説明

位相差板

【課題】 波長分散特性に優れた液晶材料を提供する。また、本発明は、液晶表示装置に用いた場合に、表示画像の色味変化が少なく、且つ視野角の拡大に寄与する位相差板を提供する。
【解決手段】 少なくとも1種の円盤状化合物のクロロホルム溶液中での最大吸収波長が270nm以下であることを特徴とする、円盤状化合物から形成された光学異方性層を有する位相差板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状化合物から形成された光学異方性層を有する位相差板に関する。
【背景技術】
【0002】
光学異方性層は、円盤状液晶性分子(ディスコティック液晶性分子)を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。円盤状液晶性分子は、一般に大きな複屈折率を有する。そして、円盤状液晶性分子には、多様な配向形態がある。円盤状液晶性分子を用いることで、従来の延伸複屈折フイルムでは得ることができない光学的性質を有する光学補償シートを製造することが可能になる。非特許文献1には、負の複屈折を有するトリフェニレン系円盤状液晶性分子が開示されている。この液晶性分子を光学補償シートに利用するためには、光学異方性層を構成する分子全体を均一に配向させる必要がある。すなわち、円盤状液晶性分子は、モノドメイン配向させることが望ましい。しかし、従来の円盤状液晶性分子はデュアルドメイン配向するため、ドメインの境界に配向欠陥が生じる。そのため、従来の円盤状液晶性分子では、光学補償シートに利用できる程度の光学的性質が得られない場合が多かった。光学的性質は、円盤状液晶性分子の化学構造に依存している。そこで、必要とする光学的性質を得るため、多くの種類の円盤状液晶性分子が研究、開発されている。例えば、特許文献1では、透明支持体上に円盤状液晶性分子を含む光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。
【0003】
また、特許文献2および特許文献3の各公報には、光学補償シートの光学異方性層の形成に適した円盤状液晶性分子として、2,3,6,7,10,11−ヘキサ{4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ}トリフェニレンが開示されている。ところで、光学補償シートを液晶表示装置に用いた場合のカラー表示での色味変化は、光学補償シートのレターデーション値の波長分散により大きく変化する。この光学的性質である波長分散は、円盤状液晶化合物の分子構造に依存しており、例えば、特許文献4には大きな屈折率異方性を有する円盤状液晶が開示されているが、波長分散特性が悪化しており、即ち波長分散性が大きくなり、性能改良は不十分であった。
【0004】
また、円盤状液晶相は、円盤状分子の中心コアが分子間力で柱状に積み重なった柱状相(columnar phase)と、円盤状分子が乱雑に凝集した円盤状ネマティック相(ND相)と、カイラル円盤状ネマティック相とに大別できることが知られている。しかし、非特許文献2に記載されている様に、柱状ネマティック相はしばしば見出されるが、円盤状ネマティック相は稀にしか見出されていない。
【0005】
【非特許文献1】Molecular Crystals and Liquid Crystals、84巻、193頁(1982年)
【非特許文献2】Physical properties of liquid crystalline materials(1980 by Gordon and Breach,Science Publishers)
【特許文献1】特開平8−50206号公報
【特許文献2】特開平7−306317号公報
【特許文献3】特開平9−104866号公報
【特許文献4】特開2001−166147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、波長分散特性に優れた位相差板を提供することを課題とする。また、本発明は、液晶表示装置に用いた場合に、表示画像の色味変化が少なく、且つ視野角の拡大に寄与する位相差板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
(1) 円盤状化合物から形成された光学異方性層を有する位相差板であって、該円盤状化合物の少なくとも1種はクロロホルム溶液中において270nm以下に最大吸収波長を有する円盤状化合物である位相差板。
(2) 前記円盤状化合物が、液晶性を示す(1)の位相差板。
(3) 前記円盤状化合物が、ディスコティックネマチック相を発現する(1)又は(2)の位相差板。
(4) 前記円盤状化合物を、ディスコティックネマチック相を示す配向状態に固定してなる光学異方性層を有する(1)〜(3)のいずれかの位相差板。
【発明の効果】
【0008】
本発明の位相差板は、クロロホルム溶液中での最大吸収波長が270nm以下である円盤状化合物を用いて形成された光学異方性層を有する。該光学異方性層は、波長分散性が小さい。従って、本発明の位相差板は、液晶表示装置に用いた場合、表示画像の色味変化が少なく、且つ視野角の拡大に寄与する。
【発明の実施の形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明の位相差板は、円盤状化合物から形成された光学異方性層を有し、該円盤状化合物の少なくとも1種がクロロホルム溶液中において270nm以下に最大吸収波長を有することを特徴とする。かかる特性の円盤状化合物を用いることにより、波長分散特性に優れた(即ち、レターデーション等の光学特性が波長に依存して変化し難い)光学異方性層を形成することができる。
なお、溶媒としてクロロホルムを用いたのは、溶質である円盤状化合物の溶解性が高く、極性が低い溶媒であり、且つ円盤状化合物の前記吸収ピークの近傍に吸収ピークを有さないからである。
【0011】
なお、本明細書において「270nm以下に最大吸収波長を有する」とは、240nm以上に現われる吸収ピークのうち、最も吸光度の大きい吸収ピークが波長270nm以下に現われることを意味する。該吸収ピークの吸光度は、240nm以下の波長範囲に現われる吸収ピークとの関係では最大である必要はないが、240nm以上の波長範囲に現われる吸収ピークとの関係では、最大である必要がある。
【0012】
クロロホルム溶液中での最大吸収波長が270nm以下である円盤状化合物の例としては、下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
式中、Zは円盤状コアであり、Yは置換基であり、nは2〜12の整数である。複数存在するYはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、可能であれば環を形成していてもよい。
【0015】
前記式中、Zで表される円盤状コアは、該円盤状化合物の中心に位置し、その円盤面を構成する。円盤状コアは、円盤状液晶性分子の分子構造において、よく知られている概念である。円盤状液晶(Discotic Liquid Crystal)は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994)等に記載されている。
【0016】
以下に、円盤状コア(Z)の例を示す。各化合物中のYは前記一般式(A)内のYと同様の置換基を意味する。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
円盤状コア(Z)は、Y以外の置換基を有していてもよい。円盤状コアが有していてもよい置換基の例は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、メルカプト基、ウレイド基、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基、置換アリール基、複素環基、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、置換アリールオキシカルボニル基、置換アミノ基、アミド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、置換アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、置換アリールオキシカルボニルアミノ基、置換カルバモイル基、スルホンアミド基、置換スルファモイル基、アルキルチオ基、置換アルキルチオ基、アリールチオ基、置換アリールチオ基、アルキルスルホニル基、置換アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、置換アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、置換アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、置換アリールスルフィニル基、置換ウレイド基、リン酸アミド基、置換シリル基、アルコキシカルボニルオキシ基、置換アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基ならびに置換アリールオキシカルボニルオキシ基を含む。
【0020】
アルキル基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜30であることが好ましい。置換アルキル基のアルキル部分は、アルキル基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アルキル基の置換基の例は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基および置換アルキニル基が除外される以外は、円盤状コアの置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0021】
アルケニル基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルケニル基の炭素原子数は2〜30であることが好ましい。置換アルケニル基のアルケニル部分は、アルケニル基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アルケニル基の置換基の例は、置換アルキル基の置換基の例と同様である。アルキニル基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキニル基の炭素原子数は2〜30であることが好ましい。置換アルキニル基のアルキニル部分は、アルキニル基と同様である。置換アルキニル基の置換基の例は、置換アルキル基の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0022】
アリール基の炭素原子数は、6〜30であることが好ましい。置換アリール基のアリール部分は、アリール基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アリール基の置換基の例は、円盤状コアの置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0023】
複素環基は、5員または6員の複素環を有することが好ましい。複素環に、他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。複素環の複素原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子であることが好ましい。複素環基は置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、円盤状コアの置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0024】
アルコキシ基および置換アルコキシ基のアルキル部分は、アルキル基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アルコキシ基の置換基の例は、置換アルキル基の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。アリールオキシ基および置換アリールオキシ基のアリール部分は、アリール基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アリールオキシ基の置換基の例は、円盤状コアの置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0025】
アシル基はホルミルまたは−CO−Rで表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。
アシルオキシ基はホルミルオキシまたは−O−CO−Rで表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。
【0026】
アルコキシカルボニル基および置換アルコキシカルボニル基のアルキル部分は、アルキル基と同様である。置換アルコキシカルボニル基の置換基の例は、置換アルキル基の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
アリールオキシカルボニル基および置換アリールオキシカルボニル基のアリール部分は、アリール基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アリールオキシカルボニル基の置換基の例は、円盤状コアの置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0027】
置換アミノ基は、−NH−Rまたは−N(−R)2で表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。
アミド基は、−NH−CO−Rで表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。
イミド基は、−N(−CO−R)2で表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。
【0028】
アルコキシカルボニルアミノ基および置換アルコキシカルボニルアミノ基のアルキル部分は、アルキル基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アルコキシカルボニルアミノ基の置換基の例は、置換アルキル基の置換基の例と同様である。
アリールオキシカルボニルアミノ基および置換アリールオキシカルボニルアミノ基のアリール部分は、アリール基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アリールオキシカルボニルアミノ基の置換基の例は、円盤状コアの置換基の例と同様である。
【0029】
置換カルバモイル基は、−CO−NH−Rまたは−CO−N(−R)2で表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。
スルホンアミド基は、−NH−SO2−Rで表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。置換スルファモイル基は、−SO2−NH−Rまたは−SO2−N(−R)2で表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。
【0030】
アルキルチオ基および置換アルキルチオ基のアルキル部分は、アルキル基と同様である。置換アルキルチオ基の置換基の例は、置換アルキル基の置換基の例と同様である。
アリールチオ基および置換アリールチオ基のアリール部分は、アリール基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アリールチオ基の置換基の例は、円盤状コアの置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
アルキルスルホニル基および置換アルキルスルホニル基のアルキル部分は、アルキル基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アルキルスルホニル基の置換基の例は、置換アルキル基の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0031】
アリールスルホニル基および置換アリールスルホニル基のアリール部分は、アリール基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アリールスルホニル基の置換基の例は、円盤状コアの置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
アルキルスルフィニル基および置換アルキルスルフィニル基のアルキル部分は、アルキル基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アルキルスルフィニル基の置換基の例は、置換アルキル基の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
アルキルスルフィニル基および置換アルキルスルフィニル基のアリール部分は、アリール基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アルキルスルフィニル基の置換基の例は、円盤状コアの置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0032】
置換ウレイド基は、−NH−CO−NH−Rまたは−NH−CO−N(−R)2で表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。
リン酸アミド基は、−NH−O−P(=O)(−OH)−O−Rまたは−NH−O−P(=O)(−O−R)2で表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。
置換シリル基は、−SiH2−R、−SiH(−R)2または−Si(−R)3で表され、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリール基または置換アリール基である。
【0033】
アルコキシカルボニルオキシ基および置換アルコキシカルボニルオキシ基のアルキル部分は、アルキル基と同様である。置換アルコキシカルボニルオキシ基の置換基の例は、置換アルキル基の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
アリールオキシカルボニルオキシ基および置換アリールオキシカルボニルオキシ基のアリール部分は、アリール基と同義であり、好ましい範囲も同義である。置換アリールオキシカルボニルオキシ基の置換基の例は、円盤状コアの置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0034】
前記一般式(A)内のYは置換基を表す。複数のYが存在するとき、それぞれ同じでも異なっていても良い。Yの例としては円盤状コア(Z)が有してもよい置換基の例があげられる。
【0035】
以下に、好ましいYの例を示すが、本発明に用いられる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0036】
【化4】

【0037】
上式中、R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ、水素原子または置換基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。R6は水素原子又は置換基を表す。R7及びR8はそれぞれ、水素原子または置換基(但し、アリール基は除く)を表す。R6とR7、またはR6とR8が連結し環を形成してもよいが、ベンゼン環を形成することはない。R9は置換基を表す。R10、R11およびR12はそれぞれ、水素原子または置換基(但し、アリール基を除く)を表わし、R10、R11およびR12のそれぞれのハメットσm値、σp値の合計が−0.10以上、1.50以下である。mは1〜5のいずれかの整数である。R13は置換基を表し、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよいが、但し、少なくとも1つのR13のハメットσp値は0以上である。
【0038】
σm値、σp値はハメットの置換基定数を表わし、その詳細は、化学の領域増刊122号、薬物の構造活性相関(1979年、南江堂)の95頁に記載されているとおりである。
【0039】
1〜R13の置換基の例としては、前述の円盤状コアが有しても良い置換基の例が挙げられる。
【0040】
以下に、好ましいYの具体例を示すが、本発明に用いられる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

【0051】
【化15】

【0052】
【化16】

【0053】
本発明では、上記円盤状コア(Z)と置換基(Y)とを独立に組み合わせた円盤状化合物であるのが好ましいが、クロロホルム溶液中での最大吸収波長が270nm以下の円盤状化合物であれば特に制限されない。
【0054】
前記円盤状化合物のより好ましい例としては、上記の円盤状コアDと置換基Yとの組み合わせが、円盤状コア(Z4)と、(Y1−1)〜(Y1−78)、(Y2−1)〜(Y2−53)、(Y3−1)〜(Y3−30)及び(Y4−1)〜(Y4−16)から選ばれる置換基とを組み合わせた化合物、及び円盤状コア(Z16)と、(Y5−1)〜(Y5−227)から選ばれる置換基とを組み合わせた化合物である。
【0055】
さらに好ましい円盤状化合物の例としては、Y以外の置換基を有さない円盤状コア(Z4)と、該コアの2,3,6,7,10,11位のYが全て同一の置換基であって、その置換基が(Y1−1〜Y1−78)、(Y2−1)〜(Y2−53)、(Y3−1)〜(Y3−30)、(Y4−1)〜(Y4−16)から選ばれる化合物、及びY以外の置換基を有さない円盤状コア(Z16)と、該コアの1,3,5位のYが全て同一の置換基であって、その置換基が(Y5−1)〜(Y5−227)から選ばれる化合物である。なお、ここで示した、さらに好ましい円盤状化合物の例示化合物は以下の例に示すように、円盤状コア(D)と置換基(Y)の組み合わせで(Z)−(Y)と示し、例示化合物((Z)−(Y))と示す。
【0056】
【化17】

【0057】
本発明では、クロロホルム溶液中での最大吸収波長が270nm以下である円盤状化合物の1種を単独で使用してもよいし、他の円盤状化合物と混合して使用してもよい。また、該円盤状化合物は液晶性化合物である必要はないが、液晶性を示す化合物であるのが好ましい。また、液晶性は単独の化合物で示すことが好ましいが、他の化合物と混合することにより液晶性を示してもよい。
【0058】
本発明で開示する化合物を他の円盤状化合物と混合して用いる場合、本発明に従う円盤状化合物の分子全体に対する割合は、1〜100質量%が好ましく、10〜98質量%がさらに好ましく、30〜95質量%が最も好ましい。
【0059】
[光学異方性層]
本発明で開示するクロロホルム溶液中での最大吸収波長が270nm以下である円盤状化合物は、単独もしくは他の円盤状化合物と混合して液晶性を示すとき、該円盤状化合物を配向させた光学異方性材料は、位相差板(または光学補償シート)の光学異方性層として用いることができる。光学異方性層は、円盤状化合物の配向に基づく光学異方性を示す。
光学異方性層は、本発明の円盤状化合物とともに、その配向を制御するのに寄与する材料、配向状態を固定するのに寄与する材料等、他の材料を含有する組成物から形成してもよい。本発明に従う円盤状化合物は一度液晶相形成温度まで加熱し、次にその配向状態を維持したまま冷却することによりその液晶状態における配向形態を損なうことなく固定化することができる。また、本発明に従う円盤状化合物は、重合開始剤を添加した組成物を液晶相形成温度まで加熱した後、重合させ冷却することによっても固定化することができる。本発明で配向状態が固定化された状態とは、その配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様ではあるが、それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性がなく、且つ外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を指すものである。
なお、配向状態が最終的に固定化された際に、液晶組成物はもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶化合物として重合性化合物を用いた場合、結果的に熱、光等での反応により重合または架橋反応が進行し、高分子量化して、液晶性を失ってもよい。
【0060】
[位相差板]
本発明の位相差板は、前記円盤状化合物から形成された光学異方性層を有する。すなわち、前記円盤状化合物が、光学異方性層の原料に用いられることを意味する。例えば、重合性基を有する前記円盤状化合物を用いて光学異方性層を作製する場合は、作製の過程で、該化合物が単独でまたは他の化合物と重合し、最終的には本発明の化合物を重合単位とする高分子を含有する光学異方性層が作製されるが、かかる光学異方性層も本発明の範囲に含まれる。
【0061】
本発明の位相差板の一態様は、透明支持体と、前記円盤状化合物から形成された光学異方性層とを有する。ここで、光学異方性層は、前記円盤状化合物と、必要に応じて他の添加剤とを含有する組成物を配向膜上に塗布した後、上記のように液晶状態の配向状態で固定化することで作製することができる。なお、配向膜上で液晶性分子を配向状態に固定した後は、他の支持体上に転写可能である。配向状態で固定化された液晶化合物は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。従って、位相差板は、配向膜を有していなくてもよい。前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.2〜15μmであることがさらに好ましく、0.5〜10μmであることが最も好ましい。
【0062】
[光学異方性層の添加剤]
光学異方性層の形成にあたり円盤状化合物に加えることのできる添加剤の例としては、空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等が挙げられる。
【0063】
[空気界面配向制御剤]
液晶化合物は、空気界面においては空気界面のプレチルト角で配向する。このプレチルト角は、円盤状液晶と空気界面がなす角をいう。このプレチルト角は、化合物の種類によりその程度が異なるために、目的に応じて、空気界面のプレチルト角を任意に制御する必要がある。
このプレチルト角の制御には、例えば、電場や磁場のような外場を用いることや添加剤を用いることができるが、添加剤を用いることが好ましい。
このような添加剤としては、炭素原子数が6〜40の置換または無置換脂肪族基もしくは炭素原子数が6〜40の置換または無置換脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を、分子内に1本以上有する化合物が好ましく、分子内に2本以上有する化合物がさらに好ましい。例えば、空気界面配向制御剤としては、特開2002−20363号公報に記載の疎水性排除体積効果化合物を用いることができる。
【0064】
空気界面側の配向制御用添加剤の添加量としては、円盤状化合物に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%がさらに好ましく、0.1質量%〜5質量%が最も好ましい。
【0065】
[ハジキ防止剤]
円盤状化合物に添加し、該組成物の塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。使用するポリマーとしては、円盤状化合物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。円盤状化合物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、円盤状化合物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0066】
[重合開始剤]
本発明では、液晶性化合物はモノドメイン配向、つまり実質的に均一に配向している状態で固定されていることが好ましく、そのため重合性の円盤状化合物を用いている場合には重合反応により円盤状化合物を固定することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応と電子線照射による重合反応が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応と電子線照射による重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)等が挙げられる。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。円盤状化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。
【0067】
[重合性モノマー]
光学異方性層を形成するために用いられる液晶組成物には、重合性のモノマーを添加してもよい。液晶性化合物とともに使用する重合性モノマーとしては、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物の傾斜角変化や配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、液晶性化合物に対して一般に0.5〜50質量%の範囲にあり、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0068】
[塗布溶剤]
液晶組成物の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド、エステルおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0069】
[塗布方式]
光学異方性層は、上記溶媒を用いて液晶組成物の塗布液を調製し配向膜上に塗布し、円盤状化合物を配向処理することで形成する。塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0070】
[配向膜]
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜上に設けられる光学異方性層の円盤状化合物に所望の配向を付与できるのであれば、配向膜としてはどのような層でもよいが、本発明においては、ラビング処理もしくは、光照射により形成される配向膜が好ましい。特にポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができるが、特に本発明では液晶便覧(丸善(株))に記載されている方法により行うことが好ましい。配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがさらに好ましい。
なお、配向膜を用いて棒状液晶性化合物を配向させてから、その配向状態のまま棒状液晶性化合物を固定して光学異方性層を形成し、光学異方性層のみをポリマーフイルム(または透明支持体)上に転写しても良い。配向状態の固定された棒状液晶性化合物は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。そのため、位相差板では、配向膜は(位相差板の製造において必須であるが)必須ではない。
円盤状化合物を配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを調節するポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。いずれの配向膜においても、円盤状化合物と透明支持体の密着性を改善する目的で、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向膜を用いることが好ましく、かかる配向膜としては特開平9−152509号公報に記載されている。
【0071】
[配向膜のラビング密度]
配向膜のラビング密度と配向膜界面での円盤状化合物のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係があるので、配向膜のラビング密度を変えることで、プレチルト角の調整をすることができる。配向膜のラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」液晶便覧編集委員会編(丸善(株)、2000年)に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は式(A)で定量化されている。
【0072】
式(A) L=Nl{1+(2πrn/60v)}
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
【0073】
[透明支持体]
位相差板は、支持体を有していてもよく、該支持体は、透明支持体であるのが好ましい。前記支持体は、主に光学的等方性で、光透過率が80%以上であれば、特に材料の制限はないが、ポリマーフイルムが好ましい。ポリマーの具体例として、セルロースエステル類(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、ノルボルネン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリレートエステル類のフイルムなどを挙げることができ、多くの市販のポリマーを好適に用いることが可能である。このうち、光学性能の観点からセルロースエステル類が好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下脂肪酸で、炭素原子数は、2、3、4であることが好ましい。具体的には、セルロースアセテート、セルロースプロピオネートまたはセルロースブチレートがあげられる。この中でも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開WO00/26705号公報パンフレットに記載の分子を修飾することで該発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0074】
以下、透明支持体として好ましく使用されるセルロースエステルについて詳述する。
セルロースエステルとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。特に酢化度が57.0〜62.0%であることが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがさらに好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
セルロースエステルでは、セルロースの2位、3位、6位の水酸基が全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。セルロースの6位水酸基の置換度が、2位、3位に比べて多いほうが好ましい。全体の置換度に対して6位の水酸基が30%〜40%でアシル基で置換されていることが好ましく、さらには31%以上、特に32%以上であることが好ましい。6位の置換度は、0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基(例、プロピオニル、ブチリル、バレロイル、ベンゾイル、アクリロイル)で置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求める事ができる。6位水酸基の置換度が高いセルロースエステルは、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044に記載の合成例1、段落番号0048〜0049に記載の合成例2、段落番号0051〜0052に記載の合成例3の方法を参照して合成することができる。
【0075】
透明支持体として用いるポリマーフイルム、特にセルロースアセテートフイルムは、レターデーション値を調整するために、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することも可能である。このようなレターデーション上昇剤を使用する場合、レターデーション上昇剤は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用する。レターデーション上昇剤は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0076】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環および1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
【0077】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。このようなレターデーション上昇剤については国際公開WO01/88574号公報パンフレット、国際公開WO00/2619号公報パンフレット、特開2000−111914号公報、同2000−275434号公報、特願2002−70009号明細書等に記載されている。
【0078】
セルロースアセテートフイルムは、調製されたセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ドープには、前記のレターデーション上昇剤を添加してもよい。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100〜160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0079】
ドープは、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等の溶剤にて溶解する。セルロースアシレートを溶解するための溶剤としては、ジクロロメタンが代表的である。しかし、地球環境や作業環境の観点では、溶剤はジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶剤中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフイルムおよびその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されている。
【0080】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)を用いて、ドープを2層以上流延することによりフイルム化することもできる。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。複数のセルロースアセテート溶液を流延する場合、支持体の進行方向に間隔をおいて設けた複数の流延口からセルロースアセテートを含む溶液をそれぞれ流延させて、それらを積層させながらフイルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアセテート溶液を流延することによりフイルム化してもよい。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の、高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度のセルロースアセテート溶液で包み込み、高粘度および低粘度のセルロースアセテート溶液を同時に押出すセルロースアセテートフイルムの流延方法を用いてもよい。
【0081】
セルロースアセテートフイルムは、さらに延伸処理によりレターデーション値を調整することができる。延伸倍率は、0〜100%の範囲にあることが好ましい。本発明のセルロースアセテートフイルムを延伸する場合には、テンター延伸が好ましく使用され、遅相軸を高精度に制御するために、左右のテンタークリップ速度、離脱タイミング等の差をできる限り小さくすることが好ましい。
【0082】
セルロースエステルフイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、o−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびo−アセチルクエン酸、トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
【0083】
セルロースエステルフイルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン類)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フイルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
【0084】
セルロースアセテートフイルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましく利用される。フイルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアセテートフイルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
【0085】
セルロースアセテートフイルムの表面処理は、配向膜などとの接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアセテートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
アルカリ鹸化処理は、フイルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。水酸化イオンの規定濃度は、0.1〜3.0Nの範囲にあることが好ましく、0.5〜2.0Nの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
【0086】
また、セルロースアセテートフイルムの表面エネルギーは、55mN/m以上であることが好ましく、60〜75mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。
セルロースアセテートフイルムの厚さは、通常5〜500μmの範囲が好ましく、20〜250μmの範囲が好ましく、30〜180μmの範囲がより好ましく、30〜110μmの範囲が特に好ましい。
【0087】
位相差板は、偏光膜と組み合わせて楕円偏光板の用途に供することができる。さらに、透過型、反射型、および半透過型液晶表示装置に、偏光膜と組み合わせて適用することにより、視野角の拡大に寄与する。以下に、位相差板を利用した楕円偏光板および液晶表示装置について説明する。
【0088】
[楕円偏光板]
位相差板と偏光膜を積層することによって楕円偏光板を作製することができる。位相差板を利用することにより、液晶表示装置の視野角を拡大し得る楕円偏光板を提供することができる。前記偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フイルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0089】
偏光膜は、位相差板の光学異方性層側に積層する。偏光膜の光学補償シートを積層した側と反対側の面に透明保護膜を形成することが好ましい。透明保護膜は、光透過率が80%以上であるのが好ましい。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフイルム、好ましくはトリアセチルセルロースフイルムが用いられる。セルロースエステルフイルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0090】
[液晶表示装置]
本発明の位相差板は、液晶表示装置の光学補償シートとして利用することができる。本発明の位相差板を利用することにより、光学補償シートの波長分散に起因した色味変化を生じることなく、視野角が拡大された液晶表示装置を提供することができる。液晶表示装置は、通常、液晶セル、偏光素子および位相差板(光学補償シート)を有する。前記偏光素子は、一般に偏光膜と保護膜からなり、偏光膜と保護膜については、上記楕円偏光で説明したものを用いることができる。TNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学補償シートは、米国特許5805253号明細書および国際公開WO96/37804号公報に記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許番号第2866372号公報に記載がある。
【0091】
本発明において、前記記載の公報を参考にして各種のモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)を作製することができる。位相差板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)モードのような様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。位相差板は、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)モードの液晶表示装置の光学補償に特に効果がある。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0093】
[合成例1]
例示化合物((Z4)−(Y1−3))を、下記のルートにより合成した。
【0094】
【化18】

【0095】
パラヒドロキシケイヒ酸200g(1.22mol)のエチルアルコール1.5L溶液に、濃硫酸20mlを加え、6時間還流した。放冷後、減圧下、エチルアルコール1Lを留去し、酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて分液し、有機相を重曹水にて中和した。有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、226gの(A−1)を得た(収率97%)。
【0096】
(A−1)57.6g(0.3mol)の塩化メチレン600ml溶液にメトキシエトキシメチルクロライド(MEMCl)51.4mlを加え、エチルジイソプロピルアミン78.4ml(0.45mmol)を反応系の温度を30℃以下に保ちながらゆっくり滴下した。そのまま3時間攪拌した後、飽和食塩水を加えて分液し、有機相を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、77.4gの(A−2)を得た(収率92%)。
【0097】
水素化ナトリウム9.2g(228mmol)、トリメチルスルホニウムヨ−ジド50.2g(228mol)にジメチルスルホキシド160mlを窒素雰囲気下滴下した。水素が発生しなくなるのを確認し、さらに30分間撹拌した。49.2g(A−2)(175.6mmol)のジメチルスルホキシド600ml溶液を添加し、50℃にて3時間撹拌した。放冷後、酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて分液し、有機相を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、33.6gの粗生成物(A−3)を得た(粗収率65%)。
【0098】
(A−3)20.4g(69.3mmol)のエチルアルコール200ml溶媒にピリジニウムパラトルエンスルホン酸17.4g(69.3mmol)を添加し、還流した。6時間攪拌した後、放冷後、酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて分液し、有機相を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル及びヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製した。13.0g(収率91%)の(A−4)を得た。
【0099】
窒素雰囲気下、(A−4)12.4g(60mmol)のN,N’−ジメチルアセトアミド150ml溶液に、ブロモエタノール11.2g(90mmol)、炭酸カリウム12.4g(90mmol)を加え、内温110℃にて5時間攪拌した。放冷後、酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて分液し、有機相を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル及びヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製した。14.0g(収率93%)の(A−5)を得た。
【0100】
(A−5)14.0g(55.5mmol)のテトラヒドロフラン100ml溶液に、水酸化リチウム1水和物4.2g(100mmol)を水100mlに溶解させた水溶液を添加し、還流下6時間攪拌した。放冷後、酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて分液し、有機相を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル及びヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製した。11.7g(収率95%)の(A−6)を得た。
【0101】
(A−6)7.4g(33.2mmol)のテトラヒドロフラン100ml溶液に、アクリル酸クロライド3.24ml(40mmol)、ジメチルアニリン5.06ml(40mmol)、ニトロベンゼン0.3mlを加え、内温60℃にて3時間攪拌した。放冷後、酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて分液し、有機相を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣にN,N’−ジメチルアセトアミド100ml、トリエチルアミン5.6ml(40mmol)を加えて内温60℃にて2時間攪拌した。放冷後、酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて分液し、有機相を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチルとヘキサン混合溶媒から晶斥し、7.2g(収率78%)の(A−7)を得た。
【0102】
窒素雰囲気下、(A−7)4.1g(14.8mmol)のテトラヒドロフラン溶液100mlに、氷冷下にてメタンスルホニルクロライド1.15mlg(14.8mmol)を添加し、エチルジイソプロピルアミン2.58ml(14.8mmol)をゆっくり滴下した。滴下後室温まで昇温させ30分撹拌させた。TLCにて反応を確認後、氷冷し、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの1水和物0.63g(1.85mmol)のテトラヒドロフラン溶液50mlを添加し、さらにエチルジイソプロピルアミン2.13ml(12.25mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、N,N−ジメチルアミノピリジンを触媒量加え、そのまま室温まで昇温し3時間撹拌した。酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて分液し、有機相を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン及びメタノール混合溶媒を溶離液として用いて精製した。氷冷したメタノールから晶斥し、2.8g(収率82%)の例示化合物((Z4)−(Y1−3))を得た。以下に得られた化合物の1H NMR測定結果及び諸特性を示す。
【0103】
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ1.30−1.45(6H、m)、1.70−1.85(6H、m)、2.05−2.20(6H、m)、2.65−2.80(6H、m)、4.19(12H、t、J=6.4Hz)、4.52(12H、t、J=6.4Hz)、5.87(6H、d,J=10.4Hz)、6.17(6H、d,d,J=10.4Hz、17.2Hz)、6.46(6H、d,J=17.2Hz)、6.83(12H、d,J=8.0Hz)、7.03(6H、d、J=8.0Hz)、7.06(6H、d、J=8.0Hz)、8.24(6H、s);マススペクトル(M+Na)/(POSI)=1896;相転移温度:Cry 70℃ ND 127℃ Iso。
【0104】
[合成例2及び3]
例示化合物((Z4)−(Y1−4))、((Z4)−(Y1−5))を、合成例3のブロモエタノールをブロモプロパノール、ブロモブタノールに変更した以外は、合成例3と同様な方法にて、例示化合物(4)収率33%(8Steps)、例示化合物(5)収率24%(8Steps)で合成した。以下に得られた化合物の1H NMR測定結果及び諸特性をそれぞれ示す。
【0105】
例示化合物((Z4)−(Y1−4))
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ1.30−1.45(6H、m)、1.70−1.85(6H、m)、2.05−2.20(18H、m)、2.65−2.80(6H、m)、4.04(12H、t、J=7.2Hz)、4.37(12H、t、J=6.4Hz)、5.84(6H、d,J=10.4Hz)、6.13(6H、d,d,J=10.4Hz、17.2Hz)、6.42(6H、d,J=17.2Hz)、6.81(12H、d,J=8.0Hz)、7.01(6H、d、J=8.0Hz)、7.05(6H、d、J=8.0Hz)、8.19(6H、s);マススペクトル(M+Na)/(POSI)=1980;相転移温度:Cry 65℃ ND 147℃ Iso。
【0106】
例示化合物((Z4)−(Y1−5))
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ1.30−1.45(6H、m)、1.70−1.85(6H、m)、2.05−2.20(30H、m)、2.65−2.80(6H、m)、3.98(12H、t、J=6.8Hz)、4.25(12H、t、J=6.4Hz)、5.83(6H、d,J=10.4Hz)、6.13(6H、d,d,J=10.4Hz、17.2Hz)、6.42(6H、d,J=17.2Hz)、6.81(12H、d,J=8.0Hz)、7.02(6H、d、J=8.0Hz)、7.06(6H、d、J=8.0Hz)、8.21(6H、s);マススペクトル(M+Na)/(POSI)=2064;相転移温度:Cry 70℃ ND 130℃ Iso。
【0107】
[合成例4]
例示化合物((Z4)−(Y2−11))を、下記のルートにより合成した。
【0108】
【化19】

【0109】
水酸化ナトリウム51.0g(1.28mol)水溶液1Lに、ヒドロキノン36.0g(0.33mol)、3−ブロモ−1−プロパノール62.4g(0.45mol)を加え、加熱還流下6時間撹拌した。氷冷下、硫酸にて中和し、酢酸エチルにて抽出した。溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル及びヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製した。酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒から晶斥し、27.8g(収率51%)の(B−1)が得られた。
【0110】
窒素雰囲気下、4−ブロモクロトン酸メチル(85%)36.5g(0.17mol)、(B−1)25.2g(0.15mol)、炭酸カリウム41.5g(0.3mol)のアセトン500ml溶液を加熱還流下、5時間撹拌した。ろ過にて炭酸カリウムを取り除き、減圧下にて溶媒を留去した。得られた組成物に、酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。33.8g(収率85%)の(B−2)を得た。
【0111】
(B−2)33.8g(127mmol)のテトラヒドロフラン溶液300mlに水酸化リチウム1水和物8.6g(200mol)の水溶液240mlを添加した。メチルアルコール50ml加えた後、反応系の温度を45℃まで昇温し、5時間撹拌した。希塩酸水にて中和した後、酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒にて晶斥し、26.9g(収率84%)の(B−3)を得た。
【0112】
窒素雰囲気下、(B−3)20.6g(82mmol)のテトラヒドロフラン溶液250mlにジメチルアニリン12.2g(100mmol)とニトロベンゼン0.3ml、アクリル酸クロライド9.2g(100mmol)を加え、60℃にて3時間撹拌した。放冷後、酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた組成生物をN,N−ジメチルアセトアミド200mlに溶解させ、トリエチルアミン10.2g(100mmol)を加え、60℃にて2時間撹拌した。放冷後、酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒にて晶斥し、18.1g(収率72%)の(B−3)を得た。
【0113】
(B−3)10.5g(34.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液300mlに、氷冷下にてメタンスルホニルクロライド3.9g(34.3mmol)を添加し、エチルジイソプロピルアミン4.4g(34.3mmol)をゆっくり滴下した。滴下後室温まで昇温させ30分撹拌させた。TLCにて反応を確認後、氷冷し、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの1水和物1.47g(4.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液150mlを添加し、さらにエチルジイソプロピルアミン3.9g(30.1mmol)のテトラヒドロフラン溶液50mlをゆっくり滴下した。滴下終了後、N,N−ジメチルアミノピリジンを触媒量加え、そのまま室温まで昇温し3時間撹拌した。酢酸エチル及び水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル及びヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製した。メチルアルコールから晶斥し、5.4g(収率61%)の例示化合物((Z4)−(Y2−11))を得た。以下に得られた化合物の1H NMR測定結果及び諸特性を示す。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.14(12H、t、t、J=6.40Hz、6.40Hz)、3.99(12H、t、J=6.40Hz、)、4.35(12H、t、J=6.40Hz)、4.67(12H、bs)、5.83(6H、d、J=10.4Hz)、6.13(6H、d、d,J=10.4Hz、17.6Hz)、6.41(6H、d、J=17.6Hz)、6.44(6H、d、J=15.6Hz)、6.75−6.90(24H、m)、7.32(6H、d、J=15.6Hz)、8.18(6H、S);マススペクトル(M+Na)/(POSI)=2077;相転移温度 C 97℃ ND 125℃ Iso。
【0114】
[合成例5及び6:例示化合物((Z4)−(Y2−10))及び((Z4)−(Y2−12)の合成]
例示化合物((Z4)−(Y2−10))及び((Z4)−(Y2−12)は、上記合成例4に示した3−ブロモ―1−プロパノールをそれぞれ等モル量の2−ブロモエタノール及び、4−ブロモ−1−ブタノールに変更した以外、同様な方法にて合成できた。以下に得られた化合物の1H NMR測定結果及び諸特性をそれぞれ示す。
例示化合物((Z4)−(Y2−10))の収率25%(5Steps);
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.12(12H、t、J=4.80Hz、)、4.47(12H、t、J=4.80Hz)、4.64(12H、bs)、5.86(6H、d、J=10.4Hz)、6.17(6H、d、d,J=10.4Hz、17.2Hz)、6.40−6.50(12H、m)、6.70−6.90(24H、m)、7.32(6H、d、J=15.6Hz)、8.10(6H、S);マススペクトル(M+Na)/(POSI)=1992;相転移温度 C 65℃ ND 101℃ Iso。
【0115】
例示化合物((Z4)−(Y2−12)の収率15%(5Steps);
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ1.75−1.95(24H、m)、3.93(12H、bs)、4.23(12H、bs)、4.67(12H、bs)、5.82(6H、d、J=10.4Hz)、6.11(6H、d、d,J=10.4Hz、15.6Hz)、6.41(6H、d、15.6Hz)、6.45(6H、d,15.6Hz)、6.70−6.90(24H、m)、7.33(6H、d、J=15.6Hz)、8.19(6H、S);マススペクトル(M+Na)/(POSI)=2161;相転移温度 Col 70℃ ND 100℃ Iso。
【0116】
[合成例7] 例示化合物((Z4)−(Y3−3))の合成
例示化合物((Z4)−(Y3−3))は、下記に示すルートにより合成した。
【0117】
【化20】

【0118】
窒素雰囲気下、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの1水和物1.71g(5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド10mlに溶解させ、室温にてクロロギ酸オクチル9.6g(50mmol)を滴下した。ピリジン50mlを反応系内温度を35度以下に保ちながら滴下し、そのまま2時間撹拌した。酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を希塩酸水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒を溶離液として用いて精製た。酢酸エチル、ヘキサン混合溶媒から晶析して4.6g(収率73%)の例示化合物((Z4)−(Y3−3))を得た。以下に得られた化合物の1H NMR測定結果及び諸特性を示す。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ0.90(18H、t、J=6.80Hz)、1.20−1.50(60H、m)、1.78(12H、t,t、J=6.80Hz、J=6.80Hz)、4.31(12H、t、J=6.80Hz)、8.33(6H、s);マススペクトル(M+Na)/(POSI)=1283。
【0119】
[合成例8、9] 例示化合物((Z4)−(Y3−1))、((Z4)−(Y3−4))の合成
例示化合物((Z4)−(Y3−1))、((Z4)−(Y3−4))は上記合成例7に示したクロロギ酸オクチルをそれぞれ等モル量のクロロギ酸へプチル、クロロギ酸ノニルに変更した以外、同様な方法にて合成できた。以下に得られた化合物の1H NMR測定結果及び諸特性をそれぞれ示す。
【0120】
例示化合物((Z4)−(Y3−1))の収率70%
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ0.90(18H、t、J=6.80Hz)、1.20−1.50(48H、m)、1.78(12H、t、t、J=6.80Hz、6.80Hz)、4.32(12H、t、J=6.80Hz)、8.33(6H、s);マススペクトル(M+Na)/(POSI)=1200。
【0121】
例示化合物((Z4)−(Y3−4))の収率73%。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ0.89(18H、t、J=6.80Hz)、1.20−1.50(72H、m)、1.76(12H、t、t、J=6.80Hz、6.80Hz)、4.31(12H、t、J=6.80Hz)、8.35(6H、s);マススペクトル(M+Na)/(POSI)=1368。
【0122】
[合成例10]
例示化合物((Z4)−(Y4−1))を、下記に示すルートにより合成した。
【0123】
【化21】

【0124】
4−ヒドロキシ安息香酸9.40g(68.0mmol)、ピリジン13.7mL(170mmol)のテトラヒドロフラン70mL溶液に、氷冷下でデカノイルクロライド18.3mL(90.2mmol)を滴下し、一晩撹拌した。その後、反応液を水480ml中にあけ、結晶をろ過し、更に沸騰水で洗浄した。ヘキサンで煮沸精製を行い、13.6g(68%)の(C−1)を得た。
(C−1)4.82g(16.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液30mLに、氷冷下、メタンスルホニルクロライド1.28mL(16.5mL)とエチルジイソプロピルアミン3.10mL(18.0mmol)のテトラヒドロフラン3mL溶液を滴下した。滴下後、室温まで昇温させ、1時間撹拌した。その後、氷冷し、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンの1水和物513mg(1.50mmol)のテトラヒドロフラン溶液10mLを添加し、さらにエチルジイソプロピルアミン3.10mL(18.0mmol)を滴下した。滴下終了後、N,N−ジメチルアミノピリジンを触媒量加え、そのまま室温まで昇温し5時間撹拌した。酢酸エチルを加え、有機層を希塩酸で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン = 1/2)にて精製した。得られた結晶をアセトニトリル中で煮沸精製することにより、例示化合物((Z4)−(Y4−1))を2.20g(75%)得た。以下に得られた化合物の1H NMR測定結果を示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3) 0.89(18H、t、J=6.9Hz)、1.25−1.50(72H、m)、1.65−1.80(12H、m)、2.53(12H、t、J=7.5Hz)、6.92(12H、d、J=8.7Hz)、7.88(12H、d、J=8.7Hz)、8.31(6H、s)。
【0125】
[合成例11]
例示化合物((Z16)−(Y5−3))を、下記に示すルートにより合成した。
【0126】
【化22】

【0127】
4−シアノフェノール15.0gをジメチルホルムアミド300mlに溶解させ、炭酸カリウム20.9g、1−ブロモヘキサン18.5mlを添加後、窒素雰囲気下、110℃で5時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、(D−1)を25.0g得た。
【0128】
(D−1)25.0gをエタノール200mlに溶解させ、50%ヒドロキシルアミン溶液26.0mlを添加後、90℃で3時間撹拌した。冷却後、反応液にメタノールを加え、析出した結晶を濾別し乾燥し(D−2)の結晶を29.0g得た。
【0129】
(D−2)29.0g、を1,4−ジオキサン300mlに溶解させ、トリメシン酸クロライド10.2g、ピリジン10.9mlを添加後、90℃で7時間撹拌した。冷却後、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、例示化合物((Z16)−(Y5−3))を25g得た。以下に得られた化合物の1H NMRを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3) 0.85(9H、t)、1.25−1.35(12H、m)、1.35−1.45(6H、m)、1.70−1.80(6H、m)、3.95(6H、t)、6.95(6H、d)、8.05(6H、d)、9.10(3H、s)。
【0130】
[合成例12]
例示化合物((Z16)−(Y5−7))を、下記に示すルートにより合成した。
【0131】
【化23】

【0132】
(E−1)11.0gをCH2Cl2100mlに溶解させ、三臭化ホウ素(1.0MCH2Cl2溶液)135mlを添加した。40℃で8時間撹拌後、反応液に水を加え、析出した結晶をろ過により濾取した。この結晶を乾燥することで、(E−2)を7.5g得た。
2−ブロモブタノール0.34gをジメチルアセトアミド5mlに溶解後、アクリル酸クロライド0.26mlを滴下し、室温で1時間攪拌後、水20ml、ヘキサン20mlを加え、有機層を洗浄した。分液後、ヘキサン層を留去し、上記(E−2)0.3g、炭酸カリウム0.44gおよびジメチルホルムアミドを加え、110℃で5時間攪拌した。反応液に水を加え、CH2Cl2で抽出後、有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを用いて精製を行うことで、例示化合物((Z16)−(Y5−7))の結晶0.36gを得た。以下に得られた化合物の1H NMRを示す。
【0133】
1H NMR(300MHz、CDCl3):4.33(6H、t)、4.60(6H、t)、5.89(3H、dd)、6.20(3H、dd)、6.50(3H、dd)、7.05(6H、d)、8.15(6H、d)、9.20(3H、s)。
【0134】
[合成例13]
例示化合物((Z16)−(Y5−38))を、下記スキームにしたがって合成した。
【0135】
【化24】

【0136】
2−ヒドロキシエチルアクリレート0.73gをテトラヒドロフラン10mlに溶解後、氷冷下ジメチルアニリン0.84mlを滴下し、トリホスゲン0.62gを加えた。室温に戻し2時間撹拌後、氷冷下(E−2)0.35gを加え、ピリジン0.31mlを滴下し、室温で2時間撹拌した。反応後、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、例示化合物((Z16)−(Y5−38))を0.38g得た。以下に得られた化合物の1H NMRを示す。
【0137】
1H−NMR(300MHz,CDCl3)4.40−4.60(12H、m),5.90(3H、dd),6.20(3H、dd),6.50(3H、dd),7.45(6H、d),8.30(6H、d),9.30(3H、s)。
【0138】
[合成例14]
例示化合物((Z16)−(Y5−26))を、下記スキームにしたがって合成した。
【0139】
【化25】

【0140】
4−ヒドロキシブチルアクリレート13gをアセトン450mlに溶解させ、この溶液に氷冷下、三酸化クロムに水180ml、硫酸60ml加えた溶液を滴下する。室温で5時間撹拌した後にアセトンを減圧留去し、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、(F−1)を10.9g得た。3.2gの(F−1)をトルエン10mlに溶解させ、塩化チオニル4.5ml、ジメチルホルムアミドを触媒量加え40℃で20分撹拌した。トルエンを減圧留去し(F−2)を得た。(Eー2)0.35gをテトラヒドロフラン10mlに溶解させ、ジイソプロピルエチルアミンを0.43ml、ジメチルアミノピリジンを触媒量、(F−2)を0.88g加え、室温で1時間撹拌した。反応後、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、例示化合物((Z16)−(Y5−26))を0.40g得た。以下に得られた化合物の1H NMRを示す。
【0141】
1H−NMR(300MHz,CDCl3)2.15−2.25(6H、m),2.75(6H、t),4.30(6H、t),5.85(3H、dd),6.25(3H、dd),6.45(3H、dd),7.30(6H、d),8.28(6H、d),9.23(3H、s)。
【0142】
[合成例15]
例示化合物((Z16)−(Y5−52))を、下記スキームにしたがって合成した。
【0143】
【化26】

【0144】
合成例11と同様の方法で合成を行い例示化合物((Z16)−(Y5−52))を35g得た。以下に得られた化合物の1H NMRを示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)、0.85(9H、t)、1.25−1.35(12H、m)、1.35−1.45(6H、m)、1.70−1.80(6H、m)4.10(6H、t)、6.80(3H、dd)、6.90(3H、dd)、8.15(3H、t)、9.20(3H、s)。
【0145】
[合成例16]
例示化合物((Z16)−(Y5−58))の合成
4−ブロモ−1−ブタノールを原料に用い、実施例12と同様の方法で合成を行い、例示化合物((Z16)−(Y5−58))を8.0g得た。以下に得られた化合物の1H NMR測定結果を示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3) 1.90−2.00(12H、m)、4.10(6H、t)、4.30(6H、t)、5.85(3H、dd)、6.15(3H、dd)、6.45(3H、dd)、6.80(3H、dd)、6.90(3H、dd)、8.15(3H、t)、9.20(3H、s)。
【0146】
[合成例17]
例示化合物((Z16)−(Y5−89))を、下記スキームにしたがって合成した。
【0147】
【化27】

【0148】
4−ヒドロキシブチルアクリレートを原料に用い、実施例13と同様の方法で合成を行い例示化合物((Z16)−(Y5−89))を20g得た。得られた化合物の1H NMRを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3) 1.80−2.00(12H、m)、4.25(6H、t)、4.35(6H、t)、5.85(3H、dd)、6.15(3H、dd)、6.45(3H、dd)、7.25(6H、d)、8.30(3H、t)、9.25(3H、s)。
【0149】
[合成例18]
例示化合物((Z16)−(Y5−101))を、下記スキームにしたがって合成した。
【0150】
【化28】

【0151】
水素化ナトリウム5.18gにテトラヒドロフラン100ml、ヘキサノール11.7mlを加える。室温で20分撹拌した後、氷冷下でテトラヒドロフラン80mlに3,4‐ジフルオロベンゾニトリル10gを溶解させた溶液を滴下する。室温で5時間撹拌した後、反応液に水を滴下し、酢酸エチルで抽出後、有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを用いて精製を行うことで、(h−1)の結晶15.5gを得た。その後、実施例11と同様に反応を行い例示化合物((Z16)−(Y5−101))を得た。得られた化合物の1H NMRを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3) 0.95(9H、t)、1.30−1.40(12H、m)、1.40−1.50(6H、m)、1.85−1.95(6H、m)、4.20(6H、t)、7.10(3H、dd)、7.90−8.00(6H、m)、9.20(3H、s)。
【0152】
[合成例19]
例示化合物((Z16)−(Y5−109))を、下記スキームにしたがって合成した。
【0153】
【化29】

【0154】
6−ブロモ−1−ヘキサノールを原料に用い、実施例12と同様の方法で合成を行い例示化合物((Z16)−(Y5−109))を0.35g得た。得られた化合物の1H NMRを以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3) 1.40−1.60(12H、m)、1.65−1.75(6H、m)、1.75−1.85(6H、m)、4.15(6H、t)、4.25(6H、t)、5.80(3H、dd)、6.15(3H、dd)、6.45(3H、dd)、7.10(3H、dd)、7.90−8.00(6H、m)、9.25(3H、s)。
【0155】
[合成例20]
例示化合物((Z16)−(Y5−136))を、下記スキームにしたがって合成した。
【0156】
【化30】

【0157】
実施例13と同様の方法で合成を行い、例示化合物((Z16)−(Y5−136))を0.35g得た。以下に、得られた化合物の1H NMR測定結果を示す。
1H−NMR(300MHz、溶媒:CDCl3) 4.50(6H、t)、4.60(6H、t)、5.92(3H、dd)、6.20(3H、dd)、6.50(3H、dd)、7.45(3H、dd)、8.10−8.20(6H、m)、9.30(3H、s)。
【0158】
[実施例1]
(円盤状化合物のクロロホルム中での溶液吸収測定)
例示化合物((Z4)−(Y1−3))をクロロホルムに溶解させて調製した溶液の吸光度を、分光器UV−2550(島津製作所)にて240nm〜450nmの範囲にて測定した結果を図1に示す。図1は、横軸は測定波長(nm)であり、縦軸が吸光度(吸収の最大値を1に規格化)である。この溶液の吸収スペクトルの最大吸収波長は、266.2nmであった。
【0159】
[実施例2〜13]
実施例1と同様な操作にて、例示化合物((Z4)−(Y1−4))、((Z4)−(Y1−5))、((Z4)−(Y2−11))、((Z4)−(Y2−10))、((Z4)−(Y2−12))、((Z16)−(Y5−7))、((Z16)−(Y5−38))、((Z16)−(Y5−26))、((Z16)−(Y5−58))、((Z16)−(Y5−89))、((Z16)−(Y5−109))及び((Z16)−(Y5−136))のクロロホルム溶液の吸収スペクトルと測定し、最大吸収波長を求めた。
下表1に、それぞれの化合物のクロロホルム溶液の最大吸収波長を示す。
【0160】
[比較例1,2]
実施例1と同様な操作にて、下記円盤状化合物(A)及び(B)それぞれのクロロホルム溶液の吸収スペクトルをそれぞれ測定した。下表1に、最大吸収波長を示す。
【0161】
【化31】

【0162】
【表1】

【0163】
[実施例14]
(透明支持体の作製)
下記の成分をミキシングタンクに投入し、加熱攪拌して、セルロースアセテート溶液(以下、ドープと呼ぶことがある)を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート溶液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート 6.5質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 5.2質量部
下記のレターデーション上昇剤(1) 0.1質量部
下記のレターデーション上昇剤(2) 0.2質量部
メチレンクロライド 310.25質量部
メタノール 54.75質量部
1−ブタノール 10.95質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0164】
【化32】

【0165】
【化33】

【0166】
得られたドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の状態で剥ぎ取り、フイルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の領域で、幅方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、120℃を越える領域で機械方向の延伸率が実質0%、(剥ぎ取り時に機械方向に4%延伸することを考慮して)幅方向の延伸率と機械方向の延伸率との比が0.75となるように調整して、厚さ100μmのセルロースアセテートフイルムを作製した。作製したフイルムのレターデーション値を波長632.8nmで測定したところ、厚み方向のレターデーション値が40nm、面内のレターデーション値が4nmであった。作製したセルロースアセテートフイルムを透明支持体として用いた。
【0167】
(第1下塗り層の形成)
上記透明支持体の上に、下記の組成の塗布液を28ml/m2塗布し、乾燥して、第1下塗り層を形成した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
第1下塗り層塗布液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゼラチン 5.44質量部
ホルムアルデヒド 1.38質量部
サリチル酸 1.62質量部
アセトン 391質量部
メタノール 158質量部
メチレンクロライド 406質量部
水 12質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0168】
(第2下塗り層の形成)
第1下塗り層の上に、下記の組成の塗布液を7ml/m2塗布し、乾燥して、第2下塗り層を形成した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
第2下塗り層塗布液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のアニオン性ポリマー 0.77質量部
クエン酸モノエチルエステル 10.1質量部
アセトン 200質量部
メタノール 877質量部
水 40.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0169】
【化34】

【0170】
(バック層の形成)
透明支持体の反対側の面に、下記の組成の塗布液を25ml/m2塗布し、乾燥して、バック層を形成した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
バック層塗布液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
酢化度55%のセルロースジアセテート 6.56質量部
シリカ系マット剤(平均粒子サイズ:1μm) 0.65質量部
アセトン 679質量部
メタノール 104質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0171】
(配向膜の形成)
下記変性ポリビニルアルコールとグルタルアルデヒド(変性ポリビニルアルコールの5質量%)とを、メタノール/水の混合溶媒(容積比=20/80)に溶解して、5質量%の溶液を調製した。
【0172】
【化35】

【0173】
この溶液を、第2下塗り層の上に塗布し、100℃の温風で120秒間乾燥した後、ラビング処理を行い配向膜を形成した。得られた配向膜の膜厚は0.5μmであった。配向膜のラビング方向は、透明支持体の流延方向と平行であった。
【0174】
(光学異方性層の形成)
前記で作製した配向膜のラビング処理面上に、下記の組成を有する光学異方性層塗布液を、#4のワイヤーバーを用いて塗布した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層塗布液
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
本発明の液晶化合物(((Z4)−(Y1−3))) 100質量部
光重合開始剤
(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製) 3.3質量部
増感剤
(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 250質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0175】
上記の光学異方性層を塗布したフイルムを、恒温槽中にて配向させ、200mJ/cm2の紫外線を照射して光学異方性層の配向状態を固定した。室温まで放冷して、光学補償シートを作製した。
【0176】
[実施例15〜26]
(光学異方性層の形成)
前記実施例14と同様な方法で作製した配向膜のラビング処理面上に、実施例14で用いた例示化合物((Z4)−(Y1−3))の代わりに例示化合物((Z4)−(Y1−4))、((Z4)−(Y1−5))、((Z4)−(Y2−11))、((Z4)−(Y2−10))、((Z4)−(Y2−12))、((Z16)−(Y5−7))、((Z16)−(Y5−38))、((Z16)−(Y5−26))、((Z16)−(Y5−58))、((Z16)−(Y5−89))、((Z16)−(Y5−109))、((Z16)−(Y5−136))を用い、他は実施例14と同様に行った。
【0177】
[比較例3]
実施例14で作製した配向膜に、下記の組成の光学異方性層塗布液を、#4のワイヤーバーを用いて塗布した。
────────────────────────────────────
光学異方性層塗布液
────────────────────────────────────
比較円盤状液晶性化合物(A) 100質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
光重合開始剤
(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製) 3.3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 2.2質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.55質量部
メチルエチルケトン 250質量部
────────────────────────────────────
【0178】
上記の光学異方性層を塗布したフイルムを配向させ、200mJ/cm2の紫外線を照射して光学異方性層の配向状態を固定した。室温まで放冷して、光学補償シートを作製した。
【0179】
[比較例4]
比較例3で用いた円盤状化合物(A)の代わりに、円盤状化合物(B)を用いた以外は、比較例3と同様な操作にて光学補償シートを作製した。
【0180】
(波長分散値の測定)
実施例14〜26及び比較例3および4で得られた光学補償シートのレターデーション値の波長依存性を、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて測定した。波長分散の値は、478nmのレターデーション値を747nmで割った値で表した。結果を第2表に示す。第2表中には、第1表中のクロロホルム溶液の最大吸収波長もあわせて示した。
【0181】
【表2】

【0182】
さらに、第2表に示したクロロホルム中での最大吸収波長と、波長分散の値との相関について考察するため、各例示化合物に対して、最大吸収波長と波長分散の値をプロットした。かかるグラフを図2に示す。
図2に示したグラフより、光学補償シートの波長分散の値は、用いる円盤状化合物のクロロホルム溶液の吸収最大波長と相関があることが明らかであり、クロロホルム溶液の吸収スペクトルの最大吸収波長が270nm以下である円盤状化合物を用いて形成された光学補償シートは、波長分散性の指標となる値が小さいことがわかる。このことは、該円盤状化合物を用いて作製した光学補償シートは、液晶表示装置に用いた場合に、色味変化が少なく、且つ視野角の拡大に寄与することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】実施例1で合成した例示化合物(Z4)−(Y1−3)のクロロホルム溶液の吸収スペクトルである。
【図2】実施例で合成した各例示化合物に対して、最大吸収波長と波長分散の値をプロットしたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状化合物から形成された光学異方性層を有する位相差板であって、該円盤状化合物の少なくとも1種がクロロホルム溶液中において270nm以下に最大吸収波長を有する円盤状化合物である位相差板。
【請求項2】
前記円盤状化合物が、液晶性を示す請求項1に記載の位相差板。
【請求項3】
前記円盤状化合物が、ディスコティックネマチック相を発現する請求項1又は2に記載の位相差板。
【請求項4】
前記円盤状化合物を、ディスコティックネマチック相を示す配向状態に固定してなる光学異方性層を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−91246(P2006−91246A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274717(P2004−274717)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】