説明

位置情報提供システムおよび屋内送信機

【課題】位置情報取得までに要する時間を短縮することが可能な位置情報提供システムを提供する。
【解決手段】屋内送信機200―1は、複数の衛星からのスペクトラム拡散信号である第1の測位信号とコンパチブルな第2の測位信号を用いて、位置情報を提供する。屋内送信機200―1は、自身が設置される場所を特定するための位置データを格納するEEPROM243と、位置データを含む第2の測位信号をスペクトラム拡散信号として生成するFPGA245と、スペクトラム拡散信号を送信する送信部251〜258とを備える。第2の測位信号は、第1の測位信号よりも短い周期で同一内容を繰り返すように生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置情報を提供する技術に関する。本発明は、より特定的には、測位信号を発信する衛星から発信された信号が届かない環境下においても位置情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の測位システムとしてGPS(Global Positioning System)が知られている。GPSに用いられる信号(以下、「GPS信号」)を発信するための衛星(以下、GPS衛星)は、地上から約2万kmの高度で飛行している。利用者は、GPS衛星から発信された信号を受信し、復調することにより、GPS衛星と利用者との間の距離を計測することができる。したがって、地上とGPS衛星との間に障害がない場合には、GPS衛星から発信された信号を用いた測位が可能である。しかし、たとえば、都市部においてGPSを利用する場合、林立する建物が障害となって、利用者の位置情報提供装置が、GPS衛星から発信された信号を受信できないことが多い。また、建物による信号の回折あるいは反射により、信号を用いた距離の測定に誤差が生じ、結果として、測位の精度が悪化することが多かった。
【0003】
また、壁や屋根を貫通した微弱なGPS信号を室内において受信する技術もあるが、受信状況は不安定であり、測位の精度も低下する。
【0004】
以上、測位についてGPSを例にとって説明したが、上述した現象は衛星を用いた測位システムについて一般的に言えることである。なお、衛星測位システムは、GPSに限られず、たとえば、ロシア共和国におけるGLONASS(GLOobal NAvigation Satellite
System)、欧州におけるGalileo等のシステムを含むものとする。
【0005】
ここで、位置情報の提供に関する技術は、たとえば、特開2006−67086号公報(特許文献1)に開示されている。
【0006】
しかしながら、特開2006−67086号公報に開示された技術によれば、リーダあるいはライタは、位置情報を提供するシステムに固有のものであり、汎用性にかけるという問題点がある。また、干渉を避けるため、送信出力を抑える必要があり、位置情報を受信可能な範囲が限定され、連続した位置情報の取得ができないほか、広い範囲をカバーするためには極めて多数の送信機が必要となるという問題点があった。
【0007】
また、従来の測位機能を有する携帯電話の場合、衛星からの信号を受信できる場所では位置情報が取得されるため、携帯電話の位置を通知することが可能である。しかしながら、屋内、地下街のように電波が受信できない場所においては、従来の測位技術によっては、位置情報を取得できないという問題点があった。
【0008】
そこで、たとえば、GPS信号に類似する信号を発信できる複数の送信機を室内に配置し、GPSと同様の3辺測量による原理に基づき位置を求めるという技術も考えられる。しかしながら、この場合、各送信機の時刻が同期していることが必要になり、送信機が高価になるという問題がある。
【0009】
また、室内での反射等により電波の伝搬が複雑になることから、上記のような高価な送信機を設置したとしても、数10m程度の誤差が容易に発生するという問題もある。
【0010】
そこで、特開2007−278756号公報(特許文献2)には、従来のGPS衛星からの信号フォーマットと同一のフォーマットで、屋内送信機の設置された位置情報(緯度・経度・高度など)そのものを送信して、GPS受信機のハードウェアは、GPS衛星による測位のための構成をそのまま使用して、屋外および屋内において、シームレスに位置情報を取得することが可能な位置情報提供システムが開示されている。
【特許文献1】特開2006−67086号公報
【特許文献2】特開2007−278756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一方で、位置情報を屋外および屋内を問わず、的確に取得することの要請は、さらに強まっている。
【0012】
すなわち、位置情報の取得あるいは通知に関し、たとえば、固定電話であれば設置場所が予め知られているため、固定電話から発信された電話によって、その発信場所を特定することができる。しかしながら、携帯電話の普及に伴い、移動体通信が一般的になっているため、固定電話のようにして発信者の位置情報を通知することができない場合が増えている。一方、緊急時の通報に関し、携帯電話からの通報に位置情報を含めることについての法整備も進められている。
【0013】
しかし、屋内送信機を用いて、位置情報提供装置、たとえば、測位機能を有する携帯電話機に、位置情報を提供する場合に、どのような信号形式の信号を送信することが、信号の誤同期や誤捕捉を抑制可能であるかについては、必ずしも明確でない。
【0014】
また、屋内では、衛星からの信号に比べて、十分な強度の信号を放送できるため、衛星からの信号に対して捕捉および同期を取ることについては、より短時間で実行できることが期待されるものの、そのために、いかなる信号形式が適切であるかについても必ずしも明らかとはいえないという問題がある。
【0015】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、測位のための信号を発信する衛星からの電波が受信できない場所においても精度を低下させることなく位置情報を供給する位置情報提供システムを提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、測位のための信号を発信する送信機のコストが抑制される位置情報提供システムを提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、位置情報取得までに要する時間を短縮することが可能な位置情報提供システムを提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、測位のための信号を発信する衛星からの電波が受信できない場所においても精度を低下させることなく位置情報を提供する信号を送信できる屋内送信機を提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、測位のための信号を発信する送信機のコストが抑制される屋内送信機を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、位置情報取得までに要する時間を短縮することが可能な屋内送信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この発明の1つの局面に従うと、複数の衛星からのスペクトラム拡散信号である第1の測位信号を用いて、位置情報を提供することが可能な位置情報提供システムであって、屋内送信機を備え、屋内送信機は、屋内送信機が設置される場所を特定するための位置データを格納する記憶手段と、位置データを含む第2の測位信号をスペクトラム拡散信号として生成する生成手段と、スペクトラム拡散信号を送信する送信手段とを含み、位置情報提供システムは、位置情報提供装置をさらに備え、位置情報提供装置は、スペクトラム拡散信号を受信する受信手段と、第1および第2の測位信号についての符号パターンに基づいて、受信手段により受信されたスペクトラム拡散信号に対応する符号パターンを特定する特定手段と、特定手段によって特定された符号パターンを用いて復調することにより得られた信号に基づいて、第1および第2のいずれの測位信号が受信されたかを判断する判断手段と、判断の結果に応じて処理を切り換えることにより、位置情報提供装置の位置情報を導出する位置情報導出手段と、位置情報導出手段によって導出された位置情報を出力する出力手段とを備え、第2の測位信号は、第1の測位信号よりも短い周期で同一内容のメッセージを繰り返す。
【0022】
好ましくは、第2の測位信号は、ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、複数のワードを各々が含む複数のフレームから構成され、各フレームが含むワード数は可変に設定され、フレームを構成するワードは、当該フレームを構成するワード数を示す識別情報を有するワードを含む。
【0023】
好ましくは、第2の測位信号は、ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、複数のワードを各々が含む複数のフレームから構成され、各フレームの先頭ワードは、受信時にフレーム同期をとるためのプリアンブル部分を含み、各フレームの少なくとも先頭ワード以外のワードは、ワードデータの生成ごとに更新されるカウントデータを含む。
【0024】
好ましくは、ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、第1の測位信号は、第1の複数個のワードを各々が含む複数の第1のフレームから構成され、各第1のフレームは、受信時にフレーム同期をとるための第1のプリアンブル部分を含み、第2の測位信号は、第2の複数個のワードを各々が含む複数の第2のフレームから構成され、各第2のフレームは、受信時にフレーム同期をとるための第1のプリアンブルとは異なるパターンを有する第2のプリアンブル部分を含む。
【0025】
好ましくは、位置情報導出手段は、単一の屋内送信機によって送信された第2の測位信号が受信された場合に、復調することにより得られた信号から位置データを取得し、第2の測位信号が受信されない場合であって、複数の第1の測位信号が受信されたときに、複数の各スペクトラム拡散信号に基づいて位置情報を算出する。
【0026】
好ましくは、位置情報提供装置は、通信回線を介して、識別データに関連付けられた位置関連情報を提供する通信装置と通信可能であり、受信手段が第2の測位信号を受信すると、位置情報導出手段は、識別データに基づいて通信装置と通信することにより、識別データに関連付けられた位置関連情報を取得する。
【0027】
この発明の他の局面に従うと、複数の衛星からのスペクトラム拡散信号である第1の測位信号とコンパチブルな第2の測位信号を用いて、位置情報を提供することが可能な屋内送信機であって、屋内送信機が設置される場所を特定するための位置データを格納する記憶手段と、位置データを含む第2の測位信号をスペクトラム拡散信号として生成する生成手段と、スペクトラム拡散信号を送信する送信手段とを備え、生成手段は、第2の測位信号を、第1の測位信号よりも短い周期で同一内容のメッセージを繰り返すように生成する。
【0028】
好ましくは、第2の測位信号は、ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、複数のワードを各々が含む複数のフレームから構成され、各フレームが含むワード数は可変に設定され、フレームを構成するワードは、当該フレームを構成するワード数を示す識別情報を有するワードを含む。
【0029】
好ましくは、第2の測位信号は、ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、複数のワードを各々が含む複数のフレームから構成され、各フレームの先頭ワードは、受信時にフレーム同期をとるためのプリアンブル部分を含み、各フレームの少なくとも先頭ワード以外のワードは、ワードデータの生成ごとに更新されるカウントデータを含む。
【0030】
好ましくは、ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、第1の測位信号は、第1の複数個のワードを各々が含む複数の第1のフレームから構成され、各第1のフレームは、受信時にフレーム同期をとるための第1のプリアンブル部分を含み、第2の測位信号は、第2の複数個のワードを各々が含む複数の第2のフレームから構成され、各第2のフレームは、受信時にフレーム同期をとるための第1のプリアンブルとは異なるパターンを有する第2のプリアンブル部分を含む。
【0031】
好ましくは、生成手段は、位置関連情報と関連づけられた識別データ含む第2の測位信号を生成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0033】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る位置情報提供システム10について説明する。図1は、位置情報提供システム10の構成を表わす図である。位置情報提供システム10は、地上の上空約2万メートルの高度を飛行し、測位のための信号(以下、「測位信号」と表わす。)を発信するGPS(Global Positioning Satellite)衛星110,111,112,113と、位置情報を提供する装置として機能する位置情報提供装置100−1〜100−5とを備える。位置情報提供装置100−1〜100−5を総称するときは、位置情報提供装置100と表わす。位置情報提供装置100は、たとえば、携帯電話、携帯可能なカーナビゲーションシステムその他の移動体測位装置のように、従来の測位装置を有する端末である。
【0034】
ここで、測位信号は、スペクトラム拡散された信号であり、たとえば、いわゆるGPS信号である。しかしながら、その信号はGPS信号に限られない。なお、以下では説明を簡単にするために、測位のシステムをGPSを一例として説明するが、本発明は、他の衛星測位システム(Galileo、準天頂衛星(QZSS:Quasi-Zenith Satellites)等)にも適用可能である。
【0035】
測位信号の中心周波数は、たとえば、1575.42MHzである。測位信号の拡散周波数は、たとえば1.023MHzである。この場合、測位信号の周波数は、既存のGPSのL1帯におけるC/A(Coarse and Acquisition)信号の周波数と同一となる。したがって、既存の測位信号受信回路(たとえばGPS信号受信回路)のフロントエンドが流用できるため、位置情報提供装置100は、新たなハードウェアの回路を追加することなく、フロントエンドからの信号処理を行うソフトウェアを変更するのみで、測位信号を受信することができる。
【0036】
測位信号は、1.023MHzの矩形波によって変調されていてもよい。この場合、たとえば、L1帯において新たな送信が計画される測位信号のデータチャネルと同一であれば、利用者は、新しいGPSの信号を受信、処理可能な受信機を用いて当該測位信号を受信できる。なお、矩形波の周波数は、1.023MHzが好ましい。変調のための周波数は、既存のC/A信号、および/または、他の信号との干渉を回避するためのスペクトラム分離とのトレードオフによって定められ得る。
【0037】
GPS衛星110には、測位信号を発信する送信機120が搭載されている。GPS衛星111,112,113にも、同様の送信機121,122,123がそれぞれ搭載されている。
【0038】
位置情報提供装置100−1と同様の機能を有する位置情報提供装置100−2,100−3,100−4は、以下に説明するように、ビル130や地下街その他の電波が届きにくい場所でも使用可能である。
【0039】
すなわち、ビル130は、ビル130の1階の天井には、屋内送信機200−1が取り付けられている。位置情報提供装置100−4は、屋内送信機200−1から発信される測位信号を受信する。同様に、ビル130の2階および3階の各フロアの天井にも、それぞれ屋内送信機200−2,200−3が取り付けられている。後に説明するように、屋内送信機200−1〜200―3からは、それぞれ、屋内送信機の設置場所を特定する情報が直接送信される。
【0040】
また、地下街においては、天井に、屋内送信機200−4〜200―6が取り付けられている。地下街で動作する位置情報提供装置100−5は、屋内送信機200−4〜200−6から発信される測位信号を受信する。ここでも、後に説明するように、屋内送信機200−4〜200―6からは、それぞれ、屋内送信機の設置場所を特定する情報が直接送信される。
【0041】
なお、たとえば、後に説明するように、地下街には、ローカルサーバ204が設置され、屋内送信機200−4〜200―6からは、屋内送信機の位置そのものではなく、屋内送信機の設置位置に関連する情報を特定するための識別情報が送信される構成としてもよい。位置情報提供装置100−5は、基地局202とネットワーク(たとえば、携帯電話網)を介して、当該識別情報に相当する位置関連情報をローカルサーバ204に照会するとの構成とすることもできる。ビル130においても、同様にローカルサーバに位置関連情報を照会する構成とすることができる。
【0042】
なお、地下街のように同一のフロア内で複数の屋内送信機が設置される場合は、各送信機の出力強度を調整して、1つの屋内送信機のカバーする領域の大きさを制限できるので、屋内送信機からの送信信号強度を大きくする必要がなく、日本の電波法のような電波使用を規制する法令等の規制以下の送信電力とするのが容易で、設置のために特別の免許が不要となる。
【0043】
ここで、各屋内送信機200−1,200−2,200−3または200−4、200−5,200−6の時刻(以下、「地上時刻」という。)と、GPS衛星110,111,112,113の時刻(「衛星時刻」という。)とは、互いに独立したものでよく、同期している必要はない。ただし、各衛星時刻は、それぞれ同期している必要がある。したがって、各衛星時刻は、各衛星に搭載された原子時計により制御されている。また、必要に応じて、各屋内送信機200−1,200−2,200−3または200−4、200−5,200−6の時刻である地上時刻も、相互に同期していることが好ましい。
【0044】
GPS衛星の各送信機から測位信号として発信されるスペクトラム拡散信号は、擬似雑音符号(PRN(Pseudo Random Noise)コード)によって航法メッセージを変調することにより生成される。航法メッセージは、時刻データ、軌道情報、アルマナック、電離層補正データ等を含む。各送信機120〜123は、さらに、それぞれ、当該送信機120〜123自身、あるいは送信機120〜123が搭載されるGPS衛星を識別するためのデータ(PRN−ID(Identification))を保持している。
【0045】
位置情報提供装置100は、各擬似雑音符号を発生するためのデータおよびコード発生器を有している。位置情報提供装置100は、測位信号を受信すると、各衛星の送信機または各屋内送信機ごとに割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンを用いて、後述する復調処理を実行し、受信された信号がどの衛星またはどの屋内送信機から発信されたものであるかを特定することができる。また、測位信号の1つであるL1C信号では、データの中にPRN−IDが含まれており、受信レベルが低い場合に生じやすい誤った符号パターンでの信号の捕捉・追尾を防ぐことができる。一方で、現行GPSのL1 C/A信号には、このようなPRN−IDは含まれていない。
【0046】
(GPS衛星に搭載される送信機)
GPS衛星に搭載される送信機の構成については、周知であるので、以下では、GPS衛星に搭載される送信機の構成の概略について説明する。送信機120,121,122,123は、それぞれ、原子時計と、データを格納する記憶装置と、発振回路と、測位信号を生成するための処理回路と、処理回路によって生成された信号をスペクトラム拡散符号化するための符号化回路と、送信アンテナ等を有する。記憶装置は、エフェメリス、各衛星のアルマナック、電離層補正データ等を有する航法メッセージと、PRN−IDとを格納している。
【0047】
処理回路は、原子時計からの時刻情報と、記憶装置に格納されている各データとを用いて送信用のメッセージを生成する。
【0048】
ここで、各送信機120〜123毎に、スペクトラム拡散符号化するための擬似雑音符号の符号パターンが予め規定されている。各符号パターンは、送信機ごと(すなわちGPS衛星ごと)に異なる。符号化回路は、そのような擬似雑音符号を用いて、上記メッセージをスペクトラム拡散する。送信機120〜123の各々は、符号化された信号を高周波数に変換して、送信アンテナを介して、宇宙空間に発信する。
【0049】
上述のように、送信機120〜123は、他の送信機との間で有害な干渉を及ぼさないスペクトラム拡散信号を発信する。ここで、「有害な干渉をおこさない」ことは、干渉が生じない程度に制限された出力レベルによって担保され得る。あるいは、スペクトラムを分離する態様によっても実現できる。この信号は、たとえばL1帯と称される搬送波によって送信されている。各送信機120,121,122,123は、たとえば、同一の周波数を有する測位信号を拡散スペクトル通信方式にしたがって発信する。したがって、各衛星から送信された測位信号が、同一の位置情報提供装置100−1に受信される場合にも、各々の測位信号は、互いに混信を受けることなく受信されることになる。
【0050】
ここで、4つの衛星からの測位信号を同時に受信することで、位置情報提供装置100−1は、緯度・経度・高度といった自身の3次元の位置情報を得ることができる。
【0051】
なお、地上の屋内送信機からの測位信号についても、衛星から送信された信号と同様に、複数の屋内送信機からの信号は、互いに混信を受けることなく受信されることができる。
【0052】
(屋内送信機200−1のハードウェア構成)
図2を参照して、屋内送信機200−1について説明する。図2は、屋内送信機200−1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0053】
屋内送信機200−1は、無線インタフェース(以下、「無線I/F」と称す)210と、デジタル処理ブロック240と、デジタル処理ブロック210に電気的に接続されて、各回路部分の動作のための基準クロックを供給するための基準クロック入出力ブロック(以下、「基準クロックI/Oブロック」と称す)230と、デジタル処理ブロック210に電気的に接続されているアナログ処理ブロック250と、アナログ処理ブロック250に電気的に接続されて、測位のための信号を送出するアンテナ(図示せず)と、屋内送信機200−1の各部への電源電位の供給を行うための電源(図示せず)とを備える。
【0054】
なお、電源は、屋内送信機200−1に内蔵されてもよいし、外部からの電力の供給を受け付ける態様であってもよい。
【0055】
(無線通信インタフェース)
無線I/F210は、無線通信のインタフェースであり、近距離無線通信、たとえば、ブルートゥース(Bluetooth)などや、PHS(Personal Handyphone System)や携帯電話網のような無線通信により、外部からのコマンドを受信したり、外部との間で設定パラメータやプログラム(ファームウェア等)のデータを受信したり、あるいは、必要に応じて外部にデータを送信するためのものである。
【0056】
このような無線I/F210を備えることにより、屋内送信装置200−1については、屋内の天井等に設置した後であっても、設定パラメータ、たとえば、屋内送信装置200−1が送信する位置データ(屋内送信機200−1が設置されている場所を表わすデータ)を変更したり、あるいは、ファームウェアの変更により、異なる通信方式への対応を可能としたりすることができる。
【0057】
なお、本実施例では、無線でのインタフェースを想定しているが、設置場所への配線の敷設や設置の手間等を考慮しても、有線インタフェースとすることができる場合には、有線とすることも可能である。
【0058】
(デジタル処理ブロック)
デジタル処理ブロック240は、無線I/F210からのコマンドに応じて、あるいは、プログラムに従って、屋内送信機200−1の動作を制御するプロセッサ241と、プロセッサ241に搭載され、プロセッサ241の実行するプログラムを記憶するRAM(Random Access Memory)242と、無線I/F210からのデータのうち、設定パラメータ等を記憶するためのEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)243と、プロセッサ241の制御のもとに、屋内送信機200−1の送出するベースバンド信号を生成するフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:以下、「FPGA」と称す)245と、無線I/F210からの
データのうち、FPGA245のファームウェアを記憶するためのEEPROM244と、FPGA245から出力されるベースバンド信号をアナログ信号に変更してアナログブロック250に与えるデジタル/アナログコンバータ(以下、「D/Aコンバータ」と称す)247とを含む。
【0059】
すなわち、デジタル処理ブロック240は、測位のための信号として屋内送信機200−1によって送信される信号の源泉となるデータを生成する。デジタル処理ブロック240は、アナログ処理ブロック250に対して、生成したデータをビットストリームとして送出する。
【0060】
特に限定されないが、たとえば、EEPROM244に格納されているファームウェアプログラムは、FPGA245に電源が投入されると、FPGA245にロードされる。このファームウェアプログラム情報(ビットストリームデータ)は、FPGA245内のSRAM(Static Random Access Memory)246で構成されているコンフィグレーションメモリにロードされる。ロードされたビットストリームデータの個々のビットデータがFPGA245上で実現する回路の情報元となり、FPGA245に装備されているリソースをカスタマイズしてファームウェアプログラムで特定される回路を実現する。FPGA245では、このようにハードウェアに依存せず、コンフィグレーションデータを外部に持つことで、高い汎用性とフレキシビリティを実現できることになる。
【0061】
また、プロセッサ241は、無線I/F210から受け取る外部コマンドに応じて、EEPROM243に格納されるデータに基づいて、FPGA245のSRAM246(レジスタ)に、当該屋内送信機200−1に設定されるパラメータとして、以下のものを格納させる。
【0062】
1)擬似拡散符号(PRNコード)
2)送信機ID
3)位置特定データ
4)放送通知データ(3〜4は、FPGA245内で、後に説明するように、受信機のハードウェアから見て、衛星からの航法メッセージとコンパチブルなフォーマットに整形される)
「位置特定データ」「放送通知データ」については後述する。
【0063】
FPGA245は、EEPROM243に格納されたPRNコードに基づき、後述するフォーマットの信号に対してスペクトラム拡散処理が実行される。なお、PRNコードについては、EEPROM243にその値そのものが格納されて読み出される場合の他、シフトレジスタで構成されるPRN生成器により、実時間で生成されてもよい。
【0064】
なお、プロセッサ241の動作のためのプログラムも、EEPROM243に予め格納されており、当該プログラムは、屋内送信機200−1が起動する時に、EEPROM243から読み出され、RAM242に転送される。
【0065】
また、プログラムあるいはデータを格納するための記憶装置は、EEPROM243または244に限られない。少なくとも、データを不揮発的に保存できる記憶装置であればよい。また、後述するように、外部からのデータが入力される場合には、データを書き込むことができる記憶装置であればよい。EEPROM243に格納されるデータのデータ構造については後述する。
【0066】
(アナログ処理ブロック)
アナログ処理ブロック250は、デジタル処理ブロック240から出力されたビットストリームを用いて、1.57542GHzの搬送波を変調して送信信号を生成し、アンテナに送出する。その信号は、アンテナより発信される。
【0067】
すなわち、デジタル処理ブロック240のD/Aコンバータ247から出力された信号は、アップコンバータ252でアップコンバートされ、バンドパスフィルタ(BPF)253をアンプ254を通過して所定の周波数帯域の信号のみが増幅された後、再度、アップコンバータ255でアップコンバートされて、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタにより所定の帯域の信号が取り出された後に、可変アッテネータ257およびRFスイッチ258により、設定された強度の信号に変換されて、アンテナから送出される。
【0068】
なお、アップコンバータ252およびアップコンバータ255で使用されるクロックは、基準クロックI/Oブロック230からFPGA245に供給されるクロックが、さらに、てい倍器251において、てい倍されたものが使用される。
【0069】
また、可変アッテネータ257とRFスイッチ258のレベルの設定は、FPGA245をスルーしたプロセッサ241からの制御信号により制御される。RFスイッチ258は、いわゆるPM(Pulse Modulation)変調により、信号強度を実効的に変更する。
【0070】
このようにして、受信機の測位信号受信フロントエンドにとって、衛星からの測位のための信号とコンパチブルな構成を有する信号が、屋内送信機200−1から発信される。この場合、信号の内容は、衛星から発信された測位信号に含まれる内容とは、全く同一ではない。屋内送信機200−1から発信される信号の構成の一例は、後述する(図5)。
【0071】
以上の説明においては、デジタル処理ブロック240におけるデジタル信号処理を実現するための演算処理装置としてFPGA245が用いられたが、ソフトウェアにより無線装置の機能を変更可能な装置であれば、その他の演算処理装置が使用されてもよい。
【0072】
また、図2においては、クロック信号(Clk)がデジタル処理ブロック240からアナログ処理ブロック250に供給されているが、基準クロックI/Oブロック230からアナログ処理ブロック250に直接に供給されてもよい。
【0073】
さらに、説明を明確にするために、本実施の形態においては、デジタル処理ブロック240とアナログ処理ブロック250とが別個に示されているが、物理的には、1つのチップに混載されてもよい。
【0074】
(基準クロックI/Oブロック)
基準クロックI/Oブロック230は、デジタル処理ブロック240の動作を規定する
クロック信号、あるいは搬送波を生成するためのクロック信号を、デジタル処理ブロック240に供給する。
【0075】
基準クロックI/Oブロック230は、「外部同期モード」では、外部同期リンクポート220へ外部のクロック生成器から与えられる同期用信号に基づいて、ドライバ234がクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
【0076】
一方、基準クロックI/Oブロック230は、「外部クロックモード」では、外部クロックポート221へ与えられる外部クロック信号をマルチプレクサ232で選択し、PLL(Phase Locked Loop)回路233から出力されるクロック信号と外部クロックとの同期をとって、同期の取られたクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
【0077】
一方、基準クロックI/Oブロック230は、「内部クロックモード」では、内部クロック生成器231が生成する内部クロック信号をマルチプレクサ232で選択し、PLL(Phase Locked Loop)回路233から出力されるクロック信号と内部クロックとの同期をとって、同期の取られたクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
【0078】
なお、無線I/F210から、プロセッサ241により出力される信号により、送信機の内部状態(たとえば、「PLL制御」信号)を監視することができる。あるいは、デジタル入出力インタフェース260は、屋内送信機200−1から発信される信号を拡散変調するための擬似雑音符号の符号パターンの入力を、あるいは、無線I/F210は、屋内送信機200−1から発信されるべき他のデータの入力も受け付けることができる。当該他のデータは、たとえば、屋内送信機200−1が設置されている場所を表わすテキストデータ(位置データ)である。あるいは、屋内送信機200−1がデパートその他の商業施設に設置されている場合には、「宣伝広告用情報」、「交通情報」、「気象情報」、「災害情報」が、当該他のデータとして屋内送信機200−1に入力可能である。
【0079】
擬似拡散符号(PRNコード)の符号パターンが、屋内送信機200−1に入力されると、EEPROM243において予め規定された領域に書き込まれる。なお、必要に応じてPRN−IDや送信機名称も、EEPROM243に書き込まれて、その後は、その書き込まれたPRN−IDや送信機名称が、測位のための信号に含められてもよい。その他のデータも、EEPROM243において、そのデータの種類に応じて予め確保された領域に書き込まれる。
【0080】
(EEPROM243に格納されるデータのデータ構造)
図3を参照して、屋内送信機200−1のEEPROM243に格納されるデータのデータ構造について説明する。
【0081】
図3は、屋内送信機200−1が備えるEEPROM243におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。EEPROM240は、データを格納するための領域310〜350を含む。
【0082】
領域300には、送信機を識別するための番号として、送信機IDが格納されている。送信機IDは、たとえば当該送信機の製造時にメモリに不揮発的に書き込まれる数字および/または英文字その他の組み合わせである。
【0083】
上述のとおり、必要に応じて、当該送信機に割り当てられた擬似拡散符号のPRN-IDは、領域310に格納され、送信機の名称は、テキストデータとして、領域320に格納されている。
【0084】
当該送信機に割り当てられた擬似拡散符号の符号パターンは、領域330に格納されている。擬似拡散符号の符号パターンは、衛星用の擬似拡散符号と同一の系列に属する符号パターンのうちから、本発明の実施の形態に係る位置情報提供システム用に予め割り当てられた有限個の複数の符号パターンのうちから選択されたものであり、衛星ごとに割り当てられる擬似拡散符号の符号パターンとは異なる符号パターンである。
【0085】
本位置情報提供システム用に割り当てられる擬似拡散符号の符号パターンは、有限個であるが、屋内送信機の数は、各送信機の設置場所の広さ、あるいは設置場所の構成(ビルの階数等)に応じて異なり、符号パターンの数よりも多い複数の屋内送信機が使用される場合もある。したがって、同一の擬似拡散符号の符号パターンを有する複数の送信機が存在し得る。この場合は、同一の符号パターンを有する送信機の設置場所を、信号の出力を考慮して決定すればよい。そうすることにより、同一の擬似拡散符号の符号パターンを用いる複数の測位信号が同一の位置情報提供装置によって同時期に受信されることは、防止し得る。
【0086】
屋内送信機200−1が設置されている場所を特定するための位置データは、領域340に格納されている。位置データは、たとえば、緯度、経度、高度の組み合わせとして表わされる。領域320において、当該位置データに加えて、もしくは位置データに代えて、住所、建物の名称などが格納されてもよい。本発明では、「緯度、経度、高度の組み合わせ」、「緯度、経度、建物における階数の組み合わせ」、「緯度、経度、建物における階数、高度の組み合わせ」「住所、建物の名称」、「緯度、経度、高度の組み合わせと住所、建物の名称」のように、そのデータのみで送信機200−1の設置場所を特定可能なデータを総称して「位置特定データ」と呼ぶ。また、上述したような、「宣伝広告用情報」、「交通情報」、「気象情報」、「災害情報」等のように、位置特定データ以外の情報であって屋内送信機から放送される情報を表すデータを「放送通知データ」と呼ぶ。
【0087】
位置特定データは、領域340に、放送通知データは領域350に格納される。
ここで、前述のように、PRN−ID、通信機名称、擬似拡散符号の符号パターン、位置特定データ、放送通知データは、無線インタフェース210を介して入力される他のデータに変更可能である。特に、放送通知データは、必要に応じて随時変更または更新される。たとえば、屋内送信機200−1がデパートに設置されている場合には、デパートの営業活動の1つとして、宣伝広告用のデータが当該運営管理者によって屋内送信機200−1に与えられてもよい。
【0088】
(屋内送信機200−1から送信される信号のデータ構造)
まず、衛星からの航法メッセージを乗せた測位信号、たとえば、L1帯のC/Aコードにコンパチブルな信号の構造について説明する。
【0089】
(L1 C/A互換信号)
図4を参照して、衛星の送信機から送信される測位信号について説明する。
【0090】
図4は、GPS衛星に搭載される送信機によって発信されるL1帯のC/Aコードの信号500の構成を表わす図である。信号500は、300ビットの5つのサブフレーム、すなわち、サブフレーム510〜550から構成される。サブフレーム510〜550は、当該送信機によって、繰り返し送信される。サブフレーム510〜550は、たとえば、それぞれ300ビットであり、50bps(bit per second)のビット率で送信される。したがって、この場合、各サブフレームは、6秒で送信される。なお、4番目と5番目のサブフレーム540および550は、順次内容が交代して、25回でもとにもどる。交代する内容はページと呼ばれ、25ページからなる。
【0091】
第1番目のサブフレーム510は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド511と、30ビットの時刻情報512と、240ビットのメッセージデータ513とを含む。時刻情報512は、詳細には、サブフレーム510が生成される際に取得された時刻情報と、サブフレームIDとを含む。ここで、サブフレームIDとは、他のサブフレームから第1のサブフレーム510を区別するための識別番号である。メッセージデータ513は、GPS週番号、クロック情報、当該GPS衛星のヘルス情報、軌道精度情報等を含む。
【0092】
第2番目のサブフレーム520は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド521と、30ビットの時刻情報522と、240ビットのメッセージデータ523とを含む。時刻情報522は、第1番目のサブフレーム510における時刻情報512と同様の構成を有する。メッセージデータ523は、エフェメリスを含む。ここで、エフェメリス(ephemeris、放送暦)とは、測位信号を発信する衛星の軌道情報をいう。エフェメリスは、
当該衛星の航行を管理する管制局によって逐次更新される、高精度な情報である。
【0093】
第3番目のサブフレーム530は、第2番目のサブフレーム520と同様の構成を有する。すなわち、第3番目のサブフレーム530は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド531と、30ビットの時刻情報532と、240ビットのメッセージデータ533とを含む。時刻情報532は、第1番目のサブフレーム510における時刻情報512と同様の構成を有する。メッセージデータ533は、エフェメリスを含む。
【0094】
第4番目のサブフレーム540は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド541と、30ビットの時刻情報542と、240ビットのメッセージデータ543とを含む。メッセージデータ543は、他のメッセージデータ513,523,533と異なり、アルマナック情報、衛星ヘルス情報のサマリ、電離層遅延情報、UTC(Coordinated Universal Time )パラメータ等を含む。
【0095】
第5番目のサブフレーム550は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド551と、30ビットの時刻情報552と、240ビットのメッセージデータ553とを含む。メッセージデータ553は、アルマナック情報と、衛星ヘルス情報のサマリとを含む。メッセージデータ543,553は、各々25ページからの構成されており、ページ毎に、上記の異なる情報が定義されている。ここで、アルマナック情報とは、衛星の概略軌道を表わす情報であり、当該衛星だけでなく、全てのGPS衛星についての情報を含む。上述したように、サブフレーム510〜550の送信が25回繰り返されると、1ページ目に戻って、同じ情報が発信される。
【0096】
サブフレーム510〜550は、送信機120,121,122からそれぞれ送信される。サブフレーム510〜550が位置情報提供装置100によって受信されると、位置情報提供装置100の位置は、トランスポートオーバーヘッド511〜551に含まれる各保守・管理情報と、時刻情報512〜552と、メッセージデータ513〜553とに基づいて、計算される。
【0097】
ここで、各サブフレーム510〜550は、10ワードからなる。各ワードは30ビットである。この各ワードは、所用のデータと、誤り検出用のパリティビットとからなり、サブフレーム先頭ワードはプリアンブルを含む。サブフレームの冒頭の2ワードには、同期情報とテレメータ情報とが含まれる。これらの中に、HOW(Hand Over Word)とZカウントとが入っている。Zカウントは、時刻符号(何時何分何秒)に相当するデータであり、HOWは、Pコードへの乗り移りのためのデータである。
【0098】
(地上補完信号の構成)
以下では、屋内送信機200−1から送信される信号(地上補完信号)について説明する。
【0099】
本発明にかかる位置情報提供システムは、屋内送信機を、屋内等のようにGPSやQZSSなど衛星からの測位信号が届かない場所に設置し、ユーザはGPS、QZSSと共通の受信端末を使って屋内外でシームレスに位置情報を取得することができるシステムである。
【0100】
本方式は、既存の携帯電話等に既に搭載されているGPS受信チップ(測位信号受信フロントエンド)をそのまま流用し、ソフトウェア改修で屋外および屋内の測位を実現できる。
【0101】
ここで、上述したとおり、GPSの測位信号に重畳される航法メッセージは、50bpsという非常にゆっくりした伝送レートで、1サブフレーム300ビット、5サブフレーム×25ページの固定フォーマットでメッセージを換り返し送信している。
【0102】
GPS信号との共通化を図ることを目的として受借装置ハードウェアを共通化をすることは上記のような利点があるものの、GPS信号の固定フォーマットをそのままを使用すると、ユーザがメッセージを読み取って位置情報を取得するまでの時間がかかりすぎるという問題点がある。また、衛星からの固定フォーマットの測位信号とコンパチブルな信号を用いることとすると、送信可能なメッセージの容量が限られるために、商業利用において、本システムを広告媒体などとして利用する場合に、情報量の制約が課せられることとなる。
【0103】
さらに、以下に説明するように本発明では、屋内送信機200−1はGPS衛星と異なり、送信機そのものの位置情報をユーザに対してメッセージとして送信するため、送信機はひたすら同じビット列を繰り返し放送することとなる。この場合、プリアンブルとパリティビットを使ったフレーム同期手法では、偶然、プリアンブルおよびパリティビットの位置関係(パターン配列)が同じビット列が、フレーム中の他の位置に出現した場合、フレームの誤同期が生じ、正しい位置情報がユーザ側で復調されない可態性がある。
【0104】
緊急通報時の位置情報通知には、高い確度が要求されるが、CDMA(Code Division Multiple Access)によるコード分割多重化方式においては、所望の信号に対する十分な信号ノイズ比が得られない条件下においては、いわゆる「遠近問題」と呼ばれる問題により、誤ったPRNコードで信号を捕捉、追尾してしまうケースがある。屋内送信機からの信号と、衛星からの信号はPRNコードによって識別されるが、誤って地上信号用のPRNコードで衛星からの測位信号を、あるいは逆に衛星のPRNコードで屋内送信機からの信号を捕捉した場合には、誤捕捉を速やかに検知し、正しいPRNコードでの再捕捉を行わなければならないが、この処理のために位置情報取得までの時間が大幅に増加する可能性がある。
【0105】
本発明では、GPS信号との共通化を可能な限り維持しつつ、一方でメッセージ取得時間の短縮化、ユーザの使用目的に応じた柔軟性の確保、緊急通報時の位置情報通知に要求される高い信頼性の確保を実現するために、以下のような地上信号用の測位信号構成を用いる。
【0106】
i)測位衛星からの測位信号(たとえば、GPS C/A信号)との共通化
受信機ハードウェア及び信号処理ソフトウェアの共通化のために、信号仕様及びメッセージ仕様は共通化することが望ましい。信号の高周波特性(RF特性)は、使用するPRNコード系列を含めて、測位衛星からの測位信号(たとえば、GPS C/A信号)と共通の信号を使用する。また、メッセージ構造については、1ワード30ビット、フレーム先頭にプリアンブル8ビット、各ワードの後方に6ビットの符号誤り検出のためのパリティビットが設けられる。パリティ符号の算出アルゴリズムは、たとえば、GPS C/A信号と同一のアルゴリズムを用いる。
【0107】
したがって、より一般には、「ワード」とは、誤り検出の実行されるデータの送信単位のことをいう。「フレーム」とは、同期をとるためのプリアンブル信号を冒頭に含むデータの送信単位である。フレームは、複数のワード、たとえば、10ワードから構成される。ここで、1ワードごとに「誤り検出」が行われるとしたが、実行されるのは、「誤り検出訂正」でも、あるいは「誤り訂正」でもよい。
【0108】
ii)TTRM(Time To Read Message)短縮
測位衛星からの測位信号(たとえば、GPS C/A信号)の航法メッセージの固定フォーマットを変更し、フレーム長可変のより短いメッセージフォーマットを採用する。
【0109】
iii)利用目的に応じた自在性
測位衛星からの測位信号(たとえば、GPS C/A信号)の航法メッセージの固定フォーマットを変更し、フレームの先頭ワードは、所定ビット長、たとえば、3ビット長のメッセージタイプIDを有し、利用目的、用途に応じて・送信機設置者が送信するメッセージの内容と送信順、頻度を設定できる構成とする。以下に例示として説明されるメッセージ仕様では、3ビットで設定可能なメッセージタイプIDのうち4タイプを定義し、残りはリザーブとして将来の新たな利用用途に使用可能とする。
【0110】
iv)屋内位置情報の高信頼性確保(誤同期の防止)
各ワード中に、所定ビット長のカウンタビット、たとえば、3ビットのカウンタビットを付与し、送信されるワードごとに値をインクリメントする。このカウント値は、たとえば、111までカウントアップしたら000からカウントアップを繰り返す。このカウントアップにより、プリアンブルとワード尾部のパリティの関係が、所定の場所以外で偶然に一致して繰り返し出現するケースを排除し、確実にフレームの先頭を検出し、フレーム同期を確立して、誤った位置情報が出力されることを防止する。
【0111】
v)屋内位置情報の高信頼性確保(誤捕捉の防止)
GPSの近代化信号(L2C以降)では、メッセージ中にPRN―IDが送信されており、受信機は、捕捉したPRNコードとメッセージ中のPRN―IDが合敦しない場合は、直ちに誤捕捉であることが認識できる。しかし、たとえば、C/A信号の航法メッセージには、PRN―IDが含まれていない。このため、本発明では、誤捕捉を速やかに認識するために、屋内送信機用のメッセージのプリアンブルをGPS及びQZSS信号のプリアンブルと異なる値(ビットパターン)に設定する。
【0112】
(地上補完信号の信号仕様)
以下では、屋内送信機200−1から送信される信号(地上補完信号)の構造についてさらに説明する。
【0113】
地上補完信号は、衛星からの測位信号(たとえば、GPS及びQZSSのL1帯C/Aコード)に対応したRF特性を持つ。航法メッセージの構造は30ビットのワード単位である点は、衛星からの測位信号と同一であるが、一方で早いTTRM時間を提供するために短い区切りのフレーム構造を持つ。
【0114】
以下、RF特性と、メッセージ特性に分けて、その仕様を規定する。
(1)RF特性
(1−1)信号構造
公称中心周波数は、たとえば、1575.42MHzであり、PRN拡散周波数は、たとえば、1.023MHzであり、PRN拡散変調方式は、たとえば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)である。
【0115】
(1−2)チャンネル数およびPRNコード
地上補完信号は、単一の搬送波を持ち、衛星からの測位信号(たとえばC/A信号)のPRNコードと同一のコード系列である。
【0116】
(1−3)航法メッセージ
衛星からの測位信号(たとえばC/A信号)のワード構造、ビットレート、変調方式と同一である。
【0117】
(2)メッセージ特性
(2−1)ワード構造
1ワードは、衛星からの測位信号のワード長と同一のワード長、たとえば、30ビットで構成される。1ワードが30ビットの場合、1ワードには、たとえば、21ビットのデータビットと、3ビットのワードカウンタ、6ビットのパリティが含まれる。
【0118】
(2−2)ワードカウンタ
各ワードには、ワードカウンタがある。屋内送信機200−1のFPGA245は、このワードカウンタの値を、ワードの送信毎に、所定数ずつ、たとえば、1ずつインクリメントする。
【0119】
このワードカウンタにより、ワードやフレームの区切り識別を支援する。区切り識別の支援のために、この3ビットの値はプリアンブルの上位3ビットと同じ値をとらずに、スキップする。
【0120】
(2−3)パリティ符号
30ビットのワードの後方に付与されている所定ビット長、たとえば、6ビットの誤り検出符号(たとえば、パリティ符号)は、衛星からの測位信号と同一の符号、たとえば、(32,26)ハミング符号である。このパリティ符号により、ワードの区切り識別を支援する。
【0121】
(2−4)パリティアルゴリズムおよびパリティチェックアルゴリズム
誤り検出符号の生成アルゴリズムおよび誤り検出アルゴリズムも、衛星からの測位信号の符号に対するのと同一のアルゴリズムを用いる。
【0122】
(2−5)フレーム構造
図5は、地上補完信号のフレーム構造を示す図である。
【0123】
1フレームが1ワードの整数倍で構成され、以下の形式を持つ。なお、このような構成のフレームが順次繰り返して送信される。
【0124】
すなわち、第1のワードに、所定ビット長、たとえば、8ビットのプリアンブルがあり、それに所定ビット長、たとえば、3ビットのメッセージタイプID(MID)が続く。残りのビットは、上述したワードごとの3ビットのワードカウンタと、ワードごとの6ビットのパリティを除いて全てデータビットである。
【0125】
図5においては、1フレームがそれぞれ、1ワード、2ワード、3ワードで構成される場合を図示している。
【0126】
つまり、屋内送信機200から送信される地上補完信号は、衛星からの測位信号と、ワード構成までは共通であるが、フレームがいくつのワードから構成されるかについては異なっており、衛星からの測位信号の1フレームに含まれるワード数よりも、少ないワード数によりフレームが構成される。
【0127】
(2−6)プリアンブル
各フレームの第1ワード先頭に付与されている8ビットのプリアンブルは、所定のビットパターンを有する。
【0128】
このプリアンブルにより、フレームの区切り識別を支援する。このプリアンブルのパターンは、衛星からの測位信号のプリアンブルのビットパターンとは異なり、GPSやQZSSの衛星測位信号との識別が可能なようになっている。
【0129】
(2−7)メッセージタイプID(MID)
各フレームの第1ワードのプリアンブルに続いて付与されている上述した3ビットのメッセージタイプID(MID)は、そのワードが含まれるフレームのフレーム長およびその内容を示している。
【0130】
図6は、MIDの値と、フレーム長および内容との対比を示している。
以下、図6の内容についてさらに説明する。
【0131】
(2−7−1)メッセージの内容
(2−7−1−1)メッセージタイプID”000” :位置情報1
メッセージタイプIDが、”000”の時、そのフレーム長は3ワードであり、その内容は位置情報である。
【0132】
図7は、メッセージタイプIDが、”000”の時のフレーム構成を示す図である。また、図8は、フレーム内のデータの内容、ビット長、LSB(Least Significant Bit)の対応する数値、表現する範囲の例をそれぞれ示す図である。
【0133】
図7および図8を参照して、その内容を説明すると以下のとおりである。
i)階数
第1ワードのビット12〜18は、その送信機が設置されている建物の階数を意味しており、その単位は階である。
【0134】
ビット長は7ビットであり、符号無しであって、LSBは1階を表す。―26階のオフセットを設定して、―26階〜+100階を表現する。
【0135】
ii)緯度
第2ワードのビット1〜21をMSB(Most Significant Bit)側としてビットが並べられており、第1ワードのビット19を付加した合計22ビットは、その送信機の緯度を意味しており、その単位は「度」である。
【0136】
これは符号付きであって、LSBは180/1022[度]〜0.000043[度]であり、―90度〜+90度を表現するものとする。南北方向で約4.8mに相当する。
【0137】
iii)経度
第3ワードのビット1〜21をMSB側とし、第1ワードのビット20〜21を付加した合計23ビットは、その送信機の経度を意味しており、その単位は「度」である。
【0138】
これは符号付きであって、LSBは360/1023[度]〜0.000043[度]であり、―180度〜+180度を表現するものとする。赤道上において、東西方向で約4.8mに相当する。
【0139】
(2−7−1−2)メッセージタイプID”001” :位置情報2
メッセージタイプIDが、”001”の時、そのフレーム長は4ワードであり、その内容は位置情報である。
【0140】
図9は、メッセージタイプIDが、”001”の時のフレーム構成を示す図である。また、図10は、フレーム内のデータの内容、ビット長、LSBの対応する数値、表現する範囲の例をそれぞれ示す図である。
【0141】
図9および図10を参照して、その内容を説明すると以下のとおりである。
i)階数
第1ワードのビット12〜20は、その送信機が設置されている建物の階数を意味しており、その単位は「階」である。
【0142】
ビット長は9ビットであり、符号無しであって、LSBは1階である。―26階のオフセットを設定して、―26階〜+100階を表現するものとする。
【0143】
ii)緯度
第2ワードのビット1〜21をMSBとし、第4ワードのビット17〜18を付加した合計23ビットは、その送信機の緯度を意味しており、その単位は「度」である。
【0144】
この値は、符号付きであって、LSBは180/1023[度]〜0.000021[度]であり、―90度〜+90度を表現するものとする。これは、南北方向で約2.4mに相当する。
【0145】
iii)経度
第3ワードのビット1〜21をMSBとし、第4ワードのビット19〜21を付加した合計24ビットは、その送信機の経度を意味しており、その単位は「度」である。
【0146】
これは符号付きであって、LSBは360/1024[度]〜0.000021[度]であり、―180度〜+180度を表現するものとする。赤道上において、東西方向で約2.4mに相当する。
【0147】
iv)高度
第4ワードのビット1〜12ビットは、その送信機の高度を意味しており、その単位は「m(メートル)」である。
【0148】
これは符号無しであって、LSBは1mである。―95mのオフセットを設定して、―95m〜+4000mを表現するものとする。
【0149】
(2−7−1−3)メッセージタイプID”011”: ショートID
メッセージタイプIDが、”011”の時、そのフレーム長は1ワードであり、その内容はショートID(IDs)である。
【0150】
図11は、メッセージタイプIDが、”011”の時のフレーム構成を示す図である。
ショートIDに対応するフレームでは、10ビットのショートIDメッセージが送信される。
【0151】
ここで、ショートIDメッセージは、メッセージタイプID”000”(タイプ0)や”001”(タイプ1)のようにそのメッセージの内容により、位置情報を直接取得できるものではない。ショートIDメッセージは、タイプ0やタイプ1より狭いエリアにおいて、自在な位置情報サービスを展開できるように、サービスプロバイダが独自にIDを定義できるものである。
【0152】
ショートIDメッセージは、デパート、駅ビル、地下街等の商業施設の単位でサービスプロバイダが運営するローカルサーバ204において、提供される位置関連情報との関連づけに使用され、ローカルサーバ内での情報配信のキーや、経路誘導ガイダンスなどに使用される。
【0153】
(2−7−1−4)メッセージタイプID”100” :ミディアムID
メッセージタイプIDが、”100”の時、そのフレーム長は2ワードであり、その内容はミディアムID(IDM)である。
【0154】
図12は、メッセージタイプIDが、”100”の時のフレーム構成を示す図である。
ミディアムIDに対応するフレームでは、10ビットのミディアムIDメッセージと、21ビットのミディアムIDメッセージが送信される。
【0155】
ミディアムIDメッセージは、デパート、駅ビル、地下街等の商業施設の単位で割り当てられ、これらの単位ごとにサービスプロバイダが運営するローカルサーバにアクセスするために使用される。
【0156】
すなわち、たとえば、インターネットにおけるドメインネームサーバに相当するサーバが、ミディアムIDとローカルサーバのURL(Uniform Resource Locator)をデータベースとして管理し、ユーザはミディアムIDを用いてローカルサーバにアクセスすることが可能である。
【0157】
したがって、位置情報提供装置(たとえば、携帯電話機)100−5は、ショートIDメッセージおよびミディアムIDメッセージを受信すると、通信網を介して、当該メッセージに対応する位置関連情報を、ローカルサーバ204に照会することにより取得する。
【0158】
ここで、「位置関連情報」としては、たとえば、上述したような屋内送信機の位置を特定するための情報(たとえば、階数、緯度、経度の他、高度など)の他に、「宣伝広告用情報」、「交通情報」、「気象情報」、「災害情報」の少なくとも1つのそのものでもよい。
【0159】
[位置情報提供装置100(受信機)の構成]
図13を参照して、位置情報提供装置100について説明する。図13は、位置情報提供装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0160】
位置情報提供装置100は、アンテナ402と、アンテナ402に電気的に接続されているRF(Radio Frequency)フロント回路404と、RFフロント回路404に電気的
に接続されているダウンコンバータ406と、ダウンコンバータ406に電気的に接続されているA/D(Analog to Digital)コンバータ408と、A/Dコンバータ408に
電気的に接続されているベースバンドプロセッサ410と、ベースバンドプロセッサ41
0に電気的に接続されているメモリ420と、ベースバンドプロセッサ410に電気的に接続されているナビゲーションプロセッサ430と、ナビゲーションプロセッサ430に電気的に接続されているディスプレイ440とを備える。
【0161】
メモリ420は、測位信号の各発信源を識別するためのデータである、擬似雑音符号の符号パターンを格納する複数の領域を含む。一例として、ある局面において、48個の符号パターンが用いられる場合には、メモリ420は、図13に示されるように、領域421−1〜421−48を含む。また、他の局面において、それ以上の符号パターンが使用される場合には、さらに多くの領域がメモリ420に確保される。逆に、メモリ420に確保された領域の数よりも少ない符号パターンが使用される場合もあり得る。
【0162】
一例として48個の符号パターンが用いられる場合において、たとえば、24個の衛星が衛星測位システムに用いられる場合、各衛星を識別する24個の識別データ(PRNコード)と、12個の予備のデータとが、領域421−1〜421−36に格納されている。このとき、たとえば、領域421−1には、第1の衛星についての擬似雑音符号の符号パターンが格納されている。ここから、符号パターンを読み出して、受信信号との相互相関処理を行なうことにより、信号の追跡や、信号に含まれる航法メッセージの解読を行なうことができる。また、メモリ420は、衛星からの測位信号のプリアンブルパターンと屋内送信機200からのプリアンブルパターンとを格納している。なお、ここでは、符号パターンを格納して読み出す方法を例示的に示したが、符号パターン生成器により符号パターンを生成する方法も可能である。符号パターン生成器は、たとえば、2つのフィードバックシフトレジスタを組み合わせることにより実現される。なお、符号パターン生成器の構成および動作は、当業者にとって容易に理解できるものである。したがって、ここでは、それらの詳細な説明は、繰り返さない。
【0163】
同様に、測位信号を発信する屋内送信機に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域421−37〜421−48に格納される。たとえば、第1の屋内送信機についての割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域432−37に格納されている。この場合、本実施の形態においては、12個の符号パターン有する屋内送信機が使用可能となるが、同一の位置情報提供装置が受信可能な範囲に同一の符号パターンを使用する屋内送信機がないように、各屋内送信機をそれぞれ配置するのが好ましい。このようにすることによって、12台以上の屋内送信機を、たとえばビル130の同一のフロアに設置することも可能になる。
【0164】
ベースバンドプロセッサ410は、A/Dコンバータ408から出力される信号の入力を受け付けるコリレータ部412と、コリレータ部412の動作を制御する制御部414と、制御部414から出力されるデータに基づいて測位信号の発信源を判断する判断部416とを含む。ナビゲーションプロセッサ430は、判断部416から出力される信号に基づいて屋外における位置情報提供装置100の位置を測定するための屋外測位部432と、判断部416から出力されるデータに基づいて屋内における位置情報提供装置100の位置を表わす情報を導出するための屋内測位部434とを含む。
【0165】
アンテナ402は、GPS衛星110,111,112からそれぞれ発信された測位信号および屋内送信機200−1から発信された測位信号をそれぞれ受信することができる。また、位置情報提供装置100が携帯電話として実現される場合には、アンテナ402は、前述の信号に加えて、無線電話のための信号あるいはデータ通信のための信号を送受信することもできる。
【0166】
RFフロント回路404は、アンテナ402によって受信された信号を受けて、ノイズの除去あるいは予め規定された帯域幅の信号のみを出力するフィルタ処理などを行なう。RFフロント回路404から出力される信号は、ダウンコンバータ406に入力される。
【0167】
ダウンコンバータ406は、RFフロント回路404から出力される信号を増幅し、中間周波数として出力する。この信号は、A/Dコンバータ408に入力される。A/Dコンバータ408は、入力された中間周波数信号をデジタル変換処理し、デジタルデータに変換する。デジタルデータは、ベースバンドプロセッサ410に入力される。
【0168】
ベースバンドプロセッサ410において、コリレータ部412は、制御部414がメモリ420から読み出した符号パターンと、受信信号との相関処理を行なう。たとえば、コリレータ部412は、制御部414が提供する符号位相が1ビット相互に異なる2種類(あるいは複数種類)の符号パターンと、A/Dコンバータ408から送出されるデジタルデータとのマッチングを行なう。コリレータ部412は、各コードパターンを用いて、位置情報提供装置100が受信した測位信号を追跡し、当該測位信号のビット配列に一致する配列を有するコードパターンを特定する。これにより、擬似雑音符号の符号パターンが特定されるため、位置情報提供装置100は、受信された測位信号がどの衛星から送信されたものか、あるいは、屋内送信機から送信されたかを判別できる。また、位置情報提供装置100は、特定された符号パターンを用いて、復調とメッセージの解読とをすることができる。
【0169】
具体的には、判断部416は、上述のような判断を行ない、その判断の結果に応じたデータをナビゲーションプロセッサ430に送出する。判断部416は、受信された測位信号に含まれるプリアンブルがGPS衛星に搭載される送信機以外の送信機に割り当てられたプリアンブルであるか否かを判断する。
【0170】
ここで、一例として、24個のGPS衛星が測位システムに使用される場合について説明する。この場合、予備のコードを含めると、たとえば、36個の擬似雑音符号が使用される。なお、この時、測位信号にPRN―IDが含まれている場合には、PRN−01〜PRN−24を、各GPS衛星を識別する番号(PRN−ID)として使用し、PRN−25〜PRN−36を、予備の衛星を識別する番号として使用してもよい。予備の衛星とは、当初打ち上げられた衛星以外に改めて打ち上げられる衛星である。すなわち、このような衛星は、GPS衛星あるいはGPS衛星に搭載された送信機等の故障に備えて打ち上げられる。
【0171】
さらに、仮に、12個の擬似雑音符号の符号パターンがGPS衛星に搭載される送信機以外の送信機(たとえば、屋内送信機200−1等)に割り当てられる。この時、衛星に割り当てられたPRN−IDとは異なる番号、たとえばPRN−37からPRN−48が、各送信機ごとに割り当てられる。したがって、この例では、48個のPRN−IDが存在することになる。ここで、PRN−37〜PRN−48は、たとえば各屋内送信機の配置に応じて当該屋内送信機に割り当てられる。したがって、仮に、各屋内送信機から発信される信号が干渉しない程度の送信出力が使用される場合には、同一のPRN−IDが異なる屋内送信機に用いられてもよい。このような配置により、地上用の送信機のために割り当てられたPRN−IDの数よりも多くの数の送信機が、使用可能となる。そして、屋内送信機からの信号にPRN―IDを含め、PRN−37〜PRN−48を、屋内送信機200を識別する番号として使用してもよい。
【0172】
そこで、判断部416は、メモリ420に格納されている擬似雑音符号の符号パターン422を参照して、受信された測位信号から取得された符号パターンが、屋内送信機に割り当てられている符号パターンに一致するか否かを判断する。これらの符号パターンが一致する場合には、判断部416は、その測位信号が屋内送信機から発信されたものであると判断する。そうでない場合には、判断部416は、その信号がGPS衛星から発信されたものと判断し、その取得された符号パターンが、どの衛星に割り当てられた符号パターンであるかを、メモリ420に格納されている符号パターンを参照して決定する。なお、判断の態様として、符号パターンが使用される例が示されているが、その他のデータの比較によって、上記の判断が行なわれてもよい。たとえば、PRN−IDを用いた比較が、その判断に使用されてもよい。
【0173】
そして、受信された信号が各GPS衛星から発信されたものである場合には、判断部416は、特定された信号から取得されるデータを屋外測位部432に送出する。信号から取得されるデータには、航法メッセージが含まれる。一方、受信された信号が屋内送信機200−1などから発信されたものである場合には、判断部416は、その信号から取得されるデータを屋内測位部434に送出する。このデータは、すなわち屋内送信機200−1の位置を特定するためのデータとして予め設定された座標値である。あるいは、別の局面において、当該送信機を識別する番号が用いられてもよい。
【0174】
ナビゲーションプロセッサ430において、屋外測位部432は、判断部416から送出されたデータに基づいて位置情報提供装置100の位置を算出するための処理を実行する。具体的には、屋外測位部432は、3つ以上のGPS衛星(好ましくは、4つ以上)から発信された信号に含まれるデータを用いて、各信号の伝播時間を計算し、その計算結果に基づいて位置情報提供装置100の位置を算出する。この処理は、公知の衛星測位の手法を用いて実行される。この処理は、当業者にとっては容易に理解できるものである。したがって、ここではその説明の詳細は繰り返さない。
【0175】
一方、ナビゲーションプロセッサ430において、屋内測位部434は、判断部416から出力されたデータに基づいて位置情報提供装置100が屋内に存在する場合における測位処理を実行する。後述するように、屋内送信機200−1は、場所を特定するためのデータ(位置特定データ)が含まれる測位信号を発信する。そこで、位置情報提供装置100がそのような信号を受信した場合には、その信号に含まれるデータを取り出し、そのデータを用いて位置情報提供装置100の位置とすることができる。屋内測位部434は、この処理を行なう。屋外測位部432によって算出されたデータあるいは屋内測位部434によって読み出されたデータは、ディスプレイ440における表示のために用いられる。具体的には、これらのデータは、画面を表示するためのデータに組み込まれ、計測された位置を表わす画像又は読み取られた位置(たとえば、屋内送信機200−1が設置されている場所)を表示するための画像が生成され、ディスプレイ440によって表示される。
【0176】
また、位置情報提供装置100は、制御部414の制御の下に、外部との間、たとえば、位置情報提供サーバとして機能するローカルサーバ204との間で、データを授受するための通信部450を備える。
【0177】
図13に示した構成において、特に限定されないが、測位信号受信からディスプレイに表示される情報の生成までの信号処理において、アンテナ402、RFフロント回路404、ダウンコンバータ406、A/Dコンバータ408は、ハードウェアにより構成され、ベースバンドプロセッサ410およびナビゲーションプロセッサ430の処理は、メモリ420に格納されたプログラムにより実行することができる。なお、コリレータ部412の処理については、ソフトウェアの代わりにハードウェアにより実現される構成とすることもできる。
【0178】
図14を参照して、位置情報提供装置100の制御処理について説明する。図14は、位置情報提供装置100のベースバンドプロセッサ410およびナビゲーションプロセッサ430が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。
【0179】
ステップS610にて、位置情報提供装置100は、測位信号を取得(追尾、捕捉)する。具体的には、ベースバンドプロセッサ410は、A/Dコンバータ408から、受信
された測位信号(デジタル変換処理後のデータ)の入力を受け付ける。ベースバンドプロセッサ410は、擬似雑音符号のレプリカとして、可能な遅延が反映された符号位相が異なる符号パターンを生成し、その符号パターンと受信された測位信号との相関の有無をそれぞれ検出する。生成される符号パターンの数は、たとえば、符号パターンのビット数の2倍である。一例として、たとえば、チップレートが1023ビットである場合、2分の1ビットずつの遅延、すなわち符号位相差を有する2046個の符号パターンが生成され得る。そして、各符号パターンを用いて、受信された信号との相関を取る処理が、実行される。ベースバンドプロセッサ410は、当該相関処理において、予め規定された強度以上の出力が検出された場合に、その符号パターンをロックし、当該符号パターンによって、その測位信号を発信した衛星を特定することができる。当該符号パターンのビット配列を有する擬似雑音符号は、1つしか存在しない。これにより、受信された測位信号をスペクトラム拡散符号化するために使用された擬似雑音符号が特定される。
【0180】
なお、後述するように、受信によって取得された信号と、位置情報提供装置100の内部で生成されたレプリカの符号パターンとの相関を取るための処理は、並列処理としても実現可能である。
【0181】
ステップS612にて、ベースバンドプロセッサ410は、その測位信号の発信源を特定する。具体的には、判断部416が、その信号を生成するために変調時に使用された擬似雑音符号の符号パターンを使用する送信機に対応付けられるPRN−IDに基づいて(たとえば、図13におけるメモリ420中に格納されるデータに基づいて)、その信号の発信源を特定する。その測位信号が屋外から発信されたものである場合には、制御はステップS620に移される。その測位信号が屋内において発信されたものである場合には、制御はステップS630に移される。受信した複数の信号が屋外および屋内のそれぞれから発信されたものを含む場合には、制御はステップS640に移される。
【0182】
ステップS620にて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、ナビゲーションプロセッサ430の屋外測位部432は、その測位信号に対して、メモリ420に一時的に保存されていた符号パターン(前述の「ロック」が行なわれた符号パターン、以下「ロックした符号パターン」)を用いて重畳することにより、その信号を構成するサブフレームから、航法メッセージを取得する。ステップS622にて、屋外測位部432は、取得した4つ以上の航法メッセージを用いて位置を算出するための通常の航法メッセージ処理を実行する。
【0183】
ステップS624にて、屋外測位部432は、その処理の結果に基づいて位置情報提供装置100の位置を計算するための処理を実行する。たとえば、位置情報提供装置100が、4つ以上の衛星から発信された各測位信号を受信している場合には、距離の算出は、各信号から復調された航法メッセージに含まれる各衛星の軌道情報、時刻情報等を用いて行なわれる。
【0184】
また、他の局面において、ステップS612において、位置情報提供装置100が、衛星によって発信された測位信号(屋外信号)と屋内発信機からの信号(屋内信号)とを受信している場合には、ステップS640にて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、屋外測位部432は、ベースバンドプロセッサ410によって送出された測位信号に対して、当該ロックした符号パターンを重畳することにより、測位信号を構成するサブフレーム中のデータを取得する。この場合、位置情報提供装置100は、衛星からの信号および屋内送信機からの信号を受信していることになるため、いわば「ハイブリッド」モードとして作動していることになる。したがって、各衛星からの信号については、時刻データを有する航法メッセージが取得され、屋内送信機からの信号については、上記座標値その他の位置情報を有するデータが取得される。すなわち、ステップS642にて、屋内測位部434は、屋内送信機200−1によって発信された測位信号から、たとえば、階数、緯度、経度、高度を取得する処理を行ない、また、GPS衛星によって発信された測位信号から航法メッセージを取得し、処理を行なう。その後、制御は、ステップS624に移される。この場合、ステップS624では、位置の算出に用いる信号を決定するための振り分けが、たとえば、屋内信号および屋外信号の強度に基づいて行なわれる。一例として、屋内信号の強度が屋外信号の強度よりも大きい場合には、屋内信号が選択され、当該屋内信号に含まれる座標値が、位置情報提供装置100の位置とされる。
【0185】
一方、ステップS612にて、測位信号の発信源が屋内である場合、たとえば、屋内信号の強度が所定のレベル以上である場合に、続いて、ステップS630にて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、屋内測位部434は、ベースバンドプロセッサ410から送出された測位信号に対して、当該ロックした符号パターンを重畳することにより、測位信号を構成するサブフレームから、メッセージデータを取得する。このメッセージデータは、衛星から送信される測位信号に含まれる航法メッセージに代えて、屋内送信機によって発信される測位信号に含まれるものである。
【0186】
ステップS632にて、屋内測位部434は、そのデータから座標値(すなわち、屋内送信機の設置場所を特定するためのデータ(たとえば、階数、緯度、経度、高度)を取得する。その後、処理はステップS650に移行する。
【0187】
なお、ステップS630において、ショートIDメッセージまたはミディアムIDメッセージを受信している場合は、ステップS630において、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得し、ステップS632において、位置情報提供装置100は、このショートIDメッセージをミディアムIDメッセージに基づいてネットワークを介して送信することで、ローカルサーバ204から、当該ショートIDに対応する情報を受信する。
【0188】
ステップS650にて、ナビゲーションプロセッサ430は、位置の算出結果に基づいてディスプレイ440に位置情報を表示させるための処理を実行する。具体的には、取得された座標を表示するための画像データあるいは屋内送信機200−1の設置場所を表示するためのデータを生成し、ディスプレイ440に送出する。ディスプレイ440は、そのようなデータに基づいて表示領域に位置情報提供装置100の位置情報を表示する。
【0189】
図15を参照して、位置情報提供装置100の位置情報の表示態様について説明する。図15は、位置情報提供装置100のディスプレイ440における画面の表示を表わす図である。位置情報提供装置100が、屋外において、各GPS衛星から発信された測位信号を受信すると、ディスプレイ440は、位置情報が当該測位信号に基づいて取得されていることを表わすアイコン710を表示する。その後、位置情報提供装置100の使用者が屋内に移動した場合、位置情報提供装置100は、各GPS衛星から発信された測位信号を受信できなくなる。代わりに位置情報提供装置100は、たとえば屋内送信機200−1によって発信された信号を受信する。この信号は、上述のように、GPS衛星から発信される測位信号と同じ方式によって送信されている。したがって、位置情報提供装置100は、衛星から測位信号を受信した場合に実行する処理と同様の処理を当該信号に対して行なう。位置情報提供装置100が、当該信号から位置情報を取得すると、当該位置情報は屋内に設置された送信機から発信された信号に基づいて取得されたことを表わすアイコン720をディスプレイ440に表示する。
【0190】
以上のようにして、本発明の位置情報提供装置100は、屋内あるいは地下街のように、GPS衛星からの電波を受信できない場所においては、その場所に設置された送信機(たとえば、屋内送信機200−1〜200−3または200−4〜200−6)から発信された電波を受信する。位置情報提供装置100は、その電波から、当該送信機の位置を特定する情報(たとえば、座標値、住所)を取得し、ディスプレイ440に表示する。これにより、位置情報提供装置100の使用者は、現在の位置を知ることができる。このようにすると、測位信号を直接受信できないような場所においても、位置情報が提供されることになる。
【0191】
これにより、屋内における信号の安定な受信が確保される。また、屋内においても、数m程度の安定した精度によって位置情報の提供が可能になる。
【0192】
また、地上時刻(屋内送信機200−1等の送信機の時刻)と衛星時刻とは、互いに独立でよく、同期している必要はない。したがって、屋内送信機を製造するためのコストの増加を抑制することができる。また、位置情報提供システムが運用された後も、屋内送信機の時刻を同期させる必要がないため運用も容易になる。
【0193】
各屋内送信機から発信される各々の信号には、当該送信機が設置されている場所を特定するための情報そのものが含まれているため、複数の衛星から発信された各信号に基づいて位置情報を算出する必要がなく、したがって、単一の送信機から発信された信号に基づいて位置情報を導出することができる。
【0194】
また、単一の屋内送信機から発信された信号を受信することにより、その信号の受信場所の位置が特定できるため、GPSその他の従来の測位システムよりも、位置を提供するためのシステムを容易に実現することができる。
【0195】
この場合、位置情報提供装置100は、屋内送信機200−1によって発信される信号を受信するための専用のハードウェアを必要とせず、従来の測位システムを実現するハードウェアを用いて、信号処理についてはソフトウェアを変更することで実現可能である。したがって、本実施の形態に係る技術を適用するためのハードウェアをゼロから設計する必要がないため、位置情報提供装置100のコストの増加が抑制され、普及し易くなる。また、たとえば回路規模の増大化あるいは複雑化が防止される位置情報提供装置が提供される。
【0196】
具体的には、位置情報提供装置100のメモリ420は、屋内送信機および/または衛星について予め規定されたPRN−IDと符号パターンとを対応づけて保持している。位置情報提供装置100は、受信した電波が衛星から発信されたものであるか、屋内送信機から発信されたものであるかをそのPRN−IDに基づいて判断するための処理をプログラムに基づいて動作する。このプログラムは、ベースバンドプロセッサのような演算処理装置によって実現される。あるいは、判断のための回路素子を、当該プログラムによって実現される機能を含む回路素子に変更することにより、位置情報提供装置100が構成され得る。
【0197】
さらに、位置情報提供装置100が携帯電話として実現される場合には、その取得した情報をフラッシュメモリのような不揮発性のメモリ420に保持しておいてもよい。そして、携帯電話の発信が行なわれた際に、メモリ420に保持されたデータを発信先に送信するようにしてもよい。このようにすると、発信元の位置情報、すなわち携帯電話としての位置情報提供装置100が屋内送信機から取得した位置情報が、通話を中継する基地局に送信される。基地局は、その位置情報を受信日時とともに通話記録として保存する。また、発信先が緊急連絡先(たとえば、日本における110番)である場合には、発信元の位置情報がそのまま通知されてもよい。これにより、従来の固定電話からの緊急連絡時における発信元の通知と同様に、移動体からの発信元の通知が実現される。
【0198】
また、特定の場所に設置される送信機に関し、測位衛星に搭載される送信機が発信する信号と同様の信号を発信できる送信機によって、位置情報提供システムが実現される。したがって、送信機をゼロから新たに再設計する必要がなくなる。
【0199】
本実施の形態に係る位置情報提供システムは、測位のための信号としてスペクトラム拡散信号を用いる。この信号の送信によれば、周波数あたりの電力を下げることができるため、たとえば、従来のRFタグに比べて、電波の管理が容易になると考えられる。その結果、位置情報提供システムの構築が容易になる。
【0200】
また、屋内送信装置200−1は、設置後において、無線I/F210により、設定パラメータを変更できる。このため、設置場所を特定するための位置特定データを、設置後に一括して書き換えるなど設置手続きを簡略化できる。また、メッセージとして送信する情報のうち、「宣伝広告用のデータ」、「交通情報」、「気象情報」、「災害情報」(たとえば地震情報)などをリアルタイムに書き換えて、受信機に提供できるので、さまざまなサービスを実現できる。それのみならず、屋内送信装置200−1は、信号処理を行うためのFPGA245のファームウェア自体を書き換えることが可能である。このため、同一のハードウェアをさまざまな測位システムの通信方式(変調方式等)において使用することが可能である。また、ショートIDメッセージおよびミディアムIDメッセージを使用することで、さらに、多様な位置に関連する情報をローカルサーバ204から取得することが可能となる。
【0201】
<受信機の変形例1>
位置情報提供装置100が備えるコリレータ部412の構成に代えて、複数のコリレータが用いられてもよい。この場合、測位信号をレプリカにマッチングさせるための処理が同時並行して実行されるため、位置情報の算出時間が短くなる。
【0202】
図16は、このような位置情報提供装置100の変形例の構成を説明するための図である。
【0203】
本変形例に係る位置情報提供装置1000は、アンテナ1010と、アンテナ1010に電気的に接続されるバンドパスフィルタ1020と、バンドパスフィルタ1020に電気的に接続されるローノイズアンプ1030と、ローノイズアンプ1030に電気的に接続されるダウンコンバータ1040と、ダウンコンバータ1040に電気的に接続されるバンドパスフィルタ1050と、バンドパスフィルタ1050に電気的に接続されるA/Dコンバータ1060と、A/Dコンバータ1060に電気的に接続される複数のコリレータからなる並列コリレータ1070と、並列コリレータ1070に電気的に接続されるプロセッサ1080と、プロセッサ1080に電気的に接続されるメモリ1090とを含む。
【0204】
並列コリレータ1070は、n個のコリレータ1070−1〜1070−nを含む。各コリレータは、プロセッサ1080から出力される制御信号に基づいて、受信された測位信号と測位信号を復調するために生成されたコードパターンとのマッチングを同時に実行する。
【0205】
具体的には、プロセッサ1080は、各並列コリレータ1070の各々に対して、擬似雑音符号において生じ得る遅延を反映させた(符号位相をずらした)符号パターンを生成する指令を与える。この指令は、たとえば、現行GPSでは、衛星の数×2×1023(用いられる擬似雑音符号の符号パターンの長さ)となる。各並列コリレータ1070は、各々に与えられた指令に基づいて、各衛星について規定された擬似雑音符号の符号パターンを用いて符号位相の異なる符号パターンを生成する。そうすると、生成された全ての符号パターンの中には、受信された測位信号の変調に使用された擬似雑音符号の符号パターンに一致するものが1つ存在する。そこで、各符号パターンを用いたマッチング処理を行なうために必要な数のコリレータを並列コリレータ1070として予め構成することにより、瞬時に、擬似雑音符号の符号パターンを特定することができる。この処理は、位置情報提供装置100が屋内送信機からの信号を受信する場合にも同様に適用できる。したがって、位置情報提供装置100の使用者が屋内にいる場合でも、その位置情報を短時間に取得することができる。
【0206】
つまり、並列コリレータ1070は、最大で、各衛星について規定された擬似雑音符号の符号パターンと各屋内送信機について規定された擬似雑音符号の符号パターンとのすべてについて、並列して、マッチングをとることが可能である。また、コリレータの個数と、衛星および屋内送信機に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンの個数との関係により、各衛星と各屋内送信機とについて規定された擬似雑音符号の符号パターンのすべてについて、一括してマッチングを採らない場合でも、複数のコリレータによる並列処理により、大幅に、位置情報の取得に要する時間を短縮できる。
【0207】
ここで、衛星および屋内送信機は、同一の通信方式であるスペクトラム拡散方式で信号を送信しており、衛星および屋内送信機に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンが同一系列のものを使用できるので、並列コリレータについては、衛星からの信号および屋内送信機からの送信の双方について共用することができ、受信処理は、両者について特段に区別することなく、並行して行うことができる。
【0208】
なお、図16の位置情報提供装置1000においても、特に限定されないが、測位信号受信からディスプレイ(図16では図示せず)に表示される情報の生成までの信号処理において、アンテナ1010、バンドパスフィルタ1020、低雑音アンプ(LNA)1030、ダウンコンバータ1040、バンドパスフィルタ1050、A/Dコンバータ1060、コリレータ1070は、ハードウェアにより構成され、測位のための演算処理(図12で説明される制御処理)は、メモリ1090に格納されたプログラムによりプロセッサ1080が実行することができる。
【0209】
<受信機の変形例2>
以下、本発明の受信機の変形例2について説明する。
【0210】
ここでは、携帯電話機を位置情報提供装置100として、使用する場合について説明する。
【0211】
変形例2に係る位置情報提供装置は、従来の携帯電話機において、ソフトウェアの変更を行うことで、本願発明の位置情報提供装置とするものである。ここで、変形例2に係る位置情報提供装置は、屋内送信機に含まれるデータに基づいて位置を特定する代わりに、ショートIDメッセージをミディアムIDメッセージに基づいて、その送信機に関する情報を提供する装置であるローカルサーバ204に送信する場合に、位置情報を取得できる処理を携帯電話網を用いた通信とする。そして、本実施の形態によると、ショートIDメッセージおよびミディアムIDメッセージによっても位置を特定することができる。一般には、携帯電話機が発信する信号によって、携帯電話機の位置は、その信号を受信した基地局のエリアとして特定されるが、本実施の形態によって、その位置を特定することができる。これにより、たとえば、基地局の設置数が少ない地方などでも、当該ショートIDメッセージおよびミディアムIDメッセージによって、携帯電話機の位置を精度良く特定することが可能となる。
【0212】
なお、衛星からの測位信号に基づいて、位置の測位をする構成については共通であるので、以下では、主として、ショートIDメッセージおよびミディアムIDメッセージを屋内送信機から受信した場合の動作について説明する。
【0213】
図17は、本実施の形態に係る位置情報提供装置の使用態様を表わす図である。当該位置情報提供装置は、携帯電話1200として実現される。携帯電話1200は、屋内送信機1210によって発信された測位信号を受信できる。屋内送信機1210は、インターネット1220に接続されている。インターネット1220には、屋内送信機1210の情報を提供可能な情報提供サーバ1230(図1のローカルサーバ204に相当)が接続されている。情報提供サーバ1230には、ショートIDメッセージとこれにそれぞれ対応する位置関連情報とがデータベースに登録されているものとする。インターネット1220には、携帯電話1200との通信を行なう基地局1240も接続されている。
【0214】
携帯電話1200が、屋内送信機1210によって発信された信号を受信すると、その信号の中から、ショートIDメッセージおよびミディアムIDメッセージを取得する。携帯電話1200は、そのショートIDメッセージをミディアムIDメッセージに基づいて情報提供サーバ1230に対して送信する。
【0215】
情報提供サーバ1230は、そのショートIDメッセージを認識すると、当該ショートIDメッセージに関連付けられているデータベースを参照して、そのIDに関連する位置関連情報を読み出す。情報提供サーバ1230が、そのデータを基地局1240に対して送信すると、基地局1240は、そのデータを発信する。携帯電話1200は、そのデータの着信を検知すると、携帯電話1200の使用者による閲覧操作に従って、そのデータから、送信機1250の位置や当該位置と関連する情報を取得することができる。
【0216】
ここで、図18を参照して、携帯電話1200の構成について説明する。図18は、携帯電話1200のハードウェア構成を表わすブロック図である。携帯電話1200は、各々が電気的に接続された、アンテナ1308と、通信装置1302と、CPU1310と、操作ボタン1320と、カメラ1340と、フラッシュメモリ1344と、RAM1346と、データ用ROM1348と、メモリカード駆動装置1380と、音声信号処理回路1370と、マイク1372と、スピーカ1374と、ディスプレイ1350と、LED(Light Emitting Diode)1376と、データ通信IF1378と、バイブレータ1384とを含む。
【0217】
アンテナ1308によって受信された信号は、通信装置1302によってCPU1310に転送される。CPU1310は、その信号を音声信号処理回路1370に転送する。音声信号処理回路1370は、その信号に対して予め規定された信号処理を実行し、スピーカ1374に処理後の信号を送出する。スピーカ1374は、その信号に基づいて音声を出力する。
【0218】
マイク1372は、携帯電話1200に対する発話を受け付けて、発話された音声に対応する信号を音声信号処理回路1370に対して出力する。音声信号処理回路1370は、その信号に基づいて通話のために予め規定された信号処理を実行し、処理後の信号をCPU1310に対して送出する。CPU1310は、その信号を送信用のデータに変換し、通信装置1302に対して送出する。通信装置1302がアンテナ1308を介してその信号を発信すると、基地局1240は、その信号を受信する。
【0219】
フラッシュメモリ1344は、CPU1310から送られるデータを格納する。逆に、CPU1310は、フラッシュメモリ1344に格納されているデータを読み出し、そのデータを用いて予め規定された処理を実行する。
【0220】
RAM1346は、操作ボタン1320に対して行なわれた操作に基づいてCPU13
10によって生成されるデータを一時的に保持する。データ用ROM1348は、携帯電話1200に予め定められた動作を実行させるためのデータあるいはプログラムを格納している。CPU1310は、データ用ROM1348から当該データあるいはプログラムを読み出し、携帯電話1200に予め定められた処理を実行させる。
【0221】
メモリカード駆動装置1380は、メモリカード1382の装着を受け付ける。メモリカード駆動装置1380は、メモリカード1382に格納されているデータを読み出し、CPU710に送出する。逆に、メモリカード駆動装置1380は、CPU1310によって出力されるデータを、メモリカード1382において確保されたデータ格納領域にデータを書き込む。
【0222】
音声信号処理回路1370は、前述のような通話に用いられる信号に対する処理を実行する。なお、CPU1310と音声信号処理回路1370とが一体として構成されていてもよい。
【0223】
ディスプレイ1350は、CPU1310から出力されるデータに基づいてそのデータによって規定される画像を表示する。たとえば、フラッシュメモリ1344が情報提供サーバ1230にアクセスするためのデータ(たとえばURL)を格納している場合、ディスプレイ1350は、そのURLを表示する。
【0224】
LED1376は、CPU1310からの信号に基づいて予め定められた発光動作を実現する。たとえば、LED1376が複数の色を表示可能な場合には、LED1376は、CPU1310から出力される信号に含まれるデータに基づいて、そのデータに関連付けられている色で発光する。
【0225】
データ通信IF1378は、データ通信用のケーブルの装着を受け付ける。データ通信IF1378は、CPU1310から出力される信号を当該ケーブルに対して送出する。あるいは、データ通信IF1378は、当該ケーブルを介して受信されるデータをCPU1310に対して送出する。
【0226】
バイブレータ1384は、CPU1310から出力される信号に基づいて予め定められた周波数で発信動作を実行する。携帯電話1200の基本的な動作は、当業者にとって容易に理解できるものである。したがって、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0227】
携帯電話1200は、さらに、測位信号受信用のアンテナ1316と、測位信号受信フロントエンド部1314とを備える。
【0228】
ここで、測位信号受信フロントエンド部1314は、図13で説明した位置情報提供装置100の構成のうち、ハードウェアで実現されるとしたアンテナ402、RFフロント回路404、ダウンコンバータ406、A/Dコンバータ408を含む。一方、位置情報提供装置100の構成のうちソフトウェアで実現されるとしたベースバンドプロセッサ410およびナビゲーションプロセッサ430の処理は、フラッシュメモリ1344からRAM1346にロードされたプログラムによりCPU1310上の測位処理部1312が実行することができる。なお、ここでも、コリレータ部412の処理については、ソフトウェアの代わりにハードウェアにより実現される構成とすることもできる。なお、ハードウェアの構成およびソフトウェアの構成については、図16で説明した位置情報提供装置1000と同様の構成とすることもできる。
【0229】
図19を参照して、情報提供サーバ1230の具体的な構成について説明する。図19は、情報提供サーバ1230のハードウェア構成を表わすブロック図である。情報提供サ
ーバ1230は、たとえば、周知のコンピュータシステムによって実現される。
【0230】
情報提供サーバ1230は、主たるハードウェアとして、CPU1410と、情報提供サーバ1230の使用者による指示の入力を受け付けるマウス1420,キーボード1430と、CPU1410によるプログラムの実行により生成されたデータ、あるいはマウス1420もしくはキーボード1430を介して入力されたデータを一時的に格納するRAM1440と,大容量のデータを不揮発的に格納するハードディスク1450と,CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)駆動装置1460と、モニタ1480と、
通信IF1470とを含む。当該ハードウェアは、相互にデータバスによって接続されている。CD−ROM駆動装置1460には、CD−ROM1462が装着される。
【0231】
情報提供サーバ1230を実現するコンピュータシステムにおける処理は、当該ハードウェアおよびCPU1410によって実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、ハードディスク1450に予め格納されている場合がある。また、ソフトウェアは、CD−ROM1460にその他のデータ記録媒体に格納されて、プログラム製品として流通している場合もある。あるいは、ソフトウェアは、いわゆるインターネットに接続されている他の情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラム製品として提供される場合もある。このようなソフトウェアは、CD−ROM駆動装置1460その他のデータ読取装置によってそのデータ記録媒体から読み取られて、あるいは通信IF1470を介してダウンロードされた後、ハードディスク1450に一旦格納される。そのソフトウェアは、CPU1410によってハードディスク1450から読み出され、RAM1440に実行可能なプログラムの形式で格納される。CPU1410は、そのプログラムを実行する。
【0232】
図19に示される情報提供サーバ1230を実現するコンピュータシステムのハードウェアは、一般的なものである。したがって、本発明に係る情報提供サーバ1230の本質的な部分は、RAM1440、ハードディスク1450、CD−ROM1462その他のデータ記録媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるとも言える。なお、上記コンピュータシステムのハードウェアの動作は周知である。したがって、詳細な説明は繰り返さない。
【0233】
なお、記録媒体としては、前述のCD−ROM1462、ハードディスク1450などに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)、光カード、マスクROM、EPROM、EEPR
OM、フラッシュROMなどの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持可能な媒体でもよい。
【0234】
また、ここでいうプログラムとは、CPU1410によって直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラムなどを含む。
【0235】
ハードディスク1450には、上述のとおり、ショートIDメッセージとこれにそれぞれ対応する位置関連情報とがデータベースに登録されている。
【0236】
以上のようにして、本実施の形態に係る位置情報提供システムでも、地上または地下に設置された送信機から発信される信号は、状況によって、ショートIDメッセージおよびミディアムIDメッセージのデータを含んでいる。このデータは、当該送信機の位置情報を提供するサーバ装置において、位置関連情報に関連付けられて格納されている。位置情報提供装置として機能する携帯電話1200は、ショートIDメッセージを当該サーバ装置に送信することにより、屋内送信機の位置情報または屋内送信機の位置に関連する情報を取得する。このような情報の提供方法を利用した場合、送信機の位置情報を当該送信機自身に保持させる必要がないため、送信機の設置場所を容易に変更することができる。
[地上補完信号の信号仕様の変形例]
なお、地上補完信号の信号仕様として、図5〜図12を参照して説明したが、以下に説明するような他の地上補完信号の信号仕様を採用することも可能である。
【0237】
以下、図5〜図12で説明した地上補完信号の信号仕様と異なる点を中心に、「地上補完信号の信号仕様の変形例」について説明する。
【0238】
i)屋内位置情報の高信頼性確保(誤同期の防止)および屋内位置情報の高信頼性確保(誤捕捉の防止)のための構成
変形例では、フレーム先頭ワードを除く各ワード中に、所定ビット長のカウンタビット、たとえば、3ビットのカウンタビットを付与し、送信されるワードごとに値をインクリメントする。このカウント値は、たとえば、111までカウントアップしたら000からカウントアップを繰り返す。
【0239】
また、フレーム先頭ワードについては、これに含まれる屋内送信機用のメッセージのプリアンブルを、GPS及びQZSS信号のプリアンブルと異なる値に設定する。
【0240】
異なるプリアンブルにより、誤捕捉を速やかに認識することができるとともに、カウントアップにより、プリアンブルとワード尾部のパリティの関係が、所定の場所以外で偶然に一致して繰り返し出現するケースを排除し、確実にフレームの先頭を検出し、フレーム同期を確立して、誤った位置情報が出力されることを防止する。
【0241】
ii)屋内外識別支援フラグ(受信機の省電力化)
マルチコリレータにより、屋内外の信号を常時サーチ、捕捉追尾することは携帯電話などの省電力が要求される機器にとって負担が大きい。屋内では、屋内送信機のみをサーチし、屋外では衛星信号と少なくとも1チャンネルの屋内信号のコードサーチを行なうようにすることが望ましい。メッセージ中に1ビットの屋内外識別支援フラグを含み、屋外との境界セル及び屋外に屋内送信機が設置される場合に1ビットを立てることとし、受信機は本ビットが1のときは屋外の衛星を捕捉するためのコードサーチを開始し、0のときは屋外の衛星を捕捉するためのコードサーチを終了する。
【0242】
屋内外識別支援フラグについて、より詳しく説明すると以下のとおりである。
携帯電話に搭載されている一般的なGPS受信機は、たとえば8チャンネルを有し、同時に8衛星を捕捉・追尾することができる。また、通常これらの受信機では複数のコリレータによって衛星捕捉のための周波数及びコードサーチの時間を短縮している。
【0243】
屋内外を移動する際の位置情報取得時間を短縮するためには位置情報提供装置は常時、複数コリレータで同時に衛星からの第1の測位信号と屋内送信機からの第2の測位信号とをサーチしなければならない。
【0244】
この通常時においては、例えば受信機の複数コリレータのうちの所定の割合、たとえば、2割(上記のチャンネル数の例では、たとえば、2チャンネルに相当)が屋内送信機に割り当てられているPRNコードのサーチを行い、残りの割合、つまり8割のコリレータ(上記の例では、たとえば、6チャンネルに相当)が衛星に割り当てられたPRNコードを用いてサーチを行う。
【0245】
ここで、このような割合で常時サーチするのは、第2の測位信号を捕捉できた場合は、そのメッセージから得た位置情報から直ちに位置情報を出力することができるので、屋内に入って速やかに位置情報を得るためには、2割程度のコリレータで屋内送信機のコードサーチを常時行うことが望ましい、との事情による。もしも、屋内送信機コードを常時サーチしていない場合、屋内に移動してGPSが受信できなくなった場合、順次衛星捕捉のためのサーチを実施した結果、GPSが受信できないと判断してから、屋内送信機用コードのサーチを開始することになるが、屋内送信機からの位置情報の取得に移行する前に、衛星からの測位信号を屋内で受信、測位してしまうため、完全に衛星からの測位信号が受信できなくなるまで、マルチパスや反射波の影響によって大きな誤差を持つ位置情報が出力されることになってしまう。
【0246】
さらに、屋内から屋外に移動する場合に速やかに衛星捕捉を行うためには、屋内においても、屋内送信機に割り当てられたPRNコードだけでなく、衛星からのPRNコードによる衛星信号サーチを行わなければならないが、この場合は屋内送信機割当コードをサーチするコリレータ数の比率を大きくする方が望ましい。例えば2割が屋外の衛星割当コードで8割が屋内送信機コードのサーチに振り向けられるのが望ましい。
【0247】
しかし、携帯電話などバッテリによって駆動される位置情報提供装置では、常時全てのコリレータによるサーチ、信号捕捉、追尾を行うことは非効率的である。完全にユーザが屋内にいることがわかっていれば、サーチを行うコリレータの数を絞り、消費電力を節約することが可能になる。例えば、2割程度のコリレータのみを動作させて、すなわち、上記のチャンネル数の例では2チャンネル程度の屋内送信機をサーチ、捕捉、追尾を行えば、ユーザはストレスなく短時間に屋内において位置情報を取得でき、かつバッテリの消費を抑えることができる。
【0248】
そこで、屋内送信機から送信される信号に「屋内外識別支援フラグ」(BDビット)を含ませ、このBDビットはユーザが屋内と屋外を行き来する際にその境界にあたる1〜2個の屋内送信機では1を、それ以外の屋内送信機(完全に屋内に位置する)では0が送信されるように構成する。
【0249】
受信機はこのBDビットが1であった場合には、屋外用の測位信号のサーチを開始し、0の場合には、オフすることで、効率的にバッテリ消費の低減と屋内外を移動した場合の位置情報取得時間短縮を両立させることができる。
【0250】
(地上補完信号の信号仕様)
以下では、屋内送信機200−1から送信される信号(地上補完信号)の変形例の構造についてさらに説明する。
【0251】
変形例の地上補完信号は、衛星からの測位信号(たとえば、GPS及びQZSSのL1帯C/Aコード)に対応したRF特性を持つ。航法メッセージの構造は30ビットのワード単位である点は、衛星からの測位信号と同一であるが、一方で早いTTRM時間を提供するために短い区切りのフレーム構造を持つ。この点は、図5〜図12で説明した地上補完信号の信号仕様と同様である。
【0252】
したがって、(1)RF特性は同様であるので、説明は省略し、メッセージ特性について、以下説明する。
【0253】
(3)メッセージ特性
(3−1)ワード構造
1ワードは、衛星からの測位信号のワード長と同一のワード長、たとえば、30ビットで構成される。1ワードが30ビットの場合、1ワードには、たとえば、21ビットのデータビットと、3ビットのワードカウンタ、6ビットのパリティが含まれる。
【0254】
(3−2)ワードカウンタ
フレーム先頭ワードを除く各ワードには、ワードカウンタがある。屋内送信機200−1のFPGA245は、このワードカウンタの値を、ワードの送信毎に、所定数ずつ、たとえば、1ずつインクリメントする。
【0255】
このワードカウンタにより、ワードやフレームの区切り識別を支援する。区切り識別の支援のために、この3ビットの値はプリアンブルの上位3ビットと同じ値をとらずに、スキップする。
【0256】
(3−3)パリティ符号、(2−4)パリティアルゴリズムおよびパリティチェックアルゴリズムについても、図5〜図12で説明した地上補完信号の信号仕様と同様である。
【0257】
(3−4)フレーム構造
図20は、変形例の地上補完信号のフレーム構造を示す図である。
【0258】
1フレームが1ワードの整数倍で構成され、以下の形式を持つ。なお、このような構成のフレームが順次繰り返して送信される。
【0259】
すなわち、第1のワードに、所定ビット長、たとえば、8ビットのプリアンブルがあり、それに所定ビット長、たとえば、3ビットのメッセージタイプID(MID)が続く。残りのビットは、上述したフレーム先頭ワードを除くワードごとの3ビットのワードカウンタと、ワードごとの6ビットのパリティを除いて全てデータビットである。
【0260】
図20においては、1フレームがそれぞれ、1ワード、2ワード、3ワードで構成される場合を図示している。
【0261】
つまり、変形例の地上補完信号でも、屋内送信機200から送信される地上補完信号は、衛星からの測位信号と、ワード構成までは共通であるが、フレームがいくつのワードから構成されるかについては異なっており、衛星からの測位信号の1フレームに含まれるワード数よりも、少ないワード数によりフレームが構成される。
【0262】
(3−5)プリアンブル
各フレームの第1ワード先頭に付与されている8ビットのプリアンブルは、所定のビットパターンを有する。
【0263】
このプリアンブルにより、フレームの区切り識別を支援する。このプリアンブルのパターンは、衛星からの測位信号のプリアンブルのビットパターンとは異なり、GPSやQZSSの衛星測位信号との識別が可能なようになっている。
【0264】
(3−6)メッセージタイプID(MID)
各フレームの第1ワードのプリアンブルに続いて付与されている上述した3ビットのメッセージタイプID(MID)は、そのワードが含まれるフレームのフレーム長およびその内容を示している。
【0265】
MIDの値と、フレーム長および内容との対比は、変形例の地上補完信号でも図6に示したものと同様である。
【0266】
(3−6−1)メッセージの内容
(3−6−1−1)メッセージタイプID”000” :位置情報1
メッセージタイプIDが、”000”の時、そのフレーム長は3ワードであり、その内容は位置情報である。
【0267】
図21は、メッセージタイプIDが、”000”の時の変形例の地上補完信号のフレーム構成を示す図である。また、図22は、フレーム内のデータの内容、ビット長、LSB(Least Significant Bit)の対応する数値、表現する範囲の例をそれぞれ示す図である。
【0268】
図21および図22を参照して、その内容を説明すると以下のとおりである。
i)階数
第1ワードのビット12〜19は、その送信機が設置されている建物の階数を意味しており、その単位は階である。
【0269】
ビット長は8ビットであり、符号無しであって、LSBは1階である。―50階のオフセットを設定して、―50階〜+204階を表現するものとする。
【0270】
ii)緯度
第2ワードのビット1〜21をMSB(Most Significant Bit)側としてビットが並べられており、第1ワードのビット20,21を付加した合計23ビットは、その送信機の緯度を意味しており、その単位は「度」である。
【0271】
これは符号付きであって、LSBは180/1023[度]〜0.000021[度]であり、―90度〜+90度を表現するものとする。南北方向で約2.4mに相当する。
【0272】
iii)経度
第3ワードのビット1〜21をMSB側とし、第1ワードのビット22〜24を付加した合計24ビットは、その送信機の経度を意味しており、その単位は「度」である。
【0273】
これは符号付きであって、LSBは360/1024[度]〜0.000021[度]であり、―180度〜+180度を表現するものとする。赤道上において、東西方向で約2.4mに相当する。
【0274】
(3−6−1−2)メッセージタイプID”001” :位置情報2
メッセージタイプIDが、”001”の時、そのフレーム長は4ワードであり、その内容は位置情報である。
【0275】
図23は、メッセージタイプIDが、”001”の時のフレーム構成を示す図である。また、図24は、フレーム内のデータの内容、ビット長、LSBの対応する数値、表現する範囲の例をそれぞれ示す図である。
【0276】
図23および図24を参照して、その内容を説明すると以下のとおりである。
i)階数
第1ワードのビット12〜20は、その送信機が設置されている建物の階数を意味しており、その単位は「階」である。
【0277】
ビット長は9ビットであり、符号無しであって、LSBは0.5階である。―50階のオフセットを設定して、―50階〜+205階を表現するものとする。
【0278】
ii)緯度
第2ワードのビット4〜24をMSBとし、第4ワードのビット18〜20を付加した合計24ビットは、その送信機の緯度を意味しており、その単位は「度」である。
【0279】
この値は、符号付きであって、LSBは180/1024[度]〜0.000011[度]であり、―90度〜+90度を表現するものとする。これは、南北方向で約1.2mに相当する。
【0280】
iii)経度
第3ワードのビット4〜24をMSBとし、第4ワードのビット21〜24を付加した合計25ビットは、その送信機の経度を意味しており、その単位は「度」である。
【0281】
これは符号付きであって、これは符号付きであって、LSBは360/1025[度]〜0.000011[度]であり、―180度〜+180度を表現するものとする。赤道上において、東西方向で約1.2mに相当する。
【0282】
iv)高度
第4ワードのビット1〜12ビットは、その送信機の高度を意味しており、その単位は「m(メートル)」である。
【0283】
これは符号無しであって、LSBは1mである。―95mのオフセットを設定して、―95m〜+4000mを表現するものとする。
【0284】
(3−6−1−3)メッセージタイプID”011”: ショートID
メッセージタイプIDが、”011”の時、そのフレーム長は1ワードであり、その内容はショートID(IDs)である。
【0285】
図25は、メッセージタイプIDが、”011”の時のフレーム構成を示す図である。
ショートIDに対応するフレームでは、12ビットのショートIDメッセージが送信される。さらに、このフレームには、上述した「屋内外識別支援フラグ」(BDビット)が含まれる。
【0286】
ここで、ショートIDメッセージの内容や用途は、図11で説明した地上補完信号と同様である。
【0287】
(3−6−1−4)メッセージタイプID”100” :ミディアムID
メッセージタイプIDが、”100”の時、そのフレーム長は2ワードであり、その内容はミディアムID(IDM)である。
【0288】
図26は、メッセージタイプIDが、”100”の時のフレーム構成を示す図である。
ミディアムIDに対応するフレームでは、12ビットのミディアムIDメッセージと、21ビットのミディアムIDメッセージが送信される。さらに、このフレームにも、上述した「屋内外識別支援フラグ」(BDビット)が含まれる。
【0289】
ミディアムIDメッセージの内容や用途は、図12で説明した地上補完信号と同様である。
【0290】
したがって、位置情報提供装置(たとえば、携帯電話機)100−5は、ショートIDメッセージおよびミディアムIDメッセージを受信すると、通信網を介して、当該メッセージに対応する位置関連情報を、ローカルサーバ204に照会することにより取得する。
【0291】
以上説明したように本発明の実施の形態に従うと、その実施の態様に応じて、以下のような効果i)〜v)のうちの少なくとも1つの効果が奏される。
【0292】
i)GPS C/A信号との共通化
屋内信号と屋外の衛星からの信号を受信するチャンネルのハードウェア構成を同一にできるため、屋外、屋内用に専用のチャンネルを設ける必要がなく、受信環境に応じて、屋内外信号をサーチ、捕捉追尾するチャンネルを動的に切り替えることがより容易になる。受信機リソースを効率的に使用することができるため、消費電力の制約が大きい携帯機器、たとえば携帯電話にとって有利である。
【0293】
ii)TTRM(Time To Read Message)短縮
ユーザが位置情報取得ボタンを押してから、位置情報が取得されるまでの時間を短縮することができる。
【0294】
iii)利用目的に応じた自在性
通常の衛星からの測位信号(たとえば、GPS C/A信号)の航法メッセージの固定フォーマットを変更し、フレームの先頭ワードは所定ビットの識別情報(メッセージタイプID)を有し、利用目的、用途に応じて、送信機設置者が送信するメッセージの内容と送信順、頻度を設定できる。
【0295】
iv)屋内位置情報の高信頼性確保(誤同期の防止)
誤ったフレーム同期による誤った位置情報出力の可能性を本発明の方式によってフレーム同期を行うことによって排除することができる。緊急通報時の位置情報通知には、確実な位置情報取得が要求されるが、本方式採用により、屋内測位方式の信僻性を改善することができる。
【0296】
v)屋内位置情報の高信頼性確保(誤捕捉の防止)
通常の衛星からの測位信号(たとえば、GPS C/A信号)を受信した際に受信機内で行われる本発明の処理により、フレーム同期処理の最初のビット抽出とプリアンブルサーチで、誤捕捉を認識することができる。
【0297】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0298】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る位置情報提供システム10の構成を表わす図である。
【図2】屋内送信機200−1のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図3】屋内送信機200−1が備えるEEPROM243におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。
【図4】GPS衛星に搭載される送信機によって発信されるL1帯のC/Aコードの信号500の構成を表わす図である。
【図5】地上補完信号のフレーム構造を示す図である。
【図6】MIDの値と、フレーム長および内容との対比を示している。
【図7】メッセージタイプIDが、”000”の時のフレーム構成を示す図である。
【図8】フレーム内のデータの内容、ビット長、LSB(Least Significant Bit)の対応する数値、表現する範囲の例をそれぞれ示す図である。
【図9】メッセージタイプIDが、”001”の時のフレーム構成を示す図である。
【図10】フレーム内のデータの内容、ビット長、LSBの対応する数値、表現する範囲の例をそれぞれ示す図である。
【図11】メッセージタイプIDが、”011”の時のフレーム構成を示す図である。
【図12】メッセージタイプIDが、”100”の時のフレーム構成を示す図である。
【図13】位置情報提供装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図14】位置情報提供装置100が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。
【図15】位置情報提供装置100のディスプレイ440における画面の表示を表わす図である。
【図16】本発明の変形例1に係る位置情報提供装置1000の構成を表わすブロック図である。
【図17】本発明の変形例2に係る位置情報提供装置が使用される態様を表わす図である。
【図18】本発明の変形例2に係る携帯電話1200のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る情報提供サーバ1230のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図20】変形例の地上補完信号のフレーム構造を示す図である。
【図21】メッセージタイプIDが、”000”の時の変形例の地上補完信号のフレーム構成を示す図である。
【図22】フレーム内のデータの内容、ビット長、LSB(Least Significant Bit)の対応する数値、表現する範囲の例をそれぞれ示す図である。
【図23】メッセージタイプIDが、”001”の時のフレーム構成を示す図である。
【図24】フレーム内のデータの内容、ビット長、LSBの対応する数値、表現する範囲の例をそれぞれ示す図である。
【図25】メッセージタイプIDが、”011”の時のフレーム構成を示す図である。
【図26】メッセージタイプIDが、”100”の時のフレーム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0299】
10 位置情報提供システム、110,111,112 GPS衛星、120,121,122 送信機、100−1,100−2,100−3,100−4,1000,1160,1170 位置情報提供装置、130 ビル、200−1,200−2,200−3,1110,1120,1130,1210 屋内送信機、210 無線I/F,220 外部同期リンクポート,221 外部クロックポート,230 基準クロックI/Oブロック,240 デジタル処理ブロック,250 アナログブロック,1010,1308 アンテナ、1140,1150 領域、1220 インターネット、1382 メモリカード、1462 CD−ROM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の衛星からのスペクトラム拡散信号である第1の測位信号を用いて、位置情報を提供することが可能な位置情報提供システムであって、
屋内送信機を備え、
前記屋内送信機は、
前記屋内送信機が設置される場所を特定するための位置データを格納する記憶手段と、
前記位置データを含む第2の測位信号をスペクトラム拡散信号として生成する生成手段と、
前記スペクトラム拡散信号を送信する送信手段とを含み、
前記位置情報提供システムは、位置情報提供装置をさらに備え、
前記位置情報提供装置は、
スペクトラム拡散信号を受信する受信手段と、
前記第1および第2の測位信号についての符号パターンに基づいて、前記受信手段により受信されたスペクトラム拡散信号に対応する符号パターンを特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された符号パターンを用いて復調することにより得られた信号に基づいて、前記第1および第2のいずれの測位信号が受信されたかを判断する判断手段と、
前記判断の結果に応じて処理を切り換えることにより、前記位置情報提供装置の位置情報を導出する位置情報導出手段と、
前記位置情報導出手段によって導出された位置情報を出力する出力手段とを備え、
前記第2の測位信号は、前記第1の測位信号よりも短い周期で同一内容のメッセージを繰り返す、位置情報提供システム。
【請求項2】
前記第2の測位信号は、ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、複数のワードを各々が含む複数のフレームから構成され、各フレームが含むワード数は可変に設定され、
前記フレームを構成するワードは、当該フレームを構成する前記ワード数を示す識別情報を有するワードを含む、請求項1記載の位置情報提供システム。
【請求項3】
前記第2の測位信号は、ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、複数のワードを各々が含む複数のフレームから構成され、
各前記フレームの先頭ワードは、受信時にフレーム同期をとるためのプリアンブル部分を含み、
各前記フレームの少なくとも前記先頭ワード以外のワードは、ワードデータの生成ごとに更新されるカウントデータを含む、請求項1または2記載の位置情報提供システム。
【請求項4】
ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、
前記第1の測位信号は、第1の複数個のワードを各々が含む複数の第1のフレームから構成され、各前記第1のフレームは、受信時にフレーム同期をとるための第1のプリアンブル部分を含み、
前記第2の測位信号は、第2の複数個の前記ワードを各々が含む複数の第2のフレームから構成され、
各前記第2のフレームは、受信時にフレーム同期をとるための前記第1のプリアンブルとは異なるパターンを有する第2のプリアンブル部分を含む、請求項1〜3いずれか1項に記載の位置情報提供システム。
【請求項5】
前記位置情報導出手段は、
単一の前記屋内送信機によって送信された前記第2の測位信号が受信された場合に、前記復調することにより得られた信号から前記位置データを取得し、
前記第2の測位信号が受信されない場合であって、複数の前記第1の測位信号が受信されたときに、複数の各前記スペクトラム拡散信号に基づいて前記位置情報を算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の位置情報提供システム。
【請求項6】
前記位置情報提供装置は、通信回線を介して、識別データに関連付けられた位置関連情報を提供する通信装置と通信可能であり、
前記受信手段が前記第2の測位信号を受信すると、前記位置情報導出手段は、前記識別データに基づいて前記通信装置と通信することにより、前記識別データに関連付けられた位置関連情報を取得する、請求項2に記載の位置情報提供システム。
【請求項7】
複数の衛星からのスペクトラム拡散信号である第1の測位信号とコンパチブルな第2の測位信号を用いて、位置情報を提供することが可能な屋内送信機であって、
前記屋内送信機が設置される場所を特定するための位置データを格納する記憶手段と、
前記位置データを含む第2の測位信号をスペクトラム拡散信号として生成する生成手段と、
前記スペクトラム拡散信号を送信する送信手段とを備え、
前記生成手段は、前記第2の測位信号を、前記第1の測位信号よりも短い周期で同一内容のメッセージを繰り返すように生成する、屋内送信機。
【請求項8】
前記第2の測位信号は、ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、複数のワードを各々が含む複数のフレームから構成され、各フレームが含むワード数は可変に設定され、
前記フレームを構成するワードは、当該フレームを構成する前記ワード数を示す識別情報を有するワードを含む、請求項7記載の屋内送信機。
【請求項9】
前記第2の測位信号は、ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、複数のワードを各々が含む複数のフレームから構成され、
各前記フレームの先頭ワードは、受信時にフレーム同期をとるためのプリアンブル部分を含み、
各前記フレームの少なくとも前記先頭ワード以外のワードは、ワードデータの生成ごとに更新されるカウントデータを含む、請求項7または8記載の屋内送信機。
【請求項10】
ワードを誤り検出の実行されるデータの送信単位とするとき、
前記第1の測位信号は、第1の複数個のワードを各々が含む複数の第1のフレームから構成され、各前記第1のフレームは、受信時にフレーム同期をとるための第1のプリアンブル部分を含み、
前記第2の測位信号は、第2の複数個の前記ワードを各々が含む複数の第2のフレームから構成され、
各前記第2のフレームは、受信時にフレーム同期をとるための前記第1のプリアンブルとは異なるパターンを有する第2のプリアンブル部分を含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の屋内送信機。
【請求項11】
前記生成手段は、位置関連情報と関連づけられた識別データを含む第2の測位信号を生成する、請求項7に記載の屋内送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−133731(P2009−133731A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310350(P2007−310350)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(503107484)測位衛星技術株式会社 (15)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(507395692)ライトハウステクノロジー・アンド・コンサルティング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】