説明

位置検出装置及び電子機器

【課題】 配線構成の簡略化を図ることが可能な位置検出装置を提供すること。
【解決手段】 接触表面に弾性波を伝搬させ、当該接触表面に対象物が接触したときの上記弾性波の状態変化を用いて位置検出を行う位置検出装置(1)であって、基板(2)と、第1方向に沿って基板上に配置され、かつ並列接続された弾性波送信用の複数の第1送信素子(XT1,XT2,XT3)を含んでなる第1送信素子群(10)と、それぞれが複数の第1送信素子と一対一に対応付けられており、第1方向に沿って基板上に第1送信素子群と離間して配置され、かつ並列接続された弾性波受信用の複数の第1受信素子(XR1,XR2,XR3)を含んでなる第1受信素子群(30)と、を備え、第1送信素子群及び第1受信素子群は、対応付けられた各対の第1送信素子及び第1受信素子ごとにそれぞれ異なる共振周波数を有するように構成される、位置検出装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子を利用して位置検出を行う位置検出装置と当該位置検出装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波デバイス(SAWデバイス)とは、圧電材料を利用し、高周波信号を弾性表面波に変換し、再度高周波信号に変換する過程において特定の周波数が選び出される現象を利用した素子である。このようなSAWデバイスは、通信機器、センサ、タッチパネル等の種々の分野で利用されている。例えば、実公昭61−112444号公報(特許文献1)には、弾性表面波素子を用いてタッチパネル等の構成要素たる位置検出装置を構成した従来例が開示されている。当該文献に開示される位置検出装置は、長尺に形成された送信用櫛歯電極と、複数の受信用櫛歯電極を一方向に配列してなる1組の受信用電極群とが対向配置されており、送信用櫛歯電極によって生成される弾性表面波が受信用電極群で受信されるように構成されている。
【0003】
しかし、上述した従来の位置検出装置では、受信用電極群に含まれる複数の受信用櫛歯電極のそれぞれに対して個別に配線が設けられており、電気的な配線構造が複雑化するという不都合がある。例えば、20×20のマトリクス座標を検出可能な位置検出装置を構成したとすると、各組の受信用電極群に20個、合計で40個の受信用櫛歯電極が存在することになる。このため、これらの受信用櫛歯電極のそれぞれに接続配線を設けると、配線の引き回しが複雑となる。
【0004】
【特許文献1】実公昭61−112444号公報(第8項〜10項、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、配線構成の簡略化を図ることが可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の本発明は、接触表面に弾性波を伝搬させ、当該接触表面に対象物が接触したときの上記弾性波の状態変化を用いて位置検出を行う位置検出装置であって、基板と、第1方向に沿って上記基板上に配置され、かつ並列接続された弾性波送信用の複数の第1送信素子を含んでなる第1送信素子群と、それぞれが上記複数の第1送信素子と一対一に対応付けられており、上記第1方向に沿って上記基板上に上記第1送信素子群と離間して配置され、かつ並列接続された弾性波受信用の複数の第1受信素子を含んでなる第1受信素子群と、を備え、上記第1送信素子群及び上記第1受信素子群は、対応付けられた各対の上記第1送信素子及び上記第1受信素子ごとにそれぞれ異なる共振周波数を有するように構成される、位置検出装置である。
【0007】
かかる構成によれば、各第1送信素子及び各第1受信素子がそれぞれ固有の共振周波数を有するようにしているので、各第1送信素子を全て並列接続し、かつ各第1受信素子を全て並列接続することが可能となる。すなわち、上記構成によれば、並列接続された複数の第1送信素子に対して順次周波数を選択して駆動信号を入力すると、当該周波数に対応する共振周波数を有する特定の第1送信素子のみを選択的に動作させることができる。また、生成された弾性表面波は、当該第1送信素子と対になった第1受信素子、すなわち、同じ共振周波数を有する第1受信素子によって優先的に受信され、他の第1受信素子にはほとんど受信されないので、各第1受信素子を並列接続していても、特定の第1受信素子による受信信号を検出することができる。したがって、各第1送信素子、各第1受信素子をそれぞれ1組の配線によって接続することが可能となり、配線構造が大幅に簡略化された位置検出装置を得ることが可能となる。
【0008】
好ましくは、上記第1送信素子群及び上記第1受信素子群は、各対の上記第1送信素子及び上記第1受信素子ごとに0.5〜3%程度ずつ上記共振周波数が異なるように構成される。
【0009】
これにより、各対の第1送信素子及び第1受信素子ごとの周波数選択性を必要十分に確保することが可能となる。
【0010】
また、上記基板が矩形状である場合に、上記第1方向は、上記基板の四辺のいずれとも平行でない斜め方向とすることも好ましい。具体的には、例えば、第1方向は基板の対角線と平行な方向に設定される。
【0011】
好ましくは、上記第1送信素子群及び上記第1受信素子群は、隣接する所定数(例えば、2〜4対)の上記第1送信素子及び上記第1受信素子の対ごとに同一の共振周波数が設定されており、当該所定数の上記第1送信素子及び上記第1受信素子の各対は、それぞれが送受信する弾性波の間に位相差が生じるように構成される。
【0012】
これにより、複数の対の第1送信素子及び第1受信素子に対して同一の共振周波数を割り当てたとしても、各対ごとの位相差に基づいて信号検出が可能となる。したがって、周波数の割り当て数を減らすことが可能となる。
【0013】
好ましくは、上記位相差は、0°より大きく180°より小さい値、又は180°より大きく360°より小さい値に設定される。換言すれば、上記位相差は、180°以外の値に設定されることが好ましい。
【0014】
これにより、隣接する第1送信素子のそれぞれによって生成される弾性表面波同士が打ち消し合って振幅が低下することを回避できる。
【0015】
好ましくは、上記複数の第1送信素子及び上記複数の第1受信素子のそれぞれは一方向性電極を用いて構成される。
【0016】
これにより、信号ロスを低減することが可能となる。
【0017】
好ましくは、上記第1方向と略直交する第2方向に沿って上記基板上に配置され、かつ並列接続された弾性波送信用の複数の第2送信素子を含んでなる第2送信素子群と、それぞれが上記複数の第2送信素子と一対一に対応付けられており、上記第2方向に沿って上記基板上に上記第2送信素子群と離間して配置され、かつ並列接続された弾性波受信用の複数の第2送信素子を含んでなる第2受信素子群と、を更に備え、上記第2送信素子群及び上記第2受信素子群は、対応付けられた各対の上記第2送信素子及び上記第2受信素子ごとにそれぞれ異なる共振周波数を有するように構成される。
【0018】
かかる構成によれば、並列接続された複数の第2送信素子に対して順次周波数を選択して駆動信号を入力すると、当該周波数に対応する共振周波数を有する特定の第2送信素子のみを選択的に動作させることができる。また、生成された弾性表面波は、当該第2送信素子と対になった第2受信素子、すなわち、同じ共振周波数を有する第2受信素子によって優先的に受信され、他の第2受信素子には受信されないので、各第2受信素子を並列接続していても、特定の第2受信素子による受信信号を検出することができる。したがって、各第2送信素子、各第2受信素子をそれぞれ1組の配線によって接続することが可能となり、配線構造が大幅に簡略化された位置検出装置を得ることが可能となる。すなわち、マトリクス座標の検出を行う位置検出装置における配線構造を大幅に簡略化することが可能となる。
【0019】
更に好ましくは、上記第1送信素子群と上記第2送信素子群とが並列接続される。
【0020】
これにより、更なる配線構造の簡略化を図ることが可能となる。
【0021】
好ましくは、各対の上記第2送信素子及び上記第2受信素子ごとに0.5〜3%程度ずつ上記共振周波数が異なるように構成される。
【0022】
これにより、各対の第2送信素子及び第2受信素子ごとの周波数選択性を必要十分に確保することが可能となる。
【0023】
好ましくは、上記第2送信素子群及び上記第2受信素子群は、所定数(例えば2〜4対)の上記第2送信素子及び上記第1受信素子の対ごとに同一の共振周波数が設定されており、当該所定数の上記第2送信素子及び上記第2受信素子の各対は、それぞれが送受信する弾性波の間に位相差が生じるように構成される。
【0024】
これにより、複数の対の第2送信素子及び第2受信素子に対して同一の共振周波数を割り当てたとしても、各対ごとの位相差に基づいて信号検出が可能となる。したがって、周波数の割り当て数を減らすことが可能となる。
【0025】
好ましくは、上記位相差は、0°より大きく180°より小さい値、又は180°より大きく360°より小さい値に設定される、請求項10に記載の位置検出装置。換言すれば、上記位相差は、180°以外の値に設定されることが好ましい。
【0026】
これにより、隣接する第2送信素子のそれぞれによって生成される弾性表面波同士が打ち消し合って振幅が低下することを回避できる。
【0027】
好ましくは、上記複数の第2送信素子及び上記複数の第2受信素子のそれぞれは一方向性電極を用いて構成される。
【0028】
これにより、信号ロスを低減することが可能となる。
【0029】
第2の態様の本発明は、上述した第1の態様の本発明にかかる位置検出装置を備える電子機器である。ここで「電子機器」とは、電子回路等を用いて一定の機能を実現する機器一般をいい、その構成には特に限定がないが、例えば、パーソナルコンピュータ、PDA(携帯型情報端末)、電子手帳など各種機器が挙げられる。
【0030】
これにより、配線構造の簡素化された位置検出装置を備える電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、一実施形態の位置検出装置の構成を説明する模式平面図である。また、図2は、図1に示す位置検出装置のII−II線方向における断面図である。図1及び図2に示す本実施形態の位置検出装置1は、基板2の表面(接触表面)に弾性波を伝搬させ、当該基板表面に対象物(例えば、指、スタイラス等)が接触したときの弾性波の状態変化を用いて位置検出を行うものであり、第1送信素子群10、第2送信素子群20、第1受信素子群30、第2受信素子群40、を含んで構成されている。なお、説明の便宜上、図1に示す位置検出装置1では、第1送信素子群10及び第2送信素子群20がそれぞれ3つの送信素子を備え、第1受信素子群30及び第2受信素子群40がそれぞれ3つの受信素子を備える構成を説明しているが、より多くの送信素子及び受信素子を備える構成を採用することが可能である。
【0033】
第1送信素子群10は、X方向(第1方向)に沿って基板2上に配置され、かつ互いに並列接続された弾性波送信用の複数の第1送信素子XT1、XT2、XT3を含んで構成されている。第1送信素子XT1は、基板2上の圧電体膜3の表面に櫛歯型電極を設けることによって構成されている。圧電体膜3は酸化亜鉛等の圧電材料からなり、櫛歯型電極はアルミニウム等の導電性材料からなる。また、図示を省略するが、第1送信素子XT2、XT3についても第1送信素子XT1と同様の構造を有する。
【0034】
第1受信素子群30は、X方向(第1方向)に沿って基板2上に第1送信素子群10と所定距離だけ離間して配置され、かつ互いに並列接続された弾性波受信用の複数の第1受信素子XR1、XR2、XR3を含んで構成されている。各第1受信素子XR1、XR2、XR3は、各第1送信素子XT1、XT2、XT3とそれぞれ一対一に対応付けられている。第1受信素子XR1は、基板2上の圧電体膜3の表面に櫛歯状電極を設けることによって構成されている。また、図示を省略するが、第1受信素子XR2、XR3についても第1受信素子XR1と同様の構造を有する。
【0035】
ここで、本実施形態における第1送信素子群10及び第1受信素子群30は、対応付けられた各対の第1送信素子及び第1受信素子ごとにそれぞれ異なる共振周波数を有するように構成されている。具体的には、第1送信素子XT1と第1受信素子XR1、第1送信素子XT2と第1受信素子XR2、第1送信素子XT3と第1受信素子XR3、がそれぞれ対応付けられて一対となっており、これら各対ごとにそれぞれ異なる共振周波数が設定されている。このような構成によれば、並列接続された複数の第1送信素子XT1〜XT3に対して順次周波数を選択して駆動信号を入力すると、当該周波数に対応する共振周波数を有する特定の第1送信素子のみを選択的に動作させることができる。また、生成された弾性表面波は、当該第1送信素子と対になった第1受信素子、すなわち、同じ共振周波数を有する第1受信素子によって優先的に受信され、他の第1受信素子にはほとんど受信されないので、各第1受信素子XR1〜XR3を並列接続していても、特定の第1受信素子による受信信号を検出することができる。
【0036】
図3は、各第1送信素子XT1〜XT3に割り当てられた共振周波数について説明するグラフである。図3に示すグラフは、横軸が周波数f、縦軸がインピーダンスZを示している。また、図4は、各第1受信素子XR1〜XR3に割り当てられた共振周波数について説明するグラフである。図4に示すグラフは、横軸が周波数f、縦軸が挿入損失ILを示している。図3及び図4に示すように、本実施形態の位置検出装置1は、各対の第1送信素子及び第1受信素子ごとにそれぞれ異なる共振周波数が割り当てられている。当該共振周波数のずれは任意に設定可能であるが、例えば0.5〜3%程度ずつ異なるように設定すれば実用上十分であると考えられる。共振周波数の設定は、各第1送信素子及び各第1受信素子のそれぞれ毎に櫛歯型電極の電極周期を変更することによって行われる。
【0037】
第2送信素子群20は、Y方向(第2方向)に沿って基板2上に配置され、かつ互いに並列接続された弾性波送信用の複数の第2送信素子YT1、YT2、YT3を含んで構成されている。各第2送信素子YT1〜YT3の断面構造は上述した第1送信素子XT1〜XT3と同様であり(図2参照)、ここでは図示を省略する。また、本実施形態の第2送信素子群20は、図1に示すように、第1送信素子群10と接続されている。
【0038】
第2受信素子群40は、Y方向(第2方向)に沿って基板2上に第2送信素子群20と所定距離だけ離間して配置され、かつ互いに並列接続された弾性波受信用の複数の第2受信素子YR1、YR2、YR3を含んで構成されている。各第2受信素子YR1、YR2、YR3は、各第2送信素子YT1、YT2、YT3とそれぞれ一対一に対応付けられている。また、各第2受信素子YR1〜YR3の断面構造は上述した第2送信素子YT1〜YT3と同様であり(図2参照)、ここでは図示を省略する。
【0039】
ここで、本実施形態における第2送信素子群20及び第2受信素子群40は、対応付けられた各対の第2送信素子及び第2受信素子ごとにそれぞれ異なる共振周波数を有するように構成されている。具体的には、第2送信素子YT1と第2受信素子YR1、第2送信素子YT2と第2受信素子YR2、第2送信素子YT3と第2受信素子YR3、がそれぞれ対となっており、これら各対ごとにそれぞれ異なる共振周波数が設定されている。当該共振周波数は、上述した第1送信素子群10及び第1受信素子群30の場合と同様に、各対の第2送信素子及び第2受信素子ごとに0.5〜3%程度ずつ異なるように割り当てられる(図3、図4参照)。共振周波数の設定は、各第2送信素子及び各第2受信素子のそれぞれ毎に櫛歯型電極の電極周期を変更することによって行われる。このような構成によれば、並列接続された複数の第2送信素子YT1〜YT3に対して順次周波数を選択して駆動信号を入力すると、当該周波数に対応する共振周波数を有する特定の第2送信素子のみを選択的に動作させることができる。また、生成された弾性表面波は、当該第2送信素子と対になった第2受信素子、すなわち、同じ共振周波数を有する第2受信素子によって優先的に受信され、他の第2受信素子にはほとんど受信されないので、各第2受信素子YR1〜YR3を並列接続していても、特定の第2受信素子による受信信号を検出することができる。
【0040】
なお、上述した第1送信素子、第2送信素子、第1受信素子又は第2受信素子を構成する櫛歯型電極としては、図5に例示するような一方向性電極を用いることも好ましい。図5に例示する櫛歯型電極では、図中、模様を付してある各電極指に対して質量効果が設けられいる。このような一方向性電極を用いることにより、特定方向(図中、矢印で示す方向)に対して効率よく弾性表面波を進行させることができる。
【0041】
図6は、上述した実施形態にかかる位置検出装置を含んで構成されるタッチパネル装置の構成例を説明するブロック図である。図6に示すタッチパネル装置100は、上述した位置検出装置1を含んでなるタッチパネル部101と、周波数選択回路102、周波数可変発振回路103、X方向検出回路104、Y方向検出回路105、座標位置判定回路106を含んで構成されている。周波数選択回路102は、周波数(f1、f2…)を適宜選択し、信号を出力する。この信号は周波数可変発振回路103に入力される。周波数可変発振回路103は当該入力信号に応じた周波数の駆動信号を生成し、第1送信素子群10及び第2送信素子群20へ出力する。この駆動信号の周波数に応じて特定の第1送信素子及び第2送信素子が動作し、弾性表面波が生成される。例えば、駆動信号の周波数がf1であれば、第1送信素子XT1及び第2送信素子YT1が動作する。そして、特定の第1送信素子及び第2送信素子によって生成された弾性表面波は、対応する共振周波数を有する特定の第1受信素子及び第2受信素子によって受信される。周波数選択回路102は、弾性表面波の送受信に要する時間に対応して設定される所定時間が経過した後に、X方向検出回路104及びY方向検出回路105に対して所定の信号を送る。X方向検出回路104は第1受信素子群30と接続され、Y方向検出回路105は第2受信素子群40と接続されており、各受信素子によって弾性表面波が検出されることによって得られる検出信号に対して増幅、波形整形等の信号処理を行う。信号処理後の検出信号は座標位置判定回路106に入力される。座標位置判定回路106は、入力される検出信号に基づいて、タッチパネル部101上のどの位置が指定されているかを判定する。
【0042】
図7は、タッチパネル装置を備える電子機器の一例を示す斜視図である。図7(A)は、電子機器の一例としての電子手帳500の概略斜視図である。この電子手帳500は、タッチパネル装置付きの表示部501を備えており、スタイラス502を表示部501の任意位置に接触させることによって各種の入力指示を行うことが可能に構成されている。図7(B)は、電子機器の一例としてのカーナビゲーション装置510の概略斜視図である。このカーナビゲーション装置510は、本体部511とタッチパネル装置付きの表示部512とを備えており、操作者の指を表示部512の任意位置に接触させることによって各種の入力指示を行うことが可能に構成されている。上述した本実施形態にかかる位置検出装置は、これらのような電子機器に組み込まれるタッチパネル装置の構成要素として用いることができる。
【0043】
このように本実施形態によれば、各第1送信素子及び各第1受信素子がそれぞれ固有の共振周波数を有するようにしているので、各第1送信素子を全て並列接続し、かつ各第1受信素子を全て並列接続することが可能となる。同様に、各第2送信素子及び各第2受信素子がそれぞれ固有の共振周波数を有するようにしているので、各第2送信素子を全て並列接続し、かつ各第2受信素子を全て並列接続することが可能となる。したがって、各第1送信素子、各第1受信素子をそれぞれ1組の配線によって接続し、各第2送信素子、各第2受信素子をそれぞれ1組の配線によって接続することが可能となり、配線構造が大幅に簡略化された位置検出装置を得ることが可能となる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、第1送信素子群10と第2送信素子群20とが並列接続される構成としていたが、これらは互いに接続されずに独立していてもよい。
【0045】
また、第1送信素子群及び第1受信素子群は、所定数(例えば、2〜4個)の第1送信素子及び第1受信素子の対ごとに同一の共振周波数が設定され、当該所定数の第1送信素子及び第1受信素子の各対のそれぞれが送受信する弾性波の間に位相差が生じるように構成されていることも好ましい。同様に、第2送信素子群及び第2受信素子群は、所定数(例えば、2〜4個)の第2送信素子及び第2受信素子の対ごとに同一の共振周波数が設定され、当該所定数の第2送信素子及び第2受信素子の各対のそれぞれが送受信する弾性波の間に位相差が生じるように構成されていることが好ましい。以下、この場合について説明する。
【0046】
図8は、変形例の第1送信素子群及び第1受信素子群の構成を説明する模式平面図である。図8に示す変形例では、第1送信素子群10aは、隣り合う2つの第1送信素子ごとに対となっており、各対ごとに同一の共振周波数が設定されている。同様に、第1受信素子群30aは、隣り合う2つの第1受信素子ごとに対となっており、各対ごとに同一の共振周波数が設定されている。例えば、第1送信素子XT11と第1送信素子XT12とが一対になっており、これらには共振周波数f1が設定されている。また、これに対応付けられた第1受信素子XR11と第1受信素子XR12とが一対になっており、これらには共振周波数f1が設定されている。そして、これらの第1送信素子XT11、XT12、第1受信素子XR11、XR12は、送受信する弾性波の間に位相差が生じるように構成されている。本例では、第1送信素子XT11と第1送信素子XT12のY方向における形成位置を所定ピッチだけずらすことにより、第1送信素子XT11によって発生する弾性表面波(位相0°)に比べて、第1送信素子XT12によって発生する弾性表面波の位相が90°遅れる(又は進む)ように構成されている。同様の位相調整は、第1受信素子XR11、XR12の形成位置を所定ピッチだけずらすことによっても可能である。
【0047】
なお、同一の共振周波数が設定される第1送信素子又は第1受信素子の相互間における位相差は、0°より大きく180°より小さい値、又は180°より大きく360°より小さい値(すなわち180°以外の値)に設定されることが好ましい。これにより、隣り合った各第1送信素子によって発生した弾性表面波同士が干渉し、打ち消し合うことを回避できるので好ましい。また、図示及び説明を省略するが、第2送信素子群及び第2受信素子群についても上記と同様の構成を適用できる。
【0048】
また、上述した実施形態では、矩形状の基板2の略直交する2辺のそれぞれに平行な方向であるX方向、Y方向を第1方向、第2方向として第1送信素子群、第1受信素子群、第2送信素子群及び第2受信素子群を配置していたが、これ以外の配置を採用してもよい。具体的には、第1送信素子群及び第1受信素子群の配置方向である第1方向は、基板2の四辺のいずれとも平行でない斜め方向(例えば、基板2の対角線方向)であってもよい。この場合、第2送信素子群及び第2受信素子群の配置方向である第2方向は、基板2の四辺のいずれとも平行でない斜め方向であり、かつ第1方向に対して略直交する方向として規定される。
【0049】
また、上述した実施形態では、マトリクス座標の検出(二次元座標検出)を行う位置検出装置に対して本発明を適用した場合の形態について例示していたが、第2送信素子及び第2受信素子を省略し、この場合には、第1送信素子及び第1受信素子の組み合わせによって一次元方向の位置検出を行うように位置検出装置を構成することも可能である。この場合においても、配線構造が大幅に簡略化された位置検出装置を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】一実施形態の位置検出装置の構成を説明する模式平面図である。
【図2】図1に示す位置検出装置のII−II線方向における断面図である。
【図3】各第1送信素子に割り当てられた共振周波数について説明するグラフである。
【図4】各第1受信素子に割り当てられた共振周波数について説明するグラフである。
【図5】一方向性電極の具体例を説明する図である。
【図6】位置検出装置を含んで構成されるタッチパネル装置の構成例を説明するブロック図である。
【図7】弾性波素子を備える電子機器の一例を示す斜視図である。
【図8】変形例の第1送信素子群及び第1受信素子群の構成を説明する模式平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…位置検出装置、2…基板、3…圧電体膜、10…第1送信素子群、20…第2送信素子群、30…第1受信素子群、40…第2受信素子群、100…タッチパネル装置、101…タッチパネル部、102…周波数選択回路、103…周波数可変発振回路、104…X方向検出回路、105…Y方向検出回路、106…座標位置判定回路、XT11〜XT3…第1送信素子、XR11〜XR3…第1受信素子、YT1〜YT3…第2送信素子、YR1〜YR3…第2受信素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触表面に弾性波を伝搬させ、当該接触表面に対象物が接触したときの前記弾性波の状態変化を用いて位置検出を行う位置検出装置であって、
基板と、
第1方向に沿って前記基板上に配置され、かつ並列接続された弾性波送信用の複数の第1送信素子を含んでなる第1送信素子群と、
それぞれが前記複数の第1送信素子と一対一に対応付けられており、前記第1方向に沿って前記基板上に前記第1送信素子群と離間して配置され、かつ並列接続された弾性波受信用の複数の第1受信素子を含んでなる第1受信素子群と、
を備え、
前記第1送信素子群及び前記第1受信素子群は、対応付けられた各対の前記第1送信素子及び前記第1受信素子ごとにそれぞれ異なる共振周波数を有するように構成される、位置検出装置。
【請求項2】
各対の前記第1送信素子及び前記第1受信素子ごとに0.5〜3%程度ずつ前記共振周波数が異なるように構成される、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記基板は、矩形状であり、
前記第1方向は、前記基板の四辺のいずれとも平行でない斜め方向である、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第1送信素子群及び前記第1受信素子群は、隣接する所定数の前記第1送信素子及び前記第1受信素子の対ごとに同一の共振周波数が設定されており、
当該所定数の前記第1送信素子及び前記第1受信素子の各対は、それぞれが送受信する弾性波の間に位相差が生じるように構成されている、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記位相差は、0°より大きく180°より小さい値、又は180°より大きく360°より小さい値に設定される、請求項4に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記複数の第1送信素子及び前記複数の第1受信素子のそれぞれは一方向性電極を用いて構成される、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記第1方向と略直交する第2方向に沿って前記基板上に配置され、かつ並列接続された弾性波送信用の複数の第2送信素子を含んでなる第2送信素子群と、
それぞれが前記複数の第2送信素子と一対一に対応付けられており、前記第2方向に沿って前記基板上に前記第2送信素子群と離間して配置され、かつ並列接続された弾性波受信用の複数の第2送信素子を含んでなる第2受信素子群と、
を更に備え、
前記第2送信素子群及び前記第2受信素子群は、対応付けられた各対の前記第2送信素子及び前記第2受信素子ごとにそれぞれ異なる共振周波数を有するように構成される、請求項1乃至6のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記第1送信素子群と前記第2送信素子群とが並列接続される、請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項9】
各対の前記第2送信素子及び前記第2受信素子ごとに0.5〜3%程度ずつ前記共振周波数が異なるように構成される、請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記第2送信素子群及び前記第2受信素子群は、所定数の前記第2送信素子及び前記第1受信素子の対ごとに同一の共振周波数が設定されており、
当該所定数の前記第2送信素子及び前記第2受信素子の各対は、それぞれが送受信する弾性波の間に位相差が生じるように構成されている、請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記位相差は、0°より大きく180°より小さい値、又は180°より大きく360°より小さい値に設定される、請求項10に記載の位置検出装置。
【請求項12】
前記複数の第2送信素子及び前記複数の第2受信素子のそれぞれは一方向性電極を用いて構成される、請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の位置検出装置を備える電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−292440(P2006−292440A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110215(P2005−110215)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】