがって動作する。この方法は、四重極場により歪像が回折中間画像に形成されることに基づくものである。この位相シフト素子により、場を備える0次ビームまたは回折ビームが達成され、これにより相対的位相シフトが、0次回折の電子ビーム周囲の領域と高次の回折電子ビームとの間に発生する。このようにして装置の構成部材が回折ビームを遮蔽しないことが達成される。これのさらなる利点は、これらのビーム成分を別個に検出することであり、これによりコントラスト形成が格段に改善される。0次ビームと回折ビームは、歪像中に中央から外に向かって一列に配列されている。これにより、0次ビームも回折ビームもともに比較的正確に1つの場により検出することができる。しかしここでは歪像の長さを、0次ビームまたは回折ビームの良好な検出のために任意に拡張することはできない。なぜならこのような拡張は1つには、電子光学系を含む電子顕微鏡の管の大きさによって装置技術的に制限されているからである。もう1つには、歪像の長さの拡大は大きく拡張すると、許容できないエラーの原因となり、そのためこのようにして得られた高い画像品質が再び失われてしまうことになるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE 10 2006 055 510 A1
【特許文献2】DE 10 2007 007 923 A1
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Reimer, Kohl, "Transmission Electron Microscopy", p.211 ff 5th Edition, 2008
【非特許文献2】Prof. Rose "Geometrical Charged-Particle Optics", p.81 ff
【非特許文献3】Rose, ibid. p.82, "Lagrange-Helmholtz formula"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の基礎とする課題は、冒頭に述べた形式の方法および装置において画像コントラストをさらに改善し、しかもその際に許容できないエラーの原因とならないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は冒頭に述べた形式の方法に関しては本発明により次のようにして解決される。すなわち、少なくとも1つの歪像を形成および補償するために、当該歪像の前方および後方に配置された四重極場を用い、該四重極場の光軸方向における拡がりがそれらの焦点距離の少なくとも2倍に相当するようにし、軸光線の少なくとも1つが、中間画像の倍率Mの相応の選択によって四重極場に、少なくとも1つの歪像の前方で1/Mの勾配で入射し、歪像の長さは許容可能なエラー範囲内に留まることが達成されるようにするのである。
【0012】
この課題は冒頭に述べた形式の装置に関しては本発明により次のようにして解決される。すなわち、回折中間画像面の前方および後方に配置された四極子が、光軸の方向でそれらの焦点距離の少なくとも2倍に相当する拡がりを有し、当該装置は、電子顕微鏡の投影レンズ系のビーム路の次の個所に配置されるように構成されており、すなわち前記個所は軸光線が、倍率Mで中間画像を形成した後、第2の四極子の四重極場に歪像の前方で勾配1/Mを以て入射する個所であり、歪像の長さが許容可能なエラー範囲に留まる歪みしか形成しないようにするのである。
【0013】
この課題は冒頭に述べた形式の第2の装置に関しては次のようにして解決される。すなわち、回折中間画像面の後方に四極子が配置されており、該四極子が回折中間画像面の前方と後方で光軸方向に、それらの焦点距離の少なくとも2倍に相当する拡がりを有し、すべての四極子に関して中央対称面の後方に3つの四極子が続き、それら四極子の場はそれらより前方の3つの四極子の場と同じ大きさであるが、90°回転されており、次に大きさは同じであるが、第1の四極子の場に対して90°回転された場を備える四極子が続き、前記回折中間画像面の前方および後方にある四極子の場は次のように相互に異なるように調整可能であり、すなわち、軸光線が中央対称面に倍率Mの別の中間画像を形成し、場光線が相互に交差するように調整可能であり、四重極場が90°回転された相応する四極子も、中央対称面の後方で同様に相互に異なるように調整可能であり、これにより当該装置の端部に倍率Mの第3の中間画像が発生し、軸光線と場光線とが当該四重極場を、x区間ではこれらが最初の4つの四重極場をy区間で通過するように通過し、y区間では最初の4つの四重極場を以前にx区間で通過したように通過し、第2の中央四極子には、別の歪像を備える第2の回折中間画像面が発生し、該別の歪像は前記第1の歪像に対して90°回転されており、第2の回折中間画像面には別の位相シフト素子が配置されており、該別の位相シフト素子の磁界または電界は、0次の回折電子ビームの領域と、高次の回折電子ビームとの間に相対的位相シフトが生じるように配向されており、当該装置は、電子顕微鏡の投影レンズ系のビーム路の次の個所に配置されるように構成されており、すなわち前記個所は軸光線が、倍率Mで中間画像を形成した後、第2の四極子の四重極場に歪像の前方で勾配1/Mを以て入射する個所であり、歪像の長さは許容可能なエラー範囲内の歪みを形成するに留まる。
【0014】
本発明は、良好な位相コントラスト形成のためには、歪像の長さだけでなく、その長さと幅との比、すなわちアスペクト比も重要であることを基礎として認識する。このアスペクト比が大きくなれば、より良好に0次ビームを純粋に検出することができる。またはすべての回折次数のビーム、とりわけ0次ビームと次の1次回折ビームを良好に検出することができる。
【0015】
この認識に基づき上記課題から出発して、歪像の長さだけを、許容できないエラーを発生させないようにするだけでなく、アスペクト比を格段に拡大することのできる手段を採ることが目的である。ここで許容可能なエラーとは、画像品質をいずれのやり方でも画像評価に対する欠点となるよう悪化させないことであると理解すべきである。
【0016】
歪像の上記長さを維持する際には、大きなアスペクト比を達成するために3つのパラメータを使用することができる。まず第1は、軸方向で回折中間画像面の前方にある四極子または四重極場の拡がりである。もちろんこの拡がりは、意図的に引き起こされる画像歪みを再び補償するため、回折中間画像面の後方の四極子またはその後方の四重極場の拡がりと同じ大きさである。ここでは所望のアスペクト比の大きさを達成するために、軸方向のこの拡がりはこの四極子の焦点距離の少なくとも2倍に相当すべきである。第2のパラメータは四極子の場の強さであり、これはもちろん軸方向の拡がりと結び付いている。なぜなら焦点距離はこの拡がりの尺度だからである。ここでは相応の大きさの場の強さにより、四極子を機器技術的に不利な長さに構成しなければならない事態が回避される。したがって場の強さは、相応する装置の構造高さが通常の電子顕微鏡のビーム管の長さを上回らないような大きさにしなければならない。そうでないとビーム管を、そのための通常の空間に設置できなくなる。
【0017】
最後に、軸光線が所定の傾斜を以て回折中間画像面の前方または後方の四重極場に入射することが必要である。これは歪像の前記長さを維持して大きなアスペクト比を、装置の大きさが取扱い可能である範囲で達成するためである。ヘルムホルツの法則によれば(非特許文献2)、倍率Mの像を有する中間画像から軸光線が傾斜1/Mで出射し、この軸光線がMだけ縮小された回折中間画像面を引き起こす場合にこの法則が成り立つ(非特許文献3)。簡単に表現すると、倍率の大きな中間画像は軸光線の平坦な傾斜を有しており、この平坦な傾斜が回折画像の相応の縮小を再び引き起こす。中間画像の倍率Mを相応に選択することによって、軸光線の傾斜1/Mを選択することができ、これにより小さな仮想回折像が得られる。これにより回折中間画像面にアスペクト比が大きく、許容可能な長さの歪像を達成することができる。ここで歪像は、傾斜1/Mの軸光線から形成される。この傾斜は強く縮小された回折像を、四重極場を配置しなくても引き起こすことができる。しかし四重極場は以前から作用しているから、この作用は仮想のものに留まり、四重極場は軸光線に、歪像が中間画像面で相応に縮小されるように作用する。これにより歪像は取扱い易い長さであっても非常に狭くなり、したがって大きなアスペクト比を有する。ここでは0次ビームが中央にあり、外側に向かって回折ビームが一列に配列される。これによってゼロ次ビームまたは回折ビームの理想的な位相シストが達成され、その際に許容可能な構造寸法を越えることはない。
【0018】
これに対して軸方向拡がりが焦点距離の2倍よりも小さい四重極場を使用すると、特許文献2の図17、18から分かるように、10以上の大きなアスペクト比を達成することができない。さらに、歪像の長さ達成することができない。さらに画像品質を悪化させるような歪みを引き起こす歪像の長さを我慢しなければならない。このことは機器技術的に取扱い不能である。なぜなら、非常に長い歪像を収容するために電子顕微鏡のビーム管の直径を拡大することは許容できないからである。むしろ装置は、その製造業者により取り付けるべき機能エレメントして許容されるように電子顕微鏡の通常の寸法を指向すべきである。
【0019】
これに対して本発明は、アスペクト比が100以上または可能であれば200以上の強コントラスト画像を達成することを目的とし、装置技術的に取扱い可能であり、許容可能である大きさの装置において画像悪化なしで達成されるようにする。このことは上記手段によってのみ可能である。とりわけ(倍率Mの)大きな中間画像から発する軸光線の平坦な傾斜1/Mが、アスペクト比が100以上の歪像を形成するために次の場合だけ使用される。すなわち四極子が回折中間画像面またはその場の前方で、相応の場の強さ下で少なくとも焦点距離の2倍の軸方向拡がりを有する場合だけ使用される。これにより許容可能な構造高さが得られる。第2の歪像が形成される場合、この第2の歪像に対しても、ビーム径路に対して反対称条件があるから同じことが当てはまる。これについては後で詳細に説明する。
【0020】
本発明の装置は、電子顕微鏡のそれぞれの構造形式に適合しなければならない。この構造形式に相応して、投影レンズ系での中間画像の倍率がMである個所が、装置を上記のように取り付けるために選択される。反対に、この倍率Mをどの程度の大きさに選択するかは、電子顕微鏡の構造形式に依存する。解像度が高く、倍率の大きな電子顕微鏡では、200またはそれ以上の高いアスペクト比が期待され、したがって小さなアスペクト比しか要求されない機器の場合よりも大きな倍率Mが選択される。電子顕微鏡への要求が低い場合には、ビーム管の直径も小さく、機器の構造高さは、デッキ高さが通常の作業空間に設置できる程度である。この場合、中間画像の倍率Mが低く、アスペクト比も小さくて十分である。しかし歪像の長さが短くなければならない場合、回折中間画像面の前方および後方に配置された四極子の焦点距離も、その構造高さを制限するために同様に短くなければならない。このことはこのような機器の低い構造高さと、小さなビーム管直径を考慮しなければならない。要求の大きな機器は、格段に直径の大きなビーム管を有する。なぜなら、レンズの寸法がビーム束の幅に相応して大きくなるからである。このような機器は比較的に高い構造高さを有し、したがって設置のために相応に天井の高い空間が用意される。これにより前記の寸法を拡大することできる。しかし達成すべき位相コントラストへの要求も相応に大きくなる。
【0021】
前記の条件および所望の要求に応じて、本発明の装置の相対的寸法を選択しなければならない。解像度の高い電子顕微鏡の場合、例えば400のアスペクト比を選択することができよう。しかしこのように大きなアスペクト比を取り扱うために、歪像の長さも比較的に長く選択すべきである。直径の大きなビーム管では、歪像もそのような大きな長さを有することができ、許容できない歪みを生じることもない。相応して倍率の大きな中間画像が選択され、それぞれの機器の加速電圧とビーム路に相応して歪像の長さがビーム管の所定の管直径内で、一方では構造的に可能であり、しかし他方では歪みの原因が許容可能な程度を上回らないように歪像が選択される。
【0022】
したがって当業者であれば、電子顕微鏡のそれぞれの構造形式、大きさ、および機器への要求により、それぞれの構造形式に対する相対的データを特定することができるパラメータが得られる。
【0023】
四重極場は公知のように、動作原理には何の役目も果たさない磁界または電界とすることができる。位相シフトにために電界または磁界を使用することができ、この場合、電界が有利である。なぜなら一方では、このため特別に強力な電界を必要としないからであり、他方では電界は所定の制限された位置的拡がりの範囲内でより良好に適用されるからである。
【0024】
方法に関してもっとも簡単な場合、少なくとも5つの四重極場を使用してただ1つの歪像を形成し、再び補償することができる。この場合、そこに適用される磁界または電界が、近似的に90゜の相対的位相シフトに作用する場の強さを有すると有利である。しかし所定の対象物の場合、それ以外の位相シフトによってより良好なコントラスト形成が達成されることも除外しない。それに関しては調整が容易な方が有利である。
【0025】
場配置構成は二重にすることができる。すなわちビームを歪ませて変形し、続いてこの変形を再び元に戻す少なくとも5つの四重極場に再び、反対に極性付けられた少なくとも5つの四重極場が続くようにすることができる。この場合、2つの場配置構成の間に、すなわち対称面のエレメントと、反対称の平面内の場を基準にして中間画像がなければならない。第1の場配置構成の最後の四重極場の後に、この別の中間画像が発生するようにするため、中間画像が場配置構成の入力側で第1の四重極場の前になるように場を配置しなければならない。この条件が満たされれば非対称のビーム経過により、装置の第2の半分で軸光線と場光線がx区間を、以前にy区間を通過したように通過し、y区間を以前にx区間を通過したように通過するようになる。このようにして再度、90°回転された歪像が形成され、再び補償される。この場合、形成された2つの歪像には磁界または電界が相対的位相シフトのために適用され、これがそれぞれの位相シフトが近似的に45°であるような場の強さであると有利である。もちろんこの場合も、所定の対象物ではそれとは異なる位相シフトが有利であり得る。
【0026】
前記の措置では、ビームが第1の歪像に続く四重極場を出射した後、第2の歪像に前置された四重極場に入射するときと同じ傾斜を有する。このようにして、ビームが第1の歪像に直接続く四重極場から、第2の歪像に前置された四重極場に移行することが可能である。このようにして四極子配置構成を基準にした中央対称面だけが存在する。しかしこの中央対称面は、場に関しては反対称の平面である。しかし2つの場配置構成は、四重極場を省略することによりそれぞれそれ自体の中に対称性を有していない。このことは、ビームの傾斜が上記の二重対称配置構成と比較して異なることの原因となる。したがって場配置構成を組み合わせることは、それぞれの歪みを完全に補償するために調整手段を必要とする。
【0027】
この目的のために、回折中間画像面の前方と後方に配置された第1の場配置構成の四重極場を次のように相互に異なって調整しなければならない。すなわち軸光線が第2の中央対称面で倍率Mの別の中間画像を形成し、場光線が相互に交差するように調整しなければならない。しかし装置の端部には倍率Mの第3の中間画像を形成しなければならないから、第2の回折中間画像の前方および後方にある相応の四重極場を次のように相互に異なって調整しなければならない。すなわち同様に倍率Mを有する第3の中間画像が発生するように調整しなければならない。
【0028】
前記の場配置構成は、それぞれ5つの四重極場を備える二重対称性から出発して、それぞれ5つの四重極場の最初と最後の四重極場が前記条件の下で省略されたものと言うことができる。しかしそれによって、前記の補正が行われればビーム径路の反対称性および全体機能が変化することはない。場数が多い場合、ビーム経過の相応の反対称性が保証される程度に相応に多数の場を省略することができる。
【0029】
近似的にそれぞれ45°で2回位相シフトを行う前記場配置構成の利点は、これにより所定の構造においてより良好な画像コントラストが達成されることである。しかしこの場合も、所定の対象物では位相シフトの大きさに関して例外である。
【0030】
0次ビームと回折電子ビームとの間の前記相対的位相シフトは、両方のビーム領域に場を適用することによって行うことができる。しかし2つのビームのうちの1つでだけ位相シフトを行うのが有利である。このようにして磁界または電界が0次ビームの領域にだけ適用され、例えば近似的に90°の位相シフトまたは近似的に45°で2回の位相シフトが行われる。反対に磁界または電界を回折ビームの領域にだけ適用して、前記の位相シフトを行うこともできる。
【0031】
歪像の前方または後方に直接配置され、この歪像を形成し、補償するための四重極場は有利には光軸の方向に、反対称の中間画像がその作用領域形成されるような拡がりと強さを有する。このようにして場の強さは光軸方向での拡がりも決定するから、光軸方向での拡がりは場の強さを相応に設定することにより制限すべきである。このようにすれば、この方法により動作する装置を組み込むことにより、電子顕微鏡のそれぞれの構造形式で許容できないほど構造高さが大きくなることがない。構造高さは、それぞれの構造形式とこの構造形式に対して通常設けられる作業空間の高さに依存する。光軸方向での拡がりの大きさは、焦点距離の少なくとも2倍に相当する。したがってこの2つの仕様は同じ結果をもたらす。しかし焦点距離は軸光線の経過から直接的に明白である。
【0032】
アスペクト比を100以上、または200以上に選択されているかどうかも、それぞれの機器形式の倍率と解像度に依存する。機器の光学的特性に対する要求が大きければ、それだけアスペクト比も大きくすべきである。これにより0次ビームと回折ビームの領域が引き伸ばされるので、より良好な画像コントラストを達成することができる。
【0033】
本発明の装置は上記方法にしたがって動作する。この方法とその改善形態は装置の作用機序を決定し、反対に作用機序に基づく装置の開示内容はこの方法の説明の補完に利用することができる。
【0034】
すでに上に説明した装置は、少なくとも5つの四極子を備える単対称構造に関連する。この構造は本発明による位相シフトを必要とする。もちろんこのような装置に、さらに多くの四極子または多極子を組み込むことができる。これにより色誤差、開口誤差または種々異なる次数の軸歪みまたは軸外歪みを補正することができる。しかし5つ以上の四極子も、本発明にとって必要なビーム経過を形成するために使用することができる。
【0035】
単対称構造はただ1つの歪像を形成するには有利である。この歪像は、近似的に90°の相対的位相シフトを、位相シフト素子による磁界または電界によって形成するのに用いられる。もちろんすでに述べたように、所定の対象物では別の位相シフトを行うこともできる。所定の領域で、通例は90°の領域で位相シフト素子の場を変化することにより装置を調整し、これにより対象物の最適のコントラストを形成することも有利である。
【0036】
前記装置の改善形態では、この装置に光軸上で第2の装置が後置される。この第2の装置の四極子は第1の装置の四極子に相当する。しかしその場は反対の極性である。これにより第1の装置の歪像に対して90°回転された歪像が得られる。さらにこの装置を、電子顕微鏡の投影レンズ系のビーム路に、中間画像が第1の四極子の前方になるように配置することができるよう構成しなければならない。そして前記2つの装置は、統合によって生じる対称面内に倍率Mの別の中間画像が形成されるように1つの装置に統合される。そして第2の装置の位相シフト素子も同様に90°回転して配置される。これによりこの装置は、相対的位相シフトのための磁界または電界を、0次回折の電子ビームの領域とこの第2の歪像の高次回折の電子ビームとの間に形成する。
【0037】
したがってこの装置では、第1の装置と第2の装置の直列接続により、当該装置が二重化されており、装置間にはエレメント構成に関して対称面が存在する。しかし第2の装置の場は第1の装置の場に対して反対に極性付けられているから、軸光線と場光線が第2の装置のx区間を、第1の装置のy区間のように通過し、第2の装置のy区間を第1の装置のx区間のように通過する。したがって二重対称構造から反対称のビーム経過が得られる。この反対称のビーム経過は最後の四極子の後方の出口側で第3の中間画像を形成する。ここでは良好な位相コントラストが次のようにして達成される。すなわち、2つの歪像に作用する位相シフト素子が、それぞれ近似的に45°の位相シフトを生じさせる電界または磁界を有することによって達成される。もちろんここで所定の対象物に対して、別の角度がより良好なコントラストを引き出すこともある。
【0038】
前記第2の装置は基本的に同じように機能する。しかし記装置との相違点は、二重対称を有していないことである。なぜなら第1の回折中間画像面に後置された四極子には、第2の回折中間画像面に前置された四極子が直接続くからである。したがって上に説明した装置から出発して、それぞれ5つの四極子を備える2つの装置を統合するのではなく、簡素化のために第1の装置では第5の四極子を省略し、第2の装置では第1の四極子を省略する。
【0039】
このような二重対称性のない装置では、第1の回折面に後置された四極子を出射するビームの傾斜が、第2の回折面に前置された四極子に入射するビームに傾斜に相当する。しかし統合された2つの部分装置では、2つの四極子が省略されているためそれ自身の中では対称ではないから、ビームの傾斜に差異が生じる。この差異は補正手段を必要とする。この補正のために、回折中間画像面の前方と後方に配置された四極子の場を次のように相互に異なって調整する。すなわち軸光線が中央対称面に倍率Mの別の中間画像を形成し、場光線が相互に交差するように調整する。しかし中央対称面に関しての全体対称性は保証しなければならないから、第2の装置の相応する四重極場を同じように調整しなければならない。ここでは、反対の極性の場の強さを同時に調整するか、または場の強さを結果指向で、装置の端部に倍率Mの第3の中間画像が発生するように調整する。基本的にこのことは同じでなければならない。しかし後者の手段によって製造公差によるエラーを付加的に補正することができる。
【0040】
もちろんこれは相応にして、5つ以上の四極子を備え、そのうちの相応の四極子が省略された対応する2つの装置を統合した場合にも当てはまる。したがって統合個所では第1の回折中間画像面に後置された四極子と、第2の回折中間画像面に前置された四極子だけが残っている。
【0041】
したがって前記装置は、別の装置および方法と同じように本発明の機能に必要な四極子または四重極場だけを含んでいる。例えば付加的な色誤差補正または他のエラー補正を達成するために別の四極子または多極子または場が付加的に配置されている場合、これらは本発明の機能への単なる追加であるから、本発明を評価するためには不要である。
【0042】
もちろんすべての装置に関してビーム路を、単軸対称の装置のための5つの四極子、または二軸対称の装置のための10の四極子により分割するのではなく、複数の別の四極子に分割することができる。しかし四重極場の1つの作用が例えば2つの場に分割される場合でも、これは本発明による場の作用または本発明による四極子の作用と同じである。相応にしてこのことは、2つの個別の装置の統合の際に四極子が省略され、二軸対称でなくなった装置に対しても、ビーム路の反対称性が維持されていれば当てはまる。
【0043】
二軸対称の装置の場合と同じように、これと比較して四極子が省略された装置でも、各回折中間画像面には磁界または電界を備える位相シフト素子が配置される。有利にはこの位相シフト素子は、それぞれ近似的に45°の位相シフトを生じさせる。
【0044】
この方法に相応して装置の場合でも有利には、少なくとも1つの歪像を形成し、補償するための四極子が、光軸方向に拡がりを有し、非点収差の中間画像をその作用領域に形成することができる場を形成するように構成されている。この場合も、四極子の軸方向の拡がりが装置の構造高さを拡大しても、電子顕微鏡に取り付けるための空間内に収まるように場の強さを選択すべきである。この寸法設定により、すでに方法について述べたように、焦点距離の少なくとも2倍に相当する光軸方向の拡がりが結果として生じる。したがってこのような寸法設定はいろいろなやり方で達成することができる。
【0045】
位相シフト素子にとっては、その場が磁界または電界であるかに関係なく、0次回折の電子ビームの領域にあるビームと、高次回折の電子ビームとの間に相対的位相シフトを引き越すことが重要である。この前提の下でもちろん場は0次ビームと回折ビームの2つの形式のビームに作用することができるが、有利には位相シフト素子は、磁界または電界が0次ビームの領域に適用可能であり、回折ビームの領域がゼロ電位であるように構成される。またはその反対である。
【0046】
この種の位相シフト素子の具体的構成は従来技術で公知であるが、ここで例として2つの手段を説明する。
【0047】
フールドを0次ビームの領域に適用するための位相シフト素子の1つの可能な構成では、電界を形成するための位相シフト素子が遮蔽された導体として構成されており、この導体はケーシング壁での固定によって、回折中間画像面から発して、0次ビームの領域へ半径方向に伸長するよう配置されており、前記遮蔽された導体は0次ビームの領域の前方に端部を有し、この導体を包囲するシールドと導体との間に電界が形成され、この電界が0次ビームの当該領域に作用するように前記端部が位置決めされている。
【0048】
位相シフト素子に対する別の実施例では、0次ビームの領域がゼロ電位にあり、場が回折ビームの領域で適用可能であり、位相シフト素子は電界を形成するためにスリットを有し、このスリットが歪像を取り囲み、スリットに沿って両側に、電極が電界を適用するために伸長しており、この電極は0次ビームの領域に対しては光軸の領域で、ゼロ電位にある各導体によって分断されている。
【0049】
この位相シフト素子では、歪像の長手側がスリットに、接触せずにできるだけ密に達していることが重要である。したがって、四極子が回折中間画像面の前方と後方で、歪像の幅がスリットの幅にちょうど適合するような場を形成すると有利である。このようにして場を回折ビームに、均等に所期のように適用することができる。
【0050】
本発明の課題は次のようにして最適に解決される。すなわち倍率Mの中間画像により少なくとも1つの歪像のアスペクト比が100以上となるような軸光線の傾斜1/Mが生じるよう、四極子が場の強さを有し、当該装置が電子顕微鏡の投影レンズ系のビーム路のそのような個所に配置されていることによって解決される。コントラスト形成についての比較的に高い要求のためには、とくに解像度が高く、倍率が大きい場合には、前記構成および場の強さによるアスペクト比を200以上にすべきである。
【0051】
本発明を以下、基本原理に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の技術思想を説明するための基本図である。
【図2】本発明の装置の簡単な構造を示す概略図である。
【図2a】本発明の装置のx区間におけるビーム経過を示す図である。
【図2b】本発明の装置のy区間におけるビーム経過を示す図である。
【図3】本発明の装置の二重対称構造を示す概略図である。
【図4】二重対称ではなく2つの四重極場が省略された本発明の装置の概略図である。
【図5】本発明の装置が組み込まれた電子顕微鏡の概略図である。
【図6】0次ビームの領域を調整するための位相シフト素子の実施例を示す概略図である。
【図6a】この位相シフト素子の場の電位経過を示す線図である。
【図7】回折ビームを調整するための位相シフト素子の実施例を示す概略図である。
【図7a】図7の位相シフト素子の断面A−Bを示す断面図である。
【図7b】この位相シフト素子の場の電位経過を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、本が発明の技術思想を説明するための基本図である。技術背景に関しては、非特許文献2(85頁、図4、9)における電子顕微鏡でのビーム路の説名を参照されたい。そこにはビーム路において、対象物の後方でどのように中間画像と回折画像が交番するかが示されている(非特許文献2、79頁、「それらの交互画像」)。そこでの電子顕微鏡の説明は、1つの投影レンズだけでなく投影レンズ系全体18(図5)が規則的に設けられており、さらなる中間画像および回折画像が発生する点で簡略化されている。ここで中間画像は、軸光線xαとyβが対象物の結像としてゼロを通るときに発生し、回折画像は、オフ軸光線yγとyδがビーム源の結像としてゼロを通過するときに発生する(図2aと2b)。所望のアスペクト比を達成するために必要な倍率Mの中間画像27を選択するために、このような数の中間画像が使用される。
【0054】
図1は、電子顕微鏡31内で対物レンズ17と本発明の装置1、2または3との間で対象物4から回折中間画像27がどのように形成され、また装置1、2または3の入力領域で、対象物4をM倍に拡大する中間画像5がどのように形成されるかを示す。ここで図示の倍率Mは象徴的なものであり、実際のMは図示のものより格段に大きい。これは小さな傾斜1/Mを達成するためであり、この傾斜は非常に縮小された回折画像28を生じさせる。そしてこの回折画像が歪像6、6’の縮小のための基礎となる。しかしこの回折画像28は通例、仮想回折画像28である。なぜなら装置1、2または3が、この回折画像が形成される前に、ビーム路に傾斜1/Mを以て介入し、歪像6、6’を形成する空である。したがって仮想回折画像28は、中間画像5の倍率Mに反比例する。したがって倍率Mによって相応に縮小された回折画像28、またはこの回折画像は仮想であるので相応に小さな傾斜1/Mを達成することができ、これにより本発明では同様に相応して縮小された歪像6、6’が達成される。この歪像6、6’は、アスペクト比が少なくとも100と大きくても、画像品質を悪化させるような歪みが発生しないように制限された長さ7を有する。ここで歪像6は回折画像である。なぜならxγとyσがゼロだからである(図2aと2b)。しかしこの回折画像は四重極場の作用によって歪まされている。したがって結像6の相応の歪みに相応して、長さ7の中央領域に0次ビーム13が存在し、電子ビーム15の外に向かって回折次数が高くなるとさらに外になるようそれぞれ高次の回折が配列されるように引き伸ばされる。
【0055】
ここでアスペクト比とは、歪像6の長さ7とその幅7’との比である。このようにして得られた大きなアスペクト比7/7’≧100が、0次ビーム13の領域14を高次回折の電子ビーム15(図6aおよび7b)から最適に分離するための基礎である。これにより良好な位相コントラストが達成される。中間画像5の倍率Mの選択は、少なくとも100のアスペクト比を達成するために、仮想回折中間画像28が、拡大されない元の中間画像に対して少なくとも20倍縮小されて表示されるように選択すべきである。中間画像5のこの倍率を達成するためには、装置を電子顕微鏡31の投影レンズ系18の相応の個所に取り付けなければならない。この個所とは、倍率Mのこのような中間画像5が形成される個所である(図5参照)。投影レンズ系18(しばしば複数の中間レンズと最後の投影レンズとも称される)は通例、中間画像を備える多数のレンズを含むから、中間画像5の相応の倍率Mを選択することができる。したがってここで装置1、2、3の取付け個所を求めるために、ビーム路およびレンズを詳細に説明する必要はない。このことは機器形式に依存しており、本発明の各装置1、2、3は電子顕微鏡の各構造形式のビーム路およびビーム管に適合しなければならない。
【0056】
図2は本発明の装置1の簡単な構造を示す概略図である。この装置は、入力側の2つの四極子QとQ、中央四極子Q、および出力側の2つの四極子QとQからなり、中央四極子Qの中心は対称面29を形成し、四極子Qは四極子Qに、四極子Qは四極子Qに相当する。対称面29には、種々異なる構成を有することができる位相シフト素子11または12が配置されている。さらに光軸10とチーム経過30が図示されている。
【0057】
図2aは、x区間における図2の装置1のビーム経過を示す。光軸10のあるz軸に沿って四極子Q、Q、Q、Q、Qの四重極場Q’、Q’、Q’、Q’、Q’が示されている。ここでは四重極場Q’の中央に対称面29があることが分かる。この対称面29は回折中間画像面8であり、この中に位相シフト素子11または12も存在する。回折中間画像面8に前置および後置された四重極場Q’とQ’は同じ強さであり、構造高さを極端に大きくしなくても、光軸10の方向に、焦点距離の少なくとも2倍に相当する拡がりを有するような強さである。入力側と出力側の四重極場Q’とQ’も同じ強さであり、対称面29に対して対称である。ここで四重極場Q’は、四重極場Q’およびQ’とは反対に極性付けられている。
【0058】
図2bは、y区間における同じ四重極場Q’、Q’、Q’、Q’、Q’の同じビーム経過を示す。
【0059】
x区間とy区間には、軸光線xαとyβ、および場光線xγとyδが基本ビームとして図示されている。しかしこれらのビームxα、yβ、xγ、yδを良好に図示できるように、x軸およびy軸を基準にして種々異なる縮尺が選択されている。これはとりわけ、xαビームがyβビームに対して大きな偏向を受け、縮尺が同じ場合にはyβビームの偏向がまったく知覚されないか、またはxαビームが対称面29の領域では図面の外に延在することとなるからである。この理由からx軸とy軸には同じ測定単位が付されていない。
【0060】
上に述べた装置1は、電子顕微鏡31の投影レンズ系18のビーム路に挿入されており(図5参照)、その入力領域には倍率がM倍の対物レンズ4による中間画像5がある(図1)。図2aと2bでは、xαビームとyβビームが光軸と四重極場Q’で交差するから、そこに中間画像5が存在する。しかしこれは中間画像5の必然的位置ではない。四重極場Q’の前方または後方にあってもよく、有利には前方にある。ここで重要なことは、四重極場Q’、Q’、Q’、Q’、Q’が電子顕微鏡31のビーム路と整合していることであり、対称面29には回折中間画像を備える回折中間画像面8が存在し、したがってそこではxγとyδゼロであることである。それは軸光線xαとyβの歪像6でもある。
【0061】
歪像6の形成と、その補償に対して重要なのは四重極場Q’とQ’である。これらの四重極場は少なくとも焦点距離の2倍である軸方向の拡がりを制限するために相応に太く図示されている。これらの四重極場は少なくとも100のアスペクト比を形成するために用いられる。このことは比喩的に図示されており、図2aに示された歪像6の長さ7は、図2bに示された幅7’の少なくとも100倍大きくなければならない。これを図示するために非常に異なる縮尺が選択された。したがいビームyβをビームxαと比較しようとすれば、歪像6の長さ7はx軸の方向に、y軸の方向での幅7’よりも少なくとも100倍の拡がりを有していなければならない。
【0062】
回折中間画像面8には、場9、9’を伴う位相シフト素子11または12がある。これらの位相シフト素子は図2aと2bには図示されていない。なぜならこれらは軸光線xα、yβと場光線xγ、yδの経過には影響しないからである。
【0063】
図3は、本発明の装置2の二重対称構造を示す概略図である。ここで第1の部分は、図2に示された装置1に相当する。この装置はその後に装置1’として再度配置されている。それらの四極子Q11、Q12、Q13、Q14、Q15は装置1の四極子Q、Q、Q、Q、Qに相当し、同じように配置されている。したがって装置1と1’のそれぞれの対称面29’と、中央対称面32による装置2の対称性が得られる。2つの対称面29’にはそれぞれ位相シスト素子11または12が配置されており、これらは歪像6および6’の位相をシフトする。
【0064】
装置1’の四重極場Q11’、Q12’、Q13’、Q14’、Q15’に関して対称面32は反対称の面である。なぜならこれらの四重極場は、装置1の場Q’、Q’、Q’、Q’、Q’と比較して反対に極性付けられているからである(または90°回転されており、このことは同じである。)。
【0065】
図2の装置1とは異なり二重対称の装置2の場合、中間画像5が第1の四極子Qの前方になければならない。なぜならそのことによってのみ、倍率Mの別の中間画像5’を四極子Qの後方にある中央対称面32に形成することができるからである。このことは基本ビーム、すなわち軸光線xα、yβと場光線xγ、yδの反対称の経過にとって必要である。そしてこのビーム経過は、装置2の第2の部分1’の最後の四極子Q15の後方に倍率Mの第3の中間画像5"をさらに形成する。
【0066】
基本ビームの経過を、図2aと2bに基づき相違について説明する。相違は軸光線xα、yβが画像(図2a、2b)を、第1の四重極場Q’の前方でゼロであるように通過しなければならないことである。これにより中間画像5がすでに述べたように第1の四極子Qの前方となり、これにより別の中間画像5’が四極子Qの後方の中央対称面32内に来ることができる。
【0067】
したがって図2aと2bは、上記の相違に注意すれば装置2の第1の装置部分1における基本ビームの経過を示す。第2の装置部分1’では軸光線xαがx区間(図2a)で、y区間(図2b)の軸光線yβに相当する経過をたどるが、この経過はz軸を中心に180°回転している。尺度が異なるため、図2aから出るときの軸光線xαの負の傾斜は、yβがz軸を中心に180°回転していると考えれば、図2bに入るときのyβの負の傾斜と同じである。
【0068】
反対に二重対称構造を有する装置2については、図2bのy区間以降の軸光線yβのさらなる経過を次のように考えなければならない。すなわち図2aの軸光線xαに相応するが、z軸を中心に180°回転して継続すると、ここでも縮尺の相違に注意して考えなければならない。同じような役目の入れ替わりが相応にして、場光線xγとyδについても生じる。ただしそこでは縮尺の相違が格段に小さいことに注意すべきである。
【0069】
したがって二重対称性の装置2の基本ビームを別個に図示すること省略する。なぜなら同じ縮尺では、歪像6と6’の幅7’を決定するビーム(これは装置1では軸光線yβであり、装置1’ではじ句光線xαである)がz軸から知覚し得るほど離れないことになるか、または歪像6と6’の長さ7を決定するビーム(これは装置では軸光線xαであり、装置1’では軸光線yβである)が使用される図空間には表示できなくなるからである。
【0070】
図4は本発明の装置3を概略的に示す。この装置3では二重対象構造の装置2(図3)に対して2つの四極子QとQ11が省略されている。そのため四極子Q、Q、Q、Qを有する第2の装置部分だけが、四極子Q12、Q13、Q14、Q15を有する第2の装置部分に対して対称面33を基準にして対称である。したがって二重対称性は存在しない。ここでも第2の装置部分の四重極場Q12’、Q13’、Q14’、Q15’は第1の装置部分の四重極場Q’、Q’、Q’、Q’に対して反対に極性付けられており、倍率Mの別の中間画像5’が対称面33に形成されなければならない。しかしそのために、倍率Mの第1の中間画像5が必ずしも第1の四極子Qの前方にある必要はないが、そこにあっても良い。中間画像は図示のように第1の四極子Qの領域にあっても良い。
【0071】
基本ビームの経過は、二重対称構造を有する装置2の説明に相応するが、x区間(図2a)が四重極場Q’の後方に、四重極場Q’を省略して対称面33を有し、この対称面33はその後に続く四重極場Q12’、Q13’、Q14’、Q15’に関しては、それらの極性が反対であるから反対称面である点で相違する。この対称面33の後方でも相応にして四重極場Q11’が省略されており、軸光線xα、yβと場光線xγ、yδの基本経過は四重極場Q’から四重極場Q12’へと移行する。ここでも例えばx区間(図2a)の軸光線xαは場Q’の後で、図2bの軸光線yβのように続く。しかし図2bの軸光線yβはz軸を中心に180°回転しており、四重極場Q12’の前方で初めてスタートする。なぜなら四重極場Q11’が省略されているからである。同じようにして軸光線yβに関しても、四重極場Q’とQ11’が省略されているが役目が入れ替わる。場光線xγとyδに関しても同じである。縮尺に関しては上記の説明が相応に当てはまる。
【0072】
しかしこの装置3では二重対称性がないから、四極子の補償作用が不完全である。したがって、基本ビームxα、yβ、xγ、yδの傾斜が、四重極場Q’から四重極場Q12’へと移行する際に基本ビームxα、yβ、xγ、yδが対称面33の後方では反対称に前記のように役目を入れ替えて経過するような傾斜となるよう補正を行わなければならない。この補正は、四極子QとQの四重極場Q’とQ’の強度が異なるように調整することによって行われる。この補正は、倍率Mの別の中間画像5’が対称面33に正確に来るまで一方および他方の方向で(Q’>Q’またはQ’>Q’)行われる。
【0073】
しかし四重極場Q’、Q’、Q’、Q’とQ12’、Q13’、Q14’、Q15’は対称面33を基準にして反対称であるから、四重極場Q12’とQ14’は、四重極場Q12’の強さが四重極場Q’の強さに相当し、四重極場Q14’の強さが四重極場Q’の強さに相当するように調整しなければならない。後者の補正は結果指向で、第3の中間画像5"が対称面33からの距離と倍率Mに関して中間画像5と対称になるまで、四重極場Q12’とQ14’の相互の強度比を変化することにより行われる。この場合、電子光学的構成素子の製造公差を補償するために、四重極場Q’とQ’のQ12’とQ14’に対する反対称性がわずかに異なっていても良い。
【0074】
前記の装置2および3では第2の歪像6’が第1の歪像6に対して90°回転されている。したがって位相シフト素子11、12も、この歪像6、6’のそれぞれの位置に相応して配置しなければならない。
【0075】
図5は、装置1に例として示された本発明の装置が組み込まれた電子顕微鏡31を概略的に示す。電子顕微鏡31は光軸10に沿って、ビーム源34、コンデンサ35、対象物4、対物レンズ17、投影レンズ系18および投影面36を有する。複数の個別レンズを有する投影レンズ系18の領域に、例として3つのレンズで示された装置1が配置されている。相応にしてもちろん装置2または装置3を配置することもできる。この種の配置のためには投影レンズ系18の領域の中から、所望の倍率Mの中間画像5が選択され、装置1、2または3は、この中間画像5の位置が図2a、2b、3または4の装置に相当するように配置される。
【0076】
図6は、0次ビーム13の領域14を調整するための位相シフト素子11の実施例を示す概略図である。この位相シフト素子11は、電子顕微鏡31のビーム管のケーシング壁から光軸10の直前まで伸長しており、遮蔽された導体20の端部21が電界9を形成し、この電界が0次ビーム13の領域14を検出する。ここでは比較的高次の回折電子ビーム15は検出されない。電界9は導体20からシールド22まで伸長しており、このシールドは導体20を、アイソレータ37も含めて包囲する。
【0077】
図6aは、この位相シフト素子11の場9の電位経過を示す線図である。電位Uがx軸上にプロットされており、0次ビーム13の領域14にだけ電界9が適用され、高次の回折電子ビーム15の領域には電界が存在しないことが分かる。このようにして上に説明した実施形態に応じてこの種の場9を適用することができ、45°または90°の位相シフトが可能である。位相シフト素子11が高次の回折電子ビーム15の領域を通過して伸長することより、この領域が部分的に遮蔽されるから、公知のように再構成が必要である。
【0078】
図7は、高次の回折電子ビーム15を調整するための位相シフト素子12の実施例を示す概略図である。ここで図7aは、図7に示された位相シフト素子12の断面A−Bを示す断面図である。位相シフト素子12の場合、スリット23に沿って電極24と24’が配置されており、これらの電極は光軸10の領域で中断されている。光軸10の領域ではスリット23の両側に、ゼロ電位19にある導体25と25’が配置されており、これらの導体はそこで場9’が中断されるようにする。電極24と24’はスリット23の外側でU字形のシールド22によって包囲されている。ここで電極24、24’とシールド37との間にはアイソレータ37が配置されている。z軸は光軸10の方向に伸長し、図7ではx軸に対して垂直に延在する。スリット23は、歪像6の幅7’がちょうどスリット23を通ることができるような幅26を有する。ここでスリット23は歪像6の長さ7よりもやや長い。さらに電極24、24’ならびにシールド22、およびこのシールドと接続され、ゼロ電位19にある導体25、25’と電圧源Uとの接続が図示されている。
【0079】
図7bは、電極24と24’によって電界9’が高次の回折電子ビーム17の領域にどのように適用されるのかを示す。電界9’の電位Uは、所望の位相シフトに相応して上に説明したように選択されるゼロ電位19にある導体25、25’によって、0次ビーム13の領域14がゼロ電位19であることが保証される。
【0080】
図示されているのはもちろん単なる例であり、本発明の装置1、2、3は別の目的のためにさらなる素子を有することができる。または図示の四極子の機能をそれぞれ複数の四極子に分散することもできる。
【0081】
位相シフト素子11と12は2つの実施形態でしか示されていないが、0次ビーム13の領域14、または高次の回折電子ビーム15の領域に適用するために、同等の機能を有する従来技術から公知の別の位相シフト素子も使用することができる。
【符号の説明】
【0082】
、Q 装置の入力側と出力側にある四極子
、Q 回折中間画像面の前方と後方にある四極子
中央四極子
11、Q12、Q13、Q14、Q15 二重配置構成における2つの半部分で上記構成に相当する四極子
’、Q’、Q’、Q14’、Q15’ 上記四極子の四重極場
α、yβ 軸光線
γ、yδ 場光線
1 単対称構造の画像コントラスト形成装置
1’ 極性が反転されている、図1の画像コントラスト形成装置
2 二重対称構造の画像コントラスト形成装置(1=第1の装置部分、1’=第2の装置部分)
3 二重対称構造が簡素化された画像コントラスト形成装置
4 対象物
5 倍率Mの中間画像
5’ 倍率Mの別の中間画像
5" 倍率Mの第3の中間画像
6 歪像
6’ 別の歪像
7 歪像の長さ
7’ 歪像の幅
8 回折中間画像面
8’ 別の回折中間画像面
9 0次ビームの領域に適用された電界
9’ 回折ビームの領域に適用された電界
10 光軸
11 第1の実施形態の位相シフト素子
12 第2の実施形態の位相シフト素子
13 0次ビーム(0次回折の電子ビーム)
14 0次ビームの領域
15 高次回折した電子ビーム
16 四重極場Q’、Q’またはQ12’、Q14’の領域にある非点収差中間画像
17 対物レンズ
18 投影レンズ系
19 ゼロ電位
20 遮蔽された導体
21 遮蔽された導体の終端部
22 シールド
23 スリット
24、24’ 電極
25、25’ ゼロ電位にある導体
26 スリット幅
27 対物レンズと装置との間にある回折中間画像
28 縮小された仮想回折中間画像
29 装置1の対称面
29’ 二重対称構造2の個々の部分の相応する対称面
30 ビーム経過
31 電子顕微鏡
32 中央対称面(装置)または二重対称構造の装置2の反対称面(場)
33 装置3の対称面
34 ビーム源
35 コンデンサ
36 投影面
37 アイソレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子光学系での位相シフトによる画像コントラスト形成方法であって、
中間画像(5)に基づいて四重極場(Q’、Q’、Q’;Q11’、Q12’、Q13’)により軸光線(xα、yβ)の歪像が形成され、同時に場光線(xγ、yδ)が少なくとも1つの回折中間画像面(8、8’)でゼロ通過し、
そこに磁界または電界(9、9’)により相対的位相シフトが、0次回折の電子ビーム(13)の周辺領域(14)と高次回折した電子ビーム(15)との間で引き起こされ、
その後、別の四重極場(Q’、Q’、Q’;Q13’、Q14’、Q15’)によって、ビーム路に形成された少なくとも1つの歪曲が再び補償される方法において、
少なくとも1つの歪像(6、6’)を形成および補償するために、当該歪像の前方および後方に配置された四重極場(Q’、Q’、Q12’、Q14’)を用い、
該四重極場の光軸(10)方向における拡がりがそれらの焦点距離の少なくとも2倍に相当するようにし、
前記軸光線(xα、yβ)の少なくとも1つが、中間画像(5)の倍率Mの相応の選択によって四重極場(Q’;Q12’)に、前記少なくとも1つの歪像(6、6’)の前方で1/Mの勾配で入射し、
当該歪像(6、6’)の長さ(7)は許容可能なエラー範囲内に留まるようにする
ことを特徴とする画像コントラスト形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
1つの歪像(6)だけが形成される方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
前記歪像(6)に作用する磁界または電界(9、9’)は、近似的に90゜の相対的位相シフトが生じるような場の強さを有する方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、
反対称のビーム経過(xα、yβ、xγ、yδ)によって、90°回転された2つの歪像(6、6’)が形成され、
四重極場の第2の配置構成(Q11’、Q12’、Q13’、Q14’、Q15’またはQ11’、Q12’、Q13’、Q14’)における、四重極場の第1の配置構成(Q’、Q’、Q’、Q’、Q’またはQ’、Q’、Q’、Q’)に対する前記反対称は、後者が同じ大きさ、または実質的に同じ大きさを有するが、極性が反対であることによって生じる方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、
反対称面(32)は、第1の四重極場(Q’)の前方にある倍率Mの中間画像(5)が倍率Mの別の中間画像(5’)として当該反対称面(32)に形成され、第3の中間画像(5")が四重極場(Q15’)の後方に形成されるように選択される方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の方法において、
前記歪像(6)に作用する磁界または電界(9、9’)は、近似的に45゜の相対的位相シフトが生じるような場の強さを有する方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法において、
磁界または電界(9)が0次ビーム(13)の領域(14)に適用される方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法において、
磁界または電界(9’)が回折ビーム(15)の領域に適用される方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、
歪像(6、6’)を形成および補償するための四重極場(Q’、Q’;Q12’、Q14’)は、非点収差の中間画像(16)がそれらの作用領域に発生するような軸方向(10)の拡がりと強さを有する方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、
前記四重極場(Q’、Q’;Q12’、Q14’)の強さは、軸方向の場の拡がりが、電子顕微鏡(31)の光学系に組み込むのに許容可能な構造高さを維持するような大きさに選択されている方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、
100以上のアスペクト比を有する歪像(6)が達成される方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、
200以上のアスペクト比を有する歪像(6)が達成される方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法を実施するための装置であって、
入力側に四極子(Q、Q)を有し、
該四極子は中間画像(5)に基づいて、次のような四重極場(Q’、Q’)を形成し、
すなわち軸光線(xα、yβ)と場光線(xγ、yδ)が2つの垂直な区間(x区間とy区間)で、回折中間画像面(8)に前記軸光線(xα、yβ)が歪像(6)を形成し、場光線(xγ、yδ)がそれぞれゼロを通過するようフォーカスまたはデフォーカスされるような四重極場を形成し、
前記回折中間画像面(8)の領域には、軸光線(xα、yβ)が四重極場(Q’)に入射したのとは反対に経過する勾配を以て当該四重極場(Q’)を出射するような四重極場(Q’)を有する中央四極子(Q)が配置されており、
2つの別の四極子(Q、Q)が、入力側の四極子(Q、Q)の四重極場(Q’、Q’)と同じ大きさと符合である四重極場を形成し、
これによりビーム路の歪曲が再び補償され、
前記回折中間画像面(8)には位相シフト素子(11、12)が配置されており、
該位相シフト素子の磁界または電界(9、9’)は、0次回折電子ビーム(13)の領域(14)と、高次の回折電子ビームとの間に相対的位相シフトが生じるように配向されている装置において、
回折中間画像面(8)の前方および後方に配置された四極子(Q、Q)が、光軸(10)の方向にそれらの焦点距離の少なくとも2倍に相当する拡がりを有し、
当該装置(1)は、電子顕微鏡(31)の投影レンズ系(18)のビーム路中の次の個所に配置されるように構成されており、
すなわち前記個所は、軸光線(xα、yβ)が倍率Mの中間画像(5)を形成した後、第2の四極子(Q)の四重極場(Q’)に、歪像の前方で勾配1/Mを以て入射する個所であり、
該勾配は、前記歪像(6)の長さ(7)が許容可能なエラー範囲内の歪みを形成するような勾配である
ことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13記載の装置において、
前記位相シフト素子(11、12)は、近似的に90°の相対的位相シフトを生じさせる磁界または電界(9、9’)を形成するように構成されている装置。
【請求項15】
請求項13記載の装置において、
当該装置には光軸(10)上で第2の装置が後置されており、
該第2の装置の四極子(Q11、Q12、Q13、Q14、Q15)は第1の装置(1)の四極子(Q、Q、Q、Q、Q)に相当し、
しかし前記第2の装置の四重極場(Q11’、Q12’、Q13’、Q14’、Q15’)は反対方向に極性付けられており、これにより第1の装置(1)の歪像(6)に対して90°回転された歪像(6’)が形成され、
前記第1の装置(1)と第2の装置(1’)から統合された装置全体(2)は、電子顕微鏡(31)の投影レンズ系(18)のビーム路中に次のように配置されるよう構成されており、
すなわち前記中間画像(5)が第1の四極子(Q)の前方にあり、前記統合によって発生した中央対称面(32)に倍率Mの別の中間画像(5’)が形成されるように構成されており、
前記第2の装置(1’)の位相シフト素子(11、12)は、0次回折電子ビームの領域(14)と前記第2の歪像(6’)の高次回折電子ビームとの間に相対的位相シフトを生じさせるための磁界または電界を形成する装置。
【請求項16】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法を実施するための装置(3)であって、
入力側に四極子(Q、Q)を有し、
該四極子は中間画像(5)に基づいて次のような四重極場(Q’、Q’)を形成し、
すなわち軸光線(xα、yβ)と場光線(xγ、yδ)が2つの垂直な区間(x区間とy区間)で、回折中間画像面(8)に前記軸光線(xα、yβ)が歪像(6)を形成し、場光線(xγ、yδ)がそれぞれゼロを通過するようフォーカスまたはデフォーカスされるような四重極場を形成し、
前記回折中間画像面(8)の領域には、軸光線(xα、yβ)が四重極場(Q’)に入射したのとは反対の勾配を以て当該四重極場(Q’)を出射するような四重極場(Q’)を有する中央四極子(Q)が配置されており、
前記回折中間画像面(8)には第1の位相シフト素子(11、12)が配置されており、
該位相シフト素子の磁界または電界(9、9’)は、0次回折電子ビーム(13)の領域(14)と、高次の回折電子ビームとの間に相対的位相シフトが生じるように配向されている装置において、
回折中間画像面(8)に1つの四極子(Q)が後置されており、四極子(Q、Q)が、光軸(10)の方向にそれらの焦点距離の少なくとも2倍に相当する拡がりを有し、
すべての四極子に関して中央対称面の後方に3つの四極子(Q12、Q13、Q14)が続き、それら四極子の四重極場(Q12’、Q13’、Q14’)はそれらより前方の3つの四極子(Q、Q、Q)の四重極場(Q’、Q’、Q’)と同じ大きさであるが、90°回転されており、
次に大きさは同じであるが、第1の四極子(Q)の四重極場(Q’)に対して90°回転された四重極場(Q15’)を備える四極子(Q15)が続き、
前記回折中間画像面(8)の前方および後方にある四極子(Q、Q)の四重極場(Q’、Q’)は次のように相互に異なるように調整可能であり、
すなわち、軸光線(xα、yβ)が中央対称面(33)に倍率Mの別の中間画像(5’)を形成し、場光線(xγ、yδ)が相互に交差するように調整可能であり、
四重極場(Q12’、Q14’)が90°回転された相応する四極子(Q12、Q14)も、中央対称面(33)の後方で同様に相互に異なるように調整可能であり、
これにより当該装置(3)の端部に倍率Mの第3の中間画像(52)が発生し、
これにより軸光線(xα、yβ)と場光線(xγ、yδ)とが当該四重極場(Q12’、Q13’、Q14’、Q15’)を、x区間では最初の4つの四重極場(Q’、Q’、Q’、Q’)をy区間で通過するように通過し、y区間では最初の4つの四重極場を以前にx区間で通過したように通過し、
第2の中央四極子(Q13)には、別の歪像(6’)を備える第2の回折中間画像面(8’)が発生し、該別の歪像は前記第1の歪像に対して90°回転されており、
前記第2の回折中間画像面(8’)には第2の位相シフト素子(11、12)が配置されており、
該第2の位相シフト素子の磁界または電界(9、9’)は、0次回折電子ビーム(13)の領域(14)と、高次の回折電子ビーム(15)との間に相対的位相シフトが生じるように配向されており、
当該装置(3)は、電子顕微鏡(31)の投影レンズ系(18)のビーム路中の次の個所に配置されるように構成されており、
すなわち前記個所は、軸光線(xα、yβ)が倍率Mの中間画像(5)を形成した後、第2の四極子(Q)の四重極場(Q’)に、前記歪像(6)の前方で勾配1/Mを以て入射する個所であり、
該勾配は、前記歪像(6)の長さ(7)が許容可能なエラー範囲内の歪みを形成するような勾配である
ことを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項15または16記載の装置において、
前記位相シフト素子(11、12)は、それぞれ近似的に45°の位相シフトを生じさせるような磁界または電界(9、9’)を有する装置。
【請求項18】
請求項13乃至17のいずれか1項に記載の方法において、
歪像(6、6’)を形成および補償するための四極子(Q、Q、Q12、Q14)は、非点収差の中間画像(16)をそれらの作用領域に形成することができるような光軸方向(10)の拡がりと場の強さを有する四重極場(Q’、Q’;Q12’、Q14’)を形成するように構成されている装置。
【請求項19】
請求項18記載の装置において、
前記四重極場(Q’、Q’;Q12’、Q14’)を形成するための前記四極子(Q、Q;Q12、Q14)は、それらの軸方向の拡がりが当該装置(1、2、3)の構造高さを、電子顕微鏡(31)に良好に取り付けることができる範囲内に収まるように形成されている装置。
【請求項20】
請求項13乃至19のいずれか1項に記載の方法において、
少なくとも1つの位相シフト素子(11)は、磁界または電界(9)を0次ビーム(13)の領域に適用することができ、回折ビーム(15)の領域がゼロ電位になるよう構成されている装置。
【請求項21】
請求項20記載の装置において、
電界(9)を形成するための位相シフト素子(11)が遮蔽された導体(20)として構成されており、
該導体はケーシング壁での固定によって、回折中間画像面(8、8’)から発して、0次ビーム(13)の領域(14)へ半径方向に伸長するよう配置されており、
前記遮蔽された導体(20)は前記0次ビーム(13)の領域(14)の前方に端部(21)を有し、
当該端部は、前記導体(20)を包囲するシールド(22)と該導体との間に電界(9)が形成され、該電界が前記0次ビーム(13)の当該領域(14)に作用するように位置決めされている装置。
【請求項22】
請求項13乃至21のいずれか1項に記載の方法において、
少なくとも1つの位相シフト素子(12)は、0次ビーム(13)の領域(14)がゼロ電位(19)となり、磁界または電界(9)を回折ビーム(15)の領域に適用することができるよう構成されている装置。
【請求項23】
請求項22記載の装置において、
前記位相シフト素子(12)は電界(9)を形成するためにスリット(23)を有し、
該スリットが歪像(6、6’)を取り囲み、
前記スリット(23)に沿って両側に、電極(24、24’)が電界(9’)を適用するために伸長しており、
前記電極は前記0次ビーム(13)の領域(14)に対しては光軸(10)の領域で、ゼロ電位にある各導体(25、25’)によって分断されている装置
【請求項24】
請求項23記載の装置において、
当該装置は、四極子(Q、Q、Q12、Q14)が回折中間画像面(8、8’)の前方および後方に、歪像(6、6’)の幅(7’)が前記スリット(23)の幅(26)をちょうど通過するように四重極場(Q’、Q’、Q12’、Q14’)を形成するよう構成されている装置。
【請求項25】
請求項13乃至24のいずれか1項に記載の方法において、
前記四極子(Q、Q、Q12、Q14)により次のような四重極場(Q’、Q’、Q12’、Q14’)が形成され、当該装置(1、2、3)は電子顕微鏡(31)の投影レンズ系(18)のビーム路中の次のような個所に配置されている、すなわち
中間画像(5)の倍率Mが、軸光線(xα、yβ)の勾配1/Mを生じさせ、当該勾配は少なくとも1つの歪像(6、6’)のアスペクト比が100以上となるような四重極場が形成され、当該個所に配置されている装置。
【請求項26】
請求項25記載の装置において、
前記四極子(Q、Q、Q12、Q14)により次のような四重極場(Q’、Q’、Q12’、Q14’)が形成され、当該装置(1、2、3)は電子顕微鏡(31)の投影レンズ系(18)のビーム路中の次のような個所に配置されている、すなわち
中間画像(5)の倍率Mが、軸光線(xα、yβ)の勾配1/Mを生じさせ、当該勾配は少なくとも1つの歪像(6、6’)のアスペクト比が200以上となるような四重極場が形成され、
当該装置は、中間画像(5)の倍率Mが、軸光線(xα、yβ)の勾配1/Mを生じさせ、当該勾配は少なくとも1つの歪像(6、6’)のアスペクト比が200以上となるような四重極場が形成される個所に配置されている装置。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6a】
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【図7】
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【図7a】
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【図7b】
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【公開番号】特開2010−199072(P2010−199072A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−41184(P2010−41184)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(500155198)ツェーエーオーエス コレクテッド エレクトロン オプチカル システムズ ゲーエムベーハー (14)
【氏名又は名称原語表記】CEOS Corrected Electron Optical Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Englerstr. 28, D−69126 Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】