説明

位置推定システム、位置推定装置及び位置推定プログラム

【課題】広い空間内においても、少ない計算量で精度良く端末の位置を推定することができる位置推定システムを提供する。
【解決手段】本発明は、複数の無線送信手段から送信された無線信号を受信し、複数の無線信号の受信強度値と、各送信元の識別情報とを検出する受信強度検出手段を備える端末の位置を推定する位置推定システムであり、各無線送信手段の位置情報を、各無線送信手段の識別情報に対応付けて記憶する位置情報記憶手段と、検出された複数の受信強度値及び識別情報を端末から受け取り、端末における受信強度値が上位の無線送信手段の識別情報及び受信強度値を選択する候補選択手段と、選択された複数の無線送信手段からの各無線信号の端末における受信強度値と、位置情報記憶手段から取得した複数の無線送信手段の位置情報とに基づいて端末の位置を推定する位置推定手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定システム、位置推定装置及び位置推定プログラムに関し、例えば、オフィス等の室内環境下で、無線機能を有する端末の位置を推定する位置推定システム、位置推定装置及び位置推定プログラムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
例えばオフィス等の室内環境下において、無線端末の位置を計測する方法としては、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1の記載技術は、端末が空間内の複数の基地局からの信号を受信し、その受信強度を計測する。そして、端末の位置を測定する装置が、端末により計測された受信強度を、無線ネットワークの確率モデルに与え、空間内の任意点における位置の妥当性を確率値として計算し、これに基づいて端末の位置を決定するというものである。なお、上記の確率モデルは、あらかじめ、空間内の複数のサンプル点で計測した複数の基地局からの信号の受信強度に基づいて構築されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006−517763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の記載技術によれば、空間全体に亘って確率値の計算が必要となるため、対象とする空間が広くなればなるほど、端末の位置を決定するための確率値の計算量が増大するとう問題が生じ得る。
【0006】
さらに、特許文献1の記載技術は、対象とする空間が広い場合には、空間内で隣接する地点間での受信強度に明確な差が現れない場合があり、端末の位置の推定精度が低下するという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、広い空間内においても、少ない計算量で精度良く端末の位置を推定することができる位置推定システム、位置推定装置及び位置推定プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の位置推定システムは、複数の無線送信手段から送信された無線信号を受信し、複数の無線信号の受信強度値と、それぞれの送信元の識別情報とを検出する受信強度検出手段を備える端末の位置を推定する位置推定システムにおいて、(1)各無線送信手段の位置情報を、各無線送信手段の識別情報に対応付けて記憶する位置情報記憶手段と、(2)受信強度検出手段により検出された複数の受信強度値及び識別情報を端末から受け取り、端末における受信強度値が上位の無線送信手段の識別情報及び受信強度値を選択する候補選択手段と、(3)候補選択手段により選択された複数の無線送信手段からの各無線信号の端末における受信強度値と、位置情報記憶手段から取得した複数の無線送信手段の位置情報とに基づいて、端末の位置を推定する位置推定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
第2の本発明の位置推定装置は、複数の無線送信手段から送信された無線信号を受信し、複数の無線信号の受信強度値と、それぞれの送信元の識別情報とを検出する受信強度検出手段を備える端末の位置を推定する位置推定装置において、(1)各無線送信手段の位置情報を、各無線送信手段の識別情報に対応付けて記憶する位置情報記憶手段と、(2)受信強度検出手段により検出された複数の受信強度値及び識別情報を端末から受け取り、端末における受信強度値が上位の無線送信手段の識別情報及び受信強度値を選択する候補選択手段と、(3)候補選択手段により選択された複数の無線送信手段からの各無線信号の端末における受信強度値と、位置情報記憶手段から取得した複数の無線送信手段の位置情報とに基づいて、端末の位置を推定する位置推定手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
第3の本発明の位置推定プログラムは、複数の無線送信手段から送信された無線信号を受信し、複数の無線信号の受信強度値と、それぞれの送信元の識別情報とを検出する受信強度検出手段を備える端末の位置を推定するものであって、各無線送信手段の位置情報を、各無線送信手段の識別情報に対応付けて記憶する位置情報記憶手段を備えるコンピュータを、(1)受信強度検出手段により検出された複数の受信強度値及び識別情報を端末から受け取り、端末における受信強度値が上位の無線送信手段の識別情報及び受信強度値を選択する候補選択手段、(2)候補選択手段により選択された複数の無線送信手段からの各無線信号の端末における受信強度値と、位置情報記憶手段から取得した複数の無線送信手段の位置情報とに基づいて、端末の位置を推定する位置推定手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、広い空間内においても、少ない計算量で精度良く端末の位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態の位置推定システムの全体構成を示す全体構成図である。
【図2】第1の実施形態のポリゴン管理サーバ、位置推定装置、端末の内部構成を示す内部構成図である。
【図3】第1の実施形態のポリゴンの構築処理を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態の空間領域を上から見下ろした場合の位置推定装置2の配置を示す図である。
【図5】第1の実施形態の端末の位置を推定する処理を示すシーケンス図である。
【図6】第1の実施形態のポリゴンにおける位置推定ルールを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明の位置推定システム、位置推定装置及び位置推定プログラムの第1の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0014】
第1の実施形態は、例えばオフィス等の空間内に存在する端末の位置を推定する位置推定システムに本発明を適用した実施形態を例示する。
【0015】
(A−1)第1の実施形態の構成
(A−1−1)全体構成
図1は、第1の実施形態の位置推定システムの全体構成例を示す全体構成図である。図1において、第1の実施形態の位置推定システム10は、ポリゴン管理サーバ1、複数の位置推定装置2−1〜2−N(Nは正の整数)、端末3を少なくとも有して構成される。
【0016】
端末3は、無線通信機能を有する端末である。例えば、端末3は、携帯電話機やPHS端末やPDA等の携帯端末、移動可能なノート型パーソナルコンピュータ、マイクやリモコンや利用者の位置を検出させるための専用の位置被検出装置等の携帯機器などを適用することができる。
【0017】
位置推定装置2−1〜2−N(以下、位置推定装置2と呼ぶ)は、後述するポリゴン管理サーバ1から端末3の位置を推定するために必要な情報を取得し、端末3の位置を推定するものである。位置推定装置2が推定した端末3の位置データは、様々なアプリケーション等に利用することができるが、第1の実施形態では、位置データの利用については詳述しない。
【0018】
また、位置推定装置2は、無線ネットワーク上であれば、ポリゴン管理サーバ1上に搭載されるようにしてもよいし、又は専用装置として設けるようにしてもよいが、第1の実施形態では、例えば、無線信号を周期的に送出するアクセスポイント等の基地局に搭載される場合を例示する。
【0019】
ポリゴン管理サーバ1は、空間内に設けられる複数の位置推定装置2の位置を頂点として構成される多角形の領域(以下ポリゴンともいう)や、各領域を構成する位置推定装置の組み合わせ及び位置情報などのポリゴン情報を管理するものである。
【0020】
(A−1−2)各構成要素の内部構成
図2は、第1の実施形態の端末3、位置推定装置2、ポリゴン管理サーバ1の内部構成を示す内部構成図である。
【0021】
図2において、端末3は、通信部31、無線強度検出部32、動き検出部33を少なくとも有する。
【0022】
通信部31は、位置推定装置2との間で情報を授受する通信処理部又は装置である。通信部31は、位置推定装置2が周期的に送出する無線信号を受信するものであ。また、通信部31は、後述する無線強度検出部32から無線強度データを受け取ると、位置推定装置2に向けて送信するものである。
【0023】
ここで、無線強度データは、例えば、端末3の識別情報、端末3において受信した複数の位置推定装置2の無線強度を有するものである。
【0024】
また、通信部31は、位置推定装置2との間で無線通信を行うことができれば、種々の通信方式を広く適用することができ、例えば、無線LAN(IEEE802.11の標準化技術)、Bluetooth(登録商標:IEEE802.15の標準化技術)、ZigBee(登録商標:IEEE802.15.4の標準化技術)等を適用することができる。
【0025】
無線強度検出部32は、動き検出部33から無線強度検出指示データを受け取ると、位置推定装置2から送信された無線信号の受信強度を計測するものである。
【0026】
ここで、位置推定装置2から送信される無線信号には、位置推定装置2の識別情報が含まれている。無線強度検出部32は、無線信号に含まれる位置推定装置2の識別情報を検出し、識別情報毎の受信強度を検出する。また、無線強度検出部32は、識別情報毎の受信強度と、自端末の識別情報とを含む受信強度データを、通信部31に与えて送信させる。
【0027】
動き検出器33は、端末3の移動を検出するものであり、端末3の移動を検出すると、無線強度の検出を指示する無線強度検出指示データを、無線強度検出部32に与えるものである。これにより、無線強度の計測は、端末3の位置が変更したとき(すなわち端末3を所持する人が動いたとき)をトリガとすることができる。
【0028】
ここで、動き検出器33による端末3の動きを検出する方法としては、種々の方法を適用することができる。例えば、磁針センサにより磁石の回転により動きを検出する方法や、振動センサ等により振動検出により動きを検出する方法等を適用することができる。
【0029】
図2において、位置推定装置2は、通信部21、通信部22、ポリゴン決定要求部23、ポリゴン詳細データ管理部24、位置推定部25、ポリゴン詳細データ保持部26を少なくとも有する。
【0030】
通信部21は、ポリゴン管理サーバ1との間で情報を授受する通信処理部又は装置である。通信部21は、後述するポリゴン決定要求部23からポリゴン決定要求データを受け取ると、ポリゴン管理サーバ1に向けて送信するものである。また、通信部21は、ポリゴン管理サーバ1からポリゴン詳細データを受け取ると、ポリゴン詳細データをポリゴン詳細データ管理部24に与えるものである。
【0031】
ここで、通信部21は、ポリゴン管理サーバ1との間で通信することができれば、有線通信、無線通信のいずれであってもよい。また、通信プロトコルは、特に限定されるものではなく広く適用することができる。
【0032】
通信部22は、端末3との間で情報を授受する通信処理部又は装置である。通信部22は、周期的に、自装置2を識別する識別情報を含む所定の無線信号を送出するものである。また、通信部22は、端末3からの無線強度データを受信すると、受信した無線強度データをポリゴン決定要求部23に与えるものである。
【0033】
ポリゴン決定要求部23は、通信部22を通じて、端末3から無線強度データを受け取ると、ポリゴン決定要求データを通信部21に与えてポリゴン管理サーバ1に送信させるものである。
【0034】
ポリゴン詳細データ管理部24は、通信部21を通じて、ポリゴン管理サーバ1からポリゴン詳細データを受け取ると、そのポリゴン詳細データをポリゴン詳細データ保持部26に格納するものである。
【0035】
位置推定部25は、ポリゴン詳細データ保持部26に保持されるポリゴン詳細データを用いて、端末3の位置を推定するものである。ここで、位置推定部25による端末3の位置推定方法については、動作の項で詳細に説明するが、ポリゴン管理サーバ1から受け取った所定の位置推定ルールに従って行う。
【0036】
また、位置推定部25は、所定の位置推定ルールに従って端末3の位置を推定する際に、ポリゴン詳細データに含まれるポリゴン(多角形の領域)を構成する位置推定装置2の位置情報に基づいてポリゴンの大きさを求めて所定値と比較判定するポリゴン大きさ判定部251を有する。
【0037】
ポリゴン詳細データ保持部26は、ポリゴン詳細データを保持する記憶領域である。
【0038】
図2において、ポリゴン管理サーバ1は、通信部11、ポリゴン構成部12、ポリゴン決定部13、ポリゴン情報データベース14を少なくとも有する。
【0039】
通信部11は、位置推定装置2との間で情報を授受する通信処理部又は装置である。通信部11は、位置推定装置2からポリゴン決定要求データを受信すると、ポリゴン決定部13にポリゴン決定要求データを与えるものである。また、通信部11は、ポリゴン決定部13からポリゴン詳細データを受け取ると、ポリゴン詳細データを位置推定装置2に与えるものである。
【0040】
ポリゴン構成部12は、空間内に配置される複数の位置推定装置2の位置を頂点とする多角形の領域であるポリゴンを構成するものである。ポリゴン構成部12は、図2に示すように、ポリゴン構成データ生成部121、サンプル位置強度設定部122を少なくとも有する。
【0041】
ポリゴン構成データ生成部121は、空間内に配置された複数の位置推定装置2の位置を頂点とする局在化されたポリゴンの組み合わせを計算して、各ポリゴン構成を示すポリゴン構成データを生成し、ポリゴン情報データベース14に記憶するものである。
【0042】
ここで、ポリゴン構成データ生成部121は、例えば、空間内の位置推定装置2が配置されたとき、又は位置推定装置2の配置変更がされたときに、ポリゴンの組み合わせの計算を行うものとする。
【0043】
また、ポリゴン構成データとしては、例えば、位置推定装置2の位置を頂点とする各ポリゴンについて、少なくとも、各ポリゴンを構成する位置推定装置2の識別情報、位置情報等を対応付けたデータとすることができる。
【0044】
サンプル位置強度設定部122は、ポリゴン構成データ生成部121により求められた各ポリゴン付近の複数のサンプル位置で、当該ポリゴンを構成する各位置推定装置2からの無線信号の各受信強度を計測し、これら受信強度のデータを用いて、当該ポリゴン付近の空間の受信強度分布を求めるものである。また、サンプル位置強度設定部122は、上記のようにして求めた各ポリゴン付近の空間の受信強度分布のデータをポリゴン情報データベース14に記憶するものである。
【0045】
ポリゴン決定部13は、通信部11を通じて、位置推定装置2からポリゴン決定要求データを受け取ると、ポリゴン情報データベース14を参照して、端末3の位置を推定するためのポリゴンを決定するものである。また、ポリゴン決定部13は、決定したポリゴンに関するポリゴン詳細データを通信部11を介して位置推定装置2に与えるものである。
【0046】
ここで、ポリゴン詳細データは、ポリゴン決定部13が決定した各ポリゴンに関するデータであり、例えば、各ポリゴンを構成する位置推定装置2の位置情報、位置推定ルール、端末3の識別情報、端末3において受信した各位置推定装置2の無線強度を含むものである。
【0047】
また、ポリゴン決定部13は、図2に示すように、候補選択部131、位置推定ルール設定部123、ポリゴン詳細データ生成部133、代表位置推定装置決定部134を少なくとも有する。
【0048】
候補選択部131は、ポリゴン決定要求データに含まれている端末3における複数の位置推定装置2の受信強度に基づいて、ポリゴン情報データベース14を参照して、受信強度が大きい1又は複数のポリゴンを選択するものである。
【0049】
位置推定ルール設定部132は、端末3の位置を推定するための位置推定ルールを設定するものである。
【0050】
ポリゴン詳細データ生成部133は、候補選択部131により選択された各ポリゴンに関するポリゴン詳細データを生成するものである。
【0051】
代表位置推定装置決定部134は、候補選択部131により選択された各ポリゴンを構成する位置推定装置2のうち、代表とする位置推定装置2を決定するものである。この代表とする位置推定装置2に対して、ポリゴン詳細データを与えて端末3の位置を推定させる。
【0052】
ポリゴン情報データベース14は、ポリゴン構成データ、位置推定ルール、サンプル位置の受信強度などのポリゴン情報を記憶する記憶領域である。
【0053】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の位置推定システム10における位置推定処理の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0054】
以下では、ポリゴン情報データベース14の構築処理と、端末3の位置を推定する処理とに分けて説明する。
【0055】
(A−2−1)ポリゴン情報データベース14の構築処理
図3は、ポリゴン情報データベース14の構築処理を示すフローチャートである。
【0056】
ポリゴン管理サーバ1において、ポリゴン構成部12は、空間内に位置推定装置2が配置された場合、若しくは、位置推定装置2の配置変更が生じた場合に、空間内のポリゴン配置の構築を行う。
【0057】
ポリゴン構成部12では、ポリゴン構成データ生成部121が、空間内に配置された位置推定装置2の位置情報に基づき、位置推定装置2の位置を頂点とする多角形の領域の設定を行う(ステップS101)。
【0058】
この多角形の領域をポリゴンとし、ポリゴン構成データ生成部121が、各ポリゴンを構成する複数の位置推定装置2の識別情報及び位置情報を少なくとも有するポリゴン構成データを、ポリゴン情報データベース14に記憶する(ステップS102)。
【0059】
図4は、第1の実施形態の空間領域を上から見下ろした場合の位置推定装置2の配置を示す図である。図4において、「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、「G」、「H」は、それぞれ位置推定装置2を表し、「T」は端末3を表す。
【0060】
ポリゴン構成データ生成部121には、例えば、図4に示す位置推定装置2の位置情報(x,y)を予め登録しておく。そして、ポリゴン構成データ生成部121は、位置推定装置2の位置情報を用いて、複数の位置推定装置2の位置を頂点として囲まれる領域を形成する。
【0061】
例えば、第1の実施形態では、四角形の領域をポリゴンとする。図4では、四角形ABED、四角形BCED、四角形DEGF、四角形CHGEの4個のポリゴンを構築した場合を例示する。
【0062】
ここで、ポリゴンの構築方法は、特に限定されるものでなく、種々の方法を適用することができる。例えば、位置推定装置2間の距離を求め、距離が短いもの同士(すなわち、近傍に位置するもの同士)を組としてポリゴンを構築する方法等を適用することができる。
【0063】
また、ポリゴン構成データ生成部121は、複数のポリゴン間で領域が接するように構築してもよいし、またポリゴン間で一部領域が重なるようにして構築するようにしてもよい。
【0064】
ポリゴン構成データ生成部121は、例えば、四角形ABDEのポリゴン構成データとして、位置推定装置A、B、D、Eの各識別情報と、位置推定装置A、B、D、Eの各位置情報(x,y)とを含むものとする。
【0065】
(A−2−2)端末3の位置推定処理
図5は、第1の実施形態の端末3の位置を推定する処理を示すシーケンス図である。
【0066】
まず、端末3を持った人が空間内に入ると、人の移動をトリガとして、端末3の動き検出部33が端末3の動きを検出し(ステップS201)、無線強度検出指示データを無線強度検出部32に出力する。
【0067】
なお、人および端末3が特定の場所に留まる場合には、動き検出部33が動きを検出しないので、無線強度検出指示データは出力されず、以降の処理は行われない。これにより、端末3の位置が変更になった場合のみ、端末3の位置推定が実行されるように動作する。
【0068】
動き検出部33から無線強度検出指示データを受け取った無線強度検出部32は、各位置推定装置2が周期的に(例えば1秒毎に)送出している無線信号を(ステップS202)、所定時間(例えば2秒間)だけ受信し、その受信強度を計測する(ステップS203)。
【0069】
このとき、無線信号には、位置推定装置2の識別情報が含まれている。無線強度検出部32は、受信強度の大きさの順に位置推定装置2の識別情報を並べ、各位置推定装置2の識別情報と受信強度とを組とした無線強度データを作成する。さらに、無線強度検出部32は、最も受信強度が大きい位置推定装置2に無線強度データを送信する(ステップS204)。
【0070】
例えば、図4において、端末Tにおいて、D、B、E、A、F、G、C、・・・の順で強い受信強度が観測されたとすると、端末Tは、観測した受信強度のうち、受信強度が大きい順から上位N個(例えばN=7)の位置推定装置D、B、E、A、F、G、Cを選択する。そして、端末Tでは、上位N個の位置推定装置D、B、E、A、F、G、Cの識別情報と受信強度とを組とする無線強度データを生成する。また、端末Tは、受信強度が最も大きい位置推定装置「D」に対して、無線強度データを送信する。
【0071】
位置推定装置2において、端末3から無線強度データが与えられると(ステップS205)、ポリゴン決定要求部23は、通信部21を通じてポリゴン決定要求データを、ポリゴン管理サーバ1に送信する(ステップS206)。
【0072】
このとき、ポリゴン決定要求データは、少なくとも端末3から受信した無線強度データに含まれている全てのデータを含むものとする。
【0073】
ポリゴン管理サーバ1において、ポリゴン決定部13がポリゴン決定要求データを受け取ると、候補選択部131は、ポリゴン決定要求データに含まれる無線強度データに基づいて、端末Tにおいて受信強度が大きいポリゴンを、ポリゴン情報データベース14から選択する(ステップS207)。
【0074】
ここで、ポリゴンの選択方法については、無線強度データに含まれている位置推定装置2の識別情報及び受信強度を用いて選択することができれば、種々の方法を取ることができる。また、ポリゴン間で一部領域が重なる場合には、複数のポリゴンを選択するようにしてもよい。例えば、ポリゴンの選択方法として、無線強度データから最上位の位置推定装置2の識別情報を含むポリゴンを選択するようにしてもよいし、また、無線強度データから上位M個(1≦M≦N)の位置推定装置2の識別情報を含むポリゴンを選択するようにしてもよい。また、所定値以上の受信強度である位置推定装置2の識別情報を含むポリゴンを選択するようにしてもよい。
【0075】
候補選択部131によりポリゴンが選択されると、ポリゴン詳細データ生成部133が各ポリゴンの構成に関するポリゴン詳細データを生成し(ステップS208)、代表位置推定装置決定部134が、ポリゴンを構成する複数の位置推定装置2の中から代表する位置推定装置2を決定し(ステップS209)、該決定された位置推定装置にポリゴン詳細データをネットワーク経由で出力する(ステップS210)。
【0076】
ここで、ポリゴン詳細データは、少なくとも、例えば、ポリゴンを構成する4個の位置推定装置2の位置情報、後述する位置推定ルールのデータ、端末3の識別情報、端末3において計測された4個の位置推定装置2からの無線信号の受信強度を有するものである。
【0077】
さらに、代表位置推定装置2の決定方法は、種々の方法により決定することができる。例えば、端末3における受信強度が最も大きい位置推定装置2を代表と決定してもよいし、また、ポリゴン配置の際に予めポリゴン毎に代表とする位置推定装置2を決定しておいてもよい。
【0078】
例えば、図4に例示した端末3における受信強度の強さが、D、B、E、A、F、G、Cの順であることから、候補選択部131は、受信強度の大きい四角形ABEDのポリゴンを選択し、代表位置推定装置決定部134は、位置推定装置Aをポリゴンの代表と指定決定する。そして、ポリゴン詳細データ生成部133は、四角形ABEDのポリゴンのポリゴン詳細データを生成し、これを位置推定装置Aに送信する。
【0079】
代表となる位置推定装置2において、ポリゴン管理サーバ1からのポリゴン詳細データが与えられると、ポリゴン詳細データ管理部24が、受け取ったポリゴン詳細データを、ポリゴン詳細データ保持部26に保存する(ステップS211)。
【0080】
このとき、代表となる位置推定装置2は、以前に、ポリゴンを構成する4個の位置推定装置2の位置情報、位置推定ルールのデータを受け取り、現在も保持している場合には、これらの情報を用いることができるので、ポリゴン決定部13から、端末3の識別情報と、端末3が4個の位置推定装置2から受信した無線信号の受信強度だけを受け取るようにしてもよい。
【0081】
上記の構成を実現するためには、例えば、ポリゴン管理サーバ1が位置推定装置2にポリゴン詳細データを送信する際、ポリゴン管理サーバ1と位置推定装置2との間で制御情報の授受を行い、必要なデータを確認することで実現することができる。
【0082】
位置推定装置2がポリゴン詳細データを取得すると、ポリゴン大きさ判定部251が、ポリゴン詳細データに含まれている当該ポリゴンを構成する位置推定装置2の位置情報を用いて当該ポリゴンの大きさを求め、このポリゴンの大きさが所定値以下であるか否かを判定する(ステップS212)。
【0083】
そして、位置推定部25は、ポリゴン詳細データに含まれるデータを用いて、端末3の位置を求める(ステップS213)。
【0084】
ここで、端末3の位置推定の方法としては、第1の実施形態では、例えば以下のような方法を適用する。
【0085】
位置推定部25は、ポリゴンの大きさが所定値以下である場合、ポリゴンを構成する位置推定装置2の位置情報に基づいて、当該ポリゴンの重心を求め、これを端末3の位置データとしてする。
【0086】
これに対して、ポリゴンの大きさが所定値を超えている場合、位置推定部25は、ポリゴン詳細データに含まれている位置推定ルールに従って、4個の位置推定装置2の位置情報及び受信強度の組に基づいて、端末3の位置を求める。
【0087】
ここで、位置推定ルールは、ポリゴンに属する位置推定装置2が端末3の位置を推定する方法を定義したものである。位置推定ルールは、端末3の位置を推定するにあたり、空間全体における端末3の推定位置の妥当性を考慮するものではなく、空間を複数に分割した各ポリゴンにおける端末3の推定位置の妥当性を考慮したものである。
【0088】
例えば、ポリゴン管理サーバ1において、サンプル位置強度設定部122が、ポリゴン付近の複数のサンプル点の位置に対して、ポリゴンを構成する各位置推定装置2からの受信強度を計測し、これらのデータを用いて、ポリゴン付近の空間の受信強度分布を推定する。
【0089】
ポリゴン決定部13において、位置推定ルール設定部132は、端末3における位置推定装置2の受信強度の組(4個の受信強度のデータの組み合わせ)に対して、上記サンプル位置強度設定部122が推定した当該ポリゴン付近の受信強度分布の値と最も類似する位置を、当該端末3の位置と推定する位置推定ルールと設定し、必要なパラメータの組を位置推定ルールのデータとする。そして、ポリゴン詳細データ生成部132は、位置推定ルール設定部132が生成した位置推定ルールのデータ(すなわち、当該ポリゴン付近の各サンプルの位置情報と各サンプルにおける各位置推定装置2の受信強度の組)をポリゴン詳細データに含める。
【0090】
図6は、図4に例示する四角形ABEDの位置推定ルールを説明する説明図である。図6において、S1〜S17は、サンプル位置強度設定部122が計測した四角形ABED付近についてのサンプル位置である。
【0091】
位置推定ルール設定部132は、図6に例示する各サンプルにおける各位置推定装置2の受信強度の組のうち、端末3における各位置推定装置2の受信強度の組と最も類似するものを選択させ、そのサンプル位置を端末3の位置と推定するという位置推定ルールを設定する。
【0092】
また、ポリゴン詳細データ生成部134は、上記位置推定ルールと、当該ポリゴン付近の各サンプルの位置情報と各サンプルにおける各位置推定装置2の受信強度の組を含むデータをポリゴン詳細データとして位置推定装置2に与える。
【0093】
位置推定装置2では、位置推定部25が、位置推定ルールに従って、ポリゴン詳細データに含まれる、各サンプルにおける各位置推定装置2の受信強度分布と、端末3における各位置推定装置2の受信強度の組(4個の受信強度値)とに基づいて、端末3の位置を推定する。
【0094】
なお、上記では、受信強度の組が最も類似するサンプル位置を端末3の位置と推定する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、位置推定部25は、位置推定ルールのデータから、4個の位置推定装置間の受信強度を補間した受信強度分布を形成することができる。そこで、受信強度の組が最も類似するサンプルの受信強度の組と、端末3の受信強度に組との関係から、当該サンプル位置を基準にした端末3の距離を割り出すことで、端末3の位置を求めるようにしてもよい。
【0095】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、空間内に複数の位置推定装置を分散して配置し、ポリゴン管理サーバが、空間を、位置推定装置を頂点とするポリゴンに分割し、さらに、ポリゴン管理サーバが、端末で受信される複数の位置推定装置からの無線信号の受信強度に基づいて、当該端末の位置推定に用いるポリゴンを決定し、該ポリゴンに属する位置推定装置が、同ポリゴンの各頂点に位置する位置推定装置からの無線信号の受信強度に基づいて端末の位置を推定するようにしたので、端末の位置を、空間全体ではなく、受信強度が大きいポリゴンの付近を対象として計算でき、広い屋内空間においても、少ない計算量で精度良く無線端末の位置を推定できる。
【0096】
(B)他の実施形態
(B−1)第1の実施形態では、位置推定装置がポリゴン詳細データに基づいて端末の位置を推定する場合について説明したが、本処理をポリゴン管理サーバにて実施するように構成してもよい。本処理を位置推定装置、ポリゴン管理サーバのいずれで実施するかは、各々のハードウェアの処理能力に応じて適宜決定すればよい。
【0097】
(B−2)第1の実施形態では、4個の位置推定装置によりポリゴンを構成する場合につき説明したが、ポリゴンを構成する位置推定装置の数は、3個以上の数で適宜変更してもよい。例えば、位置推定装置を多く配置できない場合には3個、より精度の高い位置検出を行う場合には4個以上等としても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
(B−3)第1の実施形態では、あらかじめ、空間内の複数のサンプル点で計測した複数の位置推定装置からの信号の受信強度に基づいて、位置推定装置がポリゴン付近の端末位置を推定するよう構成した場合について説明したが、ポリゴン付近の端末位置を従来公知の方法で推定するようにしても第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0099】
例えば、あらかじめサンプル点により計測した受信強度による計算モデルを用いるのではなく、一般的な無線の伝搬モデルにより端末位置を推定するようにしてもよい。すなわち、無線の伝搬損失L[dB]を下記で表現する。
【0100】
L=20×log(d)+α …(1)
ただし、dは伝搬距離、αは無線波長で決まる定数である。
【0101】
本式を適用すれば、ポリゴンの頂点の任意の2つの組み合わせに対し、無線強度の差分を計算すれば、2つの頂点から端末までの距離の比を求めることができる。従って、位置推定装置は、ポリゴンの頂点位置と、各頂点から端末までの距離の比、とに基づいて、端末の位置を推定できる。
【0102】
(B−4)第1の実施形態において、端末、位置推定装置、ポリゴン管理サーバにおける処理は、いわゆるソフトウェア処理により実現することができる。例えば、ハードウェア構成として、CPU、ROM、RAM、EEPROM等からなり、CPUが、ROMに格納された処理プログラムを読み出し、処理に必要なデータを用いて処理プログラムを実行することにより各機能を実現することができる。
【符号の説明】
【0103】
1…ポリゴン管理サーバ
11…通信部、12…ポリゴン構成部、13…ポリゴン決定部、131…候補選択部、
132…位置推定ルール設定部、133…ポリゴン詳細データ生成部、
134…代表位置推定装置決定部、14…ポリゴン情報データベース、
2…位置推定装置、
21及び22…通信部、23…ポリゴン決定要求部、
24…ポリゴン詳細データ管理部、25…位置推定部、
26…ポリゴン詳細データ保持部、
3…端末、
31…通信部、32…無線強度検出部、33…動き検出部、
10…位置推定システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線送信手段から送信された無線信号を受信し、複数の上記無線信号の受信強度値と、それぞれの送信元の識別情報とを検出する受信強度検出手段を備える端末の位置を推定する位置推定システムにおいて、
上記各無線送信手段の位置情報を、上記各無線送信手段の識別情報に対応付けて記憶する位置情報記憶手段と、
上記受信強度検出手段により検出された上記複数の受信強度値及び上記識別情報を上記端末から受け取り、上記端末における受信強度値が上位の上記無線送信手段の識別情報及び上記受信強度値を選択する候補選択手段と、
上記候補選択手段により選択された複数の上記無線送信手段からの上記各無線信号の上記端末における受信強度値と、上記位置情報記憶手段から取得した複数の上記無線送信手段の位置情報とに基づいて、上記端末の位置を推定する位置推定手段と
を備えることを特徴とする位置推定システム。
【請求項2】
上記複数の無線送信手段の位置情報に基づいて、空間内に複数の領域を形成し、上記各領域を構成する複数の上記無線送信手段を示す領域構成情報を記憶する領域構成情報記憶手段を備え、
上記候補選択手段は、上記領域構成情報記憶手段を参照して、上記端末における受信強度値が上位の上記無線送信手段の識別情報を含む上記領域を検索し、検索した上記領域を構成する複数の上記無線送信手段の上記識別情報及び上記受信強度値を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置推定システム。
【請求項3】
上記位置推定手段は、所定の位置推定算出規則に従って、上記複数の上記無線送信手段の位置情報と、上記端末における上記各無線信号の受信強度値とに基づいて、上記端末の位置を推定するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置推定システム。
【請求項4】
複数の無線送信手段から送信された無線信号を受信し、複数の上記無線信号の受信強度値と、それぞれの送信元の識別情報とを検出する受信強度検出手段を備える端末の位置を推定する位置推定装置において、
上記各無線送信手段の位置情報を、上記各無線送信手段の識別情報に対応付けて記憶する位置情報記憶手段と、
上記受信強度検出手段により検出された上記複数の受信強度値及び上記識別情報を上記端末から受け取り、上記端末における受信強度値が上位の上記無線送信手段の識別情報及び上記受信強度値を選択する候補選択手段と、
上記候補選択手段により選択された複数の上記無線送信手段からの上記各無線信号の上記端末における受信強度値と、上記位置情報記憶手段から取得した複数の上記無線送信手段の位置情報とに基づいて、上記端末の位置を推定する位置推定手段と
を備えることを特徴とする位置推定装置。
【請求項5】
複数の無線送信手段から送信された無線信号を受信し、複数の上記無線信号の受信強度値と、それぞれの送信元の識別情報とを検出する受信強度検出手段を備える端末の位置を推定するものであって、上記各無線送信手段の位置情報を、上記各無線送信手段の識別情報に対応付けて記憶する位置情報記憶手段を備えるコンピュータを、
上記受信強度検出手段により検出された上記複数の受信強度値及び上記識別情報を上記端末から受け取り、上記端末における受信強度値が上位の上記無線送信手段の識別情報及び上記受信強度値を選択する候補選択手段、
上記候補選択手段により選択された複数の上記無線送信手段からの上記各無線信号の上記端末における受信強度値と、上記位置情報記憶手段から取得した複数の上記無線送信手段の位置情報とに基づいて、上記端末の位置を推定する位置推定手段
として機能させることを特徴とする位置推定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−203000(P2011−203000A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68458(P2010−68458)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】