位置決め治具及びスピーカの組立方法
【課題】質量の大きなボイスコイルなどを位置ずれすることなく位置決めできかつボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを防止できる位置決め治具を提供する。
【解決手段】位置決め治具1はボイスコイル12の内側に挿入されかつスピーカ1の磁気回路部2に取り付けられてボイスコイル12を磁気回路部2に対して相対的に位置決めするために用いられる。位置決め治具1はボイスコイル12の内側に挿入されかつ外径が拡大自在なボイルコイル保持部34とボイルコイル保持部34に連なりかつ当該ボイルコイル保持部34とともに外径が拡大自在な可動部35と可動部35に取り付けられて当該可動部35の外径を拡大させる拡大部材31を備えている。
【解決手段】位置決め治具1はボイスコイル12の内側に挿入されかつスピーカ1の磁気回路部2に取り付けられてボイスコイル12を磁気回路部2に対して相対的に位置決めするために用いられる。位置決め治具1はボイスコイル12の内側に挿入されかつ外径が拡大自在なボイルコイル保持部34とボイルコイル保持部34に連なりかつ当該ボイルコイル保持部34とともに外径が拡大自在な可動部35と可動部35に取り付けられて当該可動部35の外径を拡大させる拡大部材31を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、音声電流が供給されることで振動板を振動させて音を発生するスピーカを組み立てる際に用いられる位置決め治具に関して、特にボイスコイルを前記磁気回路部に対して相対的に位置決めするための位置決め治具及び当該位置決め治具を用いたスピーカの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、移動体としての自動車には、従来から種々のスピーカ(例えば、特許文献1参照)が搭載されている。スピーカは、有底筒状のフレームと、前記フレーム内に収容された振動部と、前記フレームに取り付けられかつ前記振動部に駆動力を生じさせる磁気回路部を備えている。
【0003】
振動部は、フレーム内に収容されている。振動部は、音声電流が供給されるボイスコイルと、このボイスコイルに取り付けられた駆動部材としての振動板などを備えている。磁気回路部は、永久磁石を備え、その磁気ギャップ内にボイスコイルを配置している。
【0004】
前述した構成のスピーカは、ボイスコイルに音声電流が供給されることで、該ボイスコイルに電磁気力(ローレンツ力)が作用することで、前記振動板を振動させて、前述した音声電流に応じた音を音響放射方向へ発生させる。
【0005】
また、前述したスピーカを組み立てる際には、前述したボイスコイルを前記磁気ギャップ内に位置づけ、更に、ボイスコイルと磁気回路部と互いに同軸となる位置に位置決めした上で、ボイスコイルが巻回されたボイスコイルボビンに前述した駆動部材としての振動板を取り付ける必要がある。このように、ボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするために、従来から種々の位置決め治具(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)が用いられている。
【0006】
特許文献2に示された位置決め治具は、その軸芯の全長に亘って切欠きが設けられた円筒状の治具本体と、前記治具本体内に収容されかつ当該治具本体の外周面を外周方向に付勢するC状の環状部材とを備えている。治具本体は、その外径が拡大縮小自在となるように弾性変形自在となっている。
【0007】
特許文献2に示された位置決め治具は、治具本体がボイスコイルボビン内に挿入されて、磁気回路部のセンタポールの先端面上に重ねられて、前記ボイスコイルを磁気ギャップ内に位置付ける。そして、特許文献2に示された位置決め治具は、環状部材が治具本体の内周面を外周方向に付勢して、当該治具本体の外径を拡大させることで、磁気回路部と同軸となる位置にボイスコイルを位置決めする。
【0008】
特許文献3に示された位置決め治具は、その軸芯の全長に亘って切欠きが設けられた円筒状の治具本体を備えている。治具本体は、その外径が拡大縮小自在となるように弾性変形自在となっている。特許文献3に示された位置決め治具は、治具本体がその外径が縮小された状態でボイスコイルボビン内に挿入されて、磁気回路部のセンタポールの先端面上に重ねられて、前記ボイスコイルを磁気ギャップ内に位置付ける。そして、特許文献3に示された位置決め治具は、弾性復元力により治具本体がボイスコイルボビンの内周面を外周方向に付勢することで、磁気回路部と同軸となる位置にボイスコイルを位置決めする。
【特許文献1】特開2005−191746号公報
【特許文献2】実開昭57−160292号公報
【特許文献3】特開昭64−51900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した特許文献2及び特許文献3に示された位置決め治具では、環状部材及び治具本体の弾性復元力によりボイスコイルボビン及びボイスコイルをこれらの外径が拡大する方向に付勢することで、これらを磁気回路部に対して位置決めしている。一方、特許文献1に示された振動板を2枚備えかつこれらの振動板とフレームとで囲まれる空間を密閉した低音域再生用のスピーカでは、ボイスコイル及びボイスコイルボビンの質量が大きくなる傾向がある。
【0010】
このため、前述した特許文献1に示された低音域再生用のスピーカのボイスコイル及びボイスコイルボビンを所定の位置に位置決めしようとしても、特許文献2及び特許文献3に示された位置決め治具では、ボイスコイル及びボイスコイルボビンが位置決め治具からずれ落ちてしまい、これらの位置決めが困難であった。
【0011】
また、特許文献3に示された位置決め治具では、弾性変形していない中立状態における治具本体の外径が、ボイスコイルボビンの内径よりも大きく形成されているので、治具本体全体の外径を縮小させた状態で、当該治具本体をボイスコイルボビン内に挿入する必要があって、ボイスコイルの所望の位置に治具本体即ち位置決め治具を挿入することが困難であった。よって、特許文献3に示された位置決め治具を用いると、ボイスコイルボビン即ちボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするためにかかる工数及び手間が増加する傾向であった。
【0012】
本発明は、このような問題点に対処することを課題の一例とするものである。本発明の目的は、例えば、質量の大きなボイスコイルなどを位置ずれすることなく位置決めでき、かつボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを防止できる位置決め治具及びと該位置決め治具を用いたスピーカの組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の位置決め治具は、ボイスコイルボビンに取り付けられるボイスコイルを磁気回路部に対して相対的に位置決めするための位置決め治具において、前記ボイスコイルボビンの内側に挿入されかつ外径が拡大自在なボイルコイル保持部と、前記ボイルコイル保持部と連なりかつ当該ボイルコイル保持部とともに外径が拡大自在な可動部と、前記可動部に取り付けられて当該可動部の外径を拡大させる拡大部材と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項12に記載の本発明のスピーカの組立方法は、ボイスコイルボビンに取り付けられるボイスコイルを磁気回路部に対して相対的に位置決めする位置決め治具を用いて、前記ボイスコイルを前記磁気回路部に対して相対的に位置決めした後に、前記ボイスコイルボビンに駆動部材を取り付けるスピーカの組立方法において、前記位置決め治具の外径が拡縮自在なボイルコイル保持部を前記ボイスコイルボビン内に挿入する位置決め治具の挿入工程と、当該位置決め治具を前記磁気回路部に取り付けて、前記ボイルコイル保持部と連なりかつ当該ボイルコイル保持部とともに外径が拡縮自在な可動部の外径を拡大部材により拡大させる可動部の拡大工程と、前記磁気回路部に対して前記ボイスコイルを相対的に位置決めするボイスコイルの位置決め工程と、前記ボイスコイルボビンに前記駆動部材を取り付ける駆動部材の取り付け工程とを有することを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を説明する。本発明の一実施形態にかかる位置決め治具は、ボイスコイル保持部に連なって当該ボイスコイル保持部とともに外径が拡大自在な可動部の外径を拡大させる拡大部材を設けているので、拡大部材により強制的にボイスコイル保持部の外径を拡大させることができる。よって、質量が大きなボイスコイルを支えることができるまでボイスコイル保持部の外径を拡大させることができ、ボイスコイルボビンに、所定の保持力を作用させることができて、質量の大きなボイスコイルなどを位置ずれすることを抑止して、位置決めすることができる。
【0016】
また、拡大部材を設けてボイスコイル保持部の外径を任意に拡大させることを自在としているので、ボイスコイル保持部の中立状態での外径をボイスコイルボビンの内径より小さくすることができる。したがって、ボイスコイル保持部をボイスコイルボビン内に挿入するためにかかる工数即ちボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを抑止することができる。
【0017】
また、ボイスコイル保持部と可動部との全長に亘って切欠き部を設けても良い。この場合、可動部やボイスコイル保持部が変形しやすくなり、ボイスコイルボビンへの保持力を任意に変更しながら作用させることを可能とする。
【0018】
さらに、拡大部材に被挿入部を設け、当該被挿入部を可動部内に挿入することで、当該可動部の外径を拡大させても良い。この場合、被挿入部を可動部内に挿入することで、当該可動部即ちボイスコイル保持部の外径を拡大させることができ、容易にボイスコイル保持部の外径を拡大させることができる。
【0019】
また、被挿入部の外径が、可動部の内径よりも大きくても良い。この場合、被挿入部を挿入することで、可動部即ちボイスコイル保持部の外径を拡大させることができる。
【0020】
被挿入部は、当該被挿入部の外径が可動部に向かうにしたがって徐々に小さく形成されたテーパ部を備えても良い。この場合、可動部への被挿入部の挿入状態を適宜変更することで、ボイスコイル保持部のボイスコイルボビンの保持力を適宜変更することができる。
【0021】
被挿入部の外周面と可動部の内周面との双方に互いに螺合するねじ溝が形成されても良い。この場合、可動部への被挿入部の挿入状態を変更することができ、ボイスコイル保持部のボイスコイルボビンの保持力を変更することができる。
【0022】
拡大部材は、可動部に設けられた貫通孔内に挿入される棒状に形成されても良い。この場合、貫通孔内への拡大部材の挿入量を変更することで、当該拡大部材が可動部の内周面を押圧する力を変更でき、可動部即ちボイスコイル保持部の外径を変更することができる。
【0023】
拡大部材の先端が可動部の内周面に接触していても良い。この場合、拡大部材の挿入量を変更することで、可動部即ちボイスコイル保持部の外径を変更することができる。
【0024】
拡大部材の全長は、ボイルコイル保持部の外径も小さく形成されていても良い。この場合、ボイスコイル保持部をボイスコイルボビン内に挿入する際に、当該ボイスコイルボビンが拡大部材に引っかかることを抑止でき、ボイスコイルボビン内にボイスコイル保持部即ち位置決め治具を容易に挿入することができる。
【0025】
貫通孔の内周面と拡大部材の外周面との双方に互いに螺合するねじ溝が形成されていても良い。この場合、貫通孔内への拡大部材の挿入量を変更でき、ボイスコイル保持部のボイスコイルボビンの保持力を変更することができる。
【0026】
ボイルコイル保持部内に収容されかつこのボイルコイル保持部の外径が拡大する方向に当該ボイルコイル保持部を付勢した付勢手段を備えても良い。この場合、ボイスコイルボビン内に挿入すると直ちにボイスコイル保持部の外径が拡がって、ボイスコイルボビンの外周面を押圧するので、ボイスコイル保持部即ち位置決め治具に対してボイスコイルボビン即ちボイスコイルが位置ずれすることを抑止できる。
【0027】
また、前述した位置決め治具を用いてスピーカを組み立てても良い。この場合、前述した位置決め治具を用いるので、質量の大きなボイスコイルなどを位置ずれすることなく位置決めできかつボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを抑止することができる。
【実施例1】
【0028】
本発明の第1の実施例を、図1ないし図9に基づいて説明する。図2に示す本発明の第1の実施例に係る位置決め治具5は、移動体としての自動車などに搭載されて、該自動車の乗員に音声情報を提供するスピーカ1(図1に示す)を組み立てる際に用いられる。
【0029】
スピーカ1は、図1に示すように、フレーム4と、磁気回路部2と、振動部3とを備えている。
【0030】
フレーム4は、図1に示すように、フレーム本体20と、ガスケット23とを備えている。
【0031】
フレーム本体20は、アルミニウムなどの金属又はABS樹脂等の樹脂で構成されている。フレーム本体20は、円環状の底部24と、該底部の外周縁から立ち上がるように形成される円筒状の筒部25と、筒部25の外縁から突出した円環状のフランジ部26とを備えている。
【0032】
ガスケット23は、円環状に形成されている。ガスケット23は、フレーム本体20のフランジ部26上に重ねられて、当該フランジ部26との間に後述するエッジ18を挟んで、フレーム本体20に接着剤等によって固定される。ガスケット23は、フレーム本体20のフランジ部26との間にエッジ18を挟んで、後述する振動板15をフレーム本体20に対して固定する。
【0033】
磁気回路部2は、図1に示すように、前述したフレーム本体20に固定されて、フレーム4に取り付けられている(支持されている)。磁気回路部2は、図1に示すように、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)等で構成されたヨーク7と、磁石8と、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)等で構成されたプレート9とを備えている。ヨーク7は、円環状のボトムプレート10と、該ボトムプレート10の内縁部から立ち上がるように形成された円筒状のセンターポール11とを一体に備えた外磁型磁気回路である。
【0034】
本実施例では外磁型磁気回路を開示するが、本発明は、内磁型磁気回路や、内磁型や外磁型を併用した磁気回路(ボイスコイルボビンの内部と外部にマグネットを配置した磁気回路)を適用しても構わない。また本実施例では、前記センターポールにはスピーカ装置の外部へ通じる開口が形成されているが、本発明では、当該開口が形成されていなくても構わない。
【0035】
磁石8は、円環状に形成されている。磁石8の内径は、センターポール11の外径よりも大きい。磁石8は、内側にセンターポール11を通して、ボトムプレート10に重ねられている。前述した磁石8は、永久磁石又は直流電源により励磁されるものでも良い。
【0036】
プレート9は、円環状に形成されている。プレート9の内径は、センターポール11の外径よりも大きい。プレート9は、内側にヨーク7のセンターポール11と後述するボイスコイルボビン13とを通した状態で、磁石8上に重ねられている。前述したヨーク7と、磁石8と、プレート9は、その中心がほぼ同じになるように、ほぼ同軸に配置されている。このため、磁石8とプレート9の内周面は、ヨーク7のセンターポール11の外周面と間隔をあけている。
【0037】
また、前述したヨーク7すなわち磁気回路部2は、円環状の底部30、ボトムプレート10、磁石8及びプレート9を貫通した図示しないボルトによって、フレーム本体20に固定される。このように、磁気回路部2は、フレーム4に固定されて、勿論、ヨーク7と磁石8とプレート9とが、フレーム4のフレーム本体20とほぼ同軸に配置される。
【0038】
前述した構成により、磁気回路部2は、ヨーク7のセンターポール11の外周面と、プレート9の内周面との間に比較的大きい磁束密度を有する磁気ギャップGを形成している。
【0039】
振動部3は、図1に示すように、フレーム4のフレーム本体20内に収容されている(支持されている)。振動部3は、ボイスコイル12と、ボイスコイルボビン13と、駆動部材としてのドライブコーン14と、振動板15と、センターキャップ16などを備えている。ボイスコイル12は、ボイスコイルボビン13の外周面に巻き回されて、取り付けられている。また、このボイスコイル12は、振動板15を駆動させる前は、磁気回路部2の前述した磁気ギャップG内に配置されている。ボイスコイル12には、音声電流が供給される。
【0040】
ボイスコイルボビン13は、円筒状に形成されている。ボイスコイルボビン13の内径は、ヨーク7が有するセンターポール11の外径よりも大きく形成されている。ボイスコイルボビン13の外径は、プレート9及び磁石8の内径よりも小さく形成されている。ボイスコイルボビン13は、ヨーク7とプレート9とボイスコイル12などとほぼ同軸に配置されている。ボイスコイルボビン13は、その一端部が磁気ギャップGへと挿入されており、該一端部の外周にボイスコイル12を取り付けている。ボイスコイルボビン13は、ドライブコーン14や振動板15などによって、ヨーク7の中心軸に沿って移動自在に支持されている。なお、ヨーク7の中心軸は、スピーカ1の中心軸とほぼ同じである。
【0041】
ドライブコーン14は、ボイスコイル12の振動を後述する振動板15に伝える。ドライブコーン14は、樹脂で構成されている。ドライブコーン14は、円環状に形成され、かつその内縁部がボイスコイルボビン13の他端部の外周面に取り付けられている。ドライブコーン14の外縁部には、円環状に形成された弾性変形自在のエッジ17が接着剤などによって取り付けられている。エッジ17とドライブコーン14との接合は接着剤以外に、ネジ止めや縫い付け等の公知の手段を用いることができる。エッジ17は、その外縁部がフレーム本体20の筒部25の内面に固定されている。即ち、ドライブコーン14は、エッジ17を介してフレーム本体20即ちフレーム4に取り付けられている。
【0042】
振動板15は、樹脂で構成されている。振動板15は、円環状に形成されている。振動板15は、その内縁部がドライブコーン14の一部と接着剤などによって固定されている。振動板15の外縁部には、断面形状が半円環状に形成されたエッジ18が接着剤などによって取り付けられている。エッジ18は、その外縁部がフレーム本体20のフランジ部26とガスケット23との間に挟まれて、これらに固定されている。即ち、振動板15は、エッジ18を介してフレーム本体20即ちフレーム4に取り付けられている。
【0043】
センターキャップ16は、ABS樹脂などの大きい機械的な強度を有する樹脂で形成されている。センターキャップ16は、円板状に形成されている。センターキャップ16の外径は、振動板15の内径よりも大きくかつ振動板15の外径よりも小さく形成されている。センターキャップ16は、その外縁部が振動板15の内縁部に接着剤等を用いて接合されている。
【0044】
前述した振動部3のドライブコーン14、振動板15及びセンターキャップ16は、勿論、フレーム4及び磁気回路部2とほぼ同軸に配置されている。振動部3は、ボイスコイル12に音声情報に応じた電流(音声電流)が供給されると、ドライブコーン14によってボイスコイル12の振動が伝えられた振動板15が前述した中心軸に沿って振動して、音声電流に応じた音波を発生する。即ち、振動板15は、ボイスコイル12に作用する駆動力によって振動する。
【0045】
また、前述したドライブコーン14、振動板15及びエッジ17,18と、フレーム4のフレーム本体20の内面とで囲まれた空間Kは、密閉されている。即ち、ドライブコーン14、振動板15及びエッジ17,18と、フレーム4のフレーム本体20の内面とで囲まれた空間Kは、気密に保たれている。
【0046】
このため、前述した振動部3は、ボイスコイルボビン13が中心軸方向に沿って振動して、ドライブコーン14及び振動板15が振動する際に、ドライブコーン14と振動板15との間の空間Kにある空気がドライブコーン14及び振動板15の変位及びエッジ17,18の変位により圧縮と膨張を繰り返すことで、空気バネとしてのバネ性が発現される。
【0047】
本実施例において、振動板15の有効面積をS1、ドライブコーン14の有効面積をS2とするときの有効面積の差SはS=S1−S2であり、また、ドライブコーン14、振動板15との間の密閉空間K内にある空気の体積Vとすると、上記の空気バネのバネ性を表す定数であるスティフネスは、S/Vに比例する。即ち、本実施例では、ドライブコーン14、振動板15との間の密閉された空間Kにある空気が発現する、空気バネとしてのバネ性により、非常に大きな振幅で振動板15が動作する等の異常な振る舞いを抑えること、スピーカ1の音響特性を長期間にわたり再現できること、振動板15を大きな振幅で長時間にわたり振動させてもスピーカ1の信頼性を維持できることが可能になる。
【0048】
前述した構成のスピーカ1は、図示しないリード線などを介してボイスコイル12に音声電流が供給され、この音声電流に応じて磁気ギャップG内に配置されたボイスコイル12が前述した中心軸に沿って振動する。そして、ボイスコイル12がその外周に巻かれたボイスコイルボビン13が、ドライブコーン14や振動板15などと共に中心軸に沿って振動する。即ち、ボイスコイル12の振動がドライブコーン14によって伝えられた当該振動板15が振動することによって音声電流に応じた音を発生させる。
【0049】
位置決め治具5は、図2に示すように、保持部材30と、拡大部材31と、付勢手段としてのCリング32とを備えている。保持部材30は、内外径が段階的に変化する円筒状に形成されているとともに、後述するボイスコイル保持部34と可動部35との全長に亘ってこれらの軸芯に沿って直線状に延在した切欠き部33が設けられている。切欠き部33は、勿論、ボイスコイル保持部34と可動部35の一部を切り欠いて形成されている。
【0050】
保持部材30は、図5に示すように、ボイスコイル保持部34と、可動部35とを備えている。ボイスコイル保持部34は、外径が一定でかつ内径が小径となる部分と大径となる部分とが設けられた円筒状に形成されている。ボイスコイル保持部34は、切欠き部33の幅が増減するように即ちその外径が拡大縮小するように弾性変形自在(即ち、外径が拡大自在)となっている。ボイスコイル保持部34は、その弾性変形していない中立状態で、外径がボイスコイルボビン13の内径よりも若干小さく形成されている。また、ボイスコイル保持部34は、その弾性変形していない中立状態でボイスコイルボビン13即ちボイスコイル12内に挿入される。
【0051】
可動部35は、その内径がボイスコイル保持部34の小径な部分とほぼ等しく形成された円筒状に形成されている。可動部35は、外径がボイスコイル保持部34よりも小さな可動部本体36と、可動部本体36とボイスコイル保持部34との双方に連なる連結部37とを一体に備えている。連結部37は、一端の外径が可動部本体36の外径と等しく形成され、他端の外径がボイスコイル保持部34の外径と等しく形成されている。可動部35は、勿論、一端が可動部本体36に連なり、他端がボイスコイル保持部34に連なっている。可動部35は、ボイスコイル保持部34に連なって一体に形成されることで、ボイスコイル保持部34とともに外径が拡大自在となっている。
【0052】
拡大部材31は、被挿入部38と、露出部39とを一体に備え、これらの全長に亘ってこれらの軸芯に沿って直線状に延在した切欠き部40が設けられている。切欠き部40は、勿論、被挿入部38と露出部39の一部を切り欠いて形成されている。
【0053】
被挿入部38は、テーパ部41と、円筒部42とを一体に備えている。テーパ部41は、外径が徐々に拡大するようにテーパ状に形成された円環状に形成されている。即ち、テーパ部41は、可動部35に向かうにしたがって外径が徐々に小さくなるようにテーパ状に形成されている。テーパ部41の小径側の端の外径は、弾性変形していない可動部35の内径よりも小さく形成されている。
【0054】
円筒部42は、テーパ部41の大径側の端に連なり、その外径が一定に形成されている。テーパ部41の大径側の端の外径と円筒部42の外径とは、互いにほぼ等しく形成され、弾性変形していない可動部35の内径よりも大きく形成されている。こうして、被挿入部38の外径は、可動部35の内径よりも大きく形成されている。被挿入部38は、テーパ部41を先頭にして可動部35内に挿入される。そして、被挿入部38は、可動部35内に挿入させることで、当該可動部35に取り付けられるとともに、円筒部42の外周面が可動部35の内周面を径方向に押圧して、可動部35及び当該可動部35とともにボイスコイル保持部34の外径を拡大させる。また、被挿入部38は、テーパ部41を可動部35内に挿入する度合いを適宜変更することで、ボイスコイル保持部34の外径を任意に拡大させることを自在とすることができる。さらに、被挿入部38が、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を拡大させる量は、前述した空間Kが密閉されて当該空間K内の空気が空気バネとしてのバネ性を発揮するスピーカ1に用いられる比較的質量の大きなボイスコイル12の位置決めに十分な量となっている。
【0055】
露出部39は、円筒部42のテーパ部41から離れた側の端に連なった円筒状に形成されている。露出部39は、その内径が、円筒部42及びテーパ部41の内径と等しく形成されている。露出部39は、その外径が、円筒部42の外径よりも大きく形成されている。露出部39は、被挿入部38が可動部35に取り付けられると、外側に露出する。
【0056】
Cリング32は、弾性変形な金属で構成されて、C字状に形成されている。Cリング32は、保持部材30のボイスコイル保持部34の内面に取り付けられて、このボイスコイル保持部34の外径が拡大する方向に当該ボイスコイル保持部34をその外縁が付勢している。
【0057】
前述した構成の位置決め治具5は、以下のように、スピーカ1を組み立てる際に用いられる。まず、図3に示すように、ボイスコイル保持部34をボイスコイルボビン13即ちボイスコイル12内に挿入する位置決め治具の挿入工程を行い、その後、Cリング32がボイスコイル保持部34を外周方向に押圧してこのボイスコイル保持部34の外径を拡大させて、ボイスコイル保持部34にボイスコイルボビン13即ちボイスコイル12を取り付ける。
【0058】
そして、図6に示すように、保持部材30がセンタポール11の先端部上に被せられて、スピーカ1の磁気回路部2に取り付けられる。その後、保持部材30が、ボイスコイル12が磁気回路部2とほぼ同軸となる位置に位置決めされる。
【0059】
その後、図4及び図7に示すように、テーパ部41を先頭にして、拡大部材31の被挿入部38を可動部35内に挿入して、当該拡大部材31を可動部35即ち保持部材30に取り付ける。こうして、ボイスコイル保持部34の外径が拡大して、可動部35の外径を拡大部材31により拡大させる可動部の拡大工程を行う。そして、ボイスコイル保持部34の外周面とボイスコイルボビン13の内周面とが密に接触して、ボイスコイル12が磁気ギャップG内に挿入される位置に当該ボイスコイル12及びボイスコイルボビン13を位置決めするボイスコイルの位置決め工程を行う。こうして、位置決め治具5は、ボイスコイル12及びボイスコイルボビン13を磁気回路部2に対して相対的に位置決めする。
【0060】
そして、図8に示すように、ボイスコイルボビン13の外周面にドライブコーン14の内縁部を取り付けられる駆動部材の取り付け工程を行う。その後、位置決め治具5は、図9に示すように、ドライブコーン14に振動板15の内縁部が取り付けられた後などに、拡大部材31の被挿入部38が可動部35内から抜きとられて、保持部材30のボイスコイル保持部34がボイスコイルボビン13内から抜きとられるなどして、スピーカ1を組み立てる際に用いられる。
【0061】
本実施例によれば、ボイスコイル保持部34に連なって当該ボイスコイル保持部34とともに外径が拡大自在な可動部35の外径を拡大させる拡大部材31を設けているので、拡大部材31により強制的にボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができる。よって、質量が大きなボイスコイル12などを支えることができるまでボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができ、ボイスコイルボビン13に、所定の保持力を作用させることができて、質量の大きなボイスコイル12などを位置ずれすることなく確実に位置決めすることができる。
【0062】
また、拡大部材31のテーパ部41を挿入する度合いを適宜変更することで、ボイスコイル保持部34の外径を任意に拡大させることを自在とすることができ、ボイスコイル保持部34の中立状態での外径をボイスコイルボビン13の内径より小さくすることができる。したがって、ボイスコイル保持部34をボイスコイルボビン13内に挿入するためにかかる工数即ちボイスコイル12と磁気回路部2とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを抑止することができる。
【0063】
また、ボイスコイル保持部34と可動部35との全長に亘って切欠き部33を設けているため、可動部35やボイスコイル保持部34が変形しやすくなり、ボイスコイルボビン13への保持力を任意に変更しながら作用させることを可能とする。
【0064】
さらに、拡大部材31に可動部35内に挿入されることで、当該可動部35の外径を拡大させる被挿入部38を設けているので、被挿入部38を可動部35内に挿入することで、当該可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができ、容易にボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができる。
【0065】
また、被挿入部38の外径が、可動部35の内径よりも大きく形成されているので、被挿入部38を挿入することで、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができる。
【0066】
被挿入部38は、当該被挿入部38の外径が可動部35に向かうにしたがって徐々に小さく形成されたテーパ状のテーパ部41を備えているので、可動部35への被挿入部38の挿入状態を適宜変更することで、ボイスコイル保持部34のボイスコイルボビン13の保持力を適宜変更することができる。
【0067】
ボイスコイル保持部34内に収容されかつこのボイスコイル保持部34の外径が拡大する方向に当該ボイスコイル保持部34を付勢したCリング32を備えているので、ボイスコイルボビン13内に挿入すると直ちにボイスコイル保持部34の外径が拡がって、ボイスコイルボビン13の外周面を押圧するので、ボイスコイル保持部34即ち位置決め治具5に対してボイスコイルボビン13即ちボイスコイル12が位置ずれすることを抑止できる。
【0068】
また、前述した位置決め治具5を用いてスピーカ1を組み立てるので、質量の大きなボイスコイル12などを位置ずれすることなく確実に位置決めできかつボイスコイル12と磁気回路部2とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを抑止することができる。
【実施例2】
【0069】
次に、本発明の第2の実施例にかかる位置決め治具5を、図10及び図11を参照して説明する。なお、図10及び図11において、前述した第1の実施例と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施例では、図10及び図11に示すように、拡大部材31の被挿入部38の外周面と可動部35の内周面との双方に互いに螺合するねじ溝43,44が形成されているとともに、これらのねじ溝43,44は、所謂テーパねじに形成されている。拡大部材31の被挿入部38の外周面に設けられたねじ溝43は、可動部35に向かうにしたがって外径が徐々に小さくなるテーパ状に形成されている。可動部35の内周面に設けられたねじ溝44は、拡大部材31に向かうにしたがって内径が徐々に大きくなるテーパ状に形成されている。
【0071】
この実施例では、拡大部材31の被挿入部38のねじ溝43を可動部35のねじ溝44にねじ込む量を増加させることで、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径をより拡大させる構成となっている。即ち、位置決めするボイスコイル12及びボイスコイルボビン13の質量が増加する程、拡大部材31の被挿入部38を可動部35内にねじ込む量を増加させて、ボイスコイル12及びボイスコイルボビン13を位置決めする。
【0072】
本実施例によれば、拡大部材31の被挿入部38の外周面と可動部35の内周面との双方に互いに螺合するねじ溝43,44が形成されているとともに、これらのねじ溝43,44が所謂テーパねじとなっている。このため、可動部35への被挿入部38の挿入量を変更することができ、可動部35への被挿入部38の挿入量を変更することで、ボイスコイル保持部34のボイスコイルボビン13の保持力を変更することができる。
【実施例3】
【0073】
次に、本発明の第3の実施例にかかる位置決め治具5を、図12及び図13を参照して説明する。なお、図12及び図13において、前述した第1の実施例及び第2の実施例と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
本実施例では、図12及び図13に示すように、保持部材30の可動部35には、当該可動部35の径方向に沿って貫通した貫通孔45が設けられている。また、本実施例では、拡大部材31は、棒状のねじ部46と、当該ねじ部46の一端に連なった頭47とを一体に備えている。
【0075】
さらに、本実施例では、貫通孔45の内周面と拡大部材31のねじ部46の外周面との双方に互いに螺合するねじ溝48,49が形成されている。拡大部材31のねじ部46及び頭47とを合わせたその全長は、ボイスコイル保持部34の外径よりも小さく形成されている。拡大部材31は、ねじ溝48,49が互いに螺合するように、ねじ部46が貫通孔45内に挿入されて、ねじ部46の先端が可動部35の内周面に接触した状態で、可動部35即ち保持部材30に取り付けられる。このように、本実施例では、拡大部材31は、棒状に形成されて、貫通孔45内に挿入されて可動部35即ち保持部材30に取り付けられる。
【0076】
この実施例では、拡大部材31のねじ部46をより貫通孔45の奥にねじ込むことで、ねじ部46の先端が可動部35の内周面をより押圧して、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径をより拡大させる構成となっている。即ち、位置決めするボイスコイル12及びボイスコイルボビン13の質量が増加する程、拡大部材31のねじ部46を貫通孔45のより奥にねじ込んで、ボイスコイル12及びボイスコイルボビン13を位置決めする。
【0077】
本実施例によれば、拡大部材31は、可動部35に設けられた貫通孔45内に挿入される棒状に形成されているので、貫通孔45内への拡大部材31の挿入量を変更することで、当該拡大部材31が可動部35の内周面を押圧する力を変更でき、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を変更することができる。
【0078】
拡大部材31の先端が可動部35の内周面に接触しているので、拡大部材31の挿入量を変更することで、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を変更することができる。
【0079】
拡大部材31の全長は、ボイスコイル保持部34の外径も小さく形成されているので、ボイスコイル保持部34をボイスコイルボビン13内に挿入する際に、当該ボイスコイルボビン13が拡大部材31に引っかかることを抑止でき、ボイスコイルボビン13内にボイスコイル保持部34即ち位置決め治具5を容易に挿入することができる。
【0080】
貫通孔45の内周面と拡大部材31のねじ部46の外周面との双方に互いに螺合するねじ溝48,49が形成されているので、貫通孔45内への拡大部材31のねじ部46の挿入量を変更でき、ボイスコイル保持部34のボイスコイルボビン13の保持力を変更することができる。
【0081】
また、本実施例では、貫通孔45の内周面にねじ溝48を形成する代わりに、図14及び図15に示すように、可動部35内に拡大部材31のねじ部46のねじ溝49と螺合するナット50を取り付けるようにしても良い。なお、図14及び図15において、前述した第3の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図14及び図15では、可動部35の内周面にナット50を位置決めするために溝51を設けて、当該ナット50を可動部35に位置決めするようにしている。この場合も、前述した第3の実施例と同様に、拡大部材31は、可動部35に設けられた貫通孔45内に挿入される棒状に形成されているので、貫通孔45内への拡大部材31の挿入量を変更することで、当該拡大部材31が可動部35の内周面を押圧する力を変更でき、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を変更することができる。
【0082】
また、拡大部材31の先端が可動部35の内周面に接触しているので、拡大部材31の挿入量を変更することで、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を変更することができる。
【0083】
また、拡大部材31の全長は、ボイスコイル保持部34の外径も小さく形成されているので、ボイスコイル保持部34をボイスコイルボビン13内に挿入する際に、当該ボイスコイルボビン13が拡大部材31に引っかかることを抑止でき、ボイスコイルボビン13内にボイスコイル保持部34即ち位置決め治具5を容易に挿入することができる。
【0084】
また、貫通孔45の内周面に設けられたナット50を介して、溝51と拡大部材31のねじ部46の外周面に形成されたねじ溝49とが互いに螺合するため、貫通孔45内への拡大部材31のねじ部46の挿入量を変更でき、ボイスコイル保持部34のボイスコイルボビン13の保持力を変更することができる。
【0085】
前述した実施例では、ドライブコーン14と振動板15及びエッジ17,18を二つ備えたが、本発明では、ドライブコーン14と振動板15及びエッジ17,18を一つ又は三つ以上備えたスピーカ1を組み立てるようにしても良い。また、前述した実施例では、付勢手段としてCリング32を用いたが、本発明では、付勢手段の構成を種々変更しても良いことは勿論である。
【0086】
前述した実施例によれば、以下の位置決め治具5が得られる。
【0087】
(付記) ボイスコイルボビン13に取り付けられるボイスコイル12を磁気回路部2に対して相対的に位置決めするための位置決め治具5において、
ボイスコイルボビン13の内側に挿入されかつ外径が拡大自在なボイルコイル保持部34と、
前記ボイルコイル保持部34と連なりかつ当該ボイルコイル保持部34とともに外径が拡大自在な可動部35と、
前記可動部35に取り付けられて当該可動部35の外径を拡大させる拡大部材31と、
を備えたことを特徴とする位置決め治具5。
【0088】
付記によれば、ボイスコイル保持部34に連なって当該ボイスコイル保持部34とともに外径が拡大自在な可動部35の外径を拡大させる拡大部材31を設けているので、拡大部材31により強制的にボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができる。よって、質量が大きなボイスコイル12を支えることができるまでボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができ、ボイスコイルボビン13に、所定の保持力を作用させることができて、質量な大きなボイスコイル12などを位置ずれすることなく位置決めすることができる。
【0089】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明にかかる位置決め治具を用いて組み立てられるスピーカの断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例にかかる位置決め治具などの分解斜視図である。
【図3】図2に示された位置決め治具の保持部材をボイスコイルボビン内に挿入した状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示された位置決め治具の保持部材の可動部内に拡大部材の被挿入部を挿入した状態を示す斜視図である。
【図5】図2中のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図3に示された位置決め治具の保持部材をスピーカの磁気回路部に取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】図6に示された位置決め治具の保持部材の可動部内に拡大部材の被挿入部を挿入した状態を示す断面図である。
【図8】図7に示されたボイスコイルボビンにドライブコーンの内縁部を取り付けた状態を示す断面図である。
【図9】図8に示されたドライブコーンに振動板の内縁部を取り付けた状態を示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施例にかかる位置決め治具の分解斜視図である。
【図11】図10中のXI−XI線に沿う断面図である。
【図12】本発明の第3の実施例にかかる位置決め治具の斜視図である。
【図13】図12中のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【図14】図12に示された位置決め治具の斜視図である。
【図15】図14中のXV−XV線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 スピーカ
2 磁気回路部
5 位置決め治具
12 ボイスコイル
13 ボイスコイルボビン
14 ドライブコーン(駆動部材)
31 拡大部材
32 Cリング(付勢手段)
33 切欠き部
34 ボイスコイル保持部
35 可動部
38 被挿入部
41 テーパ部
43,44 ねじ溝
45 貫通孔
48,49 ねじ溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、音声電流が供給されることで振動板を振動させて音を発生するスピーカを組み立てる際に用いられる位置決め治具に関して、特にボイスコイルを前記磁気回路部に対して相対的に位置決めするための位置決め治具及び当該位置決め治具を用いたスピーカの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、移動体としての自動車には、従来から種々のスピーカ(例えば、特許文献1参照)が搭載されている。スピーカは、有底筒状のフレームと、前記フレーム内に収容された振動部と、前記フレームに取り付けられかつ前記振動部に駆動力を生じさせる磁気回路部を備えている。
【0003】
振動部は、フレーム内に収容されている。振動部は、音声電流が供給されるボイスコイルと、このボイスコイルに取り付けられた駆動部材としての振動板などを備えている。磁気回路部は、永久磁石を備え、その磁気ギャップ内にボイスコイルを配置している。
【0004】
前述した構成のスピーカは、ボイスコイルに音声電流が供給されることで、該ボイスコイルに電磁気力(ローレンツ力)が作用することで、前記振動板を振動させて、前述した音声電流に応じた音を音響放射方向へ発生させる。
【0005】
また、前述したスピーカを組み立てる際には、前述したボイスコイルを前記磁気ギャップ内に位置づけ、更に、ボイスコイルと磁気回路部と互いに同軸となる位置に位置決めした上で、ボイスコイルが巻回されたボイスコイルボビンに前述した駆動部材としての振動板を取り付ける必要がある。このように、ボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするために、従来から種々の位置決め治具(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)が用いられている。
【0006】
特許文献2に示された位置決め治具は、その軸芯の全長に亘って切欠きが設けられた円筒状の治具本体と、前記治具本体内に収容されかつ当該治具本体の外周面を外周方向に付勢するC状の環状部材とを備えている。治具本体は、その外径が拡大縮小自在となるように弾性変形自在となっている。
【0007】
特許文献2に示された位置決め治具は、治具本体がボイスコイルボビン内に挿入されて、磁気回路部のセンタポールの先端面上に重ねられて、前記ボイスコイルを磁気ギャップ内に位置付ける。そして、特許文献2に示された位置決め治具は、環状部材が治具本体の内周面を外周方向に付勢して、当該治具本体の外径を拡大させることで、磁気回路部と同軸となる位置にボイスコイルを位置決めする。
【0008】
特許文献3に示された位置決め治具は、その軸芯の全長に亘って切欠きが設けられた円筒状の治具本体を備えている。治具本体は、その外径が拡大縮小自在となるように弾性変形自在となっている。特許文献3に示された位置決め治具は、治具本体がその外径が縮小された状態でボイスコイルボビン内に挿入されて、磁気回路部のセンタポールの先端面上に重ねられて、前記ボイスコイルを磁気ギャップ内に位置付ける。そして、特許文献3に示された位置決め治具は、弾性復元力により治具本体がボイスコイルボビンの内周面を外周方向に付勢することで、磁気回路部と同軸となる位置にボイスコイルを位置決めする。
【特許文献1】特開2005−191746号公報
【特許文献2】実開昭57−160292号公報
【特許文献3】特開昭64−51900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した特許文献2及び特許文献3に示された位置決め治具では、環状部材及び治具本体の弾性復元力によりボイスコイルボビン及びボイスコイルをこれらの外径が拡大する方向に付勢することで、これらを磁気回路部に対して位置決めしている。一方、特許文献1に示された振動板を2枚備えかつこれらの振動板とフレームとで囲まれる空間を密閉した低音域再生用のスピーカでは、ボイスコイル及びボイスコイルボビンの質量が大きくなる傾向がある。
【0010】
このため、前述した特許文献1に示された低音域再生用のスピーカのボイスコイル及びボイスコイルボビンを所定の位置に位置決めしようとしても、特許文献2及び特許文献3に示された位置決め治具では、ボイスコイル及びボイスコイルボビンが位置決め治具からずれ落ちてしまい、これらの位置決めが困難であった。
【0011】
また、特許文献3に示された位置決め治具では、弾性変形していない中立状態における治具本体の外径が、ボイスコイルボビンの内径よりも大きく形成されているので、治具本体全体の外径を縮小させた状態で、当該治具本体をボイスコイルボビン内に挿入する必要があって、ボイスコイルの所望の位置に治具本体即ち位置決め治具を挿入することが困難であった。よって、特許文献3に示された位置決め治具を用いると、ボイスコイルボビン即ちボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするためにかかる工数及び手間が増加する傾向であった。
【0012】
本発明は、このような問題点に対処することを課題の一例とするものである。本発明の目的は、例えば、質量の大きなボイスコイルなどを位置ずれすることなく位置決めでき、かつボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを防止できる位置決め治具及びと該位置決め治具を用いたスピーカの組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の位置決め治具は、ボイスコイルボビンに取り付けられるボイスコイルを磁気回路部に対して相対的に位置決めするための位置決め治具において、前記ボイスコイルボビンの内側に挿入されかつ外径が拡大自在なボイルコイル保持部と、前記ボイルコイル保持部と連なりかつ当該ボイルコイル保持部とともに外径が拡大自在な可動部と、前記可動部に取り付けられて当該可動部の外径を拡大させる拡大部材と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項12に記載の本発明のスピーカの組立方法は、ボイスコイルボビンに取り付けられるボイスコイルを磁気回路部に対して相対的に位置決めする位置決め治具を用いて、前記ボイスコイルを前記磁気回路部に対して相対的に位置決めした後に、前記ボイスコイルボビンに駆動部材を取り付けるスピーカの組立方法において、前記位置決め治具の外径が拡縮自在なボイルコイル保持部を前記ボイスコイルボビン内に挿入する位置決め治具の挿入工程と、当該位置決め治具を前記磁気回路部に取り付けて、前記ボイルコイル保持部と連なりかつ当該ボイルコイル保持部とともに外径が拡縮自在な可動部の外径を拡大部材により拡大させる可動部の拡大工程と、前記磁気回路部に対して前記ボイスコイルを相対的に位置決めするボイスコイルの位置決め工程と、前記ボイスコイルボビンに前記駆動部材を取り付ける駆動部材の取り付け工程とを有することを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を説明する。本発明の一実施形態にかかる位置決め治具は、ボイスコイル保持部に連なって当該ボイスコイル保持部とともに外径が拡大自在な可動部の外径を拡大させる拡大部材を設けているので、拡大部材により強制的にボイスコイル保持部の外径を拡大させることができる。よって、質量が大きなボイスコイルを支えることができるまでボイスコイル保持部の外径を拡大させることができ、ボイスコイルボビンに、所定の保持力を作用させることができて、質量の大きなボイスコイルなどを位置ずれすることを抑止して、位置決めすることができる。
【0016】
また、拡大部材を設けてボイスコイル保持部の外径を任意に拡大させることを自在としているので、ボイスコイル保持部の中立状態での外径をボイスコイルボビンの内径より小さくすることができる。したがって、ボイスコイル保持部をボイスコイルボビン内に挿入するためにかかる工数即ちボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを抑止することができる。
【0017】
また、ボイスコイル保持部と可動部との全長に亘って切欠き部を設けても良い。この場合、可動部やボイスコイル保持部が変形しやすくなり、ボイスコイルボビンへの保持力を任意に変更しながら作用させることを可能とする。
【0018】
さらに、拡大部材に被挿入部を設け、当該被挿入部を可動部内に挿入することで、当該可動部の外径を拡大させても良い。この場合、被挿入部を可動部内に挿入することで、当該可動部即ちボイスコイル保持部の外径を拡大させることができ、容易にボイスコイル保持部の外径を拡大させることができる。
【0019】
また、被挿入部の外径が、可動部の内径よりも大きくても良い。この場合、被挿入部を挿入することで、可動部即ちボイスコイル保持部の外径を拡大させることができる。
【0020】
被挿入部は、当該被挿入部の外径が可動部に向かうにしたがって徐々に小さく形成されたテーパ部を備えても良い。この場合、可動部への被挿入部の挿入状態を適宜変更することで、ボイスコイル保持部のボイスコイルボビンの保持力を適宜変更することができる。
【0021】
被挿入部の外周面と可動部の内周面との双方に互いに螺合するねじ溝が形成されても良い。この場合、可動部への被挿入部の挿入状態を変更することができ、ボイスコイル保持部のボイスコイルボビンの保持力を変更することができる。
【0022】
拡大部材は、可動部に設けられた貫通孔内に挿入される棒状に形成されても良い。この場合、貫通孔内への拡大部材の挿入量を変更することで、当該拡大部材が可動部の内周面を押圧する力を変更でき、可動部即ちボイスコイル保持部の外径を変更することができる。
【0023】
拡大部材の先端が可動部の内周面に接触していても良い。この場合、拡大部材の挿入量を変更することで、可動部即ちボイスコイル保持部の外径を変更することができる。
【0024】
拡大部材の全長は、ボイルコイル保持部の外径も小さく形成されていても良い。この場合、ボイスコイル保持部をボイスコイルボビン内に挿入する際に、当該ボイスコイルボビンが拡大部材に引っかかることを抑止でき、ボイスコイルボビン内にボイスコイル保持部即ち位置決め治具を容易に挿入することができる。
【0025】
貫通孔の内周面と拡大部材の外周面との双方に互いに螺合するねじ溝が形成されていても良い。この場合、貫通孔内への拡大部材の挿入量を変更でき、ボイスコイル保持部のボイスコイルボビンの保持力を変更することができる。
【0026】
ボイルコイル保持部内に収容されかつこのボイルコイル保持部の外径が拡大する方向に当該ボイルコイル保持部を付勢した付勢手段を備えても良い。この場合、ボイスコイルボビン内に挿入すると直ちにボイスコイル保持部の外径が拡がって、ボイスコイルボビンの外周面を押圧するので、ボイスコイル保持部即ち位置決め治具に対してボイスコイルボビン即ちボイスコイルが位置ずれすることを抑止できる。
【0027】
また、前述した位置決め治具を用いてスピーカを組み立てても良い。この場合、前述した位置決め治具を用いるので、質量の大きなボイスコイルなどを位置ずれすることなく位置決めできかつボイスコイルと磁気回路部とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを抑止することができる。
【実施例1】
【0028】
本発明の第1の実施例を、図1ないし図9に基づいて説明する。図2に示す本発明の第1の実施例に係る位置決め治具5は、移動体としての自動車などに搭載されて、該自動車の乗員に音声情報を提供するスピーカ1(図1に示す)を組み立てる際に用いられる。
【0029】
スピーカ1は、図1に示すように、フレーム4と、磁気回路部2と、振動部3とを備えている。
【0030】
フレーム4は、図1に示すように、フレーム本体20と、ガスケット23とを備えている。
【0031】
フレーム本体20は、アルミニウムなどの金属又はABS樹脂等の樹脂で構成されている。フレーム本体20は、円環状の底部24と、該底部の外周縁から立ち上がるように形成される円筒状の筒部25と、筒部25の外縁から突出した円環状のフランジ部26とを備えている。
【0032】
ガスケット23は、円環状に形成されている。ガスケット23は、フレーム本体20のフランジ部26上に重ねられて、当該フランジ部26との間に後述するエッジ18を挟んで、フレーム本体20に接着剤等によって固定される。ガスケット23は、フレーム本体20のフランジ部26との間にエッジ18を挟んで、後述する振動板15をフレーム本体20に対して固定する。
【0033】
磁気回路部2は、図1に示すように、前述したフレーム本体20に固定されて、フレーム4に取り付けられている(支持されている)。磁気回路部2は、図1に示すように、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)等で構成されたヨーク7と、磁石8と、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)等で構成されたプレート9とを備えている。ヨーク7は、円環状のボトムプレート10と、該ボトムプレート10の内縁部から立ち上がるように形成された円筒状のセンターポール11とを一体に備えた外磁型磁気回路である。
【0034】
本実施例では外磁型磁気回路を開示するが、本発明は、内磁型磁気回路や、内磁型や外磁型を併用した磁気回路(ボイスコイルボビンの内部と外部にマグネットを配置した磁気回路)を適用しても構わない。また本実施例では、前記センターポールにはスピーカ装置の外部へ通じる開口が形成されているが、本発明では、当該開口が形成されていなくても構わない。
【0035】
磁石8は、円環状に形成されている。磁石8の内径は、センターポール11の外径よりも大きい。磁石8は、内側にセンターポール11を通して、ボトムプレート10に重ねられている。前述した磁石8は、永久磁石又は直流電源により励磁されるものでも良い。
【0036】
プレート9は、円環状に形成されている。プレート9の内径は、センターポール11の外径よりも大きい。プレート9は、内側にヨーク7のセンターポール11と後述するボイスコイルボビン13とを通した状態で、磁石8上に重ねられている。前述したヨーク7と、磁石8と、プレート9は、その中心がほぼ同じになるように、ほぼ同軸に配置されている。このため、磁石8とプレート9の内周面は、ヨーク7のセンターポール11の外周面と間隔をあけている。
【0037】
また、前述したヨーク7すなわち磁気回路部2は、円環状の底部30、ボトムプレート10、磁石8及びプレート9を貫通した図示しないボルトによって、フレーム本体20に固定される。このように、磁気回路部2は、フレーム4に固定されて、勿論、ヨーク7と磁石8とプレート9とが、フレーム4のフレーム本体20とほぼ同軸に配置される。
【0038】
前述した構成により、磁気回路部2は、ヨーク7のセンターポール11の外周面と、プレート9の内周面との間に比較的大きい磁束密度を有する磁気ギャップGを形成している。
【0039】
振動部3は、図1に示すように、フレーム4のフレーム本体20内に収容されている(支持されている)。振動部3は、ボイスコイル12と、ボイスコイルボビン13と、駆動部材としてのドライブコーン14と、振動板15と、センターキャップ16などを備えている。ボイスコイル12は、ボイスコイルボビン13の外周面に巻き回されて、取り付けられている。また、このボイスコイル12は、振動板15を駆動させる前は、磁気回路部2の前述した磁気ギャップG内に配置されている。ボイスコイル12には、音声電流が供給される。
【0040】
ボイスコイルボビン13は、円筒状に形成されている。ボイスコイルボビン13の内径は、ヨーク7が有するセンターポール11の外径よりも大きく形成されている。ボイスコイルボビン13の外径は、プレート9及び磁石8の内径よりも小さく形成されている。ボイスコイルボビン13は、ヨーク7とプレート9とボイスコイル12などとほぼ同軸に配置されている。ボイスコイルボビン13は、その一端部が磁気ギャップGへと挿入されており、該一端部の外周にボイスコイル12を取り付けている。ボイスコイルボビン13は、ドライブコーン14や振動板15などによって、ヨーク7の中心軸に沿って移動自在に支持されている。なお、ヨーク7の中心軸は、スピーカ1の中心軸とほぼ同じである。
【0041】
ドライブコーン14は、ボイスコイル12の振動を後述する振動板15に伝える。ドライブコーン14は、樹脂で構成されている。ドライブコーン14は、円環状に形成され、かつその内縁部がボイスコイルボビン13の他端部の外周面に取り付けられている。ドライブコーン14の外縁部には、円環状に形成された弾性変形自在のエッジ17が接着剤などによって取り付けられている。エッジ17とドライブコーン14との接合は接着剤以外に、ネジ止めや縫い付け等の公知の手段を用いることができる。エッジ17は、その外縁部がフレーム本体20の筒部25の内面に固定されている。即ち、ドライブコーン14は、エッジ17を介してフレーム本体20即ちフレーム4に取り付けられている。
【0042】
振動板15は、樹脂で構成されている。振動板15は、円環状に形成されている。振動板15は、その内縁部がドライブコーン14の一部と接着剤などによって固定されている。振動板15の外縁部には、断面形状が半円環状に形成されたエッジ18が接着剤などによって取り付けられている。エッジ18は、その外縁部がフレーム本体20のフランジ部26とガスケット23との間に挟まれて、これらに固定されている。即ち、振動板15は、エッジ18を介してフレーム本体20即ちフレーム4に取り付けられている。
【0043】
センターキャップ16は、ABS樹脂などの大きい機械的な強度を有する樹脂で形成されている。センターキャップ16は、円板状に形成されている。センターキャップ16の外径は、振動板15の内径よりも大きくかつ振動板15の外径よりも小さく形成されている。センターキャップ16は、その外縁部が振動板15の内縁部に接着剤等を用いて接合されている。
【0044】
前述した振動部3のドライブコーン14、振動板15及びセンターキャップ16は、勿論、フレーム4及び磁気回路部2とほぼ同軸に配置されている。振動部3は、ボイスコイル12に音声情報に応じた電流(音声電流)が供給されると、ドライブコーン14によってボイスコイル12の振動が伝えられた振動板15が前述した中心軸に沿って振動して、音声電流に応じた音波を発生する。即ち、振動板15は、ボイスコイル12に作用する駆動力によって振動する。
【0045】
また、前述したドライブコーン14、振動板15及びエッジ17,18と、フレーム4のフレーム本体20の内面とで囲まれた空間Kは、密閉されている。即ち、ドライブコーン14、振動板15及びエッジ17,18と、フレーム4のフレーム本体20の内面とで囲まれた空間Kは、気密に保たれている。
【0046】
このため、前述した振動部3は、ボイスコイルボビン13が中心軸方向に沿って振動して、ドライブコーン14及び振動板15が振動する際に、ドライブコーン14と振動板15との間の空間Kにある空気がドライブコーン14及び振動板15の変位及びエッジ17,18の変位により圧縮と膨張を繰り返すことで、空気バネとしてのバネ性が発現される。
【0047】
本実施例において、振動板15の有効面積をS1、ドライブコーン14の有効面積をS2とするときの有効面積の差SはS=S1−S2であり、また、ドライブコーン14、振動板15との間の密閉空間K内にある空気の体積Vとすると、上記の空気バネのバネ性を表す定数であるスティフネスは、S/Vに比例する。即ち、本実施例では、ドライブコーン14、振動板15との間の密閉された空間Kにある空気が発現する、空気バネとしてのバネ性により、非常に大きな振幅で振動板15が動作する等の異常な振る舞いを抑えること、スピーカ1の音響特性を長期間にわたり再現できること、振動板15を大きな振幅で長時間にわたり振動させてもスピーカ1の信頼性を維持できることが可能になる。
【0048】
前述した構成のスピーカ1は、図示しないリード線などを介してボイスコイル12に音声電流が供給され、この音声電流に応じて磁気ギャップG内に配置されたボイスコイル12が前述した中心軸に沿って振動する。そして、ボイスコイル12がその外周に巻かれたボイスコイルボビン13が、ドライブコーン14や振動板15などと共に中心軸に沿って振動する。即ち、ボイスコイル12の振動がドライブコーン14によって伝えられた当該振動板15が振動することによって音声電流に応じた音を発生させる。
【0049】
位置決め治具5は、図2に示すように、保持部材30と、拡大部材31と、付勢手段としてのCリング32とを備えている。保持部材30は、内外径が段階的に変化する円筒状に形成されているとともに、後述するボイスコイル保持部34と可動部35との全長に亘ってこれらの軸芯に沿って直線状に延在した切欠き部33が設けられている。切欠き部33は、勿論、ボイスコイル保持部34と可動部35の一部を切り欠いて形成されている。
【0050】
保持部材30は、図5に示すように、ボイスコイル保持部34と、可動部35とを備えている。ボイスコイル保持部34は、外径が一定でかつ内径が小径となる部分と大径となる部分とが設けられた円筒状に形成されている。ボイスコイル保持部34は、切欠き部33の幅が増減するように即ちその外径が拡大縮小するように弾性変形自在(即ち、外径が拡大自在)となっている。ボイスコイル保持部34は、その弾性変形していない中立状態で、外径がボイスコイルボビン13の内径よりも若干小さく形成されている。また、ボイスコイル保持部34は、その弾性変形していない中立状態でボイスコイルボビン13即ちボイスコイル12内に挿入される。
【0051】
可動部35は、その内径がボイスコイル保持部34の小径な部分とほぼ等しく形成された円筒状に形成されている。可動部35は、外径がボイスコイル保持部34よりも小さな可動部本体36と、可動部本体36とボイスコイル保持部34との双方に連なる連結部37とを一体に備えている。連結部37は、一端の外径が可動部本体36の外径と等しく形成され、他端の外径がボイスコイル保持部34の外径と等しく形成されている。可動部35は、勿論、一端が可動部本体36に連なり、他端がボイスコイル保持部34に連なっている。可動部35は、ボイスコイル保持部34に連なって一体に形成されることで、ボイスコイル保持部34とともに外径が拡大自在となっている。
【0052】
拡大部材31は、被挿入部38と、露出部39とを一体に備え、これらの全長に亘ってこれらの軸芯に沿って直線状に延在した切欠き部40が設けられている。切欠き部40は、勿論、被挿入部38と露出部39の一部を切り欠いて形成されている。
【0053】
被挿入部38は、テーパ部41と、円筒部42とを一体に備えている。テーパ部41は、外径が徐々に拡大するようにテーパ状に形成された円環状に形成されている。即ち、テーパ部41は、可動部35に向かうにしたがって外径が徐々に小さくなるようにテーパ状に形成されている。テーパ部41の小径側の端の外径は、弾性変形していない可動部35の内径よりも小さく形成されている。
【0054】
円筒部42は、テーパ部41の大径側の端に連なり、その外径が一定に形成されている。テーパ部41の大径側の端の外径と円筒部42の外径とは、互いにほぼ等しく形成され、弾性変形していない可動部35の内径よりも大きく形成されている。こうして、被挿入部38の外径は、可動部35の内径よりも大きく形成されている。被挿入部38は、テーパ部41を先頭にして可動部35内に挿入される。そして、被挿入部38は、可動部35内に挿入させることで、当該可動部35に取り付けられるとともに、円筒部42の外周面が可動部35の内周面を径方向に押圧して、可動部35及び当該可動部35とともにボイスコイル保持部34の外径を拡大させる。また、被挿入部38は、テーパ部41を可動部35内に挿入する度合いを適宜変更することで、ボイスコイル保持部34の外径を任意に拡大させることを自在とすることができる。さらに、被挿入部38が、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を拡大させる量は、前述した空間Kが密閉されて当該空間K内の空気が空気バネとしてのバネ性を発揮するスピーカ1に用いられる比較的質量の大きなボイスコイル12の位置決めに十分な量となっている。
【0055】
露出部39は、円筒部42のテーパ部41から離れた側の端に連なった円筒状に形成されている。露出部39は、その内径が、円筒部42及びテーパ部41の内径と等しく形成されている。露出部39は、その外径が、円筒部42の外径よりも大きく形成されている。露出部39は、被挿入部38が可動部35に取り付けられると、外側に露出する。
【0056】
Cリング32は、弾性変形な金属で構成されて、C字状に形成されている。Cリング32は、保持部材30のボイスコイル保持部34の内面に取り付けられて、このボイスコイル保持部34の外径が拡大する方向に当該ボイスコイル保持部34をその外縁が付勢している。
【0057】
前述した構成の位置決め治具5は、以下のように、スピーカ1を組み立てる際に用いられる。まず、図3に示すように、ボイスコイル保持部34をボイスコイルボビン13即ちボイスコイル12内に挿入する位置決め治具の挿入工程を行い、その後、Cリング32がボイスコイル保持部34を外周方向に押圧してこのボイスコイル保持部34の外径を拡大させて、ボイスコイル保持部34にボイスコイルボビン13即ちボイスコイル12を取り付ける。
【0058】
そして、図6に示すように、保持部材30がセンタポール11の先端部上に被せられて、スピーカ1の磁気回路部2に取り付けられる。その後、保持部材30が、ボイスコイル12が磁気回路部2とほぼ同軸となる位置に位置決めされる。
【0059】
その後、図4及び図7に示すように、テーパ部41を先頭にして、拡大部材31の被挿入部38を可動部35内に挿入して、当該拡大部材31を可動部35即ち保持部材30に取り付ける。こうして、ボイスコイル保持部34の外径が拡大して、可動部35の外径を拡大部材31により拡大させる可動部の拡大工程を行う。そして、ボイスコイル保持部34の外周面とボイスコイルボビン13の内周面とが密に接触して、ボイスコイル12が磁気ギャップG内に挿入される位置に当該ボイスコイル12及びボイスコイルボビン13を位置決めするボイスコイルの位置決め工程を行う。こうして、位置決め治具5は、ボイスコイル12及びボイスコイルボビン13を磁気回路部2に対して相対的に位置決めする。
【0060】
そして、図8に示すように、ボイスコイルボビン13の外周面にドライブコーン14の内縁部を取り付けられる駆動部材の取り付け工程を行う。その後、位置決め治具5は、図9に示すように、ドライブコーン14に振動板15の内縁部が取り付けられた後などに、拡大部材31の被挿入部38が可動部35内から抜きとられて、保持部材30のボイスコイル保持部34がボイスコイルボビン13内から抜きとられるなどして、スピーカ1を組み立てる際に用いられる。
【0061】
本実施例によれば、ボイスコイル保持部34に連なって当該ボイスコイル保持部34とともに外径が拡大自在な可動部35の外径を拡大させる拡大部材31を設けているので、拡大部材31により強制的にボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができる。よって、質量が大きなボイスコイル12などを支えることができるまでボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができ、ボイスコイルボビン13に、所定の保持力を作用させることができて、質量の大きなボイスコイル12などを位置ずれすることなく確実に位置決めすることができる。
【0062】
また、拡大部材31のテーパ部41を挿入する度合いを適宜変更することで、ボイスコイル保持部34の外径を任意に拡大させることを自在とすることができ、ボイスコイル保持部34の中立状態での外径をボイスコイルボビン13の内径より小さくすることができる。したがって、ボイスコイル保持部34をボイスコイルボビン13内に挿入するためにかかる工数即ちボイスコイル12と磁気回路部2とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを抑止することができる。
【0063】
また、ボイスコイル保持部34と可動部35との全長に亘って切欠き部33を設けているため、可動部35やボイスコイル保持部34が変形しやすくなり、ボイスコイルボビン13への保持力を任意に変更しながら作用させることを可能とする。
【0064】
さらに、拡大部材31に可動部35内に挿入されることで、当該可動部35の外径を拡大させる被挿入部38を設けているので、被挿入部38を可動部35内に挿入することで、当該可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができ、容易にボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができる。
【0065】
また、被挿入部38の外径が、可動部35の内径よりも大きく形成されているので、被挿入部38を挿入することで、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができる。
【0066】
被挿入部38は、当該被挿入部38の外径が可動部35に向かうにしたがって徐々に小さく形成されたテーパ状のテーパ部41を備えているので、可動部35への被挿入部38の挿入状態を適宜変更することで、ボイスコイル保持部34のボイスコイルボビン13の保持力を適宜変更することができる。
【0067】
ボイスコイル保持部34内に収容されかつこのボイスコイル保持部34の外径が拡大する方向に当該ボイスコイル保持部34を付勢したCリング32を備えているので、ボイスコイルボビン13内に挿入すると直ちにボイスコイル保持部34の外径が拡がって、ボイスコイルボビン13の外周面を押圧するので、ボイスコイル保持部34即ち位置決め治具5に対してボイスコイルボビン13即ちボイスコイル12が位置ずれすることを抑止できる。
【0068】
また、前述した位置決め治具5を用いてスピーカ1を組み立てるので、質量の大きなボイスコイル12などを位置ずれすることなく確実に位置決めできかつボイスコイル12と磁気回路部2とを相対的に位置決めするためにかかる工数などが増加することを抑止することができる。
【実施例2】
【0069】
次に、本発明の第2の実施例にかかる位置決め治具5を、図10及び図11を参照して説明する。なお、図10及び図11において、前述した第1の実施例と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施例では、図10及び図11に示すように、拡大部材31の被挿入部38の外周面と可動部35の内周面との双方に互いに螺合するねじ溝43,44が形成されているとともに、これらのねじ溝43,44は、所謂テーパねじに形成されている。拡大部材31の被挿入部38の外周面に設けられたねじ溝43は、可動部35に向かうにしたがって外径が徐々に小さくなるテーパ状に形成されている。可動部35の内周面に設けられたねじ溝44は、拡大部材31に向かうにしたがって内径が徐々に大きくなるテーパ状に形成されている。
【0071】
この実施例では、拡大部材31の被挿入部38のねじ溝43を可動部35のねじ溝44にねじ込む量を増加させることで、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径をより拡大させる構成となっている。即ち、位置決めするボイスコイル12及びボイスコイルボビン13の質量が増加する程、拡大部材31の被挿入部38を可動部35内にねじ込む量を増加させて、ボイスコイル12及びボイスコイルボビン13を位置決めする。
【0072】
本実施例によれば、拡大部材31の被挿入部38の外周面と可動部35の内周面との双方に互いに螺合するねじ溝43,44が形成されているとともに、これらのねじ溝43,44が所謂テーパねじとなっている。このため、可動部35への被挿入部38の挿入量を変更することができ、可動部35への被挿入部38の挿入量を変更することで、ボイスコイル保持部34のボイスコイルボビン13の保持力を変更することができる。
【実施例3】
【0073】
次に、本発明の第3の実施例にかかる位置決め治具5を、図12及び図13を参照して説明する。なお、図12及び図13において、前述した第1の実施例及び第2の実施例と同一構成部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
本実施例では、図12及び図13に示すように、保持部材30の可動部35には、当該可動部35の径方向に沿って貫通した貫通孔45が設けられている。また、本実施例では、拡大部材31は、棒状のねじ部46と、当該ねじ部46の一端に連なった頭47とを一体に備えている。
【0075】
さらに、本実施例では、貫通孔45の内周面と拡大部材31のねじ部46の外周面との双方に互いに螺合するねじ溝48,49が形成されている。拡大部材31のねじ部46及び頭47とを合わせたその全長は、ボイスコイル保持部34の外径よりも小さく形成されている。拡大部材31は、ねじ溝48,49が互いに螺合するように、ねじ部46が貫通孔45内に挿入されて、ねじ部46の先端が可動部35の内周面に接触した状態で、可動部35即ち保持部材30に取り付けられる。このように、本実施例では、拡大部材31は、棒状に形成されて、貫通孔45内に挿入されて可動部35即ち保持部材30に取り付けられる。
【0076】
この実施例では、拡大部材31のねじ部46をより貫通孔45の奥にねじ込むことで、ねじ部46の先端が可動部35の内周面をより押圧して、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径をより拡大させる構成となっている。即ち、位置決めするボイスコイル12及びボイスコイルボビン13の質量が増加する程、拡大部材31のねじ部46を貫通孔45のより奥にねじ込んで、ボイスコイル12及びボイスコイルボビン13を位置決めする。
【0077】
本実施例によれば、拡大部材31は、可動部35に設けられた貫通孔45内に挿入される棒状に形成されているので、貫通孔45内への拡大部材31の挿入量を変更することで、当該拡大部材31が可動部35の内周面を押圧する力を変更でき、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を変更することができる。
【0078】
拡大部材31の先端が可動部35の内周面に接触しているので、拡大部材31の挿入量を変更することで、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を変更することができる。
【0079】
拡大部材31の全長は、ボイスコイル保持部34の外径も小さく形成されているので、ボイスコイル保持部34をボイスコイルボビン13内に挿入する際に、当該ボイスコイルボビン13が拡大部材31に引っかかることを抑止でき、ボイスコイルボビン13内にボイスコイル保持部34即ち位置決め治具5を容易に挿入することができる。
【0080】
貫通孔45の内周面と拡大部材31のねじ部46の外周面との双方に互いに螺合するねじ溝48,49が形成されているので、貫通孔45内への拡大部材31のねじ部46の挿入量を変更でき、ボイスコイル保持部34のボイスコイルボビン13の保持力を変更することができる。
【0081】
また、本実施例では、貫通孔45の内周面にねじ溝48を形成する代わりに、図14及び図15に示すように、可動部35内に拡大部材31のねじ部46のねじ溝49と螺合するナット50を取り付けるようにしても良い。なお、図14及び図15において、前述した第3の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図14及び図15では、可動部35の内周面にナット50を位置決めするために溝51を設けて、当該ナット50を可動部35に位置決めするようにしている。この場合も、前述した第3の実施例と同様に、拡大部材31は、可動部35に設けられた貫通孔45内に挿入される棒状に形成されているので、貫通孔45内への拡大部材31の挿入量を変更することで、当該拡大部材31が可動部35の内周面を押圧する力を変更でき、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を変更することができる。
【0082】
また、拡大部材31の先端が可動部35の内周面に接触しているので、拡大部材31の挿入量を変更することで、可動部35即ちボイスコイル保持部34の外径を変更することができる。
【0083】
また、拡大部材31の全長は、ボイスコイル保持部34の外径も小さく形成されているので、ボイスコイル保持部34をボイスコイルボビン13内に挿入する際に、当該ボイスコイルボビン13が拡大部材31に引っかかることを抑止でき、ボイスコイルボビン13内にボイスコイル保持部34即ち位置決め治具5を容易に挿入することができる。
【0084】
また、貫通孔45の内周面に設けられたナット50を介して、溝51と拡大部材31のねじ部46の外周面に形成されたねじ溝49とが互いに螺合するため、貫通孔45内への拡大部材31のねじ部46の挿入量を変更でき、ボイスコイル保持部34のボイスコイルボビン13の保持力を変更することができる。
【0085】
前述した実施例では、ドライブコーン14と振動板15及びエッジ17,18を二つ備えたが、本発明では、ドライブコーン14と振動板15及びエッジ17,18を一つ又は三つ以上備えたスピーカ1を組み立てるようにしても良い。また、前述した実施例では、付勢手段としてCリング32を用いたが、本発明では、付勢手段の構成を種々変更しても良いことは勿論である。
【0086】
前述した実施例によれば、以下の位置決め治具5が得られる。
【0087】
(付記) ボイスコイルボビン13に取り付けられるボイスコイル12を磁気回路部2に対して相対的に位置決めするための位置決め治具5において、
ボイスコイルボビン13の内側に挿入されかつ外径が拡大自在なボイルコイル保持部34と、
前記ボイルコイル保持部34と連なりかつ当該ボイルコイル保持部34とともに外径が拡大自在な可動部35と、
前記可動部35に取り付けられて当該可動部35の外径を拡大させる拡大部材31と、
を備えたことを特徴とする位置決め治具5。
【0088】
付記によれば、ボイスコイル保持部34に連なって当該ボイスコイル保持部34とともに外径が拡大自在な可動部35の外径を拡大させる拡大部材31を設けているので、拡大部材31により強制的にボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができる。よって、質量が大きなボイスコイル12を支えることができるまでボイスコイル保持部34の外径を拡大させることができ、ボイスコイルボビン13に、所定の保持力を作用させることができて、質量な大きなボイスコイル12などを位置ずれすることなく位置決めすることができる。
【0089】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明にかかる位置決め治具を用いて組み立てられるスピーカの断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例にかかる位置決め治具などの分解斜視図である。
【図3】図2に示された位置決め治具の保持部材をボイスコイルボビン内に挿入した状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示された位置決め治具の保持部材の可動部内に拡大部材の被挿入部を挿入した状態を示す斜視図である。
【図5】図2中のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図3に示された位置決め治具の保持部材をスピーカの磁気回路部に取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】図6に示された位置決め治具の保持部材の可動部内に拡大部材の被挿入部を挿入した状態を示す断面図である。
【図8】図7に示されたボイスコイルボビンにドライブコーンの内縁部を取り付けた状態を示す断面図である。
【図9】図8に示されたドライブコーンに振動板の内縁部を取り付けた状態を示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施例にかかる位置決め治具の分解斜視図である。
【図11】図10中のXI−XI線に沿う断面図である。
【図12】本発明の第3の実施例にかかる位置決め治具の斜視図である。
【図13】図12中のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【図14】図12に示された位置決め治具の斜視図である。
【図15】図14中のXV−XV線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 スピーカ
2 磁気回路部
5 位置決め治具
12 ボイスコイル
13 ボイスコイルボビン
14 ドライブコーン(駆動部材)
31 拡大部材
32 Cリング(付勢手段)
33 切欠き部
34 ボイスコイル保持部
35 可動部
38 被挿入部
41 テーパ部
43,44 ねじ溝
45 貫通孔
48,49 ねじ溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイスコイルボビンに取り付けられるボイスコイルを磁気回路部に対して相対的に位置決めするための位置決め治具において、
前記ボイスコイルボビンの内側に挿入されかつ外径が拡大自在なボイルコイル保持部と、
前記ボイルコイル保持部と連なりかつ当該ボイルコイル保持部とともに外径が拡大自在な可動部と、
前記可動部に取り付けられて当該可動部の外径を拡大させる拡大部材と、
を備えたことを特徴とする位置決め治具。
【請求項2】
前記ボイスコイル保持部と前記可動部との全長に亘って設けられ、かつこれらの双方を切り欠いた切欠き部を備えたことを特徴とする請求項1記載の位置決め治具。
【請求項3】
前記拡大部材は、前記可動部内に挿入されることで、当該可動部の外径を拡大させる被挿入部を備えたことを特徴とする請求項2記載の位置決め治具。
【請求項4】
前記被挿入部の外径は、前記可動部の内径よりも大きいことを特徴とする請求項3記載の位置決め治具。
【請求項5】
前記被挿入部は、当該被挿入部の外径が前記可動部に向かうにしたがって徐々に小さく形成されたテーパ部を備えていることを特徴とする請求項4記載の位置決め治具。
【請求項6】
前記被挿入部の外周面と、前記可動部の内周面との双方には、互いに螺合するねじ溝が形成されていることを特徴とする請求項5記載の位置決め治具。
【請求項7】
前記可動部には当該可動部の径方向に沿って貫通した貫通孔が設けられ、
前記拡大部材は、棒状に形成されて、前記貫通孔内に挿入されることを特徴とする請求項2記載の位置決め治具。
【請求項8】
前記拡大部材の先端は、前記可動部の内周面に接触していることを特徴とする請求項7記載の位置決め治具。
【請求項9】
前記拡大部材の全長は、前記ボイルコイル保持部の外径よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項7記載の位置決め治具。
【請求項10】
前記貫通孔の内周面と、前記拡大部材の外周面との双方には、互いに螺合するねじ溝が形成されていることを特徴とする請求項7記載の位置決め治具。
【請求項11】
前記ボイルコイル保持部内に収容され、かつ前記ボイルコイル保持部の外径が拡大する方向に当該ボイルコイル保持部を付勢した付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の位置決め治具。
【請求項12】
ボイスコイルボビンに取り付けられるボイスコイルを磁気回路部に対して相対的に位置決めする位置決め治具を用いて、前記ボイスコイルを前記磁気回路部に対して相対的に位置決めした後に、前記ボイスコイルボビンに駆動部材を取り付けるスピーカの組立方法において、
前記位置決め治具の外径が拡縮自在なボイルコイル保持部を前記ボイスコイルボビン内に挿入する位置決め治具の挿入工程と、当該位置決め治具を前記磁気回路部に取り付けて、前記ボイルコイル保持部と連なりかつ当該ボイルコイル保持部とともに外径が拡縮自在な可動部の外径を拡大部材により拡大させる可動部の拡大工程と、前記磁気回路部に対して前記ボイスコイルを相対的に位置決めするボイスコイルの位置決め工程と、前記ボイスコイルボビンに前記駆動部材を取り付ける駆動部材の取り付け工程とを有することを特徴とするスピーカの組立方法。
【請求項1】
ボイスコイルボビンに取り付けられるボイスコイルを磁気回路部に対して相対的に位置決めするための位置決め治具において、
前記ボイスコイルボビンの内側に挿入されかつ外径が拡大自在なボイルコイル保持部と、
前記ボイルコイル保持部と連なりかつ当該ボイルコイル保持部とともに外径が拡大自在な可動部と、
前記可動部に取り付けられて当該可動部の外径を拡大させる拡大部材と、
を備えたことを特徴とする位置決め治具。
【請求項2】
前記ボイスコイル保持部と前記可動部との全長に亘って設けられ、かつこれらの双方を切り欠いた切欠き部を備えたことを特徴とする請求項1記載の位置決め治具。
【請求項3】
前記拡大部材は、前記可動部内に挿入されることで、当該可動部の外径を拡大させる被挿入部を備えたことを特徴とする請求項2記載の位置決め治具。
【請求項4】
前記被挿入部の外径は、前記可動部の内径よりも大きいことを特徴とする請求項3記載の位置決め治具。
【請求項5】
前記被挿入部は、当該被挿入部の外径が前記可動部に向かうにしたがって徐々に小さく形成されたテーパ部を備えていることを特徴とする請求項4記載の位置決め治具。
【請求項6】
前記被挿入部の外周面と、前記可動部の内周面との双方には、互いに螺合するねじ溝が形成されていることを特徴とする請求項5記載の位置決め治具。
【請求項7】
前記可動部には当該可動部の径方向に沿って貫通した貫通孔が設けられ、
前記拡大部材は、棒状に形成されて、前記貫通孔内に挿入されることを特徴とする請求項2記載の位置決め治具。
【請求項8】
前記拡大部材の先端は、前記可動部の内周面に接触していることを特徴とする請求項7記載の位置決め治具。
【請求項9】
前記拡大部材の全長は、前記ボイルコイル保持部の外径よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項7記載の位置決め治具。
【請求項10】
前記貫通孔の内周面と、前記拡大部材の外周面との双方には、互いに螺合するねじ溝が形成されていることを特徴とする請求項7記載の位置決め治具。
【請求項11】
前記ボイルコイル保持部内に収容され、かつ前記ボイルコイル保持部の外径が拡大する方向に当該ボイルコイル保持部を付勢した付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の位置決め治具。
【請求項12】
ボイスコイルボビンに取り付けられるボイスコイルを磁気回路部に対して相対的に位置決めする位置決め治具を用いて、前記ボイスコイルを前記磁気回路部に対して相対的に位置決めした後に、前記ボイスコイルボビンに駆動部材を取り付けるスピーカの組立方法において、
前記位置決め治具の外径が拡縮自在なボイルコイル保持部を前記ボイスコイルボビン内に挿入する位置決め治具の挿入工程と、当該位置決め治具を前記磁気回路部に取り付けて、前記ボイルコイル保持部と連なりかつ当該ボイルコイル保持部とともに外径が拡縮自在な可動部の外径を拡大部材により拡大させる可動部の拡大工程と、前記磁気回路部に対して前記ボイスコイルを相対的に位置決めするボイスコイルの位置決め工程と、前記ボイスコイルボビンに前記駆動部材を取り付ける駆動部材の取り付け工程とを有することを特徴とするスピーカの組立方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−141748(P2009−141748A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317072(P2007−317072)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】
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