説明

位相板を含むホモジナイザ

本発明は、レーザー源によって放出されるレーザーパルスをホモジナイズして、ターゲットを均一に照明するシステムに関する。本発明によれば、レーザー源とターゲットとの間に、位相板と焦点合わせ手段とを配置する。前記位相板は、複数個の遅延レーザービームをターゲットの方向に発生させることができる複数個のサブピューピルによって形成され、2個の隣接する前記遅延レーザービームの間の光路差Δdは、レーザーパルスの時間的コヒーレンスTより大きく、そして、前記焦点合わせ手段は、前記遅延レーザービームを均一スポットにおいてターゲットの上に重ね合わせる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、レーザー源によって放出されるレーザーパルスをホモジナイズして、ターゲットを均一に照明するシステムに関する。
【0002】
本システムは、フェムト秒増幅器固体媒質(solid media)の高強度(intense)レーザーポンピングの分野において、特に有用な用途が見出される。
【0003】
実際に、増幅器を(エネルギーの抽出の観点から)効率的に、かつ(レーザー材料への損傷の観点から)頑強にポンピングすることが困難なために、フェムト秒増幅器(特に、Ti:サファイア技術に基づく)のレーザーポンピングの均一性は、本質的なパラメータである。ナノ秒モードにおけるTi:サファイアの損傷閾値は、5〜10J/cmと推定される。この値は、系統的な研究ではなく、実験に基づく推定から得られる。閾値の値に関する不確定性は、損傷の危険性から結晶を保護するため、レーザー技術者に、低いエネルギー抽出効率(20%)で、飽和フリューエンス(fluence)、すなわち、1J/cmをちょうど超えて活性材料をポンピングすることを余儀なくさせる。
【0004】
例えば、4J/cmでポンピングする場合、効率は3倍高い(60%)。このような場合、物質の損傷閾値は、電力増幅器の中のエネルギーの良好な抽出のため必要とされるポンピングフリューエンスに非常に近くなり、そして、ポンプレーザーの不均一性は、大きな損傷の危険性に変換されることになるので、信頼性の大幅な低下、又は、結果として性能の劣化をもたらし、これらの両方は、かなりの過剰コストを意味する。
【0005】
この不均一性は、現在使用されているイメージング手法では決して完全に制御されないポンププロファイルに起因する。これらのプロファイルは、多くの場合に重要であり、そして、多くの場合にレーザー結晶の破壊を引き起こす変調又はホットスポットを有する。前記レーザー結晶は、更に、非常に高価であって、最も大きなものに対してはその価格が数万ユーロに達し、そして、成長するために1年に至るまでの長い期間を必要とする。
【0006】
レーザー増幅器の価格の60%から70%が、ポンプレーザーによるものであることを念頭に置くと、このことは、ポンピングレーザービームの空間的品質の制御において、より優れた性能をもつシステム開発のための主要なパラメータを特定することが明らかである。
【0007】
ポンププロファイルの変調を制限するために、ビームが、レイリーゾーンを離れることなく数メートルに亘って伝搬するとき、変調は最小限であることを考慮することがある。例えば、直径10mmのガウスビームに対して1J/cm(532nm及び10Hzで)を供給するポンプレーザーを考慮する場合には、レイリーゾーンは140mまで広がる。しかしながら、現実には、ポンプレーザーの典型的なプロファイルは、ガウスプロファイルよりも「トップハット型(top-hat)」(スーパーガウス)プロファイルに近い。なぜなら、この形態においては、有用なエネルギーに関して周波数変換及びレーザー源の性能を最適化することが必要とされるからである。スーパーガウス・プロファイルの場合、既に考察された例の他の特性と共に、変調がちょうど4メートルの伝搬の後に早くも現れ、そして、レイリーゾーンが遙かに長い場合であっても、光学系及びレーザー結晶にとって危険になることがある。これらの変調が原因で、実際には、3〜4メートルより長い伝搬距離を使用することが難しい。従って、伝搬がレイリーゾーンに近づく場合には、ビーム均一性が効果的に保存される距離が短いため、増幅器の構成にかなりの制約が存在する。
【0008】
そうでない場合には、ポンププロファイルの変調を制限するため、増幅結晶上のイメージングによって、ポンピングレーザービームの(均一であると仮定される)近接場を移動させることからなる手法を使用することもできる。しかしながら、この手法は、強度の変動(使用されるポンピングレーザーに長時間に亘って現れることがある)が見込まれることから、増幅結晶を決して保護しない。
【0009】
現在では、ポンププロファイルのこれらの変調を効果的に制限するため、ポンプレーザーから活性材料へのエネルギーの移動の完全な制御を意味する、レーザー源のホモジナイズが必要であることは公知である。このような制御を用いると、高い抽出効率であるが損傷閾値に近い条件で、レーザーをポンプし、そして、増幅結晶を損傷する可能性があるホットスポットを回避することが可能となるであろう。一般に、ホモジナイザの目的は、入射ビームの初期空間分布に係らず、増幅結晶の上での均一なエネルギー分布を確実にすることである。
【0010】
これに関連して、マイクロレンズのマトリックスを有する回折ホモジナイザが公知である。サブピューピル(subpupil)を有する前記回折ホモジナイザは、2個の部品、すなわち:1組のマイクロレンズを含むマトリックス光学要素と;そして、焦点合わせコンポーネントと;によって構成される。各マイクロレンズはサブピューピルを表す。マイクロレンズは入射ビームを数個のセグメントに分離し、そして、焦点合わせコンポーネントは、各サブピューピルの投影を焦点面の上で重ね合わせる。この手法は、入口でのレーザービームの低空間コヒーレンスに基づいており、それによって、ポンプされるべきゾーン全体に亘って分布する種々のサブ要素の寄与の平均化効果(強度合計)を得る。
【0011】
この手法は、低空間コヒーレンスを有するポンピングシステムにおいて優れた性能を示してきた。しかしながら、ほぼ完全な空間コヒーレンスを有するポンピングシステムの場合、マイクロレンズのマトリックスが100%の変調を誘起した。低空間コヒーレンスを有するビームの場合でも、最良の均一化性能は焦点面の外側で達成される。なぜなら、焦点面は、タルボット効果と呼ばれる周期的構造の回折効果によって変調されるからである。換言すると、このタルボット効果は、焦点面の中のエネルギー分布の使用を妨げ、そして、前記効果は、エネルギー分布が僅かに変調されているが理想的な「トップハット型」にそれほど近くない平面を使用することを必要とする。
【0012】
特許文献US4521075は公知であり、この文献は、ターゲットの方へ向けられるレーザービームを空間的にインコヒーレントにするシステムを開示している。このシステムは、レーザー源とターゲットとの間に、レーザービームの複数の部分の間へ空間的インコヒーレンスを導入する光学成分と、レーザービームをターゲットに向ける焦点合わせレンズとを含む。次に、ターゲットでの干渉を制限するオーバーラップが生じる。
【0013】
しかしながら、実験によって、このシステムは、非常にインコヒーレントなレーザー以外のソース(例えば、レーザーダイオード及びエキシマレーザー)をホモジナイズできないことが分かった。
【0014】
本発明の目的は、干渉効果及び回折効果を除去するホモジナイゼーション用システムを提案することによって前記欠点を克服することである。
【0015】
本発明の別の目的は、フェムト秒レーザーシステム(設備の台数が増加する中で使用され、例えば、ペタワットのレベルを超えるピーク電力に達することが意図されている)において高い平均電力で増幅器用の頑強性及び信頼性のあるポンピング構成を提供することができるシステムを提案することである。
【0016】
本発明は、エネルギー抽出の観点から効率的であって、ターゲット上のレーザービームの強度を制御することを可能するシステムにも関係する。
【0017】
前記目的のうちの少なくとも1つは、レーザー源によって放出されるレーザーパルスをホモジナイズして、ターゲットを均一に照明するシステムを使って達成される。前記システムは、レーザー源とターゲットとの間に、位相板と焦点合わせ手段とを含み、前記位相板は、複数個の遅延レーザービームをターゲットに向かって発生させることができる複数個のサブピューピルによって構成され、ここで、2個の隣接する遅延レーザービームの間の光路差(path difference)Δdが、レーザーパルスの時間的コヒーレンスの長さT以上であるものとし、そして、前記時間的コヒーレンスの長さが、一般に、T・cによって与えられるものとする(式中、cは、問題となっている媒質中の光速度である)。
【0018】
本発明によれば、サブピューピル及び焦点合わせ手段を調整して、前記遅延レーザービームを、均一スポットにおいてターゲットの上に重ね合わせる。位相板は、光学要素のマトリックスによって構成されることができ、各々の前記光学要素が、その光学要素を通過する各エレメンタリービーム(elementary beam)に遅延を加える。この光学要素は、サブピューピルと呼ばれ、所定の方向へ向けられるエレメンタリービームを発生する。サブピューピルのマトリックス配置及び方向は、実験的に、又は、計算によって決定される。焦点合わせ手段を位置決めして、サブピューピルからのエレメンタリービームを互いに上下に重ね合わせる。エレメンタリービームは完全に覆われる。これに反して、特許文献US4521075に記載されるシステムでは、ビームは部分的にオーバーラップするが、重ね合わされない。実際には、本発明によるシステムを使うと、ビームの異なる部分の強度は照明されるべきゾーン全体に亘って合計される。単なる空間的インコヒーレンスではなく、忠実なホモジナイゼーションが達成される。
【0019】
本発明によれば、位相板はN個のサブピューピルを有しており、ここで、Nは1/Γにほぼ等しく、Γは均一スポットのコントラストである。実際には、Nは、1/Γの値に最も近い整数である。
【0020】
コントラストは、レーザーの空間プロファイルの均一性の統計的指標として定義されることができる。コントラストは、平均に対する標準偏差の比率として、すなわち、Γ=シグマ(I)/<I>(式中、Iは強度である)として定義される。ビームの均一性の統計的特徴の理由は、部分的な空間・時間コヒーレンスによるモードカップリングのために、レーザーパルスの中に存在する強い時空カップリングから生じる。コントラストを支配する統計学は、スペックルパターンの数学的モデルによって記述される。エルゴード定理(ergodicity theorem)が有効であり、瞬間的な実現(instantaneous realization)を記述する統計学も、長期に亘る変動を記述するため有効である。
【0021】
本発明は、コントラストによって特徴付けられる均一スポットの強度を、位相板によってつくられるサブピューピルの個数に関係付ける。この関係付けは、強い空間コヒーレンスをもつ構成において、Nd:YAG及びNd:ガラスに基づくCPA−Ti:サファイア回路用の高エネルギーレーザーポンピングシステムのために、特に有利である。レーザー源はある種の光学的保護を使ってターゲットからデカップリングされる。
【0022】
本発明によるシステムでは、回折ホモジナイザを使用して、種々のサブピューピルの寄与を移動(displacement)させることができる。各サブピューピルから発生するビームは異なる光路(path)を進む。これらの光路差は、時間的コヒーレンスの間隔より長いので、サブピューピルの寄与はインコヒーレントであり、従って、強度に加算される。
【0023】
位相板は周期性の少ない構造を有している。各サブピューピルは異なるパターンを有するので、位相板は繰り返し単位で構成されない。この特徴のために、焦点面でのエネルギー分布は、タルボット効果によって変調されない。従って、焦点がぼけることなく、優れた品質の「トップハット型」を伴って使用することができる。位相板は、レーザー材料の上で可能な限りインコヒーレントであるポンピングを達成するため、ポンプビームのコヒーレンスを破壊することが可能である。
【0024】
本発明によるホモジナイゼーション用の光学系は、結晶上の強度における空間プロファイルの再現性を保証することを可能にする。このことは、より頑強性のある電力増幅器を得ることを可能にする。頑強性は、変調がなく、そして、光学成分を損傷することのない動作を保証する、エネルギー分布の制御と関連する。
【0025】
本発明によれば、焦点合わせ手段は、視野レンズと呼ばれる収束レンズを含むことができ、前記収束レンズは、ターゲットがこの収束レンズの焦点距離に位置するように配置される。この収束レンズは、特に、入射ビームのプロファイルのプロダクトのファーフィールド(フーリエ変換)と、位相板の光学的伝達関数との取得を可能にする。
【0026】
本発明の有利な特徴によれば、位相情報を各サブピューピルにエッチングするので、均一スポットは、位相情報によって定義される形状を有する。この形状は、均一スポットの幾何学的形状と、この同じ均一スポットの強度の「トップハット型」形状との両方を含む。
【0027】
好ましくは、この位相情報は、スポットの形状の逆フーリエ変換から計算される。
【0028】
実際には、位相板は、各光学要素が位相遅延を導入し、近傍光学要素と相対的に異なる光学要素のマトリックスによって構成される。各光学要素は、エレメンタリービームをターゲットに向かって投影するサブピューピルを構成する。サブピューピルは視野レンズの焦点面でのエネルギー分布を定義し、強度の「平均化(averaging)」は重ね合わされたサブピューピルの個数に比例する。
【0029】
従って、本発明は、所望の形のエネルギー分布の役割を担うエレメンタリーコンポーネント(サブピューピル)を定義することを可能にする。この定義は、Gerchberg−Saxtonアルゴリズムに基づいて行われることがあり、シミュレーションによって確認されることがある。
【0030】
本発明の有利な特徴によれば、光路差Δdは、Δd=T・cとなり、「c」は、レンズとターゲットとの間の媒質中の光速度である。
【0031】
有利には、位相板の横寸法はレーザーパルスを構成するレーザービームの直径より大きい。更に、レーザービームの直径に対する各サブピューピルの横寸法の比率は、コントラストΓに比例し、このことは、位相板の幾何学的性質を確定することを可能にする。実際には、位相板の入口でのレーザービームの振幅は、各サブピューピル上で均等であると仮定される。この仮定に基づいて、焦点面上のプロファイルは、各サブピューピルの回折スポットの重ね合わせである。レーザービームが、実際には各サブピューピル上で均等でない場合、均等性(uniformity)からの差が様々な回折スポットを重ね合わせることによって平均化されることになる。次に、ビームのサイズと各サブピューピルのサイズとの比率は、焦点面で平均化されるべきビームプロファイル中の均一性のこれらの差に対して十分に大きい(>10)ことが想定される。
【0032】
所定のビームサイズに対し、本発明によるホモジナイザの性能は、回折及びコヒーレンスに起因する効果を定めるサブピューピルのサイズと、サブピューピルの個数との間の妥協案に依存する。
【0033】
本発明によれば、レンズは位相板と一体にされることがある。このアプローチはフレネルレンズと呼ばれる。
【0034】
好ましくは、レーザー源はポンプレーザーであり、ターゲットは増幅固定媒質である。ターゲットは、有利にはチタンドープサファイア結晶(titanium-doped sapphire crystal)が可能である。レーザー源は、有利には、以下のレーザー、すなわち、Nd:YAG、Nd:ガラス、Nd:YLF、Yb:ガラス、及び、Yb:YAGから選択される周波数重複(frequency-doubled)レーザーが可能である。
【0035】
本発明の別の態様によれば、CPA−Ti:サファイアレーザー回路中の増幅媒質をポンピングするシステムの使用が提案される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明のその他の利点及び特徴は、決して限定的ではない実施態様の詳細な説明と、添付図面とを検討することによって明らかになるであろう。
【図1】本発明のホモジナイゼーション用システムの概略図である。
【図2】レーザービームのエネルギー分布に対する本発明の位相板の効果の概略図である。
【図3】2個の隣接するサブピューピルからのエレメンタリービームの光路差に起因する移動を示す概略図である。
【図4a】2個のサブピューピルを有する本発明の位相板の概略図である。
【図4b】位相板を構成するサブピューピルのモザイクの概略図である。
【図5a】サブピューピルをより詳細に示す図である。
【図5b】ターゲット上の均一スポットを示す図である。
【0037】
Ti:サファイア電力増幅器のレーザーポンプビームのホモジナイゼーションについて説明するが、本発明はこれに限定されない。Ti:サファイア増幅材料では、約500nmにこの材料の吸収極大がある。電力増幅器用のほとんどすべてのポンピングシステムは、YAG又はYLF結晶格子においても、あるいは、ガラス格子においても、ネオジムイオンに基づいている。この材料の選定と、デカップリングされたモードでのこの材料の使用とは、経済的かつ技術的な検討によって決定される。これらのネオジムシステムは、数Hzの繰り返し率のフラッシュランプによって励起され、1μmで放出し、そして、次に、Ti:サファイアの吸収波長に達するように周波数重複される。
【0038】
図1は、Nd:YAGポンプレーザー1を示しており、前記Nd:YAGポンプレーザー1は、その出口に増幅後の重複結晶2を有する。このポンプレーザー1は、位相板4に向かって約500nmのレーザーパルス3を放出する。位相板は、ステップを示して概略的に表されている。この位相板4は、回折光学成分であり、前記回折光学成分は、各光線の異なる長さの光路に沿って、ビームをターゲットに向け直すN個の光学要素のマトリックスによって構成される。各光学要素は、サブピューピルを構成する。ステップは、2個の異なるサブピューピルからの、2個のエレメンタリービーム5と6との間の光路の差を表すことを可能にする。フーリエレンズ又は視野レンズ7は、エレメンタリービーム5、6のすべてが増幅器8の面上に収束されることを可能にする。これらのN個のエレメンタリービーム5、6は、この表面の上に重ね合わせられ、均一スポット9を作る。
【0039】
実験により、レーザーパレスのコヒーレンス光が、パルス間隔より遙かに短く、そして、数ピコ秒の次数(order)であるという前記レーザーパルスに関する非常に優れた結果が示された。
【0040】
本発明による位相板がレーザーパルスのエネルギーの再分布に及ぼす効果は、図2に示されるように簡略化することができる。前記図2は、位相板4と、焦点距離fのフーリエレンズ7とを用いるビーム偏向の原理を示している。位相板4は、均一の、「スーパーガウス」プロファイルを有する軸外し画像を作る。振幅ではなく強度における、N個のサブピューピルの寄与の加算の可能性は、N個のエレメンタリービームの異なる光路から生じる。図2において、レーザービームの時間的コヒーレンスの知識から導出される条件を、2個の隣接するサブピューピルの光線の間の光路差に加えることができる。レーザーパルスの時間的コヒーレンスがTによって定義される場合、ビームの部分のインコヒーレントな重ね合わせを得るために必要なサブピューピル間の光路差Δdは、
Δd=Δq−Δp≧T・c
であり、式中、cは光速度であり、Δq及びΔpは2個の隣接するサブピューピルから発生する光線の光路である。実際には、Tはレーザーパルスの曲線から計算され、Δdはそこから推定される。
【0041】
点A及びBは、エネルギーが焦点面において再分布される均一スポット9の周縁部(margin)を表している。位相板4及びレンズ7は、次数−1の光軸から均一スポット9を移動させるネットワークとして機能する。この移動は量ΔOによって表される。サブピューピルの直径は、Δdによって表される。Δp、Δq、Δr及びΔsは、異なるサブピューピルからの光線の光路を表す。均一スポットは、フーリエレンズ7の焦点距離に相当する距離fにある。
【0042】
図3は、図2の一部分をもう一度示している。Δq及びΔpによってそれぞれ遅延した2個のエレメンタリービームだけを認識することができる。図3は、2個の隣接するサブピューピルから発生する光線の異なる光路に起因する移動と、ビームの時間的なコヒーレンスとの間の関係を示している。入射ビームはエンベロープ(envelope)の形態で模式的に表されることができ、前記エンベロープの下には、種々の縦モード(その全部が時間的コヒーレンスTの間隔を有する)が存在する。
【0043】
本発明によるシステムは、均一スポットの強度レベル(すなわち、増幅器の面上のエレメンタリービームから得られる集光(concentration))を定義することによって特徴付けられることもできる。本発明は、均一スポット9上の所望の集光Γに対し、サブピューピル(前記サブピューピルのすべては、インコヒーレント的に、かつ、時間シフトの影響で、焦点面上の強度に関して加算される)の個数Nが、
N=1/Γ
のように決定される点で特に顕著である。
【0044】
本発明によるシステムは、均一スポット9の形態、すなわち、幾何学的形状(円形、正方形、星形など)と、その強度プロファイル(「トップハット型」)とを定義することによって更に特徴付けられることができる。
【0045】
ファーフィールドにおいて「トップハット型」プロファイルを取得するためのシェイピングは、溶融石英の位相板に位相情報をエッチングすることからなる。種々のサブ要素(サブピューピル)がモザイクとして組み立てられる。回折ホモジナイザの原理は、回折格子又はフレネルレンズ型の回折システムによって誘起される方向へのエレメンタリービームの伝搬である。視野レンズ(場合により、位相板と一体となっている)は、種々のエレメンタリービームをフーリエ平面内で重ね合わせることを可能にする。
【0046】
図4aは、サブピューピル10及び11をシェイピングする2つの実施例を示す。図4bは、ホモジナイゼーションのため使用される位相板のマトリックス構造体12を示す。種々の初期条件を使って計算される2個のサブ要素10及び11を含む板から開始して、576個(24×24)の要素のマトリックスを形成することができる。板は、均一平面を軸外に位置決めする。
【0047】
図5aは、サブピューピル10をより詳細に示す。Aに指定されるサブピューピル中にエッチングされるプロファイルによってフーリエ平面内で得られた形が、図5bに示される。レンズの焦点面の中のシェイピングは、エッチングされたプロファイルの数値フーリエ変換として計算された。図5bにおけるシェイピングでは、次数0の周りに、次数−1及び次数+1に対応する2個の「トップハット型」プロファイルが存在する。マトリックスとして構造化される最終的なコンポーネント12において、格子をエッチングして、2つの次数のうちの1つだけにおいてエネルギーの向け直しを最適化する。
【0048】
強度の測定に基づく位相再構成の問題は、いくつかの計算手法及びアルゴリズムを生み出してきた。最近20年の間に開発された種々の手法の中で、最も一般的に使用される手法は、近軸近似が有効であるシステムのためのGerchberg−Saxonの手法と、前記方法の解決法を任意の光学系のために一般化するYang−Guの手法とである。等価的なアプローチは、NIF(National Ignition Facility)のシステムの位相板を最適化するために使用されたDixitの手法である。
【0049】
光学系の中で実験的に直接測定可能である情報は、強度プロファイルである。定義された空間プロファイルを再構成し、そして、伝搬中の挙動を予測できるようにするため、空間的位相に関する情報を取得することも必要である。この情報は、特定の計器を使用して再現するか、又は、フーリエ変換関係によって連結される2個の空間プロファイルの強度情報を使用する反復的アルゴリズムを用いて再現することができる。これらの計算アルゴリズムの開発の結果は、共役平面(種々のサブ要素の寄与が重ね合わされる)を取得するのに必要な位相を定義するために、ツールが提供されることである。この手法は、ホモジナイザのサブ要素と、ファーフィールドを取得するフーリエレンズとを計算するため使用される。
【0050】
実際的な観点から、手順は、初期プロファイルとして焦点面内のビームのシェイピングを定義することと、第2のデータ源としてポンプレーザー源の実験プロファイルを記録することとからなる。一連の式は、マスク上にエッチングされるべき位相プロファイルを計算して、所望の結果を取得することを可能にする。
【0051】
或る実施例として、Gerchberg−Saxonアルゴリズムを使用する位相計算を説明する。
【0052】
P1は、ポンプレーザーの空間プロファイルの一部分をその典型的な変動と共に表し、そして、P2は、焦点面内での所望の分布を表す。平面P1及びP2の中の2つの波形関数は、
【数1】

【数2】

として定義されるU1及びU2によって表される。
【0053】
z軸は、レーザーの伝搬の軸と平行に選択され、そして、横座標の点は、マトリックス
【数3】

及び
【数4】

によって記述される。2つの平面の間の関係は、
【数5】

というタイプの線形変換の関係式
【数6】

によって与えられる。
【0054】
近軸近似が有効である光学系では、
【数7】

は単位演算子である(近軸近似の仮定以外で有効であるYang−Guのアルゴリズムの範囲内では、
【数8】

はエルミート演算子である)。初期平面の変換を使って取得されるプロファイル
【数9】

が、所望のプロファイル
【数10】

に接近するときの効率は、「平方距離」に等しい基準D、例えば、
【数11】

を定義することによって評価される。
【0055】
この問題の解における一般性を失うことなく、この基準は、0に等しいことが要求されることができる。D=0である場合、これは、
【数12】

を要求し、すなわち、所望のプロファイルと取得されるプロファイルとが厳密に等しくなければならないことを要求する。数学的には、この条件は、変数ρ、φ、ρ、φの関数として関数Dの極値を見つけるという問題を生み出す。
【0056】
この問題は、離散変数を使って定義できるので、アルゴリズムを使用して数値的に解法することができる。観察されるべき条件は、変数のサンプリングと、演算子
【数13】

のサンプリングと、平面P1及びP2のサンプリングとが、ナイキスト−シャノンの定理を遵守しなければならないことである。この条件が遵守されれば、位相情報が再現できる。
【0057】
マトリックス形式で記述される再構成アルゴリズムで使用される式は、
【数14】

【数15】

であり、但し、
【数16】

が単位演算子であるならば、
【数17】

【数18】

である(Gerchberg−Saxonアルゴリズムの条件)。解は、初期平面φ(0,0)及び最終平面φ(0,0)の中の反復開始位相に関係する任意の初期仮説に基づく反復法を使用して求められる。
【0058】
反復ループの終了は、2個の連続したステップ(m及びm+1)が、位相を、任意に定義される量ε未満しか変化させないときに起こる。反復の終了のための数学的条件は、
【数19】

であり、式中、φ(0,m1)は初期位相を表す。
【0059】
このアルゴリズムは、位相板にエッチングされるべき位相プロファイルを定義して、焦点面上での所望のプロファイルを取得することを可能にする。
【0060】
当然ながら、本発明は、前記実施例だけに限定されるわけではなく、本発明の範囲を超えないように、これらの実施例に対して種々の調整を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー源によって放出されるレーザーパルスをホモジナイズして、ターゲットを均一に照明するシステムであり、
前記レーザー源と前記ターゲットとの間に、位相板と焦点合わせ手段とを含み、前記位相板は、複数個の遅延レーザービームを前記ターゲットに向かって発生させることができる複数個のサブピューピルによって構成され、2個の隣接する前記遅延レーザービームの間の光路差Δdが、前記レーザーパルスの時間的コヒーレンスの長さT以上である、前記システムであって、
前記遅延レーザービームが均一スポットにおいて前記ターゲットの上に重ね合わされるように、前記サブピューピル及び前記焦点合わせ手段を調整することを特徴とする、前記システム。
【請求項2】
位相板がN個のサブピューピルを有しており、Nは1/Γにほぼ等しく、Γは均一スポットのコントラストであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
均一スポットが位相情報によって定義される形状を有するように、前記位相情報を、各サブピューピル上にエッチングすることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
位相情報を、スポットの形状の逆フーリエ変換から計算することを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
焦点合わせ手段が収束レンズを含み、ターゲットが前記収束レンズの焦点距離に位置するように前記収束レンズが配置されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
光路差ΔdがΔd=T・cとなり、cは光速度であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
位相板の横寸法が、レーザーパルスを構成するレーザービームの直径より大きいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
レーザーパルスを構成するレーザービームの直径に対する各サブピューピルの横寸法の比率が、均一スポットのコントラストΓと比例することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
レンズが位相板と一体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
レーザー源がポンプレーザーであり、そして、ターゲットが増幅固体媒質であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
ターゲットが、チタンドープサファイア結晶であることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
レーザー源が、以下のレーザー:Nd:YAG、Nd:ガラス、Nd:YLF、Yb:ガラス、及び、Yb:YAGから選択される周波数重複レーザーであることを特徴とする、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
CPA−Ti:サファイアレーザー回路の中の増幅媒質をポンピングするための、請求項1〜12のいずれか一項に記載のシステムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−501207(P2011−501207A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528466(P2010−528466)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051846
【国際公開番号】WO2009/053633
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(505079062)エコール ポリテクニック (3)
【出願人】(510101594)シリオ テクノロジー (1)
【氏名又は名称原語表記】SILIOS TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】