位置検出装置
【課題】 製品間の品質差を低減可能な位置検出装置を提供する。
【解決手段】永久磁石20は、固定部80に設けられる。ヨーク11は、回転部90に設けられ、永久磁石20の周囲に磁性材料により筒状に形成され、永久磁石20が発生した磁束が優先的に流入する弦部111を有する。弦部111は、内壁の他の部分に対し、永久磁石20に近接するよう形成される。ホール素子31は、固定部80に、永久磁石20に対して定位置に配置される。ホール素子31は、弦部111と永久磁石20との間の磁束の密度および角度に応じた信号を出力する。
【解決手段】永久磁石20は、固定部80に設けられる。ヨーク11は、回転部90に設けられ、永久磁石20の周囲に磁性材料により筒状に形成され、永久磁石20が発生した磁束が優先的に流入する弦部111を有する。弦部111は、内壁の他の部分に対し、永久磁石20に近接するよう形成される。ホール素子31は、固定部80に、永久磁石20に対して定位置に配置される。ホール素子31は、弦部111と永久磁石20との間の磁束の密度および角度に応じた信号を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象の位置を検出する位置検出装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されている回転角検出装置は、ホール素子、永久磁石、ヨーク等を備える。特許文献1の回転角検出装置は、検出対象に設けられている永久磁石およびヨークがホール素子に対して相対回転することにより変化する磁束ベクトルを検出することで検出対象の相対回転角を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−177004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の位置検出装置の場合、ホール素子および永久磁石は個別に組付けられているため、永久磁石とホール素子との間の距離が組付け毎(製品毎)に異なるおそれがある。また、ホール素子と永久磁石との距離が大きいため、外乱磁界の影響を受け易くなる。さらに、出力の直線性を高めるためにホール素子と永久磁石との距離を大きくする必要があるため、磁気回路の体格が大きくなる。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、製品間の位置検出精度の差異を低減可能な位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明によると、位置検出装置は、検出対象の位置を検出し、固定された固定部、ヨーク、磁束発生手段、および、磁気検出手段を備える。磁束発生手段は、検出対象または固定部のいずれか一方に設けられる。ヨークは、検出対象または固定部のいずれか他方に設けられ、磁束発生手段の周囲に磁性材料により筒状に形成され、磁束発生手段が発生した磁束が優先的に流入する磁束流入部を有する。磁束流入部は、内壁の他の部分に対し、磁束発生手段に近接するよう形成される。磁気検出手段は、検出対象または固定部のいずれか一方に、磁束発生手段に対して定位置に配置される。磁気検出手段は、磁束流入部と磁束発生手段との間の磁束の密度および角度に応じた信号を出力する。
【0007】
これにより、磁気検出手段は、磁束発生手段および磁気検出手段と、ヨークとの相対回転により変化する磁束ベクトルを検出する。ここで、磁気検出手段は磁束発生手段に対して定位置に配置されているため、磁気検出手段と磁束発生手段との間の距離が組付け毎に異なることを抑制することができる。よって、製品間の品質差を低減することができる。また、磁束発生手段と磁気検出手段とは、ヨークの内側に配置されているため、磁気検出手段を通過する磁束が外乱磁界の影響を受けることを抑制することができる。
【0008】
請求項2に係る発明によると、磁束発生手段と磁気検出手段とは、互いに当接している。ここで、「当接」というのは、磁束発生手段と磁気検出手段とが直接に当接する状態、または、磁束発生手段と磁気検出手段とが例えばモールド部を介して当接する状態を指す。
これにより、磁束発生手段と磁気検出手段とが当接することにより、磁束発生手段と磁気検出手段との間の距離が0となる。このため、磁気検出手段と磁束発生手段との間の距離が組付け毎に異なることを防止することができ、製品間の品質差をさらに低減することができる。また、磁気回路の体格を小型にでき、磁束発生手段から発生した磁束の減磁を抑制することができる。さらに、磁気検出手段を通過する磁束が受ける外乱磁界の影響をより抑制することができる。
【0009】
請求項3に係る発明によると、検出手段は、磁束発生手段が発生する磁束の方向と直交する方向に感磁方向を設けている。
これにより、磁気検出手段は、磁気検出手段とヨークとの相対移動による磁束方向の変化に応じて、方向が異なる磁束ベクトルを検出することができる。このため、磁気検出手段により出力される信号は、磁気検出手段とヨークとの相対移動によって正の値または負の値をとる。よって、磁気検出手段により出力される信号の0値を跨る区間に対応する角度範囲を検出範囲とする場合、磁気検出手段により出力される信号の直線性を高めることができる。
【0010】
請求項4に係る発明によると、磁束流入部は、平坦面を有する。
これにより、磁束は平坦面と垂直となる方向から磁束流入部に入り込む。また、磁気検出手段を通り過ぎて、平坦面から磁束流入部に入り込む磁束の密度は、磁気検出手段とヨークとの相対移動により均一に変化する。このため、磁気検出手段による検出精度を高めることができる。
【0011】
請求項5に係る発明によると、磁束流入部は、ヨークの内側の他の部分に対し内側方向に突出する突出点を有する。
これにより、磁気検出手段が、突出点両側のうち、一方で検出される磁束の方向と、他方で検出される磁束の方向とが逆となる。このため、磁気検出手段が突出点を跨って移動するとき、磁気検出手段により出力される信号の直線性をより高めることができる。
【0012】
請求項6に係る発明によると、磁気検出手段および磁束発生手段は緩衝材により覆われている。
これにより、磁気検出手段および磁束発生手段は緩衝材により保護され、応力による磁気検出手段の出力変動、および、応力による磁気検出手段または磁束発生手段の損傷を抑制することができる。
【0013】
請求項7に係る発明によると、磁気検出手段および磁束発生手段は、固定部に設けられている。
これにより、磁気検出手段および磁束発生手段は、固定部とともに固定されているため、移動するときの振動などによる磁気検出手段または磁束発生手段の損傷を抑制することができる。
【0014】
請求項8に係る発明によると、位置検出装置は、検出対象が固定部に対して相対回転し、磁束検出手段が検出対象の相対回転角度を検出する回転角検出装置に適用される。
また、請求項9に係る発明によると、磁束検出手段は、検出対象の回転軸線上に位置する。
【0015】
磁気検出手段は、曲げられた磁束のみ検出する。ところで、ヨークの回転角度に対して、磁気検出手段の磁気角度は減角する。このため、磁気検出手段を検出対象の回転軸線上に位置させることで磁気検出手段により出力される信号の直線性範囲を広くすることができる。
【0016】
請求項10に係る発明によると、位置検出装置は、検出対象が固定部に対して相対直線運動し、磁束検出手段が検出対象の相対直線変位量を検出するストローク検出装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による回転角検出装置を示す断面図。
【図2】図1のII―II線断面図。
【図3】本発明の第1実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図4】本発明の第1実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図5】本発明の第1実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図6】本発明の第1実施形態のホール素子の出力を示す図。
【図7】本発明の第1実施形態のホール素子の出力の誤差率を示す図。
【図8】本発明の第2実施形態の回転角検出装置を示す断面図。
【図9】本発明の第3実施形態のストローク検出装置を示す模式図。
【図10】図9のX−X線断面図。
【図11】本発明の第3実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図12】本発明の第3実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図13】本発明の第3実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図14】本発明の第3実施形態のホール素子の出力を示す図。
【図15】本発明の第4実施形態のストローク検出装置を示す断面図。
【図16】本発明の第4実施形態のホール素子の出力を示す図。
【図17】本発明の第5実施形態のストローク検出装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の複数の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による位置検出装置は、例えば、車両のスロットル弁等の回転部に用いられ、回転部の回転角度を検出する回転角検出装置である。回転角検出装置1は、図1に示すように、固定部80、ヨーク11、「磁束発生手段」としての永久磁石20、およびホールIC30等を備えている。
【0019】
固定部80は、例えば図示しないスロットルボディに固定されている。
ヨーク11は、磁性材料により円筒状に形成されている(図2参照)。また、ヨーク11は、「検出対象」としての回転部90に設けられ、回転部90とともに回転する。ヨーク11は板状の弦部111を有する。弦部111は、ヨーク11の内壁の他の部分に対し内側方向に形成される。弦部111は、特許請求の範囲における「磁束流入部」に対応する。弦部111の内壁には平坦面112が形成されている。
【0020】
図1、2に示すように、永久磁石20およびホールIC30は、ヨーク11の内側に位置するよう、固定部80に固定されている。つまり、ホールIC30は、永久磁石20に対して定位置に配置されている。永久磁石20およびホールIC30は、緩衝材50によりセンサカバー40内に封止され、互いに当接するよう一体に固定されている。ここで、緩衝材50は、弾性率の低い材料、すなわち永久磁石20およびホールIC30に応力をかからない材料から形成される。本実施形態では、緩衝材50は、例えばシリコンゴム等の材料が用いられる。
【0021】
ホールIC30は、図1に示すように、ホール素子31、DSP32、およびメモリ33を有する。ホールIC30は、図2に示すように、ホール素子31とDSP32とメモリ33との他に、アナログ−デジタル変換回路(以下、ADCという)34、および、デジタル−アナログ変換回路(以下、DACという)35などがモールド部36によりモールドされたICチップである。
【0022】
ホール素子31は、半導体薄膜で形成されており、感磁面311を有する(図2参照)。ホール素子31は、感磁面311を通る磁束のベクトルに対応する信号を出力する。ホールIC30は、感磁面311に垂直な方向と、永久磁石20が発生する磁束の方向とが直交となるよう設けられている。ここで、ホール素子31は特許請求の範囲における「磁気検出手段」に対応し、感磁面311に垂直な方向は特許請求の範囲における「感磁方向」に対応する。ホール素子31は、モールド部36を介して永久磁石20と当接している。図2に示すように、ホールIC30は、ホール素子31が回転部90の回転軸線O上に位置するよう設けられている。ホール素子31の感磁面311に垂直な方向と、平坦面112に垂直な方向とが直交となるとき、ホール素子31の出力値は0となる。
【0023】
DSP32は、デジタル信号処理に特化したものであり、ホール素子31から出力され、デジタル信号に変換された値に対し補正処理および回転角演算処理等の処理を行う。メモリ33は、例えば、読み出し専用メモリ、および、書き込みおよび消去可能なメモリを含み、DSP32で使われる各種データが記憶されている。
【0024】
続いて、回転角検出装置1の作動について説明する。
ホール素子31は、ヨーク11がホール素子31および永久磁石20に対して回転軸線Oの周りを相対回転することにより生じる磁束の密度に応じた信号を出力する。ADC34は、ホール素子31が出力するアナログ値をデジタル値に変換し、DSP32に伝送する。以下、ADC34によって変換されたデジタル値を単に実出力値という。DSP32は、実出力値に対し多点補正等の補正処理および回転角演算処理等を行う。また、DSP32は、処理結果をDAC35に伝送する。DAC35は、DSP32から伝送されたデジタル値をアナログ値に変換しECU100に出力する。
【0025】
回転角検出装置1の作動時の磁束のベクトルを図3〜図5に示す。図3〜図5において、一方向矢印は磁束の方向を示す。また、ヨーク11の回転軸心Oを通り平坦面112と直交する線をヨーク11の基準線L1とし、ヨーク11の回転軸心Oを通り感磁面311に平行な線をホール素子31の基準線L0とする。図3はヨーク11がホール素子31に対し反時計回り方向に45度回転したときの磁束ベクトルを示し、図4はヨーク11とホール素子31との相対回転角度が0となるときの磁束ベクトルを示し、図5はヨーク11がホール素子31に対し時計回り方向に45度回転したときの磁束ベクトルを示す。
【0026】
また、ホール素子31に対してヨーク11が時計回り方向に位置するときにヨーク11とホール素子31との相対回転角度を正角とし、ホール素子31に対してヨーク11が反時計回り方向に位置するときにヨーク11とホール素子31との相対回転角度を負角とする。
【0027】
ここで、ホール素子31の出力を図6に示す。図6では、実出力値を実線S1で示し、ホール素子31の理想直線出力値を破線Srで示し、ホール素子31の理想サイン曲線出力値を一点鎖線Ssで示す。図6に示すように、本実施形態では、実出力値(S1)は理想直線出力値(Sr)に近付いている。
【0028】
また、実出力値に対して多点補正を行った結果を図7に示す。図7では、実出力値の誤差率を曲線Sgで示し、多点補正後の実出力値の誤差率を曲線Sghで示す。図7に示すように、本実施形態の実出力値に対して多点補正後、誤差率は大幅に減少する。
【0029】
以下、本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態では、永久磁石20およびホールIC30は固定部80に固定され、ホールIC30は永久磁石20に対して定位置に配置されている。これにより、ホール素子31は永久磁石20に対して定位置に配置される。このため、永久磁石20とホール素子31との間の距離が組付け毎に異なることを抑制することができる。よって、製品間の品質差を低減することができる。また、永久磁石20およびホールIC30は、ヨーク11の内側に配置されているため、ホール素子31を通過する磁束が外乱磁界の影響を受けることを抑制することができる。さらに、永久磁石20とホール素子31とを近く配置すれば、磁気回路の体格を小型にできる。
【0030】
(2)本実施形態では、永久磁石20とホールIC30とは互いに当接し、永久磁石20とホール素子31とはモールド部36を介して当接している。
これにより、永久磁石20とホールIC30との間の距離が0となり、永久磁石20とホール素子31との間の距離が一定となる。このため、永久磁石20とホール素子31との間の距離が組付け毎に異なることを防止することができ、製品間の品質差をさらに低減することができる。また、磁気回路の体格をより小型にでき、永久磁石20から発生した磁束の減磁を抑制することができる。さらに、ホール素子31を通過する磁束が受ける外乱磁界の影響をより抑制することができる。
【0031】
(3)本実施形態では、感磁面311に垂直な方向と、永久磁石20が発生する磁束の方向とが直交となるよう設けられている。
ホール素子31は、ホール素子31とヨーク11との相対移動による磁束方向の変化に応じて、方向が異なる磁束ベクトルを検出することができる。このため、実出力値は、ホール素子31とヨーク11との相対移動によって正の値または負の値をとる。よって、実出力値の0値を跨る区間に対応する角度範囲を検出範囲とする場合、実出力値の直線性を高めることができる。
【0032】
(4)本実施形態では、弦部111は平坦面112を有する。磁束は平坦面112と垂直となる方向から弦部111に入り込む。また、ホール素子31を通り過ぎて、平坦面112から弦部111に入り込む磁束の密度は、ホール素子31とヨーク11との相対移動により均一に変化する。このため、ホール素子31による検出精度を高めることができる。
【0033】
(5)本実施形態では、ホールIC30および永久磁石20は緩衝材50により覆われている。これにより、ホールIC30および永久磁石20は緩衝材50により保護され、応力によるホール素子31の出力変動、および、応力によるホール素子31または永久磁石20の損傷を抑制することができる。
(6)本実施形態では、ホールIC30および永久磁石20は、固定部80に固定されている。これにより、ホール素子31および永久磁石20は、固定部80とともに固定されているため、移動するときの振動などによるホール素子31または永久磁石20の損傷を抑制することができる。
【0034】
(7)本実施形態では、ホール素子31は、回転部90の回転軸線O上に位置する。ホール素子31は、曲げられた磁束のみ検出する。ところで、ヨーク11の回転角度に対して、ホール素子31の磁気角度は減角する。このため、ホール素子31を回転部90の回転軸線O上に位置させることで、実出力値の直線性範囲を広くすることができる。
(8)本実施形態では、実出力値に対して多点補正を行うことで、検出精度を高めることができる。
【0035】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の位置検出装置を図8に基づいて説明する。上記第1実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態の回転角検出装置2のヨーク12は円筒状に形成され、内壁の他の部分に対し内側方向に突出する突出部121を有する。突出部121は特許請求の範囲における「磁束流入部」に対応する。突出部121は、ホール素子31に対向する平坦面122を有する。
本実施形態は、上記第1実施形態の効果と同様な効果を得ることができる。
【0036】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による位置検出装置は、例えば自動車のトランスミッション、アクセル、ブレーキ等のストローク部に用いられ、ストローク部のストローク量を検出するストローク検出装置である。
【0037】
本実施形態のストローク検出装置を図9〜図14に基づいて説明する。
図9に示すように、ストローク検出装置3は、リニアアクチュエータ60のストローク部61と固定部80との相対移動により検出された信号をECU100に出力する。ECU100は、ストローク検出装置3から出力された信号に基づいて、固定部80に対するストローク部61の相対ストローク量を算出し、リニアアクチュエータ60をフィードバック制御する。以下、ストローク部61の移動方向を「X方向」とし、X方向と直交する図9の上下方向を「Y方向」とする。
【0038】
ストローク検出装置3は、図9に示すように、固定部80、ヨーク13、としての永久磁石20、およびホールIC30等を備えている。ここで、固定部80、永久磁石20、およびホールIC30は、上記第1実施形態と実質的に同一の構成を有するため、説明を省略する。
【0039】
ヨーク13は、検出対象としてのストローク部61に固定され、ストローク部61とともにX方向に直線移動する。ヨーク13は、磁性材料により矩形の筒状に形成され、内壁の他の部分に対し内側方向に突出する突出部131を有する。つまり、ヨーク13は、Y方向に垂直な断面の形状が「凹」字状である(図10参照)。また、突出部131は、ヨーク13の内側に平坦面132を有する。ここで、突出部131は、特許請求の範囲における「磁束流入部」に対応する。
【0040】
永久磁石20およびホールIC30は、ホールIC30が永久磁石20と平坦面132との間に位置するようヨーク13の内側に設けられ、固定部80に固定されている。ホールIC30とヨーク13とがX方向に相対直線移動するとき、ホール素子31近傍の磁束のベクトルを図11〜図13に示す。ここで、平坦面132のX方向の中点を通りX方向およびY方向と直交する線をヨーク13の基準線L3とする。図11はヨーク13がホールIC30に対してX方向の左側に所定距離d離れたときの磁束ベクトルを示し、図12はヨーク13とホール素子31との相対ストローク量が0となるときの磁束ベクトルを示し、図13はヨーク13がホール素子31に対してX方向の右側に所定距離d離れたときの磁束ベクトルを示す。
【0041】
ホールIC30は、リニアアクチュエータ60のストローク部61と固定部80との相対移動により検出された信号をECU100に出力する。本実施形態のストローク検出装置3の出力を図14に示す。ここで、実出力値を実線S3で示す。ホール素子31が平坦面132に対向するとき、実出力値は0となる。また、ホール素子31に対してヨーク13がX方向の右側に位置するときのヨーク13とホール素子31との相対ストロークを正の値とし、ホール素子31に対してヨーク13がX方向の左側に位置するときのヨーク13とホール素子31との相対ストロークを負の値とする。本実施形態では、実出力値に対して多点補正を行う。
本実施形態は、上記第1実施形態の効果(1)〜(6)、(8)と同様な効果を得ることができる。
【0042】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態によるストローク検出装置を図15、16に基づいて説明する。上記第3実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
図15に示すように、本実施形態のストローク検出装置4のヨーク14は、矩形の筒状に形成され、内壁の他の部分に対し内側方向に突出する円弧状の突出部141を有する。突出部141は、ヨーク14の内側に、突出点142、第1弧面143、および第2弧面144を有する。突出点142を通りX方向およびY方向と直交する線をヨーク14の基準線L4とする。ここで、突出部141は、特許請求の範囲における「磁束流入部」に対応する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態では、突出部141は、ヨーク14の内側の他の部分に対し内側方向に突出する突出点142を有する。本実施形態の実出力値を図16の実線S4で示し、上記第3実施形態の実出力値を図16の破線S3で示す。ここで、ホール素子31が突出点142に対向するとき、実出力値は0となる。つまり、基準線L0と基準線L4とが重なるとき、実出力値は0となる。また、ホール素子31が第1弧面143に対向するときに検出される磁束ベクトルの方向と、ホール素子31が第2弧面144に対向するときに検出される磁束ベクトルの方向とは互いに逆となる。このため、第3実施形態に比べ、実出力値の直線性を高めることができる。
【0044】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態によるストローク検出装置を図17に基づいて説明する。上記第3実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
図17に示すように、本実施形態のストローク検出装置5のヨーク15は、矩形の筒状に形成され、内壁の他の部分に対し内側方向に突出する角状の突出部151を有する。突出部151は、ヨーク15の内側に、突出点152、第1斜面153、および第2斜面154を有する。突出点152を通りX方向およびY方向と直交する線をヨーク15の基準線L5とする。ここで、突出部151は、特許請求の範囲における「磁束流入部」に対応する。
【0045】
本実施形態では、突出部151は、ヨーク15の内側の他の部分に対し内側方向に突出する突出点152を有する。これにより、ホール素子31が突出点152に対向するとき、実出力値は0となる。つまり、基準線L0と基準線L5とが重なるとき、実出力値は0となる。また、ホール素子31が第1斜面153に対向するときに検出される磁束ベクトルの方向と、ホール素子31が第2斜面154に対向するときに検出される磁束ベクトルの方向とは互いに逆となる。よって、本実施形態は、上記第4実施形態の効果と同様な効果を有する。
【0046】
(他の実施形態)
上記実施形態では、磁束発生手段としての永久磁石とホールICとが当接する例を示した。これに対し、他の実施形態では、永久磁石とホールICとを当接させずに固定することとしても良い。
【0047】
上記実施形態では、磁束発生手段として永久磁石が用いられる。これに対し、他の実施形態では、磁束発生手段として例えば電磁石等を用いることとしても良い。
上記実施形態では、緩衝材としてシリコンゴムを使用する例を示した。これに対し、他の実施形態では、樹脂、ゴム等の緩衝材を用いることとしても良い。
【0048】
上記実施形態では、磁気検出手段としてホール素子を使用する例を示した。これに対し、他の実施形態では、磁気検出手段として、磁気抵抗素子を用いることとしても良い。
また、上記実施形態では、ホール素子と永久磁石とがモールド部を介して当接している例を示した。これに対し、他の実施形態では、ホール素子と永久磁石とが直接に当接することとしても良い。
【0049】
上記実施形態では、永久磁石が発生する磁束の方向と、ホール素子の感磁面に垂直となる方向とが直交する例を示した。これに対し、他の実施形態では、永久磁石が発生する磁束の方向と、ホール素子の感磁面に垂直となる方向とが平行になるよう、永久磁石およびホールICを設けることとしても良い。
【0050】
上記実施形態では、ヨークが検出対象(回転部、ストローク部)に設けられ、永久磁石およびホールICが固定部に固定されている例を示した。これに対し、他の実施形態では、ヨークを固定部に設け、永久磁石およびホールICを検出対象に設けることとしても良い。
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、2・・・回転角検出装置(位置検出装置)、
3、4、5・・・ストローク検出装置(位置検出装置)、
11、12、13、14、15・・・ヨーク、
20・・・永久磁石(磁束発生手段)、
31・・・ホール素子(磁気検出手段)、
61・・・ストローク部(検出対象)、
80・・・固定部、
90・・・回転部(検出対象)、
111・・・弦部(磁束流入部)、
121、131、141、151・・・突出部(磁束流入部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象の位置を検出する位置検出装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されている回転角検出装置は、ホール素子、永久磁石、ヨーク等を備える。特許文献1の回転角検出装置は、検出対象に設けられている永久磁石およびヨークがホール素子に対して相対回転することにより変化する磁束ベクトルを検出することで検出対象の相対回転角を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−177004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の位置検出装置の場合、ホール素子および永久磁石は個別に組付けられているため、永久磁石とホール素子との間の距離が組付け毎(製品毎)に異なるおそれがある。また、ホール素子と永久磁石との距離が大きいため、外乱磁界の影響を受け易くなる。さらに、出力の直線性を高めるためにホール素子と永久磁石との距離を大きくする必要があるため、磁気回路の体格が大きくなる。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、製品間の位置検出精度の差異を低減可能な位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明によると、位置検出装置は、検出対象の位置を検出し、固定された固定部、ヨーク、磁束発生手段、および、磁気検出手段を備える。磁束発生手段は、検出対象または固定部のいずれか一方に設けられる。ヨークは、検出対象または固定部のいずれか他方に設けられ、磁束発生手段の周囲に磁性材料により筒状に形成され、磁束発生手段が発生した磁束が優先的に流入する磁束流入部を有する。磁束流入部は、内壁の他の部分に対し、磁束発生手段に近接するよう形成される。磁気検出手段は、検出対象または固定部のいずれか一方に、磁束発生手段に対して定位置に配置される。磁気検出手段は、磁束流入部と磁束発生手段との間の磁束の密度および角度に応じた信号を出力する。
【0007】
これにより、磁気検出手段は、磁束発生手段および磁気検出手段と、ヨークとの相対回転により変化する磁束ベクトルを検出する。ここで、磁気検出手段は磁束発生手段に対して定位置に配置されているため、磁気検出手段と磁束発生手段との間の距離が組付け毎に異なることを抑制することができる。よって、製品間の品質差を低減することができる。また、磁束発生手段と磁気検出手段とは、ヨークの内側に配置されているため、磁気検出手段を通過する磁束が外乱磁界の影響を受けることを抑制することができる。
【0008】
請求項2に係る発明によると、磁束発生手段と磁気検出手段とは、互いに当接している。ここで、「当接」というのは、磁束発生手段と磁気検出手段とが直接に当接する状態、または、磁束発生手段と磁気検出手段とが例えばモールド部を介して当接する状態を指す。
これにより、磁束発生手段と磁気検出手段とが当接することにより、磁束発生手段と磁気検出手段との間の距離が0となる。このため、磁気検出手段と磁束発生手段との間の距離が組付け毎に異なることを防止することができ、製品間の品質差をさらに低減することができる。また、磁気回路の体格を小型にでき、磁束発生手段から発生した磁束の減磁を抑制することができる。さらに、磁気検出手段を通過する磁束が受ける外乱磁界の影響をより抑制することができる。
【0009】
請求項3に係る発明によると、検出手段は、磁束発生手段が発生する磁束の方向と直交する方向に感磁方向を設けている。
これにより、磁気検出手段は、磁気検出手段とヨークとの相対移動による磁束方向の変化に応じて、方向が異なる磁束ベクトルを検出することができる。このため、磁気検出手段により出力される信号は、磁気検出手段とヨークとの相対移動によって正の値または負の値をとる。よって、磁気検出手段により出力される信号の0値を跨る区間に対応する角度範囲を検出範囲とする場合、磁気検出手段により出力される信号の直線性を高めることができる。
【0010】
請求項4に係る発明によると、磁束流入部は、平坦面を有する。
これにより、磁束は平坦面と垂直となる方向から磁束流入部に入り込む。また、磁気検出手段を通り過ぎて、平坦面から磁束流入部に入り込む磁束の密度は、磁気検出手段とヨークとの相対移動により均一に変化する。このため、磁気検出手段による検出精度を高めることができる。
【0011】
請求項5に係る発明によると、磁束流入部は、ヨークの内側の他の部分に対し内側方向に突出する突出点を有する。
これにより、磁気検出手段が、突出点両側のうち、一方で検出される磁束の方向と、他方で検出される磁束の方向とが逆となる。このため、磁気検出手段が突出点を跨って移動するとき、磁気検出手段により出力される信号の直線性をより高めることができる。
【0012】
請求項6に係る発明によると、磁気検出手段および磁束発生手段は緩衝材により覆われている。
これにより、磁気検出手段および磁束発生手段は緩衝材により保護され、応力による磁気検出手段の出力変動、および、応力による磁気検出手段または磁束発生手段の損傷を抑制することができる。
【0013】
請求項7に係る発明によると、磁気検出手段および磁束発生手段は、固定部に設けられている。
これにより、磁気検出手段および磁束発生手段は、固定部とともに固定されているため、移動するときの振動などによる磁気検出手段または磁束発生手段の損傷を抑制することができる。
【0014】
請求項8に係る発明によると、位置検出装置は、検出対象が固定部に対して相対回転し、磁束検出手段が検出対象の相対回転角度を検出する回転角検出装置に適用される。
また、請求項9に係る発明によると、磁束検出手段は、検出対象の回転軸線上に位置する。
【0015】
磁気検出手段は、曲げられた磁束のみ検出する。ところで、ヨークの回転角度に対して、磁気検出手段の磁気角度は減角する。このため、磁気検出手段を検出対象の回転軸線上に位置させることで磁気検出手段により出力される信号の直線性範囲を広くすることができる。
【0016】
請求項10に係る発明によると、位置検出装置は、検出対象が固定部に対して相対直線運動し、磁束検出手段が検出対象の相対直線変位量を検出するストローク検出装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による回転角検出装置を示す断面図。
【図2】図1のII―II線断面図。
【図3】本発明の第1実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図4】本発明の第1実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図5】本発明の第1実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図6】本発明の第1実施形態のホール素子の出力を示す図。
【図7】本発明の第1実施形態のホール素子の出力の誤差率を示す図。
【図8】本発明の第2実施形態の回転角検出装置を示す断面図。
【図9】本発明の第3実施形態のストローク検出装置を示す模式図。
【図10】図9のX−X線断面図。
【図11】本発明の第3実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図12】本発明の第3実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図13】本発明の第3実施形態の磁束の密度を示す模式図。
【図14】本発明の第3実施形態のホール素子の出力を示す図。
【図15】本発明の第4実施形態のストローク検出装置を示す断面図。
【図16】本発明の第4実施形態のホール素子の出力を示す図。
【図17】本発明の第5実施形態のストローク検出装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の複数の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による位置検出装置は、例えば、車両のスロットル弁等の回転部に用いられ、回転部の回転角度を検出する回転角検出装置である。回転角検出装置1は、図1に示すように、固定部80、ヨーク11、「磁束発生手段」としての永久磁石20、およびホールIC30等を備えている。
【0019】
固定部80は、例えば図示しないスロットルボディに固定されている。
ヨーク11は、磁性材料により円筒状に形成されている(図2参照)。また、ヨーク11は、「検出対象」としての回転部90に設けられ、回転部90とともに回転する。ヨーク11は板状の弦部111を有する。弦部111は、ヨーク11の内壁の他の部分に対し内側方向に形成される。弦部111は、特許請求の範囲における「磁束流入部」に対応する。弦部111の内壁には平坦面112が形成されている。
【0020】
図1、2に示すように、永久磁石20およびホールIC30は、ヨーク11の内側に位置するよう、固定部80に固定されている。つまり、ホールIC30は、永久磁石20に対して定位置に配置されている。永久磁石20およびホールIC30は、緩衝材50によりセンサカバー40内に封止され、互いに当接するよう一体に固定されている。ここで、緩衝材50は、弾性率の低い材料、すなわち永久磁石20およびホールIC30に応力をかからない材料から形成される。本実施形態では、緩衝材50は、例えばシリコンゴム等の材料が用いられる。
【0021】
ホールIC30は、図1に示すように、ホール素子31、DSP32、およびメモリ33を有する。ホールIC30は、図2に示すように、ホール素子31とDSP32とメモリ33との他に、アナログ−デジタル変換回路(以下、ADCという)34、および、デジタル−アナログ変換回路(以下、DACという)35などがモールド部36によりモールドされたICチップである。
【0022】
ホール素子31は、半導体薄膜で形成されており、感磁面311を有する(図2参照)。ホール素子31は、感磁面311を通る磁束のベクトルに対応する信号を出力する。ホールIC30は、感磁面311に垂直な方向と、永久磁石20が発生する磁束の方向とが直交となるよう設けられている。ここで、ホール素子31は特許請求の範囲における「磁気検出手段」に対応し、感磁面311に垂直な方向は特許請求の範囲における「感磁方向」に対応する。ホール素子31は、モールド部36を介して永久磁石20と当接している。図2に示すように、ホールIC30は、ホール素子31が回転部90の回転軸線O上に位置するよう設けられている。ホール素子31の感磁面311に垂直な方向と、平坦面112に垂直な方向とが直交となるとき、ホール素子31の出力値は0となる。
【0023】
DSP32は、デジタル信号処理に特化したものであり、ホール素子31から出力され、デジタル信号に変換された値に対し補正処理および回転角演算処理等の処理を行う。メモリ33は、例えば、読み出し専用メモリ、および、書き込みおよび消去可能なメモリを含み、DSP32で使われる各種データが記憶されている。
【0024】
続いて、回転角検出装置1の作動について説明する。
ホール素子31は、ヨーク11がホール素子31および永久磁石20に対して回転軸線Oの周りを相対回転することにより生じる磁束の密度に応じた信号を出力する。ADC34は、ホール素子31が出力するアナログ値をデジタル値に変換し、DSP32に伝送する。以下、ADC34によって変換されたデジタル値を単に実出力値という。DSP32は、実出力値に対し多点補正等の補正処理および回転角演算処理等を行う。また、DSP32は、処理結果をDAC35に伝送する。DAC35は、DSP32から伝送されたデジタル値をアナログ値に変換しECU100に出力する。
【0025】
回転角検出装置1の作動時の磁束のベクトルを図3〜図5に示す。図3〜図5において、一方向矢印は磁束の方向を示す。また、ヨーク11の回転軸心Oを通り平坦面112と直交する線をヨーク11の基準線L1とし、ヨーク11の回転軸心Oを通り感磁面311に平行な線をホール素子31の基準線L0とする。図3はヨーク11がホール素子31に対し反時計回り方向に45度回転したときの磁束ベクトルを示し、図4はヨーク11とホール素子31との相対回転角度が0となるときの磁束ベクトルを示し、図5はヨーク11がホール素子31に対し時計回り方向に45度回転したときの磁束ベクトルを示す。
【0026】
また、ホール素子31に対してヨーク11が時計回り方向に位置するときにヨーク11とホール素子31との相対回転角度を正角とし、ホール素子31に対してヨーク11が反時計回り方向に位置するときにヨーク11とホール素子31との相対回転角度を負角とする。
【0027】
ここで、ホール素子31の出力を図6に示す。図6では、実出力値を実線S1で示し、ホール素子31の理想直線出力値を破線Srで示し、ホール素子31の理想サイン曲線出力値を一点鎖線Ssで示す。図6に示すように、本実施形態では、実出力値(S1)は理想直線出力値(Sr)に近付いている。
【0028】
また、実出力値に対して多点補正を行った結果を図7に示す。図7では、実出力値の誤差率を曲線Sgで示し、多点補正後の実出力値の誤差率を曲線Sghで示す。図7に示すように、本実施形態の実出力値に対して多点補正後、誤差率は大幅に減少する。
【0029】
以下、本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態では、永久磁石20およびホールIC30は固定部80に固定され、ホールIC30は永久磁石20に対して定位置に配置されている。これにより、ホール素子31は永久磁石20に対して定位置に配置される。このため、永久磁石20とホール素子31との間の距離が組付け毎に異なることを抑制することができる。よって、製品間の品質差を低減することができる。また、永久磁石20およびホールIC30は、ヨーク11の内側に配置されているため、ホール素子31を通過する磁束が外乱磁界の影響を受けることを抑制することができる。さらに、永久磁石20とホール素子31とを近く配置すれば、磁気回路の体格を小型にできる。
【0030】
(2)本実施形態では、永久磁石20とホールIC30とは互いに当接し、永久磁石20とホール素子31とはモールド部36を介して当接している。
これにより、永久磁石20とホールIC30との間の距離が0となり、永久磁石20とホール素子31との間の距離が一定となる。このため、永久磁石20とホール素子31との間の距離が組付け毎に異なることを防止することができ、製品間の品質差をさらに低減することができる。また、磁気回路の体格をより小型にでき、永久磁石20から発生した磁束の減磁を抑制することができる。さらに、ホール素子31を通過する磁束が受ける外乱磁界の影響をより抑制することができる。
【0031】
(3)本実施形態では、感磁面311に垂直な方向と、永久磁石20が発生する磁束の方向とが直交となるよう設けられている。
ホール素子31は、ホール素子31とヨーク11との相対移動による磁束方向の変化に応じて、方向が異なる磁束ベクトルを検出することができる。このため、実出力値は、ホール素子31とヨーク11との相対移動によって正の値または負の値をとる。よって、実出力値の0値を跨る区間に対応する角度範囲を検出範囲とする場合、実出力値の直線性を高めることができる。
【0032】
(4)本実施形態では、弦部111は平坦面112を有する。磁束は平坦面112と垂直となる方向から弦部111に入り込む。また、ホール素子31を通り過ぎて、平坦面112から弦部111に入り込む磁束の密度は、ホール素子31とヨーク11との相対移動により均一に変化する。このため、ホール素子31による検出精度を高めることができる。
【0033】
(5)本実施形態では、ホールIC30および永久磁石20は緩衝材50により覆われている。これにより、ホールIC30および永久磁石20は緩衝材50により保護され、応力によるホール素子31の出力変動、および、応力によるホール素子31または永久磁石20の損傷を抑制することができる。
(6)本実施形態では、ホールIC30および永久磁石20は、固定部80に固定されている。これにより、ホール素子31および永久磁石20は、固定部80とともに固定されているため、移動するときの振動などによるホール素子31または永久磁石20の損傷を抑制することができる。
【0034】
(7)本実施形態では、ホール素子31は、回転部90の回転軸線O上に位置する。ホール素子31は、曲げられた磁束のみ検出する。ところで、ヨーク11の回転角度に対して、ホール素子31の磁気角度は減角する。このため、ホール素子31を回転部90の回転軸線O上に位置させることで、実出力値の直線性範囲を広くすることができる。
(8)本実施形態では、実出力値に対して多点補正を行うことで、検出精度を高めることができる。
【0035】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の位置検出装置を図8に基づいて説明する。上記第1実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態の回転角検出装置2のヨーク12は円筒状に形成され、内壁の他の部分に対し内側方向に突出する突出部121を有する。突出部121は特許請求の範囲における「磁束流入部」に対応する。突出部121は、ホール素子31に対向する平坦面122を有する。
本実施形態は、上記第1実施形態の効果と同様な効果を得ることができる。
【0036】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による位置検出装置は、例えば自動車のトランスミッション、アクセル、ブレーキ等のストローク部に用いられ、ストローク部のストローク量を検出するストローク検出装置である。
【0037】
本実施形態のストローク検出装置を図9〜図14に基づいて説明する。
図9に示すように、ストローク検出装置3は、リニアアクチュエータ60のストローク部61と固定部80との相対移動により検出された信号をECU100に出力する。ECU100は、ストローク検出装置3から出力された信号に基づいて、固定部80に対するストローク部61の相対ストローク量を算出し、リニアアクチュエータ60をフィードバック制御する。以下、ストローク部61の移動方向を「X方向」とし、X方向と直交する図9の上下方向を「Y方向」とする。
【0038】
ストローク検出装置3は、図9に示すように、固定部80、ヨーク13、としての永久磁石20、およびホールIC30等を備えている。ここで、固定部80、永久磁石20、およびホールIC30は、上記第1実施形態と実質的に同一の構成を有するため、説明を省略する。
【0039】
ヨーク13は、検出対象としてのストローク部61に固定され、ストローク部61とともにX方向に直線移動する。ヨーク13は、磁性材料により矩形の筒状に形成され、内壁の他の部分に対し内側方向に突出する突出部131を有する。つまり、ヨーク13は、Y方向に垂直な断面の形状が「凹」字状である(図10参照)。また、突出部131は、ヨーク13の内側に平坦面132を有する。ここで、突出部131は、特許請求の範囲における「磁束流入部」に対応する。
【0040】
永久磁石20およびホールIC30は、ホールIC30が永久磁石20と平坦面132との間に位置するようヨーク13の内側に設けられ、固定部80に固定されている。ホールIC30とヨーク13とがX方向に相対直線移動するとき、ホール素子31近傍の磁束のベクトルを図11〜図13に示す。ここで、平坦面132のX方向の中点を通りX方向およびY方向と直交する線をヨーク13の基準線L3とする。図11はヨーク13がホールIC30に対してX方向の左側に所定距離d離れたときの磁束ベクトルを示し、図12はヨーク13とホール素子31との相対ストローク量が0となるときの磁束ベクトルを示し、図13はヨーク13がホール素子31に対してX方向の右側に所定距離d離れたときの磁束ベクトルを示す。
【0041】
ホールIC30は、リニアアクチュエータ60のストローク部61と固定部80との相対移動により検出された信号をECU100に出力する。本実施形態のストローク検出装置3の出力を図14に示す。ここで、実出力値を実線S3で示す。ホール素子31が平坦面132に対向するとき、実出力値は0となる。また、ホール素子31に対してヨーク13がX方向の右側に位置するときのヨーク13とホール素子31との相対ストロークを正の値とし、ホール素子31に対してヨーク13がX方向の左側に位置するときのヨーク13とホール素子31との相対ストロークを負の値とする。本実施形態では、実出力値に対して多点補正を行う。
本実施形態は、上記第1実施形態の効果(1)〜(6)、(8)と同様な効果を得ることができる。
【0042】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態によるストローク検出装置を図15、16に基づいて説明する。上記第3実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
図15に示すように、本実施形態のストローク検出装置4のヨーク14は、矩形の筒状に形成され、内壁の他の部分に対し内側方向に突出する円弧状の突出部141を有する。突出部141は、ヨーク14の内側に、突出点142、第1弧面143、および第2弧面144を有する。突出点142を通りX方向およびY方向と直交する線をヨーク14の基準線L4とする。ここで、突出部141は、特許請求の範囲における「磁束流入部」に対応する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態では、突出部141は、ヨーク14の内側の他の部分に対し内側方向に突出する突出点142を有する。本実施形態の実出力値を図16の実線S4で示し、上記第3実施形態の実出力値を図16の破線S3で示す。ここで、ホール素子31が突出点142に対向するとき、実出力値は0となる。つまり、基準線L0と基準線L4とが重なるとき、実出力値は0となる。また、ホール素子31が第1弧面143に対向するときに検出される磁束ベクトルの方向と、ホール素子31が第2弧面144に対向するときに検出される磁束ベクトルの方向とは互いに逆となる。このため、第3実施形態に比べ、実出力値の直線性を高めることができる。
【0044】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態によるストローク検出装置を図17に基づいて説明する。上記第3実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
図17に示すように、本実施形態のストローク検出装置5のヨーク15は、矩形の筒状に形成され、内壁の他の部分に対し内側方向に突出する角状の突出部151を有する。突出部151は、ヨーク15の内側に、突出点152、第1斜面153、および第2斜面154を有する。突出点152を通りX方向およびY方向と直交する線をヨーク15の基準線L5とする。ここで、突出部151は、特許請求の範囲における「磁束流入部」に対応する。
【0045】
本実施形態では、突出部151は、ヨーク15の内側の他の部分に対し内側方向に突出する突出点152を有する。これにより、ホール素子31が突出点152に対向するとき、実出力値は0となる。つまり、基準線L0と基準線L5とが重なるとき、実出力値は0となる。また、ホール素子31が第1斜面153に対向するときに検出される磁束ベクトルの方向と、ホール素子31が第2斜面154に対向するときに検出される磁束ベクトルの方向とは互いに逆となる。よって、本実施形態は、上記第4実施形態の効果と同様な効果を有する。
【0046】
(他の実施形態)
上記実施形態では、磁束発生手段としての永久磁石とホールICとが当接する例を示した。これに対し、他の実施形態では、永久磁石とホールICとを当接させずに固定することとしても良い。
【0047】
上記実施形態では、磁束発生手段として永久磁石が用いられる。これに対し、他の実施形態では、磁束発生手段として例えば電磁石等を用いることとしても良い。
上記実施形態では、緩衝材としてシリコンゴムを使用する例を示した。これに対し、他の実施形態では、樹脂、ゴム等の緩衝材を用いることとしても良い。
【0048】
上記実施形態では、磁気検出手段としてホール素子を使用する例を示した。これに対し、他の実施形態では、磁気検出手段として、磁気抵抗素子を用いることとしても良い。
また、上記実施形態では、ホール素子と永久磁石とがモールド部を介して当接している例を示した。これに対し、他の実施形態では、ホール素子と永久磁石とが直接に当接することとしても良い。
【0049】
上記実施形態では、永久磁石が発生する磁束の方向と、ホール素子の感磁面に垂直となる方向とが直交する例を示した。これに対し、他の実施形態では、永久磁石が発生する磁束の方向と、ホール素子の感磁面に垂直となる方向とが平行になるよう、永久磁石およびホールICを設けることとしても良い。
【0050】
上記実施形態では、ヨークが検出対象(回転部、ストローク部)に設けられ、永久磁石およびホールICが固定部に固定されている例を示した。これに対し、他の実施形態では、ヨークを固定部に設け、永久磁石およびホールICを検出対象に設けることとしても良い。
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、2・・・回転角検出装置(位置検出装置)、
3、4、5・・・ストローク検出装置(位置検出装置)、
11、12、13、14、15・・・ヨーク、
20・・・永久磁石(磁束発生手段)、
31・・・ホール素子(磁気検出手段)、
61・・・ストローク部(検出対象)、
80・・・固定部、
90・・・回転部(検出対象)、
111・・・弦部(磁束流入部)、
121、131、141、151・・・突出部(磁束流入部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象(61、90)の位置を検出する位置検出装置(1、2、3、4、5)であって、
固定部(80)と、
前記検出対象または前記固定部のいずれか一方に設けられる磁束発生手段(20)と、
前記検出対象または前記固定部のいずれか他方に設けられ、前記磁束発生手段の周囲に磁性材料により筒状に形成され、内壁の他の部分に対し前記磁束発生手段に近接するよう形成され、前記磁束発生手段が発生した磁束が優先的に流入する磁束流入部(111、121、131、141、151)を有するヨーク(11、12、13、14、15)と、
前記磁束発生手段に対して定位置に配置され、前記磁束流入部と前記磁束発生手段との間の磁束の密度および角度に応じた信号を出力する磁気検出手段(30)と、
を備える位置検出装置。
【請求項2】
前記磁束発生手段と前記磁気検出手段とは、互いに当接していることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記磁気検出手段は、前記磁束発生手段が発生する磁束の方向と直交する方向に感磁方向を設けていることを特徴とする請求項1または2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記磁束流入部(111、121、131)は、前記ヨーク(11、12、13)の内側に平坦面(112、122、132)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置検出装置(1、2、3)。
【請求項5】
前記磁束流入部(141、151)は、前記ヨーク(14、15)の内側の他の部分に対し内側方向に突出する突出点(142、152)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置検出装置(4、5)。
【請求項6】
前記磁気検出手段および前記磁束発生手段は緩衝材(50)により覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記磁気検出手段および前記磁束発生手段は、前記固定部に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記検出対象(90)は、前記固定部に対して相対回転し、
前記磁束検出手段は、前記検出対象の相対回転角度を検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の位置検出装置(1、2)。
【請求項9】
前記磁束検出手段は、前記検出対象の回転軸線上に位置することを特徴とする請求項8に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記検出対象(61)は、前記固定部に対して相対直線運動し、
前記磁束検出手段は、前記検出対象の相対直線変位量を検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の位置検出装置(3、4、5)。
【請求項1】
検出対象(61、90)の位置を検出する位置検出装置(1、2、3、4、5)であって、
固定部(80)と、
前記検出対象または前記固定部のいずれか一方に設けられる磁束発生手段(20)と、
前記検出対象または前記固定部のいずれか他方に設けられ、前記磁束発生手段の周囲に磁性材料により筒状に形成され、内壁の他の部分に対し前記磁束発生手段に近接するよう形成され、前記磁束発生手段が発生した磁束が優先的に流入する磁束流入部(111、121、131、141、151)を有するヨーク(11、12、13、14、15)と、
前記磁束発生手段に対して定位置に配置され、前記磁束流入部と前記磁束発生手段との間の磁束の密度および角度に応じた信号を出力する磁気検出手段(30)と、
を備える位置検出装置。
【請求項2】
前記磁束発生手段と前記磁気検出手段とは、互いに当接していることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記磁気検出手段は、前記磁束発生手段が発生する磁束の方向と直交する方向に感磁方向を設けていることを特徴とする請求項1または2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記磁束流入部(111、121、131)は、前記ヨーク(11、12、13)の内側に平坦面(112、122、132)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置検出装置(1、2、3)。
【請求項5】
前記磁束流入部(141、151)は、前記ヨーク(14、15)の内側の他の部分に対し内側方向に突出する突出点(142、152)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置検出装置(4、5)。
【請求項6】
前記磁気検出手段および前記磁束発生手段は緩衝材(50)により覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記磁気検出手段および前記磁束発生手段は、前記固定部に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記検出対象(90)は、前記固定部に対して相対回転し、
前記磁束検出手段は、前記検出対象の相対回転角度を検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の位置検出装置(1、2)。
【請求項9】
前記磁束検出手段は、前記検出対象の回転軸線上に位置することを特徴とする請求項8に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記検出対象(61)は、前記固定部に対して相対直線運動し、
前記磁束検出手段は、前記検出対象の相対直線変位量を検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の位置検出装置(3、4、5)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−50437(P2013−50437A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61813(P2012−61813)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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