位置検出センサ、位置検出装置および位置検出方法
【課題】静電容量の変化に基づいて、指示体による指示位置及び当該指示位置に加えられた押圧力を感度良く検出できるようにする。
【解決手段】第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間に、可撓性を有する誘電体部材13を設けるとともに、第1の導体11Xあるいは第2の導体21Yと誘電体部材13との間を互いに所定距離離間させるためのスペーサ23を設けて位置検出センサを構成する。指示体による押圧によって第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間が誘電体部材13の厚みを介して当接するように構成されるとともに、誘電体部材13が導体に当接されて形成される当接面積が、指示体による押圧力に対応して変化するように構成されているために、コンデンサとしての静電容量を大きく変化させることができ、これによって指示体が指示する位置と当該指示位置に加えられた力を感度良くおよび精度良く検出できる。
【解決手段】第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間に、可撓性を有する誘電体部材13を設けるとともに、第1の導体11Xあるいは第2の導体21Yと誘電体部材13との間を互いに所定距離離間させるためのスペーサ23を設けて位置検出センサを構成する。指示体による押圧によって第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間が誘電体部材13の厚みを介して当接するように構成されるとともに、誘電体部材13が導体に当接されて形成される当接面積が、指示体による押圧力に対応して変化するように構成されているために、コンデンサとしての静電容量を大きく変化させることができ、これによって指示体が指示する位置と当該指示位置に加えられた力を感度良くおよび精度良く検出できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、指示体により指示された位置の静電容量の変化を検出することで指示体が指示する位置の検出を行う位置検出センサおよびこの位置検出センサを備える位置検出装置およびこれらのセンサ及び装置で用いられる位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル等に用いられる指示体の位置検出の方式として静電容量方式の指示体検出装置の開発が盛んに行われている。静電容量方式には、表面型(Surface Capacitive Type)と投影型(Projected Capacitive Type)の2種類の方式があり、両方式ともセンサ電極と指示体(例えば、指、静電ペン等)との間の静電結合状態の変化を検出して、指示体の位置を検出する。
【0003】
例えば特許文献1(特開2009−265759号公報)には、表面型の静電容量方式の指示体検出装置が紹介されている。また、投影型の静電容量方式の指示体検出装置は、例えばガラスなどの透明基板や透明フィルム上に複数の電極を所定パターンで形成して構成し、指示体が接近した際の指示体と電極との静電結合状態の変化を検出する。この投影型の静電容量方式の指示体検出装置は、例えば特許文献2(特開2003−22158号公報)、特許文献3(特開平9−222947号公報)、特許文献4(特開平10−161795号公報)などに開示されている。
【0004】
そして、投影型静電容量方式を発展させたクロスポイント静電容量方式と呼ばれる方式の指示体検出装置が提案されている。
【0005】
図13に、クロスポイント静電容量方式の指示体検出装置におけるセンサ部の概略構成を示す。このクロスポイント静電容量方式の指示体検出装置は、複数本の指など、複数個の指示体の検出が同時に可能なマルチタッチ対応とされる。
【0006】
このクロスポイント静電容量方式の指示体検出装置の位置検出センサでは、複数個の上部電極Exと、複数個の下部電極Eyとを、指示入力面の例えばX軸方向(横方向)およびY軸方向(縦方向)に、互いに直交させて配置させる。この場合、上部電極Exと下部電極Eyとの間の重なり部分(クロスポイント)には所定の静電容量Co(固定容量)が形成される。そして、使用者の指などの指示体fgが、指示入力面に近づく、あるいは接触した位置においては、その位置の電極Ex,Eyと指示体fgとの間に静電容量Cfが形成される。そして、指などの指示体fgは人体を通じてグラウンドに所定の静電容量Cgを通じて接続される。この結果、その静電容量CfおよびCgのために、その指示体fgの位置では、上部電極Exと下部電極Eyとの間の電荷が変化する。従来のクロスポイント静電容量方式の指示体検出装置では、この電荷の変化を検出することで、指示入力面内において指示体により指示された位置が特定される。
【0007】
また、特許文献5(特開2010−79791号公報)には、指や静電ペンなど以外の指示体を検出することができるようにした静電容量型入力装置が開示されている。この特許文献5の入力装置の指示体検出センサは、図14Aに示すように、第1の基板2と、この第1の基板2に対して空気層4を介して対向する可撓性の第2の基板3と、第1の基板2の第2の基板3側の面のほぼ全面に形成された第1の電極5と、第2の基板3の第1の基板2側の面に形成された複数個の第2の電極6とを備える。
【0008】
この特許文献5の入力装置の指示体検出センサでは、指示体により第2の基板3が押圧されていないときには、図14Aに示すように、複数の第2の電極6のそれぞれと、第1の電極5との間に静電容量C1が形成される。
【0009】
そして、第2の基板3が指示体により第1の基板2側に押圧されると、第2の基板3は可撓性を有しているために、図14Bにおいて矢印で示すように、押圧位置において第2の基板3が第1の基板2側に撓み、第1の基板2と第2の基板3間の距離が短くなり、その部分の第1の電極5と第2の電極6とで構成される静電容量が、前記C1よりも大きいC2になる。さらに、図14Bにおいて矢印で示すように押圧されると、第1の電極5に第2の電極6が接触することで導通状態になる。
【0010】
特許文献5の入力装置では、上記の第1の電極5と第2の電極6とで構成される静電容量がC1より大きくなることを検出することで、指示体による第2の基板3への押圧入力(押圧位置)を検出することができると共に、さらに第1の電極5に第2の電極6が接触して導通状態になることを検出することで、当該押圧位置での押圧入力を確定することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−265759号公報
【特許文献2】特開2003−22158号公報
【特許文献3】特開平9−222947号公報
【特許文献4】特開平10−161795号公報
【特許文献5】特開2010−79791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図13を用いて上述したクロスポイント静電容量方式の指示体検出センサにおいては、電極ExおよびEy間の距離は物理的に固定されており、クロスポイントにおける電極間の静電容量Coも固定値であり、例えば0.5pFである。そして、電極に指が近づく、あるいは接触したときには、人体が持つ静電容量の影響によって、電極Exおよび電極Ey間の静電容量Coの値が変化するので、その変化を検出することにより、指示体としての指を検出する。すなわち、クロスポイント静電容量方式の指示体検出センサは、人体などの所定の静電容量を有する指示体が近づいたときの影響の度合いを検出するものである。
【0013】
しかしながら、指を近づけたときのクロスポイントでの静電容量の変化は非常に小さく、電極ExおよびEy間の静電容量Coの値が例えば0.5pFであるのに対して、僅かに0.05pF程度である。このため、指示体の検出出力の対ノイズに対するマージンが厳しく、指などの指示体を感度良く検出することが困難であり、ましてや、指などの指示体の押圧力を検出することは非常に困難である。
【0014】
また、クロスポイント静電容量方式の検出手法は、クロスポイントに、指などの導電体を近づけることで電極間の静電容量に影響を与える方式(相互容量)であるので、人体を含む導電体でしか検出できず、例えば指の乾燥具合で感度が変わり、また、ゴム手袋等には反応しないという問題があった。
【0015】
特許文献5の発明の場合には、指示体にこのような制約はなく、ゴム手袋等を装着していても、押圧指示位置の検出が可能である。しかし、特許文献5の検出手法は、静電容量型であっても、最終的には、第1の電極5に第2の電極6が接触して導通する状態を検出することで、押圧入力を確定するようにしている。したがって、指示体により押圧された位置を検出することはできても、指示体の第2の基板3に対する押圧力を精度良く検出することは困難である。
【0016】
すなわち、第2の基板3は、指示体の第2の基板3に対する押圧力に応じた大きさで撓むので、第2の電極6が第1の電極5に接触するまでは、第1の電極5と第2の電極6間の静電容量は、短くなる距離に反比例して大きくなる。しかし、第2の電極6が第1の電極5に接触すると両者は導通するために、第1の電極5と第2の電極6間の静電容量はゼロになる。
【0017】
このことから、特許文献5の場合の指示体センサでは、指示体による第2の基板3に対する押圧力を静電容量の変化に基づいて検出できるのは、第2の電極6が第1の電極5に接触するまでである。
【0018】
この発明は、以上の点に鑑み、静電容量の変化を監視するだけで、指示体による指示位置を検出することができると共に、当該指示位置に加えられた押圧力を感度良くおよび精度良く検出することができる静電容量方式の位置検出センサ、位置検出装置および位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の位置検出センサは、
第1の方向に配置された複数の第1の導体と、前記第1の方向に対して交差する方向に配置された複数の第2の導体を備え、指示体による位置の指示に対応して前記第1の導体と前記第2の導体との間に形成される静電容量の変化を検出することで前記指示体によって指示された位置を検出する、静電容量方式による位置検出センサであって、
前記複数の第1の導体は可撓性を有しており、
前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間には、可撓性を有する誘電体部材が介在するとともに、前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面は前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体に当接しており、
前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面に当接した前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体が前記可撓性を有する誘電体部材を介して対向する、前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体と、前記可撓性を有する誘電体部材の他方の面との間はスペーサによって互いが所定の距離離間されており、
前記指示体による位置の指示に対応して前記複数の第1の導体が押圧されることによって、前記可撓性を有する誘電体部材の前記他方の面と、前記他方の面に対向する前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体との間の当接面積を変化させることで、前記可撓性を有する誘電体部材を介在させて前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間に上記静電容量の変化を引き起こさせるようにしたことを特徴とする。
【0020】
この請求項1に記載の発明の位置検出センサによれば、当該位置検出センサは、複数の第1の導体と複数の第2の導体との間には、可撓性を有する誘電体部材が介在している。当該誘電体部材の一方の面は複数の第1の導体あるいは複数の第2の導体に当接されており、当該誘電体部材の他方の面は、スペーサによって複数の第2の導体あるいは複数の第1の導体に対して所定距離離間して対向した構成を有している。
【0021】
そして、指示体によって、位置検出センサが、複数の第1の導体側から複数の第2の導体側の方向に押圧されると、可撓性を有する誘電体部材と、当該可撓性を有する誘電体部材に対して所定の距離離間して対向配置された複数の第2の導体あるいは複数の第1の導体との当接面積が変化する。すなわち、指示体による押圧に対応して可撓性を有する誘電体部材の、導体(電極)との当接面積が変化することになり、その結果、指示体による押圧に対応して、第1の導体と第2の導体との間に形成される静電容量を大きく変化させることができる。
【0022】
このように、指示体による押圧に対応して、可撓性を有する誘電体部材の電極に対する当接面積を変化させるようにすることで、第1の導体と第2の導体との間の静電容量を大きく変化させることができ、この変化を検出することにより、指示体による指示位置を感度良く検出することができる。また、当該静電容量の変化量に応じて、どの程度の力(押圧力)が加えられているかを検出することができる。このように、可撓性を有する誘電体部材の電極に対する当接面積を指示体による押圧に対応して変化させることで、第1の導体と第2の導体との間の静電容量を大きく変化させることができ、指示位置を感度良く検出することができると共に、当該指示位置に加えられた力(押圧力)を感度良くおよび精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、指示体による押圧に対応して、誘電体部材が有する厚みを介して第1の導体と第2の導体を互いに近接させるとともに、可撓性を有する誘電体部材の、導体との当接面積を変化させることで静電容量の大きな変化を引き起こすことができ、指示体による指示位置を感度良く検出することができると共に、当該指示位置に加えられた力(押圧力)を感度良くおよび精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態の表示機能付機器1の構成の概略を説明するための分解斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の位置検出装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの構成例を説明するための図である。
【図4】位置検出センサ1Bに対して指示操作が行われた場合の位置検出センサ1Bの状態について説明するための図である。
【図5】本発明の動作原理を説明するための図である。
【図6】スペーサ23の構成例を説明するための図である。
【図7】位置検出センサ1Bが押圧されたときのスペーサ23の状態を説明するための図である。
【図8】位置検出センサ1BのY−Y断面図の一部(右端部)を示す図である。
【図9】位置検出センサ1Bの変形例を説明するための図である。
【図10】位置検出センサ1Bの他の変形例を説明するための図である。
【図11】第2の実施の形態の位置検出センサ1BXを説明するための断面図である。
【図12】位置検出センサ1B、1BXの変形例を説明するための図である。
【図13】クロスポイント静電容量方式の指示体検出装置におけるセンサ部の概略構成を示す図である。
【図14】従来の位置検出センサの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図を参照しながら、この発明の位置検出センサ、位置検出装置および位置検出方法の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、表示機能付タブレット装置、タブレット型情報端末あるいはパッド型情報端末などと呼ばれる表示機能付機器に、この発明を適用した場合を例にして説明する。
【0026】
[第1の実施の形態]
[表示機能付機器1の概略構成]
図1は、この実施の形態の表示機能付機器1の構成の概略を説明するための分解斜視図である。図1に示すように、この実施の形態の表示機能付機器1は、筐体1E内の最下層にマザーボード1Dが収納され、その上に表示画面を上側(フロントパネル1A側)にしてLCD(Liquid Crystal Display)1Cが設けられる。当該LCD1Cの表示画面側に位置検出センサ1Bが設けられる。そして、位置検出センサ1Bの上側にフロントパネル1Aが設けられ、上述の各収納物1D、1C、1Bが筐体1E内に保持される。
【0027】
ここで、マザーボード1Dには、通信回路、LCD1C用の制御回路、位置検出センサ1Bに信号を供給する信号供給回路、位置検出センサ1Bからの信号を受信して、指示位置等を検出する信号受信回路等の種々の回路が形成されている。LCD1Cは、この実施の形態の表示機能付機器1の表示機能を実現するための表示手段である。位置検出センサ1Bは、この発明が適用されて構成されたものであり、ユーザからの種々の指示入力(操作入力)を受け付ける受付手段としての機能を実現している。
【0028】
上述したように、LCD1Cの表示画面は位置検出センサ1Bを介して観視される。このため、位置検出センサ1Bは光透過性(透明性)を有するように構成されている。これにより、ユーザは、表示機能付機器1のフロントパネル1A側からLCD1Cに表示される情報を観視しながら、位置検出センサ1Bを通じて、種々の指示入力を行うことができるようにされる。
【0029】
なお、図1には図示しなかったが、LCD1Cと位置検出センサ1Bとは、マザーボードの対応する回路部にそれぞれ接続される。そして、詳しくは後述もするが、位置検出センサ1Bと、マザーボード1Dに設けられている信号供給回路や信号受信回路により、位置検出装置が構成される。また、表示機能付機器1は、その外観の大きさが、例えば、用紙サイズでいえば、A5版サイズ、B5版サイズ、A4版サイズなど、種々の大きさのものとして実現される。
【0030】
[位置検出装置の構成例]
次に、位置検出センサ1Bを含む位置検出装置の構成例について説明する。図2は、この実施の形態の位置検出装置の構成例を説明するためのブロック図である。図2に示すように、この実施の形態の位置検出装置は、図1に示した位置検出センサ1Bと、信号供給回路200と、信号受信回路300と、制御回路40とからなる。制御回路40は、この実施の形態の位置検出装置の各部を制御するための回路であり、例えばマイクロコンピュータを搭載して構成されている。
【0031】
位置検出センサ1Bは、信号供給回路200に接続される複数の第1の導体(送信導体)と、信号受信回路300に接続される複数の第2の導体(受信導体)とを備える。そして、第1の導体11X1〜11Xmは送信導体群11を構成する。また、第2の導体21Y1〜21Ynは受信導体群21を構成する。
【0032】
なお、以下の説明において、特に区別して示す場合を除き、第1の導体11X1〜11Xmを総称して第1の導体11Xといい、第2の導体21Y1〜21Ynを総称して第2の導体21Yという。また、送信導体群11を構成する第1の導体11Xの数や受信導体群21を構成する第2の導体21Yの数は、ユーザによって操作される位置検出センサ1Bの指示入力面1BSのサイズなど、実施の態様に応じて適宜設定される。また、この実施の形態においては、送信導体群11側が、ユーザの指等の指示体によって指示入力が行われる指示入力面1BSとされる。
【0033】
図2においては、右下端部に示したX軸矢印がX軸方向を示し、同様にY軸矢印がY軸方向を示している。そして、詳しくは後述もするが、送信導体群11は、位置検出センサ1BのY軸方向に延伸された細長(平板状)のm本の第1の導体11Xが、X軸方向に所定間隔を隔てて配列されて構成されたものである。また、受信導体群21は、位置検出センサ1BのX軸方向に延伸された細長(平板状)のn本の第2の導体21Yが、Y軸方向に所定間隔を隔てて配列されて構成されたものである。
【0034】
また、詳しくは後述するが、送信導体群11と受信導体群21は、誘電体部材と複数のスペーサとを介して対向配置されている。これにより、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが対向する部分では、コンデンサが構成されるようなっている。なお、この実施の形態において、第1の導体11Xおよび第2の導体21Yは、例えば、銀パターンやITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜からなる透明電極膜、あるいは銅箔等で形成される。
【0035】
信号供給回路200は、位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対する指示体による指示位置や指示位置に加えられた押圧力の検出を可能にするための信号を、送信導体群11を構成する第1の導体11Xのそれぞれに供給する。信号供給回路200は、図2に示したように、選択回路24と信号発生回路25とを備えている。選択回路24は、制御部40からの制御に応じて、信号発生回路25からの信号を第1の導体11Xに選択的に供給する。信号発生回路25は、制御部40の制御に応じて、所定の周波数を有する、正弦波、矩形波などの交流信号を発生させ、これを選択回路24に供給する。
【0036】
そして、この実施の形態の選択回路24は、制御回路40によって、所定時間内に全ての第1の導体11X1〜11Xmに対して信号発生回路25からの信号を供給するように切換制御される。このように、選択回路24によって信号発生回路25からの交流信号を第1の導体11Xに選択的に供給するのは、指示入力面1BS上で複数の指示位置と、これらに加えられた押圧力とを検出することができるようにするためである。
【0037】
信号受信回路300は、受信導体群21を構成する複数の第2の導体21Yから得られる受信信号に対して信号処理をすることにより、指示体による指示入力面1BS上の指示位置の検出と、当該指示位置に加えられた押圧力の検出とを行うものである。図2に示すように、信号受信回路300は、増幅回路31と、A/D(Analog/Digital)変換回路32と、指示位置及び押圧力検出回路33とを備えている。
【0038】
増幅回路31は、受信導体群21を構成する第2の導体21Yから得られる受信信号を増幅し、A/D変換回路32に供給する。A/D変換回路32は、増幅回路31において増幅された第2の導体21Yからの受信信号をデジタル信号に変換し、これらを指示位置及び押圧力検出回路33に供給する。
【0039】
指示位置及び押圧力検出回路33は、A/D変換回路32からの信号に基づいて、位置検出センサ1Bに対して指示体による指示入力が行われた場合に、指示された指示入力面1BS上の指示位置の検出(識別)と加えられた力(押圧力)の検出とを行う。上述したように、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが対向する部分ではコンデンサが構成される。そして、詳しくは後述するが、位置検出センサ1Bに対して押圧力が加えられると、その押圧力が加えられた送信導体群11側と受信導体群21側との間では、積層された各部材の接触状態が変化する。
【0040】
すなわち、位置検出センサ1Bを押圧すると、送信導体群11と受信導体群21との間に介在する誘電体部材と、送信導体群11あるいは受信導体群21との接触状態が変化する。ここで、接触状態とは、積層された部材が直接に接触する場合だけでなく、互いが距離的に近づく状態をも含んでいる。すなわち、例えば、送信導体群11側から受信導体群21側に押圧力が加えられると、誘電体部材の、第2の導体21Yあるいは第1の導体11Xとの接触面積が増加する。
【0041】
そして、誘電体部材と、この誘電体部材に対向する受信導体群21あるいは送信導体群11との間の接触面積の増加が支配的な要因となって、押圧力に応じて、第1の導体11Xと第2の導体21Yとで構成されるコンデンサの静電容量が変化する。このため、静電容量が変化した部分では第2の導体21Yに流れる信号(電流)が増加することになる。
【0042】
そこで、複数の第2の導体21Yのそれぞれの導体に流れる信号量(電流量)を監視することにより、指示体が位置検出センサ1B上のどの位置を指示操作しているのかを検出することができる。なお、どの第1の導体11Xに交流信号を供給しているのかは、制御回路40からの情報により認識することができる。これらの情報により、信号発生回路25からの交流信号が供給されている第1の導体11Xと、指示体による指示位置に応じて信号量が変化した第2の導体21Yとが交差する部分が、指示体によって指示された位置領域であると検出することができる。しかも、指示体による押圧に応じてコンデンサの静電容量が変化するため、第2の導体21Yに流れる信号量を検出することで、指示体によって位置検出センサ1Bにどの位の押圧力が加えられたかも検出することができる。
【0043】
このように、指示位置及び押圧力検出回路33は、指示体が指示する位置に加え、指示体による押圧力に応じた信号を検出することができる。この指示位置及び押圧力検出回路33で検出された指示位置や押圧力は、マザーボード1Dの中の所定の制御回路に供給され、ユーザからの入力情報として用いられる。
【0044】
[位置検出センサ1Bの構成例]
次に、位置検出センサ1Bの構成例について、図3〜図5を参照しながら具体的に説明する。図3は、この実施の形態の位置検出センサ1Bの構成例を説明するための図であり、図4は、この実施の形態の位置検出センサ1Bに対して指示入力が行われた場合の位置検出センサ1Bの状態について説明するための図である。図5は、本発明の動作原理を説明するための図である。
【0045】
上述したように、この実施の形態の位置検出センサ1Bは、従来の静電容量方式の位置検出センサのように、指示体を通じてグラウンドに逃げる電荷による静電容量の変化を検出するものではない。この実施の形態の位置検出センサ1Bは、指示体による押圧力に応じた第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間の静電容量の変化を、可撓性を有する誘電体部材13を介在させて検出するものである。このため、この実施の形態の位置検出センサ1Bは、指示入力のために用いる指示体は指などの導体である必要はなく、絶縁体であっても良い。したがって、この実施の形態の位置検出センサ1Bは、ゴム手袋をしたユーザの指で操作しても、その指示位置及び押圧力を良好に検出することができるものである。
【0046】
そして、図3Aは、位置検出センサ1Bの指示入力面1BS(指、ペンなどの指示体により指示入力される面)側から見た正面図である。また、図3Bは、図3AにおけるX−X断面図であり、図3Cは、図3AにおけるY−Y断面図である。なお、図3に示す位置検出センサ1Bでは、指示入力面1BS側からみて、第1の導体11Xが配列された方向がX軸方向であり、第2の導体21Yが配列された方向がY軸方向である。
【0047】
図3B、Cに示すように、この実施の形態の位置検出センサ1Bは、上側基板(第1の基板)10と下側基板(第2の基板)20とが上下に配置されて構成される。上側基板10の、下側基板20との対向面とは反対側の面10aが指示入力面1BSとなる。
【0048】
上側基板10は、指示入力面1BS(上側基板10の上面10a)において指示体による押圧がなされたときに下側基板20側に撓むことが可能な可撓性の材料からなり、この例では、比較的に厚みが薄いガラス基板や、例えばPET(polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)、LCP(liquid crystal polymer)などの、透明の合成樹脂からなるフィルム基板で構成されている。下側基板20は、この例では、ガラス基板や剛体の透明の合成樹脂からなる。
【0049】
そして、上側基板10の下側基板20との対向面側には、それぞれ所定の幅Wxを有し、Y軸方向に延伸されたm(mは2以上の整数)本の細長(平板状)の第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmが、所定の配列ピッチPx(>Wx)で、X軸方向に配列されている。この第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmのそれぞれは、この例では、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極で構成される。この第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmのそれぞれからは、第1の接続導体12X1,12X2,・・・,12Xmが導出される。これら第1の接続導体12X1,12X2,・・・,12Xmが、マザーボード1Dに設けられる図2に示した信号供給回路200を構成する選択回路24に接続される。
【0050】
また、下側基板20の上側基板10との対向面側には、それぞれ所定の幅Wyを有し、X軸方向に延伸されたn(nは2以上の整数)本の細長(平板状)の第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynが、所定の配列ピッチPy(>Wy)でY軸方向に配列されている。この第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynのそれぞれは、この例では、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極で構成される。この第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynのそれぞれからは、第2の接続導体22Y1,22Y2,・・・,22Ynが導出される。これら第2の接続導体22Y1,22Y2,・・・,22Ynが、マザーボード1Dに設けられた、図2に示した信号受信回路300を構成する増幅回路31に接続される。
【0051】
なお、この実施の形態では、前記幅Wx、Wyは、例えばWx=Wy=2〜2.5mmに選定され、また、前記配列ピッチPx、Pyは、例えばPx=Py=3.2mmに選定される。また、ガラス基板あるいは合成樹脂素材からなるフィルム基板などが適用される、可撓性を有する上側基板10には、第1の導体11Xが蒸着、印刷などの既知の導体形成プロセスによって上側基板10と一体的に形成される。同様にして、ガラス基板あるいは合成樹脂基板などが適用される下側基板20には、第2の導体21Yが蒸着、印刷などの既知の導体形成プロセスによって下側基板20と一体的に形成される。
【0052】
さらに、上側基板10には、この複数個の第1の導体11X1〜11Xmの全体を覆うように誘電体部材13が設けられる。この誘電体部材13は、例えばPET(polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)、LCP(liquid crystal polymer)などの比誘電率が2〜10程度の誘電体からなる透明の誘電体フィルムで構成される。この誘電体層13の厚さは、例えば5〜15μmとされる。また、ガラス素材も誘電体部材13として適用しうる。更には、この誘電体部材13は、高誘電率フィラーを高密度に充填した誘電体フィルム(比誘電率が40以上)により構成しても良い。この他、誘電体部材13としては、透明エポキシ樹脂、フォトレジスト用アクリル系樹脂、高光透過性フッ素樹脂、1液性のウレタン系樹脂などの透明性を有する種々の誘電体が適用しうる。
【0053】
そして、上側基板10の周部と下側基板20の周部とが、所定の空隙dだけ隔てられるように、枠形状の張り合わせ部材30を介して張り合わされる。したがって、この実施の形態の位置検出センサ1Bにおいては、下側基板20の第2の導体21Y1〜21Ynが形成されている面と、上側基板10の誘電体部材13の面との間には、空気層14が介在する。
【0054】
そして、この実施の形態では、指示入力面1BS(10a)への押圧力が存在しないときに、上側基板10と下側基板20とが所定の距離離間するように、すなわち空気層14の層厚を維持するように、下側基板20の、上側基板10との対向面側に、スペーサ23が設けられる。具体的には、下側基板20上であって、第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynと第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmとが空間的に交差して重なる領域以外の領域(導体間のギャップ領域)に、突起形状を有するスペーサ23が所定の間隔毎に配置される。
【0055】
スペーサ23は、この例では、X軸方向には、第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmの、互いが隣接する導体の間に、配列ピッチPxで配列されると共に、Y軸方向には第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynの、互いが隣接する導体の間に、配列ピッチPyで配列されている。これらのスペーサ23は、例えば、透明の誘電体材料を印刷したり、ドットプリンタにおけるインク吐出のような原理で形成される。また、スペーサ23の高さは、空隙dと同じ、あるいはそれ以下であって、例えば20μm〜100μm程度とされる。
【0056】
この結果、指示入力面1BSが指示体によって押圧されると、第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmと第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynとが空間的に交差する部分において、上側基板10が下側基板20側に撓む。
【0057】
また、送信導体群11を構成する複数の第1の導体11Xのそれぞれは、上側基板10に対して十分に薄いものであるために、上側基板10の撓みに対応した位置にある第1の導体11Xもまた撓むことになる。さらに、誘電体部材13もまた、例えばフィルム状に薄く形成されて可撓性を有しており、上側基板10の撓みに応じて、誘電体部材13の対応する位置もまた撓むことになる。このため、指やペンなどの指示体が指示入力面1BSを押圧すると、第1の導体11Xが第2の導体21Y側に近づくように、互いが近接する。
【0058】
この場合、位置検出センサ1Bに対して、指を指示体として用いて指示入力を行うことを想定すると、個人差はあるものの、指示入力面1BS上の指が接触する部分は、凡そ直径が9mm前後の略円形状あるいは楕円形状となる。上述したように、この実施の形態の位置検出センサ1Bは、それぞれが2.0〜2.5mmの幅を有する第1の導体11Xと第2の導体21Yとが、配列ピッチ3.2mmで交差するように配列されている。
【0059】
このため、位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに指が接触すると、その押圧部分は、例えば、図4Aにおいて円形で示したような領域となる。すなわち、当該押圧部分の領域には、それぞれの配列方向において、互いに隣接する3本の第1の導体11X及び第2の導体21Yが含まれる。斜線で示した領域において、上側基板10と第1の導体11Xと誘電体部材13とが撓み、第2の導体21Yに近づくことになる。
【0060】
図4Bは、図4Aに対応しており、指が位置検出センサ1Bの指示入力面1BSを押圧している場合の第1の導体11X2部分のY−Y断面図である。すなわち、図4Bは、第1の導体11X2部分における図3Cに示したY−Y断面図と同様のものである。この例は、指示入力面1BS上であって、第1の導体11X2と第2の導体21Y3とが交差する部分を中心にして、指により押圧力がかけられた初期の状態を模式的に示す。
【0061】
図4Bに示すように、指によって指示入力面1BSが次第に押圧されると、第1の導体11X2は、第2の導体21Y2、21Y3、21Y4と対向する部分で撓み、これによって誘電体部材13が第2の導体21Y2、21Y3、21Y4のそれぞれに接近することになる。更には、誘電体部材13は第2の導体21Y2、21Y3、21Y4に当接するようになり、最終的には、誘電体部材13と第2の導体21Y2、21Y3、21Y4の間で形成されるそれぞれの当接面積が増加するようになる。
【0062】
ここで、図5を参照して、本発明の動作原理を説明する。一般に、コンデンサの静電容量Cは、次の(1)式により与えられる。
コンデンサの静電容量C=ε0S/D …(1)
当該(1)式において、ε0は電極間に介在する誘電体の比誘電率であり、Sは対向する電極の面積であり、Dは対向する電極間の距離である。ここで、比誘電率ε0は、電極間に介在させる誘電体部材により一意に決まる。
【0063】
下側基板20には、複数の第2の導体21Yが、それぞれの導体間に所定のギャップ(Py−Wy)が設けられた状態で、配置されている。また、スペーサ23は、導体間ギャップ(Py−Wy)の領域に、所定の間隔で、所定の形状及び高さを有して、設けられている。可撓性を有する上側基板10には、可撓性を有する複数の第1の導体11Xがそれぞれの導体間に所定のギャップ(Px−Wx)が設けられた状態で、配置されている。誘電体部材13もまた可撓性を有しており、複数の第1の導体11Xを覆うように、上側基板10に当接している。また、誘電体部材13と複数の第2の導体21Yとは、互いに対向するように配置されている。
【0064】
本発明では、(1)式に示すコンデンサの原理を応用して、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間に形成される静電容量の大きな変化を引き起こす構造を有している。
【0065】
すなわち、指示体によって上側基板10が押圧されていない状態においては、誘電体部材13は、スペーサ23によって第2の導体21Y3と所定の距離離間している。
【0066】
次に、指示体によって上側基板10が上側基板10から下側基板20の方向に押圧されると、図5Aに示すように、上側基板10、第1の導体11X2、誘電体部材13はそれぞれ可撓性を有しているために、第1の導体11X2は誘電体部材13を介して第2の導体21Y3と当接した状態となる。図5Bに示すように、指示体による更なる押圧力が加わると、第1の導体11X2と第2の導体21Y3との間の距離は誘電体部材13の厚みで規定される所定の値となるものの、指示体による押圧に対応して誘電体部材13と第2の導体21Y3との当接面積は変化することになる。
【0067】
すなわち、本発明では、指示体による押圧力が加わると、第1の導体11X2と第2の導体21Y3との間は、誘電体部材13の厚みを介して、互いが極めて近接する距離関係を形成することでコンデンサとしての静電容量を高め、更には斯かる近接状態において、誘電体部材13と該誘電部材13に当接した第2の導体21Y3との間で形成される当接面積が押圧力に応じて変化するように構成することで、コンデンサとしての静電容量を押圧力に対応して変化させる。すなわち、押圧力が加えられると、上述の(1)式における距離Dを最小値とすることで大きな静電容量を確保し、しかもこの状態で押圧力に応じたSの変化を引き起こすことで、押圧力の有無ならびに押圧力の大きさを感度良くおよび精度良く検出することができる。
【0068】
ところで、電極間の距離(空隙)Dは、この実施の形態においては、指示体により位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して押圧力が加えられていない状態では、例えば100μm程度とされる。しかし、指示体により位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して押圧力が加えられると、受信導体群21と送信導体群11は誘電体部材13を介して互いが当接することとなる。この場合、受信導体群21あるいは送信導体群11と誘電体部材13とが当接する面積Sは押圧力に対応して変化する。図5に示すように、このように押圧力が加えられた状態では、受信導体群21と送信導体群11は誘電体部材13を介して互いが当接しており、誘電体部材13の厚みが(1)式に示す電極間の距離(空隙)Dに相当する。この実施の形態では、一例として、誘電体部材13の厚みは10μm程度とされている。
【0069】
すなわち、図4A、Bに示す本発明の実施の形態を参照してより詳細に説明すると、指示体により位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して押圧力が加えられていない状態では、送信導体群11に当接した10μm程度の厚みを有する誘電体部材13は、スペーサ23によって受信導体群21とは所定の距離(10μm〜60μm)離間した状態にある。指示体により位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して押圧力が加えられると、誘電体部材13は受信導体群21を構成する所定の第2の導体21Yと当接するとともに、押圧力に対応して誘電体部材13と所定の第2の導体21Yとの当接面積が変化する。この場合、誘電体部材13の所定の第2の導体21Yとは当接した状態にあるため、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間は、10μm程度の厚みを有する誘電体部材13を介して互いが極めて近い距離関係を保持する。
【0070】
上述の記載から明らかなように、本発明では、コンデンサの原理を応用して、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間に形成される静電容量に大きな変化を引き起こす構成を有している。すなわち、指示体により位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して押圧力が加えられると、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間は、誘電体部材13を介して、互いが極めて近接する距離関係を形成することでコンデンサとしての静電容量を高める。更には斯かる近接状態において、誘電体部材13と該誘電部材13に当接した第2の導体21Yとの間で形成される当接面積が押圧力に応じて変化するように構成することで、コンデンサとしての静電容量を押圧力に対応して変化させる。すなわち、押圧力が加えられると、上述の(1)式における距離Dを、誘電体部材13の厚みに対応した、最小値とすることで大きな静電容量を確保し、しかもこの状態で押圧力に応じたSの変化を引き起こすことで、押圧力の有無ならびに押圧力の大きさを感度良くおよび精度良く検出することができる。
【0071】
[スペーサ23の構成例]
図6、図7は、スペーサ23の構成例を説明するための図である。上述したように、スペーサ23は、透明の誘電体材料を印刷したり、ドットプリンタのインク吐出原理のごとく、誘電体材料を吹きつけしたりすることによって形成される。このため、スペーサ23は、図6に示すように、半球状、あるいは、円柱状であってその頭部が半球状のものとすることができる。なお、スペーサ23の形状は、図6に示した形状に限るものではない。例えば、円柱状や多角柱状に形成したり、円錐状や多角錐状に形成したり、その他、種々の形状としてもよい。
【0072】
また、スペーサ23を、例えば、透明シリコンゴムなどの弾性を有する材料により形成することもできる。そして、位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して指示体により押圧力が加えられていない状態においては、スペーサ23によって、送信導体群11に当接した誘電体部材13は、受信導体群21に対して所定距離離間している。
【0073】
次に、位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して指示体により押圧力が加えられると、上述したように、上側基板10、送信導体群11、誘電体部材13が撓むことにより、誘電体部材13は受信導体群21を構成する第2の導体21Yに当接する。
【0074】
すなわち、図7に示すように、指示体としての指が位置検出センサ1Bの指示入力面1BSを押圧すると、上側基板10、送信導体群11を構成する第1の導体11X2、誘電体部材13が撓むことにより、最終的には、誘電体部材13と受信導体群21を構成する第2の導体21Yとが当接する状態となる。この当接状態において、誘電体部材13と受信導体群21を構成する第2の導体21Yとが当接する面積は押圧力に対応して変化する。このような構成を備えることで、指示入力面1BS上の指示位置や指示位置に加えられた押圧力を感度良くおよび精度良く検出できる。なお、図7においては、スペーサ23は弾性を備えており、指による押圧力に応じた弾性変形が生じている。
【0075】
[第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの構成のまとめ]
次に、第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの基本的な構成についてまとめる。図8は、図3Cに示したY−Y断面図と同様に、位置検出センサ1BのY−Y断面図の一部(右端部)を示す図である。
【0076】
図3を用いて説明したように、この第1の実施の形態の位置検出センサ1Bは、上側基板10の下側基板20と対向する面には、Y軸方向に延伸された所定幅Wxを有する複数の第1の導体(送信導体)11Xが、所定のピッチPxでX軸方向に配列される。そして、複数の第1の導体11X(送信導体群11)を覆うように、誘電体部材13が当接されている。一方、下側基板20の上側基板10と対向する面には、X軸方向に延伸された所定幅Wyを有する複数の第2の導体(受信導体)21Yが、所定のピッチPyでY軸方向に配列される。また、上側基板10の下側基板20に対向する面には、図3Aに示したように、複数の第1の導体11Xを構成するそれぞれの導体の間に所定のギャップ(Px−Wx)が設けられている。同様に、下側基板20の上側基板10と対向する面には、複数の第2の導体21Yを構成するそれぞれの導体の間に所定のギャップ(Py−Wy)が設けられている。スペーサ23は、この例では、下側基板20上に設けられた複数の第2の導体21Yのそれぞれの導体の間に設けられたギャップの領域であって、第1の導体11Xとは空間的に重なり合わない位置に所定の間隔で配置されている。
【0077】
そして、複数の第1の導体11Xを介して当接された誘電体部材13を備える上側基板10と、複数の第2の導体21Yとスペーサ23が配置された下側基板20とが、上側基板10と下側基板20のそれぞれの周部にて張り合わせ部材30によって張り合わされる。これにより、図8に示すような積層構造の位置検出センサ1Bが構成される。
【0078】
図8に示す各部材の厚みについての一例を示せば以下のようになる。上側基板10の厚みは例えば175μm〜300μm程度とされ、第1の導体11Xの厚みは例えば0.1μm程度され、誘電体部材13の厚みは例えば10μm程度とされる。また、下側基板20の厚みは例えば700μm程度とされ、第2の導体21Yの厚みは例えば0.1μm程度とされる。また、スペーサ23の高さは例えば10μm〜60μm程度とされ、スペーサの下側基板20に当接する面の直径は例えば50μm程度とされる。そして、下側基板20から誘電体部材13までの距離(空隙)dは、スペーサ23の高さにも依存するが、例えば20μm〜100μm程度とされる。なお、第1の導体11X及び第2の導体21Yの厚みは、極めて薄いものであるが、この図ではそれらの配設位置を明確に示すために厚みを付けて示している。また、スペーサ23についても、本来は誘電体部材13と当接するものであるが、各図では敢えて離間した状態で示している。
【0079】
また、第1の実施の形態の位置検出センサ1Bにおいては、第1の導体11X、第2の導体21Yとも、その幅は例えば2.0mm〜2.5mm程度とされ、スペーサ23の配設ピッチは例えば3.2mm程度とされている。なお、ここで説明した各部材の厚み、高さ、幅、配列ピッチ、空隙の距離等は全て一例であり、適宜調整することが可能である。
【0080】
[第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの変形例]
そして、図8に示した基本的な構成を有する第1の実施の形態の位置検出センサ1Bは、種々の変形が可能である。図9、図10は、第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの変形例を説明するための図である。なお、図9、図10において、図8に示した各部と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、その部分の説明は省略する。
【0081】
図9Aに示す位置検出センサでは、スペーサ23aが一体形成された誘電体部材13aが複数の第1の導体11Xを介して上側基板10に当接するとともに、下側基板20に対向している。また、図9Bに示す位置検出センサにおけるスペーサ23bは、図8において下側基板20上に設けられたスペーサ23を、誘電体部材13上に下側基板20に対向するようにして設けているものである。
【0082】
図9Aと図9Bを比較した場合、図9Aのスペーサ23aが誘電体部材13aと一体的に形成されたものであるのに対して、図9Bのスペーサ23bは、誘電体部材13とは別体に設けられている。したがって、図9Bに示した位置検出センサの場合には、誘電体部材13とスペーサ23bとを異なる材料により形成することが可能となる。なお、図9に示した位置検出センサにおいて、スペーサ23a、23bが配置される位置は、図8等に示した第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの場合と同じである。
【0083】
また、図10Aに示す位置検出センサでは、受信導体としての複数の第2の導体21Yが配置された下側基板20の、上側基板10と対向する面の側に複数の第2の導体21Yを覆うようにして誘電体部材13bが設けられている。送信導体としての複数の第1の導体11Xが配置された上側基板10側には、スペーサ23cが誘電体部材13bに対向するように設けられている。
【0084】
また、図10Bに示す位置検出センサでは、スペーサ23dが一体形成された誘電体部材13cが、受信導体としての複数の第2の導体21Yが配置された下側基板20上の、上側基板10と対向する面の側に複数の第2の導体21Yを覆うようにして設けられている。上側基板10には、送信導体としての複数の第1の導体11Xが下側基板20に対向するように配置されている。また、スペーサ23dは、図9Bに示した位置検出センサの場合と同様に、誘電体部材13cとは別体に設けてもよい。このように別体とした場合には、誘電体部材13cとスペーサ23dとを異なる材料によって形成することができる。
【0085】
図10Cに示す位置検出センサでは、上側基板10に複数の第1の導体11Xが配置され、下側基板20には、複数の第2の導体21Yが配置されている。上側基板10と下側基板20との間には、誘電体部材13dが配置されている。誘電体部材13dには、上側基板10に対向するようにスペーサ23euが一体的に設けられている。また、同様に、下側基板20に対向するようにスペーサ23edが一体的に設けられている。従って、スペーサ23eu、23edによって、複数の第1の導体11Xと複数の第2の導体21Yとの間には所定の距離が形成されている。従って、指などの押圧力に対応して上側基板10に配置された複数の第1の導体11Xと下側基板20に配置された複数の第2の導体21Yが誘電体部材13dを介して当接するようになるとともに、更には、押圧力に対応して、複数の第1の導体11Xと誘電体部材13dとの間の当接面積および複数の第2の導体21Yと誘電体部材13dとの間の当接面積が変化することになる。なお、図10Cにおいても、誘電体部材13dとスペーサ23eu、23edのそれぞれは一体的に形成されているが、互いを別体とすることもできる。
【0086】
また、図10Dに示す位置検出センサでは、複数の第1の導体11Xが配置された上側基板10には、複数の第1の導体11Xを覆うように、第1の誘電体部材13eが設けられている。同様に、複数の第2の導体21Yが配置された下側基板20には、複数の第2の導体21Yを覆うように、第2の誘電体部材13fが設けられている。さらに、第1の誘電体部材13eと第2の誘電体部材13fとの間にはスペーサ23fが設けられている。従って、指などの押圧力に対応して誘電体部材13eと誘電体部材13fが当接するようになるとともに、更には、押圧力に対応して、誘電体部材13eと誘電体部材13fとの間の当接面積が変化することになる。なお、図10Dに示した位置検出センサにおいても、第1の誘電体部材13eと第2の誘電体部材13fとスペーサ23fとを一体的に形成することも可能である。
【0087】
なお、図10に示した4つ形態の位置検出センサにおいても、スペーサ23c、23d、23eu、23ed、23fは、図8等に示した第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの場合と同様な位置に配置される。また、図10においても、上側基板10と下側基板20を互いに張り合わせるための張り合わせ部材30a、30bが使用されている。
【0088】
[第2の実施の形態]
[位置検出センサ1BXの構成例]
次に、第2の実施の形態の位置検出センサ1BXについて説明する。図11は、この第2の実施の形態の位置検出センサ1BXを説明するための断面図である。この第2の実施の形態の位置検出センサ1BXでは、可撓性を有する誘電体部材13に、複数の第1の導体11Xが配置される上側基板10の機能を兼用させるところに特徴がある。
【0089】
図11に示すように、この第2の実施の形態の位置検出センサ1BXでは、可撓性を有する誘電体部材13の一方の面に複数の第1の導体11Xが配置されている。また、複数の第1の導体11Xには可撓性を備える保護層15が設けられており、ユーザが指示入力面1BS上にて指示体による位置指示を行う際に、指示体の操作から複数の第1の導体11Xを保護する。従って、誘電体部材13の一方の面には、複数の第1の導体11Xを介して保護層15が設けられた構造を備える。下側基板20には、上述したように、複数の第2の導体21Yとスペーサ23が設けられている。誘電体部材13の他方の面は、下側基板20に対向している。
【0090】
この第2の実施の形態の位置検出センサ1BXでは、誘電体部材13が上側基板10としての機能を果たすようにしたものであり、その素材としては、上側基板10の素材として例示した、例えば光透過性を有するガラス基板が用いられる。ガラス素材は、誘電率が比較的に高いので誘電体として使用するに適しているからである。誘電体部材13としてガラス素材が採用される場合には、ガラス基板上にセンサ導体、この例では複数の第1の導体11Xが蒸着あるいは印刷などで一体的に形成された、可撓性を有する程度にその厚みが薄く設定されたセンサ基板が適用できる。上述したように、ガラス素材で構成された誘電体部材13は、上側基板10と同様に、厚みは例えば175μm〜300μm程度とされ、第1の導体11X自体の厚みも例えば0.1μm程度とされ、その厚みは、それぞれ極めて薄いものである。保護層15の厚みも極めて薄いものとなっている。
【0091】
なお、誘電体部材13としてはガラス素材に限定されないことは明らかである。例えば、既述したように、フィルム状の光透過性を有する合成樹脂を採用することもできる。誘電体部材13としてフィルム状の合成樹脂を採用する場合には、例えばPET(polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)、LCP(liquid crystal polymer)などのフィルム基板にセンサ導体、この例では複数の第1の導体11X、が一体的に形成された、フィルム状センサ基板が適用できる。合成樹脂基板にセンサ導体が一体的に形成された素材(基板)を誘電体部材13として採用する場合、その厚みが極めて薄いと、必要以上の可撓性を有することがある。従って、この場合には、保護層15としてガラス基板など適度な可撓性を有する素材を採用することで、誘電体部材13、複数の第1の導体11X、および保護層15から成る全体としての可撓性を適切に設定することができる。また、ガラス素材に代えて、光透過性を有する合成樹脂によって保護層15を形成することもできる。
【0092】
従って、位置検出センサ1BXの指示入力面1BSに対して指示体により押圧力が加えられていない状態においては、スペーサ23によって、送信導体群11に当接している誘電体部材13は、受信導体群21に対して所定距離離間している。
【0093】
次に、位置検出センサ1BXの指示入力面1BSに対して指示体により押圧力が加えられると、上述したように、保護層15、送信導体群11、誘電体部材13が撓むことにより、誘電体部材13は受信導体群21を構成する第2の導体21Yに当接するようになる。すなわち、指示体としての指が位置検出センサ1BXの指示入力面1BSを押圧すると、保護層15、送信導体群11、誘電体部材13が撓むことにより、最終的には、誘電体部材13と、受信導体群21を構成する第2の導体21Yとが当接する状態となる。このように、第1の導体11Xと第1の導体21Yとが誘電体部材13の厚みを介して近接した状態において、誘電体部材13と、受信導体群21を構成する第2の導体21Yとの当接面積は押圧力に対応して変化する。
【0094】
なお、図11においては、スペーサ23は下側基板20の側に設けられているが、上述したように、誘電体部材13と一体的に形成され、あるいは誘電体部材13上に別部材としてあるいは一体的に設けることもできる。
【0095】
[第1、第2の実施の形態の位置検出センサ1B、1BXの変形例]
図12は、第1、第2の実施の形態の位置検出センサ1B、1BXの変形例を説明するための図である。上述した第1、第2の実施の形態の位置検出センサ1B、1BXにおいては、スペーサ23やスペーサ23a〜23fは、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが重なり合わない領域に設けるようにした。しかし、これに限るものではない。
【0096】
例えば、図12Aに示すように、スペーサ23Xを導体上、例えば第2の導体21Y上に設けるようにしてもよい。すなわち、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが対向する部分にも、スペーサ23Xを設けるようにしてもよい。この場合、スペーサ23Xの大きさや高さは必要に応じ種々に調整される。
【0097】
また、図12Bに示すような誘電体部材13gを設けることもできる。誘電体部材13gの一方の面は、送信導体群11を介して上側基板10に当接している。下側基板20に対向する誘電体部材13gの他方の面は、多数の凹凸が設けられた表面形状を有する。この場合、誘電体部材13gの、下側基板20と対向する面に設けられた多数の凹凸が、上述したスペーサとしての役割を果たすものである。指などの指示体によって押圧されていない場合には、誘電体部材13gに形成された凸部が下側基板20および第2の導体21Yに対し微小な面積で当接している。指などの指示体によって押圧されると、誘電体部材13gが弾性変形することで、誘電体部材13gに形成された凸部と下側基板20および第2の導体21Yとが近接するとともに、誘電体部材13gに形成された凸部と下側基板20および第2の導体21Yとの間に形成される当接面積が増加するようになる。
【0098】
[他の変形例]
第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間で、互いの配置関係を入れ替えても良い。また、送信導体群11と受信導体群21との間に設けられる誘電体部材は、フィルム状、シート状などと表現される極薄い形状のものとして構成することが可能である。また、誘電体部材を送信導体群11あるいは受信導体群21に当接させるに際し、塗布、印刷、吹きつけ、融着等の種々の方法により、互いを固着させ、あるいは接着材を介して互いを固着させることも可能である。誘電体部材には、所定形状の複数の貫通孔を設けることもできる。更には、必要に応じて、この貫通孔を貫通させてスペーサを配置することもできる。
【0099】
また、上述した実施の形態においては、誘電体部材は、送信導体群11あるいは受信導体群21の全面を覆うように設けるようにしたが、必ずしも全面を覆う必要もない。
【0100】
更には、下側基板20は基本的には可撓性を有するものでなくてよいが、下側基板20もまた、例えばフィルム状基板など、可撓性を有する構成とすることもできる。
【0101】
スペーサについても、可撓性を有する素材でも、可撓性を有しない素材でも採用しうる。また、スペーサを、第1の導体11X間に形成されたギャップの領域に、第1の導体に沿うようにライン状に設けたり、第2の導体21Y間に形成されたギャップの領域に、第2の導体に沿うようにライン状に設けたりしてもよい。
【0102】
また、上述した実施の形態において、位置検出センサ1B、1BXは、LCD1Cの表示画面側に設けられるものであるため、位置検出センサ1B、1BXを構成する各部分は、光透過性のあるもの(透明なもの)として形成するようにした。しかし、これに限るものではない。例えば、LCD、有機ELなどの表示装置を備えていない、タブレット型の位置入力装置であって、パーソナルコンピュータなどに接続されて用いられる場合には、位置検出センサ1B、1BXは、光透過性のある材料(透明な材料)で形成される必要はない。
【0103】
[実施の形態の効果]
従来の静電容量方式の位置検出センサは、指などの指示体を通じてグラウンドに逃げる電荷による静電容量の変化を検出していたが、上述した実施の形態の位置検出センサ1B、1BXは、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが構成するコンデンサの自己容量の変化を検出するものである。このため、上述した実施の形態の位置検出センサ1B、1BXの場合には、指示体が導電性を有するものでなくてもよい。例えば、ゴムなどの絶縁体を指示体として用いて指示入力を行っても適切に検出できる。したがって、上述した実施の形態の位置検出センサ1B、1BXは、ゴム手袋をして作業する作業所や手術室などにおいても利用することができるなど、位置検出センサの活用範囲を大幅に広げることができる。また、上述した実施の形態の位置検出センサ1B、1BXは、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが構成するコンデンサの静電容量の変化幅(ダイナミックレンジ)を大きくすることができ、これによって感度の良い位置検出センサが実現できる。実験による一例では、上述した位置検出センサ1B、1BXを指示体によって押圧していない状態で、第1の導体11Xと第2の導体21Yとによって構成されるコンデンサとしての初期容量は約1.4pF程度である。これに対して、指示体で押圧した状態では、第1の導体11Xと第2の導体21Yとによって構成するコンデンサの容量は約8.4pFである。したがって、変化レンジは8.6−1.4=7.2pFとなり、従来の静電容量型の位置検出センサに比べ、大幅に静電容量を変化させることができる。
【0104】
また、この発明の位置検出センサ1B、1BXでは、指示体による押圧に対応して、第1の導体11Xと第2の導体21Yとによって構成されるコンデンサとしての静電容量が変化するので、この静電容量の変化に応じて、押圧力の検出を精度よく行なうことができる。
【0105】
更には、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間に介在させる誘電体部材の厚さ、比誘電率を適切に選択することにより、第1の導体11Xと第2の導体21Yとによって構成されるコンデンサの静電容量の変化特性を目的に応じて設定することができる。
【符号の説明】
【0106】
1…表示機能付機器、1A…フロントパネル、1B、1BX…位置検出センサ、1C…LCD、1D…マザーボード、1E…筐体、11…送信導体群、11X、11X1〜11Xm…第1の導体(送信導体)、21…受信導体群、21Y、21Y1〜21Yn…第2の導体(受信導体)、200…信号供給回路、24…選択回路、25…信号発生回路、300…信号受信回路、31…増幅回路、32…A/D変換回路、33…指示位置及び押圧力検出回路、40…制御回路、10…上側基板(第1の基板)、13…誘電体部材(誘電体フィルム)、14…空気層、20…下側基板(第2の基板)、23…スペーサ、1BS…指示入力面、13a〜13f…誘電体部材、23a〜23f…スペーサ、23eu、23ed…スペーサ、23x…スペーサ、15…保護層
【技術分野】
【0001】
この発明は、指示体により指示された位置の静電容量の変化を検出することで指示体が指示する位置の検出を行う位置検出センサおよびこの位置検出センサを備える位置検出装置およびこれらのセンサ及び装置で用いられる位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル等に用いられる指示体の位置検出の方式として静電容量方式の指示体検出装置の開発が盛んに行われている。静電容量方式には、表面型(Surface Capacitive Type)と投影型(Projected Capacitive Type)の2種類の方式があり、両方式ともセンサ電極と指示体(例えば、指、静電ペン等)との間の静電結合状態の変化を検出して、指示体の位置を検出する。
【0003】
例えば特許文献1(特開2009−265759号公報)には、表面型の静電容量方式の指示体検出装置が紹介されている。また、投影型の静電容量方式の指示体検出装置は、例えばガラスなどの透明基板や透明フィルム上に複数の電極を所定パターンで形成して構成し、指示体が接近した際の指示体と電極との静電結合状態の変化を検出する。この投影型の静電容量方式の指示体検出装置は、例えば特許文献2(特開2003−22158号公報)、特許文献3(特開平9−222947号公報)、特許文献4(特開平10−161795号公報)などに開示されている。
【0004】
そして、投影型静電容量方式を発展させたクロスポイント静電容量方式と呼ばれる方式の指示体検出装置が提案されている。
【0005】
図13に、クロスポイント静電容量方式の指示体検出装置におけるセンサ部の概略構成を示す。このクロスポイント静電容量方式の指示体検出装置は、複数本の指など、複数個の指示体の検出が同時に可能なマルチタッチ対応とされる。
【0006】
このクロスポイント静電容量方式の指示体検出装置の位置検出センサでは、複数個の上部電極Exと、複数個の下部電極Eyとを、指示入力面の例えばX軸方向(横方向)およびY軸方向(縦方向)に、互いに直交させて配置させる。この場合、上部電極Exと下部電極Eyとの間の重なり部分(クロスポイント)には所定の静電容量Co(固定容量)が形成される。そして、使用者の指などの指示体fgが、指示入力面に近づく、あるいは接触した位置においては、その位置の電極Ex,Eyと指示体fgとの間に静電容量Cfが形成される。そして、指などの指示体fgは人体を通じてグラウンドに所定の静電容量Cgを通じて接続される。この結果、その静電容量CfおよびCgのために、その指示体fgの位置では、上部電極Exと下部電極Eyとの間の電荷が変化する。従来のクロスポイント静電容量方式の指示体検出装置では、この電荷の変化を検出することで、指示入力面内において指示体により指示された位置が特定される。
【0007】
また、特許文献5(特開2010−79791号公報)には、指や静電ペンなど以外の指示体を検出することができるようにした静電容量型入力装置が開示されている。この特許文献5の入力装置の指示体検出センサは、図14Aに示すように、第1の基板2と、この第1の基板2に対して空気層4を介して対向する可撓性の第2の基板3と、第1の基板2の第2の基板3側の面のほぼ全面に形成された第1の電極5と、第2の基板3の第1の基板2側の面に形成された複数個の第2の電極6とを備える。
【0008】
この特許文献5の入力装置の指示体検出センサでは、指示体により第2の基板3が押圧されていないときには、図14Aに示すように、複数の第2の電極6のそれぞれと、第1の電極5との間に静電容量C1が形成される。
【0009】
そして、第2の基板3が指示体により第1の基板2側に押圧されると、第2の基板3は可撓性を有しているために、図14Bにおいて矢印で示すように、押圧位置において第2の基板3が第1の基板2側に撓み、第1の基板2と第2の基板3間の距離が短くなり、その部分の第1の電極5と第2の電極6とで構成される静電容量が、前記C1よりも大きいC2になる。さらに、図14Bにおいて矢印で示すように押圧されると、第1の電極5に第2の電極6が接触することで導通状態になる。
【0010】
特許文献5の入力装置では、上記の第1の電極5と第2の電極6とで構成される静電容量がC1より大きくなることを検出することで、指示体による第2の基板3への押圧入力(押圧位置)を検出することができると共に、さらに第1の電極5に第2の電極6が接触して導通状態になることを検出することで、当該押圧位置での押圧入力を確定することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−265759号公報
【特許文献2】特開2003−22158号公報
【特許文献3】特開平9−222947号公報
【特許文献4】特開平10−161795号公報
【特許文献5】特開2010−79791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図13を用いて上述したクロスポイント静電容量方式の指示体検出センサにおいては、電極ExおよびEy間の距離は物理的に固定されており、クロスポイントにおける電極間の静電容量Coも固定値であり、例えば0.5pFである。そして、電極に指が近づく、あるいは接触したときには、人体が持つ静電容量の影響によって、電極Exおよび電極Ey間の静電容量Coの値が変化するので、その変化を検出することにより、指示体としての指を検出する。すなわち、クロスポイント静電容量方式の指示体検出センサは、人体などの所定の静電容量を有する指示体が近づいたときの影響の度合いを検出するものである。
【0013】
しかしながら、指を近づけたときのクロスポイントでの静電容量の変化は非常に小さく、電極ExおよびEy間の静電容量Coの値が例えば0.5pFであるのに対して、僅かに0.05pF程度である。このため、指示体の検出出力の対ノイズに対するマージンが厳しく、指などの指示体を感度良く検出することが困難であり、ましてや、指などの指示体の押圧力を検出することは非常に困難である。
【0014】
また、クロスポイント静電容量方式の検出手法は、クロスポイントに、指などの導電体を近づけることで電極間の静電容量に影響を与える方式(相互容量)であるので、人体を含む導電体でしか検出できず、例えば指の乾燥具合で感度が変わり、また、ゴム手袋等には反応しないという問題があった。
【0015】
特許文献5の発明の場合には、指示体にこのような制約はなく、ゴム手袋等を装着していても、押圧指示位置の検出が可能である。しかし、特許文献5の検出手法は、静電容量型であっても、最終的には、第1の電極5に第2の電極6が接触して導通する状態を検出することで、押圧入力を確定するようにしている。したがって、指示体により押圧された位置を検出することはできても、指示体の第2の基板3に対する押圧力を精度良く検出することは困難である。
【0016】
すなわち、第2の基板3は、指示体の第2の基板3に対する押圧力に応じた大きさで撓むので、第2の電極6が第1の電極5に接触するまでは、第1の電極5と第2の電極6間の静電容量は、短くなる距離に反比例して大きくなる。しかし、第2の電極6が第1の電極5に接触すると両者は導通するために、第1の電極5と第2の電極6間の静電容量はゼロになる。
【0017】
このことから、特許文献5の場合の指示体センサでは、指示体による第2の基板3に対する押圧力を静電容量の変化に基づいて検出できるのは、第2の電極6が第1の電極5に接触するまでである。
【0018】
この発明は、以上の点に鑑み、静電容量の変化を監視するだけで、指示体による指示位置を検出することができると共に、当該指示位置に加えられた押圧力を感度良くおよび精度良く検出することができる静電容量方式の位置検出センサ、位置検出装置および位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の位置検出センサは、
第1の方向に配置された複数の第1の導体と、前記第1の方向に対して交差する方向に配置された複数の第2の導体を備え、指示体による位置の指示に対応して前記第1の導体と前記第2の導体との間に形成される静電容量の変化を検出することで前記指示体によって指示された位置を検出する、静電容量方式による位置検出センサであって、
前記複数の第1の導体は可撓性を有しており、
前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間には、可撓性を有する誘電体部材が介在するとともに、前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面は前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体に当接しており、
前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面に当接した前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体が前記可撓性を有する誘電体部材を介して対向する、前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体と、前記可撓性を有する誘電体部材の他方の面との間はスペーサによって互いが所定の距離離間されており、
前記指示体による位置の指示に対応して前記複数の第1の導体が押圧されることによって、前記可撓性を有する誘電体部材の前記他方の面と、前記他方の面に対向する前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体との間の当接面積を変化させることで、前記可撓性を有する誘電体部材を介在させて前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間に上記静電容量の変化を引き起こさせるようにしたことを特徴とする。
【0020】
この請求項1に記載の発明の位置検出センサによれば、当該位置検出センサは、複数の第1の導体と複数の第2の導体との間には、可撓性を有する誘電体部材が介在している。当該誘電体部材の一方の面は複数の第1の導体あるいは複数の第2の導体に当接されており、当該誘電体部材の他方の面は、スペーサによって複数の第2の導体あるいは複数の第1の導体に対して所定距離離間して対向した構成を有している。
【0021】
そして、指示体によって、位置検出センサが、複数の第1の導体側から複数の第2の導体側の方向に押圧されると、可撓性を有する誘電体部材と、当該可撓性を有する誘電体部材に対して所定の距離離間して対向配置された複数の第2の導体あるいは複数の第1の導体との当接面積が変化する。すなわち、指示体による押圧に対応して可撓性を有する誘電体部材の、導体(電極)との当接面積が変化することになり、その結果、指示体による押圧に対応して、第1の導体と第2の導体との間に形成される静電容量を大きく変化させることができる。
【0022】
このように、指示体による押圧に対応して、可撓性を有する誘電体部材の電極に対する当接面積を変化させるようにすることで、第1の導体と第2の導体との間の静電容量を大きく変化させることができ、この変化を検出することにより、指示体による指示位置を感度良く検出することができる。また、当該静電容量の変化量に応じて、どの程度の力(押圧力)が加えられているかを検出することができる。このように、可撓性を有する誘電体部材の電極に対する当接面積を指示体による押圧に対応して変化させることで、第1の導体と第2の導体との間の静電容量を大きく変化させることができ、指示位置を感度良く検出することができると共に、当該指示位置に加えられた力(押圧力)を感度良くおよび精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、指示体による押圧に対応して、誘電体部材が有する厚みを介して第1の導体と第2の導体を互いに近接させるとともに、可撓性を有する誘電体部材の、導体との当接面積を変化させることで静電容量の大きな変化を引き起こすことができ、指示体による指示位置を感度良く検出することができると共に、当該指示位置に加えられた力(押圧力)を感度良くおよび精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態の表示機能付機器1の構成の概略を説明するための分解斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の位置検出装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの構成例を説明するための図である。
【図4】位置検出センサ1Bに対して指示操作が行われた場合の位置検出センサ1Bの状態について説明するための図である。
【図5】本発明の動作原理を説明するための図である。
【図6】スペーサ23の構成例を説明するための図である。
【図7】位置検出センサ1Bが押圧されたときのスペーサ23の状態を説明するための図である。
【図8】位置検出センサ1BのY−Y断面図の一部(右端部)を示す図である。
【図9】位置検出センサ1Bの変形例を説明するための図である。
【図10】位置検出センサ1Bの他の変形例を説明するための図である。
【図11】第2の実施の形態の位置検出センサ1BXを説明するための断面図である。
【図12】位置検出センサ1B、1BXの変形例を説明するための図である。
【図13】クロスポイント静電容量方式の指示体検出装置におけるセンサ部の概略構成を示す図である。
【図14】従来の位置検出センサの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図を参照しながら、この発明の位置検出センサ、位置検出装置および位置検出方法の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、表示機能付タブレット装置、タブレット型情報端末あるいはパッド型情報端末などと呼ばれる表示機能付機器に、この発明を適用した場合を例にして説明する。
【0026】
[第1の実施の形態]
[表示機能付機器1の概略構成]
図1は、この実施の形態の表示機能付機器1の構成の概略を説明するための分解斜視図である。図1に示すように、この実施の形態の表示機能付機器1は、筐体1E内の最下層にマザーボード1Dが収納され、その上に表示画面を上側(フロントパネル1A側)にしてLCD(Liquid Crystal Display)1Cが設けられる。当該LCD1Cの表示画面側に位置検出センサ1Bが設けられる。そして、位置検出センサ1Bの上側にフロントパネル1Aが設けられ、上述の各収納物1D、1C、1Bが筐体1E内に保持される。
【0027】
ここで、マザーボード1Dには、通信回路、LCD1C用の制御回路、位置検出センサ1Bに信号を供給する信号供給回路、位置検出センサ1Bからの信号を受信して、指示位置等を検出する信号受信回路等の種々の回路が形成されている。LCD1Cは、この実施の形態の表示機能付機器1の表示機能を実現するための表示手段である。位置検出センサ1Bは、この発明が適用されて構成されたものであり、ユーザからの種々の指示入力(操作入力)を受け付ける受付手段としての機能を実現している。
【0028】
上述したように、LCD1Cの表示画面は位置検出センサ1Bを介して観視される。このため、位置検出センサ1Bは光透過性(透明性)を有するように構成されている。これにより、ユーザは、表示機能付機器1のフロントパネル1A側からLCD1Cに表示される情報を観視しながら、位置検出センサ1Bを通じて、種々の指示入力を行うことができるようにされる。
【0029】
なお、図1には図示しなかったが、LCD1Cと位置検出センサ1Bとは、マザーボードの対応する回路部にそれぞれ接続される。そして、詳しくは後述もするが、位置検出センサ1Bと、マザーボード1Dに設けられている信号供給回路や信号受信回路により、位置検出装置が構成される。また、表示機能付機器1は、その外観の大きさが、例えば、用紙サイズでいえば、A5版サイズ、B5版サイズ、A4版サイズなど、種々の大きさのものとして実現される。
【0030】
[位置検出装置の構成例]
次に、位置検出センサ1Bを含む位置検出装置の構成例について説明する。図2は、この実施の形態の位置検出装置の構成例を説明するためのブロック図である。図2に示すように、この実施の形態の位置検出装置は、図1に示した位置検出センサ1Bと、信号供給回路200と、信号受信回路300と、制御回路40とからなる。制御回路40は、この実施の形態の位置検出装置の各部を制御するための回路であり、例えばマイクロコンピュータを搭載して構成されている。
【0031】
位置検出センサ1Bは、信号供給回路200に接続される複数の第1の導体(送信導体)と、信号受信回路300に接続される複数の第2の導体(受信導体)とを備える。そして、第1の導体11X1〜11Xmは送信導体群11を構成する。また、第2の導体21Y1〜21Ynは受信導体群21を構成する。
【0032】
なお、以下の説明において、特に区別して示す場合を除き、第1の導体11X1〜11Xmを総称して第1の導体11Xといい、第2の導体21Y1〜21Ynを総称して第2の導体21Yという。また、送信導体群11を構成する第1の導体11Xの数や受信導体群21を構成する第2の導体21Yの数は、ユーザによって操作される位置検出センサ1Bの指示入力面1BSのサイズなど、実施の態様に応じて適宜設定される。また、この実施の形態においては、送信導体群11側が、ユーザの指等の指示体によって指示入力が行われる指示入力面1BSとされる。
【0033】
図2においては、右下端部に示したX軸矢印がX軸方向を示し、同様にY軸矢印がY軸方向を示している。そして、詳しくは後述もするが、送信導体群11は、位置検出センサ1BのY軸方向に延伸された細長(平板状)のm本の第1の導体11Xが、X軸方向に所定間隔を隔てて配列されて構成されたものである。また、受信導体群21は、位置検出センサ1BのX軸方向に延伸された細長(平板状)のn本の第2の導体21Yが、Y軸方向に所定間隔を隔てて配列されて構成されたものである。
【0034】
また、詳しくは後述するが、送信導体群11と受信導体群21は、誘電体部材と複数のスペーサとを介して対向配置されている。これにより、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが対向する部分では、コンデンサが構成されるようなっている。なお、この実施の形態において、第1の導体11Xおよび第2の導体21Yは、例えば、銀パターンやITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜からなる透明電極膜、あるいは銅箔等で形成される。
【0035】
信号供給回路200は、位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対する指示体による指示位置や指示位置に加えられた押圧力の検出を可能にするための信号を、送信導体群11を構成する第1の導体11Xのそれぞれに供給する。信号供給回路200は、図2に示したように、選択回路24と信号発生回路25とを備えている。選択回路24は、制御部40からの制御に応じて、信号発生回路25からの信号を第1の導体11Xに選択的に供給する。信号発生回路25は、制御部40の制御に応じて、所定の周波数を有する、正弦波、矩形波などの交流信号を発生させ、これを選択回路24に供給する。
【0036】
そして、この実施の形態の選択回路24は、制御回路40によって、所定時間内に全ての第1の導体11X1〜11Xmに対して信号発生回路25からの信号を供給するように切換制御される。このように、選択回路24によって信号発生回路25からの交流信号を第1の導体11Xに選択的に供給するのは、指示入力面1BS上で複数の指示位置と、これらに加えられた押圧力とを検出することができるようにするためである。
【0037】
信号受信回路300は、受信導体群21を構成する複数の第2の導体21Yから得られる受信信号に対して信号処理をすることにより、指示体による指示入力面1BS上の指示位置の検出と、当該指示位置に加えられた押圧力の検出とを行うものである。図2に示すように、信号受信回路300は、増幅回路31と、A/D(Analog/Digital)変換回路32と、指示位置及び押圧力検出回路33とを備えている。
【0038】
増幅回路31は、受信導体群21を構成する第2の導体21Yから得られる受信信号を増幅し、A/D変換回路32に供給する。A/D変換回路32は、増幅回路31において増幅された第2の導体21Yからの受信信号をデジタル信号に変換し、これらを指示位置及び押圧力検出回路33に供給する。
【0039】
指示位置及び押圧力検出回路33は、A/D変換回路32からの信号に基づいて、位置検出センサ1Bに対して指示体による指示入力が行われた場合に、指示された指示入力面1BS上の指示位置の検出(識別)と加えられた力(押圧力)の検出とを行う。上述したように、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが対向する部分ではコンデンサが構成される。そして、詳しくは後述するが、位置検出センサ1Bに対して押圧力が加えられると、その押圧力が加えられた送信導体群11側と受信導体群21側との間では、積層された各部材の接触状態が変化する。
【0040】
すなわち、位置検出センサ1Bを押圧すると、送信導体群11と受信導体群21との間に介在する誘電体部材と、送信導体群11あるいは受信導体群21との接触状態が変化する。ここで、接触状態とは、積層された部材が直接に接触する場合だけでなく、互いが距離的に近づく状態をも含んでいる。すなわち、例えば、送信導体群11側から受信導体群21側に押圧力が加えられると、誘電体部材の、第2の導体21Yあるいは第1の導体11Xとの接触面積が増加する。
【0041】
そして、誘電体部材と、この誘電体部材に対向する受信導体群21あるいは送信導体群11との間の接触面積の増加が支配的な要因となって、押圧力に応じて、第1の導体11Xと第2の導体21Yとで構成されるコンデンサの静電容量が変化する。このため、静電容量が変化した部分では第2の導体21Yに流れる信号(電流)が増加することになる。
【0042】
そこで、複数の第2の導体21Yのそれぞれの導体に流れる信号量(電流量)を監視することにより、指示体が位置検出センサ1B上のどの位置を指示操作しているのかを検出することができる。なお、どの第1の導体11Xに交流信号を供給しているのかは、制御回路40からの情報により認識することができる。これらの情報により、信号発生回路25からの交流信号が供給されている第1の導体11Xと、指示体による指示位置に応じて信号量が変化した第2の導体21Yとが交差する部分が、指示体によって指示された位置領域であると検出することができる。しかも、指示体による押圧に応じてコンデンサの静電容量が変化するため、第2の導体21Yに流れる信号量を検出することで、指示体によって位置検出センサ1Bにどの位の押圧力が加えられたかも検出することができる。
【0043】
このように、指示位置及び押圧力検出回路33は、指示体が指示する位置に加え、指示体による押圧力に応じた信号を検出することができる。この指示位置及び押圧力検出回路33で検出された指示位置や押圧力は、マザーボード1Dの中の所定の制御回路に供給され、ユーザからの入力情報として用いられる。
【0044】
[位置検出センサ1Bの構成例]
次に、位置検出センサ1Bの構成例について、図3〜図5を参照しながら具体的に説明する。図3は、この実施の形態の位置検出センサ1Bの構成例を説明するための図であり、図4は、この実施の形態の位置検出センサ1Bに対して指示入力が行われた場合の位置検出センサ1Bの状態について説明するための図である。図5は、本発明の動作原理を説明するための図である。
【0045】
上述したように、この実施の形態の位置検出センサ1Bは、従来の静電容量方式の位置検出センサのように、指示体を通じてグラウンドに逃げる電荷による静電容量の変化を検出するものではない。この実施の形態の位置検出センサ1Bは、指示体による押圧力に応じた第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間の静電容量の変化を、可撓性を有する誘電体部材13を介在させて検出するものである。このため、この実施の形態の位置検出センサ1Bは、指示入力のために用いる指示体は指などの導体である必要はなく、絶縁体であっても良い。したがって、この実施の形態の位置検出センサ1Bは、ゴム手袋をしたユーザの指で操作しても、その指示位置及び押圧力を良好に検出することができるものである。
【0046】
そして、図3Aは、位置検出センサ1Bの指示入力面1BS(指、ペンなどの指示体により指示入力される面)側から見た正面図である。また、図3Bは、図3AにおけるX−X断面図であり、図3Cは、図3AにおけるY−Y断面図である。なお、図3に示す位置検出センサ1Bでは、指示入力面1BS側からみて、第1の導体11Xが配列された方向がX軸方向であり、第2の導体21Yが配列された方向がY軸方向である。
【0047】
図3B、Cに示すように、この実施の形態の位置検出センサ1Bは、上側基板(第1の基板)10と下側基板(第2の基板)20とが上下に配置されて構成される。上側基板10の、下側基板20との対向面とは反対側の面10aが指示入力面1BSとなる。
【0048】
上側基板10は、指示入力面1BS(上側基板10の上面10a)において指示体による押圧がなされたときに下側基板20側に撓むことが可能な可撓性の材料からなり、この例では、比較的に厚みが薄いガラス基板や、例えばPET(polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)、LCP(liquid crystal polymer)などの、透明の合成樹脂からなるフィルム基板で構成されている。下側基板20は、この例では、ガラス基板や剛体の透明の合成樹脂からなる。
【0049】
そして、上側基板10の下側基板20との対向面側には、それぞれ所定の幅Wxを有し、Y軸方向に延伸されたm(mは2以上の整数)本の細長(平板状)の第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmが、所定の配列ピッチPx(>Wx)で、X軸方向に配列されている。この第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmのそれぞれは、この例では、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極で構成される。この第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmのそれぞれからは、第1の接続導体12X1,12X2,・・・,12Xmが導出される。これら第1の接続導体12X1,12X2,・・・,12Xmが、マザーボード1Dに設けられる図2に示した信号供給回路200を構成する選択回路24に接続される。
【0050】
また、下側基板20の上側基板10との対向面側には、それぞれ所定の幅Wyを有し、X軸方向に延伸されたn(nは2以上の整数)本の細長(平板状)の第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynが、所定の配列ピッチPy(>Wy)でY軸方向に配列されている。この第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynのそれぞれは、この例では、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極で構成される。この第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynのそれぞれからは、第2の接続導体22Y1,22Y2,・・・,22Ynが導出される。これら第2の接続導体22Y1,22Y2,・・・,22Ynが、マザーボード1Dに設けられた、図2に示した信号受信回路300を構成する増幅回路31に接続される。
【0051】
なお、この実施の形態では、前記幅Wx、Wyは、例えばWx=Wy=2〜2.5mmに選定され、また、前記配列ピッチPx、Pyは、例えばPx=Py=3.2mmに選定される。また、ガラス基板あるいは合成樹脂素材からなるフィルム基板などが適用される、可撓性を有する上側基板10には、第1の導体11Xが蒸着、印刷などの既知の導体形成プロセスによって上側基板10と一体的に形成される。同様にして、ガラス基板あるいは合成樹脂基板などが適用される下側基板20には、第2の導体21Yが蒸着、印刷などの既知の導体形成プロセスによって下側基板20と一体的に形成される。
【0052】
さらに、上側基板10には、この複数個の第1の導体11X1〜11Xmの全体を覆うように誘電体部材13が設けられる。この誘電体部材13は、例えばPET(polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)、LCP(liquid crystal polymer)などの比誘電率が2〜10程度の誘電体からなる透明の誘電体フィルムで構成される。この誘電体層13の厚さは、例えば5〜15μmとされる。また、ガラス素材も誘電体部材13として適用しうる。更には、この誘電体部材13は、高誘電率フィラーを高密度に充填した誘電体フィルム(比誘電率が40以上)により構成しても良い。この他、誘電体部材13としては、透明エポキシ樹脂、フォトレジスト用アクリル系樹脂、高光透過性フッ素樹脂、1液性のウレタン系樹脂などの透明性を有する種々の誘電体が適用しうる。
【0053】
そして、上側基板10の周部と下側基板20の周部とが、所定の空隙dだけ隔てられるように、枠形状の張り合わせ部材30を介して張り合わされる。したがって、この実施の形態の位置検出センサ1Bにおいては、下側基板20の第2の導体21Y1〜21Ynが形成されている面と、上側基板10の誘電体部材13の面との間には、空気層14が介在する。
【0054】
そして、この実施の形態では、指示入力面1BS(10a)への押圧力が存在しないときに、上側基板10と下側基板20とが所定の距離離間するように、すなわち空気層14の層厚を維持するように、下側基板20の、上側基板10との対向面側に、スペーサ23が設けられる。具体的には、下側基板20上であって、第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynと第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmとが空間的に交差して重なる領域以外の領域(導体間のギャップ領域)に、突起形状を有するスペーサ23が所定の間隔毎に配置される。
【0055】
スペーサ23は、この例では、X軸方向には、第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmの、互いが隣接する導体の間に、配列ピッチPxで配列されると共に、Y軸方向には第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynの、互いが隣接する導体の間に、配列ピッチPyで配列されている。これらのスペーサ23は、例えば、透明の誘電体材料を印刷したり、ドットプリンタにおけるインク吐出のような原理で形成される。また、スペーサ23の高さは、空隙dと同じ、あるいはそれ以下であって、例えば20μm〜100μm程度とされる。
【0056】
この結果、指示入力面1BSが指示体によって押圧されると、第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xmと第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Ynとが空間的に交差する部分において、上側基板10が下側基板20側に撓む。
【0057】
また、送信導体群11を構成する複数の第1の導体11Xのそれぞれは、上側基板10に対して十分に薄いものであるために、上側基板10の撓みに対応した位置にある第1の導体11Xもまた撓むことになる。さらに、誘電体部材13もまた、例えばフィルム状に薄く形成されて可撓性を有しており、上側基板10の撓みに応じて、誘電体部材13の対応する位置もまた撓むことになる。このため、指やペンなどの指示体が指示入力面1BSを押圧すると、第1の導体11Xが第2の導体21Y側に近づくように、互いが近接する。
【0058】
この場合、位置検出センサ1Bに対して、指を指示体として用いて指示入力を行うことを想定すると、個人差はあるものの、指示入力面1BS上の指が接触する部分は、凡そ直径が9mm前後の略円形状あるいは楕円形状となる。上述したように、この実施の形態の位置検出センサ1Bは、それぞれが2.0〜2.5mmの幅を有する第1の導体11Xと第2の導体21Yとが、配列ピッチ3.2mmで交差するように配列されている。
【0059】
このため、位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに指が接触すると、その押圧部分は、例えば、図4Aにおいて円形で示したような領域となる。すなわち、当該押圧部分の領域には、それぞれの配列方向において、互いに隣接する3本の第1の導体11X及び第2の導体21Yが含まれる。斜線で示した領域において、上側基板10と第1の導体11Xと誘電体部材13とが撓み、第2の導体21Yに近づくことになる。
【0060】
図4Bは、図4Aに対応しており、指が位置検出センサ1Bの指示入力面1BSを押圧している場合の第1の導体11X2部分のY−Y断面図である。すなわち、図4Bは、第1の導体11X2部分における図3Cに示したY−Y断面図と同様のものである。この例は、指示入力面1BS上であって、第1の導体11X2と第2の導体21Y3とが交差する部分を中心にして、指により押圧力がかけられた初期の状態を模式的に示す。
【0061】
図4Bに示すように、指によって指示入力面1BSが次第に押圧されると、第1の導体11X2は、第2の導体21Y2、21Y3、21Y4と対向する部分で撓み、これによって誘電体部材13が第2の導体21Y2、21Y3、21Y4のそれぞれに接近することになる。更には、誘電体部材13は第2の導体21Y2、21Y3、21Y4に当接するようになり、最終的には、誘電体部材13と第2の導体21Y2、21Y3、21Y4の間で形成されるそれぞれの当接面積が増加するようになる。
【0062】
ここで、図5を参照して、本発明の動作原理を説明する。一般に、コンデンサの静電容量Cは、次の(1)式により与えられる。
コンデンサの静電容量C=ε0S/D …(1)
当該(1)式において、ε0は電極間に介在する誘電体の比誘電率であり、Sは対向する電極の面積であり、Dは対向する電極間の距離である。ここで、比誘電率ε0は、電極間に介在させる誘電体部材により一意に決まる。
【0063】
下側基板20には、複数の第2の導体21Yが、それぞれの導体間に所定のギャップ(Py−Wy)が設けられた状態で、配置されている。また、スペーサ23は、導体間ギャップ(Py−Wy)の領域に、所定の間隔で、所定の形状及び高さを有して、設けられている。可撓性を有する上側基板10には、可撓性を有する複数の第1の導体11Xがそれぞれの導体間に所定のギャップ(Px−Wx)が設けられた状態で、配置されている。誘電体部材13もまた可撓性を有しており、複数の第1の導体11Xを覆うように、上側基板10に当接している。また、誘電体部材13と複数の第2の導体21Yとは、互いに対向するように配置されている。
【0064】
本発明では、(1)式に示すコンデンサの原理を応用して、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間に形成される静電容量の大きな変化を引き起こす構造を有している。
【0065】
すなわち、指示体によって上側基板10が押圧されていない状態においては、誘電体部材13は、スペーサ23によって第2の導体21Y3と所定の距離離間している。
【0066】
次に、指示体によって上側基板10が上側基板10から下側基板20の方向に押圧されると、図5Aに示すように、上側基板10、第1の導体11X2、誘電体部材13はそれぞれ可撓性を有しているために、第1の導体11X2は誘電体部材13を介して第2の導体21Y3と当接した状態となる。図5Bに示すように、指示体による更なる押圧力が加わると、第1の導体11X2と第2の導体21Y3との間の距離は誘電体部材13の厚みで規定される所定の値となるものの、指示体による押圧に対応して誘電体部材13と第2の導体21Y3との当接面積は変化することになる。
【0067】
すなわち、本発明では、指示体による押圧力が加わると、第1の導体11X2と第2の導体21Y3との間は、誘電体部材13の厚みを介して、互いが極めて近接する距離関係を形成することでコンデンサとしての静電容量を高め、更には斯かる近接状態において、誘電体部材13と該誘電部材13に当接した第2の導体21Y3との間で形成される当接面積が押圧力に応じて変化するように構成することで、コンデンサとしての静電容量を押圧力に対応して変化させる。すなわち、押圧力が加えられると、上述の(1)式における距離Dを最小値とすることで大きな静電容量を確保し、しかもこの状態で押圧力に応じたSの変化を引き起こすことで、押圧力の有無ならびに押圧力の大きさを感度良くおよび精度良く検出することができる。
【0068】
ところで、電極間の距離(空隙)Dは、この実施の形態においては、指示体により位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して押圧力が加えられていない状態では、例えば100μm程度とされる。しかし、指示体により位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して押圧力が加えられると、受信導体群21と送信導体群11は誘電体部材13を介して互いが当接することとなる。この場合、受信導体群21あるいは送信導体群11と誘電体部材13とが当接する面積Sは押圧力に対応して変化する。図5に示すように、このように押圧力が加えられた状態では、受信導体群21と送信導体群11は誘電体部材13を介して互いが当接しており、誘電体部材13の厚みが(1)式に示す電極間の距離(空隙)Dに相当する。この実施の形態では、一例として、誘電体部材13の厚みは10μm程度とされている。
【0069】
すなわち、図4A、Bに示す本発明の実施の形態を参照してより詳細に説明すると、指示体により位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して押圧力が加えられていない状態では、送信導体群11に当接した10μm程度の厚みを有する誘電体部材13は、スペーサ23によって受信導体群21とは所定の距離(10μm〜60μm)離間した状態にある。指示体により位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して押圧力が加えられると、誘電体部材13は受信導体群21を構成する所定の第2の導体21Yと当接するとともに、押圧力に対応して誘電体部材13と所定の第2の導体21Yとの当接面積が変化する。この場合、誘電体部材13の所定の第2の導体21Yとは当接した状態にあるため、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間は、10μm程度の厚みを有する誘電体部材13を介して互いが極めて近い距離関係を保持する。
【0070】
上述の記載から明らかなように、本発明では、コンデンサの原理を応用して、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間に形成される静電容量に大きな変化を引き起こす構成を有している。すなわち、指示体により位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して押圧力が加えられると、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間は、誘電体部材13を介して、互いが極めて近接する距離関係を形成することでコンデンサとしての静電容量を高める。更には斯かる近接状態において、誘電体部材13と該誘電部材13に当接した第2の導体21Yとの間で形成される当接面積が押圧力に応じて変化するように構成することで、コンデンサとしての静電容量を押圧力に対応して変化させる。すなわち、押圧力が加えられると、上述の(1)式における距離Dを、誘電体部材13の厚みに対応した、最小値とすることで大きな静電容量を確保し、しかもこの状態で押圧力に応じたSの変化を引き起こすことで、押圧力の有無ならびに押圧力の大きさを感度良くおよび精度良く検出することができる。
【0071】
[スペーサ23の構成例]
図6、図7は、スペーサ23の構成例を説明するための図である。上述したように、スペーサ23は、透明の誘電体材料を印刷したり、ドットプリンタのインク吐出原理のごとく、誘電体材料を吹きつけしたりすることによって形成される。このため、スペーサ23は、図6に示すように、半球状、あるいは、円柱状であってその頭部が半球状のものとすることができる。なお、スペーサ23の形状は、図6に示した形状に限るものではない。例えば、円柱状や多角柱状に形成したり、円錐状や多角錐状に形成したり、その他、種々の形状としてもよい。
【0072】
また、スペーサ23を、例えば、透明シリコンゴムなどの弾性を有する材料により形成することもできる。そして、位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して指示体により押圧力が加えられていない状態においては、スペーサ23によって、送信導体群11に当接した誘電体部材13は、受信導体群21に対して所定距離離間している。
【0073】
次に、位置検出センサ1Bの指示入力面1BSに対して指示体により押圧力が加えられると、上述したように、上側基板10、送信導体群11、誘電体部材13が撓むことにより、誘電体部材13は受信導体群21を構成する第2の導体21Yに当接する。
【0074】
すなわち、図7に示すように、指示体としての指が位置検出センサ1Bの指示入力面1BSを押圧すると、上側基板10、送信導体群11を構成する第1の導体11X2、誘電体部材13が撓むことにより、最終的には、誘電体部材13と受信導体群21を構成する第2の導体21Yとが当接する状態となる。この当接状態において、誘電体部材13と受信導体群21を構成する第2の導体21Yとが当接する面積は押圧力に対応して変化する。このような構成を備えることで、指示入力面1BS上の指示位置や指示位置に加えられた押圧力を感度良くおよび精度良く検出できる。なお、図7においては、スペーサ23は弾性を備えており、指による押圧力に応じた弾性変形が生じている。
【0075】
[第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの構成のまとめ]
次に、第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの基本的な構成についてまとめる。図8は、図3Cに示したY−Y断面図と同様に、位置検出センサ1BのY−Y断面図の一部(右端部)を示す図である。
【0076】
図3を用いて説明したように、この第1の実施の形態の位置検出センサ1Bは、上側基板10の下側基板20と対向する面には、Y軸方向に延伸された所定幅Wxを有する複数の第1の導体(送信導体)11Xが、所定のピッチPxでX軸方向に配列される。そして、複数の第1の導体11X(送信導体群11)を覆うように、誘電体部材13が当接されている。一方、下側基板20の上側基板10と対向する面には、X軸方向に延伸された所定幅Wyを有する複数の第2の導体(受信導体)21Yが、所定のピッチPyでY軸方向に配列される。また、上側基板10の下側基板20に対向する面には、図3Aに示したように、複数の第1の導体11Xを構成するそれぞれの導体の間に所定のギャップ(Px−Wx)が設けられている。同様に、下側基板20の上側基板10と対向する面には、複数の第2の導体21Yを構成するそれぞれの導体の間に所定のギャップ(Py−Wy)が設けられている。スペーサ23は、この例では、下側基板20上に設けられた複数の第2の導体21Yのそれぞれの導体の間に設けられたギャップの領域であって、第1の導体11Xとは空間的に重なり合わない位置に所定の間隔で配置されている。
【0077】
そして、複数の第1の導体11Xを介して当接された誘電体部材13を備える上側基板10と、複数の第2の導体21Yとスペーサ23が配置された下側基板20とが、上側基板10と下側基板20のそれぞれの周部にて張り合わせ部材30によって張り合わされる。これにより、図8に示すような積層構造の位置検出センサ1Bが構成される。
【0078】
図8に示す各部材の厚みについての一例を示せば以下のようになる。上側基板10の厚みは例えば175μm〜300μm程度とされ、第1の導体11Xの厚みは例えば0.1μm程度され、誘電体部材13の厚みは例えば10μm程度とされる。また、下側基板20の厚みは例えば700μm程度とされ、第2の導体21Yの厚みは例えば0.1μm程度とされる。また、スペーサ23の高さは例えば10μm〜60μm程度とされ、スペーサの下側基板20に当接する面の直径は例えば50μm程度とされる。そして、下側基板20から誘電体部材13までの距離(空隙)dは、スペーサ23の高さにも依存するが、例えば20μm〜100μm程度とされる。なお、第1の導体11X及び第2の導体21Yの厚みは、極めて薄いものであるが、この図ではそれらの配設位置を明確に示すために厚みを付けて示している。また、スペーサ23についても、本来は誘電体部材13と当接するものであるが、各図では敢えて離間した状態で示している。
【0079】
また、第1の実施の形態の位置検出センサ1Bにおいては、第1の導体11X、第2の導体21Yとも、その幅は例えば2.0mm〜2.5mm程度とされ、スペーサ23の配設ピッチは例えば3.2mm程度とされている。なお、ここで説明した各部材の厚み、高さ、幅、配列ピッチ、空隙の距離等は全て一例であり、適宜調整することが可能である。
【0080】
[第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの変形例]
そして、図8に示した基本的な構成を有する第1の実施の形態の位置検出センサ1Bは、種々の変形が可能である。図9、図10は、第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの変形例を説明するための図である。なお、図9、図10において、図8に示した各部と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、その部分の説明は省略する。
【0081】
図9Aに示す位置検出センサでは、スペーサ23aが一体形成された誘電体部材13aが複数の第1の導体11Xを介して上側基板10に当接するとともに、下側基板20に対向している。また、図9Bに示す位置検出センサにおけるスペーサ23bは、図8において下側基板20上に設けられたスペーサ23を、誘電体部材13上に下側基板20に対向するようにして設けているものである。
【0082】
図9Aと図9Bを比較した場合、図9Aのスペーサ23aが誘電体部材13aと一体的に形成されたものであるのに対して、図9Bのスペーサ23bは、誘電体部材13とは別体に設けられている。したがって、図9Bに示した位置検出センサの場合には、誘電体部材13とスペーサ23bとを異なる材料により形成することが可能となる。なお、図9に示した位置検出センサにおいて、スペーサ23a、23bが配置される位置は、図8等に示した第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの場合と同じである。
【0083】
また、図10Aに示す位置検出センサでは、受信導体としての複数の第2の導体21Yが配置された下側基板20の、上側基板10と対向する面の側に複数の第2の導体21Yを覆うようにして誘電体部材13bが設けられている。送信導体としての複数の第1の導体11Xが配置された上側基板10側には、スペーサ23cが誘電体部材13bに対向するように設けられている。
【0084】
また、図10Bに示す位置検出センサでは、スペーサ23dが一体形成された誘電体部材13cが、受信導体としての複数の第2の導体21Yが配置された下側基板20上の、上側基板10と対向する面の側に複数の第2の導体21Yを覆うようにして設けられている。上側基板10には、送信導体としての複数の第1の導体11Xが下側基板20に対向するように配置されている。また、スペーサ23dは、図9Bに示した位置検出センサの場合と同様に、誘電体部材13cとは別体に設けてもよい。このように別体とした場合には、誘電体部材13cとスペーサ23dとを異なる材料によって形成することができる。
【0085】
図10Cに示す位置検出センサでは、上側基板10に複数の第1の導体11Xが配置され、下側基板20には、複数の第2の導体21Yが配置されている。上側基板10と下側基板20との間には、誘電体部材13dが配置されている。誘電体部材13dには、上側基板10に対向するようにスペーサ23euが一体的に設けられている。また、同様に、下側基板20に対向するようにスペーサ23edが一体的に設けられている。従って、スペーサ23eu、23edによって、複数の第1の導体11Xと複数の第2の導体21Yとの間には所定の距離が形成されている。従って、指などの押圧力に対応して上側基板10に配置された複数の第1の導体11Xと下側基板20に配置された複数の第2の導体21Yが誘電体部材13dを介して当接するようになるとともに、更には、押圧力に対応して、複数の第1の導体11Xと誘電体部材13dとの間の当接面積および複数の第2の導体21Yと誘電体部材13dとの間の当接面積が変化することになる。なお、図10Cにおいても、誘電体部材13dとスペーサ23eu、23edのそれぞれは一体的に形成されているが、互いを別体とすることもできる。
【0086】
また、図10Dに示す位置検出センサでは、複数の第1の導体11Xが配置された上側基板10には、複数の第1の導体11Xを覆うように、第1の誘電体部材13eが設けられている。同様に、複数の第2の導体21Yが配置された下側基板20には、複数の第2の導体21Yを覆うように、第2の誘電体部材13fが設けられている。さらに、第1の誘電体部材13eと第2の誘電体部材13fとの間にはスペーサ23fが設けられている。従って、指などの押圧力に対応して誘電体部材13eと誘電体部材13fが当接するようになるとともに、更には、押圧力に対応して、誘電体部材13eと誘電体部材13fとの間の当接面積が変化することになる。なお、図10Dに示した位置検出センサにおいても、第1の誘電体部材13eと第2の誘電体部材13fとスペーサ23fとを一体的に形成することも可能である。
【0087】
なお、図10に示した4つ形態の位置検出センサにおいても、スペーサ23c、23d、23eu、23ed、23fは、図8等に示した第1の実施の形態の位置検出センサ1Bの場合と同様な位置に配置される。また、図10においても、上側基板10と下側基板20を互いに張り合わせるための張り合わせ部材30a、30bが使用されている。
【0088】
[第2の実施の形態]
[位置検出センサ1BXの構成例]
次に、第2の実施の形態の位置検出センサ1BXについて説明する。図11は、この第2の実施の形態の位置検出センサ1BXを説明するための断面図である。この第2の実施の形態の位置検出センサ1BXでは、可撓性を有する誘電体部材13に、複数の第1の導体11Xが配置される上側基板10の機能を兼用させるところに特徴がある。
【0089】
図11に示すように、この第2の実施の形態の位置検出センサ1BXでは、可撓性を有する誘電体部材13の一方の面に複数の第1の導体11Xが配置されている。また、複数の第1の導体11Xには可撓性を備える保護層15が設けられており、ユーザが指示入力面1BS上にて指示体による位置指示を行う際に、指示体の操作から複数の第1の導体11Xを保護する。従って、誘電体部材13の一方の面には、複数の第1の導体11Xを介して保護層15が設けられた構造を備える。下側基板20には、上述したように、複数の第2の導体21Yとスペーサ23が設けられている。誘電体部材13の他方の面は、下側基板20に対向している。
【0090】
この第2の実施の形態の位置検出センサ1BXでは、誘電体部材13が上側基板10としての機能を果たすようにしたものであり、その素材としては、上側基板10の素材として例示した、例えば光透過性を有するガラス基板が用いられる。ガラス素材は、誘電率が比較的に高いので誘電体として使用するに適しているからである。誘電体部材13としてガラス素材が採用される場合には、ガラス基板上にセンサ導体、この例では複数の第1の導体11Xが蒸着あるいは印刷などで一体的に形成された、可撓性を有する程度にその厚みが薄く設定されたセンサ基板が適用できる。上述したように、ガラス素材で構成された誘電体部材13は、上側基板10と同様に、厚みは例えば175μm〜300μm程度とされ、第1の導体11X自体の厚みも例えば0.1μm程度とされ、その厚みは、それぞれ極めて薄いものである。保護層15の厚みも極めて薄いものとなっている。
【0091】
なお、誘電体部材13としてはガラス素材に限定されないことは明らかである。例えば、既述したように、フィルム状の光透過性を有する合成樹脂を採用することもできる。誘電体部材13としてフィルム状の合成樹脂を採用する場合には、例えばPET(polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)、LCP(liquid crystal polymer)などのフィルム基板にセンサ導体、この例では複数の第1の導体11X、が一体的に形成された、フィルム状センサ基板が適用できる。合成樹脂基板にセンサ導体が一体的に形成された素材(基板)を誘電体部材13として採用する場合、その厚みが極めて薄いと、必要以上の可撓性を有することがある。従って、この場合には、保護層15としてガラス基板など適度な可撓性を有する素材を採用することで、誘電体部材13、複数の第1の導体11X、および保護層15から成る全体としての可撓性を適切に設定することができる。また、ガラス素材に代えて、光透過性を有する合成樹脂によって保護層15を形成することもできる。
【0092】
従って、位置検出センサ1BXの指示入力面1BSに対して指示体により押圧力が加えられていない状態においては、スペーサ23によって、送信導体群11に当接している誘電体部材13は、受信導体群21に対して所定距離離間している。
【0093】
次に、位置検出センサ1BXの指示入力面1BSに対して指示体により押圧力が加えられると、上述したように、保護層15、送信導体群11、誘電体部材13が撓むことにより、誘電体部材13は受信導体群21を構成する第2の導体21Yに当接するようになる。すなわち、指示体としての指が位置検出センサ1BXの指示入力面1BSを押圧すると、保護層15、送信導体群11、誘電体部材13が撓むことにより、最終的には、誘電体部材13と、受信導体群21を構成する第2の導体21Yとが当接する状態となる。このように、第1の導体11Xと第1の導体21Yとが誘電体部材13の厚みを介して近接した状態において、誘電体部材13と、受信導体群21を構成する第2の導体21Yとの当接面積は押圧力に対応して変化する。
【0094】
なお、図11においては、スペーサ23は下側基板20の側に設けられているが、上述したように、誘電体部材13と一体的に形成され、あるいは誘電体部材13上に別部材としてあるいは一体的に設けることもできる。
【0095】
[第1、第2の実施の形態の位置検出センサ1B、1BXの変形例]
図12は、第1、第2の実施の形態の位置検出センサ1B、1BXの変形例を説明するための図である。上述した第1、第2の実施の形態の位置検出センサ1B、1BXにおいては、スペーサ23やスペーサ23a〜23fは、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが重なり合わない領域に設けるようにした。しかし、これに限るものではない。
【0096】
例えば、図12Aに示すように、スペーサ23Xを導体上、例えば第2の導体21Y上に設けるようにしてもよい。すなわち、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが対向する部分にも、スペーサ23Xを設けるようにしてもよい。この場合、スペーサ23Xの大きさや高さは必要に応じ種々に調整される。
【0097】
また、図12Bに示すような誘電体部材13gを設けることもできる。誘電体部材13gの一方の面は、送信導体群11を介して上側基板10に当接している。下側基板20に対向する誘電体部材13gの他方の面は、多数の凹凸が設けられた表面形状を有する。この場合、誘電体部材13gの、下側基板20と対向する面に設けられた多数の凹凸が、上述したスペーサとしての役割を果たすものである。指などの指示体によって押圧されていない場合には、誘電体部材13gに形成された凸部が下側基板20および第2の導体21Yに対し微小な面積で当接している。指などの指示体によって押圧されると、誘電体部材13gが弾性変形することで、誘電体部材13gに形成された凸部と下側基板20および第2の導体21Yとが近接するとともに、誘電体部材13gに形成された凸部と下側基板20および第2の導体21Yとの間に形成される当接面積が増加するようになる。
【0098】
[他の変形例]
第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間で、互いの配置関係を入れ替えても良い。また、送信導体群11と受信導体群21との間に設けられる誘電体部材は、フィルム状、シート状などと表現される極薄い形状のものとして構成することが可能である。また、誘電体部材を送信導体群11あるいは受信導体群21に当接させるに際し、塗布、印刷、吹きつけ、融着等の種々の方法により、互いを固着させ、あるいは接着材を介して互いを固着させることも可能である。誘電体部材には、所定形状の複数の貫通孔を設けることもできる。更には、必要に応じて、この貫通孔を貫通させてスペーサを配置することもできる。
【0099】
また、上述した実施の形態においては、誘電体部材は、送信導体群11あるいは受信導体群21の全面を覆うように設けるようにしたが、必ずしも全面を覆う必要もない。
【0100】
更には、下側基板20は基本的には可撓性を有するものでなくてよいが、下側基板20もまた、例えばフィルム状基板など、可撓性を有する構成とすることもできる。
【0101】
スペーサについても、可撓性を有する素材でも、可撓性を有しない素材でも採用しうる。また、スペーサを、第1の導体11X間に形成されたギャップの領域に、第1の導体に沿うようにライン状に設けたり、第2の導体21Y間に形成されたギャップの領域に、第2の導体に沿うようにライン状に設けたりしてもよい。
【0102】
また、上述した実施の形態において、位置検出センサ1B、1BXは、LCD1Cの表示画面側に設けられるものであるため、位置検出センサ1B、1BXを構成する各部分は、光透過性のあるもの(透明なもの)として形成するようにした。しかし、これに限るものではない。例えば、LCD、有機ELなどの表示装置を備えていない、タブレット型の位置入力装置であって、パーソナルコンピュータなどに接続されて用いられる場合には、位置検出センサ1B、1BXは、光透過性のある材料(透明な材料)で形成される必要はない。
【0103】
[実施の形態の効果]
従来の静電容量方式の位置検出センサは、指などの指示体を通じてグラウンドに逃げる電荷による静電容量の変化を検出していたが、上述した実施の形態の位置検出センサ1B、1BXは、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが構成するコンデンサの自己容量の変化を検出するものである。このため、上述した実施の形態の位置検出センサ1B、1BXの場合には、指示体が導電性を有するものでなくてもよい。例えば、ゴムなどの絶縁体を指示体として用いて指示入力を行っても適切に検出できる。したがって、上述した実施の形態の位置検出センサ1B、1BXは、ゴム手袋をして作業する作業所や手術室などにおいても利用することができるなど、位置検出センサの活用範囲を大幅に広げることができる。また、上述した実施の形態の位置検出センサ1B、1BXは、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが構成するコンデンサの静電容量の変化幅(ダイナミックレンジ)を大きくすることができ、これによって感度の良い位置検出センサが実現できる。実験による一例では、上述した位置検出センサ1B、1BXを指示体によって押圧していない状態で、第1の導体11Xと第2の導体21Yとによって構成されるコンデンサとしての初期容量は約1.4pF程度である。これに対して、指示体で押圧した状態では、第1の導体11Xと第2の導体21Yとによって構成するコンデンサの容量は約8.4pFである。したがって、変化レンジは8.6−1.4=7.2pFとなり、従来の静電容量型の位置検出センサに比べ、大幅に静電容量を変化させることができる。
【0104】
また、この発明の位置検出センサ1B、1BXでは、指示体による押圧に対応して、第1の導体11Xと第2の導体21Yとによって構成されるコンデンサとしての静電容量が変化するので、この静電容量の変化に応じて、押圧力の検出を精度よく行なうことができる。
【0105】
更には、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間に介在させる誘電体部材の厚さ、比誘電率を適切に選択することにより、第1の導体11Xと第2の導体21Yとによって構成されるコンデンサの静電容量の変化特性を目的に応じて設定することができる。
【符号の説明】
【0106】
1…表示機能付機器、1A…フロントパネル、1B、1BX…位置検出センサ、1C…LCD、1D…マザーボード、1E…筐体、11…送信導体群、11X、11X1〜11Xm…第1の導体(送信導体)、21…受信導体群、21Y、21Y1〜21Yn…第2の導体(受信導体)、200…信号供給回路、24…選択回路、25…信号発生回路、300…信号受信回路、31…増幅回路、32…A/D変換回路、33…指示位置及び押圧力検出回路、40…制御回路、10…上側基板(第1の基板)、13…誘電体部材(誘電体フィルム)、14…空気層、20…下側基板(第2の基板)、23…スペーサ、1BS…指示入力面、13a〜13f…誘電体部材、23a〜23f…スペーサ、23eu、23ed…スペーサ、23x…スペーサ、15…保護層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に配置された複数の第1の導体と、前記第1の方向に対して交差する方向に配置された複数の第2の導体を備え、指示体による位置の指示に対応して前記第1の導体と前記第2の導体との間に形成される静電容量の変化を検出することで前記指示体によって指示された位置を検出する、静電容量方式による位置検出センサであって、
前記複数の第1の導体は可撓性を有しており、
前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間には、可撓性を有する誘電体部材が介在するとともに、前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面は前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体に当接しており、
前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面に当接した前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体が前記可撓性を有する誘電体部材を介して対向する、前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体と、前記可撓性を有する誘電体部材の他方の面との間はスペーサによって互いが所定の距離離間されており、
前記指示体による位置の指示に対応して前記複数の第1の導体が押圧されることによって、前記可撓性を有する誘電体部材の前記他方の面と、前記他方の面に対向する前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体との間の当接面積を変化させることで、前記可撓性を有する誘電体部材を介在させて前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間に上記静電容量の変化を引き起こさせるようにしたことを特徴とする、静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項2】
前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面は前記複数の第1の導体に当接しており、前記可撓性を有する誘電体部材の他方の面と前記複数の第2の導体とは、前記スペーサによって互いが所定の距離離間されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項3】
前記可撓性を有する誘電体部材を前記複数の第1の導体に当接して配置するとともに、更なる誘電体部材を前記複数の第2の導体に当接して配置し、前記指示体による位置の指示に対応して前記複数の第1の導体が押圧されることによって、前記可撓性を有する誘電体部材と、前記更なる誘電体部材との間の当接面積を変化させることで、前記可撓性を有する誘電体部材と前記更なる誘電体部材を介在させて、前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間に上記静電容量の変化を引き起こさせるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項4】
前記複数の第1の導体が配置される第1の基板と、前記複数の第2の導体が配置される第2の基板を有し、前記第1の基板は可撓性を備えていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項5】
前記スペーサは、前記第1の基板に配置された前記複数の第1の導体および前記第2の基板に配置された前記複数の第2の導体の、少なくとも一方の複数の導体の、導体間領域に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項6】
前記スペーサは、前記第2の基板上に所定の突起形状を有して点在配置されていることを特徴とする請求項5に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項7】
前記スペーサは、シート状の形態を有するとともに、微細な凹凸が形成された表面状態を有することを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項8】
前記誘電体部材は、フィルム状の形態を有していることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項9】
前記誘電体部材は、前記第1の方向に配置された前記複数の第1の導体および前記第1の方向に対して交差する方向に配置された前記複数の第2の導体の、少なくとも一方の複数の導体に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項10】
前記誘電体部材の固着は、塗布あるいは印刷によって行われることを特徴とする請求項9に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項11】
前記複数の第1の導体、前記複数の第2の導体、および前記誘電体部材のそれぞれは、光透過性を有していることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項12】
前記誘電体部材はガラス素材あるいは樹脂素材で構成されているとともに、前記複数の第1の導体に当接しており、前記指示体による位置の指示に対応した押圧による可撓性を有するように所定の厚みを備えていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項13】
前記複数の第1の導体および前記複数の第2の導体における、一方の複数の導体に所定の交流信号を供給するための交流信号供給回路と、他方の複数の導体から、前記指示体による位置の指示に対応した押圧によって引き起こされた上記静電容量の変化を検出するための信号受信回路を備え、前記指示体が前記位置検出センサ上にて指示した位置を検出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサを備えた位置検出装置。
【請求項14】
第1の方向に配置された複数の第1の導体と、前記第1の方向に対して交差する方向に配置された複数の第2の導体を備え、指示体による位置の指示に対応して前記第1の導体と前記第2の導体との間に形成される静電容量の変化を検出することで前記指示体によって指示された位置を検出する、静電容量方式による位置検出方法であって、
前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間には、可撓性を有する誘電体部材が介在するとともに、前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面は前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体に当接しており、
前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面に当接した前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体が前記可撓性を有する誘電体部材を介して対向する、前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体と、前記可撓性を有する誘電体部材の他方の面との間はスペーサによって互いが所定の距離離間されており、
前記指示体による位置の指示に対応して前記複数の第1の導体が押圧されることによって、前記可撓性を有する誘電体部材の前記他方の面と、前記他方の面に対向する前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体との間の当接面積を変化させることで、前記可撓性を有する誘電体部材を介在させて前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間に上記静電容量の変化を引き起こさせるようにしたことを特徴とする、静電容量方式による位置検出方法。
【請求項15】
前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面は前記複数の第1の導体に当接しており、前記可撓性を有する誘電体部材の他方の面と前記複数の第2の導体とは、前記スペーサによって互いが所定の距離離間されていることを特徴とする請求項14に記載の静電容量方式による位置検出方法。
【請求項1】
第1の方向に配置された複数の第1の導体と、前記第1の方向に対して交差する方向に配置された複数の第2の導体を備え、指示体による位置の指示に対応して前記第1の導体と前記第2の導体との間に形成される静電容量の変化を検出することで前記指示体によって指示された位置を検出する、静電容量方式による位置検出センサであって、
前記複数の第1の導体は可撓性を有しており、
前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間には、可撓性を有する誘電体部材が介在するとともに、前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面は前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体に当接しており、
前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面に当接した前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体が前記可撓性を有する誘電体部材を介して対向する、前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体と、前記可撓性を有する誘電体部材の他方の面との間はスペーサによって互いが所定の距離離間されており、
前記指示体による位置の指示に対応して前記複数の第1の導体が押圧されることによって、前記可撓性を有する誘電体部材の前記他方の面と、前記他方の面に対向する前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体との間の当接面積を変化させることで、前記可撓性を有する誘電体部材を介在させて前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間に上記静電容量の変化を引き起こさせるようにしたことを特徴とする、静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項2】
前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面は前記複数の第1の導体に当接しており、前記可撓性を有する誘電体部材の他方の面と前記複数の第2の導体とは、前記スペーサによって互いが所定の距離離間されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項3】
前記可撓性を有する誘電体部材を前記複数の第1の導体に当接して配置するとともに、更なる誘電体部材を前記複数の第2の導体に当接して配置し、前記指示体による位置の指示に対応して前記複数の第1の導体が押圧されることによって、前記可撓性を有する誘電体部材と、前記更なる誘電体部材との間の当接面積を変化させることで、前記可撓性を有する誘電体部材と前記更なる誘電体部材を介在させて、前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間に上記静電容量の変化を引き起こさせるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項4】
前記複数の第1の導体が配置される第1の基板と、前記複数の第2の導体が配置される第2の基板を有し、前記第1の基板は可撓性を備えていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項5】
前記スペーサは、前記第1の基板に配置された前記複数の第1の導体および前記第2の基板に配置された前記複数の第2の導体の、少なくとも一方の複数の導体の、導体間領域に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項6】
前記スペーサは、前記第2の基板上に所定の突起形状を有して点在配置されていることを特徴とする請求項5に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項7】
前記スペーサは、シート状の形態を有するとともに、微細な凹凸が形成された表面状態を有することを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項8】
前記誘電体部材は、フィルム状の形態を有していることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項9】
前記誘電体部材は、前記第1の方向に配置された前記複数の第1の導体および前記第1の方向に対して交差する方向に配置された前記複数の第2の導体の、少なくとも一方の複数の導体に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項10】
前記誘電体部材の固着は、塗布あるいは印刷によって行われることを特徴とする請求項9に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項11】
前記複数の第1の導体、前記複数の第2の導体、および前記誘電体部材のそれぞれは、光透過性を有していることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項12】
前記誘電体部材はガラス素材あるいは樹脂素材で構成されているとともに、前記複数の第1の導体に当接しており、前記指示体による位置の指示に対応した押圧による可撓性を有するように所定の厚みを備えていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサ。
【請求項13】
前記複数の第1の導体および前記複数の第2の導体における、一方の複数の導体に所定の交流信号を供給するための交流信号供給回路と、他方の複数の導体から、前記指示体による位置の指示に対応した押圧によって引き起こされた上記静電容量の変化を検出するための信号受信回路を備え、前記指示体が前記位置検出センサ上にて指示した位置を検出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の静電容量方式による位置検出センサを備えた位置検出装置。
【請求項14】
第1の方向に配置された複数の第1の導体と、前記第1の方向に対して交差する方向に配置された複数の第2の導体を備え、指示体による位置の指示に対応して前記第1の導体と前記第2の導体との間に形成される静電容量の変化を検出することで前記指示体によって指示された位置を検出する、静電容量方式による位置検出方法であって、
前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間には、可撓性を有する誘電体部材が介在するとともに、前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面は前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体に当接しており、
前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面に当接した前記複数の第1の導体あるいは前記複数の第2の導体が前記可撓性を有する誘電体部材を介して対向する、前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体と、前記可撓性を有する誘電体部材の他方の面との間はスペーサによって互いが所定の距離離間されており、
前記指示体による位置の指示に対応して前記複数の第1の導体が押圧されることによって、前記可撓性を有する誘電体部材の前記他方の面と、前記他方の面に対向する前記複数の第2の導体あるいは前記複数の第1の導体との間の当接面積を変化させることで、前記可撓性を有する誘電体部材を介在させて前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との間に上記静電容量の変化を引き起こさせるようにしたことを特徴とする、静電容量方式による位置検出方法。
【請求項15】
前記可撓性を有する誘電体部材の一方の面は前記複数の第1の導体に当接しており、前記可撓性を有する誘電体部材の他方の面と前記複数の第2の導体とは、前記スペーサによって互いが所定の距離離間されていることを特徴とする請求項14に記載の静電容量方式による位置検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−20370(P2013−20370A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152073(P2011−152073)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]