説明

位置判定装置

【課題】放送局識別情報などの地域を示す情報が含まれていない信号を用いて、現在位置を判定することができる位置判定装置を提供する。
【解決手段】表示切替装置1の電源の投入時に受信機3がラジオ信号の受信周波数を変化させ、受信機3によって実際に検出された受信強度サンプリングデータ(信号が受信された周波数とそのときの信号強度)と、メモリ41に記憶された各地域ごとの受信強度パターンデータとを比較してCPU42が自車両の現在位置を判定することにより、受信機3によって受信される信号に放送局情報などの地域情報を含む信号が多重されていない場合であっても、自車両の現在の位置を容易に検出することができ、検出した現在位置にもとづいて表示部5の表示を切り替えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した電波にもとづいて位置を判定する位置判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン受信機によって受信された情報にもとづいて、現在位置を判定する装置としてたとえば特許文献1、2に記載されたものがある。
これは、放送局識別情報と文字情報とを含むテレテキスト情報が多重されたテレビジョン信号を受信し、放送局識別情報内の地域情報にもとづいて現在位置を判定するものである。
また判定結果にもとづいて、テレビ画面に表示する文字情報を切り替えるなど、システムの地域ごとの設定変更を行っていた。
【特許文献1】特開2001−160956号公報
【特許文献2】特開2001−268463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の装置においては、現在位置を判定するためにはテレビジョン信号に放送局識別情報が含まれていることが前提となる。
よって、テレビジョン信号に放送局情報が含まれていない地域では、所定の周波数を有するテレビジョン信号を受信しただけでは放送局を特定をすることができないため現在位置を判定することができないといった問題があった。
【0004】
そこで本発明はこのような問題点に鑑み、放送局識別情報などの地域を示す情報が含まれていない信号を用いて、現在位置を判定することができる位置判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、受信強度サンプリングデータ作成手段が、受信手段が受信した所定範囲の周波数と、信号レベルとより受信強度サンプリングデータを作成し、判定手段が、メモリに記憶された各地域ごとに受信可能な周波数と信号レベルとを表す受信強度パターンデータと、受信強度サンプリングデータとを比較して、位置を判定するものとした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、受信手段によって受信される信号に放送局情報などの地域情報を含む信号が多重されていない場合であっても、周波数と信号レベルとより作成した受信強度サンプリングデータと、メモリに記憶された受信強度パターンデータとを比較することによって位置を容易に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明の実施の形態を実施例により説明する。
本実施例は、位置判定装置を、受信したラジオ信号にもとづいて現在の位置を判定し、自車両内に設置された表示部の表示内容(言語など)を切り替える表示切替装置に適用したものである。
図1に、実施例の全体構成を示す。
ラジオ信号をアンテナ2を通じて受信する受信機3と、受信機3によって受信されたラジオ信号より自車両の現在位置を判定するコントローラ4と、乗員に情報を提示するための表示部5とより表示切替装置1が構成される。
【0008】
受信機3は、ラジオ信号を受信する受信部31と、A/D変換器32とより構成される。
受信部31は、コントローラ4から指示されたラジオ信号の受信範囲にもとづいて、ラジオ信号を受信する。
A/D変換器32は、受信部31が受信したラジオ信号のアナログ/デジタル変換を行い、ラジオ信号を受信した周波数と、その受信強度とをコントローラ4へ出力する。(以下、車載機においてラジオ信号を受信した周波数と、そのときの受信強度レベルをデータ化したものを、受信強度サンプリングデータと呼ぶ)
【0009】
コントローラ4は、メモリ41とCPU42とより構成される。
メモリ41は、図2に示すように各地域ごとに、受信可能なラジオ信号の周波数と、その受信強度レベルとが(以下、受信可能なラジオ信号の周波数と、その受信強度レベルをパターン化したものを受信強度パターンデータと呼ぶ)があらかじめ記憶されている。
なお図2には、地域A〜Cにおける受信強度パターンデータを例示してある。
CPU42は、受信機3の受信部31に対して受信するラジオ信号の周波数の範囲を指示したり、A/D変換器32から出力された受信強度サンプリングデータとメモリ41に記憶された受信強度パターンデータとを比較して、現在位置を判定したりする。
またCPU42は、判定した地域をメモリ41に記憶させ、一度地域が判定された後はメモリ41に記憶された地域情報を表示部5へ出力する。
表示部5は、コントローラ4から出力された地域情報にもとづいて、表示する言語を切り替えたり、表示単位などの表記方法を切り替えたりする。
【0010】
次に、受信したラジオ信号より自車両の現在地域を判定し、表示部5の表示を切り替えを行う手順について説明する。
図3に、地域判定処理の流れを示す。
表示切替装置1に電源が投入されると、ステップ100においてCPU42は、過去に地域判定処理が行われてメモリ41に地域情報が記憶されているかどうかを判断する。
地域情報が記憶されていない場合にはステップ101へ進み、記憶されている場合にはステップ108へ進む。
ステップ101においてCPU42は、ラジオ信号の受信周波数の範囲を受信部31に対して指示する。
ここで、受信部31に対して指示するラジオ信号の受信周波数の範囲を、たとえば75〜100MHzとする。
【0011】
ステップ102において受信部31は、CPU42からの指示にもとづいて受信する周波数を変化させる。
ステップ103においてA/D変換器32は、受信部31から出力された信号にもとづいて周波数ごとの信号強度レベルを示す受信強度サンプリングデータを作成する。
ステップ104においてA/D変換器32は、作成した受信強度サンプリングデータをコントローラ4へ送信する。
【0012】
ステップ105においてCPU42は、A/D変換器32から送信された受信強度サンプリングデータとメモリ41に記憶された受信強度パターンデータとの比較を行い、受信強度サンプリングデータと一致する受信強度パターンデータを検索して地域を判定する。
具体的には、A/D変換器32によって作成された受信強度サンプリングデータが図4に示す棒グラフのように、周波数が75、78、85MHzの時にそれぞれ信号強度レベルが3.0、2.0、1.0であった場合、該受信強度サンプリングデータと図2に示す地域Cにおける周波数、信号強度レベルとが一致するため、自車両は地域Cに居るものと判定する。
【0013】
次にステップ106においてCPU42は、ステップ105で判定した地域情報をメモリ41に記憶させ、ステップ107において地域情報を表示部5へ送信する。
表示部5は地域情報を受信するとステップ108において、受信した地域情報にもとづいて表示する言語を切り替えたり、表示単位などの表記方法を切り替えたりする。
この表示切替は、たとえば図5の(a)、(b)、(c)に示す表示画像例のように、平均燃費の文字や単位(FUEL ECON 9.0MPGなど)を切り替えたり、ラジオの周波数の桁数(FM79.5MHzなど)、エアコンの運転席側(DRIVER)と助手席側(PASS)の表示位置(右側に表示するか、左側に表示するかどうかの切り替え)の切り替えおよび単位の切り替えなどを行う。
【0014】
ステップ108における表示の切り替え後、本処理を終了する。
一方ステップ100において、電源の投入後にメモリ41に地域情報が記憶されていると判断されると、メモリ41に記憶された地域情報にもとづいて表示部5はステップ108で表示する言語を切り替えたり、表示単位を切り替えたりする。
なお本実施例において、ステップ102が本発明における受信手段を構成し、ステップ103が本発明における受信強度サンプリングデータ作成手段を構成する。またステップ105が本発明における判定手段を構成し、ステップ108が本発明における表示制御手段を構成する。
【0015】
本実施例は以上のように構成され、表示切替装置1の電源の投入時に受信機3がラジオ信号の受信周波数を変化させ、受信機3によって実際に検出された受信強度サンプリングデータと、メモリ41に記憶された各地域ごとの受信強度パターンデータとを比較して自車両の現在位置を判定することにより、受信機3によって受信される信号に放送局情報などの地域情報を含む信号が多重されていない場合であっても、自車両の現在の位置を容易に検出することができ、検出した現在位置にもとづいて表示部5の表示を切り替えることができる。
【0016】
なお実施例において、受信機3によって受信された受信強度サンプリングデータと、メモリ41に記憶された受信強度パターンデータとの比較を行う際に、両データ間において信号が受信される周波数とそのときの信号強度レベルとがすべて一致する受信強度パターンデータの地域を、自車両の現在位置として判定するものとしたが、これ以外にも、他と比較して突出して受信強度が高い受信周波数など、受信された受信強度サンプリングデータ中の特徴点を抽出し、該特徴点と一致する周波数と受信強度レベルを有する受信強度パターンデータの地域を、自車両の現在の位置として判定することもできる。
具体的には、図6の(a)に示すように受信機3によって受信された受信周波数が75、80、85MHzであり、そのときの受信強度レベルがそれぞれ1.0、4.0、1.0である場合に、周波数80MHz、そのときの信号レベル4.0を特徴点として抽出し、図6の(b)に示す各地域(地域A1〜C1)ごとの受信強度パターンデータ(メモリ41に記憶されている)の中から特徴点と一致する受信強度パターンデータの地域(ここでは地域A1)を自車両の現在位置として判定する。
【0017】
あるいは、受信機3によって所定の周波数で受信信号が検出されたかどうかによって地域を判定することもできる。
具体的には、図7の(a)に示すように受信機3によって受信された受信周波数が75、78、85MHzであり、そのときの受信強度レベルがそれぞれ1.0、1.0、1.0であり、周波数78MHzは受信可能な地域が1つしかない特徴的な周波数であった場合、図7の(b)に示す各地域(A2〜C2)ごとの受信強度パターンデータの中から周波数が78MHzの信号を受信可能な地域(ここでは地域B2)を抽出して、自車両の現在位置として判定する。
【0018】
また、図6の(a)、(b)を用いて説明した受信強度サンプリングデータ中の特徴点を抽出して現在位置を判定する方法と、図7の(a)、(b)を用いて説明した所定の周波数が検出されたかどうかを判断することによって現在位置を検出する方法とを組み合わせて自車両の現在の位置を検出することもできる。
なお、受信された受信強度サンプリングデータとメモリ41に記憶された受信強度パターンデータとを比較して現在位置を判定する方法としては、上記に限定されるものではなく、他の方法によって判定してもよい。
【0019】
また本実施例では、過去に地域判定処理が行われておらず、ステップ100において、メモリ41に地域情報が記憶されていないと判定された場合に地域判定処理を行うものとしたが、これに限定されず、車両の設定機能として地域判定処理を設け、既にメモリ41に地域情報が記憶されているか否かに関わらず、操作者等の地域判定処理の開始の指示にもとづいてステップ101以降の処理を行うこともできる。
さらに、ラジオ信号を受信して自車両の位置を判定するものとしたが、これ以外にもたとえばテレビジョン信号などを受信して、受信された周波数と、その信号強度とを用いて自車両位置を判定することもできる。
また、本実施例では位置判定装置を車両に搭載された表示部5の表示を切り替える表示切替装置1に適用した例を示したが、位置判定装置を他の装置に適用したり、位置判定装置単独で用いたりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例の全体構成を示す図である。
【図2】受信強度パターンデータの例を示す図である。
【図3】地域判定処理の流れを示す図である。
【図4】受信機によって受信された周波数と信号強度レベルとを示す図である。
【図5】表示部の表示例を示す図である。
【図6】受信強度サンプリングデータと受信強度パターンデータとを示す図である。
【図7】受信強度サンプリングデータと受信強度パターンデータとを示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 表示切替装置
2 アンテナ
3 受信機
4 コントローラ
5 表示部
31 受信部
32 A/D変換器
41 メモリ
42 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲の電波を受信する受信手段と、
該受信手段が電波を受信した周波数と、該周波数における信号情報とより、受信強度サンプリングデータを作成する受信強度サンプリングデータ作成手段と、
各地域ごとに受信可能な周波数と、信号情報とを表す受信強度パターンデータが記憶されたメモリと、
前記受信強度サンプリングデータ作成手段によって作成された受信強度サンプリングデータと、前記メモリに記憶された受信強度パターンデータとを比較して、位置を判定する判定手段とを備えることを特徴とする位置判定装置。
【請求項2】
前記判定手段は、信号を受信する特徴的な周波数について、前記受信強度サンプリングデータと前記受信強度パターンデータとを比較することを特徴とする請求項1に記載の位置判定装置。
【請求項3】
前記判定手段は、周波数に対応する受信信号の強度レベルと共に比較することを特徴とする請求項2に記載の位置判定装置。
【請求項4】
前記判定手段は、信号を受信する複数の周波数の組み合わせについて、前記受信強度サンプリングデータと前記受信強度パターンデータとを比較することを特徴とする請求項1または2に記載の位置判定装置。
【請求項5】
前記判定手段は、周波数に対応する受信信号の強度レベルと共に比較することを特徴とする請求項4に記載の位置判定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の位置判定装置と、
表示部に表示する情報の制御を行う表示制御手段とを備え、
該表示制御手段は、前記位置判定装置によって判定された位置にもとづいて、表示言語の切り替え、または表示情報の表記方法の切り替えを行うことを特徴とする表示切替装置。
【請求項7】
受信手段が受信した電波の周波数と信号情報とより受信強度サンプリングデータを作成し、該受信強度サンプリングデータと、メモリに記憶された各地域ごとに受信可能な周波数と信号情報とを表す受信強度パターンデータと、にもとづいて、位置を判定することを特徴とする位置判定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の位置判定方法によって判定された位置にもとづいて、表示部に表示する表示言語の切り替え、または表示情報の表記方法の切り替えを行うことを特徴とする表示切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−198881(P2007−198881A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17245(P2006−17245)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】